(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-172416(P2020-172416A)
(43)【公開日】2020年10月22日
(54)【発明の名称】ガラスの曲面成形方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/03 20060101AFI20200925BHJP
【FI】
C03B23/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-76484(P2019-76484)
(22)【出願日】2019年4月12日
(71)【出願人】
【識別番号】304058974
【氏名又は名称】株式会社武内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】辻井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】武内 隆哲
(72)【発明者】
【氏名】武内 亮輔
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015AA09
4G015AB02
(57)【要約】
【課題】本発明は、所望の曲面と鏡面性を両立させるガラスの曲面成形を実現する熱遮蔽手段とこれを用いたガラス加熱方法を提案することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ガラスの曲面成形において、成形領域と非成形領域とを有するガラスの該成形領域を赤外線を用いて選択的に加熱するガラスの曲面成形において、ガラスの非成形領域を被覆して熱を遮断する熱遮断手段を前記ガラスに載置しかつ赤外線を用いた加熱手段に対向するように配置したことを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形領域と非成形領域とを有するガラスの該成形領域を赤外線を用いて選択的に加熱するガラスの曲面成形において、前記ガラスの前記非成形領域を被覆して熱を遮断する熱遮断手段を、前記ガラスに載置しかつ前記赤外線を用いた加熱手段に対向するように配置したことを特徴とするガラスの曲面成形方法。
【請求項2】
前記熱遮断手段は窒化ケイ素系セラミックスからなるものであることを特徴とする請求項1に記載のガラスの曲面成形方法。
【請求項3】
所望の湾曲面が形成され前記ガラスを戴置し真空引きする複数のキャビティを備える下型に、前記熱遮断手段を重ねた前記ガラスを戴置し、前記熱遮断手段の上面に対して下方向に加圧することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスの曲面成形方法。
【請求項4】
成形領域と非成形領域を有するガラスの該成形領域を赤外線を用いて選択的に加熱するガラスの曲面成形において、前記ガラスの前記非成形領域を被覆して熱を遮断する熱遮断手段を前記ガラスに載置しかつ前記赤外線を用いた加熱手段に対向するように配置し、さらに前記熱遮蔽手段と前記ガラスとの間に石英ガラスを配置することを特徴とするガラスの曲面成形方法。
【請求項5】
所望の湾曲面が形成され前記ガラスを戴置し真空引きする複数のキャビティを備える下型に、前記熱遮断手段と前記石英ガラスを重ねた前記ガラスを戴置し前記熱遮断手段の上面に対して下方向に加圧することを特徴とする請求項4に記載のガラスの曲面成形方法。
【請求項6】
前記石英ガラスは、少なくとも前記ガラスの前記成形領域と前記非成形領域の境界近傍まで被覆する寸法を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のガラスの曲面成形方法。
【請求項5】
前記石英ガラスは、その寸法が前記熱遮断手段の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のガラスの曲面成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの曲面成形において、成形領域と非成形領域を有するガラスの該成形領域を赤外線を用いて選択的に加熱する加熱手段に対向するように熱遮蔽手段をガラスの非成形領域を被覆するように取り付けて、ガラスの非成形領域の鏡面性を確保しかつ成形領域を加熱し、ガラスを曲面成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチメディアの進展により、ディスプレイ装置に使用されるガラスは様々な形状、曲率が求められている。特に、スマートフォン等情報端末用として、薄板ガラスを用いたガラスカバーについては、より複雑な曲面化が要求されている。このようなガラスの複雑な曲面化については、高温成形を必要とし、かつ、光学鏡面が要求される。
【0003】
