【解決手段】ケーブルC1を引き込むためのケーブル引込口170が後方壁17に形成されたボックス状のケース1を備え、後方壁17は、壁部171と、壁部171に対して互いに隣接する方向Yにスライド移動可能な壁部172と、を含む。ケーブル引込口170は、壁部171および壁部172に形成された一対の切欠き部170A,170Bからなる。壁部172は、第1位置と、第1位置よりも壁部171から離れた第2位置と、の間でスライド移動可能である。壁部171,172には、壁部172が上記第1位置にあるときに閉じた状態を維持し、壁部172が上記第2位置にあるときに開いた状態をとり得る開閉機構18が設けられており、壁部172が上記第1位置にあるときの当該壁部172のスライド移動を阻止するロック機構19を備える。
溶接ワイヤを所定の送給方向に送り出すワイヤ送給機構と、上記ワイヤ送給機構を収容し、ケーブルを引き込むためのケーブル引込口が周壁に形成されたボックス状のケースと、を備えたワイヤ送給装置であって、
上記周壁は、第1壁部と、当該第1壁部に隣接し、かつ上記第1壁部に対して互いに隣接する方向にスライド移動可能に配置された第2壁部と、を含み、
上記ケーブル引込口は、上記第1壁部および上記第2壁部にそれぞれ形成され、互いに対向する一対の切欠き部からなり、
上記第2壁部は、第1位置と、当該第1位置よりも上記第1壁部から離れた第2位置と、の間でスライド移動可能であり、
上記第1壁部および上記第2壁部には、上記第2壁部が上記第1位置にあるときに上記第2壁部が閉じた状態を維持し、上記第2壁部が上記第2位置にあるときに上記第2壁部が開いた状態をとり得る開閉機構が設けられており、
上記第2壁部が上記第1位置にあるときの当該第2壁部のスライド移動を阻止するロック機構を備える、ワイヤ送給装置。
上記第1壁部における上記切欠き部の周縁および上記第2壁部における上記切欠き部の周縁には、それぞれ、ゴム弾性を有する弾性部材が取り付けられている、請求項1に記載のワイヤ送給装置。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式ガスシールドアーク溶接において、溶接ロボットや走行台車を用いた自動溶接や、作業者が操作する半自動溶接の手法が採用されている。これら自動溶接等の溶接作業時においては、ワイヤ送給装置により溶接トーチに向けて溶接ワイヤが送り出され、また、溶接トーチには電力およびシールドガスが供給される。
【0003】
半自動溶接において、溶接作業を行う現場によっては作業領域が比較的広い場合がある。大型構造物の内部で作業する場合、作業領域が比較的広い。このような溶接作業現場では、作業場床面は窪みやケーブル類が多く、ワイヤ送給装置に車輪を付けて運搬することは適さない。このため、溶接箇所に応じて、溶接トーチとワイヤ送給装置を作業者が手で持ち運ぶ必要がある。作業者が持ち運ぶのに適した可搬式のワイヤ送給装置が、たとえば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載されたワイヤ送給装置は、ボックス状のケースと、当該ケースに収容されたワイヤ送給機構と、を備える。ケースは、たとえば鋼板(スチール製)によって構成されており、直方体形状とされている。ワイヤ送給機構は、ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤを、ケースの長手水平方向に沿う送給方向に送り出す。ケースの天井壁には、手で持ち運ぶための把手が設けられている。
【0005】
ワイヤ送給装置には、溶接電源からの電力供給やシールドガスを供給するためのケーブルが接続される。当該ケーブルは、ケースの周壁に形成された開口(ケーブル引込口)を通じてケースの内部に引き込まれている。当該ケーブルは、たとえば電力ケーブルやガスホースが保護チューブに内挿された構成とされている。ケーブルをワイヤ送給装置に接続する際、たとえばケースのメンテンナンス用の扉を開き、ケース内部において各ケーブルの先端のコネクタが適所に接続される。また、ケーブルの保護チューブには、たとえばリング部材が外嵌されている。リング部材は、ケーブル引込口の周縁を覆っており、ねじ止めによって着脱可能に周壁に固定される。
【0006】
