【解決手段】蒸気滅菌器は、チャンバへ液体を移送する給液ポンプと、チャンバ外に配置され、被滅菌物の滅菌処理のために必要な量の液体がチャンバに供給されたことを検出するセンサと、蒸気滅菌器の動作を制御する制御部とを備えている。チャンバへ液体を供給するとき、制御部は、給液ポンプを起動し、その後給液ポンプを一旦停止し、その後給液ポンプを再起動し、その後センサの検出に基づいて給液ポンプを停止する。
前記チャンバへ液体を供給するとき、前記制御部は、前記給液ポンプを起動した後前記チャンバ内の気圧が前記給液ポンプから吐出される液体の圧力よりも大きくなる前に前記給液ポンプを一旦停止し、前記チャンバ内の気圧が前記給液ポンプから吐出される液体の圧力よりも小さくなるまで降下した後に前記給液ポンプを再起動する、請求項1または2に記載の蒸気滅菌器。
前記チャンバへの給液開始時の前記給液ポンプの起動時間よりも、前記給液ポンプが一旦停止した後の前記給液ポンプの停止時間の方が長い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気滅菌器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
図1は、実施の形態の蒸気滅菌器1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施の形態の蒸気滅菌器1は、ガーゼ、メスなどの医療器具に代表される被滅菌物100を収容可能なチャンバ10を備えている。チャンバ10は、開閉可能な開閉蓋11を含んでいる。開閉蓋11は、チャンバ10の側部に装着されている。開閉蓋11を開放することにより、チャンバ10内への被滅菌物100の搬出入が可能となる。開閉蓋11を閉じることにより、チャンバ10の内部は密閉状態に保持される。
【0016】
チャンバ10の底面10bの近傍には、ヒータ12が設置されている。ヒータ12は、チャンバ10の底面10bに沿って延びるように配置されている。ヒータ12は、チャンバ10内に供給された水を加熱して、蒸気を発生させる。蒸気滅菌器1は、ヒータ12の加熱により発生した水蒸気で、被滅菌物100を滅菌する。
【0017】
水は、滅菌処理のためにチャンバ10内に供給される液体の一例である。水は、常水(水道水)、井戸水、蒸留水または精製水であってもよい。チャンバ10内に供給される液体は、水に限られず、生理食塩水などの水溶液であってもよい。
【0018】
ヒータ12の上方には、被滅菌物100を載置可能な載置台13が、チャンバ10の底面10bに対して略平行に設けられている。
【0019】
チャンバ10の、開閉蓋11と対向する内側面には、チャンバ10内の温度を検出する温度センサ16が取り付けられている。温度センサ16は、チャンバ10内の気体の温度を計測する。
【0020】
蒸気滅菌器1は、貯水槽20を備えている。貯水槽20は、チャンバ10内に供給される水を貯留する。チャンバ10から排出される水は、貯水槽20へと戻る。貯水槽20は、チャンバ10から排出される水を貯留する。貯水槽20の内部空間には、水が存在する液相部21と、空気が存在する気相部22とが含まれている。貯水槽20の内部空間には、貯水槽20内の水位を検出するための水位センサ26が設置されている。
【0021】
チャンバ10と貯水槽20とは、給水経路30と、排出経路40と、オーバーフロー経路50とによって連通されている。給水経路30は、貯水槽20からチャンバ10へ水を供給するための経路である。排出経路40は、チャンバ10から貯水槽20へ水、水蒸気および空気を排出するための経路である。オーバーフロー経路50は、チャンバ10内の設定水位を超える量の水をチャンバ10から貯水槽20へ排出するための経路である。
【0022】
給水経路30は、給水管31と、給水ポンプ32と、給水電磁弁33とを含んでいる。給水管31の一端は貯水槽20内部に連結され、他端はチャンバ10に連結されている。給水ポンプ32は、給水管31の経路上の上流側(貯水槽20に近い側)に設けられている。給水電磁弁33は、給水管31の経路上の下流側(チャンバ10に近い側)に設けられている。
【0023】
