熱交換器用のヘッダ11は、ヘッダ本体110と、ヘッダ本体110に形成され、ヘッダ入口11Aと複数のチューブ31との間で連結可能な1段以上の分配流路20とを備える。分配流路20は、冷媒が通過する第1経路21と、第1経路21に対して少なくとも上下方向D1に離れ、略同一の高さに位置する複数の第2経路22と、第1経路21から複数の第2経路22へと連続した分配空間23とを含む。分配空間23は、第1経路21および複数の第2経路22のそれぞれの位置を含む範囲に亘り延在している。第1経路21から複数の第2経路22に分配され、複数の第2経路22からそれぞれ流出した冷媒は、次段の分配流路20の第1経路21へ流入可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜
図3を参照し、第1実施形態に係る熱交換器10について説明する。
図1(a)に示す熱交換器10は、例えば、
図3に示す空気調和機の冷媒回路1を構成している。
冷媒回路1(
図3)は、冷媒を圧縮する圧縮機2と、圧縮機2から吐出された冷媒と室外の空気(熱源)とを熱交換させる熱交換器10と、熱交換器10を経た冷媒の圧力を減少させる膨張弁等の減圧部4と、減圧部4を経た冷媒と室内空気(熱負荷)とを熱交換させる室内熱交換器5とを備えている。
【0026】
熱交換器10は、
図1(a)に示すように、冷媒が流れる複数の扁平なチューブ31と、複数のチューブ31に設けられた複数のフィン32と、複数のチューブ31に連通した第1ヘッダ11および第2ヘッダ12とを備えている。
チューブ31は、第1ヘッダ11と第2ヘッダ12との間を水平方向に延びており、上下方向D1(鉛直方向)に積層されている。なお、部材の寸法、組立の公差や、熱交換器10の設置姿勢等により、チューブ31が延びている方向が水平方向に対して若干傾斜していたり、チューブ31が積層される方向が上下方向D1に対して若干傾斜していたりしても許容される。
【0027】
チューブ31は、第1ヘッダ11から第2ヘッダ12まで一直線状に形成されているものであってもよいし、第1ヘッダ11と第2ヘッダ12との間を1往復以上折り返すように形成されていてもよい。一直線状に形成されている場合は、チューブ31の一端の開口が第1ヘッダ11と連通し、他端の開口が第2ヘッダ12と連通する。
【0028】
フィン32は、板状に形成され、チューブ31に対して直交するように、所定間隔で配置されている。フィン32は、チューブ31に熱的に結合することで熱交換器10の伝熱面積を増大させることが可能な任意な形状であってよい。例えば、フィン32が、波状に形成され、上下方向D1に隣接するチューブ31間に配置されるものであってもよい。
【0029】
熱交換器10の入口10Aから第1ヘッダ11に流入した冷媒は、第1ヘッダ11と第2ヘッダ12との間に設定されている経路に従ってチューブ31の内側を流れながら、図示しないファンにより
図1(a)の紙面と交差する方向に送られる空気と熱交換され、熱交換器10の出口10Bから流出する。
本実施形態では、入口10Aは第1ヘッダ11に設けられ、出口10Bは第2ヘッダ12に設けられている。
【0030】
チューブ31、フィン32、第1ヘッダ11および第2ヘッダ12のいずれも、典型的にはアルミニウム合金を用いて形成されており、ろう材により相互に接合されることで一体に組み立てられる。
【0031】
第1ヘッダ11は、第1ヘッダ11の外部から冷媒が流入するヘッダ入口11Aが設けられたヘッダ本体110と、ヘッダ本体110に形成された分配流路20とを備えている。ヘッダ入口11Aと複数のチューブ31との間で1段以上の分配流路20を連結可能である。ヘッダ入口11Aは、熱交換器10の入口10Aに相当する。
【0032】
図示しない冷媒配管からヘッダ入口11Aに冷媒が流入すると、第1ヘッダ11に形成されている分配流路20により冷媒の流れが複数に分かれることで、各チューブ31へと冷媒が分配される。本実施形態では、ヘッダ入口11Aからヘッダ本体110に流入した冷媒が分配流路20により分岐を繰り返して8つの流れに分かれ、分配流路20の最終段において、上下方向D1に分布する8つのチューブ31の開口に分配される。
分配流路20によれば、液の分布が偏り易い気液二相の冷媒を、複数のチューブ31に対し、気相と液相とが均一な比率により混合した状態で、均等な流量にて分配することができる。
