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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-172185(P2020-172185A)
(43)【公開日】2020年10月22日
(54)【発明の名称】重機固縛用装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 7/06 20060101AFI20200925BHJP
   B60P 7/08 20060101ALI20200925BHJP
   B60P 3/07 20060101ALI20200925BHJP
   B60P 3/073 20060101ALI20200925BHJP
【FI】
   B60P7/06 A
   B60P7/08
   B60P3/07 Z
   B60P3/073
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-75263(P2019-75263)
(22)【出願日】2019年4月11日
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000139735
【氏名又は名称】株式会社伊原工業
(74)【代理人】
【識別番号】100180057
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】伊原良碩
(72)【発明者】
【氏名】天野裕之
(57)【要約】
【課題】 熟練した運搬者でも経験の浅い運搬者でも、積載作業を容易に手際よく行える重機固縛用装置を提供する。
【解決手段】 重機運搬用荷台3の幅方向両端部の前後方向軸に沿ったシャシー4上またはシャシー4の外側に配置されたガイドレール7と、該ガイドレール7に沿って摺動可能な摺動部材11と、前後方向軸に対して垂直な軸周りに回動可能な回動ピン27を介して摺動部材11と連結されたスイベルシャックル25と、スイベルシャックル25の両端部間に渡された係止ボルト30を回転軸として回動可能に支持され、スイベルシャックル25と係止ボルト30とで画定される領域内を通すワイヤー5に当接するガイドローラ34とを備え、スイベルシャックル25が、摺動部材11に連結された基部26からガイドレール7側に回動可能な状態で摺動部材11に支持されている重機固縛用装置1である。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機運搬用荷台の幅方向両端部の前後方向軸に沿ったシャシー上またはシャシーの外側に配置されたガイドレールと、
該ガイドレールに沿って摺動可能な摺動部材と、
前後方向軸に対して垂直な軸周りに回動可能な回動ピンを介して摺動部材と連結されたスイベルシャックルと、
スイベルシャックルの両端部間に渡された係止ボルトを回転軸として回動可能に支持され、スイベルシャックルと係止ボルトとで画定される領域内を通すワイヤーに当接するガイドローラとを備え、
摺動部材が、前後方向軸に平行な軸受部を有し、軸受部には、摺動部材に対して回動可能な状態でシャフトが挿通され、
スイベルシャックルがシャフトに固定支持されている、重機固縛用装置。
【請求項2】
ガイドレールまたは摺動部材が、前後方向軸周りに荷台側とは反対側に倒せるように構成されている、請求項1に記載の重機固縛用装置。
【請求項3】
ガイドレールが、重機固縛時に荷台側に開口する摺動溝を有し、
スイベルシャックルが、摺動溝の開口側に前後方向軸と平行になるように配されたシャフトに固定支持されている、請求項1または請求項2に記載の重機固縛用装置。
【請求項4】
シャフト上でのスイベルシャックルの固定位置の両側が、1つの摺動部材に所定の間隔で設けられた2つの軸受部によって挟まれている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の重機固縛用装置。
【請求項5】
2以上の摺動部材が互いに分離した状態で1本のシャフトに挿通されている、請求項3または請求項4に記載の重機固縛用装置。
【請求項6】
摺動溝が、前後方向軸に対して垂直な断面から見て略L字型である請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の重機固縛用装置。
【請求項7】
重機運搬用荷台の幅方向両端部の前後方向軸に沿ったシャシー上またはシャシーの外側に配置されたガイドレールと、
該ガイドレールに沿って摺動可能な摺動部材と、
前後方向軸に対して垂直な軸周りに回動可能な回動ピンを介して摺動部材と連結されたスイベルシャックルと、
スイベルシャックルの両端部に開けられた挿通孔に挿通された係止ボルトを回転軸として回動可能に支持され、スイベルシャックルと係止ボルトとで画定される領域内を通すワイヤーに当接するガイドローラとを備え、
ガイドレールまたは摺動部材が、前後方向軸周りに荷台側とは反対側に倒せるように構成されている、重機固縛用装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重機固縛用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両運搬車における被運搬車の荷台への固縛方式としては、大別すると荷台から延ばしたワイヤーロープにフックを取り付け、当該フックを被運搬車下部のタイダウンフック等に引っ掛けて固縛する方式(特許文献1)と、被運搬車のタイヤ回りにベルトを掛け回し、当該ベルトを荷台に固定されたストッパで固縛する方式(特許文献2)とが提案されているが、いずれの方式による場合も、車両運搬車の運転手が一人で固縛作業を行うことを前提としており、昨今の人手不足も背景として、工程数の少ないより簡便な手法が追求されている。
【0003】
例えば、前者の例として挙げる特許文献1の装置では、被運搬車を積載する床板材において、被運搬車のタイダウンフック直下付近に対応する位置に予め基部を固定された一対のガイドローラを設置し、当該一対のガイドローラに下方から当接するようにワイヤーを通し、当該ワイヤーのちょうど中間点付近に取り付けたフックを引っ張って被運搬車のタイダウンフックに引っ掛けた状態でワイヤーにテンションをかけることで被運搬車を床板材に固定しているが、この装置では、ガイドローラの位置および向きが固定されており、自由に変更することができないことから、車種によっては、ワイヤーがタイダウンフックに斜めに懸架されることもあり、ワイヤーのねじれ等によってガイドローラに想定外の応力がかかるおそれがある。また、ガイドローラ等の部材点数が多く、コストがかさむ問題もある。
【0004】
本願出願人は、荷物運搬車において荷台に載せた荷物を締め付けて固縛するベルト、ワイヤーロープ等の固縛部材の端部を連結固定するための固縛部材連結固定装置として、荷台の幅方向の両端部にあるシャシーに沿ってガイドレールを配置固定し、当該レール内で、固縛部材連結体Eを備えたスライダーを摺動させるレール−スライダー構造(「スグレール」)を考案し(特許文献3)、これを被運搬車の荷台への固縛に応用する提案もされている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−182446号公報(特許第4002098号)
【特許文献2】特開2004−98767号公報(特許第4197242号)
【特許文献3】特開2007−1396号公報(特許第4717528号)
【特許文献4】特開2009−196554号公報(特許第5074231号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レール−スライダー構造をベースとする被運搬車の固縛については、従来被運搬車両1台につき、前後左右計4つのフックによる固縛が必要とされていたところ、近年、新たな荷台固縛方式として、図10に示すように、基部をスライダー102に支持された二対の第1のガイドローラ104a,104b,104cに当接するようにワイヤー105を架け渡し、当該ワイヤー105を一対の第2のガイドローラ106a,106bを介して引っ張る第2のワイヤー107を設け、図11に示すように第2のワイヤー107の中点に固定した繋留用シングルフック108を被運搬車109のタイダウンフック111に繋留するとともに、ツインフック113を第2のワイヤー107を荷台112の近くに押さえつけた状態で荷台112に係合することで、被運搬車109を荷台112に固縛するツインフック方式101が開発され、この方式だと被運搬車両1台につき、車両の左右両側にあるシャシー117上に架け渡したワイヤー105を使って、一対のツインフック113により固縛した場合でも固縛強度が十分であることがわかってきた。この固縛方式は、被運搬車の荷台への固縛を強化することができると同時に、固縛作業が簡略化されることから、レール−スライダー構造と併用しての優位性が認められ、数年前から既にテスト導入されており、自動車運搬時の固縛方法として今後主流になってくることが期待されている。
