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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-167545(P2020-167545A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】車載用通信機、通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/74 20060101AFI20200911BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20200911BHJP
   H04W 4/46 20180101ALI20200911BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20200911BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   H04B1/74
   H04W88/02 150
   H04W4/46
   H04W4/44
   G08G1/09 F
   G08G1/09 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-66950(P2019-66950)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆志
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB15
5H181BB18
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL09
5K067BB03
5K067EE04
5K067LL15
(57)【要約】
【課題】車車間通信や路車間通信に適した車載用通信機を提供する。
【解決手段】通信機10は、無線通信モジュール20と、無線通信モジュール20の動作制御を行う制御部30とを備える。無線通信モジュール20は、第1アンテナ11を介して車車間通信および路車間通信を選択的に送受信可能な第1送受信部21と、第2アンテナ12を介して車車間通信および路車間通信を選択的に実施可能な第2送受信部22とを有する。制御部30は、第1送受信部21と第2送受信部22とを所定の切替タイミングで車車間通信または路車間通信に切り替えるように、無線通信モジュール20を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナを介して第1の無線通信および第2の無線通信を選択的に送受信可能な第1の送受信部と、
第2のアンテナを介して前記第1の無線通信および前記第2の無線通信を選択的に送受信可能な第2の送受信部と、
前記第1の送受信部と前記第2の送受信部とを所定のタイミングで前記第1の無線通信または前記第2の無線通信に切り替える制御部と、を備えることを特徴とする車載用通信機。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用通信機において、
前記第1の送受信部または前記第2の送受信部のうち一方の送受信部は、前記第1の無線通信で電波を送信し、
前記第1の送受信部または前記第2の送受信部のうち他方の送受信部は、前記一方の送受信部から前記第1の無線通信で送信された前記電波を受信し、
前記制御部は、前記他方の送受信部が受信した前記電波に基づく異常診断を行うことを特徴とする車載用通信機。
【請求項3】
請求項2に記載の車載用通信機において、
前記他方の送受信部が受信した前記電波の受信電力を計測する受信状態診断部を備え、
前記制御部は、前記受信状態診断部が計測した前記受信電力に基づいて前記異常診断を行うことを特徴とする車載用通信機。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車載用通信機において、
前記異常診断で異常ありと診断された場合に所定の通知を行う通知部を備えることを特徴とする車載用通信機。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の車載用通信機において、
前記制御部は、前記異常診断において前記第1の送受信部または前記第2の送受信部のうち一方の送受信部が異常と診断された場合、他方の送受信部を用いて前記第1の無線通信および前記第2の無線通信を時分割で行うことを特徴とする車載用通信機。
【請求項6】
請求項5に記載の車載用通信機において、
前記制御部は、前記車載用通信機が搭載された車両の周辺の地図情報を取得し、取得した前記地図情報に基づいて、前記他方の送受信部が前記第1の無線通信および前記第2の無線通信を時分割で行うタイミングを決定することを特徴とする車載用通信機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の車載用通信機において、
前記所定のタイミングは、前記車載用通信機が搭載された車両が所定の状態になったタイミングであることを特徴とする車載用通信機。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の車載用通信機において、
前記第1の無線通信は車車間通信であり、
前記第2の無線通信は路車間通信であることを特徴とする車載用通信機。
【請求項9】
