(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-171431(P2020-171431A)
(43)【公開日】2020年10月22日
(54)【発明の名称】バランス運動装置
(51)【国際特許分類】
A63B 22/16 20060101AFI20200925BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20200925BHJP
【FI】
A63B22/16
A63B24/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-74348(P2019-74348)
(22)【出願日】2019年4月9日
(71)【出願人】
【識別番号】506391657
【氏名又は名称】菊川 清
(72)【発明者】
【氏名】菊川 清
(72)【発明者】
【氏名】菊川 康介
(57)【要約】
【課題】バランス運動装置。
【解決手段】平板状の中央部に十字形クロススパイダーのX軸両端を支持する軸受けを設けた支持基台と、前記支持基台の上方に所定間隙を存して支持された平板状の下側中央部に前記十字形クロススパイダーのY軸両端を支持する軸受けを設けた揺動板と、前記所定間隙内に前記X軸およびY軸を直交するように配した前記十字形クロススパイダーとからなり、前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とするバランス運動装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の中央部に十字形クロススパイダーのX軸両端を支持する軸受けを設けた支持基台と、
前記支持基台の上方に所定間隙を存して支持された平板状の下側中央部に前記十字形クロススパイダーのY軸両端を支持する軸受けを設けた揺動板と、
前記所定間隙内に前記X軸およびY軸を直交するように配した前記十字形クロススパイダーとからなり、
前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とするバランス運動装置。
【請求項2】
前記支持基台と前記十字形クロススパイダーを動力・駆動機構(A)と連結して、前記十字形クロススパイダーのX軸を支点にして該十字形クロススパイダーを前後に可動させる機構と、
前記揺動板と前記十字形のクロススパイダーを動力・駆動機構(B)と連結して、前記十字形クロススパイダーのY軸を支点にして前記揺動板を前後に可動させる機構を、
制御装置によりコントロールして、前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とする請求項1に記載のバランス運動装置。
【請求項3】
前記支持基台と前記十字形クロススパイダーを動力・駆動機構(A)と連結して、前記十字形クロススパイダーのX軸を支点にして該十字形クロススパイダーを前後に可動させる機構と、
前記支持基台と前記揺動板を動力・駆動機構(B)と連結して、前記十字形クロススパイダーのY軸を支点にして前記揺動板を前後に可動させる機構を、
制御装置によりコントロールして、前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とする請求項1に記載のバランス運動装置。
【請求項4】
1つの駆動機構で前記十字形クロススパイダーのX軸とY軸のそれぞれを異なる回転速度に固定し、前記十字形クロススパイダーのX軸、Y軸を支点にして前記揺動板を可動させる機構を、
制御装置によりコントロールして、前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とする請求項1に記載のバランス運動装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記動力・駆動機構の速度と駆動時間および静止時間を、予めそれぞれに設定されたプログラムによって制御することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載したバランス運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用者が姿勢を維持させることで体幹の向上等を図るバランス運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近は健康志向が高く、より短い時間で骨の形成を促し、股関節や腰、背中周辺の筋肉も鍛える方法を、より積極的に求めるようになって来ている。 また、健康器具の利用者の年齢層は広く、 健常者は手軽に使用できる健康器具として、また平衡感覚の訓練としての利用に於いて、より短時間に熟練度を高めるには、これまでの受け身の考えから、積極的に身体を動かすことを求めている。
