特開2020-169268(P2020-169268A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2020-169268エポキシ化合物、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、プリプレグ、繊維強化複合材料、及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-169268(P2020-169268A)
(43)【公開日】2020年10月15日
(54)【発明の名称】エポキシ化合物、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、プリプレグ、繊維強化複合材料、及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20200918BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20200918BHJP
【FI】
   C08G59/32
   C08J5/24CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-71339(P2019-71339)
(22)【出願日】2019年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小澤 優
(72)【発明者】
【氏名】桑原 広明
【テーマコード(参考)】
4F072
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB10
4F072AD31
4F072AE01
4F072AF28
4F072AG03
4F072AJ22
4F072AL04
4F072AL05
4F072AL13
4J036AB03
4J036AB12
4J036AH18
4J036DA02
4J036FA02
4J036HA12
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現するエポキシ化合物を提供することにある。
【解決手段】
本発明のエポキシ化合物は、化学式(1)で表されるエポキシ化合物である。
(ただし、化学式(1)中、Ar〜Arは各々独立に芳香族基または複素環基である。)
本発明において、Ar〜Arは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環のいずれかの環構造を有する芳香族基であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるエポキシ化合物。
【化1】
(ただし、化学式(1)中、Ar〜Arは、各々独立に、芳香族基または複素環基である。)
【請求項2】
Ar〜Arが、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環のいずれかの環構造を有する芳香族基である請求項1に記載のエポキシ化合物。
【請求項3】
請求項1または2の何れか1項に記載のエポキシ化合物を、HPLC測定における面積比率で50%以上の割合で含有するエポキシ樹脂。
【請求項4】
少なくとも請求項1または2の何れか1項に記載のエポキシ化合物と、硬化剤と、を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4のエポキシ樹脂組成物が硬化されて成る樹脂硬化物。
【請求項6】
強化繊維基材と、前記強化繊維基材内に含浸された請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物と、から成るプリプレグ。
【請求項7】
前記強化繊維基材が炭素繊維から成る強化繊維基材である請求項6に記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項4のエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材内に含浸させるプリプレグの製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載の樹脂硬化物と、強化繊維基材と、を含んで成る繊維強化複合材料。
【請求項10】
請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材内に含浸して硬化させる繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項11】
請求項6または7の何れか1項に記載のプリプレグを硬化させる繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、繊維強化複合材料、及びこれらの製造方法に関する。更に詳述すれば、新規構造を有するエポキシ化合物;このエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂;このエポキシ化合物を含んで成るエポキシ樹脂組成物;このエポキシ樹脂組成物が硬化されて成る樹脂硬化物;このエポキシ樹脂組成物を含むプリプレグ;この樹脂硬化物を含む繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物は、医薬品、樹脂、接着剤、塗料等の原料として広く用いられている。特に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物は、適切な硬化剤と反応させて硬化させることにより、耐熱性や耐薬品性、機械特性等に優れた樹脂硬化物が得られる。そのため、特に、繊維強化複合材料(以下、「FRP」と略記する場合があり、特に強化繊維基材が炭素繊維である場合は「CFRP」と略記する場合がある)のマトリクス樹脂や、半導体封止剤やプリント配線板用絶縁材料などのエレクトロニクス材料用樹脂としても広く利用されている。
【0003】
繊維強化複合材料は、軽量かつ高強度、高剛性であるため、釣り竿やゴルフシャフト等のスポーツ・レジャー用途、自動車用途、航空機用途、その他の産業用途等の幅広い分野で用いられている。
【0004】
中でも、航空機用途では、繊維強化複合材料に対して、耐熱、耐衝撃特性等の高い力学特性が要求される。しかし、エポキシ樹脂をマトリクス樹脂として得られる繊維強化複合材料は、吸水時の特性が不十分であり、吸水時に耐熱性や力学特性が低下する場合があった。
【0005】
この課題を解決するため、例えば、特許文献1には、ポリイソシアネート化合物をエポキシ樹脂と併用することで、エポキシ樹脂硬化物の耐湿熱特性を改善することが提案されている。しかしながら、高温高湿環境における力学特性は十分ではなかった。
【0006】
また、特許文献2には、特定のエポキシ樹脂、特定の酸無水物、特定のアミン系化合物粒子を用いることで、吸水高温状態でも高い剛性を有する樹脂硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物について記載されている。しかしながら、特に航空機用途に用いるエポキシ樹脂としては、力学特性は満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5319673号公報
【特許文献2】特開平11−302507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現するエポキシ化合物を提供することにある。また、本発明の更なる目的は、このエポキシ化合物を利用するエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、所定の構造を有するエポキシ化合物を用いることにより、高温高湿環境においても高い力学物性を発現する樹脂硬化物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記課題を達成する本発明のエポキシ化合物は、下記化学式(1)で表されるエポキシ化合物である。
【化1】
(ただし、化学式(1)中、Ar〜Arは各々独立に芳香族基または複素環基である。)
【0011】
本発明において、Ar〜Arは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環のいずれかの環構造を有する芳香族基であることが好ましい。
本発明は、上記エポキシ化合物を、HPLC測定における面積比率で50%以上の割合で含有するエポキシ樹脂、上記エポキシ化合物と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物、強化繊維基材と強化繊維基材内に含浸された前記エポキシ樹脂組成物とから成るプリプレグ、および前記エポキシ樹脂の硬化物と強化繊維基材とを含んで成る繊維強化複合材料を包含する。
本発明において、強化繊維基材は炭素繊維から成る強化繊維基材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエポキシ化合物は、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現する樹脂硬化物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のエポキシ化合物、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、繊維強化複合材料、及びこれらの製造方法について説明する。なお、本明細書においてエポキシ化合物とは、各化学式で表される化合物自体を意味する。また、エポキシ樹脂とは、該エポキシ化合物を含有する混合物を意味する。即ち、エポキシ樹脂は、エポキシ化合物の合成時に生成する各種副生成物や未反応物を含んでいても良い。エポキシ樹脂組成物とは、少なくともエポキシ化合物と、その硬化剤と、を含む未硬化乃至半硬化状態の組成物を意味する。樹脂硬化物(以下、「硬化樹脂」ともいう)とは、エポキシ樹脂組成物が硬化反応して得られる硬化体を意味する。