第1のアンテナを介して第1の無線通信および第2の無線通信を選択的に送受信可能な第1の送受信部と、第2のアンテナを介して前記第1の無線通信および前記第2の無線通信を選択的に送受信可能な第2の送受信部と、を備えた車載用通信機による通信方法であって、
所定のタイミング前には、前記第1の送受信部を用いて前記第1の無線通信を行うとともに、前記第2の送受信部を用いて前記第2の無線通信を行い、
前記タイミング後には、前記第1の送受信部を用いて前記第2の無線通信を行うとともに、前記第2の送受信部を用いて前記第1の無線通信を行うことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用通信機および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の車両間で通信を行う車車間通信や、車両と路上に設置された路側機との間で通信を行う路車間通信が提案されている。これらの通信に用いられる車載用通信機では、自己診断を行うことで異常発生時にはこれを速やかに検知し、適切な措置をとることが好ましい。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特許文献1、2が知られている。特許文献1には、一定時間間隔で複数のアンテナ間で該アンテナを介さないと受信できない微弱電波の送受信を繰り返して自己診断を行い、故障、盗難等の緊急事態の発生によって前記微弱電波を受信できなくなると、緊急事態の発生を緊急通報受付センタへ通報する自己診断機能を有する緊急通報装置が開示されている。特許文献2には、同一の周波数帯を使用するお互いに異なる複数の無線通信方式の無線通信システムを搭載した無線通信装置において、複数の無線通信方式の無線通信システムに対してお互いの通信期間が重ならないように所定の空き時間ごとの通信期間を割り当てて時分割通信を行わせる時分割制御部と、通信期間の無線通信システムからの電波を空き時間の無線通信システムが検出した結果に基づいて、無線通信システムの故障診断を行う診断処理部とを備えることを特徴とした無線通信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/07158号
【特許文献2】国際公開第2014/087467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の技術では、複数のアンテナ間や複数の無線通信装置間で電波の送受信を一定時間間隔で繰り返し行う必要がある。そのため、車車間通信や路車間通信のように、周囲に必ずしも通信相手がいるとは限らない通信方法においてそのまま適用するのは難しい。
本発明は、上記課題を解決するために、車車間通信や路車間通信に適した車載用通信機を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車載用通信機は、第1のアンテナを介して第1の無線通信および第2の無線通信を選択的に送受信可能な第1の送受信部と、第2のアンテナを介して前記第1の無線通信および前記第2の無線通信を選択的に送受信可能な第2の送受信部と、前記第1の送受信部と前記第2の送受信部とを所定のタイミングで前記第1の無線通信または前記第2の無線通信に切り替える制御部と、を備える。
本発明による通信方法は、第1のアンテナを介して第1の無線通信および第2の無線通信を選択的に送受信可能な第1の送受信部と、第2のアンテナを介して前記第1の無線通信および前記第2の無線通信を選択的に送受信可能な第2の送受信部と、を備えた車載用通信機によるものであって、所定のタイミング前には、前記第1の送受信部を用いて前記第1の無線通信を行うとともに、前記第2の送受信部を用いて前記第2の無線通信を行い、前記タイミング後には、前記第1の送受信部を用いて前記第2の無線通信を行うとともに、前記第2の送受信部を用いて前記第1の無線通信を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車車間通信や路車間通信に適した車載用通信機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る通信機の構成を示す図である。
図2】発明の第1の実施形態に係る通信機における異常診断処理のフローチャートである。
図3】本発明の第2の実施形態に係る通信機の構成を示す図である。
図4】発明の第2の実施形態に係る通信機における異常診断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信機の構成を示す図である。図1に示す通信機10は、車体1に搭載されて使用されるものであり、無線通信モジュール20、制御部30、車両状態診断部31、通知部32および受信状態診断部33を備える。通信機10は、例えば車両内に設けられた通信ネットワークであるCAN(Controller Area Network)と接続されており、CANを介して、車体1に搭載された他の情報機器(不図示)との間で情報の入出力を行うことができる。なお以下では、通信機10が搭載される車体1を有する車両を「自車両」と称する。
【0010】
