【解決手段】実施形態に係る電池制御装置は、算出部と、予測部と、決定部とを備える。算出部は、所定の通常蓄電範囲である第1範囲と、第1範囲以外の蓄電範囲である第2範囲とを有する蓄電池の蓄電残量を算出する。予測部は、過去の車両動作における充放電量の学習結果に基づき、今回の車両動作における予測充放電量を予測する。決定部は、蓄電残量および予測充放電量に基づき算出した予測蓄電量が通常蓄電範囲から外れる場合、第2範囲を含めた蓄電範囲に基づいて今回の車両動作における充放電量を決定する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電池制御装置および電池制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
まず、
図1Aおよび
図1Bを用いて、実施形態に係る電池制御方法の概要について説明する。
図1Aは、実施形態に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
図1Bは、実施形態に係る電池制御方法の概要を示す図である。
【0013】
図1Aに示す制御システムSは、例えば、ハイブリッド車両に搭載される制御システムである。制御システムSは、電池制御装置1と、エンジン11と、モータジェネレータ(MG)12と、リチウムイオンバッテリ(LiB)13と、DCDCコンバータ14と、鉛バッテリ15と、負荷16とを備える。
【0014】
エンジン11は、走行用の動力源であって、例えば、ガソリンや水素等の電気以外で駆動するエンジンである。MG12は、加速時において、LiB13から供給される電力によって駆動され、エンジン11の動作を補助する。また、MG12は、減速時において、発電機として機能することで、減速に伴う運動エネルギを電気エネルギに変換して、LiB13や鉛バッテリ15、負荷16へ電力を供給する。
【0015】
LiB13は、例えば、48Vの蓄電池であり、電池制御装置1の制御に従って充放電を行う。なお、詳細は
図1Bで後述するが、実施形態に係る電池制御装置1は、LiB13に設定されたマージン分の蓄電範囲を加味して充放電制御を行う。
【0016】
DCDCコンバータ14は、MG12やLiB13から供給される電力を降圧して、鉛バッテリ15や負荷16へ電力を供給する。鉛バッテリ15は、例えば、12Vの蓄電池であり、負荷16へ電力を供給したり、MG12やLiB13から供給される電力を蓄積したりする。
【0017】
負荷16は、電気機器であり、例えば、ナビゲーション装置やオーディオ、エアーコンディショナ等が挙げられる。あるいは、負荷16は、例えば、PCS(Pre-crash Safety System)やAEB(Advanced Emergency Braking System)などの車両制御を行う車両制御装置であってもよい。
【0018】
ここで、
図1Bを用いて、実施形態に係る電池制御方法の概要について説明する。
図1Bに示すように、LiB13の蓄電範囲は、通常蓄電範囲(第1範囲)と、使用禁止の範囲(上限側および下限側)と、マージン分(第2範囲)の範囲(上限側および下限側)とが設定される場合が多い。
【0019】
従来は、通常蓄電範囲内で充放電制御を行うことで、蓄電残量の算出誤差があった場合でも、マージン分の範囲によって、使用禁止の範囲まで充放電しないようにしている。例えば、
図1Bにおいて、MGが要求トルクとして「A」が要求された場合、通常蓄電範囲の蓄電残量に相当する実トルク「B+Y」をMGに指示していた。従って、従来は、通常蓄電範囲内で充放電を行うため、LiBを最大限活用しているとは言えず、効率良く充放電制御を行う点で改善の余地があった。
【0020】
そこで、実施形態に係る電池制御方法では、過去の走行から充放電量を予測することで、マージン分の範囲を充放電制御に用いることとした。
【0021】
具体的には、
図1Bに示すように、まず、実施形態に係る電池制御方法では、マージン分を除いた所定の通常蓄電範囲を有するLiB13の蓄電残量を算出する(S1)。具体的には、通常蓄電範囲の上限を100%、下限を0%とする蓄電残量を算出する。
【0022】
つづいて、実施形態に係る電池制御方法では、過去の車両動作における充放電量の学習結果に基づき、今回の車両動作における予測充放電量を予測する(S2)。
図1Bに示す例では、予測放電量を予測する場合を示している。
【0023】
そして、実施形態に係る電池制御方法では、蓄電残量および予測充放電量に基づき算出した予測蓄電量が通常蓄電範囲から外れる場合、マージン分を含めた蓄電範囲に基づいて今回の車両動作における充放電量を決定する(S3)。
【0024】
具体的には、実施形態に係る電池制御方法では、MG12から要求トルクとして「A」が要求された場合、通常蓄電範囲の蓄電残量に相当する実トルク「B+Y」に、下限側のマージン分の電力量に相当する実トルク「Z」を加えた「B+Y+Z」でMG12に指示する。
【0025】
このように、実施形態に係る電池制御方法では、マージン分の電力量を用いることで、従来に比べて、効率良く充放電制御を行うことができる。
【0026】
さらに、実施形態に係る電池制御方法では、過去の車両動作の学習結果に基づき予測充放電量を予測することで、使用禁止の範囲まで充放電されることを防止できる。すなわち、実施形態に係る電池制御方法によれば、電池の劣化を抑えつつ、効率良く充放電制御を行うことができる。
【0027】
なお、
