特開2020-169661(P2020-169661A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-169661(P2020-169661A)
(43)【公開日】2020年10月15日
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20200918BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20200918BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20200918BHJP
【FI】
   F16K31/04 B
   F16K1/44 D
   F25B41/06 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-70400(P2019-70400)
(22)【出願日】2019年4月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】北見 雄希
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
【テーマコード(参考)】
3H052
3H062
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA21
3H052CA12
3H052CA37
3H052CD01
3H052CD09
3H052EA16
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB24
3H062CC02
3H062DD01
3H062DD11
3H062EE06
3H062EE08
3H062HH04
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】小流量制御域と大流量制御域とで流量制御する電動弁において、大流量制御域で主弁体3の全開位置を所定位置にして全開流量を安定させるとともに、主弁ばね3aの過剰な圧縮を防止して、経年変化等による主弁ばね3aの変形を防止する。
【解決手段】主弁ポート13aを開閉する主弁体3と、主弁体3の副弁室3Rの副弁ポート33aの開度を変更するニードル弁4と、主弁体3を主弁ポート13a側に付勢する主弁ばね3aと、ニードル弁4を軸線L方向に進退駆動する駆動部5とを備える。主弁ポート13aを全開とする大流量制御域において主弁ばね3aを中間圧縮状態にして主弁体3の軸線L方向の全開位置を規制する当接部231,311を設ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁室の主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に設けられた副弁室の副弁ポートの開度を変更する副弁体と、前記主弁体を前記主弁ポート側に付勢する主弁ばねと、前記副弁体を軸線方向に進退駆動する駆動部と、を備え、前記主弁体が前記主弁ポートを閉とした状態で、前記副弁体が前記副弁ポートの開度を変更する小流量制御域と、前記主弁体が前記主弁ポートを全開状態として、前記主弁ポートから大流量の流体を流す大流量制御域と、の二段の流量制御域を有する電動弁であって、
前記大流量制御域において前記主弁ばねを中間圧縮状態にして前記主弁体の前記軸線方向の全開位置を規制するストッパ機構を備えたことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記副弁体が前記小流量制御域よりも前記副弁ポートをさらに開状態としたときに、前記副弁体が前記主弁体に係合することで、前記主弁体を前記全開状態とすることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記主弁体をガイド孔内に挿通して該主弁体を前記軸線方向にガイドするガイド部材を備え、前記ストッパ機構が、前記ガイド部材に形成された当接部と前記主弁体に形成された当接部とで構成され、前記両方の当接部が前記軸線方向で当接することにより前記主弁体の前記軸線方向の全開位置を規制することを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記主弁体側の前記当接部が該主弁体の主弁部の外周に形成され、前記ガイド部材側の前記当接部が該ガイド部材の端部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項5】
前記ストッパ機構が、前記ガイド部材の前記ガイド孔の底部に形成された当接部と、前記主弁体の前記ガイド孔の底部に対向する端部に形成された当接部とで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項6】
前記ストッパ機構が、前記主弁体に形成された前記副弁ポートの周囲の当接部と、前記副弁体の前記副弁ポートを開閉するニードル部側の円柱部に形成された当接部とで構成され、前記両方の当接部が前記軸線方向で当接することにより前記主弁体の前記軸線方向の全開位置を規制することを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項7】
圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の冷凍サイクルに設けられる電動弁として、小流量制御域と大流量制御域とで流量制御する電動弁がある。このような電動弁は、室内機に搭載される用途(例えば除湿弁)があり、例えば特開2012−117584号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−117584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の従来の電動流量制御弁(電動弁)は、二次継手管側の大口径ポートに対して主弁体を対向配置し、この主弁体を支持部材との間に設けた主弁ばねの付勢力で大口径ポート側に付勢している。そして、パイロット弁体により主弁体に設けられた小口径ポートの開度を制御して小流量制御域としている。また、ステッピングモータの駆動によりパイロット弁体と共に主弁体を上昇させることで、大口径ポートを弁開とし、大流量制御域としている。さらに、この電動流量制御弁は冷凍サイクルシステムの除湿弁として室内機内に用いられ、例えば暖房運転時には上記の大流量制御域とし、大口径ポート側から大流量の流体(冷媒)を流す構成となっている。
【0005】
しかし、このような暖房運転時の大流量制御域の状態では、大口径ポートから流入する流体の圧力が主弁体を上昇させるが、主弁ばね荷重と対抗する流体の圧力(差圧力)の大小による主弁体の全開位置バラツキや、主弁ばねが密着長まで圧縮された場合、密着長のバラツキによる主弁体の全開位置のバラツキにより、暖房運転時の全開流量がバラツキ、安定しなかった。また、この様に主弁ばねが密着長まで過剰に圧縮される虞があるため、経年変化等により主弁ばねに変形が生じて、ばね特性が悪化することがあり、適正な流量制御が困難になる。
【0006】
本発明は、小流量制御域と大流量制御域とで流量制御する電動弁において、大流量制御域で主弁体の全開位置を所定位置にして全開流量を安定させるとともに、主弁ばねの過剰な圧縮を防止して、経年変化等による主弁ばねの変形を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、主弁室の主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に設けられた副弁室の副弁ポートの開度を変更する副弁体と、前記主弁体を前記主弁ポート側に付勢する主弁ばねと、前記副弁体を軸線方向に進退駆動する駆動部と、を備え、前記主弁体が前記主弁ポートを閉とした状態で、前記副弁体が前記副弁ポートの開度を変更する小流量制御域と、前記主弁体が前記主弁ポートを全開状態として、前記主弁ポートから大流量の流体を流す大流量制御域と、の二段の流量制御域を有する電動弁であって、前記大流量制御域において前記主弁ばねを中間圧縮状態にして前記主弁体の前記軸線方向の全開位置を規制するストッパ機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、ストッパ機構が主弁ばねを「中間圧縮状態」にして主弁体の全開位置を位置決めする。したがって、主弁体の全開位置が所定位置に決められるため流体の全開流量が安定する。また、主弁ばねは中間圧縮状態までしか圧縮されないので、経年変化等による主弁ばねの変形(へたり)を防止できる。
【0009】
さらに、前記副弁体が前記小流量制御域よりも前記副弁ポートをさらに開状態としたときに、前記副弁体が前記主弁体に係合することで、前記主弁体を前記全開状態とするのが好ましい。これにより、副弁体を駆動する駆動部の動作により主弁体を全開状態とする電動弁が好ましい。
【0010】
さらに、前記主弁体をガイド孔内に挿通して該主弁体を前記軸線方向にガイドするガイド部材を備え、前記ストッパ機構が、前記ガイド部材に形成された当接部と前記主弁体に形成された当接部とで構成され、前記両方の当接部が前記軸線方向で当接することにより前記主弁体の前記軸線方向の全開位置を規制するものが好ましい。
【0011】
この際、前記主弁体側の前記当接部が該主弁体の主弁部の外周に形成され、前記ガイド部材側の前記当接部が該ガイド部材の端部に形成されている電動弁が好ましい。
【0012】
また、前記ストッパ機構が、前記ガイド部材の前記ガイド孔の底部に形成された当接部と、前記主弁体の前記ガイド孔の底部に対向する端部に形成された当接部とで構成されている電動弁が好ましい。
【0013】
また、前記ストッパ機構が、前記主弁体に形成された前記副弁ポートの周囲の当接部と、前記副弁体の前記副弁ポートを開閉するニードル部側の円柱部に形成された当接部とで構成され、前記両方の当接部が前記軸線方向で当接することにより前記主弁体の前記軸線方向の全開位置を規制する電動弁が好ましい。
【0014】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする。
【0015】