給水ポンプ32は、貯水槽20からチャンバ10へ向かって流れる方向に水を移送して、チャンバ10内へ水を供給する。給水電磁弁33は、給水ポンプ32に対して給水経路30の下流側に配置されており、給水経路30を開閉する。給水電磁弁33は、貯水槽20からチャンバ10へ水が流れ得る開状態と、貯水槽20からチャンバ10への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0024】
排出経路40は、排水管41と、排気管42と、共通管43と、排出電磁弁44とを含んでいる。排水管41は、チャンバ10から排出される水が流れるための経路である。排水管41の一端は、チャンバ10の底面10bに接続されている。チャンバ10内の水は、排水管41を通ってチャンバ10外へ排出される。
【0025】
排気管42は、チャンバ10から排出される気体が流れるための経路である。排気管42の一端は、チャンバ10内の水面の最高位よりも上方の位置で、チャンバ10に接続されている。排気管42は、チャンバ10内に水が供給されたときの水面の位置よりも上方の位置で、チャンバ10に接続されている。チャンバ10内の空気、水蒸気またはこれらの混合気体は、排気管42を通ってチャンバ10外へ排出される。
【0026】
共通管43は、チャンバ10から排出され排水管41内を流れる水と、チャンバ10から排出され排気管42内を流れる気体と、の両方が流れるための経路である。共通管43は、気体が流れるための経路と水が流れるための経路とを、共通している。共通管43の一端は、排水管41および排気管42の両方と連通している。共通管43の一端と、排水管41の他端および排気管42の他端とが、継手により構成される連結部を介して、互いに連結されていてもよい。共通管43の他端は、貯水槽20の内部に配置されている。
【0027】
貯水槽20の内部において、共通管43は、コンデンサ部45を有している。コンデンサ部45は、貯水槽20内の液相部21に水没している。コンデンサ部45において、共通管43の内部を通過する高温の水および水蒸気から、貯水槽20内部に貯留された水へ熱伝達し、共通管43を流れる流体の温度が低下する。これによりコンデンサ部45は、水が貯水槽20内に排出されるときの騒音を低減する。コンデンサ部45は、蒸気滅菌器1の発生する音の大きさを低減する静音機能を有している。
【0028】
貯水槽20の内部において、共通管43は、屈曲部46を有している。共通管43は、コンデンサ部45から上方に立ち上がり、貯水槽20内の液相部21から気相部22にまで亘って延びている。共通管43は、屈曲部46において屈曲して、下方に向かって延びている。共通管43の他端は、貯水槽20内の液面に向いて配置されている。これにより、共通管43から貯水槽20の内部に排出される水または蒸気は、共通管43の他端から、貯水槽20内に貯留されている水に向かって流出する。
【0029】
共通管43には、排出電磁弁44が設けられている。排出電磁弁44は、貯水槽20の外部に配置されている。排出電磁弁44は、排出経路40を開閉する。排出電磁弁44は、チャンバ10から貯水槽20へ向かって流体が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への流体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0030】
オーバーフロー経路50は、オーバーフロー管51と、オーバーフロー電磁弁53と、オーバーフローセンサ54とを含んでいる。オーバーフロー管51は、管状の部材である。オーバーフロー管51は、チャンバ10に接続されている。オーバーフロー管51は、チャンバ10の底面10bから上方に立上る立上り部52を有している。立上り部52の上端は、オーバーフロー管51の一端56を構成している。オーバーフロー管51の一端56は、チャンバ10内に配置されており、チャンバ10内の下部に開口している。
【0031】
オーバーフロー管51は、貯水槽20に接続されている。オーバーフロー管51の他端55は、貯水槽20の内部に配置されている。オーバーフロー管51の他端55は、貯水槽20の上部に開口している。オーバーフロー管51は、チャンバ10と貯水槽20内とを連通している。オーバーフロー管51を経由して流れる水は、他端55から貯水槽20内へ流出する。
【0032】
オーバーフロー電磁弁53とオーバーフローセンサ54とは、チャンバ10外に配置されている。オーバーフロー電磁弁53は、オーバーフロー管51の経路上の上流側(チャンバ10に近い側)に設けられている。オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51の経路上の下流側(貯水槽20に近い側)に設けられている。
