【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、独立請求項に従った内燃機関、及び内燃機関を運転する方法により達成される。
【0021】
本発明の第1の態様によれば、目的は、排気出口と空気入口の間に配置された排気ガス再循環のためのシステムを備える、少なくとも1本のシリンダを有する内燃機関により達成される。
【0022】
排気ガス再循環のためのシステムは、EGR通路と排気ガス煙突の間に配置され、排気ガス再循環率を制御するための好ましくは適合可能な背圧を与える、排気ガス流れ制限装置を備える。
【0023】
排気ガス流れ制限装置は、煙突への流れ通路の開口直径を減らすための、調節可能な遮蔽物(blind)であって良い。
【0024】
排気ガス流れ制限装置は、EGR率を制御するための、好ましくは5から100mbarの範囲の適合可能な背圧を与えるように、制御可能な開度を有する排気ガス背圧弁であることが好ましい。
【0025】
排気ガス再循環率、すなわちEGR率とは、シリンダの空気入口へ加えられる排気ガスと大気の混合気中の、排気ガスのパーセンテージである。
【0026】
機関は、好ましくは少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1本のシリンダを備える大型船舶用機関、好ましくは、シリンダ壁を貫いて低圧燃料ガスを直接その中に噴射するための、少なくとも1つのガス吸気弁を含むシリンダを備える低圧燃料ガス機関である。好ましくは、ディーゼル等の液体燃料もシリンダの中に導入することができる。
【0027】
特に、2ストローク二元燃料機関用の予混合希薄燃焼方式(solution)は、空気体積と燃料体積の比率(「ラムダ」と呼ばれる)及び温度に非常に大きく左右される。ピストン下側の温度が高いと過早着火のリスクが高まり、燃焼圧力が過剰となる恐れがある。圧縮圧力温度が高くても同様の挙動をもたらすことがあるが、圧縮比を減少させることで抑制可能である。一方、圧縮比を減少させると、液体燃料で運転している場合に熱効率の低下をもたらし、したがって燃料消費を増加させる。
【0028】
再循環された排気ガスを導入することにより、空気/燃料充填物の自己着火への耐性が増加する。
【0029】
従来技術によれば、一定の又は少なくとも安定したEGR率を実現するには、周波数制御された送風機が必要となる。送風機は、排気出口とターボチャージャの間に配置することができる。
【0030】
送風機は、一方ではEGR通路に配置しなければならず、且つ他方では送風機の安定性を保証するために、振動が低い場所に設置しなければならない。
【0031】
本発明によれば、制御可能な開度を有する排気ガス背圧弁により、EGR率が調整可能である。
【0032】
排気ガス背圧弁の開度の度合いを選択することにより、EGR通路内の特にターボチャージャ上流での圧力、及び排気ガス再循環率が調整可能である。システムから排気煙突へ出ることを妨げられる排気が増加すると、EGR通路を通過できる排気ガスが増加し、EGR通路内の排気ガス圧力が高まる。
【0033】
背圧弁には、完全に閉じることを防止するような制限を持たせることが好ましい。
【0034】
送風機が一定量の排気ガスを供給し、したがって送風機設定が固定された状態では、排気ガス再循環率は負荷に左右される。排気ガス流れ制限装置、例えば排気ガス背圧弁を用いて圧力を設定することで、負荷に対して一定のEGR率が実現する。
【0035】
排気ガス背圧弁は、手動により作動、動力により作動、電気により作動、又はばねにより作動可能である。弁は空気圧又は油圧で作動することが好ましい。
【0036】
弁はバタフライ弁とすることができる。
【0037】
典型的に、EGR通路は、好ましくはターボチャージャのタービン下流に接合点を備え、接合点からシリンダの空気入口、好ましくはターボチャージャの圧縮機へ向かって、又は排気ガス煙突に向かってのいずれかへ排気ガスを導くことができる。
【0038】
排気ガス処理のための装置は、排気ガス流れ制限装置、例えば排気ガス背圧弁と煙突との間に配置して良い。
【0039】
排気ガス背圧弁を開けると、ガスが排気ガス煙突の方向へ流れるようになる確率が高まる。排気ガス背圧弁を閉じると、EGR通路の中への流量が高まる。