【0014】
1. エポキシ化合物
本発明のエポキシ化合物は、下記化学式(1)で表されるエポキシ化合物である。
このエポキシ化合物は、ジグリシジルアミン及びエーテル結合を有する4つの芳香環または複素環がネオペンタン骨格を介して結合して成るエポキシ化合物である。この構造により生じる硬化樹脂の特殊な立体構造およびネットワーク構造に起因して、耐湿熱性及び高温高湿環境においても、優れた力学物性を得ることができる。
【0015】
【化2】
(ただし、化(1)中、Ar〜Arは各々独立に芳香族基または複素環基である。)
【0016】
化(1)中、Ar〜Arは、各々独立に、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族基、ハロゲン原子、のいずれかを置換基として有していてもよい。これらの置換基の中でも、得られる硬化物の弾性率などの力学特性や耐熱性、熱膨張係数などの熱特性の観点からは、Ar〜Arが無置換の芳香環または複素環であることが好ましく、低粘度の観点からは、Ar〜Arが置換基として脂肪族炭化水素基を有する芳香族基または複素環基であることが好ましい。
【0017】
本発明において、Ar〜Arは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環のいずれかの環構造を有する芳香族基であることが好ましい。これらの構造の中でも、低粘度や合成の容易さの観点からはベンゼン環がより好ましく、得られる硬化物の弾性率などの力学特性や耐熱性、熱膨張係数などの熱特性の観点からは、縮合環構造を有するナフタレン環またはアントラセン環がより好ましい。
【0018】
このようなエポキシ化合物は、どのような方法で合成しても良いが、例えば、原料である芳香族テトラアミン化合物とエピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンとを酸触媒の存在下で反応させてオクタハロヒドリン体を得た後、アルカリ性化合物を用いて環化反応することにより得られる。より具体的には、後述の実施例の方法で合成することができる。
【0019】
原料である芳香族テトラアミンとしては、それぞれアミン及びエーテル結合を有する4つの芳香環が、ネオペンタン骨格を介して結合して成る芳香族テトラアミンであればよい。このような芳香族テトラアミンとしては、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス(o−アミノフェニル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(m−アミノフェニル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(p−アミノフェニル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(1−アミノ−2−ナフチル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(2−アミノ−1−ナフチル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(1−アミノ−3−ナフチル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(3−アミノ−1−ナフチル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(1−アミノ−4−ナフチル)エーテル、などが挙げられる。これらの構造の中でも、低粘度や合成の容易さの観点からは、ペンタエリスリチルテトラキス(o−アミノフェニル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(m−アミノフェニル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(p−アミノフェニル)エーテルなどのベンゼン環構造を有する芳香族テトラアミンが好ましく、得られる硬化物の弾性率などの力学特性や耐熱性、熱膨張係数などの熱特性の観点からは、ペンタエリスリチルテトラキス(1−アミノ−2−ナフチル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(2−アミノ−1−ナフチル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(1−アミノ−3−ナフチル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(3−アミノ−1−ナフチル)エーテル、ペンタエリスリチルテトラキス(1−アミノ−4−ナフチル)エーテルなどの縮合環構造を有する芳香族テトラアミンが好ましい。
【0020】
エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピフルオロヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの中でも、反応性や取扱性の観点から、エピクロロヒドリンおよびエピブロモヒドリンが特に好ましく、工業的に入手の容易なエピクロロヒドリンが更に好ましい。
【0021】
芳香族テトラアミンとエピハロヒドリンとの重量比は1:1〜1:20が好ましく、1:3〜1:10がより好ましい。反応時に用いる溶媒としては、エタノールやn−ブタノールなどのアルコール系溶媒、メチルイソブチルケトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリルやN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が例示される。特にエタノールやn−ブタノールなどのアルコール系溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。溶媒の使用量は芳香族テトラアミンに対して1〜10重量倍であることが好ましい。酸触媒としてはブレンステッド酸とルイス酸のいずれも好適に用いることができ、特にブレンステッド酸としてはエタノールや水、酢酸が、ルイス酸としては四塩化チタンや硝酸ランタン六水和物、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体が好ましい。
【0022】
反応時間は、0.1〜180時間であることが好ましく、0.5〜24時間がより好ましい。反応温度は、20〜100℃であることが好ましく、40〜80℃がより好ましい。
【0023】
環化反応時に用いるアルカリ性化合物としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが例示される。アルカリ性化合物は固体として添加しても水溶液として添加しても良い。環化反応時には相間移動触媒を用いても良い。相間移動触媒としては塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩、臭化トリブチルヘキサデシルホスホニウム、臭化トリブチルドデシルホスホニウムなどのホスホニウム化合物、18−クラウン−6−エーテルなどのクラウンエーテル類が例示される。
【0024】
上記のような本発明のエポキシ化合物は、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現する樹脂硬化物を製造することができる。
【0025】
2. エポキシ樹脂
上記化学式(1)で表されるエポキシ化合物は合成後必ずしも単離される必要はなく、上記化学式(1)の合成時に生成する副生物や未反応物を含んだエポキシ樹脂として用いても良い。本発明のエポキシ樹脂は、上記化学式(1)で表されるエポキシ化合物をHPLC測定における面積比率で50%以上の割合で含有するエポキシ樹脂である。本発明のエポキシ樹脂は、上記化学式(1)で表されるエポキシ化合物を、HPLC測定における面積比率で60%以上の割合で含有することが好ましく、70%以上含有することが更に好ましい。50%以上の割合で含有することにより、耐湿熱性及び高温高湿環境における力学物性を高くすることができる。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂は、50℃における粘度が50Pa・s未満であることが好まし
く、10Pa・s未満であることがより好ましく、5.0Pa・s未満であることが更に
好ましく、2.0Pa・s未満であることが特に好ましい。
【0027】
上記のような本発明のエポキシ樹脂は、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現する樹脂硬化物を製造することができる。
【0028】
3. エポキシ樹脂組成物
