特開2020-168963(P2020-168963A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000003
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000004
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000005
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000006
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000007
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000008
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000009
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000010
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000011
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000012
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000013
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000014
  • 特開2020168963-車両の側部車体構造 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-168963(P2020-168963A)
(43)【公開日】2020年10月15日
(54)【発明の名称】車両の側部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20200918BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20200918BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20200918BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20200918BHJP
【FI】
   B62D25/08 E
   B62D25/04 A
   B62D25/04 D
   B62D25/20 F
   B62D25/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-71817(P2019-71817)
(22)【出願日】2019年4月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳和
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳司
(72)【発明者】
【氏名】清下 大介
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB07
3D203BB12
3D203BB54
3D203BB56
3D203BB62
3D203BC10
3D203CA53
3D203CA57
3D203CA66
3D203CB03
(57)【要約】
【課題】断面略三角形状の閉断面を形成する補強部材によって、設計仕様に拘らず、車体の制振性を確保することができる車両の側部車体構造を提供する。
【解決手段】
ホイールハウスアウタ31とホイールハウスインナ32とによって構成されたリヤホイールハウス30と、ホイールハウスアウタ31の前端部から前方に延びるサイドシル1と、ホイールハウスアウタ31の前後方向途中部からドア用開口縁部Erに沿って上下方向に延びるアウタレイン25とを備え、ホイールハウスアウタ31が、車幅方向外側に張り出すアウタ張出部33と、アウタ張出部33の車幅方向内側端部から上方に延びるアウタフランジ部34とを有し、アウタ張出部33及びアウタフランジ部34と協働して断面略三角形状の閉断面を形成する補強部材37を設け、補強部材37が、サイドシル1の後端部とアウタレイン25の下端部とを連結している。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤホイールハウスアウタとリヤホイールハウスインナとによって構成されたリヤホイールハウスと、前記リヤホイールハウスアウタの前端部から車体前方に延びるサイドシルと、前記リヤホイールハウスアウタの車体前後方向途中部からリヤドア用開口縁部に沿って車体上下方向に延びるピラーとを備えた車両の側部車体構造において、