【0033】
本実施形態では、ヘッダ入口11Aから分配流路20に、チューブ31が延びている向きに冷媒が流入し、分配流路20により冷媒が分岐しつつチューブ31に漸次近接する。
但し、分配流路20に冷媒が流入する向きはこれに限らず、他の向きであってもよい。例えば、
図1(a)の紙面に対して直交する向きから冷媒が分配流路20に流入した後、チューブ31が延びている向きに流れの向きが転向し、分配流路20をチューブ31に向けて冷媒が流れるように構成されていてもよい。
【0034】
本実施形態の第2ヘッダ12は、例えば円筒状の空間を内包しており、第2ヘッダ12には分配流路20が形成されていない。
本実施形態に限らず、第2ヘッダ12にも分配流路20が形成されていてもよい。その場合は、第1ヘッダ11および第2ヘッダ12の両方において、各ヘッダ11,12の入口と複数のチューブ31との間の1段以上の分配流路20により、分配流路20に流入した冷媒が複数のチューブ31へと分配されることとなる。
【0035】
熱交換器10に設定される冷媒の経路によっては、第1ヘッダ11において、分配流路20が形成されている領域と、分配流路20が形成されていない例えば円筒状の空間を内包する領域とが存在していてもよい。その場合、分配流路20が形成されていない領域に、熱交換器10の出口が設けられていてもよい。
第2ヘッダ12においても、分配流路20が形成されている領域と、分配流路20が形成されていない例えば円筒状の空間を内包する領域とが存在していてもよい。
【0036】
以下、第1ヘッダ11の分配流路20の構成を説明する。
第1ヘッダ11のヘッダ本体110は、本実施形態のように一体に形成することもできるし、後述する
図5および
図6に示すように、複数のヘッダ部材に分割して構成することもできる。
ヘッダ本体110を一体に形成する場合は、例えば、金属粉体を用いた熱溶融積層造形を採用することができる。熱溶融積層造形によれば、例えば、
図2に示すような二次元形状を含むスライスデータを使用し、レーザー等の照射により金属粉体を溶融させ、凝固させることでヘッダ本体110を一体に成形することができる。
【0037】
図2に示す(II-1)〜(II-9)の各図は、
図1(b)に示すヘッダ本体110のII-1〜II-9のそれぞれの位置における形態を表している。(II-1)は、ヘッダ入口11Aと分配流路20が接続される位置におけるヘッダ本体110の形態を示している。(II-1)から、チューブ31と接続される位置(II-9)まで、ヘッダ入口11Aからチューブ31に漸次近接する位置で、チューブ31が延びている方向に対して直交する面に沿ってヘッダ本体110を破断した際の破断面を
図2に示している。なお、破断面を表すハッチングの図示を省略している。
【0038】
図2に示す例では、3段(A1〜A3)の分配流路20が連結されている。これらの分配流路20の全体として、冷媒の1つの流れを2つの経路に分配することを流れ毎に3回繰り返すことで、分配対象であるチューブ31の数に対応する8つの流れを得ることができる。
【0039】
分配流路20の単一段の構成を説明する。単一段は、例えば
図2のII-1〜II-3に示すように、1つの第1経路21(II-1)と、第1経路21から冷媒が分配される複数(ここでは2つ)の第2経路22,22(II-3)と、第1経路21から第2経路22,22へと連続した1つの分配空間23(II-2)とからなる。
なお、単一段における第2経路22の数は、2に限らず、3以上であってもよい。
【0040】
第1経路21は、チューブ31が延びている方向(
図2の紙面に対して直交する方向)に所定の長さで延びて分配空間23と連通する。第1経路21を通過した冷媒は、流れのイメージを
図2に破線矢印で模式的に示しているように、分配空間23を介して第2経路22,22に分配される。冷媒が分配される第2経路22,22は、チューブ31が延びている方向に所定の長さで延びており、第2経路22,22のそれぞれが次段の第1経路21と連通している。
なお、分配流路20が1段のみからなる場合は、次段が存在しない。その場合は、第2経路22,22に分配された冷媒をそれぞれチューブ31に流入させることができる。
【0041】
なお、