昨今、5Gと呼ばれる次世代通信方式の開発が積極的に行われている。その背景としては、オリンピックで高画質な映像配信を行うための大容量データの伝送がお子なれることにある。また、IoTの普及拡大によりさまざまなデバイスでデータ通信が行われるようになり、通信トラフィックは2020年までには現在の数百倍とも予想されている。
5G対応のスマートフォンでは、この大容量の電波を阻害しにくくするため本体が金属からガラスに変わっていく。さらに、平面部だけでなくフレームもガラス化されていくと言われており、これには四辺が湾曲した深型のカバーガラスが必要となる。
【0004】
これらの問題を解決するとして、本願出願人は特許文献1に係るガラスの曲面成形装置を開発し、ガラスの曲面成形装置及び曲面成形方法を提案している。それによれば、ガラスの曲面成形装置の加熱部は、加熱素子と反射板を備え、加熱素子はガラスGの上方に配置され、反射板は加熱部の床面に配置されている。この構成では、加熱素子と反射板を用いて、ガラスGを選択的且つ急速に加熱する。「選択的加熱」とは、送られた熱の大半が、ガラスGの加熱に向かうことを意味し、これにより、板ガラスGのより急速な加熱を可能にする。「選択的加熱」は、ガラスGの加熱に最適なスペクトル域の放射によって、ガラスGが直接的又は間接的に加熱されるために達成されるものである。特許文献1に係る実施例においては、約4分間で、段階的にガラス軟化点近傍まで昇温する。このとき、加熱素子の出力波長特性とガラスGの吸収波長特性が一致させることで、選択的加熱が可能になる。なお、加熱素子は赤外線ヒータで、赤外線は、特に光のエネルギーが強い短波長赤外線が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6303225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の方法では、赤外線による選択的な加熱とはいえ、現実的に曲げたい部分以外も加熱され、特に非成形領域の鏡面性を損なうという問題がある。また、非成形領域を熱遮蔽部材ですべて被覆すると、成形領域と非成形領域の境界近傍(加熱すべき領域)に選択的な加熱が及ばないという問題がある。さらに、熱遮蔽部材をガラスに直接戴置すると、該遮光部材がガラスの表面を傷つけ、鏡面性を損なうという問題もある。
本発明は、このような問題に鑑み、所望の曲面と鏡面性を両立させるガラスの曲面成形を実現する曲面成形方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明に係るガラスの曲面成形方法は、成形領域と非成形領域とを有するガラスの該成形領域を赤外線を用いて選択的に加熱するガラスの曲面成形において、ガラスの非成形領域を被覆して熱を遮断する熱遮断手段を前記ガラスに載置しかつ赤外線を用いた加熱手段に対向するように配置したことを特徴とする。なお、熱遮断手段は窒化ケイ素系セラミックスからなるものであると好適である。また、所望の湾曲面が形成されガラスを戴置し真空引きする複数のキャビティを備える下型に、熱遮断手段を重ねたガラスを戴置し、熱遮断手段の上面に対して下方向に加圧するとよい。
【0008】
さらに、本発明に係るガラスの曲面成形方法は、上述の熱遮蔽手段とガラスとの間に石英ガラスを配置するようにしてもよい。さらに、所望の湾曲面が形成されガラスを戴置し真空引きする複数のキャビティを備える下型に、熱遮断手段と石英ガラスを重ねたガラスを戴置し熱遮断手段の上面に対して下方向に加圧するとよい。なお、石英ガラスは、少なくともガラスの成形領域と非成形領域の境界近傍まで被覆する寸法を有すると好適である。さらに、石英ガラスは、その寸法が熱遮断手段の寸法よりも大きくするとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るガラスの曲面成形方法によれば、非成形領域を遮光することで加熱したい部分のみ加熱することができるという効果がある。また、熱遮蔽部材と石英ガラスの各寸法を適宜工夫すれば、加熱したい部分を加熱し曲げることができ、かつ、ガラスが必要以上に軟化せず、非成形領域の鏡面性を確保することができる。さらに、石英ガラス、特に透過率の高い石英ガラスを使用すると、曲げたい部分を遮蔽することなく、結果として、高い精度で、所望のガラスの曲面と鏡面性を実現させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、所望の曲面を成形するためのガラスの成形領域と非成形領域を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、
図1とは別の曲面を成形するためのガラスの成形領域と非成形領域を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、ガラスを金型(下型)に戴置した状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法の概略を示す図である。
【