【0033】
オーバーフロー電磁弁53は、オーバーフローセンサ54に対してオーバーフロー管51の上流側に配置されており、オーバーフロー経路50を開閉する。オーバーフロー電磁弁53は、チャンバ10から貯水槽20へ水が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0034】
オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51を流れる水の流動を検知する。オーバーフローセンサ54は、チャンバ10内からオーバーフロー管51へ流入してオーバーフロー管51を経由して貯水槽20へ向かって流れる、水の流動を検知する。オーバーフローセンサ54は、たとえば、オーバーフローセンサ54を通過する水の流れによって移動するフロートユニットを有する仕様のセンサであってもよい。または、オーバーフローセンサ54は、水の誘電率と空気の誘電率との差に基づいて水の流れを検知する静電容量センサであってもよい。
【0035】
蒸気滅菌器1はまた、送風経路60を備えている。送風経路60は、送風管61と、エア電磁弁62と、エアポンプ63とを含んでいる。送風管61は、チャンバ10に接続された一端と、エアポンプ63に接続された他端とを有している。送風管61は、エアポンプ63とチャンバ10とを連通している。エアポンプ63は、空気の流れを発生する。
【0036】
エア電磁弁62は、送風管61に設けられている。エア電磁弁62は、送風経路60を開閉する。エア電磁弁62は、エアポンプ63からチャンバ10へ空気が流れ得る開状態と、エアポンプ63からチャンバ10への空気の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0037】
エアポンプ63は、送風管61の他端から一端へ向かう方向に空気を移送して、チャンバ10内に空気を供給する。チャンバ10内に空気が送り込まれると、チャンバ10内の水または水蒸気は、送り込まれた空気の圧力により、チャンバ10外へ排出される。
【0038】
蒸気滅菌器1は、圧力経路70をさらに備えている。圧力経路70は、圧力管71,73,75、継手72、圧力計74、および安全弁76を含んで構成されている。
【0039】
圧力管71は、チャンバ10の上面の近傍に接続された一端と、継手72に接続された他端とを有している。圧力管73は、継手72に接続された一端と、圧力計74に接続された他端とを有している。チャンバ10内の気体は、圧力管71、継手72および圧力管73を介して、圧力計74に到達する。圧力計74は、チャンバ10内の気体の圧力を計測する。
【0040】
圧力管75は、継手72に接続された一端と、安全弁76に接続された他端とを有している。安全弁76は、貯水槽20に設けられている。チャンバ10内の気体の圧力が過剰に上昇すると、安全弁76が開き、チャンバ10内の気体が圧力管71、継手72、圧力管73および安全弁76を順に経由して、貯水槽20内に排出される。これによりチャンバ10内の圧力が低下し、チャンバ10内の圧力が適切な範囲に維持される。
【0041】
図2は、蒸気滅菌器1の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部80を備えている。制御部80は、温度センサ16、水位センサ26、オーバーフローセンサ54および圧力計74に電気的に接続されている。制御部80は、温度センサ16からチャンバ10の内部の温度に係る検出値の入力を受ける。制御部80は、水位センサ26から、貯水槽20内の水位に係る検出値の入力を受ける。制御部80は、オーバーフローセンサ54から、オーバーフロー管51を流れる水の流動の有無に係る検出値の入力を受ける。制御部80は、圧力計74からチャンバ10の内部の圧力に係る検出値の入力を受ける。
【0042】
制御部80はまた、入力部81を有している。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、加熱温度、滅菌時間および乾燥時間などの設定値を、入力部81から制御部80に入力する。制御部80は、所定時間を計測するタイマ82を有している。タイマ82は、被滅菌物100の滅菌時間および乾燥時間を制御するために使用され、また、チャンバ10内への給水のタイミングの制御のために使用される。