図2の(II-1)〜(II-3)に示す例では、第1経路21がヘッダ本体110における下端の近傍に位置し、第2経路22,22がヘッダ本体110における上下方向D1の中央部に位置しているが、その限りではない。
また、第1経路21および第2経路22が、
図2に示す例に限らず、チューブ31が延びている方向に対して傾斜した方向に延びていてもよい。
【0042】
図2の(II-3)および(II-4)に示すように、次段の第1経路21(21−2)および分配空間23(23−2)は、前段の第2経路22,22のそれぞれに対応して2つずつ存在している。
【0043】
第1経路21および第2経路22のいずれも、円形の横断面を呈する。
図2に示す例では、第1経路21の径と第2経路22の径とは同一である。第2経路22,22のそれぞれの径も同一である。
但し、
図2に示す第1経路21および第2経路22は、一例であって、各経路が円形、楕円、矩形等の適宜な断面形状を呈するものであってよいし、第1経路21の径と第2経路22の径とが異なっていてもよい。
【0044】
第2経路22,22はいずれも、第1経路21に対して少なくとも上下方向D1に離れ、略同一の高さに位置している。これらの第2経路22は、水平方向に並んでいる。
図2の(II-2)に示す例では、第1経路21に対して第2経路22,22が上方に位置しているが、第1経路21に対して第2経路22,22が下方に位置していてもよい。
【0045】
「略同一の高さ」は、
図2のII-2に示すように、厳密に同一の高さ、つまり、2つの第2経路22,22のうちの一方の第2経路22の上下方向D1における位置と、他方の第2経路22の上下方向D1における位置とが一致することに該当する他、
図4に示すように、2つの第2経路22,22のそれぞれの開口中心22X,22Xが、上下方向D1において開口の直径程度シフトしている状態にも該当するものとする。
【0046】
仮に第2経路22,22が異なる高さに位置しているならば、重力の影響により、相対的に下方に位置する一方の第2経路22に流入する冷媒の液相の比率が他方の第2経路22に流入する冷媒の液相の比率よりも高くなりがちである。それに対して、第2経路22,22が略同一の高さに位置していると、第1経路21から一方の第2経路22と他方の第2経路22とにそれぞれ向かう流れに重力が同様に作用するため、第1経路21から第2経路22,22へと、気相と液相とが均一な比率により混合した状態で、均等な流量にて冷媒を分配することができる。
【0047】
略同一の高さに位置する第2経路22,22の間隔の寸法(水平方向の距離)は、適宜に定めることができる。当該間隔は、
図2に示す例よりも狭くても広くてもよい。略同一の高さに3つ以上の第2経路22が並ぶ場合に、それらの第2経路22が必ずしも等間隔に配置されている必要はない。
【0048】
分配空間23は、
図2の(II-2)に示すように、第1経路21と2つの第2経路22,22とのそれぞれの位置を含む範囲に亘り延在している。そのため、分配空間23は、第1経路21と第2経路22,22とのそれぞれの開口の断面積の総和よりも大きい断面積を有している。
(II-2)に示す分配空間23の紙面上の手前側には、(II-1)に示す第1経路21が位置しており、(II-2)に示す分配空間23の紙面奥側には、(II-3)に示す第2経路22が位置している。なお、
図2の(II-2)には、分配空間23の範囲内に、第1経路21および第2経路22,22のそれぞれの位置を破線で示している。
分配空間23は、
図2の紙面に対して直交する方向に奥行を有しており、第1経路21と第2経路22とが分配空間23を介して連通している。
【0049】
分配空間23の下端の近傍には第1経路21が位置し、上端の近傍には第2経路22,22が位置している。分配空間23は、少なくとも、略同一の高さに第2経路22,22を配置するために必要な幅を有しており、上下方向D1と水平方向との双方に延在している。
【0050】
ヘッダ本体110の体積に限りがあるとしても、分配空間23には、冷媒の圧力損失の抑制を考慮して、
図2の紙面の面内方向および奥行方向にそれぞれ適切な寸法を与えて、必要な容積を確保することができる。換言すれば、分配空間23の寸法を調整することで、ヘッダ11における圧力損失を調整することができる。
【0051】