このような冷凍サイクルシステムによれば、暖房運転時に前述の電動弁による効果と同様に、全開流量が安定した制御を行うことができるとともに、主弁ばねの変形(へたり)を防止して、安定したシステムを構成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、二段の流量制御域を有する電動弁において、流体の全開流量を安定させることができるとともに、主弁ばねの変形(へたり)を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図である。
図2】第1実施形態の電動弁の主弁体の全開状態で運転停止時、または冷房運転時の縦断面図である。
図3】第1実施形態の電動弁の主弁体の全開状態で暖房運転時の縦断面図である。
図4】本発明の第2実施形態の電動弁における全開状態で流体流動時の縦断面図である。
図5】本発明の第3実施形態の電動弁における全開状態で流体流動時の縦断面図である。
図6】本発明の第4実施形態の電動弁における全開状態で流体流動時の縦断面図である。
図7】本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図、図2は第1実施形態の電動弁の主弁体の全開状態で運転停止時、または冷房運転時の縦断面図、図3は第1実施形態の電動弁の主弁体の全開状態で暖房運転時の縦断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1乃至図3の図面における上下に対応する。この電動弁100は、弁ハウジング1と、ガイド部材2と、主弁体3と、「副弁体」としてのニードル弁4と、駆動部5と、を備えている。
【0019】
弁ハウジング1は例えば、黄銅、ステンレス等で略円筒形状に形成されており、その内側に主弁室1Rを有している。弁ハウジング1の外周片側には主弁室1Rに導通される第1継手管11が接続されるとともに、下端から下方に延びる筒状部に第2継手管12が接続されている。また、弁ハウジング1の第2継手管12の主弁室1R側には円筒状の主弁座13が形成され、この主弁座13の内側は主弁ポート13aとなっており、第2継手管12は主弁ポート13aを介して主弁室1Rに導通される。主弁ポート13aは軸線Lを中心とする円柱形状の透孔(貫通した孔)である。なお、第1継手管11及び第2継手管12は、弁ハウジング1に対してろう付け等により固着されている。
【0020】
弁ハウジング1の上端の開口部には、ガイド部材2が取り付けられている。ガイド部材2は、弁ハウジング1の内周面内に圧入される圧入部21と、圧入部21より小径で圧入部21の上下に位置する略円柱状のガイド部22,23と、上側のガイド部22の上部に延設されたホルダ部24と、圧入部21の外周に設けられたリング状のフランジ部25とを有している。圧入部21、ガイド部22,23、ホルダ部24は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部25は、例えば、黄銅、ステンレス等の金属板であり、このフランジ部25は、インサート成形により樹脂製の圧入部21と共に一体に設けられている。
【0021】
ガイド部材2は、圧入部21により弁ハウジング1に組み付けられ、フランジ部25を介して弁ハウジング1の上端部に溶接により固定されている。また、ガイド部材2において、圧入部21及び上下のガイド部22,23の内側には軸線Lと同軸の円筒形状のガイド孔2Aが形成されるとともに、ホルダ部24の中心には、ガイド孔2Aと同軸の雌ねじ部24aとそのねじ孔が形成されている。そして、下側のガイド部23の内側でガイド孔2A内には主弁体3が配設されている。
【0022】
主弁体3は、主弁座13に対して着座及び離座する主弁部31と、円柱状のニードルガイド孔32aを有する保持部32と、ニードルガイド孔32aの底部を構成する副弁座33と、保持部32の端部に設けられたリテーナ34と、を有している。なお、ニードルガイド孔32aの下側一部は副弁室3Rとなっている。保持部32のニードルガイド孔32a内には、後述のロータ軸51に取り付けられたワッシャ43とロータ軸51と一体に形成されたガイド用ボス部44とが挿通されるとともに、リング状のリテーナ34は保持部32の上端に嵌合固着または溶接等により固着されている。
【0023】
また、リテーナ34とガイド孔2Aの上端部との間には、主弁ばね3aが配設されており、この主弁ばね3aにより主弁体3は主弁座13の方向(閉方向)に付勢されている。副弁座33の中心には軸線Lを中心とする円筒形状の副弁ポート33aが形成されている。また、保持部32の側面の少なくとも一箇所には、副弁室3Rと主弁室1Rとを導通する導通孔32bが形成されており、副弁体としてのニードル弁4が副弁ポート33aを開状態としたとき、主弁室1R、副弁室3R、副弁ポート33a及び主弁ポート13aが導通する。
【0024】
ニードル弁4は、後述のロータ軸51の下端部にこのロータ軸51と一体に形成されてロータ軸51側に連なる先端に向かって徐々に径が小さくなる円錐台状のニードル部42とを一体に形成して備えている。また、ニードル弁4は、ロータ軸51に取り付けられた潤滑性樹脂からなる円環状のワッシャ43と、ロータ軸51と一体に形成されたガイド用ボス部44と、を有している。そして、ワッシャ43とガイド用ボス部44は、ニードルガイド孔32a内に摺動可能に挿通されている。
