【解決手段】睡眠状態検出装置(2,3)は、睡眠期間を含む所定期間における被験者の拍動間隔データを取得する取得部((221,321)と、拍動間隔データから、周期的心拍変動イベントデータを検出するイベント検出部(222,322)と、周期的心拍変動イベントデータから拍動間隔が所定範囲内となる期間の周期的心拍変動イベントデータを除外する除外処理を実行するイベント処理部(223,323)と、除外処理された周期的心拍変動イベントデータに関連する無呼吸指標信号を出力する出力部(224,324)と、を有することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一側面に係る睡眠状態検出装置について、図を参照しつつ説明する。但し、本開示の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。なお、以下の説明及び図において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
[心臓の拍動と心拍間隔]
図1は、心臓の拍動を示す心電図と心臓の拍動の時間間隔である心拍間隔を説明する図である。(a)は心電図波形であり、(b)は心拍間隔のグラフである。
【0018】
人が横になる等安静にしているときは心臓の拍動が「遅く」なり、運動した時や緊張した時には心臓の拍動が「速く」なることはよく知られている。心臓の拍動が「速い」、「遅い」という現象は、例えば、拍動の一拍と次の一拍の間の時間である心拍間隔により表現できる。心臓の鼓動が速いときは、心拍間隔時間は小さくなり、反対に、心臓の拍動が遅いときは、心拍間隔時間は大きくなる。
【0019】
図1(a)は、心電図と呼ばれる心臓が拍動するときに発生する電気信号を示す図である。心電図の一番鋭いピークであるRは、心臓の心室と呼ばれる部分が急激に収縮して血液を心臓から送り出している時に発生する電気信号であり、R−R間の時間間隔を心拍間隔(RRI;R-R Interval)という。
【0020】
図1(b)は、心拍間隔(RRI)をプロットしたグラフである。心拍間隔(RRI)は常に一定ではなく変動していることがわかる。運動することで心拍数が上昇し心拍間隔(RRI)が変化するだけでなく、じっと安静にしているときや眠っているときでも、心拍間隔(RRI)の変動が観察される。上図では、心拍間隔(RRI)が950ミリ秒から900ミリ秒のあいだで変動している。このような心拍間隔の変動を、心拍変動と呼ぶ。
【0021】
被験者が無呼吸又は低呼吸睡眠状態にあるとき、徐脈と頻脈を交互に繰り返す特徴的な心拍変動、いわゆる周期的心拍変動が起こることが知られている。しかし、周期的な心拍変動には、様々な要因があり、被験者が無呼吸又は低呼吸睡眠状態にあることを簡便に精度よく推定する必要がある。尚、本実施形態では、心拍間隔(RRI)と脈波間隔(PPI)を総称して拍動間隔と呼ぶ。脈波間隔(PPI)は、例えば脈波の最も鋭いピーク間の時間間隔をいう。心電図は心臓の心筋の活動に伴い発生する電位変化をとらえたものに対し、脈波は心臓が拍出した血液が動脈を介し末梢へ流れた血流の変動を測定したものであり、RRIとPPIはそれぞれから取得した情報であるが、睡眠時など比較的安静時にはそれらはほぼ同様な値を示すことが知られている。以降の実施例では脈波間隔に基づき説明する。
【0022】
[従来の脈波間隔変動から周期的心拍変動を検出する方法]
図2は、従来の脈波間隔変動から周期的心拍変動を推定する方法を説明するための図である。
【0023】
図2の上段のグラフは、脈波間隔値を縦軸に睡眠時刻を横軸にして描いたグラフである。実線は実際の脈波間隔を示し、破線は、例えば移動平均により平滑化された脈波間隔である。平滑化された脈波間隔の落ち込みをディップ(dip)という。
図2の下段のグラフは、平滑化された脈波間隔から推定される周期的心拍変動フラグを、睡眠時刻を横軸にして描いたグラフである。周期的心拍変動フラグとは、被験者が無呼吸状態にあることを示すフラグである。
【0024】
図3は、従来の脈波間隔から周期的心拍変動フラグを推定するアルゴリズムの一例を示す図である。まず、平滑化された脈波間隔の極小値近傍の形状をディップ候補として抽出する(ST401)。抽出されたディップ形状の判定、例えばディップ形状が所定の放物線形状に類似するかの判定を行う(ST402)。更にディップの深さ、例えば極小値の中心時刻における値と、前後の移動平均の最大値の平均値との差として、個々のディップの深さを算出して閾値判定を行う(ST403)。更にディップの幅の判定、例えば隣接するディップに対して所定範囲内のディップ幅を有しているかの判定を行う(ST404)。