上記のように溶接作業現場においてワイヤ送給装置を持ち運ぶ場合、必要に応じてケースに接続された上記ケーブルを取り外す。しかしながら、ケースの内部において各ケーブルのコネクタを分離するとともに、ケースの周壁に固定されたリング部材について、ねじを緩めて取り外す必要がある。したがって、ワイヤ送給装置に対するケーブル着脱の作業が煩雑であり、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、接続されるケーブルの着脱時の作業性を向上させるのに適したワイヤ送給装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0010】
本発明によって提供されるワイヤ送給装置は、溶接ワイヤを所定の送給方向に送り出すワイヤ送給機構と、上記ワイヤ送給機構を収容し、ケーブルを引き込むためのケーブル引込口が周壁に形成されたボックス状のケースと、を備えたワイヤ送給装置であって、上記周壁は、第1壁部と、当該第1壁部に隣接し、かつ上記第1壁部に対して互いに隣接する方向にスライド移動可能に配置された第2壁部と、を含み、上記ケーブル引込口は、上記第1壁部および上記第2壁部にそれぞれ形成され、互いに対向する一対の切欠き部からなり、上記第2壁部は、第1位置と、当該第1位置よりも上記第1壁部から離れた第2位置と、の間でスライド移動可能であり、上記第1壁部および上記第2壁部には、上記第2壁部が上記第1位置にあるときに上記第2壁部が閉じた状態を維持し、上記第2壁部が上記第2位置にあるときに上記第2壁部が開いた状態をとり得る開閉機構が設けられており、上記第2壁部が上記第1位置にあるときの当該第2壁部のスライド移動を阻止するロック機構を備える。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記第1壁部における上記切欠き部の周縁および上記第2壁部における上記切欠き部の周縁には、それぞれ、ゴム弾性を有する弾性部材が取り付けられている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記周壁は、上記第2壁部に対して上記第1壁部と反対側に配置され、かつ上記第2壁部の一部と重なる第3壁部を含み、上記ロック機構は、上記第3壁部に対する上記第2壁部の移動を阻止するねじ部材を含む。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記第2壁部には、上記第3壁部寄りの端縁から上記隣接する方向に延びるスリットが形成されており、上記ねじ部材は上記スリットに挿通する。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記開閉機構は、上記第1壁部および上記第2壁部のうちの一方に形成された貫通孔と、上記第1壁部および上記第2壁部のうちの他方に形成された係止片と、を含み、上記係止片は、上記第2壁部が上記第1位置にあるときに上記貫通孔を通過不可能であり、かつ上記第2壁部が上記第2位置にあるときに上記貫通孔を通過可能である。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記ケーブルは、電力ケーブルが保護チューブに内挿された構成であり、上記ケースの内部には、上記電力ケーブルを保持するクランプ部が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るワイヤ送給装置において、第1壁部および第2壁部には、開閉機構が設けられている。開閉機構は、第2壁部が第1位置にあるときに当該第2壁部が閉じた状態を維持する。その一方、開閉機構は、第2壁部が第2位置にあるときに当該第2壁部が開いた状態をとり得る。このような構成によれば、第2壁部を開くことで、ワイヤ送給装置に対するケーブルの着脱を容易に行うことができる。また、ワイヤ送給装置は、ロック機構を具備する。ロック機構は、第2壁部が第1位置にあるときの当該第2壁部のスライド移動を阻止する。したがって、開閉可能な第2壁部が不用意に開くことは防止される。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0020】
図1〜
図6は、本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示している。本実施形態のワイヤ送給装置A1は、溶接ワイヤを図示しない溶接トーチに送り出すものである。ワイヤ送給装置A1は、ケース1、前方パネル3、後方パネル4およびワイヤ送給機構(図示略)を備えている。