【0043】
制御部80は、蒸気滅菌器1の各制御ステップに対応して、ヒータ12、排出電磁弁44、給水電磁弁33、エア電磁弁62、オーバーフロー電磁弁53、給水ポンプ32およびエアポンプ63などの、蒸気滅菌器1に含まれる各機器に制御信号を出力する。制御部80からの制御信号を受けて各機器が適切に動作することにより、蒸気滅菌器1による被滅菌物の滅菌処理が確実に行なわれる。
【0044】
以上の構成を備えている蒸気滅菌器1の動作について、以下に説明する。
図3は、蒸気滅菌器1の各機器の動作を示すタイミングチャートである。
図3に示すタイミングチャートに従って、蒸気滅菌器1による被滅菌物の滅菌のための各工程のうち、給水工程における蒸気滅菌器1の動作について、詳細に説明する。以下では、滅菌処理を連続して行なう場合の、前回の滅菌処理完了後の蒸気滅菌器1の動作について、説明する。
【0045】
図3に示すように、時刻T0において、蒸気滅菌器1が、前回の滅菌処理完了後の待機状態から、滅菌処理を開始する開始状態へと切り替わる。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、給水を開始する以前に、チャンバ10の開閉蓋11を開放して、被滅菌物100を載置台13に載せ置き、被滅菌物100をチャンバ10内に収容する。
【0046】
蒸気滅菌器1を待機状態から開始状態に切り替えることにより、
図3に示すように、排出電磁弁44がオンになる。本実施の形態において、排出電磁弁44、給水電磁弁33、エア電磁弁62およびオーバーフロー(OF)電磁弁53はいずれも、オフ(非通電)状態で閉状態を保ち、オン(通電)状態で開く、常時閉仕様の電磁弁である。
【0047】
貯水槽20の気相部22は、大気圧に保たれている。排出電磁弁44を開くことにより、チャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とが、排出経路40を介して互いに連通する。これにより、チャンバ10の内部空間が、気相部22と同じ大気圧に調整される。チャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とが連通することで、チャンバ10内の空気圧と外気圧とが一定にされる。これにより、チャンバ10の開閉蓋11を容易に開閉できるようになる。
【0048】
次に時刻T1において、給水が開始される。
図3に示すように、給水電磁弁33およびオーバーフロー電磁弁53がオフからオンに切り換わる。排出電磁弁44はオンのままとされる。エア電磁弁62はオフのままとされる。これにより、排出電磁弁44、給水電磁弁33およびオーバーフロー電磁弁53が開状態とされ、エア電磁弁62が閉状態とされる。
【0049】
図4は、時刻T1〜T2における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。
図4および後述する
図5〜10中の各経路に示す矢印は、各経路を流れる流体(水、水蒸気または空気)の流れを示している。上述したように各電磁弁の開閉が設定された状態で、給水ポンプ32を起動することにより、給水が開始され、貯水槽20からチャンバ10へ水が供給される。
【0050】
次に、チャンバ10への給水を開始する時刻T1から予め定められた時間が経過した後の時刻T2において、給水電磁弁33がオンからオフに切り換わる。これにより、排出電磁弁44およびオーバーフロー電磁弁53が開状態とされ、給水電磁弁33およびエア電磁弁62が閉状態とされる。
【0051】
図5は、時刻T2〜T3における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。滅菌処理を連続して行なう場合、前回の滅菌処理完了後の動作によってヒータ12が加熱された状態で、チャンバ10への給水が開始される。チャンバ10内に供給された水が高温のヒータ12に接触すると、直ちに蒸発して、チャンバ10内の圧力が急上昇する。そのため、本実施の形態では、給水を開始する時刻T1から短時間経過後の時刻T2において、給水ポンプ32を一旦停止し、給水電磁弁33を閉状態にする。
【0052】
