特開2020-168788(P2020-168788A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2020-168788タイヤ金型、空気入りタイヤの製造方法、及び、空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-168788(P2020-168788A)
(43)【公開日】2020年10月15日
(54)【発明の名称】タイヤ金型、空気入りタイヤの製造方法、及び、空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20200918BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20200918BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B60C13/00 J
   B60C13/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-71303(P2019-71303)
(22)【出願日】2019年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】荻田 剛彦
【テーマコード(参考)】
3D131
4F202
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC49
3D131BC51
3D131GA03
3D131GA19
3D131LA28
4F202AH20
4F202CA21
4F202CU01
4F202CU07
(57)【要約】
【課題】空気入りタイヤのユニフォミティの悪化を抑えながら、加硫故障を効果的に抑制することを可能にしたタイヤ金型、空気入りタイヤの製造方法、及び、空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤTのサイドウォール部を成形するためのサイドウォール成形面S1を有するタイヤ金型Mにおいて、サイドウォール成形面S1にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本のベントグルーブ4が配設され、ベントグルーブ4の各々は、その深さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動し、少なくとも3つの最深部4Aと少なくとも3つの最浅部4Bとを有し、隣り合う2本のベントグルーブ4,4において最深部4Aの位置が互いにずれており、ベントグルーブ4の各最深部4Aにはベントホール5が連通している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤのサイドウォール部を成形するためのサイドウォール成形面を有するタイヤ金型において、
前記サイドウォール成形面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本のベントグルーブが配設されており、
前記ベントグルーブの各々は、その深さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動し、少なくとも3つの最深部と少なくとも3つの最浅部とを有し、隣り合う2本のベントグルーブにおいて最深部の位置が互いにずれており、
前記ベントグルーブの各最深部には、ベントホールが連通していることを特徴とするタイヤ金型。
【請求項2】
前記ベントグルーブの深さは0.3mm〜0.5mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ金型。
【請求項3】
前記ベントホールの直径は0.3mm〜1.2mmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ金型。
【請求項4】
前記ベントグルーブはタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側の少なくとも2箇所に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ金型。
【請求項5】
前記ベントグルーブの最深部及び最浅部はタイヤ周方向に沿って等間隔で配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ金型。
【請求項6】
前記ベントグルーブの各々は、少なくとも8つの最深部と少なくとも8つの最浅部とを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ金型。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ金型に未加硫状態の空気入りタイヤを投入し、該空気入りタイヤを内側からブラダーにより加圧した状態で該空気入りタイヤの加硫を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
サイドウォール部を有する空気入りタイヤにおいて、
前記サイドウォール部の外表面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本の突条が配設されており、
前記突条の各々は、その高さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動し、少なくとも3つの頂部と少なくとも3つの谷部とを有し、隣り合う2本の突条において頂部の位置が互いにずれており、