分配空間23は、第1経路21の位置する下端から第2経路22,22の位置する上端までに亘り幅が一定の矩形状に形成することもできるが、第1経路21から第2経路22,22までの流路として不要な範囲を除いて形成することもできる。
図2の(II-2)に示す分配空間23は、第1経路21の両側において矩形の角が面取りされた形状に形成されている。
【0052】
図2の(II-4)に示すように、ヘッダ本体110における同一断面に複数の分配空間23(23−2)が存在する場合は、同一断面の領域を分け合い、複数の分配空間23−2のそれぞれに適切な容積を与えるとよい。これらの分配空間23−2は、別々の空間であり、略同一の高さに並んでいる第2経路22−2,22−2を互いに隔てる壁111により、同一断面上の右下側の領域と左上側の領域とに区分されている。壁111は、上下方向D1に対して傾斜している。
冷媒圧力損失の均一化の観点より、複数の分配空間23−2,23−2に等しい容積が与えられることが基本的には好ましいが、その限りではない。
【0053】
図2の(II-4)に示すように、ヘッダ本体110の同一断面に、同一段の複数の分配空間23−2が形成されることにより、ヘッダ本体110に分配空間23−2を効率良く配置することができるので、ヘッダ本体110の体積を抑えることができる。また、
図5および
図6に示すようにヘッダ本体110を複数のヘッダ部材に分割して構成する場合には、ヘッダ部材の枚数を抑えることができる。
【0054】
図2の(II-1)〜(II-9)を参照し、複数段に亘る冷媒分配の過程を説明する。
II-1〜II-3に示す第1段A1は、ヘッダ本体110における最初の段であるため、ヘッダ入口11A(
図1(b))から第1経路21−1に冷媒が流入する。第1経路21−1(II-1)を通過して分配空間23−1(II-2)に流入した冷媒は、分配空間23−1を流れて略同一の高さに位置する第2経路22−1,22−1(II-3)に均等に分配され、第2経路22−1,22−1からそれぞれ次段の第1経路21−2(II-3)に至る。ここで、第1経路21−1と第2経路22−1,22−1との間に分配空間23−1が介在することで、圧力損失を抑えつつ、第1経路21から第2経路22,22へと冷媒を分配することができる。
【0055】
次段以降も、分配された流れ毎に、第1経路21、第2経路22,22、および分配空間23からなる分配流路20により、冷媒の分配が繰り返される。
つまり、
図2の(II-3)に示す2つの第1経路21−2のうちの右側の第1経路21−2(R)から、
図2の(II-3)の右下側に示す分配空間23−2(R)へと流入した冷媒は、その分配空間23−2(R)を流れ、(II-5)の下端近傍に示す2つの第2経路22−2(R),22−2(R)へと分配される。
上記の流れと並行して、
図2の(II-3)に示す左側の第1経路21−2(L)から、
図2の(II-3)の左上側に示す分配空間23−2(L)へと流入した冷媒は、その分配空間23−2(L)を流れ、(II-5)の上端近傍に示す2つの第2経路22−2(L),22−2(L)へと分配される。
【0056】
上記の2系統の分配流路20、つまり、第1経路21−2(R)、分配空間23−2(R)、および第2経路22−2(R)からなる分配流路20と、第1経路21−2(L)、分配空間23−2(L)、および第2経路22−2(L)からなる分配流路20とをまとめて第2段A2と称するものとする。
以上より、第1段A1の第1経路21−1に流入した冷媒は、(II-5)に示すように第2段A2を終えた時点で、ヘッダ本体110全体として4つの流れに分かれる。
【0057】
さらに、(II-5)の上端に示す2つの第1経路21−3,21−3を起点とする2系統と、(II-5)の下端に示す2つの第1経路21−3,21−3を起点とする2系統との合計4系統からなる第3段A3の分配流路20により、系統毎に、分配空間23−3を介在させた第1経路21−3から第2経路22−3への冷媒の分配が行われる。例えば、第3段A3における1つの系統を例に挙げると、(II-5)の左上に示す第1経路21−3(A)を通過した冷媒は、(II-6)の左上に示す分配空間23−3(A)を介して、(II-7)に示す2つの第2経路22−3(A)に分配される。その他の3つの系統も同様である。
【0058】