【0025】
更にディップの類似性の判定を行う(ST405)。例えば隣接するディップに対して所定範囲内のディップ幅及び所定範囲内のディップ高さを有し、且つ隣接するディップに対して所定範囲内のディップ幅とディップ高さの比を有しているディップを、類似性を有するディップとして特定する。更にディップの周期性の判定を行う(ST406)。例えば4つの連続するディップのうちの隣接する2つのディップの全てについて、隣接する2つのディップの時刻差が所定時間の範囲内であり、かつ、時刻差の大きさのばらつきが所定範囲内である場合に、その4つのディップは周期性を有するとする。上記条件を全て満たしたディップを周期的心拍変動フラグとして取得する(ST407)。周期的心拍変動フラグは、周期的心拍変動フラグに対応する時刻に被験者は無呼吸状態にあり周期的心拍変動イベントが発生していることを示すものである。
【0026】
図4は、平滑化された脈波間隔と周期的心拍変動イベントとの関連を描いたグラフを示す図である。
【0027】
被験者の平滑化された脈波間隔は、左側部分Aでは安定しているが、右側部分Bでは大きく変動していることがわかる。従来の脈波間隔変動から周期的心拍変動を推定するアルゴリズムによって、左側部分Aで周期的心拍変動フラグc(1、t1)、c(2,t2)、c(3、t3)を取得する。ここで、c(n,tn)は、n番目の周期的心拍変動フラグであり、時刻tnで検出されていることを示す(n:自然数)。更に右側部分Bで周期的心拍変動フラグc(4、t4)、c(5,t5)、c(6、t6)、c(7,t7)、c(8、t8)を取得する。
【0028】
平滑化された脈波間隔の大きく変動している右側部分Bでは、被験者は無呼吸状態ではなく、例えば、レム睡眠等、別の睡眠状態にあることを、発明者は実際の無呼吸状態と検出された周期的心拍変動フラグとを対比することにより知得した。本願発明は、従来の脈波間隔変動から周期的心拍変動を取得するアルゴリズムにより取得された周期的心拍変動フラグから、被験者が無呼吸状態にない周期的心拍変動フラグを除外して、被験者の無呼吸睡眠状態の検出精度を向上させるものである。
【0029】
[睡眠状態検出装置の第1実施形態の処理概要]
図5は、本発明に係る睡眠状態検出装置の第1実施形態の処理概要の一例を示す図である。
【0030】
被験者の手首には、被験者の心臓の拍動状態、例えば脈拍を検出する光学式脈波センサ11を有するリストバンド1が取り付けられている。光学式脈波センサ11は、例えばLEDドライバと緑色検出用フォトダイオードを搭載した光学式脈波センサICを有する。LEDを生体内に向けて照射した時の反射光の強度をフォトダイオードで測定して、脈波信号を得ることができる。脈波センサは光学式だけでなく、例えば脈圧検出式脈波センサでもよい。
【0031】
本実施例では、リストバンド1は被験者の手首に取り付けた状態を示しているが、被験者の他の部位に取り付けてもよい。
【0032】
リストバンド1の光学式脈波センサ11で検出された拍動信号は、無線通信、例えばWiFi、ブルートゥース(登録商標)により睡眠状態検出装置2に送信される。拍動信号の送信はリアルタイムでなくともよく、例えば、被験者が睡眠から覚醒した後、まとめて睡眠状態検出装置2に送信してもよい。又、リストバンド1から睡眠状態検出装置2に拍動信号を直接無線送信する必要はなく、例えばスマートホン、アクセスポイント経由で睡眠状態検出装置2に送信してもよい。
【0033】
リストバンド1から送信された拍動信号は、睡眠状態検出装置2のアンテナ21で介して通信インターフェース22が受信する。取得部221は、拍動信号から睡眠期間を含む所定期間における被験者の拍動間隔データを取得する。
【0034】
イベント検出部222は、拍動間隔データを平滑化する。更にイベント検出部222は、
図3に示した従来の脈波間隔から周期的心拍変動フラグを推定するアルゴリズムを使用して周期的心拍変動イベントを検出する。検出された周期的心拍変動イベントデータはイベント処理部223に入力される。
【0035】
