【課題】本発明の目的は、意匠性の観点から不規則な凹凸を有するサイディングボードであっても、塗装の後、輸送時に積み上げても、ブロッキングを生じることが無く、外観上問題のない塗装済み建築建材を提供することである。
【解決手段】本発明の目的は、少なくとも1層の塗膜を有する建築建材であって、最外層に平均膜厚が5μm以上100μm以下の塗膜Yを有し、該塗膜Yが平均粒子径の異なる大粒子と小粒子を含有し、該それぞれの粒子の平均粒子径が下記の関係を有する建築建材によって達成された。1.大粒子の平均粒子径A>塗膜Yの膜厚、2.(塗膜Yの膜厚×0.5)>小粒子の平均粒子径a≧1μm
少なくとも1層の塗膜を有する建築建材であって、最外層に平均膜厚が5μm以上100μm以下の塗膜Yを有し、該塗膜Yが平均粒子径の異なる大粒子と小粒子を含有し、該それぞれの粒子の平均粒子径が下記の関係を有する建築建材。
1.大粒子の平均粒子径A>塗膜Yの膜厚
2.(塗膜Yの膜厚×0.5)>小粒子の平均粒子径a≧1μm
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について具体的に説明する。
【0013】
<建築建材>
本発明の建築建材は、少なくとも1層の塗膜を有する建築建材であって、最外層に平均膜厚が5μm以上100μm以下の塗膜Yを有し、該塗膜Yが平均粒子径の異なる大粒子と小粒子を含有し、該それぞれの粒子の平均粒子径が下記の関係を有することを特徴とする。
1.大粒子の平均粒子径A>塗膜Yの膜厚
2.(塗膜Yの膜厚×0.5)>小粒子の平均粒子径a≧1μm
【0014】
本発明の建築建材は通常、基材に、下引き機能を有するシーラー塗膜(以下単にシーラーともいう)、着色顔料を含有させたエナメル塗膜(以下単にエナメルともいう)、そして保護層としてのクリアーである塗膜Y(以下単にクリアーまたはクリアー塗膜Yともいう)を有する積層構造を有している。
【0015】
≪基材≫
本発明で塗装対象となる基材は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、亜鉛メッキ板等の金属基材;フレキシブルボード、ケイ酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機基材;紙、木、ガラスなどのその他基材が代表的なものとして挙げられる。
【0016】
上記基材に対しては、基材の目止め、特に後に塗装する顔料を含む着色塗料の吸い込みを防止することを目的として、シーラーを塗装することができる。これらシーラーは、基材の種類に合わせて使い分けることが可能であり、各基材で一般的に使用されている何れのシーラーも用いることができる。シーラーを塗装した場合においては、塗装したシーラーを乾燥させることもできる。
【0017】
シーラーの乾燥条件は、使用するシーラーの配合により、適宜変えることが可能である。シーラーの乾燥膜厚は2〜100μmであることが好ましい。
なお、各塗膜の膜厚は、各塗料の固形分と塗布面積とから計算で求めた値である。
【0018】
上記基材、若しくはシーラーを塗装した基材に対して、エナメル塗膜を施すことが好ましい。当該エナメル塗膜は、後述するエナメル塗料(以下着色塗料ともいう)を塗装することにより、施される。
【0019】
着色塗料の塗装は、従来から使用されている塗装方法の何れも使用することが可能であり、これらの代表的なものとしては、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、カーテンフローコーター、ロールコーター、刷毛塗り等が挙げられる。
【0020】
エナメル塗膜の乾燥膜厚として好ましくは2〜300μm、より好ましくは5〜200μm、特に好ましくは10〜100μmの範囲になる量である。
【0021】
エナメル塗料を塗装した後に、クリアー塗膜Yを施す。そのため、クリアー塗料の塗装を行うが、その前に着色塗料を乾燥させることが好ましい。この場合における乾燥条件は、塗装した着色塗料の配合によって適宜替わり得るが、30〜150℃の範囲において、1〜30分乾燥させることが好ましい。また、この乾燥は、塗膜を完全に乾燥させることも、塗膜の表面を乾かす、いわゆる指触乾燥の段階であってもさしつかえない。
【0022】
≪塗膜Y≫