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも本発明のエポキシ化合物と、硬化剤とを含んで成る未硬化乃至半硬化状態の組成物である。本発明のエポキシ樹脂組成物は、これらの他に、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、その他の添加剤を含んでいても良い。また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化される際にエポキシ化合物と硬化剤とがともにあれば良い。用いる成形方法に応じて、あらかじめエポキシ化合物と硬化剤を含む組成物を調整しても良いし、エポキシ化合物を含む組成物と硬化剤を含む組成物とを別に調整し、例えば成形型内などで混合しても良い。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度は、成形方法に応じて適宜調整すれば良いが、例えば、プリプレグとして用いる場合、50℃における粘度が500Pa・s未満であることが好ましく、0.001〜100Pa・sであることがより好ましい。500Pa・sを超える場合、取扱性が低下する場合がある。また、このエポキシ樹脂組成物を用いてプリプレグを作製する場合、プリプレグに未含浸部分が生じ易くなる。その結果、得られる繊維強化複合材料においてボイド等が形成され易くなる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物における、上記化学式(1)で表されるエポキシ化合物の含有割合は、10〜90質量%であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましく、20〜70質量%であることが更に好ましい。10質量%未満の場合、得られる硬化樹脂の耐湿熱特性や高温高湿環境における力学物性が低下したりする場合がある。90質量%よりも多い場合、硬化剤とのモルバランスが不適当となり、硬化物の力学物性など各種特性が低下する場合がある。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させる公知の硬化剤である。硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させる物であれば良く、使用目的等に応じて適宜選択される。
【0032】
具体的には、ジシアンジアミドなどの潜在性硬化剤、脂肪族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類、アミノ安息香酸エステル類、酸無水物類が挙げられる。本発明のエポキシ化合物を、繊維強化複合材料のマトリクス樹脂として用いる場合、組み合わせる硬化剤としては、ジシアンジアミドなどの潜在性硬化剤、脂肪族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類が得られる物性の面から好ましく、芳香族ポリアミン類が特に好ましい。
【0033】
ジシアンジアミドなどの潜在性硬化剤は、樹脂組成物やプリプレグの保存安定性に優れるため好ましい。
【0034】
脂肪族ポリアミン類は反応性が高く、低温での硬化反応が可能となるため好ましい。脂肪族ポリアミン類としては4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、m−キシリレンジアミン等が例示される。
【0035】
芳香族ポリアミンは耐熱性や各種力学特性に優れるため好ましい。芳香族ポリアミン類としてはジアミノジフェニルスルホン類、ジアミノジフェニルメタン類、トルエンジアミン誘導体が例示される。4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン化合物及びこれらの非反応性置換基を有する誘導体は、耐熱性が高い硬化物を得ることができるため、特に好ましい。3,3’−ジアミノジフェニルスルホンは、得られる樹脂硬化物の耐熱性や弾性率が高いため更に好ましい。非反応性置換基としては、メチル、エチル、イソプロピルなどのアルキル基、フェニルなどの芳香族基、アルコキシル基、アラルキル基、塩素や臭素などのようなハロゲン基が例示される。また、未硬化のエポキシ樹脂組成物の保存安定性を向上させるとともに樹脂硬化物の吸水特性を優れたものとするため、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)などのヒンダードアミン系化合物も好適に用いられる。
【0036】
アミノ安息香酸エステル類としては、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエートやネオペンチルグリコールジ−p−アミノベンゾエートが好ましく用いられる。これら硬化剤を用いて硬化させた硬化樹脂や繊維強化複合材料は、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体を用いて硬化させた硬化樹脂や繊維強化複合材料と比較して、耐熱性は低いが、引張伸度が高い。
【0037】
酸無水物類としては、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。これら硬化剤を用いた場合、未硬化樹脂組成物のポットライフが長く、電気的特性、化学的特性、機械的特性などに比較的バランスがとれた硬化物が得られる。そのため、硬化樹脂の用途に応じて硬化剤は適宜選択される。
【0038】
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の量は、エポキシ樹脂組成物中に配合されている全てのエポキシ樹脂を硬化させるのに適した量であり、用いるエポキシ樹脂や硬化剤の種類に応じて適宜調節される。例えば、芳香族ジアミン化合物を硬化剤として用いる場合、全エポキシ樹脂量100質量部に対して25〜65質量部であることが好ましく、35〜55質量部であることがより好ましい。25質量部未満或いは65質量部を超える場合、エポキシ樹脂組成物の硬化が不十分となり、硬化樹脂の物性を低下させ易い。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記のエポキシ化合物とその硬化剤とを必須とするが、その他の成分を含んでいても良い。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記のエポキシ化合物を必須とするが、その他本発明のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含んでいても良い。その他のエポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。具体的には、芳香族基を含有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン構造、グリシジルエーテル構造のいずれかを含有するエポキシ樹脂が好ましい。また、脂環族エポキシ樹脂も好適に用いることができる。化学式(1)で表されるエポキシ化合物と他のエポキシ樹脂を併用する場合、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂に占める化学式(1)で表されるエポキシ化合物の含有割合は、20質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60〜100質量%であることが更に好ましい。
【0041】
グリシジルアミン構造を含有するエポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−3−メチル−4−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体などが例示される。
【0042】
グリシジルエーテル構造を含有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が例示される。
【0043】
また、これらのエポキシ樹脂は、必要に応じて、芳香族環構造などに、非反応性置換基を有していても良い。非反応性置換基としては、メチル、エチル、イソプロピルなどのアルキル基やフェニルなどの芳香族基やアルコキシル基、アラルキル基、塩素や臭素などの如くハロゲン基などが例示される。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含んでいても良い。その他の熱硬化性樹脂としては、従来公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。具体的には、シアネート樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、ビニルエステル樹脂などが例示される。これらその他の熱硬化性樹脂の含有割合は、発明の効果を阻害しない範囲であれば特に制限は受けないが、エポキシ樹脂組成物中の含有割合は1〜50質量%の割合であることが好ましい。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物は熱可塑性樹脂を含んでいても良い。熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂とエポキシ樹脂不溶性熱可塑性樹脂とが挙げられる。
【0046】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂組成物の粘度を調整するとともに、得られる硬化樹脂やFRPの耐衝撃性を向上させる。