【0007】
しかしながら、現状では、図10に示すように、荷台112の左右端にあるシャシー117の外側にレール119を設置したとしても、第1のガイドローラ104がシャシー117上の空間を専有してしまうため、運搬者が車幅の大きな車、重機、機械等を荷台112に積載する際には、第1のガイドローラ104に接触しないように、精度の高い積載技能が必要となる。また、各固縛用部材の非積載時の整頓の仕方にも問題があり、図12に示すように、第2のフック113をスライダー102から突出したポールハンガー115に引っ掛けてその他の部材をシャシー117の近傍に一緒くたにしておく程度のことしかできず、その整頓状態は、第1のガイドローラ104や第2のガイドローラ106がシャシー117から荷台112の方の空間まで食み出し散乱した状態で、荷積み作業時の邪魔になりかねない。
【0008】
以上のような現状に鑑み、本発明は、熟練した運搬者でも経験の浅い運搬者でも、積載作業を容易に手際よく行える重機固縛用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の1つの側面は、重機運搬用荷台の幅方向両端部の前後方向軸に沿ったシャシー上またはシャシーの外側に配置されたガイドレールと、該ガイドレールに沿って摺動可能な摺動部材と、前後方向軸に対して垂直な軸周りに回動可能な回動ピンを介して摺動部材と連結されたスイベルシャックルと、スイベルシャックルの両端部間に渡された係止ボルトを回転軸として回動可能に支持され、スイベルシャックルと係止ボルトとで画定される領域内を通すワイヤーに当接するガイドローラとを備え、摺動部材が、前後方向軸に平行な軸受部を有し、軸受部には、摺動部材に対して回動可能な状態でシャフトが挿通され、スイベルシャックルがシャフトに固定支持されている重機固縛用装置である。スイベルシャックルを回動させ荷台の外側に向けることができることで、荷台の積載可能幅を広げることができるので、車幅の大きな車(例えば、消防車)や重機、化工機等の運搬において、経験の浅い運搬者にも重機の積み置きが余裕をもって可能になる。本明細書において、「回動可能」には、一定の軸周りに360度自由に回転することができることのみならず、部材同士の関係性若しくは位置関係に起因する物理的な障壁があることにより、一定角度範囲に制限された可動域内で回転することができることも含まれる。
【0010】
上記重機固縛用装置は、ガイドレールまたは摺動部材が、前後方向軸周りに荷台側とは反対側に倒せるように構成されているものであることが好ましい。かかる構成を有すると、スイベルシャックルだけでなく、ガイドレールまたは摺動部材も外側に掃き出すことが可能になり、シャシーの際まで積載可能幅が広がることから、重機の積載位置が多少横ずれしたとしても許容されることになり、とりわけセーフティーローダーのような車幅の狭い運搬車を使用するケースにおいて手際よく積載できる。
【0011】
上記重機固縛用装置は、ガイドレールが、重機固縛時に荷台側に開口する摺動溝を有し、スイベルシャックルが、摺動溝の開口側に前後方向軸と平行になるように配されたシャフトに固定支持されているものであることが好ましい。かかる構成を有すると、ガイドレール内にごみが溜まりにくくなる利点に加え、スイベルシャックルがシャフト中心軸周りにスムースに動くことで、ガイドローラのワイヤーへの追従性が高まる利点があり、車両に限らず様々な重機に対して様々な固縛方法を採用することができるようになる。
【0012】
上記重機固縛用装置は、シャフト上でのスイベルシャックルの固定位置の両側が、1つの摺動部材に所定の間隔で設けられた2つの軸受部によって挟まれているものであることが好ましい。かかる構成を有すると、スイベルシャックルと摺動部材とのシャフト中心軸に沿った位置関係が決まる。
【0013】
上記重機固縛用装置は、2以上の摺動部材が互いに分離した状態で1本のシャフトに挿通されていることが好ましい。かかる構成を有すると、高温等による歪や変形が生じることがなく、ガイドレールに沿ってスムースな摺動が可能になるとともに、固縛作業または弛緩・解除作業時にワイヤーロープを車両の内側または外側に一気に展開できる。
【0014】
上記重機固縛用装置は、摺動溝が、前後方向軸に対して垂直な断面から見てL字型であることが好ましい。かかる構成を有すると、摺動溝にごみが入りにくいうえに、アリ溝と異なり、固縛に使用する時に下部が開口しているので、余計な摩擦がなく、摺動性が高まる。