基材のエナメル塗膜面に対して、クリアー塗料Yの塗装を行う。クリアー塗料Yの塗装は、従来から使用されている塗装方法の何れも使用することが可能であり、これらの代表的なものとしては、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、カーテンフローコーター、ロールコーター、刷毛塗り等が挙げられる。
【0023】
クリアー塗膜Yの乾燥膜厚として好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜200μm、特に好ましくは5〜80μmの範囲になる量である。クリアー塗膜Yの乾燥膜厚が1μmより薄いと、クリアー塗膜Yによるエナメル塗膜及び基材の保護性能が低下する傾向にある。
【0024】
クリアー塗料Yを塗装した後に、クリアー塗膜Y及びエナメル塗膜を乾燥させることが好ましい。当該乾燥は、エナメル塗膜及びクリアー塗膜Yを乾燥させるために行うものであり、その乾燥条件は使用する着色塗料及びクリアー塗料の配合により、適宜替わり得るが、一般的には50〜170℃の温度条件下で、1〜30分乾燥させることが好ましい。
【0025】
また、本発明においては、当該乾燥工程の後に、建材が積み上げられることがあるため、乾燥状態はいわゆる指触乾燥の状態ではなく、少なくともクリアー塗膜Yが乾燥している状態、より具体的には、クリアー塗膜Yに含有される溶媒が、クリアー塗料中に配合された溶媒の内80%以上蒸発した状態であることが好ましい。
【0026】
≪塗膜X≫
機能性塗膜Xは、クリアー塗膜Yの上に防汚性等をさらに付与する目的で塗膜Yの外層として設けられる。素材としてはフッ素樹脂を含むコーティング剤、オルガノポリシロキサン系の無機樹脂を結合剤とするコーティング剤、オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物とシリル基含有化合物を加水分解縮合反応させて得られる有機無機複合樹脂を結合剤とするコーティング剤、コロイダルシリカを含有するコーティング剤、酸化チタンや酸化タングステン等の光触媒活性物質を含有するコーティング剤、金属錯体等を含む防藻性・防カビ性コーティング剤などが塗布される。膜厚は0.01〜2.0μmであり、0.02〜1.5μmであることが好ましい。
【0027】
機能性塗膜Xとクリアー塗膜Yの間には、機能性塗膜Xとクリアー塗膜Yの密着性を向上するためのアクリル樹脂層、または機能性塗膜Xからクリアー塗膜Yを保護するためにシリコーン樹脂層等の塗膜Zを設けることもできる。塗膜Zは、複数層あってもよい。塗膜Zの膜厚は、0.01〜2.0μmであり、好ましくは0.02〜1.5μmである。
【0028】
機能性塗膜Xおよびクリアー塗膜Yの合計膜厚と後述する2種類の粒子の平均粒子径とは、下記の関係を有することが好ましい。
大粒子の平均粒子径A>(塗膜Xの膜厚+塗膜Yの膜厚)>小粒子の平均粒子径a
塗膜Zを有する場合は、下記の関係を有することが好ましい。
大粒子の平均粒子径A>(塗膜Xの膜厚+塗膜Yの膜厚+塗膜Zの膜厚)>小粒子の平均粒子径a
【0029】
<塗料>
≪クリアー塗料≫
本発明で使用するクリアー塗膜Yは、塗膜Yの膜厚よりも平均粒子径が大きい大粒子と小さい小粒子を含有することを特徴とする。その他の材料としては、基材に対して一般的に使用される何れのクリアー塗料の材料を使用することが可能である。例えば、結合剤(樹脂)、溶媒からなり、その他必要に応じて着色顔料、体質顔料、その他添加剤等を配合することが可能である。
【0030】
(大粒子)
本発明の大粒子の平均粒子径Aは、塗膜Yの膜厚よりも大きい。ここで塗膜Yの膜厚とは、大粒子の存在しない箇所を平均した塗膜Yの膜厚をいい、塗料に含有させる大粒子以外の固形部の量と、塗布面積から計算で求めることができる。
【0031】
大粒子の平均粒子径Aは、20〜150μmであり、40〜60μmであることが好ましい。クリアー塗膜Yの膜厚との関係では、(クリアー塗膜Yの膜厚×2.0)≧大粒子の平均粒子径A≧(クリアー塗膜Yの膜厚×1.05)が好ましい。なお粒子の平均粒子径は、レーザー回折法によって求めた体積平均粒子径である。
【0032】
大粒子としては、前述の条件を満たすものであれば、特に制限なく使用でき、これらの代表的なものとしては、有機系粒子または無機系粒子を選択することが可能である。
【0033】