給水ポンプ32を一旦停止する時刻T2は、給水ポンプ32を起動する時刻T1の後の、給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりもチャンバ10内の気圧が高くなるよりも前の時刻として、設定されている。
【0053】
給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりもチャンバ10内の気圧が高くなるより前に、給水ポンプ32とチャンバ10との間の給水管31の経路上に設けられた給水電磁弁33を閉状態にする。これにより、チャンバ10から給水ポンプ32への水の逆流が防止されるので、水の逆流に伴う給水ポンプ32の故障などの不具合の発生が防止されている。
【0054】
チャンバ10への給水開始時に、排出電磁弁44およびオーバーフロー電磁弁53が開放されており、排出経路40およびオーバーフロー経路50を介してチャンバ10と貯水槽20とが連通している。チャンバ10内に供給された水がチャンバ10内で蒸発して発生した水蒸気は、排出経路40およびオーバーフロー経路50を経由して、チャンバ10から排出される。そのため、チャンバ10内の気圧は、次第に低下する。
【0055】
チャンバ10内のヒータ12は、チャンバ10に供給された水と接触して水に伝熱することにより、冷却される。
【0056】
時刻T2の後、十分な時間が経過して、給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりも大きくなったチャンバ10内の気圧が、給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりも小さくなるまで降下した後の時刻T3において、給水電磁弁33がオフからオンに切り換わる。これにより、排出電磁弁44、給水電磁弁33およびオーバーフロー電磁弁53が開状態とされ、エア電磁弁62が閉状態とされる。
【0057】
給水ポンプ32を再起動する時刻T3は、給水ポンプ32を一旦停止する時刻T2の後の、給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりもチャンバ10内の気圧が小さくなった後の時刻として、設定されている。チャンバ10への給水開始時の給水ポンプ32の起動時間を示す時刻T1〜T2の時間よりも、給水ポンプ32が一旦停止した後の給水ポンプ32の停止時間を示す時刻T2〜T3の時間の方が、長くなっている。
【0058】
図6は、時刻T3〜T4における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。時刻T3において、給水電磁弁33が開状態とされ、給水ポンプ32が再起動することにより、チャンバ10への給水が再開され、貯水槽20からチャンバ10へ水Wが供給される。チャンバ10内の空気は、排出経路40およびオーバーフロー経路50を経由して、チャンバ10から排出される。そのため、チャンバ10の内圧が上昇してチャンバ10への給水が妨げられることが回避されている。
【0059】
チャンバ10内の水面Wsがオーバーフロー管51の一端56の位置よりも低いので、オーバーフロー管51の一端56は空気中に存在している。そのため、オーバーフロー管51を経由して空気が流れるが、オーバーフロー管51を経由して水Wが流れることはない。
【0060】
次に、チャンバ10への給水を再開する時刻T3から予め定められた時間が経過した後の時刻T4において、排出電磁弁44がオンからオフに切り換わり、エア電磁弁62がオフからオンに切り換わる。これにより、排出電磁弁44が閉状態とされ、給水電磁弁33、エア電磁弁62およびオーバーフロー電磁弁53が開状態とされる。
【0061】
図7は、時刻T4〜T5における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。上述したように各電磁弁の開閉が設定された状態で、エアポンプ63を起動することにより、チャンバ10内への空気の供給が開始され、チャンバ10内が加圧される。給水ポンプ32は運転を継続し、貯水槽20からチャンバ10への給水が継続される。排出電磁弁44が閉じられたため、チャンバ10内の空気は、オーバーフロー経路50を経由して、チャンバ10から排出される。
【0062】
チャンバ10内の水面Wsは、