前記突条の各頂部には、スピュー又はその切断痕が存在することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記突条の高さは0.3mm〜0.5mmの範囲にあることを特徴とする請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記突条の各頂部にスピューが存在し、該スピューの直径は0.3mm〜1.2mmの範囲にあり、該スピューの長さは2mm〜10mmの範囲にあることを特徴とする請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記突条はタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側の少なくとも2箇所に配置されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記突条の頂部及び谷部はタイヤ周方向に沿って等間隔で配置されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記突条の各々は、少なくとも8つの頂部と少なくとも8つの谷部とを有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ金型、該タイヤ金型を用いた空気入りタイヤの製造方法、及び、それによって得られる空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、空気入りタイヤのユニフォミティの悪化を抑えながら、加硫故障を効果的に抑制することを可能にしたタイヤ金型、空気入りタイヤの製造方法、及び、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを製造するために使用されるタイヤ金型には、加硫時にタイヤ金型内に残留するエアや加硫の際に発生するガス等の気体を金型外に排出するために、その成形面に連通する多数のベントホールが設けられている。これにより、加硫中の生タイヤの外表面がタイヤ金型の成形面と接触し、生タイヤの加硫を良好に行うことができる。タイヤの外表面とタイヤ金型の成形面との間に気体が残留していると、それが加硫故障の原因となるので、そのような気体を十分に排出することが必要である。
【0003】
ここで、空気入りタイヤのサイドウォール部を成形するためのサイドウォール成形面を有するタイヤ金型において、サイドウォール成形面にタイヤ周方向に沿って延在するベントグルーブを設け、ベントグルーブの深さを徐々に変化させてタイヤ周方向の1箇所で最も深くなるように構成し、ベントグルーブの最深部にベントホールを連通させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、ベントグルーブ内に集まった気体をベントホールから排出することができるので、ベントホールの設置数を削減し、ベントホールに起因して空気入りタイヤのサイドウォール部に形成されるスピュー(髭状の突起)を減らすことができるという利点がある。
【0004】
しかしながら、ベントグルーブの深さを徐々に変化させてタイヤ周方向の1箇所で最も深くなるように構成した場合、ベントグルーブ内に流れ込んだゴムにより形成される突条の質量分布がタイヤ周上で不均一になるため、空気入りタイヤのユニフォミティが悪化するという欠点がある。
【0005】
特に、近年ではタイヤの軽量化の要求やタイヤの転がり抵抗の低減要求が厳しく、タイヤのサイドウォール部を薄くする傾向があるが、このようにサイドウォール部を薄肉化した空気入りタイヤにおいては、ユニフォミティの悪化が顕在化する傾向がある。また、サイドウォール部を薄肉化した空気入りタイヤでは、加硫時におけるサイドウォール部のゴム流れが少なく、加硫故障を生じ易いので、タイヤの外表面とタイヤ金型の成形面との間に残留する気体を更に効率良く排出することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−136616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、空気入りタイヤのユニフォミティの悪化を抑えながら、加硫故障を効果的に抑制することを可能にしたタイヤ金型、空気入りタイヤの製造方法、及び、空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ金型は、空気入りタイヤのサイドウォール部を成形するためのサイドウォール成形面を有するタイヤ金型において、前記サイドウォール成形面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本のベントグルーブが配設されており、前記ベントグルーブの各々は、その深さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動し、少なくとも3つの最深部と少なくとも3つの最浅部とを有し、隣り合う2本のベントグルーブにおいて最深部の位置が互いにずれており、前記ベントグルーブの各最深部には、ベントホールが連通していることを特徴とするものである。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上述したタイヤ金型に未加硫状態の空気入りタイヤを投入し、該空気入りタイヤを内側からブラダーにより加圧した状態で該空気入りタイヤの加硫を行うことを特徴とするものである。