前記リヤホイールハウスアウタが、車幅方向外側に張り出すアウタ張出部と、前記アウタ張出部の車幅方向内側端部から上方に延びるアウタフランジ部とを有し、
前記アウタ張出部及びアウタフランジ部と協働して断面略三角形状の閉断面を形成する補強部材を設けたことを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項2】
前記リヤホイールハウスインナが、車幅方向内側に張り出すインナ張出部と、前記インナ張出部の車幅方向内側端部から上方に延び且つ前記アウタフランジ部と面接触状態で接合されるインナフランジ部とを有し、
前記補強部材が、前記閉断面の内外を連通する開口部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
前記アウタフランジ部とインナフランジ部の接合部は、側面視にて前記開口部に対応するように配設されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
前記補強部材が前記開口部を複数備えると共に、前記複数の開口部のうち隣り合う開口部の間に高剛性部が形成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
前記高剛性部が、前記アウタ張出部に対して側面視にて略直交するように形成されたビード部であることを特徴とする請求項4に記載の車両の側部車体構造。
【請求項6】
前記補強部材が、前記サイドシルの後端部と前記ピラーアウタ部材の下端部とを連結すると共に、前記サイドシルが形成する閉断面と、フロントドア用開口縁部に沿って車体上下方向に延びるフロントピラーが形成する閉断面と、ルーフサイドレールが形成する閉断面と、前記リヤドア用開口縁部に沿って車体上下方向に延びるピラーが形成する閉断面とともに前記リヤドア用開口縁部に連なり且つ車幅方向に対して略直交する側部環状構造体の一部を構成することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両の側部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体の制振性を確保するため、ドア用開口部周りを構成する車体骨格部材の剛性を増すことが行われている。
一般に、車両の側部に形成されたドア用開口部周りには、リヤホイールハウスアウタとリヤホイールハウスインナとによって構成されたリヤホイールハウスと、リヤホイールハウスアウタの前端部から車体前方に延びるサイドシルと、リヤホイールハウスアウタの車体前後方向途中部から車体上下方向に延びるピラーアウタ部材等が設けられている。
【0003】
特許文献1の車両側部構造は、車体前後方向に延びるロッカ(サイドシルとも言う)と、このロッカの車幅方向外側部分を補強するロッカアウタリンフォースと、ロッカの後側から車体上下方向に延びるクォータピラーと、このクォータピラーを補強するクォータピラーリンフォースと、ロッカアウタリンフォースとクォータピラーリンフォースを連結すると共にリヤホイールハウスインナと協働して断面略矩形状の閉断面を形成する補強部材を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−043765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の車両側部構造は、補強部材が車体剛性に寄与する断面略矩形状の閉断面を形成しているものの、リヤホイールハウスが捩れ変形する虞がある。
即ち、リヤホイールハウスには、リヤサスペンションのダンパ支持部を介して上下方向の走行荷重が入力されることによる内倒れ方向の力が作用し、この内倒れ方向の力によって補強部材の断面が菱形状に変形(所謂マッチ箱変形)した場合、リヤホイールハウスが捩れ変形する。
【0006】
また、設計要求からの車体仕様によっては補強部材の配置スペースを確保することができない場合がある。
例えば、車体前部のエンジンルームにエンジンを縦置き配置した場合、前輪とヒンジピラーとの間隔を大きくする必要があり、ドア用開口部が全体的に後側に移行されるため、リヤドア用開口縁部とリヤホイールハウスアウタのアウタ張出部との隙間が狭くなる。
それ故、補強部材とリヤホイールハウスインナとによって形成される矩形閉断面を配置することが難しくなる。
【0007】
