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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-169481(P2020-169481A)
(43)【公開日】2020年10月15日
(54)【発明の名称】トンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20200918BHJP
【FI】
   E21D9/093 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-71039(P2019-71039)
(22)【出願日】2019年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391005950
【氏名又は名称】株式会社東横エルメス
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】西渕 雅之
(72)【発明者】
【氏名】新木 健司
(72)【発明者】
【氏名】中野 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮川 勝洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏之
(72)【発明者】
【氏名】高野 晶平
(72)【発明者】
【氏名】門間 智之
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 卓光
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA01
2D054AC02
2D054BA03
2D054GA02
2D054GA08
2D054GA25
2D054GA44
2D054GA52
2D054GA62
2D054GA63
2D054GA64
2D054GA93
2D054GA94
(57)【要約】
【課題】過負荷によるマシンの損傷を防止し、安定したトンネル施工に役立つトンネル掘削機を提供する。
【解決手段】トンネル掘削機10のスキンプレート12に、スキンプレート外周面と土砂との間のトンネル延伸方向の摺動抵抗を直接に検知するセンサ14を装備したものであり、また、スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知するセンサ14を装備しても良く、更に、スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知するセンサ14を装備してもよく、あるいは、トンネル延伸方向及び周方向の摺動抵抗を同時に検知するセンサ14、更には、トンネル延伸方向及び周方向の摺動抵抗及び半径方向外側から作用する土水圧力を同時に検知するセンサ14を装備しても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機のスキンプレートに、前記スキンプレート外周面と土砂との間のトンネル延伸方向の摺動抵抗を直接に検知するセンサを装備したことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
前記センサは、前記スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知することを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記スキンプレートに、前記スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知するセンサを装備したことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記スキンプレートに、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知するセンサを装備したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前記センサは、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
前記スキンプレート外周面と土砂との間のトンネル延伸方向の摺動抵抗を直接に検知する前記センサ又は前記スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知する前記センサは、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知することを特徴とする請求項3に記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
前記センサのいずれか一種類は、周方向に複数設けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のトンネル掘削機。
【請求項8】
前記センサのいずれか一種類は、トンネル延伸方向に複数設けられることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のトンネル掘削機。
【請求項9】
トンネル掘削機のチャンバー内の土とバルクヘッド又はスキンプレート内周面との周方向の摺動抵抗を直接に検知するセンサを装備したことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のトンネル掘削機。
【請求項10】
前記センサは、前記チャンバー内の土水圧を検知することを特徴とする請求項9に記載のトンネル掘削機。
【請求項11】