イベント処理部223は、検出された周期的心拍変動イベントデータから、拍動間隔が所定範囲内となる期間に対応する周期的心拍変動イベントデータを除外する。無呼吸に伴う周期的心拍変動では、交感神経が優位となっており、平均的な拍動間隔は短くなる傾向があるが、例えばレム睡眠の場合は周期的心拍変動に類似な心拍変動となるがその平均的な拍動間隔は無呼吸の場合に比べて長い傾向があるため、所定範囲をレム睡眠時の平均的な拍動間隔付近とし、この範囲を除外することで無呼吸であることを示す周期的心拍変動イベントデータのみを選択する。
【0036】
イベント処理部223による検出結果に基づき、出力部224は、無呼吸指標信号として周期的心拍変動イベントデータを出力する。周期的心拍変動イベントデータに代えて、又は周期的心拍変動イベントデータと共に検出単位時間あたりの呼吸指標、例えば1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI:Apnea Hypopnea Index)に相当する値を出力してもよい。
【0037】
無呼吸指標信号は、睡眠状態検出装置2に内蔵される不図示の表示部に入力され、表示画面上に、例えば、無呼吸低呼吸指数に相当する値が表示される。又、無呼吸指標信号は、睡眠状態検出装置2に内蔵される不図示のハードディスク、着脱メモリカードに書き込まれてもよい。更に、無呼吸低呼吸指数に相当する値は、睡眠状態検出装置2に接続される、プリンタ、情報端末装置、サーバ装置に出力されてもよい。又、ネットワークを介して、例えば、被験者データベースを有するサーバ装置に送信されてもよい。
【0038】
尚、光学式脈波センサ11は、脈波信号に代えて拍動間隔信号を送信してもよく、又、脈波信号と拍動間隔信号とを送信してもよい。
【0039】
本実施形態の睡眠状態検出装置2によれば、簡便に睡眠時の呼吸停止又は低呼吸状態の検出精度を向上することができる。
【0040】
[第1実施形態の睡眠状態検出装置の構成例]
図6は、第1実施形態の睡眠状態検出装置の構成の一例を示す図である。
【0041】
睡眠状態検出装置2は、アンテナ21を介して外部と通信する通信インターフェース22と、通信インターフェース22と接続する制御部24を有する。更に、外部記憶媒体と接続する記憶媒体インターフェース23を有してもよい。例えば、記憶媒体インターフェース23により睡眠状態検出装置2はリストバンド1の記憶媒体に記憶された検出データを読み込むことができる。
【0042】
制御部24は、制御記憶部210と制御処理部220を有する。制御記憶部210は、1又は複数の半導体メモリにより構成される。例えば、RAMや、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性メモリの少なくとも一つを有する。制御記憶部210は、制御処理部220による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。
【0043】
例えば、制御記憶部210は、ドライバプログラムとして、通信インターフェース22を制御するデバイスドライバプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、例えば、CD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて制御記憶部210にインストールされてもよい。また、プログラムサーバ等からダウンロードしてインストールしてもよい。
【0044】
更に、制御記憶部210は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。制御記憶部210は、ディップ判定閾値、拍動間隔閾値、拍動間隔範囲閾値、拍動間隔平均閾値等の閾値テーブル211、推定単位時間、検出単位時間等の時間テーブル212、統計処理のための統計マスタ213等を記憶する。
【0045】
制御記憶部210に記憶される、拍動間隔閾値、拍動間隔範囲閾値、及び拍動間隔平均範囲閾値等の閾値テーブル211、推定単位時間、検出単位時間、及び算出時間等の時間テーブル212は固有の設定値としてもよい。又、閾値テーブル211、及び時間テーブル212は、複数被験者の無呼吸又は低呼吸睡眠状態の統計を取り、統計値の平均、分散等に基づいて統計的に設定されてもよい。更に、被験者の、生体情報、例えば年齢、性別、体重に応じた設定値を統計マスタ213に記憶して、被験者の無呼吸又は低呼吸睡眠状態の推定に利用してもよい。
【0046】
制御処理部220は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。制御処理部220は、睡眠状態検出装置2の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、MCU(Micro Controller Unit)である。