このようなバランス運動を支援する装置として、下記特許文献1において片足立ち運動装置が開示されている。具体的には、この装置は、足乗せ台と、その足乗せ台を支持する基台と、足乗せ台と基台との間に設けられた足乗せ台駆動機構と、制御手段とを備えており、制御手段により足乗せ台駆動機構に含まれるアクチュエー一夕を作動して足乗せ台を傾斜及び/又は揺動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−211797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1の装置は、足乗せ台駆動機構の足乗せ台支持柱が足乗せ台を支えており、足乗せ台が傾斜・揺動しても支点位置が変わらず、このため、使用者が支点位置に重心を置くことで、一部の使用者に運動の効果が見られないことが生じた。
また、足乗せ台は足乗せ台支持柱と2か所のアクチュエータの全3点で足乗せ台を支える構造となっており、この為、足乗せ台が傾斜すると、アクチュエータには足乗せ台の傾斜により前後・左右に無理な力が掛かり、自在機能型の支持器具であっても支持柱を中心にねじりの力が掛かり、ついては動きが不安定となり、雑音・熱の発生や故障の原因に成りかねず、改善の余地を残していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、積極的に体幹能力とバランス感覚の向上を行うことができる立ち姿勢および座姿勢のバランス運動装置を提供することで上記課題を解決する。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様のバランス運動装置は、平板状の中央部に十字形クロススパイダーのX軸両端を支持する軸受けを設けた支持基台と、
前記支持基台の上方に所定間隙を存して支持された平板状の下側中央部に前記十字形クロススパイダーのY軸両端を支持する軸受けを設けた揺動板と、
前記所定間隙内に前記X軸およびY軸を直交するように配した前記十字形クロススパイダーとからなり、
前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様のバランス運動装置は、前記支持基台と前記十字形クロススパイダーを動力・駆動機構(A)と連結して、前記十字形クロススパイダーのX軸を支点にして該十字形クロススパイダーを前後に可動させる機構と、
前記揺動板と前記十字形のクロススパイダーを動力・駆動機構(B)と連結して、前記十字形クロススパイダーのY軸を支点にして前記揺動板を前後に可動させる機構を、
制御装置によりコントロールして、前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様のバランス運動装置は、前記支持基台と前記十字形クロススパイダーを動力・駆動機構(A)と連結して、前記十字形クロススパイダーのX軸を支点にして該十字形クロススパイダーを前後に可動させる機構と、
前記支持基台と前記揺動板を動力・駆動機構(B)と連結して、前記十字形クロススパイダーのY軸を支点にして前記揺動板を前後に可動させる機構を、
制御装置によりコントロールして、前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様のバランス運動装置は、1つの駆動機構で前記十字形クロススパイダーのX軸とY軸のそれぞれを異なる回転速度に固定し、前記十字形クロススパイダーのX軸、Y軸を支点にして前記揺動板を可動させる機構を、
制御装置によりコントロールして、前記揺動板を複数方向に傾斜及び/又は揺動させることを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の態様のバランス運動装置は、前記制御装置は、前記動力・駆動機構(A、B)の速度と駆動時間および静止時間を、予めそれぞれに設定されたプログラムによって制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
先行文献においては使用者の重量が足乗せ台支持柱の1点と、基台と足乗せ台を連結して可動させる機構が2点の3点支持であるが、この方法ではアクチュエータの先端部可動域が円形状と不安定で、足乗せ台支持柱を中心にねじれ現象が生じ、動力・駆動機構に無理が生ずるなどで発熱することや、安全面で問題があった。
本願発明は、揺動板に動力・駆動機構を基本的に連結せず、十字形クロススパイダーと動力・駆動機構とを連結することで、X軸、Y軸の可動域が従来円形であったものがX軸の両端を支持基台に固着させることで支点が線状となりねじれ現象が解消されることで安定した動きとなり、発熱・騒音、故障の発生を抑えることを可能とした。