【0010】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、サイドウォール部を有する空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォール部の外表面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本の突条が配設されており、前記突条の各々は、その高さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動し、少なくとも3つの頂部と少なくとも3つの谷部とを有し、隣り合う2本の突条において頂部の位置が互いにずれており、前記突条の各頂部には、スピュー又はその切断痕が存在することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、タイヤ金型において、サイドウォール成形面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本のベントグルーブが配設されており、各ベントグルーブはその深さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動して少なくとも3つの最深部と少なくとも3つの最浅部とを有し、隣り合う2本のベントグルーブにおいて最深部の位置が互いにずれており、ベントグルーブの各最深部にベントホールが連通しているので、このタイヤ金型を用いて空気入りタイヤの加硫を行う際に、これらベントグルーブとベントホールに基づいてサイドウォール成形面における気体の排出効果を最大限に発揮し、加硫故障を効果的に抑制することができる。しかも、各ベントグルーブは少なくとも3つの最深部と少なくとも3つの最浅部とを有し、隣り合う2本のベントグルーブにおいて最深部の位置が互いにずれているので、ベントグルーブ内に流れ込んだゴムにより形成される突条に起因する質量分布の不均一さが軽減され、空気入りタイヤのユニフォミティの悪化を抑制することができる。
【0012】
本発明によれば、サイドウォール部の外表面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本の突条が配設されており、各突条はその高さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動して少なくとも3つの頂部と少なくとも3つの谷部とを有し、隣り合う2本の突条において頂部の位置が互いにずれており、突条の各頂部にスピュー又はその切断痕が存在する空気入りタイヤが得られる。このような空気入りタイヤの加硫工程において、ユニフォミティの悪化を抑えながら、加硫故障を効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明のタイヤ金型において、ベントグルーブの深さは0.3mm〜0.5mmの範囲にあることが好ましい。これにより、ユニフォミティの悪化を最小限に抑えながら、加硫故障を効果的に抑制することができる。同様の理由から、本発明の空気入りタイヤにおいて、突条の高さは0.3mm〜0.5mmの範囲にあることが好ましい。
【0014】
本発明のタイヤ金型において、ベントホールの直径は0.3mm〜1.2mmの範囲にあることが好ましい。このようにベントホールの直径が小さい場合、スピューが小さくなるため、スピューを除去する必要がなくなる。同様の理由から、本発明の空気入りタイヤにおいて、突条の各頂部にスピューが存在し、該スピューの直径は0.3mm〜1.2mmの範囲にあり、該スピューの長さは2mm〜10mmの範囲にあることが好ましい。
【0015】
本発明のタイヤ金型において、ベントグルーブはタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側の少なくとも2箇所に配置されていることが好ましい。タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側の領域では加硫故障が生じ易いので、上記配置により加硫故障を効果的に抑制することができる。同様の理由から、本発明の空気入りタイヤにおいて、突条はタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側の少なくとも2箇所に配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明のタイヤ金型において、ベントグルーブの最深部及び最浅部はタイヤ周方向に沿って等間隔で配置されていることが好ましい。これにより、ユニフォミティの改善効果と加硫故障の抑制効果を更に高めることができる。同様の理由から、本発明の空気入りタイヤにおいて、突条の頂部及び谷部はタイヤ周方向に沿って等間隔で配置されていることが好ましい。
【0017】
本発明のタイヤ金型において、ベントグルーブの各々は、少なくとも8つの最深部と少なくとも8つの最浅部とを有することが好ましい。ベントグルーブに形成される最深部と最浅部の数を増やすことにより、ユニフォミティの改善効果と加硫故障の抑制効果を更に高めることができる。同様の理由から、本発明の空気入りタイヤにおいて、突条の各々は、少なくとも8つの頂部と少なくとも8つの谷部とを有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明で使用されるタイヤ金型の一例を示す子午線断面図である。
図2図1のタイヤ金型のサイドウォール成形面を示す拡大断面図である。
図3図1のタイヤ金型のサイドウォール成形面に形成されたベントグルーブをその長手方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