【0040】
好ましい実施例では、内燃機関はターボチャージャを備える。
【0041】
ターボチャージャは、排気ガスによって少なくとも部分的にターボチャージャが動力を供給されるように、EGR通路内に配置されることが好ましい。
【0042】
シリンダの排気出口からシリンダの空気入口へ通じるEGR通路は、ターボチャージャのタービン及びターボチャージャの圧縮機を含むことができる。
【0043】
EGR通路は、冷却装置も含むことができる。
【0044】
ターボチャージャは、排気ガスが大気と混合されてターボチャージャによりシリンダの空気入口へ導かれ得るように、EGR通路に配置可能である。したがって、具体的には、ターボチャージャの圧縮機は排気ガス及び大気を吸入することができる。
【0045】
ターボチャージャの圧縮機は、外気及び排気ガスを吸い込み、それがシリンダの空気入口、例えば吸気多岐管の中に入る前に、それをより高い圧力に圧縮する。これによって、より多くの量の空気が各吸気行程でシリンダに入ることになる。
【0046】
遠心圧縮機を回転させるために必要な動力は、機関の排気ガスの運動エネルギーから得られる。
【0047】
2台以上のターボチャージャがある場合、空気入口は、複数のターボチャージャにより供給されるガスの混合体を受ける。
【0048】
この場合、それぞれのターボチャージャは、個々の排気ガス流れ制限装置、例えば排気ガス背圧弁を備えた、別々の排気ガス再循環のためのシステム内に配置されて良い。
【0049】
別法では、全てのターボチャージャが、共通のEGR通路の中に排気ガスを導く。単一の排気ガス流れ制限装置、例えば排気ガス背圧弁が、EGR通路と煙突の間に配置される。
【0050】
1台のターボチャージャのみが、排気ガス再循環のためのシステム内に配置されても良い。それ以外の少なくとも1台のターボチャージャは、大気の供給のみを行い、そのそれぞれの圧縮機は排気ガスを吸入しない。
【0051】
排気ガス流れ制限装置、例えば排気ガス背圧弁により与えられた背圧及びターボチャージャの吸入圧力によって、EGR率が制御された安定した排気ガス流れが供給可能となる。
【0052】
このように、排気ガス再循環のためのシステムは、大気を供給するためのターボチャージャは別として、送風機等の昇圧装置を含まない点で有利である。
【0053】
排気ガス再循環のためのシステムは、EGR通路、好ましくはターボチャージャの圧縮機上流に配置された冷却装置を含むことができる。排気は、外気と混合されてターボチャージャの圧縮機に吸入される前に、好適な温度となることができる。
【0054】
冷却装置は、圧力低下が15mbar未満となるように設計され、ターボチャージャの圧縮機上流のEGR通路内の圧力が十分に高くなり、圧縮機に吸入される混合気内に十分なパーセンテージの排気ガスが供給されるようにすることが好ましい。
【0055】
冷却装置は、例えば循環水冷却器を含む水循環プラントを備えた、カスケード排気冷却器であって良い。カスケード排気ガス冷却器は、冷却水の汚染をごくわずかとすることができる。
【0056】
システムは、内燃機関を排気ガスの再循環無しで運転するために、EGR通路に配置される少なくとも1つの締切り弁を備えることが好ましい。締切り弁は、EGR通路内への流れを防止するために、確実な閉止用に、且つ確実な閉止が可能に設計される。典型的な締切り弁には、それだけに限らないが、手動により作動、動力により作動、又はばねにより作動するフェイル・セーフ締切り弁が含まれる。締切り弁は、2つの状態、すなわち閉又は開のみを有することが好ましい。
【0057】
内燃機関は、二元燃料機関であることが好ましい。ディーゼル・モードでは、排気ガス再循環ができないように、締切り弁は閉とする。ガス・モードでは、排気ガス再循環率が排気ガス流れ制限装置、例えば排気ガス背圧弁を用いて調整可能なように、締切り弁は開とする。
【0058】
本発明の有益な実施例では、内燃機関は、好ましくは適合可能な空気流れ制限装置(115)、具体的には制御可能な開度を有する空気入口弁を備える。空気入口弁は、ターボチャージャ圧縮機上流の外気の入口に配置されることが好ましい。空気入口弁は、絞り弁とすることができる。
【0059】