なお、家庭用で使用するバランス運動装置に組み入れる十字形クロススパイダーの一辺の長さは10〜20センチメートル程度で良い。
【0012】
また、本願発明では、動力・駆動装置を用いない人力型のバランス運動装置についても提供している。
具体的な内容としては、揺動機構4は、十字形のクロススパイダー41のX軸およびY軸により、使用者が揺動板3を傾斜させたい方に重心移動させ、重心の移動に伴い揺動板3は重心が移動した方向へ傾斜する。
この動きを連続的に行えば、X軸の揺動角度とY軸の揺動角度が異なる角度に設定され、使用者が連続的に動かすことで、揺動板3は回転するわけではないが、回転している、又は波打つ感覚を得る。
このとき、使用者は重心移動により体制が不安定の状態にあり、安定した体制にするために瞬時にバランスを取ろうとすることでバランス感覚を磨き、また、足首や体幹を鍛えられる効果が生まれる。
先行文献では、動力・駆動機構を設けることを前提としたもので、足乗せ台支持柱の1点に基台と足乗せ台を連結した動力・駆動のアクチュエータ―2点の3点支持の構成で、人力型の装置を提供する考えは無い。
本願発明は十字形のクロススパイダー41を活用する揺動機構4により、動力を用いない安価なバランス運動装置を提供可能とした。
【0013】
また、先行文献においては足乗せ台の支点上に重力が載るようになっていたが、本願発明での支点の位置は
図3にあるように、揺動板の下部のクロススパイダ―の軸部が支点となり、揺動板の傾斜及び/又は揺動により重心移動が生じ、使用者の運動効果をより高めることを可能とした。
【0014】
次に本願発明は、クロススパイダ―のX軸・Y軸のそれぞれに対応する動力・駆動機構を設け、制御装置によりそれぞれの速度と駆動時間および停止時間を予め設定されたプログラムによって制御することで、先の動きを予知できない変則的な動きを生み出すことが出来た。
従来のランニングマシンのようにエクササイズを目的とした運動装置の動きは、可動スピードを低速〜高速に変更できる程度の単純なもので、身体が装置の動きに慣れることにより、効果が薄れ、継続使用に飽きが来る傾向にあった。
本願発明は、次の動きが予測できないことで運動に飽きが来ず、長期使用により高いバランス運動効果が期待でき、敏捷性や反射神経を鍛えることができ、高齢者の転倒防止等に役立つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1はバランス運動装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2はバランス運動装置を構成する十字形クロススパイダーの製作事例である。 (1) 十字形クロススパイダー (2) 軸受け
【
図3】
図3はバランス運動装置の揺動板の可動内容を表す図で、 (1) Y軸を支点に揺動板が左右に傾斜するときの正面概略図である。 (2) X軸を支点に揺動板が左右に傾斜するときの側面概略図である。
【
図4】
図4はバランス運動装置に取付ける動力・駆動の概略例図である。
【
図5】
図5はバランス運動装置の動力・駆動装置の制御事例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するためバランス運動装置1を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、本発明のバランス運動装置1を具現化した一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1はバランス運動装置1の概略斜視図で、その構成は支持基台2、揺動板3、十字形のクロススパイダー41により傾斜及び/又は揺動を可能とした揺動機構4とからなる。
なお、バランス運動装置1の傾斜の特徴として、揺動板3の傾斜角は、揺動板3を前後又は左右にそれぞれ傾斜させたときは、当初定めた角度まで傾斜するが、斜め方向へ傾斜させたときは前後の最大角に左右の最大角が加えられ、急傾斜となり転倒等の危険があるので、全方面が同一傾斜角となるようにストッパーを設けると良い。
また、重心移動により揺動板3が急激に傾斜し転倒等を起こす恐れがあることから、揺動板3と支持基台2の間にコイルバネやゴム等のクッション材をあてがうと良い。
【0018】
バランス運動装置1に動力・駆動装置415・425を設けたときは最大傾斜角まで可動することとなるので、ストッパーを設けることはできないので、使用者の重心が揺動板3の斜め方向へ向かわないように揺動板3の形状を円形やダイヤ型とし、ある程度は解消できる。
また、支持基台と揺動板を動力・駆動機構(B)と連結してY軸を支点にして揺動板を前後に可動させるときは、連結部材にユニバサルジョイントを組み込む。
【0019】
つぎに、バランス運動装置1の使用方法について記述する。