図4】本発明の空気入りタイヤの一例を示す子午線半断面図である。
図5図4の空気入りタイヤを示す側面図である。
図6図4の空気入りタイヤのサイドウォール部に形成された突条をその長手方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明で使用されるタイヤ金型Mを示し、図2及び図3はその要部を示すものである。図3において、Tcはタイヤ周方向である。
【0020】
図1に示すように、このタイヤ金型Mは、空気入りタイヤTのサイドウォール部を成形する一対のサイドプレート1,1と、空気入りタイヤTのビード部を成形する一対のビードリング2,2と、空気入りタイヤTのトレッド部を成形する複数のセクター3から構成されている。各サイドプレート1はサイドウォール部を成形するためのサイドウォール成形面S1を有し、各ビードリング2はビード部を成形するためのビード成形面S2を有し、各セクター3はトレッド部を成形するためのトレッド成形面S3を有している。トレッド成形面S3には溝成形骨やサイプ成形刃が配設されている。
【0021】
上述したタイヤ金型Mにおいて、図1図3に示すように、サイドプレート1のサイドウォール成形面S1には、タイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本のベントグルーブ4が同心状に配設されている。ベントグルーブ4の本数は、例えば、2本〜5本とすることができる。ベントグルーブ4の各々は、図3に示すように、その深さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動し、少なくとも3つの最深部4Aと少なくとも3つの最浅部4Bとを有している。ベントグルーブ4の各最深部4Aにはベントホール5が連通している。ベントホール5はサイドプレート1を貫通し、タイヤ金型の外部まで連通している。図2に示すように、タイヤ径方向に隣り合う2本のベントグルーブ4,4において、最深部4Aの位置(即ち、ベントホール5の位置)はタイヤ周方向に互いにずれている。
【0022】
ベントグルーブ4の横断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、台形、長方形正方形、半円柱形状等を採用することができる。図3において、深さが周期的に変動するベントグルーブ4は波打つ形状を有しているが、その具体的な起伏形状は特に限定されるものではない。例えば、最深部4Aと最浅部4Bとの間が直線的に結ばれたジグザグ形状であっても良く、或いは、正弦波のような曲線形状であっても良い。
【0023】
上述のように構成されるタイヤ金型Mを用いて空気入りタイヤTを製造する場合、タイヤ金型Mに未加硫状態の空気入りタイヤTを投入する。次いで、空気入りタイヤTを内側からブラダーBにより加圧した状態で、空気入りタイヤTをその内外から加熱することにより、空気入りタイヤTの加硫を行う。その際、空気入りタイヤTの外表面とタイヤ金型Mのサイドウォール成形面S1との間に残留する気体はベントグルーブ4及びベントホール5を介してタイヤ金型Mの外部に排出される。なお、ビード成形面S2及びトレッド成形面S3にも必要に応じてベントホールが形成され、そのベントホールを介して気体の排出が行われるが、ここではその説明を省略する。
【0024】
図4はタイヤ金型Mにより得られる本発明の空気入りタイヤTを示し、図5及び図6はその要部を示すものである。図4において、CLはタイヤ中心線である。図4はタイヤ中心線CLよりもタイヤ幅方向の一方側のみを描写しているが、空気入りタイヤTはタイヤ中心線CLよりもタイヤ幅方向の他方側に一方側と対称又は非対称の構造を有している。図6において、Tcはタイヤ周方向である。
【0025】
図4に示すように、空気入りタイヤTは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部11と、該トレッド部11の両側に配置された一対のサイドウォール部12,12と、これらサイドウォール部12のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部13,13とを備えている。
【0026】
一対のビード部13,13間にはカーカス層14が装架されている。このカーカス層14は、タイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含み、各ビード部13に配置されたビードコア15の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア15の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー16が配置されている。
【0027】
一方、トレッド部11におけるカーカス層14の外周側には複数層のベルト層17が埋設されている。これらベルト層17はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。
【0028】
上記空気入りタイヤTにおいて、図4図6に示すように、サイドウォール部12の外表面には、タイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本の突条24が同心状に配設されている。突条24の本数は、例えば、2本〜5本とすることができる。突条24の各々は、図6に示すように、その高さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動し、少なくとも3つの頂部24Aと少なくとも3つの谷部24Bとを有している。突条24は、タイヤ金型Mのベントグルーブ4により成形されたものである。突条24の各頂部24Aにはスピュー25が形成されている。スピュー25は、タイヤ金型Mのベントホール5により成形されたものである。スピュー25は必要に応じて切断され、その場合、スピュー25の位置にはスピュー25の切断痕が存在することになる。図5に示すように、タイヤ径方向に隣り合う2本の突条24,24において、頂部24Aの位置(即ち、スピュー25の位置)は互いにタイヤ周方向にずれている。