【0021】
ケース1は、概略直方体のボックス状とされている。ケース1の長手水平方向が、溶接ワイヤの送給方向Xに平行である。各図において、溶接ワイヤのX送給方向の前方(以下、適宜「送給方向前方X1」という)と後方(以下、適宜「送給方向後方X2」という)とを、適宜区別して表す。なお、図示したワイヤ送給装置A1の説明において、通常使用する姿勢を基準として上下方向を規定する。
【0022】
図1〜
図4に示すように、ケース1は、底壁11、天井壁12、扉13,14、前方壁15および後方壁17を備える。ケース1はまた、たとえば4隅に配置された支柱や適所に設けられた梁部(いずれも図示せず)を備えた骨格構造とされている。ケース1を構成するこれらの要素は、金属材料からなり、たとえば鋼板製である。
【0023】
底壁11は、ケース1において最も下位に位置する部分である。底壁11は、送給方向Xを長手方向とする長矩形状である。底壁11の幅方向Yは、送給方向Xに対して直角な水平方向である。
【0024】
天井壁12の上面中央には、把手121が設けられている。天井壁12の周縁付近には、一対ずつのヒンジ部122,123が取り付けられている。一対のヒンジ部122は、幅方向Yの一方の端部(以下、適宜「幅方向一方Y1」という)に位置し、送給方向Xに離間して配置されている。一対のヒンジ部123は、幅方向Yの他方の端部(以下、適宜「幅方向他方Y2」という)に位置し、送給方向Xに離間して配置されている。
【0025】
扉13は、ケース1の幅方向一方Y1の端部に配置されている。扉13の上部131は、一対のヒンジ部122に連結されている。扉13は、上部131において送給方向Xに沿う軸線周りに回動可能とされており、開閉可能である。扉13の下端付近には、係止部132が設けられている。係止部132は、外部からの操作によって、閉じた扉13について開き動作を阻止する状態から許容する状態へ切り替え可能である。
【0026】
扉14は、底壁11の幅方向他方Y2の端部に配置されている。扉14の上部141は、一対のヒンジ部123に連結されている。扉14は、上部141において送給方向Xに沿う軸線周りに回動可能とされており、開閉可能である。扉14の下端付近には、係止部142が設けられている。係止部142は、外部からの操作によって、閉じた扉14について開き動作を阻止する状態から許容する状態へ切り替え可能である。
【0027】
図3に示すように、前方壁15は、底壁11の送給方向前方X1側に配置されている。前方壁15には、トーチ接続部161およびガード部162が設けられている。
【0028】
トーチ接続部161は、図示しない溶接トーチを接続するための部位である。トーチ接続部161は前方壁15より送給方向前方X1に突出するコネクタを含んで構成され、当該コネクタに上記溶接トーチのケーブルの端部が接続される。ガード部162は、前方壁15から送給方向前方X1に突出する。
図1に示すように、ガード部162は、トーチ接続部161よりも送給方向前方X1側に突出する。本実施形態において、ガード部162は、底壁11の幅方向Yに離間して対をなして設けられている。トーチ接続部161は、底壁11の幅方向Yにおいて一対のガード部162の間に位置する。各ガード部162は、コの字状の棒材によって構成されており、当該線材の両端が前方壁15に取付けられることで環状をなす。
【0029】
図2に示すように、後方壁17は、底壁11の送給方向後方X2側に配置されている。
図2、
図4に示すように、本実施形態において、後方壁17は、第1壁部171、第2壁部172および第3壁部173を含む。また、後方壁17には、ケーブル引込口170が形成されている。ケース1の内部には、このケーブル引込口170を介してケーブルC1が引き込まれている。
【0030】
第1壁部171、第2壁部172および第3壁部173は、幅方向Yにおいてこの順に並んでいる。第1壁部171は幅方向一方Y1側に位置する。第3壁部173は、第2壁部172に対して第1壁部171と反対側に配置され、幅方向他方Y2側に位置する。
図4、
図7、