前記センサは、前記チャンバー内に複数設けられることを特徴とする請求項9又は10に記載のトンネル掘削機。
【請求項12】
トンネル掘削機のスキンプレートに、前記スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知するセンサを装備したことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項13】
前記スキンプレートに、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知するセンサを装備したことを特徴とする請求項12に記載のトンネル掘削機。
【請求項14】
前記センサは、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知することを特徴とする請求項12に記載のトンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機に関する。詳しくは、過負荷によるマシンの損傷を防止し、安定したトンネル施工に役立つトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トンネル掘削機(シールドマシン)においては、カッタヘッドを回転させ、そのカッタヘッドの前面に装着された複数のカッタが前方の地盤に切羽を形成することにより、トンネルを掘削する。
ここで、トンネル掘削機のスキンプレート(外殻)の摺動抵抗は、直接検知することは難しいと考えられており、油圧シリンダの作動圧力及び土圧計の計算値を理論式に当てはめて推測していた。
【0003】
掘削機の掘削における諸抵抗の総和Fnは以下の理論式(1)となる。
Fn=F1+F2+F3+F4+F5 …(1)
ここで、
F1:シールド外周面と土との摩擦抵抗或いは粘着抵抗、即ち、トンネル延伸方向の摩擦抵抗
F2:切羽前面抵抗
F3:曲線施工等の変向荷重による推進抵抗
F4:テール内でのセグメントとテールシール部との摩擦抵抗
F5:後続台車の牽引抵抗
【0004】
掘削機が前方の壁を押す力が、諸抵抗の総和Fnより強すぎると、地面(地表)が盛り上がることがある。弱すぎると、掘削機が押し戻されてしまう。また、局所に集中して負荷が作用すると掘削機が損傷することがある。
なお、掘削機のローリングは、傾斜計にて事後的に把握していた。
掘削機ではなく、ケーソン向けの周面摩擦計又は壁面土圧計については、特許文献1,2に記載されている。
【0005】
また、トンネル掘削機向けの土水圧力・せん断力測定センサ又はせん断力計については、特許文献3,4,5に記載されている。特許文献3,4,5に記載されるセンサは、カッタヘッドの前面、カッタスポーク等に設けられ、掘削する(取り込む土砂)からの土水圧力及びせん断力を測定することにより、主として、チャンバー内の土の性質測定評価に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許1132309公報
【特許文献2】実用新案登録第3208784号公報
【特許文献3】特開2017−96049号公報
【特許文献4】特開2016−130406号公報
【特許文献5】特開2017−101436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スキンプレートに作用する摺動抵抗は、理論式である程度把握することは可能であるが、正確ではなかった。例えば、前・後胴の個別の摩擦力や、円周方向(角度)における抵抗や、土質や掘削条件による粘着力・摩擦係数を把握できなかった。
【0008】
特許文献1,2に開示される周面摩擦計又は壁面土圧計は、類似の使用用途としてケーソンにて使用されているに過ぎず、トンネル延伸方向の摺動抵抗を検知するものではなく、また、ローリング力を想定していないため検知することはできず強度も考慮されていなかった。
また、特許文献3,4,5に開示されるトンネル掘削機向けの土水圧力・せん断力測定センサ又はせん断力計は、チャンバー内の土の性質測定評価に利用されているだけであり、過負荷によるマシンの損傷を防止し、安定したトンネル施工に役立つものではなかった。
【0009】
また、ローリングは、未然に防ぐ方法はなく、姿勢を把握するだけであった。
【0010】
本発明は、上記技術的課題に鑑み、過負荷によるマシンの損傷を防止し、安定したトンネル施工に役立つトンネル掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1の発明に係るトンネル掘削機は、トンネル掘削機のスキンプレートに、前記スキンプレート外周面と土砂との間のトンネル延伸方向の摺動抵抗を直接に検知するセンサを装備したことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するための第2の発明に係るトンネル掘削機は、上記第1の発明に係るトンネル掘削機において、前記センサは、前記スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するための第3の発明に係るトンネル掘削機は、上記第1の発明に係るトンネル掘削機において、前記スキンプレートに、前記スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知するセンサを装備したことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するための第4の発明に係るトンネル掘削機は、上記第1、第2又は第3の発明に係るトンネル掘削機において、前記スキンプレートに、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知するセンサを装備したことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するための第5の発明に係るトンネル掘削機は、上記第1又は第2の発明に係るトンネル掘削機において、前記センサは、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するための第6の発明に係るトンネル掘削機は、上記第3の発明に係るトンネル掘削機において、前記スキンプレート外周面と土砂との間のトンネル延伸方向の摺動抵抗を直接に検知する前記センサ又は前記スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知する前記センサは、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知することを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するための第7発明に係るトンネル掘削機は、上記第1から第6のいずれか1つの発明に係るトンネル掘削機において、前記センサのいずれか一種類は、周方向に複数設けられることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するための第8の発明に係るトンネル掘削機は、上記第1から第7のいずれか一つの発明に係るトンネル掘削機において、前記センサのいずれか一種類は、前記スキンプレートのトンネル延伸方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するための第9の発明に係るトンネル掘削機は、上記第1から第8のいずれか一つの発明に係るトンネル掘削機において、チャンバー内の土とバルクヘッド又はスキンプレート内周面との周方向の摺動抵抗を検知するセンサを装備したことを特徴とする。
期待する効果としては、第1〜8の発明において検知するスキンプレート外面における延伸方向と周方向の摺動抵抗に加えて、カッタの回転によって発生するチャンバー内の土がマシンのバルクヘッドやスキンプレート内周面に与える回転方向の力(摺動抵抗として検出)を組み合わせて解析することにより,マシンのローリングの作用力をより詳細に把握することができ、マシンのローリング制御(発生防止)に一段の効果がある。例えば、カッタの正転・逆転の回転方向によって、ローリングの作用力が低減しているか否かの確認などが可能である。
【0020】
上記課題を解決するための第10の発明に係るトンネル掘削機は、上記第9の発明に係るトンネル掘削機において、前記センサは、前記チャンバー内の土水圧を検知することを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するための第11の発明に係るトンネル掘削機は、上記第9又は第10の発明に係るトンネル掘削機において、前記チャンバー内に複数設けられることを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決するための第12の発明に係るトンネル掘削機は、トンネル掘削機のスキンプレートに、前記スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を検知するセンサを装備したことを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するための第13の発明に係るトンネル掘削機は、上記第12の発明に係るトンネル掘削機において、前記スキンプレートに、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知するセンサを装備したことを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決するための第14の発明に係るトンネル掘削機は、上記第12の発明に係るトンネル掘削機において、前記センサは、前記スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、トンネル掘削機のスキンプレートに、スキンプレート外周面と土砂との間のトンネル延伸方向の摺動抵抗を直接に検知するセンサを装備したので、推定値に頼ることなく、トンネル延伸方向の摺動抵抗をリアルタイムに把握することができる。
【0026】
このように推進方向の摺動抵抗を把握することにより、過負荷での押し付けの抑制や、押し付ける荷重分布を最適化する事が可能となる。
【0027】
また、トンネル掘削機のスキンプレートに、スキンプレート外周面と土砂との間の周方向の摺動抵抗を直接に検知するセンサを装備すると、掘削機本体及びスキンプレートに作用するローリング力を把握することができる。
【0028】
このように周方向の摺動抵抗(ローリング力)を把握することで、掘削機本体及びスキンプレートが回転(ローリング)したと判断でき、そのときは、掘削機本体及びスキンプレートの僅かな連れ周りを防止するためにカッタヘッドを逆回転させる。また、その際のローリング力を基準にして、掘削機本体及びスキンプレートのローリングを発生させない為の閾値をカッタヘッド回転用モータに設定する事が可能となる。または、シールドジャッキや中折れジャッキの推力を制御して掘削機を前方に押し付ける力を管理する事でローリングを低減することが可能となる。更に、ローリングを実際起こさなくてもトンネル延伸方向の摺動抵抗から周方向の摺動抵抗を推定しローリング力の基準をリアルタイムに設けることも可能である。
【0029】