【0029】
上述したタイヤ金型Mでは、サイドウォール成形面S1にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本のベントグルーブ4が配設されており、各ベントグルーブ4はその深さがタイヤ周方向に沿って周期的に変動して少なくとも3つの最深部4Aと少なくとも3つの最浅部4Bとを有し、隣り合う2本のベントグルーブ4,4において最深部4Aの位置が互いにずれており、ベントグルーブ4の各最深部4Aにベントホール5が連通しているので、このタイヤ金型Mを用いて空気入りタイヤTの加硫を行う際に、空気入りタイヤTの外表面とタイヤ金型Mのサイドウォール成形面S1との間に残留する気体はベントグルーブ4及びベントホール5を介してタイヤ金型Mの外部に効率良く排出される。即ち、複数本のベントグルーブ4がサイドウォール成形面S1の広い範囲において気体を収容し、その気体が各ベントグルーブ4の少なくとも3つの最深部4Aに配置されたベントホール5を介して効果的に排出される。これにより、気体の排出効果を最大限に発揮し、加硫故障を効果的に抑制することができる。しかも、各ベントグルーブ4は少なくとも3つの最深部4Aと少なくとも3つの最浅部4Bとを有し、隣り合う2本のベントグルーブ4,4において最深部4Aの位置が互いにずれているので、ベントグルーブ4内に流れ込んだゴムにより形成される突条24Aに起因する質量分布の不均一さが軽減される。これにより、空気入りタイヤTのユニフォミティの悪化を抑制することができる。
【0030】
気体の排出効果を改善する他の手法として、例えば、サイドウォール成形面S1にタイヤ径方向に延びる複数本のラジアルベントグルーブを形成し、これらラジアルベントグルーブにより環状をなす複数本のベントグルーブ4を互いに連結することが考えられる。しかしながら、そのようなラジアルベントグルーブは、空気入りタイヤTのサイドウォール部12に形成される文字と干渉し、外観を阻害する要因となる。これに対して、環状をなす複数本のベントグルーブ4を配置し、各ベントグルーブ4の構造を上記のように規定した場合、空気入りタイヤTの外観を良好に維持することが可能である。
【0031】
タイヤ金型Mにおいて、ベントグルーブ4の深さは0.1mm〜1.0mmの範囲で変動させることが可能であるが、特に0.3mm〜0.5mmの範囲にあると良い。これにより、ユニフォミティの悪化を最小限に抑えながら、加硫故障を効果的に抑制することができる。ここで、ベントグルーブ4の深さが大き過ぎるとユニフォミティ改善効果が低下し、逆に小さ過ぎると加硫故障を抑制する効果が低下する。また、最深部4Aの深さDaと最浅部4Bの深さDbとの差は0.1mm〜0.2mmの範囲にあると良い。最深部4Aの深さDaと最浅部4Bの深さDbとの差が大き過ぎるとユニフォミティ改善効果が低下し、逆に小さ過ぎると加硫故障を抑制する効果が低下する。
【0032】
同様に、空気入りタイヤTにおいて、突条24の高さは0.1mm〜1.0mmの範囲で変動させることが可能であるが、特に0.3mm〜0.5mmの範囲にあると良い。これにより、ユニフォミティの悪化を最小限に抑えながら、加硫故障を効果的に抑制することができる。ここで、突条24の高さが大き過ぎるとユニフォミティ改善効果が低下し、逆に小さ過ぎると加硫故障を抑制する効果が低下する。また、頂部24Aの高さHaと谷部24Bの高さHbとの差は0.1mm〜0.2mmの範囲にあると良い。頂部24Aの高さHaと谷部24Bの高さHbとの差が大き過ぎるとユニフォミティ改善効果が低下し、逆に小さ過ぎると加硫故障を抑制する効果が低下する。
【0033】
タイヤ金型Mにおいて、ベントホール5の直径Xは0.3mm〜1.6mmの範囲にあれば良いが、特に0.3mm〜1.2mmの範囲にあると良い。ベントホール5の直径Xが1.2mm以下(マイクロベントホール)である場合、スピュー25が小さくなるため、スピュー25を除去する必要がなくなる。また、ベントホール5の直径Xが1.2mm超である場合、スピュー25を切除すれば良い。
【0034】
言い換えれば、空気入りタイヤTにおいて、スピュー25の直径Yが0.3mm〜1.2mmの範囲にあり、該スピュー25の長さLが2mm〜10mmの範囲にある場合、突条24の各頂部24Aにスピュー25が存在していても良い。このようなスピュー25は外観を実質的に悪化させる要因にはならないので、加硫後に必ずしも切除する必要はない。スピュー25の切除が省略可能であれば、空気入りタイヤTの製造効率を高めることができる。
【0035】