【0015】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の側面は、重機運搬用荷台の幅方向両端部の前後方向軸に沿ったシャシー上またはシャシーの外側に配置されたガイドレールと、該ガイドレールに沿って摺動可能な摺動部材と、前後方向軸に対して垂直な軸周りに回動可能な回動ピンを介して摺動部材と連結されたスイベルシャックルと、スイベルシャックルの両端部に開けられた挿通孔に挿通された係止ボルトを回転軸として回動可能に支持され、スイベルシャックルと係止ボルトとで画定される領域内を通すワイヤーに当接するガイドローラとを備え、ガイドレールまたは摺動部材が、前後方向軸周りに荷台側とは反対側に倒せるように構成されている、重機固縛用装置である。ガイドレールを前後方向軸周りに荷台側とは反対側に倒せることで、荷台の積載可能幅を広げることができるので、車幅の大きな車(例えば、消防車)や重機、化工機等の運搬に車幅の狭い運搬車を使用するケース等において、経験の浅い運搬者にも被運搬車の積み置きが余裕をもって可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スイベルシャックルを回動させ荷台の外側に向けさせたり、ガイドレールを前後方向軸周りに荷台側とは反対側に倒せたりすることで、荷台の積載可能幅を広げることができるので、車幅の大きな車(例えば、消防車)や重機、化工機等の運搬に車幅の狭い運搬車を使用するケース等において、経験の浅い運搬者にも被運搬車の積み置きが余裕をもって可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る重機用固縛装置の運搬車への設置態様を示す(a)平面図および(b)車体側面図。
図2】L型アングルで支持したガイドレールの(a)平面図、(b)正面図および(c)前後方向軸から見た側面図。
図3】ガイドレールの端部を斜視した写真。
図4】第1の実施形態に係る摺動部材の(a)平面図および(b)前後方向軸から見た側面図。
図5】第1の実施形態に係る摺動部材を構成する摺動アングルのシャフト上での配置を示す平面写真。
図6】第1の実施形態に係る重機用固縛装置を用いた固縛方法を示す平面図。
図7】第2の実施形態に係るヒンジ構造を付加したガイドレールの(a)平面図および(b)前後方向軸から見た側面図。
図8】第3の実施形態に係る3個のスイベルシャックルを直接固定した摺動アングルの(a)平面図および(b)前後方向軸から見た側面図。
図9】第4の実施形態に係るガイドポールと摺動部材との関係を示す(a)平面図および(b)A−A断面図。
図10】近年開発されたツインフック方式による車体固縛時の各部材の関係を示す写真。
図11】車体固縛時の被運搬車の車体下部への繋留と荷台への係合状態を示す写真。
図12】非積載時の各固縛用部材の整頓状態を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について以下に図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1に示す重機固縛用装置1は、運搬車2の重機運搬用荷台3の幅方向両端部に前後方向軸に沿って配されたシャシー4上に配置されるものであり、シャシー4の最前端および中程に1個ずつ配置された荷締機8a,8b、当該荷締機8a,8bに後続して所定の間隔をおいて2本ずつ配置された4本のガイドレール7a,7b,7c,7d、当該ガイドレール7bの後方に所定の間隔を置いて配置された繋留具6および当該ガイドレール7dの後方に配置された繋留具9、ならびに、一端を繋留具6および繋留具9に、他端を荷締機8a,8bに固定されてともに巻取り可能なワイヤー5で構成されている。
【0019】
図2に示す1本のガイドレール7は、荷台3上に積載された重機の固縛の際、前後方向軸に対して垂直な断面から見て略L字型の摺動溝12を有するように下部が開口18した状態で、4個のL型アングル15の直立部分に所定の高さ位置で支持されており、平板20を介してシャシー4上に取り付けられている。ガイドレール7の設置間隔は、少なくとも図3に示すレールの端部開口10から後述する摺動部材を挿入できる程度の間隔があれば足りる。ガイドレールの設置本数は、車両運搬車に使用する場合は、積載する車両の数に応じて決まる。例えば、荷台長9820mmの車両運搬車では、最大2台積み想定になるが、1524mm長のガイドレールは、片側4本、両側8本で足りる。セーフティーローダーでは、1524mm長のガイドレールは、片側2本、両側4本で足りる。