図1Bでは、実施形態に係る電池制御方法をLiB13の放電制御に適用した場合について説明したが、実施形態に係る電池制御方法をLiB13の充電制御にも適用可能である。
【0028】
次に、
図2を参照して、実施形態に係る電池制御装置1の構成について詳細に説明する。
図2は、実施形態に係る電池制御装置1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、実施形態に係る電池制御装置1は、各種センサ100、LiB13およびMG12に接続される。
【0029】
各種センサ100は、車両に搭載されるセンサであって、車両に関する情報を検出し、検出結果を電池制御装置1へ出力する。各種センサ100は、例えば、カメラ、位置情報検出装置、車速センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、レーダ等といった、車両動作に関する情報を検出するセンサを含む。
【0030】
実施形態に係る電池制御装置1は、制御部2と、記憶部3とを備える。制御部2は、算出部20、学習部21、予測部22および決定部23を備える。記憶部3は、学習情報30を記憶する。
【0031】
ここで、電池制御装置1は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、データフラッシュ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0032】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部2の算出部20、学習部21、予測部22および決定部23として機能する。
【0033】
また、制御部2の算出部20、学習部21、予測部22および決定部23の少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0034】
また、記憶部3は、たとえば、RAMやデータフラッシュに対応する。RAMやデータフラッシュは、学習情報30や、各種プログラムの情報等を記憶することができる。なお、電池制御装置1は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0035】
学習情報30は、後述する学習部21の学習結果として生成される情報である。学習情報30には、例えば、過去の車両動作と充放電量との関係を示す情報等が含まれる。
【0036】
制御部2は、LiB13の蓄電残量を算出するとともに、予測充放電量を予測し、蓄電残量および予測充放電量に基づいて今回の車両動作における充放電量を決定する。
【0037】
算出部20は、マージン分を除いた所定の通常蓄電範囲を有するLiB13の蓄電残量を算出する。具体的には、算出部20は、LiB13の電流値や電圧値を検出することで、蓄電残量を示すSOC(State Of Charge)を算出する。
【0038】
より具体的には、算出部20は、電流値(もしくは電圧値)と、SOCとの関係を示すマップ情報に基づいてSOCを算出する。算出部20は、算出した蓄電残量の情報を決定部23へ出力する。
【0039】
なお、算出部20により蓄電残量の算出処理は、例えば、一定の間隔で行ってもよく、あるいは、LiB13の充放電を行うタイミング(例えば、加速や減速のタイミング)に行ってもよい。
【0040】
学習部21は、過去の車両動作における充放電量を学習し、学習結果を示す学習情報30として記憶部3に記憶する。具体的には、学習部21は、例えば、加速時においてLiB13からMG12へ供給した電力量である放電量と、加速時の状況に関する加速情報(加速度、車速、道路勾配等)とを対応付けて学習情報30として記憶する。
【0041】
より具体的には、学習部21は、加速時に電力供給の開始から終了までの供給継続期間における電力量を放電量として学習する。なお、学習部21は、例えば、加速時に瞬間的にアクセルを開放して電力供給が一時的に停止する場合には、電力供給が停止する前後の電力量を合算した値を放電量として学習する。換言すれば、学習部21は、電力供給の停止期間が所定期間以上となった場合、供給継続期間を終了して放電量を学習する。
【0042】
また、学習部21は、例えば、減速時においてMG12からLiB13へ供給した電力量である充電量と、減速時の状況に関する減速情報(加速度、車速、道路勾配等)とを対応付けて学習情報30として記憶する。
【0043】
また、学習部21は、LiB13の電池特性を示す特性情報を充放電量に対応付けて学習情報30として記憶してもよい。具体的には、特性情報には、LiB13の電池温度や、外気温、充放電回数(総数)、電池交換日、充放電頻度等の情報が含まれてよい。なお、充放電頻度とは、一定期間における充放電回数を指す。
【0044】
なお、学習部21は、例えば、予測充放電量を示すスコアを出力するモデルを学習結果として生成してもよい。具体的には、学習部21は、過去の車両動作における充放電量を教師データとし、過去の車両動作を示す動作情報(加速情報や減速情報等)および特性情報を素性データとする機械学習により、予測充放電量を示すスコアを出力するモデルを生成し、学習情報30として記憶してもよい。
【0045】
予測部22は、過去の車両動作における充放電量の学習結果に基づき、今回の車両動作における予測充放電量を予測する。具体的には、予測部22は、今回の車両動作(加速や減速)が検出されたタイミングで、記憶部3に記憶された学習情報30に基づいて予測充放電量を予測する。