タイヤ金型Mにおいて、ベントグルーブ4はタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側の少なくとも2箇所に配置されていると良い。タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側の領域では加硫故障が生じ易いので、上記配置により加硫故障を効果的に抑制することができる。同様の理由から、空気入りタイヤTにおいて、突条24はタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側の少なくとも2箇所に配置されていると良い。特に、ビードフィラー16の頂点に対応する領域とカーカス層14の巻き上げ端に対応する領域にそれぞれ突条24が配置されることが望ましい。これら領域ではゴム流れが阻害され易くエア溜りが生じ易いので、そのような領域に突条24を配設することで加硫故障を効果的に抑制することができる。なお、ビードフィラー16の頂点に対応する領域とはビードフィラー16の頂点に対してタイヤ径方向に±5mm以内の領域を意味し、カーカス層14の巻き上げ端に対応する領域とはカーカス層14の巻き上げ端に対してタイヤ径方向に±5mm以内の領域を意味する。
【0036】
タイヤ金型Mにおいて、図2に示すように、ベントグルーブ4の最深部4A及び最浅部4Bはタイヤ周方向に沿って等間隔で配置されていると良い。これにより、ユニフォミティの改善効果と加硫故障の抑制効果を更に高めることができる。同様の理由から、空気入りタイヤTにおいて、図5に示すように、突条24の頂部24A及び谷部24Bはタイヤ周方向に沿って等間隔で配置されていると良い。
【0037】
タイヤ金型Mにおいて、ベントグルーブ4の各々は、図2に示すように、少なくとも8つの最深部4Aと少なくとも8つの最浅部4Bとを有していると良い。ベントグルーブ4に形成される最深部4Aと最浅部4Bの数を増やすことにより、ユニフォミティの改善効果と加硫故障の抑制効果を更に高めることができる。同様の理由から、空気入りタイヤTにおいて、突条24の各々は、図5に示すように、少なくとも8つの頂部24Aと少なくとも8つの谷部24Bとを有していると良い。
【0038】
上述した実施形態では、セクショナルタイプのタイヤ金型の例を示したが、本発明は、空気入りタイヤのサイドウォール部を成形するためのサイドウォール成形面を有するものであれば、2分割タイプのタイヤ金型を含む各種のタイヤ金型に適用可能である。
【実施例】
【0039】
タイヤサイズ155/65R14の空気入りタイヤを製造するにあたって、タイヤ金型の構造を種々異ならせた(従来例、比較例1及び実施例1〜7)。なお、上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ最大幅位置でカーカス層よりも外側に存在するサイドゴムの厚さが3.5mm以下となるように設定した。
【0040】
従来例では、サイドウォール成形面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する1本のベントグルーブが配設されており、ベントグルーブは1つの最深部と1つの最浅部とを有し、ベントグルーブの最深部にベントホールが連通しているタイヤ金型を用いた。比較例1では、サイドウォール成形面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する2本のベントグルーブが配設されており、ベントグルーブの各々は3つの最深部と3つの最浅部とを有し、隣り合う2本のベントグルーブにおいて最深部の位置が互いに一致しており、ベントグルーブの各最深部にベントホールが連通しているタイヤ金型を用いた。
【0041】
実施例1〜7では、サイドウォール成形面にタイヤ周方向に沿って環状に延在する複数本のベントグルーブが配設されており、ベントグルーブの各々は少なくとも3つの最深部と少なくとも3つの最浅部とを有し、隣り合う2本のベントグルーブにおいて最深部の位置が互いにずれており、ベントグルーブの各最深部にベントホールが連通しているタイヤ金型を用いた。
【0042】
従来例、比較例1及び実施例1〜7において、ベントグルーブの本数、各ベントグルーブにおける最深部及び最浅部の数、最深部の深さDa、最浅部の深さDb、ベントホールの直径Xは表1のように設定した。
【0043】
上述した従来例、比較例1及び実施例1〜7のタイヤ金型を用いて空気入りタイヤを加硫し、以下の評価方法により、加硫故障の抑制効果及びユニフォミティを評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0044】
加硫故障の抑制効果:
100本のタイヤについて加硫故障の発生の有無を調べた。評価結果は、加硫故障発生数がゼロである場合を「A」(合格)で示し、加硫故障発生数が1以上2以下である場合を「B」(合格)で示し、加硫故障発生数が3以上である場合を「C」(不合格)で示した。
【0045】
ユニフォミティ:
100本のタイヤについてラジアル・フォース・バリエーション(RFV)を計測し、そのRFVの平均値を求めた。評価結果は、RFVの値を3つの数値範囲に区分し、RFVの値が小さいものを「A」(合格)で示し、RFVの値が大きいものを「C」(不合格)で示し、RFVの値がその中間にあるものを「B」(合格)で示した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から判るように、実施例1〜7では、従来例との対比において、加硫故障を効果的に抑制することができ、しかも、空気入りタイヤのユニフォミティが良好であった。一方、比較例1では、その改善効果が必ずしも十分ではなかった。
【符号の説明】
【0048】
1 サイドプレート
2 ビードリング
3 セクター
4 ベントグルーブ
4A 最深部
4B 最浅部
5 ベントホール
11 トレッド部
12 サイドウォール部
13 ビード部
24 突条
24A 頂部
24B 谷部
M タイヤ金型
S1 サイドウォール成形面
S2 ビード成形面
S3 トレッド成形面
T 空気入りタイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6