図6よりも上昇しているがオーバーフロー管51の一端56の位置よりも未だ低いので、オーバーフロー管51の一端56は空気中に存在している。そのため、オーバーフロー管51を経由して空気が流れるが、オーバーフロー管51を経由して水Wが流れることはない。
【0063】
チャンバ10への給水をさらに継続して、チャンバ10内の水位がオーバーフロー管51の一端56を超えると、チャンバ10内の水Wがオーバーフロー管51へ流入する。オーバーフロー管51の一端56を超えた過剰な量の水Wがチャンバ10から排出され、オーバーフロー管51を流れる水流が発生する。オーバーフロー管51を経由してオーバーフロー管51を流れる水の流動は、オーバーフローセンサ54によって検出される。
【0064】
図3に示すように、時刻T5においてオーバーフローセンサ54がオフからオンに切り換わっている。チャンバ10内の水面Wsは、時刻T5の直前に、オーバーフロー管51の一端56を超えたと推定される。
図8は、時刻T5〜T6における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。チャンバ10内の水Wがオーバーフロー管51に流入するため、オーバーフロー管51を経由して水Wと空気との混合流が流れる。チャンバ10への給水時に、エアポンプ63によりチャンバ10へ空気が供給されているので、チャンバ10からオーバーフロー管51への水の流出が促進されている。
【0065】
オーバーフローセンサ54がオンに切り換わる時刻T5から所定時間経過後の時刻T6において、給水ポンプ32が停止し、給水電磁弁33がオンからオフに切り換わる。これにより、排出電磁弁44および給水電磁弁33が閉状態とされ、エア電磁弁62およびオーバーフロー電磁弁53が開状態とされる。
【0066】
図9は、時刻T6〜T7における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。上述したように各電磁弁の開閉が設定された状態で、エアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給が継続される。オーバーフロー管51を経由して水Wと空気との混合流が流れている間は、オーバーフローセンサ54がオン状態を継続する。チャンバ10から水Wが流出することにより、チャンバ10内の水面Wsは次第に低下する。
【0067】
チャンバ10内の水面Wsが低下してオーバーフロー管51の一端56の位置にまで到達すると、チャンバ10からの水Wの流出が停止する。オーバーフロー管51を流れる水流が停止すると、オーバーフロー管51を経由してオーバーフロー管51を流れる水の流動を検出するオーバーフローセンサ54が、オンからオフに切り換わる。
図3に示すように、時刻T7においてオーバーフローセンサ54がオンからオフに切り換わっている。チャンバ10内の水面Wsは、時刻T7の直前に、オーバーフロー管51の一端56にまで低下したと推定される。
【0068】
図10は、時刻T8における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す模式図である。オーバーフローセンサ54がオフに切り換わる時刻T7から所定時間経過後の時刻T8において、エア電磁弁62およびオーバーフロー電磁弁53がオンからオフに切り換わり、エアポンプ63が停止する。これにより、チャンバ10への空気の供給が停止する。チャンバ10内の水面Wsは、オーバーフロー管51の一端56の位置に維持されている。このようにして、給水工程が完了し、加熱工程に移る。
【0069】
チャンバ10への給水中にオーバーフローセンサ54がオフからオンに切り換わり、チャンバ10への給水を停止した後にオーバーフローセンサ54がオンからオフに切り換わることで、チャンバ10内の水面Wsがオーバーフロー管51の一端56の位置にあることが検出されている。オーバーフローセンサ54は、被滅菌物100の滅菌処理のために必要な量の水がチャンバ10に供給されたことを検出するために、用いられている。
【0070】
時刻T8において、排出電磁弁44がオフからオンに切り換わる。これにより、排出電磁弁44が開状態とされ、給水電磁弁33、エア電磁弁62およびオーバーフロー電磁弁53が閉状態とされる。チャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とは、排出経路40を介して互いに連通し、これにより、チャンバ10の内部空間が大気圧に調整される。