無線通信モジュール20は、第1送受信部21および第2送受信部22を有する。第1送受信部21および第2送受信部22は、それぞれが車車間通信および路車間通信を選択的に送受信可能な送受信機である。車車間通信とは、自車両と他の車両との間で行われる無線通信であり、路車間通信とは、自車両と路上に設置された路側機との間で行われる無線通信である。無線通信モジュール20は、第1送受信部21が車車間通信を行っているときには、第2送受信部22により路車間通信を行い、第1送受信部21が路車間通信を行っているときには、第2送受信部22により車車間通信を行う。第1送受信部21および第2送受信部22は、例えば制御部30の制御に応じて無線通信の周波数チャネルを切り替えることにより、車車間通信から路車間通信への、または路車間通信から車車間通信への切り替えを任意のタイミングで行うことができる。
【0011】
第1送受信部21は、車体1に設置された第1アンテナ11と接続されており、第1アンテナ11を介して車車間通信および路車間通信を行う。第2送受信部22は、車体1に設置された第2アンテナ12と接続されており、第2アンテナ12を介して車車間通信および路車間通信を行う。第1アンテナ11および第2アンテナ12は、車体1において、自車両の周囲に存在する他の車両や路側機との間で電波の送受信を行いやすい位置や向きにそれぞれ設置されている。なお、車車間通信や路車間通信の通信範囲を適切にカバーできるように、第1アンテナ11および第2アンテナ12をそれぞれ複数ずつ設置してもよい。
【0012】
制御部30は、無線通信モジュール20の動作制御を行う部位である。制御部30が行う無線通信モジュール20の動作制御には、無線通信モジュール20内の第1送受信部21および第2送受信部22に対して行われる前述の車車間通信−路車間通信間の切り替え制御や、第1送受信部21および第2送受信部22の異常診断処理などが含まれる。
【0013】
車両状態診断部31は、自車両が特定の状態にあるか否かを診断する部位である。特定の状態とは、自車両が車車間通信や路車間通信を行う必要がない状態のことであり、例えば、イグニッションスイッチをオンした直後の起動状態、停車状態、一定速度以下の低速走行状態、自車両周辺の車両数が一定数以下の状態などが該当する。車両状態診断部31は、自車両がこれらの状態にあるか否かを診断し、診断結果を制御部30に出力する。なお、自車両が車車間通信や路車間通信を行う必要がないと判断できるものであれば、他の状態を車両状態診断部31の診断対象としてもよい。
【0014】
通知部32は、制御部30が第1送受信部21および第2送受信部22に対して行う異常診断処理の結果を、自車両の乗員であるユーザに対して通知する部位である。通知部32は、車体1に設置された不図示のディスプレイやスピーカに接続されており、これらを用いて所定の画像や音声を出力することで、ユーザへの通知を行う。
【0015】
受信状態診断部33は、第1送受信部21や第2送受信部22が受信した電波の受信電力を計測し、その計測結果に基づいて車車間通信や路車間通信の受信状態を診断する部位である。受信状態診断部33は、例えば受信電力の計測値を所定の閾値と比較し、閾値未満である場合は受信状態が異常であると判断する。受信状態診断部33は、受信状態の診断結果を制御部30に出力する。
【0016】
なお、上記の制御部30、車両状態診断部31、通知部32および受信状態診断部33は、例えば不図示のCPU、ROM、RAM等を用いて構成されている。すなわち、本実施形態の通信機10では、ROMに記憶されているプログラムをRAMに展開してCPUが実行することで、制御部30、車両状態診断部31、通知部32および受信状態診断部33の各機能を実現することができる。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る通信機における異常診断処理のフローチャートである。本実施形態において、通信機10の制御部30は、例えば不図示のCPUにおいて所定のプログラムを実行することにより、図2のフローチャートに従って第1送受信部21および第2送受信部22の異常診断処理を行う。
【0018】
ステップS1において、制御部30は、第1送受信部21および第2送受信部22のうち、現時点で車車間通信に使用されている一方の送受信部(以下、「車側送受信部」と称する)から送信される電波を、路車間通信に使用されている他方の送受信部(以下、「路側送受信部」と称する)が受信するように制御する。例えば、車側送受信部が車車間通信で他の車両に対して送信する電波の送出タイミングに合わせて、路側送受信部がこの電波を受信できるように、路側送受信部の受信チャネルの変更を行う。これにより、車側送受信部から送信された電波を、路側送受信部が受信できるようにする。
【0019】
ステップS2において、制御部30は、ステップS1で電波を受信した路側送受信部の受信状態に問題がないかどうかを確認する。ここでは、受信状態診断部33により、路側送受信部がステップS1で受信した電波の受信電力を計測し、その計測値を所定の閾値と比較する。その結果、受信電力の計測値が閾値以上であれば、路側送受信部の受信状態に問題なしと判定してステップS3に進み、受信電力の計測値が閾値未満であれば、路側送受信部の受信状態が異常であると判定してステップS6に進む。
【0020】
ステップS3において、制御部30は、予め設定された切替タイミングになったかどうかを判定する。ここでは、車両状態診断部31による自車両状態の診断結果に従って切替タイミングの判定を行う。具体的には、車両状態診断部31により前述のような特定の状態、すなわち自車両が車車間通信や路車間通信を行う必要のない状態であると診断された場合に、切替タイミングになったと判定してステップS4に進み、そうでない場合は切替タイミングになっていないと判定してステップS5に進む。
【0021】