【0047】
制御処理部220は、制御記憶部210に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、制御処理部220は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行してもよい。制御処理部220は、取得部221、イベント検出部222、イベント処理部223、出力部224等を有する。
【0048】
制御処理部220が有するこれらの各部は、独立した集積回路、回路モジュール、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして制御部24に実装されてもよい。
【0049】
[第1実施形態の睡眠状態推定処理フロー]
図7は、睡眠状態検出装置で行われる睡眠状態検出処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0050】
取得部221は、被験者のリストバンド1から受信された拍動信号を用いて拍動間隔を示す拍動間隔データを取得する(ST701)。
【0051】
イベント検出部222は、拍動間隔データを平滑化する(ST702)。更にイベント検出部222は、
図3に示した従来の脈波間隔から周期的心拍変動フラグを推定するアルゴリズムを使用して周期的心拍変動イベントを検出する(ST703)。イベント処理部223は、拍動間隔データの移動平均(mv)を算出する(ST704)。イベント処理部223は、所定期間、例えば、1時間ごとの、又は1睡眠期間における平均値(An)を算出する(ST705)。
【0052】
イベント処理部223は、周期的心拍変動フラグが検出された時刻tkにおいて移動平均(mv)が平均値(An)以下であるかを判定する(ST706)。移動平均(mv)が平均値(An)以下であるとき(ST706:YES)は、イベント処理部223は、時刻tkの周期的心拍変動フラグc(k、tk)を周期的心拍変動フラグとして累積する(ST707)。移動平均(mv)が平均値(An)を超えるとき(ST706:NO)は、イベント処理部223は、ST706に戻り次の周期的心拍変動フラグの移動平均(mv)と平均値(An)を比較する。なお、ここでは移動平均(mv)が平均値(An)以下であるときとしたが、この限りでなく、平均値(An)の定数倍(例えば1.1)などでも構わない。またAnは1睡眠期間における平均値としたが、これを睡眠のウルトラディアンリズム内の平均として例えば1.5時間ごとの平均としてもかまわない。
【0053】
イベント処理部223は、時刻tkが睡眠時間を超えたかを判定する(ST708)。時刻tkが睡眠時間を超えていないとき(ST708:NO)は、ST706に戻る。時刻tkが睡眠時間を超えたとき(ST708;YES)は、出力部224は、累積された周期的心拍変動フラグに基づき無呼吸指標信号を出力する(ST709)。処理フローは終了する。
【0054】
[睡眠状態検出装置の第2実施形態の処理概要]
第1実施形態では、睡眠中の被験者からの拍動間隔データに基づいて、被験者の睡眠状態を推定した。第2実施形態では、更に拍動間隔データから自律神経指標データを出力して、拍動間隔データと自律神経指標データとに基づいて、被験者の睡眠状態を検出する。
【0055】
[自律神経指標の例]
被験者が無呼吸睡眠状態となったとき、被験者の交感神経活動が活性化することが知られている。交感神経活動の活動度については、例えば心拍変動を解析することで把握可能なことが知られている。
【0056】
図8は、自律神経指標(LF/HF)の一例を示す図である。心拍変動の周波数解析を行った結果の一例を示している。例えば心拍間隔(RRI)を所定時間、例えば5分間に亘って、周波数解析した周波数(横軸)とパワー(縦軸)との関係を示すグラフである。低周波数区間(例えば0.05Hz−0.15Hz)のピーク値をLFとし、高周波数区間(例えば0.15Hz−0.4Hz)のピーク値をHFとする。
【0057】
LFは主に交感神経機能の活動度を示し、HFは副交感神経機能の活動度を示す。ただしLFは交感神経だけでなく副交感神経の関与もあるため、LFとHFの比(LF/HF)を交感神経の活性度の指標として使用されることが多く、本発明ではLF/HFを交感神経活性度の指標として使用する。又、ピーク値ではなく、低周波数区間と高周波数区間のパワースペクトル密度の比を自律神経指標(LF/HF)としてもよい。交感神経の活動度を示す自律神経指標(LF/HF)を利用して被験者が無呼吸睡眠状態となったときの推定精度を上げることができる。