【0071】
実施の形態の蒸気滅菌器1の構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。なお、実施の形態の構成に参照番号を付すが、これは一例である。
【0072】
本実施の形態の蒸気滅菌器1は、
図1に示すように、被滅菌物100を収納可能なチャンバ10と、チャンバ10内に供給された水を加熱するヒータ12とを備え、ヒータ12の加熱により発生した水蒸気で被滅菌物100を滅菌する装置である。蒸気滅菌器1は、
図2に示すように、チャンバ10へ水を移送する給水ポンプ32と、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部80とを備えている。チャンバ10へ水を供給するとき、制御部80は、
図3に示すように、時刻T1において給水ポンプ32を起動し、その後の時刻T2において給水ポンプ32を一旦停止し、その後の時刻T3において給水ポンプ32を再起動する。
【0073】
滅菌処理を連続して行なう場合、前回の滅菌処理完了後の動作によって、チャンバ10内のヒータ12が加熱された状態である。給水ポンプを起動して、時刻T1〜T2の間チャンバ10内に水を供給することにより、水が高温のヒータ12に接触する。ヒータ12から水への熱伝達によって、ヒータ12を冷却することができる。
【0074】
ヒータ12に接触した水は、チャンバ10内で蒸発する。これによりチャンバ10の内圧が上昇する。本実施の形態の蒸気滅菌器1では、チャンバ10へ給水を開始する時刻T1から短時間後の時刻T2において、給水ポンプ32を停止する。これにより、チャンバ10と給水ポンプ32との間の経路上に設けられた給水電磁弁33を閉状態にすることが可能になる。給水電磁弁33を閉じることで、チャンバ10から給水ポンプ32への水の逆流を防止することができる。
【0075】
また
図1に示すように、蒸気滅菌器1は、排出電磁弁44と、オーバーフロー電磁弁53とをさらに備えている。排出電磁弁44は、チャンバ10と貯水槽20とを連通する排出経路40に設けられており、排出経路40を開閉可能に構成されている。オーバーフロー電磁弁53は、チャンバ10と貯水槽20とを連通するオーバーフロー経路50に設けられており、オーバーフロー経路50を開閉可能に構成されている。
図4,5に示すように、チャンバ10へ水を供給するとき、制御部80は、排出電磁弁44とオーバーフロー電磁弁53とを開放している。実施の形態の排出電磁弁44とオーバーフロー電磁弁53とは、通気部に相当する。
【0076】
時刻T1〜T3の間、排出電磁弁44とオーバーフロー電磁弁53とが開放されていることにより、チャンバ10に供給された水がチャンバ10内で蒸発した蒸気を、チャンバ10から外部に排出可能である。蒸気の発生によって上昇したチャンバ10内の気圧を速やかに降下できるので、チャンバ10への給水を一旦停止する時刻T2からチャンバ10への給水を再開する時刻T3までの時間を短縮できる。したがって、滅菌処理に要する時間を短縮することができる。
【0077】
なお、排出電磁弁44およびオーバーフロー電磁弁53に加えて、開閉蓋11を自動で開閉可能として、チャンバ10へ水を供給するとき、開閉蓋11を開放するように構成してもよい。この場合、開閉蓋11もまた、通気部に相当する。
【0078】
チャンバ10へ水を供給するとき、制御部80は、給水ポンプ32を起動した後チャンバ10内の気圧が給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりも大きくなる前に、給水ポンプ32を一旦停止する。さらに制御部80は、給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりも大きくなったチャンバ10内の気圧が、給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりも小さくなるまで降下した後に、給水ポンプ32を再起動する。チャンバ10内の気圧は、圧力計74により計測されるようにしてもよい。
【0079】
