特開2020-173546(P2020-173546A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人電気通信大学の特許一覧

<>
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000003
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000004
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000005
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000006
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000007
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000008
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000009
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000010
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000011
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000012
  • 特開2020173546-触覚提示装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-173546(P2020-173546A)
(43)【公開日】2020年10月22日
(54)【発明の名称】触覚提示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20200925BHJP
【FI】
   G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-74229(P2019-74229)
(22)【出願日】2019年4月9日
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】梶本 裕之
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC04
5E555DA24
5E555DD08
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】発汗の影響を抑制して電気刺激による触覚提示を行う。
【解決手段】触覚提示装置1は、皮膚に接触して電気を流す電極3と、電極3が設けられる面に、非導電性または難導電性と吸水性を有する吸水体4を備える。吸水体4に、電極3を露出する貫通穴41が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に電気を流して触覚を生起させる触覚提示装置であって、
皮膚に接触して電気を流す電極と、
前記電極が設けられる面に、非導電性または難導電性と吸水性を有する吸水体を備え、
前記吸水体に、前記電極を露出する貫通穴が形成される
ことを特徴とする触覚提示装置。
【請求項2】
前記吸水体の前記電極が設けられる面に、粘着剤が塗布される
ことを特徴とする請求項1に記載の触覚提示装置。
【請求項3】
前記吸水体は、前記電極が設けられる面に、留め具により配設される
ことを特徴とする請求項1に記載の触覚提示装置。
【請求項4】
前記貫通穴は、前記電極よりも小さく形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の触覚提示装置。
【請求項5】
前記電極が設けられる面が、前記吸水体で形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の触覚提示装置。
【請求項6】
皮膚に電気を流して触覚を生起させる触覚提示装置であって、
台から上方に向けて伸びる複数の立ち上がり部と、
前記立ち上がり部の上に、皮膚に接触して電気を流す複数の電極を備え、
前記電極の間に空間が形成される
ことを特徴とする触覚提示装置。
【請求項7】
気流を発生する気流発生装置をさらに備え、
前記気流発生装置は、前記電極の間に形成された空間に、気流を発生する
ことを特徴とする請求項6に記載の触覚提示装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に電気を流して触覚を生起させる触覚提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気刺激による触覚提示装置が知られている。触覚提示装置では、複数の電極を高密度に配置する。触覚提示装置は、電極に当接したユーザの皮膚に、電極から電気を流すことで、皮膚下の触覚神経を駆動し、ユーザに触覚を生起させる。電極に所定の電流値を指定して電気刺激を開始すると、電気は、陽極から皮膚内部を経由して、隣り合った陰極に回収されることにより、ユーザに充分な触覚を生起させることができる。
【0003】
しかしながら時間の経過とともに皮膚から発汗が生じ、皮膚と電極との間に汗の層が形成される場合、皮膚内部を経由せず、汗の層を経由する新たな経路が生じてしまう。皮膚内部を電気が通過しなくなることに伴い、触覚神経への電気刺激が抑制され、ユーザが電気刺激を感じにくい場合もある。
【0004】