ステップS4において、制御部30は、第1送受信部21と第2送受信部22の機能を相互に切り替える。すなわち、これまで第1送受信部21が車側送受信部として動作し、第2送受信部22が路側送受信部として動作していた場合は、今後は第1送受信部21を路側送受信部として動作させるとともに、第2送受信部22を車側送受信部として動作させるように制御する。これにより、第1送受信部21の機能が車車間通信から路車間通信へと切り替えられる一方で、第2送受信部22の機能が路車間通信から車車間通信へと切り替えられる。また反対に、これまで第1送受信部21が路側送受信部として動作し、第2送受信部22が車側送受信部として動作していた場合は、今後は第1送受信部21を車側送受信部として動作させるとともに、第2送受信部22を路側送受信部として動作させるように制御する。これにより、第1送受信部21の機能が路車間通信から車車間通信へと切り替えられる一方で、第2送受信部22の機能が車車間通信から路車間通信へと切り替えられる。
【0022】
ステップS5において、制御部30は、ステップS3で切替タイミングではないと判定してから一定の時間間隔が経過したか否かを判定し、一定の時間間隔を経過するまではステップS5に留まる。このステップS5の判定で用いられる一定の時間間隔とは、通信機10において異常診断処理が実行される頻度を調節するために設けられたものであり、任意の値を設定することが可能である。なお、ステップS5の判定を省略し、異常診断処理を逐次実行することとしてもよい。
【0023】
ステップS4で車車間通信−路車間通信間の切り替え制御を終えた後、またはステップS5で一定の時間間隔が経過したと判定した後は、ステップS1に戻って上記の処理を繰り返す。
【0024】
ステップS6において、制御部30は、通知部32を用いて、ステップS2で行った受信状態の診断結果に基づく通知をユーザに対して行う。例えば、第1送受信部21または第2送受信部22の一方において車車間通信が不通になった旨を、所定の画面表示や音声出力、特殊な文字表示等によりユーザに通知する。このとき、車車間通信や路車間通信が自車両の自動運転制御に用いられている場合は、自動運転を解除して手動運転に移行する旨をユーザに通知してもよい。ステップS6でユーザへの通知を行ったら、図2のフローチャートを終了する。
【0025】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0026】
(1)通信機10は、第1アンテナ11を介して第1の無線通信(車車間通信)および第2の無線通信(路車間通信)を選択的に送受信可能な第1送受信部21と、第2アンテナ12を介して第1の無線通信および第2の無線通信を選択的に送受信可能な第2送受信部22と、第1送受信部21と第2送受信部22とを所定のタイミングで第1の無線通信または第2の無線通信に切り替える(ステップS3〜S4)制御部30と、を備える。このようにしたので、車車間通信や路車間通信に適した車載用通信機を提供することができる。
【0027】
(2)第1送受信部21または第2送受信部22のうち一方の送受信部(車側送受信部)は、第1の無線通信(車車間通信)で電波を送信し、第1送受信部21または第2送受信部22のうち他方の送受信部(路側送受信部)は、車側送受信部から第1の無線通信で送信された電波を受信する(ステップS1)。制御部30は、路側送受信部が受信した電波に基づく異常診断を行う(ステップS2)。このようにしたので、車車間通信や路車間通信に適した異常診断を行うことができる。
【0028】
(3)通信機10は、路側送受信部が受信した電波の受信電力を計測する受信状態診断部33を備える。制御部30は、ステップS2において、受信状態診断部33が計測した受信電力に基づいて異常診断を行う。このようにしたので、簡易な構成で異常診断を行うことができる。
【0029】
(4)通信機10は、ステップS2の異常診断で異常ありと診断された場合に所定の通知を行う(ステップS6)通知部32を備える。このようにしたので、異常発生時にはそのことを直ちにユーザに知らせて適切な対処を促すことができる。
【0030】
(5)ステップS3で用いられる切替タイミングは、通信機10が搭載された自車両が所定の状態になったタイミングである。そのため、自車両の状態に応じて適切な切替タイミングを容易に設定することが可能となる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1送受信部21または第2送受信部22において異常が発生した場合でも、車車間通信や路車間通信を継続して実施する例を説明する。
【0032】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る通信機の構成を示す図である。図3に示す通信機10Aは、第1の実施形態で説明した通信機10と同様に、車体1に搭載されて使用されるものである。通信機10Aは、第1の実施形態で説明した通信機10と比べて、地図情報記憶部34をさらに備える点が異なっている。なお、本実施形態における通信機10Aのうち、地図情報記憶部34以外の構成要素については、第1の実施形態で説明した図1のものとそれぞれ同様であるため、以下では説明を省略する。
【0033】
地図情報記憶部34は、自車両が走行可能な各地域の地図情報を記憶保持している。この地図情報には、道路上や道路周辺の様々な地点に設置されている各路側機の位置情報が含まれている。制御部30は、地図情報記憶部34から自車両の現在位置の周辺を表す地図情報を読み出して取得することで、自車両の周辺における路側機の有無と、路側機が存在する場合はその位置とを把握することができる。