言い換えると、マシン外面での周方向の摺動抵抗とマシンのローリングとしての挙動の関係については、カッタ回転などのローリングを起こそうとする力をマシン外面での摩擦力として周方向の摺動抵抗で受けており、ローリングを起こしていない状態は静止摩擦として摺動抵抗が発生する。これがローリングを起こしたときには、状態が静止摩擦から動摩擦に変わるため(周方向の)摺動抵抗の値に変化が生じると共に、掘削機としては掘削機本体に装備している傾斜計がローリングの発生を検知する。よって、この周方向の摺動抵抗の値を管理することで、掘削機のローリングを管理することができる。即ち、摺動抵抗が静止摩擦状態にあることを検知していれば、ローリングの発生はなく、抵抗値の変化により、ローリングが発生したとなれば、カッタの回転の方向を切り換える等して、ローリングの解消を図る。また、ローリングが未発生の状態でも、静止摩擦の限界近くでローリングの発生のリスクが高まっている場合などは、推力を下げ、カッタ回転に対する負荷を下げることで、ローリングを起こそうとする力を低減させるなど、ローリング発生防止の管理が可能となる。
【0030】
更に、トンネル掘削機のスキンプレートに、スキンプレート外周面に半径方向外側から作用する土水圧力を検知するセンサを装備すると、作用荷重の把握、土の性状の推定を行える。
【0031】
また、上記センサを複数配置することで、トンネル延伸方向又は周方向の摺動抵抗及び半径方向外側から作用する土水圧力の分布を把握することができる。これにより、土質や掘削条件による摺動抵抗や摩擦係数・粘着力を把握することが可能となる。特に、不安定な地山でのトンネル掘削機に作用する荷重の把握に好適である。
【0032】
なお、上記センサは、トンネル延伸方向又は周方向の摺動抵抗及び半径方向外側から作用する土水圧力を各々検知する個別のものでも良いが、これらを同時に検知するものとすれば、省スペースで配置することができる。
【0033】
更に、発進時に過剰な荷重がかかるのを防ぐために、発進前は、センサを機内に取り込んでおける伸縮機構を設けると良い。
【0034】
結果として、本発明は、機械保護によるマシン信頼性の向上や状態監視による安定したトンネル施工が実現可能となると共に、収集した土質の摩擦係数や粘着力を活用して、類似土質における掘削に対してより信頼性のある設計を行うことができる。
【0035】
言い換えると、掘削機の各部に作用している荷重と掘削機を作動させている駆動力との関係を適切に把握することができるので、地山側に過剰な負荷をかけることなく、また、掘削機側にも過剰な負荷をかけることなく、安全且つ適切に掘削を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施例に係るトンネル掘削機を説明する概略図である。
図2図1のA‐A矢視に相当する概略図である。
図3図1のB‐B矢視に相当する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るトンネル掘削機について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0038】
本実施例に係るトンネル掘削機の構成について図1,2,3を用いて説明する。
図1は、本実施例に係るトンネル掘削機10を説明する概略図であり、図2は、図1のA‐A矢視に相当する概略図である。図3は、図1のB−B矢視に相当する概略図で、掘削機のバルクヘッド部を示すものである。
【0039】
図1に示すように、本実施例のトンネル掘削機10は、カッタヘッド11の後方に掘削機本体の外殻としてスキンプレート12が配置され、そのスキンプレート12の後方にセグメント13が配置されている。トンネル掘削機10の外部は、土砂20である。
【0040】
スキンプレート12は、円筒状をなす前胴12aと後胴12bとからなり、前胴12a及び後胴12bの内側には、図2に示すように、周方向に複数箇所の中折れジャッキ16が配置されている。
【0041】
前胴12aと後胴12bには、それぞれ、スキンプレート外周面と土砂との間の、図中矢印aで示すトンネル延伸方向(以下、1軸方向という)の摺動抵抗を直接に検知する摺動抵抗検知センサ14が周方向等間隔に4個装備されている。従って、前後方向については、2カ所に摺動抵抗検知センサ14が並設されていることになる。また、チャンバー内の土砂とバルクヘッド21との周方向の摺動抵抗を検知する為にバルクヘッド21に摺動抵抗検知センサ14が4個装備されている。つまり、摺動抵抗検知センサ14は、合計では12カ所に装備されている。図中、22はカッタ駆動部、23は排土装置である。
【0042】
このように1軸方向の摺動抵抗を直接に検知する摺動抵抗検知センサ14を設けたので、推定値に頼ることなく、1軸方向の摺動抵抗をリアルタイムに把握することができる。
【0043】
また、複数の摺動抵抗検知センサ14を装備すると、前胴12a(延伸方向前側)で4カ所、後胴12b(延伸方向後側)で4カ所、合計8カ所のトンネル延伸方向の摺動抵抗の分布をリアルタイムで把握できる。また、摺動抵抗の分布に代えて、複数の摺動抵抗検知センサ14で検知したトンネル延伸方向の摺動抵抗の平均値を求めても良い。
【0044】
なお、前胴12aと後胴12bとは、異なる半径で仕上がっている事があり、例えば、前胴12aが後胴12bよりも太径であることや、逆に、前胴12aが後胴12bよりも細径であることがあり、そのような場合には、太径の方がトンネル延伸方向の摺動抵抗は大きいと想定される。そのため、前後方向の2カ所の摺動抵抗検知センサ14でそれぞれ摺動抵抗を検知することが有効である。
【0045】
また、中折れジャッキ16の長さを調節して、カーブを掘削する場合、カーブの内周側に比較し、カーブの外周側ではトンネル延伸方向の摺動抵抗は大きいと想定される。そのため、上下または左右の対称位置2か所以上及び前後方向の2列以上の摺動抵抗検知センサ14でそれぞれ摺動抵抗を検知することが有効である。
【0046】