このような発汗に伴う電気刺激の変化は、指を電極に接触させてから数秒から数十秒程度で生じてしまう。発汗は、継続的な電気刺激を与えることを難しくすることから、電気刺激による触覚提示を不安定にする大きな要因となる。
【0005】
また一般的な電流制御は、電極からの電流の最大値を制御する。汗の層を経由する新たな電流経路が発生した場合、ユーザ内の電流値を制御できず、ユーザが電気刺激を感じにくい問題に対処することが難しい。
【0006】
このような問題を解決するために、電流値を指定する電流制御から、電流パルス幅を指定するパルス幅制御への変更が提案される(非特許文献1参照)。非特許文献1は、汗の量を「電極間の抵抗値」の計測によって推定する。非特許文献1は、皮膚の抵抗値を計測しながら、抵抗値が大きければ電流パルスの幅を減らして刺激量を制御することにより、安定的に電気を流すことを提案する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Kajimoto: Electro-tactile Display with Real-time Impedance Feedback using Pulse Width Modulation, IEEE Trans. on Haptics, vol.5, no.2, pp.184-188, 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法において電流の調整量は、ユーザの個人差があり、また同一の個人であっても皮膚の厚さなどの部位によって異なる。従って、電流の調整量を、状況毎に個別に対処することは難しい。また発汗の量は、時間と共に単調に増加することが知られるが、所望の電気刺激を与えるために、電極が与える刺激電流の大半を汗の層に消費されてしまい、効率的に電気刺激を与えられない問題がある。
【0009】
また、一般的な電気刺激装置の安全性基準は、電流量によって規定されており、規定された電流量を越えないように、電気刺激が与えられる。しかしながら発汗が増大すると、この安全性基準が規定する最大の電流量であっても、感覚を生じない状況が容易に生じうる。
【0010】
従って本発明の目的は、発汗の影響を抑制して電気刺激による触覚提示を行う触覚提示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、皮膚に電気を流して触覚を生起させる触覚提示装置に関する。本発明の第1の特徴に係る触覚提示装置は、皮膚に接触して電気を流す電極と、電極が設けられる面に、非導電性または難導電性と吸水性を有する吸水体を備え、吸水体に、電極を露出する貫通穴が形成される。
【0012】
吸水体の電極が設けられる面に、粘着剤が塗布されても良い。
【0013】
吸水体は、電極が設けられる面に、留め具により配設されても良い。
【0014】
貫通穴は、電極よりも小さく形成されても良い。
【0015】
電極が設けられる面が、吸水体で形成されても良い。
【0016】
本発明の第2の特徴は、皮膚に電気を流して触覚を生起させる触覚提示装置に関する。本発明の第2の特徴に係る触覚提示装置は、台から上方に向けて伸びる複数の立ち上がり部と、立ち上がり部の上に、皮膚に接触して電気を流す複数の電極を備え、電極の間に空間が形成される。
【0017】
気流を発生する気流発生装置をさらに備え、気流発生装置は、電極の間に形成された空間に、気流を発生しても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発汗の影響を抑制して電気刺激による触覚提示を行う触覚提示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る触覚提示装置を説明する図である。
図2図1に示す触覚提示装置のA−A’面の断面と、電極に接触する皮膚を説明する図である。
図3】吸水体に設けられる貫通穴と電極の配置の一例を説明する図である。
図4】第1の変形例に係る触覚提示装置の断面を説明する図である。
図5】第2の変形例に係る触覚提示装置を説明する図である。
図6図5に示す触覚提示装置のB−B’面の断面を説明する図である。
図7】第3の変形例に係る触覚提示装置に用いる電極と吸水紙を説明する図である。
図8図7(b)に示す吸水紙に、図7(a)に示す電極の位置を重畳した状態を説明する図である。
図9】第5の変形例に係る電極セットを説明する図である。
図10】第5の変形例に係る触覚提示装置の断面と、電極に接触する皮膚を説明する図である。
図11】第5の変形例に係る触覚提示装置において、気流発生装置が発生する気流の方向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付す。
【0021】
(触覚提示装置)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る触覚提示装置1を説明する。触覚提示装置1は、人の皮膚に電気を流して触覚を生起させる。触覚提示装置1は、人の皮膚に電気を流すことにより、皮膚下の触覚神経を駆動し、ユーザに触覚を生起させる。触覚提示装置1が提示した触覚を感じた位置から、人は、文字、記号、図などを想起することもできる。なお、図1に示す触覚提示装置1の形状は一例であって、これに限るものではない。
【0022】