上記無機系粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫などがあり具体的にはガラスビーズ、陶器粉、珪砂等が代表的なものとして挙げられる。
【0034】
上記有機系粒子としては、例えば、各種単量体を共重合したものが代表的なものとして挙げられる。例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(例えば、メチルメタクリレート)、アクリロニトリル、スチレン等のポリマーまたはそれらの架橋ポリマーを挙げることができる。
【0035】
本発明においては、前記単量体の選択については、ガラス転移点(以下、Tg)が、エナメル塗膜に配合された樹脂ならびにクリアー塗膜に配合された樹脂のTgと比較して、10℃〜150℃、さらに好ましくは30〜150℃高いものを用いることが好ましい。
【0036】
本発明の大粒子は圧縮硬さが15MPa以上40MPa以下であることが好ましい。硬い大粒子がクリアー膜表面より突出し、突出した粒子同士が接触することでクリアー膜同士の接触を軽減させることができる。
【0037】
また本発明の大粒子は、980dyn(1gf)の荷重をかけた際の粒子径維持率が99.5〜30%の範囲にあることが好ましく、99〜70%の範囲にあるものがさらに好ましい。なお、ここで言う粒子径維持率とは、室温(25℃)において加重を加えていない時の粒子の直径を100%とし、粒子1つに980dyn(1gf)の加重をかけ変形した粒子の短径が加重を加えていなかったときの何%になるかということを意味する。
【0038】
変形率は、例えば微小硬さ試験機(Fisher Scope社製)HP100C Xypを用いて測定することが可能である。
本発明の大粒子は、クリアー塗料固形分の5〜30体積%となるように含有させることが好ましく、特に5〜15体積%であることが好ましい。
【0039】
(小粒子)
本発明の小粒子の平均粒子径aは、(クリアー塗膜Yの膜厚×0.5)よりも小さく、0.5〜10μmであり、1μm以上5μm未満であることが好ましい。クリアー塗膜Yの膜厚との関係では、(クリアー塗膜Yの膜厚×0.2)≧小粒子の平均粒子径a≧(クリアー塗膜Yの膜厚×0.01)が好ましい。大粒子の平均粒子径Aとの関係では、(大粒子の平均粒子径A×0.1)≧小粒子の平均粒子径aであることが好ましい。
【0040】
小粒子としては、前記大粒子と同じ材料を使用することもできるが、ウレタン架橋を有する粒子、ゴム弾性を有する軟性のポリアクリル酸エステルの粒子や、フッ素を組成として含む樹脂を含有する粒子であることが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレンからなるものが好ましい。
【0041】
本発明の小粒子の圧縮硬さは、大粒子の圧縮硬さよりも小さいことが好ましい。硬い大粒子は、塗膜にかかる荷重を支え、ブロッキングの抑制に寄与する。また、接触点での大粒子の位置が微妙にずれることから、ブロッキングを防ぐ効果が得られると推測している。(大粒子の圧縮硬さ×0.9)≧(小粒子の圧縮硬さ)であることが好ましい。
【0042】
また本発明の小粒子は、後述する結合剤を構成する樹脂よりも柔らかいことが好ましい。強靭な樹脂膜の中に柔らかい小粒子が分散されていることで、衝撃が加わった際の塗膜全体の応力を緩和できることから、輸送時の損傷を防ぐ効果が得られると推測している。
【0043】
本発明の小粒子は、クリアー塗料固形分の2〜20体積%となるように含有させることが好ましく、特に5〜15体積%であることが好ましい。
【0044】
(その他の材料)
クリアー塗膜Yでは、結合剤としてクリアー塗料一般で使用されている何れの樹脂も使用することが可能である。例えば、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂或いはこれらの変成樹脂等の内の1種、または2種以上、或いはこれらと硬化剤や硬化触媒等を組み合わせて使用することが可能である。
【0045】
結合剤として使用する樹脂としては、ダイナミック超微小硬度計(DUH−211、島津製作所製)を用いて、稜間角115°の三角錐圧子で、膜厚35μm、試験力8mN、負荷速度1.0mN/秒、負荷保持時間5秒、除荷保持時間5秒で測定したマルテンス硬さが、11.0N/mm
2以上であることが好ましい。