【0047】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂とは、FRPを成形する温度又はそれ以下の温度において、エポキシ樹脂に一部又は全部が溶解し得る熱可塑性樹脂である。ここで、エポキシ樹脂に一部が溶解するとは、エポキシ樹脂100質量部に対して、平均粒子径が20〜50μmの熱可塑性樹脂10質量部を混合して190℃で1時間撹拌した際に粒子が消失するか、粒子の大きさが10%以上変化することを意味する。
【0048】
一方、エポキシ樹脂不溶性熱可塑性樹脂とは、FRPを成形する温度又はそれ以下の温度において、エポキシ樹脂に実質的に溶解しない熱可塑性樹脂をいう。即ち、エポキシ樹脂100質量部に対して、平均粒子径が20〜50μmの熱可塑性樹脂10質量部を混合して190℃で1時間撹拌した際に、粒子の大きさが10%以上変化しない熱可塑性樹脂をいう。なお、一般的に、FRPを成形する温度は100〜190℃である。また、粒子径は、顕微鏡によって目視で測定され、平均粒子径とは、無作為に選択した100個の粒子の粒子径の平均値を意味する。
【0049】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂が完全に溶解していない場合は、エポキシ樹脂の硬化過程で加熱されることによりエポキシ樹脂に溶解し、エポキシ樹脂組成物の粘度を増加させることができる。これにより、硬化過程における粘度低下に起因するエポキシ樹脂組成物のフロー(プリプレグ内から樹脂組成物が流出する現象)を防止することができる。
【0050】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、190℃でエポキシ樹脂に80質量%以上溶解する樹脂が好ましい。
【0051】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の具体的例としては、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が8000〜100000の範囲のポリエーテルスルホン、ポリスルホンが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が8000よりも小さいと、得られるFRPの耐衝撃性が不十分となり、また100000よりも大きいと粘度が著しく高くなり取扱性が著しく悪化する場合がある。エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の分子量分布は均一であることが好ましい。特に、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1〜10の範囲であることが好ましく、1.1〜5の範囲であることがより好ましい。
【0052】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂と反応性を有する反応基又は水素結合を形成する官能基を有していることが好ましい。このようなエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂の硬化過程中における溶解安定性を向上させることができる。また、硬化後に得られるFRPに靭性、耐薬品性、耐熱性及び耐湿熱性を付与することができる。
【0053】
エポキシ樹脂との反応性を有する反応基としては、水酸基、カルボン酸基、イミノ基、アミノ基などが好ましい。水酸基末端のポリエーテルスルホンを用いると、得られるFRPの耐衝撃性、破壊靭性及び耐溶剤性が特に優れるためより好ましい。
【0054】
エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の含有量は、粘度に応じて適宜調整される。プリプレグの加工性の観点から、エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂100質量部に対して、5〜90質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましく、15〜35質量部がさらに好ましい。5質量部未満の場合は、得られるFRPの耐衝撃性が不十分となる場合がある。エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の含有量が高くなると、粘度が著しく高くなり、プリプレグの取扱性が著しく悪化する場合がある。
【0055】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂には、アミン末端基を有する反応性芳香族オリゴマー(以下、単に「芳香族オリゴマー」ともいう)を含むことが好ましい。
【0056】
エポキシ樹脂組成物は、加熱硬化時にエポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応により高分子量化する。高分子量化により二相域が拡大することによって、エポキシ樹脂組成物に溶解していた芳香族オリゴマーは、反応誘起型の相分離を引き起こす。この相分離により、硬化後のエポキシ樹脂と、芳香族オリゴマーと、が共連続となる樹脂の二相構造をマトリックス樹脂内に形成する。また、芳香族オリゴマーはアミン末端基を有していることから、エポキシ樹脂との反応も生じる。この共連続の二相構造における各相は互いに強固に結合しているため、耐溶剤性も向上している。
【0057】
この共連続の構造は、硬化樹脂に対する外部からの衝撃を吸収してクラック伝播を抑制する。その結果、アミン末端基を有する反応性芳香族オリゴマーを含むエポキシ樹脂組成物を用いて作製される硬化樹脂は、高い耐衝撃性及び破壊靭性を有する。
【0058】
この芳香族オリゴマーとしては、公知のアミン末端基を有するポリスルホン、アミン末端基を有するポリエーテルスルホンを用いることができる。アミン末端基は第一級アミン(−NH)末端基であることが好ましい。
【0059】
エポキシ樹脂組成物に配合される芳香族オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が8000〜40000であることが好ましい。重量平均分子量が8000未満である場合、マトリクス樹脂の靱性向上効果が低い。また、重量平均分子量が40000を超える場合、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、強化繊維層内に樹脂組成物が含浸しにくくなる等の加工上の問題点が発生しやすくなる。
【0060】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されないが、粒子状であることが好ましい。粒子状のエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、樹脂組成物中に均一に配合することができる。また、得られるプリプレグの成形性が高い。
【0061】
エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の平均粒子径は、1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。平均粒子径が小さすぎる場合、エポキシ樹脂組成物の粘度が著しく増粘する。そのため、エポキシ樹脂組成物に十分な量のエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂を添加することが困難となる場合がある。平均粒子径が大きすぎる場合、エポキシ樹脂組成物をシート状に加工する際、均質な厚みのシートが得られ難くなる場合がある。また、エポキシ樹脂への溶解速度が遅くなり、得られるFRPが不均一となる場合がある。
【0062】
エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の他に、エポキシ樹脂不溶性熱可塑性樹脂を含有しても良い。エポキシ樹脂不溶性熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の一部(硬化後のマトリクス樹脂において溶解せずに残存したエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂)は、その粒子が硬化樹脂中に分散する状態となる。この粒子は、硬化樹脂が受ける衝撃の伝播を抑制する。その結果、得られる硬化樹脂の耐衝撃性が向上する。
【0063】
エポキシ樹脂不溶性熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール、各種エラストマーが例示される。これらの中でも、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、各種エラストマーは、靭性及び耐熱性が高いため好ましい。ポリアミドやポリイミドは、硬化樹脂に対する靭性向上効果が特に優れている。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。また、これらの共重合体を用いることもできる。
【0064】
特に、非晶性ポリイミドや、ナイロン6(登録商標)(カプロラクタムの開環重縮合反応により得られるポリアミド)、ナイロン11(ウンデカンラクタムの開環重縮合反応により得られるポリアミド)、ナイロン12(ラウリルラクタムの開環重縮合反応により得られるポリアミド)、ナイロン1010(セバシン酸と1,10−デカンジアミンとの共重反応により得られるポリアミド)、非晶性のナイロン(透明ナイロンとも呼ばれ、ポリマーの結晶化が起こらないか、ポリマーの結晶化速度が極めて遅いナイロン)のようなポリアミドを使用することにより、得られる硬化樹脂の耐熱性を特に向上させることができる。
【0065】
エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂不溶性熱可塑性樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物の粘度に応じて適宜調整される。エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、10〜45質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることがさらに好ましい。5質量部未満の場合、得られる硬化樹脂の耐衝撃性が不十分になる場合がある。50質量部を超える場合、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、取扱性が低下する場合がある。
【0066】
エポキシ樹脂不溶性熱可塑性樹脂の好ましい平均粒子径や形態は、エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂と同様である。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、導電性粒子や難燃剤、無機系充填剤、内部離型剤が配合されてもよい。
【0068】
導電性粒子としては、ポリアセチレン粒子、ポリアニリン粒子、ポリピロール粒子、ポリチオフェン粒子、ポリイソチアナフテン粒子及びポリエチレンジオキシチオフェン粒子等の導電性ポリマー粒子;カーボン粒子;炭素繊維粒子;金属粒子;無機材料又は有機材料から成るコア材を導電性物質で被覆した粒子が例示される。
【0069】
難燃剤としては、リン系難燃剤が例示される。リン系難燃剤としては、分子中にリン原子を含むものであれば特に限定されず、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物、ポリリン酸塩などの有機リン化合物や赤リンが挙げられる。
【0070】
無機系充填材としては、例えば、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、硫酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸塩鉱物が挙げられる。特に、ケイ酸塩鉱物を用いることが好ましい。ケイ酸塩鉱物の市販品としては、THIXOTROPIC AGENT DT 5039(ハンツマン・ジャパン株式会社 製)が挙げられる。
【0071】
内部離型剤としては、例えば、金属石鹸類、ポリエチレンワックスやカルバナワックス等の植物ワックス、脂肪酸エステル系離型剤、シリコンオイル、動物ワックス、フッ素系非イオン界面活性剤を挙げることができる。これら内部離型剤の配合量は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜2質量部であることがさらに好ましい。この範囲内においては、金型からの離型効果が好適に発揮される。
【0072】
内部離型剤の市販品としては、“MOLD WIZ(登録商標)” INT1846(AXEL PLASTICS RESEARCH LABORATORIES INC.製)、Licowax S、Licowax P、Licowax OP、Licowax PE190、Licowax PED(クラリアントジャパン社製)、ステアリルステアレート(SL−900A;理研ビタミン(株)製)が挙げられる。
【0073】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、必要に応じてその他の成分と、を混合することにより製造できる。これらの混合の順序は問わない。
【0074】
エポキシ樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。混合温度は、用いる硬化剤の硬化開始温度やエポキシ樹脂の粘度に応じて適宜調節すればよいが、繊維強化複合材料の用途に用いられるエポキシ樹脂組成物としては、40〜120℃の範囲が例示できる。混合温度が高すぎる場合、部分的に硬化反応が進行して強化繊維基材層内への含浸性が低下したり、得られるエポキシ樹脂組成物及びそれを用いて製造されるプリプレグの保存安定性が低下したりする場合がある。混合温度が低すぎる場合は、エポキシ樹脂組成物の粘度が高く、実質的に混合が困難となる場合がある。好ましくは50〜100℃であり、さらに好ましくは50〜90℃の範囲である。
【0075】
混合機械装置としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な例としては、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を備えた混合容器、横型混合槽などが挙げられる。各成分の混合は、大気中又は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。大気中で混合が行われる場合は、温度、湿度が管理された雰囲気が好ましい。特に限定されるものではないが、例えば、30℃以下の一定温度に管理された温度や、相対湿度50%RH以下の低湿度雰囲気で混合することが好ましい。
【0076】
上記のような本発明のエポキシ樹脂組成物は、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現する樹脂硬化物を製造することができる。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物を繊維強化複合材料のマトリクス樹脂として用いると、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現する繊維強化複合材料を得ることができる。
【0077】
4. 硬化樹脂
本発明の硬化樹脂は、前述のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化体である。硬化反応は、用いる硬化剤に応じて適宜決定されるが、繊維強化複合材料の用途に用いられるエポキシ樹脂組成物の場合、通常20〜250℃で1分以上加熱することにより行われる。
【0078】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる本発明の硬化樹脂は、吸水時の耐熱性保持率に優れる。ここで吸水時の耐熱性保持率とは、吸水処理を行わないで測定したガラス転移温度に対する、121℃、100%RHの条件下で24時間保管して吸水処理を施した後のガラス転移温度の保持率をいう。吸水時の耐熱性保持率は75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。吸水時の耐熱性保持率の上限値は特に限定されないが、通常90%以下である。吸水時の耐熱性保持率が75%未満の場合、吸湿時の耐熱性が大きく低下してしまう。
【0079】
また、本発明の硬化樹脂は、動的粘弾性測定で得られる貯蔵弾性率(以下、「E’」と略記する場合がある)の高温高湿条件における保持率にも優れる。ここで貯蔵弾性率の高温高湿条件における保持率とは、吸水処理を行わないで測定した50℃における貯蔵弾性率に対する、121℃、100%RHの条件下で24時間保管して吸水処理を施した後の83℃における貯蔵弾性率の保持率をいう。高温高湿条件における貯蔵弾性率の保持率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。高温高湿条件における貯蔵弾性率の保持率の上限値は特に限定されないが、通常95%以下である。高温高湿条件における貯蔵弾性率の保持率が70%未満の場合、高温高湿条件における力学物性が大きく低下してしまう。
【0080】
上記のような本発明のエポキシ樹脂硬化物(硬化樹脂)は、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現するため、繊維強化複合材料のマトリクス樹脂として好ましく用いることができる。
【0081】
5. プリプレグ
本発明のエポキシ化合物は、特に、繊維強化複合材料のマトリクス樹脂として好ましく用いることができる。繊維強化複合材料の作製方法としては、特に制限はないが、強化繊維基材と本発明のエポキシ樹脂組成物とが予め複合化された、本発明のプリプレグを好ましく用いることができる。
【0082】
本発明のプリプレグは、強化繊維基材と、前記強化繊維基材内に含浸された上述の本発明のエポキシ樹脂組成物と、から成る。
【0083】
本発明のプリプレグは、強化繊維基材の一部又は全体に本エポキシ樹脂組成物が含浸されたプリプレグである。プリプレグ全体における本エポキシ樹脂組成物の含有率は、プリプレグの全質量を基準として、15〜60質量%であることが好ましい。樹脂含有率が15質量%未満である場合、得られる繊維強化複合材料に空隙などが発生し、機械物性を低下させる場合がある。樹脂含有率が60質量%を超える場合、強化繊維による補強効果が不十分となり、実質的に質量対比機械物性が低いものになる場合がある。樹脂含有率は、20〜55質量%であることが好ましく、25〜50質量%であることがより好ましい。
【0084】
本発明で用いる強化繊維基材としては、特に制限はなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維などが挙げられる。
【0085】