図8に示すように、第3壁部173は、第2壁部172の一部(幅方向一方Y1側の部位)と重なっている。第1壁部171および第3壁部173は、たとえばボルト締結などの適宜手段により後方パネル4の適所に固定されている。
【0031】
第2壁部172は、第1壁部171に隣接している。第2壁部172は、第1壁部171に対して互いに隣接する方向(本実施形態では幅方向Y)にスライド移動可能に配置される。
【0032】
図4、
図7に示すように、第2壁部172には、スリット172aが形成されている。スリット172aは、第2壁部172において第3壁部173寄りの端縁から幅方向Y(第1壁部171と第2壁部172とが隣接する方向)に延びている。このスリット172aには、ねじ部材191が挿通させられる。ねじ部材191は、たとえば蝶ねじであり、第3壁部173に形成されたねじ孔にねじ軸部が螺合している。また、第2壁部172には、幅方向一方Y1側の端縁が折り曲げ形成された屈曲部172bを有する。
【0033】
図7に示すように、ケーブル引込口170は、互いに対向する一対の切欠き部170A,170Bからなる。切欠き部170Aは、第1壁部171に形成されている。切欠き部170Bは、第2壁部172に形成されている。切欠き部170A,170Bは、それぞれ略半円形とされており、これら切欠き部170A,170Bを合わせて略円形状をなす。
【0034】
図4、
図7に示すように、切欠き部170A,170Bそれぞれの周縁には、弾性部材175,176が取り付けられている。各弾性部材175,176は、ゴム弾性を有しており、たとえば合成ゴムからなる。各弾性部材175,176の内周縁は、円弧状をなす。
【0035】
第1壁部171および第2壁部172には、開閉機構18が設けられている。開閉機構18は、第1壁部171および第2壁部172のうち、一方に形成された貫通孔と他方に形成された係止片とを含む。本実施形態では、
図4、
図8に示すように、第1壁部171において矩形状の一対の貫通孔181が形成されており、第2壁部172に一対の係止片182が形成されている。係止片182は、適宜屈曲している。係止片182は、第1壁部171に対して第2壁部172が所定の位置にあるとき、貫通孔181を通過することが可能である。
【0036】
図4、
図8に示した状態において、係止片182は貫通孔181を通過不可能である。このとき、第2壁部172は、スライド移動する範囲において最も幅方向他方Y2寄りに位置する。このとき、第2壁部172は第1位置にあり、閉じた状態が維持される。
【0037】
ねじ部材191を緩めた状態では、
図9に示すように、第2壁部172を幅方向一方Y1側にスライド移動させることが可能である。ここで、第2壁部172は、後述する後方パネル4の後方底部41や中間部45、およびねじ部材191によってガイドされながら、幅方向Yに沿ってスライド移動可能である。
図9に示した状態においては、スリット172aの奥端にねじ部材191が当接しており、第2壁部172の幅方向一方Y1側への移動が規制される。このとき、第2壁部172は、
図8に示した第1位置よりも第1壁部171から離れた位置(第2位置)にある。
図8、
図9から理解されるように、第2壁部172は、
図8に示した第1位置と、
図9に示した第2位置との間でスライド移動可能である。なお、第2壁部172のスライド移動については、屈曲部172bを摘むことで容易に操作することができる。
【0038】
本実施形態において、ワイヤ送給装置A1は、ロック機構19を具備する。ロック機構19は、第2壁部172が第1位置にあるとき(
図7、
図8に示した状態)の当該第2壁部172のスライド移動を阻止するものである。本実施形態において、ロック機構19は、ねじ部材191を含んで構成される。
図7、
図8に示した状態でねじ部材191を締め付けることで、第2壁部172は、ねじ部材191および第3壁部173により挟圧されて、第3壁部173に対する移動が阻止される。
【0039】
第2壁部172が
図9に示した第2位置にあるとき、送給方向X視において係止片182は貫通孔181に重なっている。このとき、係止片182は貫通孔181を通過可能である。
【0040】
図9に示した状態から、第2壁部172の屈曲部172bを幅方向一方Y1側に倒すと、第2壁部172が回動して
図10に示す状態となる。第2壁部172の幅方向他方Y2側の部分は、第1壁部171から送給方向後方X2側に離れている。このとき、第2壁部172は開いた状態となる。