更に、EGR率を、排気ガス流れ制限装置の流れ直径を制限することにより、又は排気ガス背圧弁を閉じることによって増加する代わりに、空気流れ制限装置を設けること、具体的には空気入口弁を閉じることで外気の量を減少させることによってもEGR率を増加させることができる。
【0060】
EGR通路にわたっての圧力低下を更に克服するために、追加として、圧縮機の上流に配置された空気入口弁で大気通路の吸気口を絞ることができる。このことはEGR通路の吸入力を増加するのに役立つ。
【0061】
空気入口弁は、EGR率の微調整にも使用可能である。
【0062】
本発明の有益な実施例では、シリンダがパイロット点火システムを備える。好ましくは、パイロット点火システムは、自動着火しない燃料に点火するために作動させる。
【0063】
内燃機関は、シリンダ内部の燃焼圧力のピーク及びそれに対応するクランク角、つまり燃焼位相整合を検出するための測定ユニットを備えることが好都合である。
【0064】
測定ユニットは、クランク角に対するシリンダ内の圧力曲線を測定するための圧力センサを備えることができる。
【0065】
2本以上のシリンダを備える機関では、全てのシリンダで圧力が測定されて良い。全シリンダの平均圧力曲線の最大値、及びそれに対応する平均クランク角が検出されて良い。
【0066】
クランク角に対する圧力曲線の最大値の位置がEGR率により左右されるので、測定ユニットはEGR率に対応する測定値を提供する。
【0067】
内燃機関が制御ユニットを備え、制御ユニットが、燃焼圧力のピークに対するクランク角によって、排気ガス流れ制限装置を適合させることにより、及び/又は空気流れ制限装置を適合させることにより、EGR率を適合させるように構成される点で有利である。
【0068】
最適な圧力ピーク・クランク角は、最適なEGR率と関係する。
【0069】
周囲の状態、例えば周囲温度の変化に起因して、且つ固有の運転状態に起因して、燃焼位相整合の変化が発生し得る。一般的に、このことは機関効率の低下をもたらす可能性がある。燃焼圧力の過度の上昇、燃焼安定性の低下、又はメタン・スリップが発生する恐れがある。
【0070】
燃焼圧力のピークの最適値は、5度CAと8度CAの間(0度CAに相当するクランクの上死点の、5から8度後)となる可能性がある。この領域では、機関の効率、排出物及び信頼性がその最適レベルとなる。
【0071】
燃焼圧力のピークの最適なクランク角は、機関の負荷に左右される。制御ユニットは、負荷と最適クランク角の間の関係が保管された、典型的にセットポイント用ベクトルと呼ばれる表を、使用するように適合でき、又は備えることができる。
【0072】
EGR率は、
− 排気ガス背圧弁の開度を設定することにより、
− 固定の排気ガス流れ制限装置を設け、且つ空気入口弁の開度を設定することにより、
− 固定の空気流れ制限装置を設けることにより、且つ排気ガス背圧弁の開度を設定することにより、
− 又は排気ガス背圧弁の開度を設定することにより、且つ空気入口弁の開度を設定することにより、
調整可能である。
【0073】
本発明の第2の態様によれば、目的は、パイロット点火システムを備えた少なくとも1本のシリンダを有する、好ましくは上述した内燃機関により達成される。
【0074】
内燃機関は、好ましくは燃焼圧力のピークに対するクランク角によって、パイロット点火のタイミングを調節するように構成された制御ユニットを備える。
【0075】
内燃機関は、少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1本のシリンダを備える大型船舶用機関であることが好ましい。
【0076】
内燃機関は、シリンダ壁を貫いて低圧燃料ガスを直接その中に噴射するための、少なくとも1つのガス吸気弁を含むシリンダを備える、低圧燃料ガス機関であることが好ましい。
【0077】
内燃機関は、好ましくは排気出口と空気入口の間に配置された排気ガス再循環のためのシステムを備える。
【0078】
パイロット点火のタイミングは、燃焼ピーク圧力のタイミングに影響を与える。したがって、最適な所で燃焼ピーク圧力を得るために、パイロット点火のタイミング、つまりパイロット燃料噴射のタイミングを調整することができる。
【0079】
パイロット燃料噴射のタイミングの最大範囲は、典型的に−17度CAと−5度CAの間である。
【0080】