チャンバ10内の気圧が、給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりも大きいと、チャンバ10から給水ポンプ32への水の逆流が発生する。チャンバ10内の気圧が給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりも大きくなる前に、給水ポンプ32を一旦停止することで、チャンバ10から給水ポンプ32への水の逆流を防止することができる。チャンバ10内の気圧が、給水ポンプ32から吐出される水の圧力よりも小さくなるまで降下した後に、給水ポンプ32を再起動することで、給水ポンプ32を再起動するときのチャンバ10から給水ポンプ32への水の逆流を防止することができる。
【0080】
また
図1に示すように、蒸気滅菌器1は、オーバーフローセンサ54を備えている。オーバーフローセンサ54は、被滅菌物100の滅菌処理のために必要な量の水がチャンバ10に供給されたことを検出する。オーバーフローセンサ54の検出に基づいて給水ポンプ32を停止することで、滅菌処理のために必要な量の水をチャンバ10内に確実に供給することができる。
【0081】
オーバーフローセンサ54は、チャンバ10外に配置されている。オーバーフローセンサ54がチャンバ10外に配置されていることにより、チャンバ10に供給された水に含まれる不純物が、水が蒸発したときにオーバーフローセンサ54に付着することがない。したがって、オーバーフローセンサ54への不純物の付着によるオーバーフローセンサ54の感度低下を、抑制することができる。
【0082】
また
図1に示すように、蒸気滅菌器1は、チャンバ10への給水時にチャンバ10から過剰な水を排出するオーバーフロー管51を備えている。オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51を流れる水の流動を検出する。オーバーフロー管51を備えることにより、
図10に示すように、給水完了後のチャンバ10内の水面Wsを、オーバーフロー管51の一端56の位置に一定に保つことができる。これにより、チャンバ10内に供給される水量の均一性を向上することができる。オーバーフローセンサ54がチャンバ10内の貯水量を検出するためのセンサとして機能することにより、チャンバ10内の貯水量を検出するためのセンサを別途設ける必要がなく、蒸気滅菌器1の構成を簡略化することができる。
【0083】
また
図3に示すように、チャンバ10への給水開始時の給水ポンプの起動時間を示す時刻T1〜T2までの時間よりも、給水ポンプ32を一旦停止した後の給水ポンプ32の停止時間を示す時刻T2〜T3までの時間の方が長い。このように給水ポンプ32の起動停止時間を規定することにより、時刻T1〜T2の間にチャンバ10に供給された水への熱伝達によってヒータ12が冷却される時間を、十分に確保することができる。したがって、ヒータ12を確実に冷却することができる。
【0084】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
圧力管75は、継手72に接続された一端と、安全弁76に接続された他端とを有している。安全弁76は、貯水槽20に設けられている。チャンバ10内の気体の圧力が過剰に上昇すると、安全弁76が開き、チャンバ10内の気体が圧力管71、継手72、圧力管
はまた、入力部81を有している。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、加熱温度、滅菌時間および乾燥時間などの設定値を、入力部81から制御部80に入力する。制御部80は、所定時間を計測するタイマ82を有している。タイマ82は、被滅菌物100の滅菌時間および乾燥時間を制御するために使用され、また、チャンバ10内への給水のタイミングの制御のために使用される。
、16 温度センサ、20 貯水槽、21 液相部、22 気相部、26 水位センサ、30 給水経路、31 給水管、32 給水ポンプ、33 給水電磁弁、40 排出経路、41 排水管、42 排気管、43 共通管、44 排出電磁弁、45 コンデンサ部、46 屈曲部、50 オーバーフロー経路、51 オーバーフロー管、52 立上り部、53 オーバーフロー電磁弁、54 オーバーフローセンサ、55 他端、56 一端、60 送風経路、61 送風管、62 エア電磁弁、63 エアポンプ、70 圧力経路、71,73,75 圧力管、72 継手、74 圧力計、76 安全弁、80 制御部、81 入力部、82 タイマ、100 被滅菌物、W 水、Ws 水面。