【0041】
図10に示した状態から、第2壁部172を幅方向他方Y2側にスライドさせる。そうすると、
図11に示す状態となる。このとき、第2壁部172のスリット172aは、ねじ部材191から外れた位置にある。さらに第2壁部172を送給方向後方X2に引くことで、仮想線で示すように、第2壁部172を、第1壁部171および第3壁部173から分離することができる。
【0042】
第2壁部172を閉じた状態(
図7、
図8に示した第1位置をとる状態)に戻す場合、
図7〜
図11を参照して上述した手順と逆の操作を行う。このようにして、第2壁部172は、開閉することが可能である。
【0043】
図1〜
図3、
図5に示すように、前方パネル3は、ケース1の送給方向前方X1側に取り付けられている。前方パネル3は、樹脂材料からなる。前方パネル3は、矩形環状とされており、ケース1の送給方向前方X1端部を囲っている。前方パネル3は、前方底部31と、前方第1側部32と、前方第1側部32と、上部34と、中間部35と、を含む。
【0044】
図1〜
図5に示すように、後方パネル4は、ケース1の送給方向後方X2側に取り付けられている。後方パネル4は、樹脂材料からなる。後方パネル4は、矩形環状とされており、ケース1の送給方向後方X2端部を囲っている。後方パネル4は、後方底部41と、後方第1側部42と、後方第2側部43と、上部44と、中間部45と、を含む。
【0045】
後方パネル4は、上記前方パネル3と同一の構成とされている。前方パネル3における前方底部31、前方第1側部32、前方第1側部32、上部34、および中間部35は、後方パネル4における後方底部41、後方第2側部43、後方第1側部42、上部44、および中間部45にそれぞれ対応する。
【0046】
前方パネル3および後方パネル4をケース1に取り付ける際、送給方向Xに沿ってケース1に近接させて、当該ケース1の送給方向前方X1端部および送給方向後方X2端部に取り付ける。前方パネル3(後方パネル4)のケース1への固定は、たとえばボルト締結などの適宜手段により行う。
【0047】
図2、
図6に示すように、本実施形態では、ケース1内に引き込まれるケーブルC1は、電力ケーブル51、制御ケーブル52およびガスホース53が保護チューブ50に内挿された構成とされている。保護チューブ50は、フレキシブルチューブである。保護チューブ50は、ケーブル引込口170に挿通されているが、ケース1の内部において端部が開放している。電力ケーブル51、制御ケーブル52およびガスホース53それぞれの端部は、ケース1の内部において互いに分離している。また、ケース1の内部において、電力ケーブル51、制御ケーブル52およびガスホース53それぞれの先端のコネクタ511,521,531が、適所に接続される。
【0048】
図6に示した電力ケーブル51は、ケース1の内部において、保持部材164を介してクランプ部材163によって保持される。保持部材164は、電力ケーブル51に外嵌されて当該電力ケーブル51に固定されている。クランプ部材163は、保持部材164を保持しており、締付ねじ165を締め付けることによって、保持部材164がケース1内部の適所に固定される。上記構成のクランプ部材163、保持部材164および締付ねじ165は、本発明でいうクランプ部を構成する。なお、上記の制御ケーブル52やガスホース53については、ワイヤ送給装置A1を含めた溶接システムの仕様に応じてワイヤ送給装置A1を経由しない場合がある。このような場合、ケーブルC1(保護チューブ50)には、制御ケーブル52やガスホース53が内挿されない。
【0049】
図示説明は省略するが、上記ワイヤ送給機構は、ケース1内に配置されている。ワイヤ送給機構は、たとえばワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤを、ケース1の長手水平方向に沿う送給方向Xに送り出す。上記ワイヤ送給機構は、たとえば溶接ワイヤを挟む送給ローラおよび加圧ローラと、送給ローラを回転駆動させる送給モータとを備えて構成される。上記ワイヤリールは、たとえばケース1内に配置される。
【0050】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0051】