図5】本発明の実施例2に係るガラスの曲面成形方法において、ガラスを金型(下型)に戴置した状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施例2に係るガラスの曲面成形方法の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施例に限られるものではない。
【実施例1】
【0012】
実施例1を図面を参照して詳細に説明する。実施例1においては、成形領域と非成形領域を有するガラスの該成形領域を赤外線を用いて選択的に加熱するガラスの曲面成形を前提として、熱遮蔽手段をガラスの非成形領域を被覆し加熱手段に対向するように配置している。
【0013】
図1及び2を説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、所望の曲面を成形するためのガラスの成形領域と非成形領域を示す図である。
図2は、
図1とは別の曲面を成形するためのガラスの成形領域と非成形領域を示す図である。
図1と
図2との違いは、ガラスの縁部の曲げ度合いの違いである。すなわち、
図1は浅い曲げを示し、
図2は深い曲げを示している。なお、
図1(c)と
図2(c)のいずれも長尺側二辺が曲げられているが、短尺側二辺の曲げは図示していない。
【0014】
図1を参照する。
図1(a)はガラスGの四辺を曲げるための平面図であり、(b)は成形前のガラスGの正面図、(c)は成形後のガラスX1の正面図である。
図1(a)に示すとおり、ガラスGは、成形領域G11と非成形領域G12とからなり、成形領域G11に後述する赤外線で選択的に加熱し曲げたい領域であり、他方、非成形領域G12は曲げずに平面を保ち、鏡面性を確保しておきたい領域である。
図1(a)に示す成形領域G11を選択的に加熱して曲面成形することによって、
図1(b)に示すガラスGは
図1(c)に示す成形ガラスX1ができあがる。
【0015】
図2を参照する。
図2(a)はガラスGの四辺を曲げるための平面図であり、(b)は成形前のガラスGの正面図、(c)は成形後のガラスX2の正面図であり、
図2(c)と
図1(c)を比較すると、ガラスの縁がより深く曲げられていることが理解できるであろう。
図2(a)に示すとおり、ガラスGは、成形領域G21と非成形領域G22とからなり、成形領域G21に後述する赤外線で選択的に加熱して曲げたい領域であり、他方、非成形領域G22は曲げずに平面を保ち、鏡面性を確保しておきたい領域である。
図2(a)に示す成形領域G21を選択的に加熱して曲面成形することによって、
図2(b)に示すガラスGは
図1(c)に示す成形ガラスX2ができあがる。
【0016】
本願出願人は、前述したとおり、ガラスの曲面成形装置を開発し、その加熱部は、加熱素子を備える。加熱素子はガラスGの上方に配置され、ガラスGを選択的且つ急速に加熱する。「選択的加熱」とは、送られた熱の大半が、ガラスGの加熱に向かうことを意味し、これにより、板ガラスGのより急速な加熱を可能にする。「選択的加熱」は、ガラスGの加熱に最適なスペクトル域の放射によって、ガラスGが直接的又は間接的に加熱されるために達成されるものである。本願出願人のガラスの曲面成形装置において、前述したとおり、約4分間で段階的にガラス軟化点近傍まで昇温する。このとき、加熱素子の出力波長特性とガラスGの吸収波長特性が一致させることで、選択的加熱が可能になり、効率的な加熱によりガラスの曲面成形が実現できるのである。なお、加熱素子は赤外線ヒータであるとよく、赤外線は、特に光のエネルギーが強い短波長赤外線が好ましい。
【0017】
図3を参照する。本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、ガラスを金型(下型)に戴置した状態を示す図である。金型(下型)は、いわゆる凹型の金型であり、実施例1では、
図3に示すとおり、ガラスGの端部を凹型の金型の上縁に戴置したまま直接的に加熱される。このまま、ガラスGが軟化点まで加熱されることにより、成形領域G1は自重により凹部分に垂れ下がるように曲がる。しかし、自重のみでのガラスの曲がり具合は行き当たりばったりで所望の曲面は実現が難しい。なお、下型は、所望の湾曲面が形成されガラスを戴置し真空引きする複数のキャビティを備えるようにしてもよい。真空引きにより、ガラスGの曲げを助けることができる。
【0018】
実施例1において、ガラスGの非成形領域に熱遮蔽手段1を戴置して、赤外線ヒータHにて赤外線Lを加熱することとした(
図4(a))。
図4を参照する。
図4は、本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法の概略を示す図で、(b)はガラスGの曲面成形の途上、(c)は曲面成形の終了、(d)は成形ガラスXを示す図である。なお、太い矢印は加圧をしめす。加圧はさらに重石を載せたり、機械的に加圧したり、エアによる加圧でもよい。
【0019】
図4(b)に示すとおり、ガラスGは、自重と加圧により凹部分に垂れ下がるように曲がりつつある状態を示し(ガラスG′)、最終的に
