(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-168698(P2020-168698A)
(43)【公開日】2020年10月15日
(54)【発明の名称】タップ工具及びタップ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23G 5/06 20060101AFI20200918BHJP
【FI】
B23G5/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-72308(P2019-72308)
(22)【出願日】2019年4月4日
(11)【特許番号】特許第6742468号(P6742468)
(45)【特許公報発行日】2020年8月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 淳一
(57)【要約】
【課題】タップ加工を、従来と同等の精度を維持しつつ短時間で行うことのできるタップ工具を提供する。
【解決手段】回転軸線を有し、ワークに設けられた下穴の中心軸線と回転軸線を一致させた状態で下穴をねじ穴に加工するタップ工具であって、ねじ穴のねじ溝を加工する刃部を有するねじ部と、刃部の回転方向後方に位置するパッド部であって、ねじ溝の加工中に、刃部によって加工されたねじ溝に係合するパッド部と、回転軸線とねじ穴の中心軸線とを一致させた横断面視において、ねじ穴との間に空間を形成する非係合部と、を備えており、空間は、該タップ工具が、回転軸線とねじ穴の中心軸線とが一致した状態から、ねじ穴内で回転軸線に直交する方向でシフトした場合に、ねじ部とねじ溝との係合及びパッド部とねじ溝との係合の同時解除を可能にする大きさを有することを特徴としたタップ工具。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を有し、ワークに設けられた下穴の中心軸線と前記回転軸線を一致させた状態で前記下穴をねじ穴に加工するタップ工具であって、
前記ねじ穴のねじ溝を加工する刃部を有するねじ部と、
前記刃部の回転方向後方に位置するパッド部であって、前記ねじ溝の加工中に、前記刃部によって加工された前記ねじ溝に係合するパッド部と、
前記回転軸線と前記ねじ穴の中心軸線とを一致させた横断面視において、前記ねじ穴との間に空間を形成する非係合部と、
を備えており、
前記空間は、該タップ工具が、前記回転軸線と前記ねじ穴の前記中心軸線とが一致した状態から、前記ねじ穴内で前記回転軸線に直交する方向でシフトした場合に、前記ねじ部と前記ねじ溝との係合及び前記パッド部と前記ねじ溝との係合の同時解除を可能にする大きさを有することを特徴としたタップ工具。
【請求項2】
前記刃部はすくい面を有しており、前記すくい面は、タップ加工中に生じる切削抵抗が前記パッド部を介して前記ねじ溝によって支持されるように形成されている、請求項1に記載のタップ工具。
【請求項3】
前記パッド部は、第1のパッド部と第2のパッド部とで構成され、
前記ねじ部と前記第1のパッド部との間に設けられた第1の溝と、
前記第1のパッド部と前記第2のパッド部との間に設けられた第2の溝と、を有する、請求項1に記載のタップ工具。
【請求項4】
マシニングセンタの主軸に装着される、請求項1に記載のタップ工具。
【請求項5】
タップ加工方法であって、
タップ工具の装着された工作機械の主軸の回転軸線と、ワークに設けられた下穴の中心軸線を一致させる段階と、
前記タップ工具を回転させつつ前記回転軸線の方向で前進移動させることにより前記下穴にタップ加工を行う段階と、
静止した前記タップ工具の刃部を含むねじ部と前記ワークに形成されたねじ穴のねじ溝との係合が解除されるように、前記主軸の回転軸線に直交する方向に前記タップ工具をシフトさせる段階と、
前記タップ工具を回転させることなく前記回転軸線の方向で後退移動させる段階と、
を含むことを特徴としたタップ加工方法。
【請求項6】
前記後退移動させる段階における前記タップ工具の移動速度が、前記タップ加工を行う段階において前進移動する前記タップ工具の移動速度よりも高速である、請求項5に記載のタップ加工方法。
【請求項7】