【0058】
図9は、本発明に係る睡眠状態検出装置の第2実施形態の処理概要の一例を示す図である。
【0059】
被験者の手首には、被験者の心臓の拍動状態、例えば脈拍を検出する光学式脈波センサ11を有するリストバンド1が取り付けられている。光学式脈波センサ11で検出された拍動信号は、無線通信により睡眠状態検出装置3に送信される。拍動信号の送信はリアルタイムでなくともよく、例えば、被験者が睡眠から覚醒した後、まとめて睡眠状態検出装置3に送信してもよい。又、リストバンド1から睡眠状態検出装置3に拍動信号を直接無線送信する必要はなく、例えばスマートホン、アクセスポイント経由で睡眠状態検出装置3に送信してもよい。
【0060】
リストバンド1から送信された拍動信号は、睡眠状態検出装置3のアンテナ31で介して通信インターフェース32が受信する。取得部321は、拍動信号から睡眠期間を含む所定期間における被験者の拍動間隔データを取得する。取得された拍動間隔データはイベント検出部322に入力される。更に、拍動間隔データは自律神経指標出力部325に入力される。
【0061】
イベント検出部322は、拍動間隔データを平滑化する。更にイベント検出部322は、
図3に示した従来の脈波間隔から周期的心拍変動フラグを推定するアルゴリズムを使用して周期的心拍変動イベントを検出する。検出された周期的心拍変動イベントデータはイベント処理部323に入力される。
【0062】
自律神経指標出力部325は、拍動間隔データに基づき自律神経指標(LF/HF)データを算出する。被験者の交感神経の活動度を示す自律神経指標(LF/HF)を利用して被験者が無呼吸睡眠状態となったときの推定精度を上げることができる。自律神経指標出力部325から出力される自律神経指標データは、イベント処理部323に入力される。
【0063】
イベント処理部323は、検出された周期的心拍変動イベントデータから、拍動間隔が所定範囲内となる期間に対応する周期的心拍変動イベントデータを除外する。無呼吸に伴う周期的心拍変動では、交感神経が優位となっており、平均的な拍動間隔は短くなる傾向があるが、例えばレム睡眠の場合は周期的心拍変動に類似な心拍変動となるがその平均的な拍動間隔は無呼吸の場合に比べて長い傾向があるため、所定範囲をレム睡眠時の平均的な拍動間隔付近とし、この範囲を除外することで無呼吸であることを示す周期的心拍変動イベントデータのみを選択する。
【0064】
イベント処理部323は、除外処理された無呼吸であることを示す周期的心拍変動イベントデータを、更に、自律神経指標データに基づいてフィルタリングする。フィルタリングは、例えば、自律神経指標が所定の自律神経指標閾値以上であるときの周期的心拍変動イベントデータを無呼吸であることを示す周期的心拍変動イベントデータをとして判定する。自律神経指標(LF/HF)が高いとき、すなわち交感神経活性化状態のときは、被験者が無呼吸又は低呼吸睡眠状態にある可能性が高いと推定される。
【0065】
イベント処理部223による検出結果に基づき、出力部224は、無呼吸指標信号として周期的心拍変動イベントデータを出力する。周期的心拍変動イベントデータに代えて、又は周期的心拍変動イベントデータと共に検出単位時間あたりの呼吸指標、例えば1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数に相当する値を出力してもよい。
【0066】
無呼吸指標信号は、睡眠状態検出装置2に内蔵される不図示の表示部に入力され、表示画面上に、例えば、無呼吸低呼吸指数に相当する値が表示される。又、無呼吸指標信号は、睡眠状態検出装置2に内蔵される不図示のハードディスク、着脱メモリカードに書き込まれてもよい。更に、無呼吸低呼吸指数に相当する値は、睡眠状態検出装置2に接続される、プリンタ、情報端末装置、サーバ装置に出力されてもよい。又、ネットワークを介して、例えば、被験者データベースを有するサーバ装置に送信されてもよい。
【0067】
無呼吸指標信号は、睡眠状態検出装置3に内蔵される不図示の表示部に入力され、表示画面上に、例えば、無呼吸低呼吸指数の値が表示される。又、無呼吸指標信号は、睡眠状態検出装置3に内蔵される不図示のハードディスク、着脱メモリカードに書き込まれてもよい。更に、無呼吸指標信号は、睡眠状態検出装置3に接続される、プリンタ、情報端末装置、サーバ装置に出力されてもよい。又、ネットワークを介して、例えば、被験者データベースを有するサーバ装置に送信されてもよい。