【0020】
重機固縛用装置1は、ガイドレール7に沿って摺動可能な摺動部材を備えている。図4に示す本実施形態の摺動部材11は、ガイドレール7の端部から摺動溝12に挿入された状態で平面視荷台側に露出する部分13を有する前後方向軸視で略L字型の摺動アングル14と、該摺動アングル14の背面に重ね合わされた背板16と、図3に示す摺動溝12に挿入された状態で平面視荷台側に露出する部分13において摺動アングル14および背板16を貫通するボルト17・ナット19とからなる複合部材である。ここで、摺動アングル14の厚みと背板16の厚みとの和が、ガイドレール7の下部開口18の高さに略等しくなっている。つまり、重機固縛時の相対的な位置関係としては、摺動アングル14が鉛直上方、背板16が鉛直下方に位置することになる。
【0021】
本実施形態の摺動部材11は、等間隔に配置された3個の摺動アングル14で構成されている。摺動アングル14は、摺動溝12に挿入された状態で平面視荷台側に露出する部分13における前後方向軸と平行な軸上に、所定の間隔を開けて直列配置した概ね円筒状の同軸軸受部21を対で有している。一対の同軸軸受部21には、その内径に略等しい外径を有するシャフト23が挿通されている。つまり、シャフト23は、ガイドレール7に摺動アングル14が挿入されると、回動可能な状態で摺動アングル14に支持されることになる。本実施形態においては、隣り合う摺動アングル14の間隔は、一対の同軸軸受部21の中点間の距離で、例えば、350mm〜420mmに設定することができ、本実施形態では350mmに設定している。
【0022】
シャフト23は、同軸軸受部21のギャップの位置でスイベルシャックル25に溶接固定されている。図4および図5から明らかなように、スイベルシャックル25は、シャフト23に溶接固定される基部側シャックル26と後述するガイドローラ34を取り付けるローラ側シャックル28とを回動ピン27を介して連結したものであり、回動ピン27は、前後方向軸に対して垂直な軸のうち回動ピン27の中心軸を通る軸の回りに回動可能になっている。
【0023】
ローラ側シャックル28は、その両端部に係止ボルト30を挿通する図示しないピン孔を有する。当該ピン孔に係止ボルト30を挿通する際、ガイドローラ34の中心に係止ボルト30の径より大きく形成された図示しない貫通孔も貫通することで、ガイドローラ34が係止ボルト30を回転軸として回動可能にローラ側シャックル28に支持されている。ガイドローラ34は、当接するワイヤー8の形状に併せて適宜選択され、市販のツヅミローラ、平ベルトローラ等の自己潤滑性を有する任意形状の樹脂製ローラを好適に使用することができる。なお、係止ボルト30は、それ自体が回動可能であってもよいが、本実施形態では、フランジ付きロックナット・ボルトを採用し、最後まで締め切らずに少しスキマを設けて回転するように構成している。
【0024】
ローラ側シャックル28と係止ボルト30とで画定される領域内には、ワイヤー5を通し、ワイヤー5の端部は、シャシー4の最前端に設置された荷締機8に固定される。ワイヤー5は、重機の種類によって柔軟に変えることができ、ラッシングベルト(ラチェット式、トグル式、バックル式)を採用することもできるが、本実施形態においては、8mm径の鋼線編組ワイヤーを使用している。また、荷締機8a,8bとしては、ワイヤーに併せてラチェット機構を用いた市販のワイヤー式荷締機を使用している。
【0025】
以上のように、1本のガイドレール7に支持された3個の摺動アングル14が1本のシャフト23を支持し、当該シャフト23は、2対のガイドローラ34a,34b,34cを有する3個のスイベルシャックル25を支持していることになる。
【0026】
2対のガイドローラ34a,34b,34cに当接するように架け渡されたワイヤー5は、ガイドローラ34a,34bの間、および、ガイドローラ34b,34cの間の位置で1対の第2のガイドローラ38a,38bにも当接しており、当該第2のガイドローラ38a,38bを有するスイベルシャックル35の基部側シャックル36同士は第2のワイヤー37によって連結されている。第2のワイヤー37は、鈎部41が荷台3に係合する向きになるように配置したツインフック43の基部に設けられた1対の通し孔44にツインフック43を上から荷台3に押さえつけるように挿通されており、第2のワイヤー37の中間点には、繋留用シングルフック48が固定されている。