なお、本実施例では、スキンプレート12は、前胴12aと後胴12bとからなるが、一つの胴体からなる場合でも、摺動抵抗検知センサ14を数多く設ける事により、より正確な情報が入手可能である。その場合には、中折れジャッキ16に代えて一般的なシールドジャッキを使用する。
【0047】
1軸方向の摺動抵抗を検知する摺動抵抗検知センサ14の何れかに代えて、スキンプレート外周面と土砂との間の、図中矢印bで示す周方向(以下、2軸方向という)の摺動抵抗を検知できるセンサ、または、スキンプレート外周面に、図中矢印cで示す半径方向外側(以下、3軸方向という)から作用する土水圧力を検知するセンサを使用しても良い。
【0048】
例えば、2軸方向の摺動抵抗を検知できる摺動抵抗検知センサ14を使用すると、掘削機本体、スキンプレート12及びバルクヘッド21に作用するローリング力をリアルタイムで把握することが可能となる。
即ち、カッタヘッド11は回転するのに対して、掘削機本体であるスキンプレート12及びバルクヘッド21は、回転しないが、静止摩擦としての周方向の摺動抵抗を検出する。
【0049】
しかし、カッタヘッド11に連れ回されて掘削機本体及びスキンプレート12も幾分か回転(ローリング)することがある。この場合、周方向の摺動抵抗は静止摩擦から動摩擦への切り替わりとして不連続な値を検出することで、ローリングの挙動を検知することができる。そのようなときのために、2軸方向の摺動抵抗を摺動抵抗検知センサ14により検知するのである。
【0050】
一方、3軸方向から作用する土水圧力を検知するセンサ14を使用すると、通常一般に行われることであるが、作用荷重の把握及び土の性状の推定が可能となる。
【0051】
また、各センサ14として、トンネル延伸方向(1軸方向)・周方向(2軸方向)の摺動抵抗及び半径方向外側(3軸方向)からの土水圧力を同時に検知できるセンサ(いわゆる多軸センサ)を使用することもできる。つまり、多軸方向を検知できるセンサは、個別の各軸方向を検知するセンサを個別に設ける場合に比較して、省スペースとなる利点がある。
【0052】
上記センサ14としては、ひずみゲージを利用したものが一般的であるが、多軸センサとしては、特許文献1,2で開示されているものが使用可能である。
【0053】
なお、上述した各センサ14は、発進時に過剰な荷重がかかるのを防ぐために、発進前は、センサ14を機内に取り込んでおける伸縮機構(図示省略)を設けると良い。
【0054】
即ち、各センサ14は、発進前の状態として、スキンプレート12から控えて収納されている。発進後は、各センサ14は、確実な検知を行うために伸縮機構によりスキンプレート12と略面一状態に移行する。
【0055】
また、上述した各センサ14は、コントローラ15に接続され、各センサ14で検知されたトンネル延伸方向の摺動抵抗等の信号がコントローラ15へ送られることになる。
コントローラ15は、中折れジャッキ16に接続されると共に、カッタヘッド11を回転させるためのカッタヘッド用モータ(図示せず)に接続されている。
【0056】
コントローラ15は、各センサ14で検知されたトンネル延伸方向の摺動抵抗等の信号を蓄積すると共に解析し、解析結果に基づいて、中折れジャッキ16及びカッタヘッド用モータを制御する。
【0057】
具体的には、コントローラ15は、各センサ14で検知されたトンネル延伸方向の摺動抵抗を理論式(1)のF1に実測値として代入して諸抵抗の総和Fnを求め、諸抵抗の総和Fnに基づき、中折れジャッキ16に供給する油圧を調整し、過負荷での押し付けの抑制や、押し付ける荷重分布を最適化する。
【0058】
また、コントローラ15は、周方向の摺動抵抗を把握する事で、掘削機本体及びスキンプレート12が回転(ローリング)したと判断でき、掘削機本体及びスキンプレート12の僅かな連れ周りを防止するためにカッタヘッド11を逆回転させる。また、その際のローリング力を基準にして、掘削機本体及びスキンプレート12のローリングを発生させない為の閾値をカッタヘッド回転用モータに設定することもできる。または、シールドジャッキや中折れジャッキの推力を制御して掘削機を前方に押し付ける力を管理することでローリングを低減することもできる。
【0059】
更に、コントローラ15は、各センサ14で検知されたトンネル延伸方向の摺動抵抗から周方向の摺動抵抗を推定し、実際のローリングがなくてもローリング力の基準値をリアルタイムに設定する事も可能である。
【0060】
更に、コントローラ15は、各センサ14で検知されたトンネル延伸方向及び周方向の摺動抵抗から、地山とのトンネル延伸方向及び周方向の粘着力や摩擦係数を算出することも可能である。
【0061】
結果として、機械保護によるマシン信頼性の向上や状態監視による安定したトンネル施工が実現可能となると共に、収集した土質の摩擦係数や粘着力を活用して、類似土質における掘削に対してより信頼性のある設計を行うことができる。
【0062】
言い換えると、掘削機の各部に作用している荷重と掘削機を作動させている駆動力との関係を適切に把握することができるので、地山側に過剰な負荷をかけることなく、また、掘削機側にも過剰な負荷をかけることなく、安全且つ適切に掘削を施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、過負荷によるマシンの損傷を防止し、安定したトンネル施工に役立つトンネル掘削機として産業上利用可能なものである。
【符号の説明】
【0064】
10 トンネル掘削機
11 カッタヘッド
12 スキンプレート
12a 前胴
12b 後胴
13 セグメント
14 摺動抵抗検知センサ
15 コントローラ
16 中折れジャッキ
20 土砂
21 バルクヘッド
22 カッタ駆動部
23 排土装置
図1
図2
図3