第3段A3の4つの系統によれば、(II-7)に示す合計8つの第2経路22−3からそれぞれ流出する8つの冷媒流が得られる。これらの冷媒流を、上下方向D1に分布するチューブ31に流入させ易いように、第2経路22−3が上下方向D1に分布していることが好ましい。
(II-7)に示す例では、略同一の高さに位置する一対の第2経路22−3,22−3が、ヘッダ本体110における上下方向D1の4箇所に分布している。4箇所のうち上側2箇所にある合計4つの第2経路22−3には、(II-5)の上端近傍において略同一の高さに位置する第1経路21−3,21−3のそれぞれから冷媒が分配される。
ここで、分配先である第2経路22−3の上下方向D1における位置の違いから、(II-6)に示すように、左右方向に隣り合う分配空間23−3,23−3のそれぞれの上下方向D1の長さが相違している。
【0059】
ヘッダ本体110における下側2箇所にある第2経路22−3と、それらと同一の段を構成する第1経路21−3および分配空間23−3についても、上記と同様である。下側2箇所にある合計4つの第2経路22−3には、(II-5)の下端近傍において略同一の高さに位置する第1経路21−3,21−3のそれぞれから冷媒が分配される。
【0060】
第3段A3を経た冷媒流をそれぞれチューブ31に流入させるため、
図2の(II-8)に示すように、複数のチューブ31の位置に分布したチューブ連通空間112がヘッダ本体110に形成されている。チューブ連通空間112は、チューブ31と、チューブ31の近傍に位置するチューブ連通空間112とを含む範囲に亘り延在している。上下方向D1に隣り合うチューブ連通空間112,112は、上下方向D1に対して傾斜した壁113により区分されている。
最終段である第3段A3の第2経路22−3は、対応するチューブ連通空間112を介して、チューブ31と個別に連通している。複数のチューブ連通空間112は、複数のチューブ31の端部に接合されるチューブ取付部110Xにより閉じられている。チューブ取付部110Xには、複数のチューブ31がそれぞれ挿入される挿入孔110Yが形成されている。
【0061】
チューブ31の数と、最終段の第2経路22−3の数とは、必ずしも一致している必要はなく、異なっていてもよい。例えば、16本のチューブ31の開口が上下方向D1に分布しており、最終段の8つの第2経路22−3のそれぞれが2つのチューブ31に対応していてもよい。つまり、1つの第2経路22−3から、2本のチューブ31の各開口に冷媒が分配される。
【0062】
本実施形態の熱交換器用ヘッダ11によれば、分配流路20の各段において第1経路21から分配空間23を介して略同一の高さの第2経路22へと、冷媒の圧力損失を抑えつつ、液相の偏りなく冷媒を均一な流量で均等に分配することができるので、最終的に各チューブ31にも冷媒を均等に分配することができる。そのため、熱交換器10のチューブ31およびフィン32を含む伝熱領域の全体を熱交換に十分に寄与させて熱交換性能を向上させ、熱交換器10を備えた空気調和機の能力向上にも寄与することができるとともに、熱交換器10よりも下流において、チョークの懸念なく、冷媒の流量を十分に確保することができる。
【0063】
本実施形態の複数段の分配流路20は、
図2の(II-1)に示すように、まず、ヘッダ本体110における上下方向D1の端部近傍の位置から流入する第1段A1の第1経路21から、(II-2)に示すように上下方向D1の中央部に位置する第2経路22,22へと冷媒を分配し、さらに、(II-4)に示すようにヘッダ本体110の中央部に対して上半分の領域と下半分の領域とにおいてそれぞれ、次段の第1経路21−2から第2経路22−2へと冷媒を分配している。そして、最後は、(II-6)に示すように、チューブ31の分布する位置に合わせて第1経路21−3から第2経路22−3へと冷媒を分配している。
こうした一連の冷媒経路の設定によれば、ヘッダ本体110の全体に亘り、各経路21,22と分配空間23を効率良く分布させて配置することができるので、ヘッダ本体110の体積を抑え、熱交換器10を小型化することができる。
【0064】
(分割積層例)
第1実施形態のヘッダ本体110は、例えば