或いは、燃焼ピーク圧力のタイミング、つまり燃焼圧力ピーク・クランク角は、EGR率の影響を受ける可能性がある。
【0081】
内燃機関は、シリンダ内部の燃焼ピーク圧力及びそれに対応するクランク角を検出するための測定ユニットを備えることができる。測定ユニットは、シリンダ内の圧力曲線を測定するための圧力センサを備えることができる。測定値は、圧力曲線の最大値が、所望の時、つまり最適なクランク角で発生するかどうかを示す。
【0082】
内燃機関は、燃焼圧力のピークに対するクランク角によって、パイロット噴射のタイミングを調節するように構成された制御ユニットも備えることができる。
【0083】
燃焼ピーク圧力が、セット・ポイント・ベクトルにより与えられた所定のクランク角の範囲内に無い場合、パイロット点火のタイミングが移動されて良い。測定された燃焼ピーク圧力でのクランク角、及び所定の最適な燃焼ピーク圧力クランク角によって、制御ユニットが自動的にパイロット点火時期を移動することが好ましい。
【0084】
有益な実施例では、内燃機関は、シリンダの排気出口とシリンダの空気入口の間に配置された排気ガス再循環のためのシステムを備える。好ましくは上述した、排気ガス再循環のためのシステムは、排気ガス流れ制限装置、例えば好ましくは制御可能な開度を備える排気ガス背圧弁、及び/又は空気入口制限装置を備えることができる。制御ユニットは、例えば排気ガス背圧弁を開く又は閉じることにより、且つ/又は空気入口弁を開く又は閉じることにより、EGR率を適合させるように構成される。
【0085】
排気ガス背圧を、したがって排気ガス再循環率を適合させることにより、燃焼圧力のピークに対するクランク角により決まるパイロット点火のタイミングを最適化することができる。
【0086】
パイロット燃料噴射タイミングがその限界にあるため、燃焼圧力ピーク角度をそれ以上調整できない場合は、EGR率を調整しなければならない。
【0087】
パイロット燃料噴射がある最大限度(例えば−5度CA)に達し、それ以上上げるべきではない場合、EGR率を増加させることができる。EGR率は、背圧弁を例えば5%だけ閉じることにより増加させることができる。
【0088】
パイロット燃料噴射タイミングが最小限度(例えば−17度CA)に達し、それ以上下げるべきではない場合、背圧弁を例えば5%だけ開くことにより、EGR率を減少させることができる。
【0089】
背圧弁が、ある最大閉角度に達し、且つ燃焼圧力ピーク角度が早すぎる角度(例えば2度CA)の場合、制御ユニットは不具合を表示することができる。機関は、低圧燃料ガス運転からディーゼル・モードへ変更/トリップして良い。
【0090】
本発明の更なる態様によれば、目的は、シリンダ内部の燃焼圧力のピーク及びそれに対応するクランク角を検出するための測定ユニットを備え、且つ制御ユニットを備える、好ましくは上述した内燃機関により達成される。
【0091】
制御ユニットは、燃焼圧力のピークに対するクランク角を、
− 排気出口と空気入口の間に配置された排気ガス再循環のためのシステムを備えた内燃機関において、EGR率を適合させることにより、且つ/又は、
− パイロット噴射システムを備えた内燃機関において、パイロット点火時期のタイミングを適合させることにより、且つ/又は
− 加えられる液体燃料の量を適合させることにより、且つ/又は
− 掃気空気圧力を適合させることにより、且つ/又は
− 不活性添加物の量を適合させることにより、
最適化するように構成される。
【0092】
燃焼圧力のピークに対するクランク角を制御することにより、つまり燃焼の位相整合を制御することにより、燃焼圧力が過剰となることを最小化できる。
【0093】
EP3267017は、液体燃料が燃焼のためにシリンダ内に導入される液体モードで運転可能であり、且つ、更に、ガスが燃料としてシリンダ内に導入されるガス・モードで運転可能な二元燃料大型ディーゼル機関、特に縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関を運転するための方法を教示している。ガスはパージ空気と混合され、ある空気−ガス比率で燃やされる。ガス・モードでの運転中、空気−ガス比率の変化がそれに基づいて認識可能な制御パラメータが監視される。大型ディーゼル機関は、制御パラメータが限界値に達した場合、パワー・バランシング・モードで運転可能であり、パワー・バランシング・モードでは、ガスの燃焼における空気−ガス比率が増加される。制御パラメータは、圧力ピークとすることができる。