本発明の目的は、車体仕様に拘らず、車体の制振性を確保可能な車両の側部車体構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の車両の側部車体構造は、リヤホイールハウスアウタとリヤホイールハウスインナとによって構成されたリヤホイールハウスと、前記リヤホイールハウスアウタの前端部から車体前方に延びるサイドシルと、前記リヤホイールハウスアウタの車体前後方向途中部からリヤドア用開口縁部に沿って車体上下方向に延びるピラーとを備えた車両の側部車体構造において、前記リヤホイールハウスアウタが、車幅方向外側に張り出すアウタ張出部と、前記アウタ張出部の車幅方向内側端部から上方に延びるアウタフランジ部とを有し、前記アウタ張出部及びアウタフランジ部と協働して断面略三角形状の閉断面を形成する補強部材を設けたことを特徴としている。
【0009】
この車両の側部車体構造では、前記リヤホイールハウスアウタが、車幅方向外側に張り出すアウタ張出部と、前記アウタ張出部の車幅方向内側端部から上方に延びるアウタフランジ部とを有し、前記アウタ張出部及びアウタフランジ部と協働して断面略三角形状の閉断面を形成する補強部材を設けたため、リヤドア用開口縁部とリヤホイールハウスアウタのアウタ張出部との隙間が接近する車体仕様であっても、アウタ張出部に沿って閉断面を形成するスペースを確保することができる。また、補強部材が、アウタ張出部及びアウタフランジ部と協働して断面略三角形状の閉断面を形成するため、リヤホイールハウスに内倒れ方向の力が作用しても、補強部材が形成する閉断面がマッチ箱変形することを防止でき、リヤホイールハウスの捩れ変形を回避することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記リヤホイールハウスインナが、車幅方向内側に張り出すインナ張出部と、前記インナ張出部の車幅方向内側端部から上方に延び且つ前記アウタフランジ部と面接触状態で接合されるインナフランジ部とを有し、前記補強部材が、前記閉断面の内外を連通する開口部を備えたことを特徴としている。
この構成によれば、補強部材が形成する閉断面の成形後、開口部を溶接電極の作業穴としてアウタフランジ部とインナフランジ部とを所謂拝み合わせ接合することで剛性を向上できる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記アウタフランジ部とインナフランジ部の接合部は、側面視にて前記開口部に対応するように配設されたことを特徴としている。
この構成によれば、アウタフランジ部とインナフランジ部とを開口部を介して容易に接合することができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において、前記補強部材が前記開口部を複数備えると共に、前記複数の開口部のうち隣り合う開口部の間に高剛性部が形成されたことを特徴としている。
この構成によれば、補強部材の剛性を維持することで断面略三角形状の閉断面の剛性を増加しつつ、接合作業性を確保することができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記高剛性部が、前記アウタ張出部に対して側面視にて略直交するように形成されたビード部であることを特徴としている。
この構成によれば、より一層補強部材の車幅方向の剛性を増加することができる。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1項の発明において、前記補強部材が、前記サイドシルの後端部と前記ピラーアウタ部材の下端部とを連結すると共に、前記サイドシルが形成する閉断面と、フロントドア用開口縁部に沿って車体上下方向に延びるフロントピラーが形成する閉断面と、ルーフサイドレールが形成する閉断面と、前記リヤドア用開口縁部に沿って車体上下方向に延びるピラーが形成する閉断面とともに前記リヤドア用開口縁部に連なり且つ車幅方向に対して略直交する側部環状構造体の一部を構成することを特徴としている。
この構成によれば、リヤホイールハウスに入力される荷重をリヤドア用開口部周りを構成する側部環状構造体に分散することができ、車体の振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両の側部車体構造によれば、断面略三角形状の閉断面を形成する補強部材によって、設計仕様に拘らず、車体の制振性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係る車両の車幅方向外側斜視図である。
図2】車幅方向外側後部側面図である。
図3】車幅方向内側斜視図である。
図4】車幅方向内側後部側面図である。
図5図1の要部拡大図である。
図6図2のVI-VI線断面図である。
図7図5のVII-VII線断面図である。
図8図3の要部拡大図である。
図9図8からインナレインを省略した要部拡大図である。
図10図8のX-X線断面図である。
図11図3からサスペンションハウジングを省略した図である。
図12図1から補強部材を省略した図である。
図13】第1環状構造体と第2環状構造体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について図1図13に基づいて説明する。
本実施例1に係る車両Vは、車室前側のエンジンルームに縦置き配置されたエンジン(図示略)を備え、後輪で駆動されるFR(Front engine Rear drive)自動車である。
以下、図において、矢印F方向を車体前後方向前方とし、矢印L方向を車幅方向左方とし、矢印U方向を車体上下方向上方として説明する。また、この車両Vは、左右対称の構造であるため、以下、特段の説明がない限り、主に右側部材及び右側部分について説明する。
【0019】
まず、全体構成について説明する。
図1図4に示すように、車両Vは、前後に延びる左右1対のサイドシル1と、これら1対のサイドシル1の間に掛け渡されると共に車室床面を構成するフロアパネル2と、前後に延びる左右1対のルーフサイドレール10と、これら1対のルーフサイドレール10から夫々下方に延びる左右1対のA〜Dピラー21〜24と、1対のCピラー23の下端部に連結された左右1対のリヤホイールハウス30等を備えている。
【0020】
サイドシル1は、鋼板をプレス成形したアウタ部材とインナ部材とにより構成され、両部材が協働して前後に延びる略直線状の閉断面を形成している。
サイドシル1の前端部分に、Aピラー21の下半部に相当するヒンジピラー21aの下端が接続され、中間部分に、Bピラー22の下端が接続されている。
Aピラー21とルーフサイドレール10の前側部分とBピラー22とサイドシル1の前側部分とによって、フロントドア(図示略)のドア用開口縁部Efを形成している。
サイドシル1の後端部分に、リヤホイールハウス30の前端部分が接続されている。
Bピラー22とルーフサイドレール10の後側部分とCピラー23とリヤホイールハウス30の前側部分とサイドシル1の後側部分とによって、リヤドア(図示略)のドア用開口縁部Erを形成している。
【0021】
フロアパネル2の後側部分には、後方上り傾斜状のキックアップ部が形成されている。
キックアップ部の頂部には、1対のリヤホイールハウス30を連結するクロスメンバ3が設けられている。このクロスメンバ3は、断面略クランク状に構成され、フロアパネル2の上面と協働して左右に延びる断面略矩形状の閉断面を形成している。
フロアパネル2には、クロスメンバ3よりも後側で且つ1対のリヤサイドフレーム4の間に下方に凹入したスペアタイヤパンが形成されている。
【0022】
図1図4に示すように、1対のルーフサイドレール10は、ルーフパネル(図示略)の左右端部に夫々配設され、前後1対のヘッダ11,12と、2つのルーフレインフォースメント(以下、ルーフレインと略す)13,14等を備えている。
フロントヘッダ11は、1対のルーフサイドレール10の前端部を連結し、リヤヘッダ12は、1対のルーフサイドレール10の後端部を連結している。リヤヘッダ12には、リフトゲート(図示略)を開閉するための左右1対のヒンジ(図示略)が設置されている。
前側ルーフレイン13は、1対のBピラー22の上端部を左右に連結する位置に配置され、後側ルーフレイン14は、1対のCピラー23の上端部を左右に連結する位置に配置されている。これらルーフレイン13,14は、ルーフパネルと協働して左右に延びる閉断面を夫々形成している。
【0023】
次に、Cピラー23について説明する。
図1図4に示すように、クォータピラーに相当するCピラー23は、前方上り傾斜状に形成され、リヤドア用開口部とクォータウインドウとを前後に区画している。
図5図10に示すように、Cピラー23は、ピラーアウタ側補強部材であるアウタレイン25(ピラーアウタ部材)と、ピラーインナ側補強部材であるインナレイン26(ピラーインナ部材)と、接続部材27等を備えている。
【0024】
アウタレイン25は、例えば、板厚0.9mmの高張力鋼板で構成され、Cピラー23の中段部、具体的には、クォータウインドウの下端部相当位置から後述するアウタ張出部33に亙って下方に延びるように配設されている。
図5図7図10に示すように、アウタレイン25は、左右方向に略直交する側面部25aと、側面部25aの前端から左方に延びる前壁部25bと、側面部25aの後端から左方に延びる後壁部25c等を備え、断面略ハット状に形成されている。