図5に示すように、複数のヘッダ部材110A〜110Dおよびチューブ取付部材110Eに分割して構成することもできる。ヘッダ部材110A〜110Dおよびチューブ取付部材110Eは、金属板材を用いたプレス加工等により成形することができる。
図5に、
図2の各図と対応する位置であることを示すため、II-1等を付記している。
図6でも同様である。
【0065】
ヘッダ部材110A〜110Dおよびチューブ取付部材110Eは、所定の方向(ヘッダ積層方向D2)に積層されて、ろう付けや拡散接合等の適宜な方法で接合されることにより、
図1に示すヘッダ本体110と同様に一体化される。
図5に示す例において、ヘッダ積層方向D2は、チューブ31が延びている方向に相当する。
【0066】
図5に示すヘッダ本体110は、2つの第1ヘッダ部材110A,110Cと、1つの第2ヘッダ部材110Bと、1つの最終ヘッダ部材110Dと、1つのチューブ取付部材110Eとを備えている。
第1ヘッダ部材110Aには、第1段A1の第1経路21−1と、同じく第1段A1の分配空間23−1とが形成されている。分配空間23−1は、第1ヘッダ部材110Aのチューブ31側の面から窪んだ凹部と、凹部の底に対向する第2ヘッダ部材110Bの面との間に区画される。この凹部の底に開口する第1経路21−1は、第1ヘッダ部材110Aを厚さ方向に貫通している。第1経路21−1は、分配空間23−1を介して、第2ヘッダ部材110Bの表面に開口した第2経路22−1と連通する。
【0067】
第2ヘッダ部材110Bには、第1段A1の第2経路22−1と、第2段A2の第1経路21−2および分配空間23−2とが形成されている。分配空間23−2は、上述の分配空間23−1と同様に形成され、第1経路21−2も上述の第1経路21−1と同様に形成されている。
【0068】
第1ヘッダ部材110Cには、第3段A3の第1経路21−3と、同じく第3段A3の分配空間23−3とが形成されている。第3段A3の第1経路21−3は、前段である第2段A2の第2経路22−2に連なる。
最終ヘッダ部材110Dには、第3段A3の第2経路22−3と、複数のチューブ31の位置に分布したチューブ連通空間112とが形成されている。第2経路22−3は、複数のチューブ31の位置に分布している。
【0069】
チューブ取付部材110Eは、板状に形成されており、上述のチューブ取付部110X(
図2)と同様に、挿入孔110Yに挿入される各チューブ31と接合されている。また、チューブ取付部材110Eによりチューブ連通空間112が閉じられている。
【0070】
図5に示す分割積層例によれば、ヘッダ部材110A〜110Dおよびチューブ取付部材110Eのそれぞれのチューブ31側の一面に分配空間23あるいはチューブ取付部材110Eをなす凹部が形成されており、それぞれの凹部が、対向する部材(ヘッダ部材110B〜110Dあるいはチューブ取付部材110E)により閉じられている。
【0071】
図5に示すようにヘッダ本体110の全体に亘り分割するのではなく、ヘッダ本体110の一部のみを分割し、残りの部分を一体成形することもできる。
例えば、ヘッダ部材110A〜110Dが一体成形されており、一体成形されているヘッダ部材110A〜110Dに対して、別体のチューブ取付部材110Eが接合されていてもよい。
【0072】
図6には、第1実施形態のヘッダ本体110の他の分割積層例を示す。以下、
図5に示す構成と相違する事項を中心に説明する。
図6に示すヘッダ本体110は、2つの板状の第1ヘッダ部材110P,110Rと、第2ヘッダ部材110Qと、最終ヘッダ部材110Sと、チューブ取付部材110Eとを備えている。
図6に示す例では、第2ヘッダ部材110Qの厚さ方向の両面側に分配空間23が形成されている。
【0073】
第1ヘッダ部材110Pには、第1段A1の第1経路21−1が厚さ方向に貫通して形成されている。
第2ヘッダ部材110Qには、第1段A1の分配空間23−1および第2経路22−1と、次段の第1経路21−2および分配空間23−2とが形成されている。
分配空間23−1は、第1ヘッダ部材110Qの一面から窪んだ凹部と、凹部の底に対向する第1ヘッダ部材110Pとの間に区画される。この凹部の底に開口した第2経路22−1と、第1ヘッダ部材110Pの第1経路21−1とが分配空間23−1を介して連通する。
【0074】