【0025】
弁ハウジング1の上端にはケース14が溶接等によって気密に固定され、このケース14の内外に駆動部5が構成されている。駆動部5は、ステッピングモータ5Aと、ステッピングモータ5Aの回転によりニードル弁4を進退させるねじ送り機構5Bと、ステッピングモータ5Aの回転を規制するストッパ機構5Cと、を備えている。
【0026】
ステッピングモータ5Aは、ロータ軸51と、ケース14の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ52と、ケース14の外周においてマグネットロータ52に対して対向配置されたステータコイル53と、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸51はブッシュを介してマグネットロータ52の中心に取り付けられ、このロータ軸51のガイド部材2側の外周には雄ねじ部51aが形成されている。この雄ねじ部51aはガイド部材2の雌ねじ部24aに螺合されており、これにより、ガイド部材2はロータ軸51を軸線L上に支持している。そして、ガイド部材2の雌ねじ部24aとロータ軸51の雄ねじ部51aはねじ送り機構5Bを構成している。
【0027】
以上の構成により、ステッピングモータ5Aが駆動されるとマグネットロータ52及びロータ軸51が回転し、ロータ軸51の雄ねじ部51aとガイド部材2の雌ねじ部24aとのねじ送り機構5Bにより、マグネットロータ52と共にロータ軸51が軸線L方向に移動する。そして、ニードル弁4が軸線L方向に進退移動してニードル弁4が副弁ポート33aに対して近接又は離間する。また、ニードル弁4が上昇するとき、ワッシャ43が主弁体3のリテーナ34に係合し、主弁体3はニードル弁4と共に移動して、主弁座13から離座する。なお、マグネットロータ52には突起部52aが形成されており、マグネットロータ52の回転に伴って突起部52aが回転ストッパ機構5Cを作動させ、ロータ軸51(及びマグネットロータ52)の最下端位置及び最上端位置が規制される。
【0028】
図1の小流量制御域状態では、主弁体3は主弁座13に着座した状態で主弁ポート13aが弁閉となり、ニードル弁4により副弁ポート33aの開度が制御され、小流量の制御が行われる。また、例えば冷凍サイクルシステムの圧縮機が停止して流体(冷媒)が停止した状態で、ニードル弁4と主弁体3が上昇されると、図2のように主弁ポート13aが全開状態となる。これにより、暖房運転時、第2継手管12から第1継手管11へ大流量の流体(冷媒)が流される。
【0029】
ここで、ガイド部材2の下側のガイド部23の下端部は円環状の平面を構成する当接部231となっている。また、主弁部31の外径は保持部32の外径より大きくなっており、これにより主弁部31の保持部32側外周には円環状の平面を構成する当接部311が形成されている。また、ガイド部23の当接部231と主弁部31の当接部311とは軸線L方向で対向して配置されている。そして、図2の状態で暖房運転として第2継手管12から大流量の流体が流れると、流体の圧力(差圧力)が主弁体3に作用し、主弁体3が主弁ばね3aの付勢力に抗して上昇し、図3の状態となる。このとき、主弁ばね3aは完全に圧縮されない状態で主弁部31の保持部32側外周の当接部311が、ガイド部材2の下側のガイド部23の当接部231に当接し、主弁体3の軸線L方向の位置、すなわち全開位置が位置決めされる。
【0030】
上記のように主弁ばね3aが密着長まで完全に圧縮されない状態を「中間圧縮状態」という。この実施形態では、当接部311と当接部231は「ストッパ機構」を構成しており、このストッパ機構は主弁ばね3aを「中間圧縮状態」にして主弁体3の全開位置を位置決めする。したがって、主弁体3の全開位置が所定の位置で安定するため、第2継手管12から第1継手管11へ流れる流体の流量(全開流量)が安定する。また、主弁ばね3aは中間圧縮状態までしか圧縮されないので、経年変化等による主弁ばね3aの変形(へたり)を防止できる。
【0031】
図4乃至図6は第2乃至第4実施形態の電動弁における全開状態で流体流動時の要部縦断面図である。第2乃至第4実施形態において第1実施形態と異なる点はストッパ機構であり、第1実施形態と同様な要素には図1乃至図3と同符号を付記して重複する説明は適宜省略する。
【0032】
図4の第2実施形態では、ガイド部材2において、下側のガイド部23′のガイド孔2A′の径を上側のガイド部22のガイド孔2Aより大きくすることで、このガイド孔2A′とガイド孔2Aとの間に円環状の平面を構成する当接部231′を形成している。また、主弁部31の保持部32の軸線方向中間に中間に円環状の平面を構成する当接部321を形成している。そして、ガイド部材2の当接部231′と主弁体3側の当接部321とは軸線L方向で対向して配置されている。
【0033】