【0025】
このアウタレイン25は、前壁部25b及び後壁部25cの左端部に形成された両フランジ25fがサイドパネル5の右面(車幅方向外側面)に溶接にて接合され、サイドパネル5と協働して上下に延びる第1閉断面C1を形成している。
第1閉断面C1は、ドア用開口縁部Erに連なると共にドア用開口縁部Erの後端部分に部分的に沿うように構成されている。
図1図2図5図6に示すように、アウタレイン25の下端部は、アウタ張出部33の上面に溶接にて接合されている。
【0026】
アウタレイン25には、リヤドアに設けられたラッチ機構(図示略)が係合可能なストライカ28(図10参照)が取り付けられている。
図5図10に示すように、前壁部25bの後面にはストライカ28を固定するための取付プレート29が固着されている。取付プレート29の中間部分に形成された固定部が、前壁部25bに設定された溶接位置P1に溶接にて接合されている。
【0027】
インナレイン26は、例えば、板厚1.2mmの冷間圧延鋼板で構成され、Cピラー23の中段部からサスペンションハウジング40のブレース部41に亙って下方に延びるように配設されている。
図6図8図10に示すように、インナレイン26は、左右方向に略直交する側面部26aと、側面部26aの前端から右方に延びる前壁部26bと、側面部26aの後端から右方に延びる後壁部26c等を備え、断面略ハット状に形成されている。
【0028】
このインナレイン26は、前壁部26b及び後壁部26cの右端部に形成された両フランジ26fがサイドパネル5の左面(車幅方向内側面)に溶接にて接合され、サイドパネル5と協働して上下に延びる第2閉断面C2を形成している。
第2閉断面C2は、Cピラー23の上半部を介して後側ルーフレイン14に連なると共にドア用開口縁部Erの後端部分に部分的に沿うように構成されている。
図3図4図6に示すように、インナレイン26の下端部は、ブレース部41の上端部分に溶接にて接合されている。
【0029】
ここで、サスペンションハウジング40について説明する。
図3に示すように、サスペンションハウジング40は、リヤサスペンションのダンパ支持部(図示略)をリヤサイドフレーム4に接続するように構成されている。
このサスペンションハウジング40は、例えば、ダイカストによって成形されたアルミ合金製部材であり、補強部としてのブレース部41を備えている。
ブレース部41は、前後方向に略直交するように配置され、サスペンションハウジング40の前端部分に一体形成されている。
【0030】
ブレース部41は、断面略ハット状に構成され、後述するホイールハウスインナ32の左面と協働して上下に延びる断面略矩形状の閉断面を形成している。
このブレース部41の下端部は、クロスメンバ3の右端部に溶接にて接合されている。
図11に示すように、インナレイン26の下端部とクロスメンバ3の右端部とが上下方向に離隔しているものの、ブレース部41を介して両部材を連結することにより、インナレイン26が形成する第2閉断面C2とクロスメンバ3が形成する閉断面とがブレース部41が形成する閉断面を介して接続されている。
【0031】
次に、接続部材27について説明する。
図6図10に示すように、接続部材27は、例えば、板厚1.2mmの冷間圧延鋼板で構成され、取付プレート29の左側近傍位置に配置されている。
接続部材27は、左右方向に略直交する側壁部27aと、上下方向に略直交する横壁部27bと、前後方向に略直交する縦壁部27cとを備えている。
側壁部27aには、中間領域に左方へ突出する突出部が部分的に形成されている。
これにより、側壁部27aは、後述するホイールハウスアウタ31の左面と協働して第3閉断面C3を形成している。
【0032】
側壁部27aは、2点の溶接位置P2にてアウタレイン25の前側フランジ25f及びホイールハウスアウタ31に接合され、2点の溶接位置P3にてホイールハウスアウタ31及びホイールハウスインナ32に接合され、溶接位置P4にてホイールハウスアウタ31に接合され、溶接位置P5にてホイールハウスアウタ31及びインナレイン26の前側フランジ26fに接合されている。
側壁部27aの2点の溶接位置P2は、取付プレート29の溶接位置P1の高さ位置と略同じ高さに設定されている。
【0033】
図8図9に示すように、横壁部27bは、3点の溶接位置P6にてホイールハウスインナ32に接合され、溶接位置P7にてホイールハウスインナ32及びインナレイン26の前側フランジ26fに接合されている。
縦壁部27cは、3点の溶接位置P8にてインナレイン26の前壁部26bに接合されている。
【0034】
次に、リヤホイールハウス30について説明する。