【0046】
さらに、防汚性を付与するためにフッ素系、シリコン系の樹脂、フッ素系、シリコン系の界面活性剤を含有させてもよい。
【0047】
本発明の結合剤は、クリアー塗料固形分の10〜50体積%となるように含有させることが好ましく、特に20〜40体積%であることが好ましい。
【0048】
前記溶媒としては、塗料にて一般的に使用される溶媒の何れも使用することが可能であり、代表的なものとして(1)アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコール)、(2)ケトンまたはケトアルコール(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びジアセトンアルコール)、(3)エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、(4)エステル(例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、炭酸エチレン、及び炭酸プロピレン)、(5)多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−-ヘキサントリオール、及びチオグリコール)、(6)アルキレングリコールから誘導される低級アルキルモノエーテル及び低級アルキルジエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ポリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、及びジエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル)、(7)窒素含有環式化合物(例えば、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、(8)硫黄含有化合物(例えば、ジメチルスルホキシド、2,2‘−チオジエタノール、及びテトラメチレンスルホン)、並びに(9)水が挙げられる。
【0049】
本発明においては、クリアー塗料の透明性を損なわない範囲で、着色顔料や体質顔料を、必要に応じて添加することが可能である。これら着色顔料や体質顔料の具体例としては、前述の着色塗料で使用できる着色顔料・体質顔料がこれに当たる。
【0050】
また、本発明で使用するクリアー塗料には、必要に応じて各種添加剤を配合することが可能である。これら添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防腐剤、本発明の効果を阻害しない範囲で本発明の大粒子、小粒子以外の粒子等の各種添加剤が挙げられる。
【0051】
≪エナメル塗料≫
本発明で使用するエナメル塗膜を形成する着色塗料は、結合剤、着色顔料、粒子、溶媒からなり、その他必要に応じて、体質顔料、その他添加剤等を配合することが可能である。
【0052】
上記結合剤としては、塗料で一般的に用いられている何れの樹脂も使用することが可能である。例えば、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アクリルシリコン樹脂或いはこれらの変成樹脂等の内の1種、または2種以上、或いはこれらと硬化剤や硬化触媒等を組み合わせて使用することが可能である。
【0053】
上記着色顔料としては、塗料で一般的に使用されている着色顔料を、特に制限なく使用することができる。これら着色顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、黄鉛、オーカー、弁柄、複合酸化物(ニッケル・チタン系、クロム・チタン系、ビスマス・バナジウム系)等の無機系顔料や、フタロシアニンブルー、カーミンFB、ハンザイエロー、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、アンスラピラミジン、スレン、ジオキサジン等の有機系顔料等が挙げられる。
【0054】
前記溶媒としては、前記クリアー塗料にて一般的に使用される溶媒の何れも使用することが可能である。
【0055】
本発明で使用する着色塗料には、必要に応じて体質顔料を配合することが可能である。これら体質顔料としては、例えば、タルク、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、珪石粉、珪藻土、非晶質シリカ、アロフェン、イモゴライト、ベントナイト、モンモリロナイト、セピオライト等が代表的なものとして挙げられる。