【0046】
例えば、予測部22は、過去の車両動作における放電量の学習結果に基づき、今回の車両動作における予測放電量を予測する。具体的には、予測部22は、車両の加速動作(アクセルの踏込や、車速変化が所定値以上)が検出された場合、かかる加速動作の情報と、学習情報30とに基づき予測放電量を予測する。
【0047】
また、例えば、予測部22は、過去の車両動作における充電量の学習結果に基づき、今回の車両動作における予測充電量を予測する。具体的には、予測部22は、車両の減速動作(アクセルの開放や、車速変化が所定値以上)が検出された場合、かかる減速動作の情報と、学習情報30とに基づき予測充電量を予測する。
【0048】
例えば、予測部22は、学習情報30に含まれる過去の車両動作における充放電量に基づき算出した代表値を予測充放電量として予測する。
【0049】
代表値は、例えば、過去の所定期間における充放電量の平均値や、最高値等であってよい。このように、過去の充放電量から算出した代表値を用いることで、予測放電量の予測精度を高めることができる。
【0050】
また、予測部22は、学習情報30に含まれる過去の車両動作におけるLiB13の電池特性の学習結果に基づいて予測充放電量を予測してもよい。これにより、予測放電量の予測精度をさらに高めることができる。
【0051】
なお、予測部22は、予測充放電量を予測する際に、走行道路に関する道路情報を加味してもよい。道路情報には、例えば、道路の位置や、距離、勾配等といった固定の情報(静的な情報)、および、走行当時の交通量や、天候、路面状態等といった動的な情報が含まれてよい。
【0052】
決定部23は、算出部20によって算出された蓄電残量、および、予測部22によって予測された予測充放電量に基づいて今回の車両動作における充放電量を決定する。
【0053】
具体的には、決定部23は、蓄電残量および予測充放電量に基づき算出した予測蓄電量が通常蓄電範囲から外れる場合、マージン分を含めた蓄電範囲に基づいて今回の車両動作における充放電量を決定する。
【0054】
例えば、決定部23は、蓄電残量から予測放電量を減算した予測蓄電量が通常蓄電範囲を下回る場合、下限側のマージン分を含めた蓄電範囲に基づいて今回の車両動作における放電量を決定する。これにより、マージン分を含めた電力量をMG12へ供給できるため、MG12で出力されるトルクを向上させることができる。すなわち、放電時における電力量を増加できるため、効率良く放電制御を行うことができる。
【0055】
また、例えば、決定部23は、蓄電残量に予測放電量を加算した予測蓄電量が通常蓄電範囲を上回る場合、上限側のマージン分を含めた蓄電範囲に基づいて今回の車両動作における充電量を決定する。これにより、マージン分を含めた電力量をLiB13に充電できるため、MG12によって発電された電力を無駄なく蓄積できる。すなわち、充電時における電力量を増加できるため、効率良く充電制御を行うことができる。
【0056】
なお、決定部23は、予測蓄電量が通常蓄電範囲の範囲内である場合には、現在の蓄電残量に基づいて、すなわち、通常蓄電範囲に基づいて充放電量を決定する。
【0057】
そして、決定部23は、決定した充放電量に基づいてMG12で出力する実トルクを算出し、かかる実トルクを示す情報をMG12へ出力する。
【0058】
次に、
図3を用いて、実施形態に係る電池制御装置1が実行する処理の処理手順について説明する。
図3は、実施形態に係る電池制御装置1が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0059】
図3に示すように、まず、算出部20は、マージン分を除いた所定の通常蓄電範囲を有するLiB13の蓄電残量を算出する(S101)。
【0060】
つづいて、予測部22は、過去の車両動作における充放電量の学習結果に基づき、今回の車両動作における予測充放電量を予測する(S102)。
【0061】
つづいて、決定部23は、蓄電残量および予測充放電量に基づいて予測蓄電残量を算出する(S103)。
【0062】
つづいて、決定部23は、算出した予測蓄電残量が通常蓄電範囲から外れるか否かを判定する(S104)。
【0063】
つづいて、決定部23は、予測蓄電残量が通常蓄電範囲から外れる場合(S104:Yes)、マージン分を含めた蓄電範囲に基づいて充放電量を決定し(S105)、処理を終了する。
【0064】
一方、決定部23は、予測蓄電残量が通常蓄電範囲の範囲内であった場合(S104:No)、予測充放電量、すなわち、通常蓄電範囲に基づいて充放電量を決定し(S106)、処理を終了する。
【0065】
上述してきたように、実施形態に係る電池制御装置1は、算出部20と、予測部22と、決定部23とを備える。算出部20は、所定の通常蓄電範囲である第1範囲と、第1範囲以外の蓄電範囲である第2範囲とを有するLiB13の蓄電残量を算出する。予測部22は、過去の車両動作における充放電量の学習結果に基づき、今回の車両動作における予測充放電量を予測する。決定部23は、蓄電残量および予測充放電量に基づき算出した予測蓄電量が通常蓄電範囲から外れる場合、第2範囲を含めた蓄電範囲に基づいて今回の車両動作における充放電量を決定する。これにより、電池の劣化を抑えつつ、効率良く充放電制御を行うことができる。
【0066】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。