これらの強化繊維の中でも、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましい。比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られる点で、炭素繊維がより好ましい。引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が特に好ましい。
【0086】
強化繊維にPAN系炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は、100〜600GPaであることが好ましく、200〜500GPaであることがより好ましく、230〜450GPaであることが特に好ましい。また、引張強度は、2000MPa〜10000MPaであることが好ましく、3000〜8000MPaであることがより好ましい。炭素繊維の直径は、4〜20μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。このような炭素繊維を用いることにより、得られる繊維強化複合材料の機械的性質を向上できる。
【0087】
強化繊維は繊維束として用いてもよく、シート状に形成して用いることも好ましい。強化繊維シートとしては、例えば、多数本の強化繊維を一方向に引き揃えたシートや、平織や綾織などの二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニット、組紐、強化繊維を抄紙した紙を挙げることができる。これらの中でも、強化繊維を連続繊維としてシート状に形成した一方向引揃えシートや二方向織物、多軸織物基材を用いると、より機械物性に優れた繊維強化複合材料が得られるため好ましい。シート状の強化繊維基材の厚さは、0.01〜3mmが好ましく、0.1〜1.5mmがより好ましい。
【0088】
本発明のプリプレグの製造方法は、特に制限がなく、従来公知のいかなる方法も採用できる。具体的には、ホットメルト法や溶剤法が好適に採用できる。
【0089】
ホットメルト法は、離型紙の上に、樹脂組成物を薄いフィルム状に塗布して樹脂組成物フィルムを形成し、強化繊維基材に該樹脂組成物フィルムを積層して加圧下で加熱することにより樹脂組成物を強化繊維基材層内に含浸させる方法である。
【0090】
樹脂組成物を樹脂組成物フィルムにする方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いることもできる。具体的には、ダイ押し出し、アプリケーター、リバースロールコーター、コンマコーターなどを用いて、離型紙やフィルムなどの支持体上に樹脂組成物を流延、キャストをすることにより樹脂組成物フィルムを得ることができる。フィルムを製造する際の樹脂温度は、樹脂組成物の組成や粘度に応じて適宜決定する。具体的には、前述のエポキシ樹脂組成物の製造方法における混合温度と同じ温度条件が好適に用いられる。樹脂組成物の強化繊維基材層内への含浸は1回で行っても良いし、複数回に分けて行っても良い。
【0091】
溶剤法は、エポキシ樹脂組成物を適当な溶媒を用いてワニス状にし、このワニスを強化繊維基材層内に含浸させる方法である。
【0092】
本発明のプリプレグは、これらの従来法の中でも、溶剤を用いないホットメルト法により好適に製造することができる。
【0093】
エポキシ樹脂組成物フィルムをホットメルト法で強化繊維基材層内に含浸させる場合の含浸温度は、50〜120℃の範囲が好ましい。含浸温度が50℃未満の場合、エポキシ樹脂の粘度が高く、強化繊維基材層内へ十分に含浸しない場合がある。含浸温度が120℃を超える場合、エポキシ樹脂組成物の硬化反応が進行し、得られるプリプレグの保存安定性が低下したり、ドレープ性が低下したりする場合がある。含浸温度は、60〜110℃がより好ましく、70〜100℃が特に好ましい。
【0094】
エポキシ樹脂組成物フィルムをホットメルト法で強化繊維基材層内に含浸させる際の含浸圧力は、その樹脂組成物の粘度・樹脂フローなどを勘案し、適宜決定する。
【0095】
具体的な含浸圧力は、0.01〜250(N/cm)であり、0.1〜200(N/cm)であることが好ましい。
【0096】
6. 繊維強化複合材料(FRP)
本発明のエポキシ化合物は、耐湿熱特性に優れ、高温高湿環境においても高い力学物性を発現する硬化物を与えるため、繊維強化複合材料のマトリクス樹脂として好ましく用いることができる。
【0097】
本発明の繊維強化複合材料は、本発明の硬化樹脂と、強化繊維基材と、を含んで成る。繊維強化複合材料は、強化繊維基材と、本発明のエポキシ樹脂組成物と、を複合化した状態で硬化させることにより作製される。繊維強化複合材料の作製方法としては、特に制限はなく、強化繊維基材とエポキシ樹脂組成物とが予め複合化されたプリプレグを用いて作製しても良い。
【0098】
本発明のプリプレグを用いて、FRPを製造する方法としては、オートクレーブ成形やプレス成形等の公知の成形法が挙げられる。
【0099】
また、レジントランスファー成形法(RTM法)、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法に例示されるように成形と同時に強化繊維基材とエポキシ樹脂組成物とを複合化してもよい。
【0100】
(6−1) オートクレーブ成形法
本発明のFRPの製造方法としては、オートクレーブ成形法が好ましく用いられる。オートクレーブ成形法は、金型の下型にプリプレグ及びフィルムバッグを順次敷設し、該プリプレグを下型とフィルムバッグとの間に密封し、下型とフィルムバッグとにより形成される空間を真空にするとともに、オートクレーブ成形装置で、加熱と加圧をする成形方法である。成形時の条件は、昇温速度を1〜50℃/分とし、0.2〜0.7MPa、130〜180℃で10〜30分間、加熱及び加圧することが好ましい。
【0101】
(6−2) プレス成形法
本発明のFRPの製造方法としては、プレス成形法が好ましく用いられる。プレス成形法によるFRPの製造は、本発明のプリプレグ又は本発明のプリプレグを積層して形成したプリフォームを、金型を用いて加熱加圧することにより行う。金型は、予め硬化温度に加熱しておくことが好ましい。
【0102】
プレス成形時の金型の温度は、150〜210℃が好ましい。成形温度が150℃以上であれば、十分に硬化反応を起こすことができ、高い生産性でFRPを得ることができる。また、成形温度が210℃以下であれば、樹脂粘度が低くなり過ぎることがなく、金型内における樹脂の過剰な流動を抑えることができる。その結果、金型からの樹脂の流出や繊維の蛇行を抑制できるため、高品質のFRPが得られる。
【0103】
成形時の圧力は、0.05〜2MPaであり、0.2〜2MPaが好ましい。圧力が0.05MPa以上であれば、樹脂の適度な流動が得られ、外観不良やボイドの発生を防ぐことができる。また、プリプレグが十分に金型に密着するため、良好な外観のFRPを製造することができる。圧力が2MPa以下であれば、樹脂を必要以上に流動させることがないため、得られるFRPの外観不良が生じ難い。また、金型に必要以上の負荷をかけることがないため、金型の変形等が生じ難い。成形時間は1分〜8時間が好ましく、0.5〜6時間がより好ましく、1〜4時間がさらに好ましい。
【0104】
(6−3)レジントランスファー成形法(RTM法)
複雑形状の繊維強化複合材料を効率よく得られるという観点から、RTM法を用いることも好ましい。ここで、RTM法とは型内に配置した強化繊維基材に液状のエポキシ樹脂組成物を含浸、硬化して繊維強化複合材料を得る方法を意味する。
【0105】
本発明において、RTM法に用いる型は、剛性材料からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛性材料のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いることも可能である。後者の場合、強化繊維基材は、剛性材料のオープンモールドと可撓性フィルムの間に設置することができる。剛性材料としては、スチールやアルミニウムなどの金属、繊維強化プラスチック(FRP)、木材、石膏など既存の各種のものが用いられる。可撓性のフィルムの材料には、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが用いられる。
【0106】
RTM法において、剛性材料のクローズドモールドを用いる場合は、加圧して型締めし、エポキシ樹脂組成物を加圧して注入することが通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引することも可能である。吸引を行い、特別な加圧手段を用いることなく大気圧のみでエポキシ樹脂組成物を注入することも可能である。この方法は、複数の吸引口を設けることにより大型の部材を製造することができるため、好適に用いることができる。
【0107】
RTM法において、剛性材料のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、吸引を行い、特別な加圧手段を用いることなく大気圧のみでエポキシ樹脂を注入してもよい。大気圧のみでの注入で良好な含浸を実現するためには、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。さらに、強化繊維基材の設置に先立って、剛性材料の表面にゲルコートを塗布することが好ましく行われる。
【0108】
RTM法において、強化繊維基材にエポキシ樹脂組成物を含浸した後、加熱硬化が行われる。加熱硬化時の型温は、通常、エポキシ樹脂組成物の注入時における型温より高い温度が選ばれる。加熱硬化時の型温は80〜200℃であることが好ましい。加熱硬化の時間は1分〜20時間が好ましい。加熱硬化が完了した後、脱型して繊維強化複合材料を取り出す。その後、得られた繊維強化複合材料をより高い温度で加熱して後硬化を行ってもよい。後硬化の温度は150〜200℃が好ましく、時間は1分〜4時間が好ましい。