【0027】
以上の構成に基づき、重機固縛用装置1を使用した重機の固縛方法について説明する。まず、図1に示す荷締機8a,8bを解除することで、ワイヤー5を自由に繰り出せるようにした後、積載した重機の固縛に最適な位置のガイドレール7を選択して端部開口10から摺動部材11を挿入する。次いで、図6に示すローラ側シャックル28の係止ボルト30およびガイドローラ34を外し、ワイヤー5を通してからガイドローラ34を入れて係止ボルト30を挿通し再度固定する。スイベルシャックル25をシャフト23の軸周りに跳ね上げて荷台3上のスペースを広げたのち、後方にせり出した後アオリ22を地面につけ、重機を積載する。次いで、スイベルシャックル25を元に戻し、繋留箇所に最も近い位置に摺動部材11を摺動し、第2のワイヤー37に取り付けられた繋留用シングルフック48を重機側に引き寄せて繋留する。次いで、第2のワイヤー37の上から押さえ部45を押さえつけた状態で荷台3の格子網目46に鈎部41を係合させる。最後に荷締機8a,8bによってワイヤー5の余計な弛みを巻き取る。これに伴い、ツインフック43を支点として第2のワイヤー37もシャシー4側に引っ張られ、固縛が完了する。
【0028】
上記構成によれば、重機が車両でない場合、様々な形状を有することにより、また重機が車両である場合、例えば、1台置きにするか2台置きにするか、フロントまたはバックのいずれから荷台3に乗り上げるか、被運搬車のサイズの違い、タイダウンフックの位置等により、固縛に適した位置も様々に変化しうるが、ガイドレール7がシャシー4上に所定の間隔をおいて複数本配置されていることにより、全ての場合においてシャシー4から最短距離での固縛が可能になり、ガイドローラ34にも余計な負荷がかからない。また、ガイドレール7の一部に歪や歪みが生じたり、壊れたりしたときにも、ガイドレール7全体を交換する必要もなくなる。加えて、必ずしもガイドレール7の個数分の摺動部材を準備する必要はなく、適宜摺動部材11をガイドレール7から取り外し、重機固定に適したガイドレール7内で適した位置に摺動部材11を配置できる。さらに、各摺動アングル14がシャフト23に対して互いに独立して回動することにより、夏に高温になってガイドレール7や摺動部材11に変形や歪が生じて摺動しにくくなるおそれがない。また使用時等にレール7の下部開口18が荷台3側を向いているので、レール7の摺動溝12にごみがたまりにくい構造にすることができる。
【0029】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る重機固縛用装置61の第1の実施形態との相違点は、図7に示すように、ガイドレール7の下部開口18側とは反対側の面62にキールを溶接固定し、キール63をヒンジ軸65の上面に固定し、当該ヒンジ軸65をその両側に同軸上に配されたヒンジパイプ64に挿通し、該ヒンジパイプ64をシャシー取り付け用パッチ66の荷台3から最も離れた位置に溶接固定している点にある。本実施形態では、前後方向軸周りに荷台3側とは反対側にヒンジ軸65が回動し、最終的にキール63が直立するところで停止するように構成した。この位置では、ガイドレール7の下部開口18は、シャシー4上で鉛直上方を向くことになり、さらに、ガイドレール7の摺動溝12に入っている摺動アングル15の同軸軸受部21は、シャシー4上で最も高い位置に移動する。同軸軸受部21に支持されたシャフト23上のスイベルシャックル25は、シャシー4上で荷台3側とは反対側へ回動可能で、実際にスイベルシャックル25をガイドレール7より外側に掃き出すと、重心がキール63より外側に移動し、ガイドレール7が倒れた状態を安定化する。