前記タップ工具をシフトさせる段階における前記タップ工具のシフトの方向を計算する段階であって、前記タップ加工を行う段階においてタップ加工後に静止した前記タップ工具の前記回転軸線まわりの位相角に基づいて前記タップ工具のシフトの方向を計算する段階を前記タップ加工を行う段階の後に更に含む、請求項5に記載のタップ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに設けられた下穴をねじ穴に加工するタップ工具及びタップ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタとそれに装着されたタップ工具を使ってタップ加工を行う場合は、回転と直線送りを同期させたいわゆる同期タップ加工で行われる。同期タップ加工では、加工したねじ穴からタップ工具を引き出すときにも、回転と送りを同期させる必要がある。そのため、タップ工具の引き抜きに要する時間は、タップ工具を前進させてねじ溝を加工する時間にほぼ等しい時間が必要である。ところで、加工プログラム作成者は、被削材種に適した工具材種を選択したり、マシニングセンタの主軸の回転速度を、マシニングセンタの主軸モータのトルク特性や、ねじ穴の径及び深さに応じて最適化を図る等して、タップ加工時間の短縮化を、例えば1秒未満の微小な単位で追求している。
【0003】
特許文献1は、NCフライス盤やマシニングセンタとともに利用されるタップ工具(ねじ切りフライス)を開示している。特許文献1のタップ工具は、加工時間を総合的に短縮するために、タップ加工だけではなく下穴もタップ加工と同時に加工できるように形成されている。そのため、特許文献1のタップ工具は、下穴加工を行うための底刃と、タップ加工用の刃部である一つのチップを工具外周に備えている。また、そのタップ工具は、加工すべきねじ穴の内径よりも相当に細い外径を有するものであって、これによるタップ加工は、タップ工具を、工作機械の主軸を中心に回転(自転)させつつ、ねじ穴の中心軸線を中心に公転させることによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−184721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のタップ工具によると、タップ工具の外径がねじ穴の内径よりも小さいので、タップ加工中には切削抵抗に基づく曲げ応力がタップ工具に生じる。その結果、特にタップ工具が細長い場合に、タップ工具のたわみに起因してねじ穴の寸法精度が低下することが懸念される。また、特許文献1におけるタップ加工は一つのチップによって行われるので、従来の普通のタップ工具に比較してタップ加工時間が増えることが予想され、結果として、下穴加工も含めた加工時間で比較した場合も、従来のタップ加工方法に対しての効果は限定的であると考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、タップ加工を、従来と同等の精度を維持しつつ短時間で行うことのできるタップ工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、回転軸線を有し、ワークに設けられた下穴の中心軸線と前記回転軸線を一致させた状態で前記下穴をねじ穴に加工するタップ工具であって、前記ねじ穴のねじ溝を加工する刃部を有するねじ部と、前記刃部の回転方向後方に位置するパッド部であって、前記ねじ溝の加工中に、前記刃部によって加工された前記ねじ溝に係合するパッド部と、前記回転軸線と前記ねじ穴の中心軸線とを一致させた横断面視において、前記ねじ穴との間に空間を形成する非係合部と、を備えており、前記空間は、該タップ工具が、前記回転軸線と前記ねじ穴の前記中心軸線とが一致した状態から、前記ねじ穴内で前記回転軸線に直交する方向でシフトした場合に、前記ねじ部と前記ねじ溝との係合及び前記パッド部と前記ねじ溝との係合の同時解除を可能にする大きさを有するタップ工具が提供される。
【0008】
さらに、本発明によれば、タップ加工方法であって、タップ工具の装着された工作機械の主軸の回転軸線と、ワークに設けられた下穴の中心軸線を一致させる段階と、前記タップ工具を回転させつつ前記回転軸線の方向で前進移動させることにより前記下穴にタップ加工を行う段階と、前記タップ工具の刃部を含むねじ部と前記ワークに形成されたねじ穴のねじ溝との係合が解除されるように、前記主軸の回転軸線に直交する方向に前記タップ工具をシフトさせる段階と、前記タップ工具を回転させることなく前記回転軸線の方向で後退移動させる段階と、を含むタップ加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、加工後に、回転軸線に直交する方向に移動してねじ穴のねじ溝との係合が解除されたタップ工具を、回転させることなく、ねじ穴から回転軸線方向に高速で引き抜くことが可能になる。この高速での引き抜きの効果により、加工開始点に戻る時間も含めた加工時間の短縮化が実現される。