分配空間23−2も、第1ヘッダ部材110Qの他面から窪んだ凹部と、凹部の底に対向する第1ヘッダ部材110Rの表面との間に区画される。この凹部の底に、第1段A1の第2経路22−1と連なる第2段A2の第1経路21−2が開口している。この第1経路21−2と、第1ヘッダ部材110Rの表面に開口した第2経路22−2とが、分配空間23−2を介して連通する。
【0075】
最終ヘッダ部材110Sには、第2経路22−2に連なる第3段A3の第1経路21−3から冷媒が流入する分配空間23−3と、分配空間23−3をなす凹部の底に開口した第2経路22−3と、複数の第2経路22−3に分配された冷媒の流れを各チューブ31に流入させるチューブ連通空間112とが形成されている。
【0076】
図5、
図6に示す例の他にも、ヘッダ本体110を適宜な位置で分割することができる。
また、ヘッダ部材の数を増減させて、任意の回数だけ冷媒の流れを分岐させて、必要な分配数に適合させることができる。
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、
図7を参照し、第2実施形態に係る熱交換器用ヘッダについて説明する。
図7に示す熱交換器用ヘッダのヘッダ本体200は、分配流路20の段数が第1実施形態のヘッダ本体110と異なることを除いて、第1実施形態のヘッダ本体110と同様に構成されている。第2実施形態の熱交換用ヘッダによっても、第1実施形態と同様に、冷媒の圧力損失を抑えつつ、複数のチューブ31に均等に冷媒を分配することができる。
第2実施形態のヘッダ本体200は、一体に成形することもできるし、
図5および
図6に示す例と同様に、積層される複数のヘッダ部材から構成することもできる。
【0078】
ヘッダ本体200は、第1段A1と第2段A2との合計2段の分配流路20を備えており、4本のチューブ31に冷媒を分配可能である。以下、簡単に説明する。
なお、8本のチューブ31に冷媒を分配可能な第1実施形態のヘッダ本体110と、別の4本のチューブ31に冷媒を分配可能な第2実施形態のヘッダ本体200との双方を要素として含む熱交換用ヘッダを得ることもできる。
【0079】
第1段A1は、
図7の(VII-1)〜(VII-3)に示すように、第1経路21−1と、2つの第2経路22−1,22−1と、第1経路21−1から第2経路22−1,22−1へと連続した分配空間23−1とからなる。
第2段A2は、
図7の(VII-3)〜(VII-5)に示すように、第2経路22−1,22−1にそれぞれ連なる第1経路21−2を起点として、2系統の分配流路20からなる。各系統は、第1経路21−2、分配空間23−2、および第2経路22−2から構成されている。
(VII-5)に示すように、4つの第2経路22−2に分配された冷媒の流れは、(VII-6)に示すように、チューブ連通空間112を介して、挿入孔110Yに挿入される4つのチューブ31に個別に流入する。
【0080】
以下、第2実施形態の変形例を説明する。なお、
図8および
図9にそれぞれ示す構成は、第1実施形態にも適用可能である。
図8は、冷媒の移動する経路が
図7とは異なる例を示す。
図8に示す構成も、ヘッダ本体210に流入した冷媒が4つのチューブ31に分配される点では
図7に示す構成と同様である。
図8に示す構成では、第1段A1の分配空間23−1が、第1実施形態(
図2)と比べて上下方向D1に長く形成されている。また、第2段A2の2つの系統のそれぞれの分配空間23−2が、ヘッダ本体210における異なる断面に配置されている。
【0081】
図示しないヘッダ入口から、
図8の(VIII-1)に示すようにヘッダ本体210の下端近傍に位置する第1経路21−1に冷媒が流入すると、(VIII-2)に示すようにヘッダ本体210の上端近傍まで分配空間23−1を冷媒が流れ、上端近傍に位置する2つの第2経路22−1に分配される。第1経路21−1から第2経路22−1までの距離が長いことで、第2経路22−1に分配される冷媒の気液比率および流量がより均一となるので、各チューブ31への冷媒分配の均一性向上に寄与できる。特に、上流側の段において、第1経路21から第2経路22までの距離を確保することが好ましい。
【0082】
2つの第2経路22−1に冷媒が分配された後、(VIII-3)の右側に示す第2経路22−1に連なる第2段A2の第1系統により冷媒が分配されるとともに、(VIII-3)の左側に示す第2経路22−1に連なる第2段A2の第2系統により冷媒が分配される。