図4(c)に示すとおり、成形ガラスXが出来上がる。
【0020】
本発明に係る熱遮断手段1の材質の選定については、出願人の本社工場(兵庫県尼崎市杭瀬本町1丁目6番14号)で平成31年3月28日に試験が行われた。実験にあたっては、
図3に示すセラミックス製の四辺曲げ形状の型Mを使用して、表1に示す材質の遮光板をガラスGの上に載せて成形実験を行い、成形後の遮光板の状態を観察して評価した。
表1に示すとおり、評価としては、耐熱性とガラスへの影響の2項目について、「よい」、「ややよい」、「よくない」の定性評価をそれぞれ○、△、×の符号で示している。定性評価については、出願人の従業員2名により行われた。
実験場所:兵庫県尼崎市杭瀬本町1丁目6番14号 株式会社武内製作所内
実験装置:薄板ガラス曲面成型機(武内製作所製)
実験日:平成31年3月28日
【表1】
【0021】
上記実験の結果、熱遮蔽手段1には窒化ケイ素系セラミックスが好適であることが判明した。なお、窒化ケイ素系セラミックスのほか、シリカ系セラミックスやケイカル板を使用してもよいが、耐熱性はよいものの、表面が粗くガラスにその粗さが転写してしまい、ガラスの鏡面性が阻害されるという問題がある。
【実施例2】
【0022】
実施例2を図面を参照して詳細に説明する。実施例2においては、成形領域と非成形領域を有するガラスの該成形領域を赤外線を用いて選択的に加熱するガラスの曲面成形を前提として、熱遮蔽手段をガラスの非成形領域を被覆し加熱手段に対向するように取り付け、さらに熱遮蔽手段とガラスとの間に石英ガラスを配置している。
【0023】
図5を参照する。
図5は、本発明の実施例2に係るガラスの曲面成形方法において、ガラスを金型(下型)に戴置した状態を示す図である。金型(下型)は、いわゆる凹型の金型であり、実施例2では、
図5に示すとおり、ガラスGの端部を凹型の金型の上縁に戴置したまま直接的に加熱される。このまま、ガラスGが軟化点まで加熱されることにより、成形領域G1は自重により凹部分に垂れ下がるように曲がる。しかし、自重のみでのガラスの曲がり具合は行き当たりばったりで所望の曲面は実現が難しい。なお、下型は、所望の湾曲面が形成されガラスを戴置し真空引きする複数のキャビティを備えるようにしてもよい。真空引きにより、ガラスGの曲げを助けることができる。
【0024】
実施例2において、ガラスGの非成形領域に石英ガラス2を戴置し、さらにその上に熱遮蔽手段1を戴置して、赤外線ヒータHにて赤外線Lを加熱することとした(
図6(a))。
図6を参照する。
図6は、本発明の実施例2に係るガラスの曲面成形方法の概略を示す図で、(b)はガラスGの曲面成形の途上、(c)は曲面成形の終了、(d)は成形ガラスXを示す図である。なお、太い矢印は加圧をしめす。加圧はさらに重石を載せたり、機械的に加圧したり、エアによる加圧でもよい。
【0025】
図6(b)に示すとおり、ガラスGは、自重と加圧により凹部分に垂れ下がるように曲がりつつある状態を示し(ガラスG′)、最終的に
図6(c)に示すとおり、成形ガラスXが出来上がる。
【0026】
実施例2において、実施例1と同様に、熱遮蔽手段1にケイカル板を使用した。ケイカル板は、ケイ酸カルシウムで、けい酸質原料、消石灰、パルプ等補強繊維が主原料の不燃ボードであり、熱を遮蔽することができる。
また、石英ガラス2は、耐熱温度が1200℃以上であり、可視光線の透過性がよいが、赤外線の吸収能が高い。
このように、熱遮蔽手段1と石英ガラス2とを組み合わせる理由は、非成形領域を遮光することで加熱したい部分のみ加熱することができるという効果があり、石英ガラス2は赤外線の吸収能が高いため、少なくともガラスの成形領域と非成形領域の境界近傍まで被覆する寸法とし、かつ、その寸法が熱遮断手段1の寸法よりも大きくすることにより、成形領域と非成形領域の境界近傍(加熱すべき領域)に選択的な加熱が及び、所望の曲面成形を実現することが可能となる。さらに、熱遮断手段1をガラスGに直接戴置することなく、石英ガラス2をガラスGに置くことで、熱遮断手段1がガラスGの表面を傷つけ、鏡面性を損なうという問題を解決することができる。すなわち、ガラスが必要以上に軟化せず、非成形領域の鏡面性を確保することができる。結果として、高い精度で、所望のガラスの曲面と鏡面性を実現させることが可能になる。
【0027】
以上、本発明に係るガラスの曲面成形方法における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係るガラスの曲面成形方法は、軟化点の高い薄板ガラスを高品位な面性状を持つ曲面に成形することができるので、結果物としての成形ガラスはスマートフォンやタブレットPC等のカバーガラスとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 遮蔽部材
2 石英ガラス
M 金型
G 素板ガラス
G11 21 成形領域
G12 22 非成形領域
G′成形途中のガラス
X X1 X2 成形ガラス
H ヒータ
L 赤外線