【0068】
本実施形態の睡眠状態検出装置3によれば、簡便に睡眠時の呼吸停止又は低呼吸状態の検出精度を向上することができる。
【0069】
〔第2実施形態の睡眠状態検出装置の構成例]
図10は、第2実施形態の睡眠状態検出装置の構成の一例を示す図である。
【0070】
睡眠状態検出装置3は、アンテナ31を介して外部と通信する通信インターフェース32と、通信インターフェース32と接続する制御部34を有する。更に、外部記憶媒体と接続する記憶媒体インターフェース33を有してもよい。例えば、記憶媒体インターフェース33により睡眠状態検出装置3はリストバンド1の記憶媒体に記憶された検出データを読み込むことができる。
【0071】
制御部34は、制御記憶部310と制御処理部320を有する。制御記憶部310は、1又は複数の半導体メモリにより構成される。例えば、RAMや、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性メモリの少なくとも一つを有する。制御記憶部310は、制御処理部320による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。
【0072】
例えば、制御記憶部310は、ドライバプログラムとして、通信インターフェース32を制御するデバイスドライバプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、例えば、CD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて制御記憶部310にインストールされてもよい。また、プログラムサーバ等からダウンロードしてインストールしてもよい。
【0073】
更に、制御記憶部310は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。制御記憶部310は、ディップ判定閾値、拍動間隔閾値、拍動間隔範囲閾値、拍動間隔平均閾値、自律神経指標閾値等の閾値テーブル311、推定単位時間、検出単位時間等の時間テーブル312、統計処理のための統計マスタ313等を記憶する。
【0074】
制御記憶部210に記憶される、ディップ判定閾値、拍動間隔閾値、拍動間隔範囲閾値、拍動間隔平均閾値、自律神経指標閾値等の閾値テーブル311、推定単位時間、検出単位時間等の時間テーブル312は固有の設定値としてもよい。又、閾値テーブル311、及び時間テーブル312は、複数被験者の無呼吸又は低呼吸睡眠状態の統計を取り、統計値の平均、分散等に基づいて統計的に設定されてもよい。更に、被験者の、生体情報、例えば年齢、性別、体重に応じた設定値を統計マスタ313に記憶して、被験者の無呼吸又は低呼吸睡眠状態の推定に利用してもよい。
【0075】
制御処理部320は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。制御処理部220は、睡眠状態検出装置3の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、MCUである。
【0076】
制御処理部320は、制御記憶部310に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、制御処理部320は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行してもよい。制御処理部320は、取得部321、イベント検出部322、イベント処理部323、出力部324、自律神経指標出力部325等を有する。
【0077】
制御処理部320が有するこれらの各部は、独立した集積回路、回路モジュール、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして制御部24に実装されてもよい。
【0078】
[第2実施形態の睡眠状態推定処理フロー]
図11は、睡眠状態検出装置3で行われる睡眠状態推定処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0079】
取得部321は、被験者のリストバンド1から受信された拍動信号を用いて拍動間隔を示す拍動間隔データを取得する(ST801)。
【0080】
自律神経指標出力部325は、拍動間隔データに基づき自律神経指標データを出力するする(ST802)。