本実施形態において、ケース1の後方壁17(周壁)は、第1壁部171および第2壁部172を含む。第2壁部172は、第1壁部171に隣接して配置され、第1壁部171に対して幅方向Y(互いに隣接する方向)にスライド移動可能である。第2壁部172は、第1位置(
図4、
図8参照)と、当該第1位置よりも第1壁部171から離れた第2位置(
図9参照)と、の間でスライド移動可能である。第1壁部171および第2壁部172には、ケーブル引込口170が形成されている。ケーブル引込口170は、第1壁部171および第2壁部172にそれぞれ形成され、互いに対向する一対の切欠き部170A,170Bからなる。
【0052】
第1壁部171および第2壁部172には、開閉機構18が設けられている。開閉機構18は、第2壁部172が第1位置にあるときに第2壁部172が閉じた状態を維持する。その一方、開閉機構18は、第2壁部172が第2位置にあるときに、開いた状態をとり得る(
図10参照)。そして、第2壁部172は、
図10に示した状態から
図11のように動かすことにより、容易に分離される。このような構成によれば、第2壁部172を開くことで、ワイヤ送給装置A1に対するケーブルC1の着脱を容易に行うことができる。また、ワイヤ送給装置A1は、ロック機構19を具備する。ロック機構19は、第2壁部172が第1位置にあるとき(
図7、
図8に示した状態)の当該第2壁部172のスライド移動を阻止する。したがって、開閉可能な第2壁部172が不用意に開くことは防止される。
【0053】
切欠き部170A,170Bそれぞれの周縁には、ゴム弾性を有する弾性部材175,176が取り付けられている。このような構成によれば、ケーブルC1が引き込まれるケーブル引込口170の周辺の防塵性を高めることができる。
【0054】
本実施形態において、後方壁17(周壁)は、第3壁部173を含む。第3壁部173は、第2壁部172に対して第1壁部171と反対側に配置されており、第2壁部172の一部と重なる。また、ロック機構19は、第3壁部173に対する第2壁部172の移動を阻止するねじ部材191を含む。このような構成によれば、ロック機構19の操作性に優れており、ロック機構19を適切に機能させることができる。
【0055】
第2壁部172には、第3壁部173寄りの端縁から幅方向Y(第1壁部171と第2壁部172とが隣接する方向)に延びるスリット172aが形成されている。ねじ部材191は、当該スリット172aに挿通している。このような構成によれば、第2壁部172のスライド移動時にねじ部材191がガイドとして機能する。また、
図9を参照して上述したように、第2壁部172が上記第2位置にあるとき、ねじ部材191により第2壁部172の幅方向一方Y1側への移動を規制することが可能である。
【0056】
開閉機構は、第1壁部171に形成された貫通孔181と、第2壁部172に形成された係止片182と、を含む。係止片182は、第2壁部172が上記第1位置にあるときに貫通孔181を通過不可能である。また、係止片182は、第2壁部172が上記第2位置にあるときに貫通孔181を通過可能である。このような構成によれば、第2壁部172を開閉切り換えするための開閉機構18について、比較的簡単な構造とし、かつ適切に機能させることができる。なお、本実施形態と異なり、第2壁部172に貫通孔を形成し、第1壁部171において当該貫通孔に対応する係止片を形成する構成としてもよい。
【0057】
ケーブル引込口170を介してケース1内に引き込まれるケーブルC1は、電力ケーブル51が保護チューブ50に内挿された構成とされている。ケース1の内部には、電力ケーブル51を保持するためのクランプ部(クランプ部材163、保持部材164および締付ねじ165)が設けられている。このような構成によれば、ケーブルC1に引き抜き力が作用しても、当該引き抜き力を、電力ケーブル51および上記クランプ部を介してワイヤ送給装置A1によって受けることができる。これにより、制御ケーブル52やガスホース53の有無によってケーブルC1の外径寸法が変化しても、ケーブルC1に作用する引き抜き力を、上記クランプ部を介してワイヤ送給装置A1によって適切に受けることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。