【0109】
エポキシ樹脂組成物をRTM法で強化繊維基材に含浸させる際の含浸圧力は、その樹脂組成物の粘度・樹脂フローなどを勘案し、適宜決定する。
【0110】
具体的な含浸圧力は、0.001〜10(MPa)であり、0.01〜1(MPa)であることが好ましい。RTM法を用いて繊維強化複合材料を得る場合、エポキシ樹脂組成物の粘度は、100℃における粘度が、5000mPa・s未満であることが好ましく、0.5〜1000mPa・sであることがより好ましく、1〜200mPa・sであることが更に好ましい。
【0111】
7.その他 エポキシ化合物の用途
本発明のエポキシ化合物が用いられる用途としては、特に制限はなく、上記繊維強化複合材料の他にも、例えば、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、半導体装置、導電ペースト、導電フィルム、ビルドアップ基板、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤、コーティング剤、透明材料、光学材料、電子材料、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ、いわゆる電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤、電子材料用の接着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本実施例、比較例において使用する成分や試験方法を以下に記載する。
[評価方法]
(1) 吸水処理
プレッシャークッカー(エスペック社製、HASTEST PC−422R8)を用い、121℃、100%RH、24時間の条件にて準備した樹脂試験片の吸水処理を行った。
【0113】
(2) ガラス転移温度および貯蔵弾性率
SACMA 18R−94法に準じて、ガラス転移温度を測定した。樹脂試験片の寸法は50mm×6mm×2mmで準備した。UBM社製動的粘弾性測定装置Rheogel
−E400を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分、ひずみ0.0167%の条件
で、チャック間の距離を30mmとし、40℃からゴム弾性領域まで貯蔵弾性率E’を測
定した。logE’を温度に対してプロットし、logE’の平坦領域の近似直線と、E
’が変位する領域の変曲点における接線との交点から求められる温度をガラス転移温度(
Tg)として記録した。
【0114】
(3) 吸水時の耐熱性保持率
以下の式(1)に従い、吸水時の耐熱性保持率(Tg保持率)を算出した。
Tg保持率=Tg/Tg×100 式(1)
Tg:吸水処理を行わないで測定したガラス転移温度
Tg:吸水処理を施して測定したガラス転移温度
【0115】
(4) 貯蔵弾性率の高温高湿条件における保持率
以下の式(2)に従い、貯蔵弾性率の高温高湿条件における保持率(E’保持率)を算出した。
E’保持率=E/E×100 式(2)
E’:吸水処理を行わないで測定した50℃における貯蔵弾性率
E’:吸水処理を施して測定した83℃における貯蔵弾性率
【0116】
(5) エポキシ化合物の純度
以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定を行い、ピーク面積分率からエポキシ化合物の純度を測定した。
・カラム:Inertsil ODS−3V(4.6Φ×250mm)
・温度:40℃
・移動相:アセトニトリル/10mMギ酸アンモニウム
・流量:1mL/min
・検出波長:254nm
【0117】
〔成分〕
(本発明のエポキシ化合物)
(合成例1)
以下の化学式(2)のエポキシ化合物を合成した。
【化3】
【0118】
化学式(2)のエポキシ化合物の合成方法は以下の通りである。
攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置に、p−ニトロフェノール153.0g(1.1mol)、ペンタエリトリチルテトラブロミド96.93g(0.25mol)、炭酸カリウム456.08g(3.3mol)、N,N−ジメチルホルムアミド2000mlを窒素雰囲気下で仕込み、130℃で8時間攪拌して反応を完結させた。固形物を濾別した後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン2000mlに溶かし、蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで、テトラニトロ体を得た。次に、攪拌装置を設置した反応装置にテトラニトロ体148.9g(0.24mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(20g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)4000mlを、仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で攪拌し、水素の減少がなくなるまで反応を行った。反応終了後、Pd/Cを濾別し、混合溶媒を除去するとテトラアミン体の粗体が得られた。得られたテトラアミン体の粗体をトルエンから再結晶し、テトラアミン体を114.9g得た。
【0119】
次いで、温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下でテトラアミン体100.0g(0.20mol)、トルエン250.0g、蒸留水25.0gを仕込んだ。これにエピクロロヒドリン443.6g(4.79mol)を加え、80℃で24時間撹拌して付加反応を完結させ、オクタクロロヒドリン体を得た。続いて、フラスコ内温度を30℃に下げてから硫酸水素テトラブチルアンモニウム4.1g(12.0mmol)を加え、これに48%NaOH水溶液191.8g(2.40mol)を60分かけて滴下し、4時間撹拌した。得られた反応液へ蒸留水300mLを加え、有機層を分取した。得られた有機層を飽和食塩水で2回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで粗体が161.3g得られた。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィーへ供し、結晶化しやすい、薄い黄色の粘性液体を83.4g得た。
【0120】
主生成物である上記化学式(2)のエポキシ化合物の純度は、95.9%(HPLC面積%)であった。
【0121】
(合成例2)
以下の化学式(3)のエポキシ化合物を合成した。
【化4】
【0122】
化学式(3)のエポキシ化合物の合成方法は以下の通りである。
攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置に、m−アミノフェノール120.1g(1.1mol)、ペンタエリトリチルテトラブロミド96.93g(0.25mol)、炭酸カリウム165.8g(1.2mol)、N,N−ジメチルホルムアミド500mlを窒素雰囲気下で仕込み、130℃で6時間攪拌して反応を完結させた。固形物を濾別した後、DMFを除去するとテトラアミン体の粗体が得られた。得られたテトラアミン体の粗体をトルエンから再結晶し、テトラアミン体を118.6g得た。
【0123】
次いで、温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下でテトラアミン体100.0g(0.20mol)、トルエン250.0g、蒸留水25.0gを仕込んだ。これにエピクロロヒドリン443.6g(4.79mol)を加え、80℃で24時間撹拌して付加反応を完結させ、オクタクロロヒドリン体を得た。続いて、フラスコ内温度を30℃に下げてから硫酸水素テトラブチルアンモニウム4.1g(12.0mmol)を加え、これに48%NaOH水溶液191.8g(2.40mol)を60分かけて滴下し、4時間撹拌した。得られた反応液へ蒸留水300mLを加え、有機層を分取した。得られた有機層を飽和食塩水で2回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで粗体が161.7g得られた。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィーへ供し、結晶化しやすい、薄い黄色の粘性液体を82.5g得た。
【0124】
主生成物である上記化学式(3)のエポキシ化合物の純度は、96.1%(HPLC面積%)であった。
【0125】
(合成例3)
以下の化学式(4)のエポキシ化合物を合成した。
【化5】
【0126】
このエポキシ化合物の合成方法は以下の通りである。
攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置に、o−ニトロフェノール153.0g(1.1mol)、ペンタエリトリチルテトラブロミド96.93g(0.25mol)、炭酸カリウム456.08g(3.3mol)、N,N−ジメチルホルムアミド2000mlを窒素雰囲気下で仕込み、130℃で12時間攪拌して反応を完結させた。固形物を濾別した後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン2000mlに溶かし、蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで、テトラニトロ体を得た。次に、攪拌装置を設置した反応装置にテトラニトロ体148.9g(0.24mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(20g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)4000mlを、仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で攪拌し、水素の減少がなくなるまで反応を行った。反応終了後、Pd/Cを濾別し、混合溶媒を除去するとテトラアミン体の粗体が得られた。得られたテトラアミン体の粗体をトルエンから再結晶し、テトラアミン体を113.3g得た。
【0127】
次いで、温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下でテトラアミン体100.0g(0.20mol)、トルエン250.0g、蒸留水25.0gを仕込んだ。これにエピクロロヒドリン443.6g(4.79mol)を加え、80℃で24時間撹拌して付加反応を完結させ、オクタクロロヒドリン体を得た。続いて、フラスコ内温度を30℃に下げてから硫酸水素テトラブチルアンモニウム4.1g(12.0mmol)を加え、これに48%NaOH水溶液191.8g(2.40mol)を60分かけて滴下し、4時間撹拌した。得られた反応液へ蒸留水300mLを加え、有機層を分取した。得られた有機層を飽和食塩水で2回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで粗体が155.9g得られた。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィーへ供し、結晶化しやすい、薄い黄色の粘性液体を79.7g得た。
【0128】
主生成物である上記化学式(4)のエポキシ化合物の純度は、95.3%(HPLC面積%)であった。
【0129】
(合成例4)
以下の化学式(5)のエポキシ化合物を合成した。
【化6】
【0130】
化学式(5)のエポキシ化合物の合成方法は以下の通りである。
攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置に、4−ニトロ−1−ナフトール208.1g(1.1mol)、ペンタエリトリチルテトラブロミド96.93g(0.25mol)、炭酸カリウム456.08g(3.3mol)、N,N−ジメチルホルムアミド2000mlを窒素雰囲気下で仕込み、130℃で8時間攪拌して反応を完結させた。固形物を濾別した後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン2000mlに溶かし、蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで、テトラニトロ体を得た。次に、攪拌装置を設置した反応装置にテトラニトロ体197.0g(0.24mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(20g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)4000mlを、仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で攪拌し、水素の減少がなくなるまで反応を行った。反応終了後、Pd/Cを濾別し、混合溶媒を除去するとテトラアミン体の粗体が得られた。得られたテトラアミン体の粗体をトルエンから再結晶し、テトラアミン体を162.3g得た。
【0131】
次いで、温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下でテトラアミン体140.2g(0.20mol)、トルエン250.0g、蒸留水25.0gを仕込んだ。これにエピクロロヒドリン443.6g(4.79mol)を加え、80℃で24時間撹拌して付加反応を完結させ、オクタクロロヒドリン体を得た。続いて、フラスコ内温度を30℃に下げてから硫酸水素テトラブチルアンモニウム4.1g(12.0mmol)を加え、これに48%NaOH水溶液191.8g(2.40mol)を60分かけて滴下し、4時間撹拌した。得られた反応液へ蒸留水300mLを加え、有機層を分取した。得られた有機層を飽和食塩水で2回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで粗体が195.8g得られた。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィーへ供し、結晶化しやすい、薄い黄色の粘性液体を97.8g得た。
【0132】
主生成物である上記化学式(5)のエポキシ化合物の純度は、96.2%(HPLC面積%)であった。
【0133】
(合成例5)
以下の化学式(6)のエポキシ化合物を合成した。
【化7】
【0134】
化学式(6)のエポキシ化合物の合成方法は以下の通りである。
攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置に、1−ニトロ−2−ナフトール208.1g(1.1mol)、ペンタエリトリチルテトラブロミド96.93g(0.25mol)、炭酸カリウム456.08g(3.3mol)、N,N−ジメチルホルムアミド2000mlを窒素雰囲気下で仕込み、130℃で8時間攪拌して反応を完結させた。固形物を濾別した後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン2000mlに溶かし、蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで、テトラニトロ体を得た。次に、攪拌装置を設置した反応装置にテトラニトロ体197.0g(0.24mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(20g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)4000mlを、仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で攪拌し、水素の減少がなくなるまで反応を行った。反応終了後、Pd/Cを濾別し、混合溶媒を除去するとテトラアミン体の粗体が得られた。得られたテトラアミン体の粗体をトルエンから再結晶し、テトラアミン体を160.7g得た。
【0135】
次いで、温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下でテトラアミン体140.2g(0.20mol)、トルエン250.0g、蒸留水25.0gを仕込んだ。これにエピクロロヒドリン443.6g(4.79mol)を加え、80℃で24時間撹拌して付加反応を完結させ、オクタクロロヒドリン体を得た。続いて、フラスコ内温度を30℃に下げてから硫酸水素テトラブチルアンモニウム4.1g(12.0mmol)を加え、これに48%NaOH水溶液191.8g(2.40mol)を60分かけて滴下し、4時間撹拌した。得られた反応液へ蒸留水300mLを加え、有機層を分取した。得られた有機層を飽和食塩水で2回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで粗体が193.4g得られた。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィーへ供し、結晶化しやすい、薄い黄色の粘性液体を98.1g得た。
【0136】
主生成物である上記化学式(6)のエポキシ化合物の純度は、95.1%(HPLC面積%)であった。
【0137】
(その他のエポキシ樹脂)
・テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(ハンツマン社製 Araldite MY721、以下「TGDDM」と略記する)
(硬化剤)
・3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(小西化学工業株式会社製、以下「3,3’−DDS」と略記する)
【0138】
〔実施例1〜5、比較例1〕
表1に記載する割合でエポキシ樹脂に硬化剤を添加し、撹拌機を用いて40℃で30分間混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、表1に記載の組成においては、エポキシ樹脂のグリシジル基と硬化剤のアミノ基は当量となる。このエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚のシリコン樹脂製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したシリコン樹脂製モールド中に注入した。180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。各エポキシ化合物および樹脂硬化物は上記の評価方法に従って評価し、結果を表1に示した。
【0139】
【表1】
【0140】
本発明のエポキシ化合物である実施例1〜5のエポキシ化合物は、いずれも、吸水時の耐熱性保持率が高く、また貯蔵弾性率の高温高湿条件における保持が高い樹脂硬化物を得ることができた。一方、本発明で規定する構造を有さないエポキシ化合物を用いた比較例1は、各種特性が低くなった。