【0081】
イベント検出部322は、拍動間隔データを平滑化する(ST803)。更にイベント検出部322は、
図3に示した従来の脈波間隔から周期的心拍変動フラグを推定するアルゴリズムを使用して周期的心拍変動イベントを検出する(ST804)。イベント処理部323は、拍動間隔データの移動平均(mv)を算出する(ST805)。イベント処理部323は、所定期間、例えば、1時間ごとの、又は1睡眠期間における平均値(An)を算出する(ST806)。
【0082】
イベント処理部323は、周期的心拍変動フラグが検出された時刻tkにおいて移動平均(mv)が平均値(An)以下であるかを判定する(ST807)。移動平均(mv)が平均値(An)以下であるとき(ST807:YES)は、イベント処理部323は、時刻tkにおける自律神経指標が所定の自律神経指標閾値Th以上かを判定する(ST808)。移動平均(mv)が平均値(An)を超えるとき(ST807:NO)は、イベント処理部323は、ST807に戻り次の時刻の周期的心拍変動フラグの移動平均(mv)と平均値(An)を比較する。
【0083】
時刻tkにおける自律神経指標が所定の自律神経指標閾値Th以上のとき(ST808:YES)は、イベント処理部323は、時刻tkの周期的心拍変動フラグc(k、tk)を周期的心拍変動フラグとして累積する(ST809)。時刻tkにおける自律神経指標が所定の自律神経指標Thを下回るとき(ST808:NO)は、イベント処理部323は、ST807に戻り次の時刻の周期的心拍変動フラグの移動平均(mv)と平均値(An)を比較する。
【0084】
イベント処理部323は、時刻tkが睡眠時間を超えたかを判定する(ST810)。時刻tkが睡眠時間を超えていないとき(ST810:NO)は、ST807に戻る。時刻tkが睡眠時間を超えたとき(ST810;YES)は、出力部324は、累積された周期的心拍変動フラグに基づき無呼吸指標信号を出力する(ST811)。処理フローは終了する。
【0085】
[本発明による周期的心拍変動検出の効果]
図12は、本発明による周期的心拍変動検出の効果を示す図である。
【0086】
図12の上部には、被験者の1睡眠期間、例えば、睡眠時間が7時間のときの脈波間隔(PPI)が示されている。移動平均(mv)は実線で示され、平均値(An)は破線で示されている。
【0087】
最下段の(i)AHIは、睡眠ポリグラフ装置により計測された、実際の無呼吸又は低呼吸の状態を帯状に示したものである。下から2段目の(ii)CVHR(original)は、従来アルゴリズムを使用して周期的心拍変動イベントが発生したと推定したときの状態を帯状に示している。(i)と(ii)を比較すると、(ii)には、実際には無呼吸又は低呼吸の状態でない状態が多く含まれていることがわかる。
【0088】
下から3段目の(iii)CVHR(modified)は、被験者の睡眠状態を本願の第1実施形態により検出した効果を示すものである。(i)から脈波間隔(PPI)の平均値(An)より移動平均(mv)が長い場合を除外したときの周期的心拍変動イベントを帯状に示したものである。従来アルゴリズムを使用して検出した周期的心拍変動イベントデータから拍動間隔が所定範囲内となる期間の周期的心拍変動イベントデータが除外されたことにより、推定が改善されたことがわかる。
【0089】
下から4段目の(iv)LF/HF filterは、水平な太線のうち空隙となっている部分は、自律神経指標データが所定の自律神経指標閾値以上となった部分の自律神経指標に対応する部分である。
【0090】
下から5段目の(v)CVHR(modified)+LF/HF filterは、被験者の睡眠状態を本願の第2実施形態により検出した効果を示すものである。iii)に(iv)を考慮した周期的心拍変動を帯状に示したものである。(v)は(i)の実際の無呼吸又は低呼吸の状態により近くなったことがわかる。
【0091】
上述の説明では、被験者の心臓の拍動状態として脈拍を例にとり説明したが、被験者の心臓の拍動状態として心拍を使用してもよい。
【0092】
本発明に係る睡眠状態検出装置は、サーバ装置‐クライアント装置間の連携による実施形態としてもよい。
【0093】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換、及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。