当接部321と当接部231′は「ストッパ機構」を構成しており、このストッパ機構は第1実施形態と同様に主弁ばね3aを「中間圧縮状態」にして主弁体3の全開位置を位置決めする。これにより、主弁体3の全開位置が安定し、第2継手管12から第1継手管11へ流れる流体の流量(全開流量)が安定する。また、主弁ばね3aの変形(へたり)を防止できる。
【0034】
図5の第3実施形態では、ガイド用ボス部44からニードル部42側に繋がるガイド用ボス部44の外径より小さく、副弁ポート33a径より大きい直径の円柱部41があり、このその円柱部41のニードル部42側の端部に円環状の平面を構成する当接部411を形成している。これにより、当接部411は副弁座33の副弁ポート33aの周囲の当接部331に軸線L方向で対向して配置されている。
【0035】
当接部411と当接部331は「ストッパ機構」を構成しており、このストッパ機構は第1実施形態と同様に主弁ばね3aを「中間圧縮状態」にして主弁体3の全開位置を位置決めする。これにより、主弁体3の全開位置が安定し、第2継手管12から第1継手管11へ流れる流体の流量(全開流量)が安定する。また、主弁ばね3aの変形(へたり)を防止できる。
【0036】
図6の第4実施形態では、リテーナ34の軸線方向の高さを高くし、このリテーナ34の上端に円環状の平面を構成する当接部341を形成している。また、ガイド部材2のガイド孔2Aの天井部にはリテーナ34側に突出する円環部22bが形成されこの円環部22bの下端は円環状の平面を構成する当接部221となっている。そして、主弁ばね3aの「中間圧縮状態」でリテーナ34の当接部341が円環部22bの当接部221に当接する。
【0037】
当接部341と当接部221は「ストッパ機構」を構成しており、このストッパ機構は第1実施形態と同様に主弁ばね3aを「中間圧縮状態」にして主弁体3の全開位置を位置決めする。これにより、主弁体3の全開位置が安定し、第2継手管12から第1継手管11へ流れる流体の流量(全開流量)が安定する。また、主弁ばね3aの変形(へたり)を防止できる。
【0038】
次に、図7に基づいて本発明の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステムは、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記各実施形態の電動弁100は、空気調和機の第1室内側熱交換器91(除湿時冷却器として作動)と第2室内側熱交換器92(除湿時加熱器として作動)との間に設けられており、圧縮機95、四方弁96、室外側熱交換器94および電子膨張弁93とともに、ヒ−トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内側熱交換器91と第2室内側熱交換器92及び電動弁100は室内に設置され、圧縮機95、四方弁96、室外側熱交換器94および電子膨張弁93は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0039】
除湿弁としての実施形態の電動弁100は、除湿時以外の冷房時または暖房時には主弁体が全開状態とされて、第1室内熱交換器91と第2室内熱交換器92は一つの室内熱交換器とされる。そして、この一体の室内熱交換器と室外熱交換器94は、「蒸発器」及び「凝縮器」として択一的に機能する。すなわち、電子膨張弁としての電動弁93は、蒸発器と凝縮器の間に設けられている。
【0040】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁100を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0041】
実施形態におけるストッパ機構の当接部は軸線Lの全周に亘る円環状の平面となっているが、これに限らず、部分的な平面でもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 弁ハウジング
1R 主弁室
11 第1継手管
12 第2継手管
13 主弁座
13a 主弁ポート
14 ケース
L 軸線
2 ガイド部材
2A ガイド孔
21 圧入部
22 上側のガイド部
23 下側のガイド部
231 当接部
24 ホルダ部
24a 雌ねじ部
25 フランジ部
3 主弁体
3a 主弁ばね
3R 副弁室
31 主弁部
311 当接部
32 保持部
32a ニードルガイド孔
32b 導通孔
33 副弁座
33a 副弁ポート
34 リテーナ
4 ニードル弁(副弁体)
41 円柱部
42 ニードル部
43 ワッシャ
44 ガイド用ボス部
5 駆動部
5A ステッピングモータ
5B ねじ送り機構
5C ストッパ機構
51 ロータ軸
51a 雄ねじ部
52 マグネットロータ
52a 突起部
53 ステータコイル
23′ 下側のガイド部
2A′ ガイド孔
231′ 当接部
321 当接部
331 当接部
411 当接部
22b 円環部
221 当接部
341 当接部
91 第1室内側熱交換器
92 第2室内側熱交換器
93 電子膨張弁
94 室外側熱交換器
95 圧縮機
96 四方弁
100 電動弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7