【0056】
また、本発明で使用する着色塗料には、必要に応じて各種添加剤を配合することが可能である。これら添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防腐剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0057】
<建築建材>
本発明の建築建材としては、窯業系サイディング及び屋根スレート材が挙げられる。窯業系サイディング及び屋根スレート材としては、例えば、JISA5422によって規定される建材、JISA5423によって規定される化粧スレート、および、硬質木質セメント板、押出成型セメント板及び軽量発泡コンクリート等のセメント板が挙げられる。
【0058】
本発明においては、無機材料基材、特に、住宅やビル等の建築物の内壁若しくは外壁等の壁面又は屋根、窯業系建材、コンクリート、ALC、その他の無機質建材が好ましく、窯業系建材がより好ましい。
【0059】
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。実施例中、「部」は質量部を示す。なお、評価、測定は、特に断りのない場合は、23℃55%RHの雰囲気下で行った。
【実施例】
【0060】
〔試験例1〕
<建築建材(加飾試験板)の製造例>
1.シーラー塗膜の作製
インラインシーラー層があらかじめ塗布された凹凸を有する窯業建材を使用した。
【0061】
2.エナメル塗膜の作製
上記により得られたシーラー塗膜を有する基材に、シーラー表面温度が55〜60℃の状態で、エアスプレーにて塗布量が5.5g/尺
2になるように下記のモデルエナメル塗料を塗装した。
【0062】
(モデルエナメル塗料)
・アクリルエマルジョン 30質量部(固形分換算)
・顔料(酸化チタン):10質量部
・顔料分散剤: BYK−190(ビックケミージャパン(株)製) 2質量部
・成膜助剤 :ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
・消泡剤 :シリコン系消泡剤 0.5質量部
・全体として100質量部となるように水を添加した。
塗装後、20秒後にジェット乾燥機(風速10m/sもしくは15m/s)にて130℃で90秒間乾燥させ、エナメル塗膜を作製した。
【0063】
3.クリアー塗膜Yの作製
エナメル塗膜の表面温度が55〜60℃の状態で、クリアー塗料を乾燥塗布膜厚30μmになるよう塗装した。60秒後にジェット乾燥機(風速10m/sもしくは15m/s)にて130℃で120秒間乾燥させ、クリアー塗膜Yを作製した。なお、表面の温度測定は、赤外線放射型非接触温度計(ISK−8700II、アズワン(株)社製)を用いて行った。
【0064】
使用した素材は、下記の通りである。
・樹脂:アクリルエマルジョン 70質量部(固形分換算)
・大粒子(表2及び表3記載):
平均粒子径40μmのアクリル粒子:タフチックAR750シリーズ(東洋紡社製)
平均粒子径60μmのアクリル粒子:タフチックAR750シリーズ(東洋紡社製)
平均粒子径100μmのアクリル粒子:タフチックAR750シリーズ(東洋紡社製)
・小粒子(表2及び表3記載):
平均粒子径1μmのPTFE粒子:LINEPLUS PF260(MAFLON製)
平均粒子径5μmのPTFE粒子:KTL−8F(喜多村社製)
平均粒子径6μmのウレタン粒子:CE800T(根上工業社製)
平均粒子径9μmのアクリル粒子:タフチックAR750シリーズ(東洋紡社製)
平均粒子径5μmのアクリロニトリル粒子:ASF7(東洋紡社製)
平均粒子径5μmのアクリル粒子:MBX−5(積水化成品工業社製)
平均粒子径18μmのアクリル粒子:タフチックAR750シリーズ(東洋紡社製)
平均粒子径40μmのアクリル粒子:タフチックAR750シリーズ(東洋紡社製)
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
また、大粒子と小粒子の配合量は、固形分換算で表2及び表3に記載の体積濃度(v/v)となるよう、適宜添加した。