【0030】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る重機固縛用装置71の第2の実施形態との相違点は、図8に示すように、摺動アングル74が一体的に形成されている点、摺動アングル74に対して回動するシャフトが存在しない点、スイベルシャックル75が摺動アングル74に直接固定されている点にある。本構成によれば、第2の実施形態に比べてガイドレール7や摺動部材に変形や歪が生じるおそれはあるものの、製造コストが低下する利点があり、その他の点は第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0031】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る重機固縛用装置81の第1の実施形態との相違点は、図9に示すように、シャシー4の外側、すなわち荷台3とは反対側の空間にポール状のガイドレール87(以下、ガイドポール87)を壁手すりの如く架け渡し、端部をシャシー4の外側壁面82に固定した点、複数個の摺動部材91が、当該ガイドポール87を把持した状態で各々独立して摺動可能で、かつ、ガイドポール87の軸周りにスイベルシャックル85を荷台3から離す方向に各々独立して回動可能なように構成した点にある。すなわち、本実施形態において、ガイドレール87の前後方向軸とは、ガイドポール87の中心軸に相当する。摺動部材91は、ガイドポール87と略同径の把持孔を有し、スイベルシャックル85がシャシー4の上にある固縛時の状態A、および、状態Aからガイドポール87の軸周りにスイベルシャックル85が荷台3から離れる方向に90度回動した状態Bで、少なくともガイドポール87から落下するおそれのない形状を有しており、本実施形態では、円筒状に形成している。本構成によれば、摺動部材91を前後方向軸周りに荷台3側とは反対側に倒してもシャシー4にあたることがないので、固縛に使用しない時は、スイベルシャックル85を摺動部材91の下部の空間に収めることができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、また、上記実施形態に説明される構成のすべてが本発明の必須要件であるとは限らない。本発明は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当該技術的範囲に属する限り種々の改変等の形態を採り得る。例えば、第1の実施形態に代えてシャフトを摺動アングルに固定し、基部スイベルシャックルをシャフトに対して回動可能な軸受形状としてもよい。また、第2の実施形態に代えて、ガイドレールをヒンジパイプに固定し、シャシー取り付け用パッチに固定されたヒンジ軸周りにヒンジパイプを回動させる構成にしてもよい。さらに、第2の実施形態ではキール63が直立するところで停止するように構成したが、これに代えて車両の外側に倒れるように構成してもよい。その他、支障がない限り、上記4つの実施形態の任意の要素同士を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の重機固縛用装置は、バン、ウィング車、平ボデー、福祉車両、キャンピングカー、ポンプ車、タンクローリー、冷凍車、ダンプカー、ショベルカー、消防車、高所作業車等の車両運搬車(セーフティローダーを含む)や、クレーン車、貨物列車、住宅ユニット、コンテナ、航空機、建設機械、工作機械等の専用機の運搬車の荷台幅方向両端部のシャシーに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1,61,71,81 重機固縛用装置
2 運搬車
3 荷台
4 シャシー
5 ワイヤー
6,9 繋留具
7,7a,7b,7c,7d ガイドレール
8,8a,8b 荷締機
10 端部開口
11,91 摺動部材
12 摺動溝
13 露出部分
14,74 摺動アングル
15 L型アングル
16 背板
17 ボルト
18 下部開口
19 ナット
20 平板
21 同軸軸受部
22 後アオリ
23 シャフト
25,35,75,85 スイベルシャックル
26,36 基部側シャックル
27 回動ピン
28 ローラ側シャックル
30 係止ボルト
34 ガイドローラ
37 第2のワイヤー
38a,38b 第2のガイドローラ
41 鈎部
43,113 ツインフック
44 通し孔
45 押さえ部
46 格子網目
48,108 繋留用シングルフック
62 ガイドレールの背面
63 キール
64 ヒンジパイプ
65 ヒンジ軸
66 シャシー取り付け用パッチ
82 シャシーの外側壁面
87 ガイドポール
101 ツインフック方式
102 スライダー
104,104a,104b,104c 第1のガイドローラ
105 ワイヤー
106a,106b 第2のガイドローラ
107 第2のワイヤー
109 被運搬車
111 タイダウンフック
112 荷台
115 ポールハンガー
117 シャシー
119 レール

図1
図2
図3
図4
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図12