【0094】
圧力測定が、圧力に対する正確な又は再現性のある値を提供しないというリスクがある。例えば、圧力センサが汚染されることがある。圧力曲線の絶対値は周囲温度にも左右される。
【0095】
しかし、一般的に、正常に機能しない圧力センサでさえ、信頼できる定性的な測定曲線は提供する。
【0096】
したがって、圧力ピークでのクランク角を最適化する制御ユニットは、絶対圧力値に基づいて作動する制御ユニットよりも、信頼性が高い。
【0097】
本発明によれば、圧力ピークでのクランク角が、監視され且つ最適化される制御パラメータとなる。
【0098】
パイロット点火のタイミングは、特に排気ガス再循環無しで運転される機関にとって、導入する燃料の量を適合させることにより調節可能である。低圧燃料ガスに加えて、少量のディーゼル油が噴射されて良い。
【0099】
例えば、噴射されるディーゼル燃料の量も、測定された燃焼圧力ピークでのクランク角によって決定可能である。量は、最適な燃焼圧力ピーク・クランク角が達成されるように設定可能である。
【0100】
ディーゼル燃料噴射は、燃焼圧力の位相整合が常に監視されていることから、少量の燃料で開始することができる。燃焼圧力ピーク角度は、早い時点、例えば2度CA(0度CAに相当するクランクの上死点の、2度後)に位置する可能性がある。
【0101】
ディーゼル燃料噴射は、所定の燃焼圧力ピークでのクランク角、例えば4度CAに到達するまで増加させて良い。
【0102】
燃焼圧力ピークでのクランク角が、上の最大値、例えば7度CAまで遅れた場合、ディーゼル燃料噴射を再び減少させて良い。燃焼圧力ピーク角度が所定の最小値、例えば2度CAよりも連続的に大きいままである場合、ディーゼル燃料噴射は、ゼロまででも減少させて良い。
【0103】
加えて、クランク角がたとえ所定の最小値と所定の最大値の間に入っていても、シリンダ圧力が所定の下限より低い場合、ディーゼル燃料噴射を開始又は増加させて良い。シリンダ圧力が所定の上限に達した場合、ディーゼル燃料噴射は減少させて良い。
【0104】
特に排気ガス再循環無しのシステムでは、燃焼位相整合は掃気空気圧力により制御可能である。掃気空気圧力は、排気ウェイスト・ゲートにより制御できる。ウェイスト・ゲートの設定は、排気ガスのどれだけ多くがターボチャージャを駆動するために使用されるかを決定する。排気出口とターボチャージャの間に、一方がターボチャージャへ、他方がウェイスト・ゲートへ通じる接合点を配置することが好ましい。
【0105】
例えば、排気ガスの全量がターボチャージャの駆動に使用され、したがって掃気空気圧力を更に増やせないために、掃気空気圧力がそれ以上制御できない場合、燃焼位相整合は別の手段により制御可能である。例えば、追加の量のディーゼル燃料を噴射させて良い。
【0106】
燃焼位相整合は、不活性添加物の量を適合させること、つまりより多く又はより少ない不活性マス、例えば不活性ガス又は水を加えることによっても制御可能である。
【0107】
目的は、好ましくは上述した内燃機関を運転するための方法によっても達成される。機関は、少なくとも1本のシリンダを備え、好ましくは少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1本のシリンダを備える大型船舶用機関である。方法は、排気ガスの少なくとも一部を再循環するステップを含む。EGR率又は排気ガス背圧は、排気ガス流れ制限装置、例えば排気ガス背圧弁の開度を、好ましくは5から100mbarの間、より好ましくは少なくとも25mbarの範囲で適合させることにより設定される。排気ガス流れ制限装置は、EGR通路と排気ガス煙突の間に配置される。
【0108】
或いは、又は加えて、ターボチャージャに吸入されるガス全量に対する排気ガスの割合は、ターボチャージャの圧縮機の上流の空気入口内に配置された空気流れ制限装置を適合させることにより、好ましくは空気入口弁の開度を調整することにより設定される。
【0109】
方法は、シリンダ内に低圧燃料ガスを噴射するステップを含むことが好ましい。過早着火の発生は、排気ガスを導入することにより減少又は防止可能である。