なお、大粒子及び小粒子の圧縮硬さは、微小圧縮試験機MCT−510(株式会社島津製作所製)を用いて、「JIS R1639−5ファインセラミックス−顆粒特性の測定方法−第5部:単一か粒圧壊強さ」に従い、下式の通りに粒子径の10%量を押し込んだ時の圧縮硬さCxを算出した。
Cx=αP/πd
2
Cx:圧縮硬さ(MPa)
α:2.4
P:粒子径の10%変形時の試験力(N)
d:粒子径(mm)
・成膜助剤:エチレングリコールモノブチルエーテル4.2質量部、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル 2質量部
・消泡剤:シリコン系消泡剤 0.4質量部
・全体として100質量部となるように水を添加した。
【0065】
上記のクリアー塗料を用いて塗膜Yを形成し、塗膜Yを有する実施例1〜7、実施例9〜12、比較例1〜9の試験板を作製した。
また、機能性塗膜Xを有する試験板は以下のように作製した。
【0066】
4.機能性塗膜Xの作製
表1の配合を仕込み、十分に撹拌することにより機能性塗膜を形成するためのコーティング剤を調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
(1)水分散コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、スノーテックス−C、固形分20%、pH9.0、平均粒子径10〜20nm、形状:球状)
(2)ノニオン系界面活性剤(TEGO社製、ポリフローKL−510、固形分100%、成分:ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
(3)フッ素系界面活性剤(株式会社ネオス製、フタージェント100、パーフルオロアルケニル基含有フッ素系界面活性剤、固形分100%)
【0069】
クリアー塗膜Yの表面に、乾燥膜厚が2μmとなるように機能性コーティング剤を吹付塗装した。これを80℃にて15分間乾燥した後、室温において3日間乾燥して機能性塗膜層Xを形成し、機能性塗膜Xを有する実施例8、実施例13の試験板を作製した。
【0070】
<評価>
≪耐ブロッキング性の評価方法と評価基準≫
温度60℃、湿度80%RHの恒温槽内にて、試験基材の上から392N(40kg)の荷重を12時間加え、塗膜の潰れ方でブロッキング性の評価を行った。
基材は、縦20cm×横10cmの凹凸が激しい窯業建材2枚を塗膜面同士で重ね合わせ、間にポリエチレン製の間紙を挟んだ。(接触面積率1%以下)
【0071】
評価は、目視に加えて、各接触点をマイクロスコープにて観察し、3段階で評価した。何も損傷していない状態を0点、少し跡が残っている状態を1点、完全に塗膜が潰れている状態を2点とし、耐ブロッキング点数=(各接触点の損傷具合の合計点)/(2点×接触点)とした。
【0072】
耐ブロッキング点数:〇:0〜0.4未満
△:0.4〜0.7未満
×:0.7〜1.0
【0073】
≪耐輸送性の評価方法と評価基準≫
60℃の恒温槽内にて、試験基材をJIS Z 0232のランダム振動試験に1.5時間供試し、試験後の塗膜の損傷状態から耐輸送性を評価した。
【0074】
試験基材は、縦20cm×横10cmの凹凸が激しい窯業建材2枚を塗膜面同士で重ね合わせ、間にポリエチレン製の間紙を挟み、これを塩化ビニリデンラップにて固定し、1セットとした。40×40cmの木枠の中に先程の基材2セットを並べて固定し、その上から196N(20kg)の加重を加えて試験を実施した。
【0075】
試験後、塗膜の損傷具合および面積をマイクロスコープにて観察し、耐輸送性を下記の基準で評価した。
×:基材露出が起こっているもの。
△:基材露出はしていないが損傷面積が全面積の0.5%以上のもの。
〇:基材露出はしていないが損傷面積が0.5%未満のもの。
◎:目立った損傷が見られないもの。
【0076】
結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
〔試験例2〕
クリアー塗料の素材を下記の通りとし、塗膜Yの膜厚を60μmとして、実施例1と同じ評価を行った。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
表2、3から明らかなように、本発明の大粒子と小粒子の組み合わせは、耐ブロッキング性と耐輸送性に優れることが判る。