図1図4に示すように、リヤホイールハウス30は、サイドパネル5から右側(車幅方向外側)に膨出するホイールハウスアウタ31と、サイドパネル5から左側(車幅方向内側)に膨出するホイールハウスインナ32とを備えている。
【0035】
図5図6に示すように、ホイールハウスアウタ31は、例えば、板厚0.6mmの冷間圧延鋼板で構成され、側面視にて略半円状のアウタ張出部33と、このアウタ張出部33の左端から上方に延びる縦壁状のアウタフランジ部34とを備えている。
アウタフランジ部34の前側部分は、ドア用開口縁部Erの後側部分に沿って形成されている。
【0036】
アウタフランジ部34の後側部分は、サイドパネル5の下半部と一体的に構成され、サイドパネル5の上半部下端に溶接にて接合されている。
それ故、図8図10に示すように、アウタフランジ部34は、溶接位置P2にて前側フランジ25fと側壁部27aとの間に挟持された状態で接合され、溶接位置P4にて側壁部27aに接合されている。また、溶接位置P3にて側壁部27aとの間にインナフランジ部36を挟持し、溶接位置P5にて前側フランジ26fとの間に側壁部27aを挟持している。
【0037】
図6図8図9に示すように、ホイールハウスインナ32は、例えば、板厚0.65mmの冷間圧延鋼板で構成され、側面視にて略半椀状のインナ張出部35と、このインナ張出部35の右端から上方に延びる略円弧状のインナフランジ部36とを備えている。
インナ張出部35の右端がアウタ張出部33の左端に略一致する状態でインナフランジ部36の右面がアウタフランジ部34の左面に面接触状態で溶接にて接合されている。
【0038】
図1図2図5図6に示すように、ホイールハウスアウタ31の前側部分に、ホイールハウスアウタ31(ドア用開口縁部Erの後側部分)の湾曲形状に沿った補強部材37が配設されている。
補強部材37は、例えば、板厚0.8mmの高張力鋼板で構成され、アウタ張出部33及びアウタフランジ部34と協働して断面三角形状の第4閉断面C4を形成している。
補強部材37は、上側部分が、アウタフランジ部34の前側部分に接合され、下側部分が、アウタ張出部33の前側部分に接合されている。更に、補強部材37の前側部分が、サイドシル1の後端上部に溶接にて接合され、後側部分が、アウタレイン25の下端前部に溶接にて接合されている。補強部材37が形成する第4閉断面C4の成形後、アウタフランジ部34とインナフランジ部36とが開口部37aを介して接合される。
【0039】
図5に示すように、補強部材37は、複数、例えば、7つの開口部37aと、複数、例えば、8つのビード部37bとを備えている。
略楕円形状の開口部37aは、第4閉断面C4の内外を連通するように形成されている。
アウタフランジ部34とインナフランジ部36を溶接する際、溶接用電極が第4閉断面C4内に開口部37aを介して挿通される。
【0040】
ビード部37bは、第4閉断面C4内に凹入するように構成され、側面視にてアウタ張出部33に対して略直交状(放射状)となる位置に形成されている。
このビード部37bは、隣り合う開口部37aの間、換言すれば、隣り合うビード部37bが開口部37aを挟み込むように配設されている。
図12に示すように、アウタレイン25の下端部とサイドシル1の後端部とが離隔しているものの、補強部材37を介して両部材を連結することにより、アウタレイン25が形成する第1閉断面C1とサイドシル1が形成する閉断面とが補強部材37が形成する第4閉断面C4を介して接続されている。
【0041】
以上の説明のように、車両Vは、左右1対の第1環状構造体S1(側部環状構造体)と、これら1対の第1環状構造体S1の後側部分を連結する第2環状構造体S2とを有している。
図13に示すように、1対の第1環状構造体S1は、左右方向に略直交するように配置されたドア開口部を夫々構成している。
第1環状構造体S1は、サイドシル1が形成する閉断面と、Aピラー21が形成する閉断面と、ルーフサイドレール10が形成する閉断面と、Cピラー23が形成する閉断面と、
アウタレイン25が形成する第1閉断面C1と、補強部材37が形成する第4閉断面C4によって構成されている。
【0042】
第2環状構造体S2は、前後方向に略直交するように配置されている。
第2環状構造体S2は、左右1対のCピラー23が形成する閉断面と、左右1対のインナレイン26が形成する第2閉断面C2と、左右1対のブレース部41が形成する閉断面と、クロスメンバ3が形成する閉断面と、後側ルーフレイン14が形成する閉断面によって構成されている。
これにより、サスペンションハウジング40に入力された荷重は、第1,第2環状構造体S1,S2をロードパスとして伝搬され、各骨格部材に分散される。