使用者は揺動板上3に立ち姿勢又は座姿勢で載り、揺動板3が傾斜した方向以外の方向へ意識して体制を意識した方向へ重心移動する。
この重心移動により揺動板3が移動した方向、または予期せぬ方向へ傾斜することも有るが、傾斜に応じた姿勢を取り、これを繰り返すことでバランス運動効果が期待でき、高齢者の転倒防止等に役立つ。
【0020】
この人力型のバランス運動装置1に、前後(X軸)、左右(Y軸)それぞれを制御した動力・駆動装置415・425を設け、該装置の可動・停止、傾斜の方向やスピードをコントロールすることで、次の動きを全く予測できなくすることで、長期間使用しても運動を飽きささず、敏捷性や反射神経を鍛えることができ、高いバランス運動効果を得ることを可能としている。
【0021】
図2は、揺動機構4の中心を成す十字形のクロススパイダー41および軸受け412・422の概略製作図で、ここでは、安価に製作する方法を記載している。
十字形のクロススパイダー41はユニバーサルジョイントなどでは四辺形の立方体側面から4本の軸が突き出た形状が多いが、該立方体に取り付けられた4本の軸が強度や安定性に問題があることから、本願発明は揺動板に掛かる重量や装置の安定性を考え、十字形クロススパイダー41の面積を大きくし(1辺を100〜200ミリメートル)、内を通るX軸411およびY軸421それぞれが1本状で直交する方法としている。
その方法としては
図2-1のように板厚が2〜3ミリメートルの略四角形の鉄板の角の両端の対面を内・外折、又は全て同一方向へ折り曲げて軸を通すことも可能で、強度と安価な制作を可能としている。
図2-2の軸受け412・422は、別に設けられた支持基台2および揺動板3に取り付けられるものである。
別の方法として、支持基台2および揺動板3から直接軸受けを立てる方法もある。
【0022】
次に
図3を説明する。
図3は、揺動板3を傾斜させる支点位置を揺動板3と支持基台2の中間とすることにより、重心移動によりバランス運動効果を高めることを示したものである。
先行文献では、重力は足乗せ台の中心点上 (先行文献
図3) に置かれていたが、本願発明は
図3のように、クロススパイダー41から伸びた軸を支点としている。
これにより、使用者が揺動板3を傾斜させると軸を中心に揺動板3が傾斜(半円形運動)して、重心位置が移動することでバランス運動効果をより高めることを可能とした。
【0023】
次に
図4を説明する。
図4は、動力・駆動機構5の一例を図示したもので、十字形クロススパイダー41と支持基台2、十字形クロススパイダー41と揺動板3のそれぞれの間に動力・駆動機構5を設けることとしている。
動力・駆動機構5は基本的にはX軸411・Y軸421それぞれに独立して設けられるが、十字形クロススパイダー41の前後(X軸)、左右(Y軸)それぞれが異なる回転速度となるように歯車等で回転比率を変え(固定)、これにより揺動板の傾斜及び/又は揺動を変化させる方法があり、この方法によれば制御内容は制限されるが動力を1つにしてコスト削減が可能となる。
動力・駆動機構5は市販されている一般的なもので良いが、設置する空間が狭いときは、十字形クロススパイダー41の平面の一部を切開、あるいはリンクする部位の形状を適宜変更して対応するが、支持基台2の外に設ける方法もある。
【0024】
次に
図5を説明する。
図5は、動力・駆動機構5の動きを制御する制御装置419・429で、X軸411・Y軸421それぞれに独立して設けられている。
表示図とは異なるが、制御の1例を示せば、
X軸411の動力・駆動装置4の静止・稼働時間は、「中速スピード(5秒)−高速スピード(3秒)−低速スピード(4秒)−静止(5秒)」(合計17秒)に、
Y軸421の動力・駆動装置5の静止・稼働時間は、「中速スピード(3秒)−高速Topスピード(2秒)−低速スピード(6秒)−静止(3秒)」(合計14秒)を、それぞれ繰り返えす。
この制御例のように、揺動板3は一方向への揺動角度と他方向への揺動角度が異なる角度に且つ可動時間をそれぞれに設定することで、全方向へランダムに傾斜及び/又は揺動・静止させることを可能とした。
よって、使用者は傾斜する方向や、そのスピード、静止位置、時間等を全く予知できず、これにより体幹や敏捷性が鍛えられ、また、生活における転倒の予防になる。
【0025】
また、バランス運動装置の制御用アプリケーションソフトを製作し、スマホにより通常の制御だけでなく音楽や映像などを楽しめるようにすると良い。
【符号の説明】
【0026】
1 バランス運動装置
2 支持基台
3 揺動板
4 揺動機構(傾斜及び/又は揺動する機構)
41 十字形クロススパイダー
411 X軸
412 軸受け
415 動力・駆動装置(A)
419 制御装置(A)
421 Y軸
422 軸受け
425 動力・駆動装置(B)
429 制御装置(B)
491 モーター
492 カップリング
493 アーム