【0034】
なお、図3の例では地図情報記憶部34を通信機10A内に設けているが、通信機10A内に地図情報記憶部34が設けられていなくてもよい。例えば、自車両に搭載されたナビゲーション装置や外部のサーバ等を地図情報記憶部34として利用し、これらから自車両周辺の地図情報を取得するようにしてもよい。
【0035】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る通信機における異常診断処理のフローチャートである。本実施形態において、通信機10Aの制御部30は、例えば不図示のCPUにおいて所定のプログラムを実行することにより、図4のフローチャートに従って第1送受信部21および第2送受信部22の異常診断処理を行う。
【0036】
ステップS1〜S6では、第1の実施形態で説明した図2のフローチャートと同様の処理をそれぞれ実施する。
【0037】
ステップS7において、制御部30は、自車両周辺の地図情報を地図情報記憶部34から取得する。
【0038】
ステップS8において、制御部30は、ステップS7で取得した地図情報に基づいて、路側機が自車両から所定距離内に存在するか否かを判定する。その結果、少なくとも一つの路側機が所定距離内に存在する場合はステップS9に進み、一つも存在しない場合はステップS7に戻って地図情報の取得を継続する。
【0039】
ステップS9において、制御部30は、第1送受信部21または第2送受信部22のうち正常な方の送受信部を用いて、車車間通信と路車間通信を時分割で行うように、当該送受信部を制御する。ここでは、例えば第1送受信部21または第2送受信部22のうち、ステップS1において路側送受信部とした方を、正常な送受信部として決定する。あるいはステップS4と同様に、第1送受信部21と第2送受信部22の機能を切り替えることで車側送受信部と路側送受信部を入れ替えた後、ステップS1、S2と同様の処理を再度実施し、これらの処理結果を加味して正常な送受信部を決定してもよい。こうして正常な送受信部を決定できたら、制御部30は、所定の通信周期内で車車間通信と路車間通信にそれぞれ割り当てる時間を設定し、設定した割り当て時間に応じて当該送受信部が車車間通信と路車間通信を時分割で行うように制御する。このとき、自車両周辺に存在する他の車両や路側機の数に応じて、割り当て時間を調整してもよい。ステップS9の処理を実施したら、図4のフローチャートを終了する。
【0040】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、通信機10Aは、ステップS2の異常診断において第1送受信部21または第2送受信部22のうち一方の送受信部が異常と診断された場合、他方の送受信部を用いて第1の無線通信(車車間通信)および第2の無線通信(路車間通信)を時分割で行う(ステップS9)。このようにしたので、第1送受信部21または第2送受信部22において異常が発生した場合でも、車車間通信や路車間通信を継続して実施することができる。
【0041】
また、以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、制御部30は、通信機10Aが搭載された自車両の周辺の地図情報を取得し(ステップS7)、取得した地図情報に基づいて、他方の送受信部が第1の無線通信および第2の無線通信を時分割で行うタイミングを決定する(ステップS9)。このようにしたので、自車両の周囲に存在する路側機との間で路車間通信が必要なタイミングに合わせて、車車間通信と路車間通信を時分割で実施することができる。
【0042】
なお、以上説明した第1および第2の実施形態は、次のように変形してもよい。
【0043】
(変形例1)
第1送受信部21および第2送受信部22の異常診断を行わず、これらの機能の切り替えのみを実施してもよい。例えば、図2図4のフローチャートにおいてステップS3、S4の処理のみを実施することで、所定の切替タイミングごとに第1送受信部21と第2送受信部22の機能を相互に切り替えることができる。このようにすれば、第1送受信部21と第2送受信部22の間で車車間通信と路車間通信の負荷をそれぞれ分散し、互いの負荷の均等化を図ることができる。そのため、こうした処理を行わない従来の通信機と比較して、通信機10,10Aにおいて故障が発生する確率を低減することが可能となる。
【0044】
(変形例2)
第1および第2の実施形態では、第1送受信部21と第2送受信部22の間で車車間通信と路車間通信の切り替えを行う例を説明したが、本発明の切替対象となる通信方式はこれに限定されない。複数種類の無線通信をそれぞれ選択的に実施可能な複数の送受信部を備えており、各送受信部が行う無線通信の種類を所定の切替タイミングで相互に切り替え可能なものであれば、本発明の適用範囲に含まれる。
【0045】
以上説明した実施形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記実施の形態と変形例とを任意に組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10,10A:通信機、11:第1アンテナ、12:第2アンテナ、20:無線通信モジュール、21:第1送受信部、22:第2送受信部、30:制御部、31:車両状態診断部、32:通知部、33:受信状態診断部、34:地図情報記憶部
図1
図2
図3
図4