また、リヤドアの開閉荷重は、ストライカ28(取付プレート29)からアウタレイン25を介してルーフサイドレール10に伝搬されると共に、接続部材27を介してインナレイン26に伝搬して第2環状構造体S2側にも分散される。
【0043】
次に、上記側部車体構造の作用、効果について説明する。
実施例1に係る側部車体構造によれば、ホイールハウスアウタ31が、車幅方向外側に張り出すアウタ張出部33と、アウタ張出部33の車幅方向内側端部から上方に延びるアウタフランジ部34とを有し、アウタ張出部33及びアウタフランジ部34と協働して断面略三角形状の閉断面を形成する補強部材37を設けたため、ドア用開口縁部Erとホイールハウスアウタ31のアウタ張出部33との隙間が接近する車体仕様であっても、アウタ張出部33に沿って第4閉断面C4を形成するスペースを確保することができる。
また、補強部材37が、アウタ張出部33及びアウタフランジ部34と協働して断面略三角形状の第4閉断面C4を形成するため、リヤホイールハウス30に内倒れ方向の力が作用しても、補強部材37が形成する第4閉断面C4がマッチ箱変形することを防止でき、リヤホイールハウス30の捩れ変形を回避することができる。
【0044】
ホイールハウスインナ32が、車幅方向内側に張り出すインナ張出部35と、インナ張出部35の車幅方向内側端部から上方に延び且つアウタフランジ部34と面接触状態で接合されるインナフランジ部36とを有し、補強部材37が、第4閉断面C4の内外を連通する開口部37aを備えている。これにより、補強部材37が形成する第4閉断面C4の成形後、開口部37aを溶接電極の作業穴としてアウタフランジ部34とインナフランジ部36とを所謂拝み合わせ接合することで剛性を向上できる。
【0045】
アウタフランジ部34とインナフランジ部36の接合部は、側面視にて開口部37aに対応するように配設されたため、アウタフランジ部34とインナフランジ部36とを開口部37aを介して容易に接合することができる。
【0046】
補強部材37が開口部37aを複数備えると共に、複数の開口部37aのうち隣り合う開口部37aの間にビード部37bが形成されたため、補強部材37の剛性を維持することで断面略三角形状の閉断面の剛性を増加しつつ、接合作業性を確保することができる。
【0047】
ビード部37bが、アウタ張出部33に対して側面視にて略直交するように形成されたため、より一層補強部材37の車幅方向の剛性を増加することができる。
【0048】
補強部材37が、サイドシル1の後端部とアウタレイン25の下端部とを連結すると共に、サイドシル1が形成する閉断面と、フロントドア用開口縁部Efに沿って車体上下方向に延びるAピラー21が形成する閉断面と、ルーフサイドレール10が形成する閉断面と、リヤドア用開口縁部Erに沿って車体上下方向に延びるCピラー23が形成する閉断面とともにリヤドア用開口縁部Erに連なり且つ車幅方向に対して略直交する第1環状構造体S1の一部を構成している。これにより、リヤホイールハウス30に入力される荷重をリヤドア用開口部Er周りを構成する第1環状構造体S1に分散することができ、車体の振動を抑制することができる。
【0049】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、縦置きエンジンを備えたハッチバックタイプのFR車両の例を説明したが、横置きエンジンを備えたセダンタイプのFF車両に適用しても良く、駆動形式や車体形式等に拘りなく、何れの車両に対しても本発明を適用することが可能である。
【0050】
2〕前記実施形態においては、開口部とビード部とを備えた補強部材の例を説明したが、何れも必須ではなく、開口部とビード部のうち一方を省略しても良く、両方を省略しても良い。また、開口部及びビード部の個数や形状等は、任意に設定可能である。
【0051】
3〕前記実施形態においては、サイドパネルの下半部をホイールハウスアウタのアウタフランジ部と一体形成した例を説明したが、サイドパネルの下半部をインナフランジ部と一体形成しても良い。また、サイドパネルの下半部をリヤホイールハウスとは別部材で構成することも可能である。
【0052】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0053】
1 サイドシル
23 Cピラー
25 アウタレイン
31 ホイールハウスアウタ
32 ホイールハウスインナ
33 アウタ張出部
34 アウタフランジ部
35 インナ張出部
36 インナフランジ部
37 補強部材
37a 開口部
37b ビード部
S1 第1環状構造体
C1 第1閉断面
C4 第4閉断面
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13