【0083】
(VIII-4)に示すように、第2経路22−1に連なる第1系統の第1経路21−2(A)から分配空間23−2(A)を介して2つの第2経路22−2(A)へと冷媒が分配される。これらの第2経路22−2(A)は、(VIII-7)に示すように、チューブ連通空間112まで連通している。
(VIII-3)の左側に示す第2経路22−1は、(VIII-5)に示す第2系統の第1経路21−2(B)に連なっている。この第1経路21−2(B)から、(VIII-6)に示すように、分配空間23−2(B)を介して2つの第2経路22−2(B)へと冷媒が分配される。分配空間23−2(B)は、管壁114により、第1系統の第2経路22−2(A)とは隔てられている。
(VIII-7)に示すように、第2段A2の第1系統および第2系統のそれぞれの第2経路22−2(A)と第2経路22−2(B)とに分配された冷媒が、チューブ連通空間112を介して各チューブ31に流入する。
【0084】
分配流路20は、
図9に示すように、冷媒が分配されない非分配段を含んでいてもよい。
図9に示す非分配段は、第1実施形態にも適用することができる。
図9に示す(IX-1)〜(IX-3)は、
図7に示す(VII-1)〜(VII-3)と同様である。
図9の(IX-4)の左側に示す第1経路21−2からは、分配空間23−2を介して2つの第2経路22−2へと冷媒が分配されるのに対し、(IX-4)の右側に示す第1経路21−2からは、非分配空間25−2を介して1つの通過経路24−2へと冷媒が移動する。非分配段は、これらの第1経路21−2、通過経路24−2、および非分配空間25−2から構成されている。
【0085】
(IX-5)に示す3つの経路、つまり第2経路22−2,22−2および通過経路24−2から、3つのチューブ連通空間112を経て、3つのチューブ31に冷媒を分配することができる。
したがって、
図9に示す構成によれば、例えばファンにより熱交換器10に送られる風の風速分布の偏り等の理由からチューブ31が不等間隔に配置される場合にも対応することができる。
図9に示す非分配段は、第1実施形態にも適用することができる。
【0086】
また、以下に示す本発明の第1変形例および第2変形例は、第1実施形態、第2実施形態のいずれにも適用することができる。また、第1変形例および第2変形例は、分配流路20のいずれの段にも適用することができる。
【0087】
〔第1変形例〕
図10の(X-2)に示す分配空間23−1は、第1経路21−1の位置から水平方向に延びる水平部23Aと、水平部23Aの末端の近傍から第2経路22−1に向けて上下方向D1かつ水平方向に延在する分配部23Bとを備えている。
【0088】
図10の(X-1)に示すように、第1経路21−1は、ヘッダ本体における左右方向の中央部に対して一方側にシフトして配置されている。この第1経路21−1を通じて分配空間23−1の水平部23Aに流入した冷媒は、水平部23Aを水平方向に流れて、水平部23Aの末端でヘッダ本体の壁115に衝突し、分配部23Bの位置する上方へ転向し、分配部23Bの上端近傍に位置する2つの第2経路22−1へと分配される。なお、水平部23Aに対して下方に向けて分配部23Bが延在している場合は、水平部23Aの末端近傍から下方へ冷媒が転向する。
【0089】
冷媒が壁115に衝突することで、冷媒の液相と気相とが混合されることにより、より均一な気液の比率、流量にて第2経路22−1に冷媒が分配されるので、複数のチューブ31への冷媒分配の均一化を促進することができる。
なお、水平部および分配部を備えた分配空間を第2段A2や第3段A3に設けることもできる。
【0090】
〔第2変形例〕
図11の(XI-2)に示すように、第2経路22−1,22−1の流路断面積を異ならせることもできる。こうすることで、第1経路21−1から分配されて第2経路22−1,22−1をそれぞれ流れる冷媒の流量を調整可能である。したがって、例えば風速分布の偏りに起因して各チューブ31の流量を変える必要がある場合に対応することができる。
【0091】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。