【0010】
また、本発明によると、切削抵抗がパッド部を介してねじ穴によって支持されるので、切削抵抗に基づいてタップ工具に生じるたわみは極くわずかであり、その結果、加工精度も従来の通常のタップ工具210を使った場合と同等である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】工作機械と、その主軸頭に装着された本発明の実施形態によるタップ工具の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態によるタップ工具の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態によるタップ工具の正面図である。
【
図4】タップ工具と、それが加工するねじ穴の横断面図である。
【
図5】切削抵抗とその主分力及び背分力を示す、
図4と同様の横断面図である。
【
図6】
図4の状態からタップ工具がシフトした状態を示す、タップ工具とねじ穴の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、一般的な立形マシニングセンタである工作機械100と、それに装着された本発明の実施形態によるタップ工具10を示す図である。
図1の工作機械100は、工場の床面に固定された基台としてのベッド102、ベッド102の上面でY軸方向に移動可能に設けられたY軸スライダ104であってワーク8がクランプ固定されるY軸スライダ104、ベッド102の
図1の右側の上面から立設されたコラム108、コラム108の前面でX軸方向(
図1では紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられたX軸スライダ110、X軸スライダ110に対してZ軸方向に移動可能に設けられたZ軸スライダ112、及びZ軸スライダ112に固定され、主軸114を鉛直な回転軸線Crを中心として回転可能に支持する主軸頭116を具備する。工作機械100がこのように構成されているので、主軸頭116は、ワーク8に対して相対的に移動及び位置決めが可能である。また、工作機械100は、制御装置120及び図示しない自動工具交換装置も具備する。
【0013】
工作機械100は、タップ加工を、いわゆる同期タップ加工、すなわち、主軸114の回転とZ軸方向の送りとを同期させた加工として実行する。本明細書では、タップ工具10がタップ加工を実行するZ軸方向の直線移動を前進移動とも呼び、タップ工具10をねじ穴6から引き抜くZ軸方向の直線移動を後退移動とも呼ぶ。また、主軸114の回転軸線Crとタップ工具の回転軸線Crは常に一致するので、本明細書ではそれらに同一の符号を与える。
【0014】
本発明の実施形態によるタップ工具10の斜視図が
図2に、正面図が
図3に、加工直後の状態の
図3の切断線A〜Aによる横断面図がねじ穴6とともに
図4に示される。タップ工具10は、その回転軸線Crがワークに設けられた下穴6’の中心軸線C
6に一致した状態で、タップ加工、即ち下穴6’をねじ穴6にする加工を行う。
図4では、符号6aで示される円が下穴6’及びねじ穴6の内径に対応し、符号6bで示される円がねじ穴6の谷の径、即ち、タップ工具10の呼び径に対応する。
【0015】
タップ工具10は、基端側のシャンク部11と、先端側の加工部12とを有する。加工部12の先端にはテーパー部13が設けられている。加工部12は、回転軸線Crに対して非対称に形成されていて、ねじ穴6のねじ溝を加工する複数の刃部14aを有する雄ねじ状のねじ部14と、刃部14aによって加工されたねじ溝に係合する雄ねじ状のパッド部15、16と、加工中に下穴6’及びねじ穴6に接触しない非係合部17とを有する。ねじ部14は、長手方向に所定のねじピッチで間隔をおいて配置された複数のねじ山を有しており、刃部14aは複数のねじ山の各々の回転方向前方側に設けられている。なお、本実施形態では、タップ工具10は、三角ねじのねじ溝を形成するものである。