【0110】
好ましい実施例では、大気と混合された排気ガスは、ターボチャージャによりシリンダの空気入口へ導かれる。具体的には、ターボチャージャは空気及び排気ガスを吸入する。
【0111】
EGR率が、送風機等の昇圧装置を使用することなく設定される点で有利である。排気ガス圧力流が、ただ単に、排気ガス流れ制限装置及び/又は空気流れ制限装置の設定、並びにターボチャージャの吸入圧力によって決まることが好ましい。
【0112】
予燃料混合気は、パイロット点火システムを用いて点火可能である。
【0113】
燃焼圧力のピーク及びそれに対応するクランク角が測定されて良い。
【0114】
ターボチャージャにより吸入されるガス全量に対する排気ガスの割合は、好ましくはターボチャージャの圧縮機上流の空気入口に配置された空気入口弁の開度を適合させることにより調整可能である。
【0115】
目的は、好ましくは上述した、少なくとも1本のシリンダを備える内燃機関を運転するための方法によっても達成される。内燃機関は、好ましくは少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1本のシリンダを備える大型船舶用機関である。方法は、好ましくはシリンダ内に低圧燃料ガスを噴射するステップを含む。
【0116】
方法は、好ましくは上述した、排気ガスを排気出口と空気入口の間で再循環させ、且つEGR率を適合させるステップを含む。
【0117】
加えて、又は或いは、方法は、パイロット噴射システムを用いて予燃料混合物を点火し、且つパイロット点火のタイミングを適合させるステップを含む。
【0118】
加えて、又は或いは、方法は、加えられる液体燃料の量を適合させるステップを含む。
【0119】
加えて、又は或いは、方法は、掃気空気圧力を適合させるステップを含む。
【0120】
加えて、又は或いは、方法は、不活性マス添加の量を適合させるステップを含む。
【0121】
燃焼圧力ピーク・クランク角が最適化されることが好ましい。燃焼圧力ピーク・クランク角を最適化することは、最適な、燃焼圧力のピークに対するクランク角が達成されるまで、内燃機関の運転を変更することを意味する。最適な、燃焼圧力のピークに対するクランク角は予め決定されて良い。それぞれの負荷に対する最適なクランク角は、セットポイント用ベクトルとして保管されることが好ましい。燃焼圧力ピーク・クランク角は、予点火時期を設定することにより最適化可能である。
【0122】
予点火時期は、最適な燃焼圧力ピーク・クランク角に対して調節可能である。
【0123】
圧力曲線が測定され、その最大の、つまり燃焼圧力のピークでのクランク角が検出されることが好ましい。
【0124】
そのクランク角が所定の最適クランク角に一致しない場合、予点火時期すなわちパイロット噴射のタイミングを調整可能である。パイロット噴射のタイミングは閉ループ制御で調整されることが好ましい。
【0125】
測定された燃焼圧力のピークでのクランク角が所定の角度より大きい場合、点火時期はより早い時期へ、つまり、より小さいクランク角へ移動されて良い。
【0126】
測定された燃焼圧力のピークでのクランク角が所定の角度より低い場合、点火時期はより遅い時期へ、つまり、より大きいクランク角へ移動されて良い。
【0127】
パイロット燃料噴射時期又はパイロット燃料噴射クランク角は、予め定義された最小及び最大レベルの中にとどまっていなければならない。
【0128】
最小レベルに達した場合、排気ガス背圧弁を閉じることにより、排気ガス背圧を増加させて、排気ガス再循環率を上げることができる。
【0129】
最大レベルに達した場合、排気ガス背圧弁を開くことにより、排気ガス背圧を減少させて、排気ガス再循環率を上げることができる。
【0130】
燃焼圧力ピーク・クランク角は、例えば排気ガス背圧弁の開度を適合させることにより、排気ガス再循環システム内の排気ガス背圧を設定することによっても、最適化可能である。
【0131】
燃焼圧力ピーク・クランク角はまた、噴射されるディーゼル燃料の量を設定することにより、又は掃気空気圧力を適合させることにより、又は不活性マス添加の量を適合させることにより、最適化可能である。
【0132】
次に本発明を、図面を用いて実施例で更に説明する。