【0016】
図7に、比較のため、従来の典型的なタップ工具210を示す。そのタップ工具210は、切削のための刃部214aを有するねじ部214が、4本の長手方向に延びる切削油流通用の溝218によって4つに分断されている。その結果、
図7の従来のタップ工具210の場合、横断面視で4つのねじ部214が90度間隔で配置される。
【0017】
これに対して、本発明の実施形態によるタップ工具10では、一つのねじ部14が
図4における概ね8時から9時の方向にのみ配置される。
図4のタップ工具10の一つのねじ部14は、その刃部14aによって従来の例えば
図7のねじ部214と同様にねじ溝を加工することができる。また、刃部14aによる切削の原理は従来のものと同様であり、このため刃部14aは従来と同様にすくい面14bを有する。
図4と同様の横断面図である
図5では、回転方向Tで回転するタップ加工中に、切削力に対する反力としてタップ工具10の刃部14aの先端に作用する切削抵抗Rcと、その背分力Rb及び主分力Rpがベクトルとして示されている。
【0018】
図4において、タップ工具10は、時計回りに回転するものとして形成されている。パッド部15、16は、ねじ部14の回転方向後方に設けられており、本実施形態では2つのパッド部、即ち第1パッド部15と第2パッド部16が設けられている。第1パッド部15とねじ部14との間には第1の溝18が設けられ、第1パッド部15と第2パッド部16との間には第2の溝19が設けられている。第1のパッド部15と第2のパッド部16の回転方向前方にそれぞれ第1の溝18と第2の溝19が形成されているため、溝18、19を介してパッド部15、16には切削液が効率よく供給される。これによりパッド部15、16とワーク8の間の潤滑がよくなり、刃部14aで形成されたねじ溝の表面とパッド部15、16とが擦れることによって生じる損傷から、タップ工具10とワーク8とが保護される。
【0019】
各パッド部15、16には、ねじ部14と同様に雄ねじが形成されているが、刃部14aは設けられていない。パッド部15、16の雄ねじは、その半径がねじ部14の雄ねじの半径よりもわずかに小さく形成されているとはいえ、ねじ部14の刃部14aによって形成されたねじ穴6のねじ溝に螺合するように形成されている。
【0020】
パッド部15、16は、加工中に生じる切削抵抗Rcをねじ穴6に支持させるために設けられている。本実施形態では、第2パッド部16が主にこの役割を果たす。そのため、刃部14aから延びる切削抵抗Rcの方向は第2パッド部16に向かっている。切削抵抗Rcは第2パッド部16を介してねじ穴6のねじ溝に伝達されて支持される。なお、切削抵抗Rcの方向は、すくい面14bの角度を変えることによって変化させることができる。
【0021】
非係合部17は、湾曲した平滑な表面であり、横断面図である
図4では点17a及び点17bを結ぶ曲線で表される。非係合部17とねじ穴6の内径との間には空間20が形成される。この空間20の大きさは、
図4の状態からタップ工具10が回転軸線Crに直交する矢印Sで示される方向及び距離でシフトしたときに、即ち
図6に示される位置へシフトしたときに、ねじ部14とねじ穴6のねじ溝との係合及び第1及び第2パッド部15、16とねじ溝との係合の同時解除を可能にする大きさを有する。なお、空間20の大きさは、マージンをもって少し大きめに形成されている。また、切削中には、空間20は刃先部14aへ切削液を供給する経路および切削によって生じた切りくずを排出する経路の役割を果たし、加工面の品質を向上させ、工具寿命を延ばす効果がある。
【0022】
図6に示されるように、ねじ部14やパッド部15、16とねじ溝との係合が解除されたタップ工具10は、回転軸線方向への後退移動によってねじ穴6から引き抜くことができる。このタップ工具10の引き抜きは、従来のように回転運動を含まないので高速に行うことができる。
【0023】
ところで、本例の工作機械100では、
図4及び
図6における3時の方向に主軸114の回転角0度の基準線(以下、「原線」という)Loが延びる。
図4及び
図6では、原線Loに対するタップ工具10の回転角(以下、「位相角」ともいう)が、刃部14aの位相角として、180度で例示される。加工後に静止したタップ工具10の位相角は、ねじ穴6の深さが異なれば加工に必要なタップ工具10の回転数も異なるので、ねじ穴6毎に異なる。したがって、主軸114の原線Loに対するタップ工具10のシフトの方向もねじ穴6毎に異なる。シフトの方向を求めるために、本実施形態では、タップ工具10は、加工開始点(図示せず)に位置決めされるときに、主軸114の原線Loに対して所定の位相角に設定される。そして、加工後のタップ工具10の位相角が主軸モータのエンコーダの情報から制御装置120によって算出され、その算出されたタップ工具10の位相角に基づいてシフトの方向、
図6の例では原線Loからθ度の方向が算出される。一方、必要なシフト量は、タップ工具10の横断面形状によって定まるので、制御装置120に予め記憶されている。
【0024】
本発明の実施形態によるタップ工具10と、
図1に示されるような立形の工作機械を使って行われるタップ加工の例を以下に説明する。
最初に、タップ工具10を加工開始点に位置決めする。つまり、タップ工具10の装着された工作機械の主軸114の回転軸線Crと、ワークに設けられた下穴6’の中心軸線C
6とを一致させて、所定のZ軸方向の高さにある加工開始点にタップ工具10の先端を位置決めする。このとき、主軸114の原線Loに対するタップ工具10の位相角は所定の値に設定される。
【0025】
次に、主軸114の回転速度とZ軸方向の送り速度をねじのピッチに応じて同期させて、同期タップ加工を行う。タップ工具10がZ軸方向に所定の距離だけ移動して、指令されたねじ深さに達したなら、主軸114の回転と送りが停止する。これによりワークの下穴6’がねじ穴6に加工される。
【0026】
次に、タップ工具10を回転軸線Crに直交する特定の方向にシフトさせる。前記特定の方向は、主軸モータのエンコーダの情報から決定されるタップ工具10の位相角に基づいて決定され、
図6の例では矢印Sで表される方向である。シフト量は、予め制御装置120に登録された値が利用される。この工程により、タップ工具10のねじ部14やパッド部15、16とねじ穴6のねじ溝との係合は完全に解除される。
【0027】
次に、タップ工具10を回転させることなく上方へ加工開始点まで後退させる。このときの主軸114のZ軸方向の送り速度は、加工時、即ち、前進時の送り速度に比較して2倍以上高速にすることができる。
以上で、一つのねじ穴6のタップ加工が完了する。
【0028】
本発明によると、タップ工具10の非係合部17とねじ穴6の内径との間に空間20が形成され、前記空間20は、タップ工具10が回転軸線Crに直交する方向に移動したとき、ねじ部14及びパッド部15、16とねじ溝との係合を解除する大きさを有する。そのため、加工後に、ねじ穴6のねじ溝との係合を解除したタップ工具10を、回転させることなく、ねじ穴6から回転軸線方向に高速で引き抜くことが可能になる。この高速での引き抜きの効果により、タップ工具10の後退時間を含めた加工時間は、従来の通常のタップ工具210を使った場合に比較して約40%削減することが可能である。
【0029】
また、本発明によると、切削抵抗Rcが第2パッド部16を介してねじ穴6によって支持されるので、切削抵抗Rcに基づいてタップ工具10に生じるたわみは極わずかであり、その結果、加工精度も従来の通常のタップ工具210を使った場合と同等である。
【0030】
その他の実施形態
前述の実施形態のタップ工具10は、2つのパッド部15、16を備えていたが、パッド部の数は2つに限定されることはなく、したがってパッド部を例えば1つあるいは3つ備えるタップ工具10も本発明において可能である。
【0031】
前述の実施形態のタップ工具10は、第1パッド部15とねじ部14との間に第1の溝18を有するものであるが、パッド部とねじ部14との間に溝を有しない、したがってパッド部がねじ部14に連続して形成されたタップ工具も本発明において可能である。
【0032】
前述の実施形態では、パッド部15、16はねじ部14の半径よりもわずかに小さい半径を有するものであったが、パッド部の半径がねじ部14の半径と等しいタップ工具10の実施形態も本発明において可能である。
【符号の説明】
【0033】
6 ねじ穴
6’ 下穴
10 タップ工具
14 ねじ部
14a 刃部
14b すくい面
15 第1パッド部
16 第2パッド部
17 非係合部
20 空間
C
6 中心軸線
Cr 回転軸線
Rc 切削抵抗