図1に示す触覚提示装置1は、台2と、台2に設けられ、皮膚に接触して電気を流す複数の電極3を有する。触覚提示装置1は、皮膚で2以上の電極3に接することができるように、電極3を密に配設する。例えば、1つの電極3の大きさは、直径1mmないし1.5mm程度であり、2mmないし4mm間隔で配置される。指先に触覚を提示する触覚提示装置1の場合、電極3の数は、例えば指先で数点から50点以上である。額などより広い面積に触覚を提示する場合など、触覚を提示する皮膚の部位に応じて、触覚提示装置1の電極数は、適宜調整される。
【0023】
本発明の実施の形態において触覚提示装置1は、電極3が設けられる面に、吸水体4を備える。吸水体4は、例えば紙、木製パルプ、布などの繊維の立体構造により形成される部材である。吸水体4は、電極3と皮膚との接触を阻害しないように、薄く形成されることが好ましい。吸水体4は、少なくとも厚み方向(図1のZ軸方向)に伸縮性を有し、皮膚による押圧時に薄く形成されても良い。吸水体4は、汗を吸水後、破棄して取り替えられても良いし、乾燥等により吸水性が回復する場合は再利用されても良い。
【0024】
吸水体4は、非導電性または難導電性と吸水性を有し、電極3を露出する貫通穴が形成される。電極3が設けられる面は、例えば、電極基板である。吸水体4に設けられる貫通穴41は、例えばレーザーカッターにより切り出される。本発明の実施の形態において吸水体4は、貫通穴41の位置と電極3の位置が合うように、隣接する電極3の間に設けられる。
【0025】
吸水体4は、非導電性または難導電性を有するので、吸水体4が電極3に接したとしても、皮膚への電気刺激に影響を与えない。吸水体4は、吸水性を有するので、皮膚に生じた汗を吸収することができる。また皮膚と電極3の間に汗の層が発生した場合でも、貫通穴41に接する吸水体4の断面が発生した汗を吸水し、皮膚と電極との間の汗の層を無くす、或いは少なくすることができる。
【0026】
汗は、吸水体4の繊維の立体構造に取り込まれる。吸水体4に汗が吸い込まれることにより、汗の層における電解質中のイオンの移動に伴う抵抗値の低下が、抑制される。
【0027】
図2を参照して電極3と吸水体4の関係を説明する。図2は、図1のA−A’の断面(YZ平面)において、指9で電極3を接触する状態を示す。
【0028】
図2に示すように、ZY平面上の電極3の間に吸水体4を設けることにより、吸水体4は、皮膚に接触し、皮膚に生じる汗を吸水することができる。また吸水体4は、電極3を露出するように貫通穴が形成されるので、電極3と皮膚との接触を阻害しない。皮膚の柔軟性と吸水体4の伸縮性が相まって、電極3の間に吸水体4を設けたとしても、電極3と皮膚は接触することができる。
【0029】
図3を参照して、本発明の実施の形態に係る吸水体4と電極3との関係を説明する。図3に示す吸水体4および台2は、図1のXY平面を示す。
【0030】
図3(a)に示す吸水体4は、5×4の合計20個の貫通穴41が設けられる。これに対し図3(b)に示す電極3は、台2に5×4の合計20個の電極3が設けられ、各電極3の位置は、吸水体4の貫通穴41の位置に対応する。このような複数の電極3は、刺激電極である陽極3aまたは不関電極である陰極3bとして機能する。図3(b)に示すように、陽極3aのまわりの電極3が陰極3bとして機能することにより、電流は、陽極3aから皮膚内部を経由して、隣り合った陰極3bに回収される。
【0031】
本発明の実施の形態において、図3(a)および図3(b)に示すように、吸水体4の貫通穴41と、電極3の位置および大きさが合致する。これにより、電極3が配置される面において、電極3の間に吸水体4を配置し、電極3に触れる皮膚から生じた汗を、吸水体4に吸水させることが可能になる。これにより、発汗に伴う電極間の抵抗値の低下を抑制し、少ない電力で、安定した電気刺激を与えることができる。
【0032】
このような吸水体4を備えた触覚提示装置1に用いて、電極3からの電気刺激により、直線パターンの運動を、3名の被験者に対して提示した。明瞭な運動パターンを知覚するために必要な電流の量は、吸水体4を用いない場合に比べて3/4程度に低減された。さらに吸水体を使わない場合、15秒から30秒程度で感覚量が大幅に低下し、多くの感覚量が消失した。これに対し吸水体4を用いた場合、1分間の継続使用中に明瞭な感覚の低下は生じず、3分の使用でも明瞭な知覚が継続した。
【0033】
このように触覚提示装置1に吸水体4を備えることにより、発汗の影響を抑制して電気刺激による触覚提示を行うことができる。
【0034】
(第1の変形例)
第1の変形例において、吸水体4の電極3が設けられる面に、粘着剤5が塗布される場合を説明する。粘着剤5が塗布された吸水体4は、電極3が設けられる面に設置されて、図4に示すように、第1の変形例に係る触覚提示装置1aを形成する。粘着剤5は、吸水体4を電極3が設置される面(台2に接する面)に貼り付け可能な弱粘性を有する。粘着剤5は、付箋紙のように、設置面に対して着脱可能であっても良い。
【0035】
例えば、吸水体4の一面にスプレーのりをかけて、アクリルシートに貼り付け、レーザーカッター等で貫通穴41を形成することにより、第1の変形例に係る吸水体4aを形成することができる。またアクリルシートに接着した状態で吸水体4aを保管することもできる。
【0036】
吸水体4に粘着剤5を塗布して、電極3が設けられる面に貼り付けることにより、吸水体4がずれにくくなる。これにより、吸水体4が電極3を覆うなどにより電極3から皮膚に電気が流れにくくなることがなくなり、皮膚に安定的に電気刺激を与えることが可能になる。
【0037】
(第2の変形例)
第1の変形例において吸水体4に粘着剤5を塗布する場合を説明したが、第2の変形例では、吸水体4は、電極3が設けられる面に、留め具6により配設される。
【0038】
図5および図6に示すように、留め具6は、吸水体4の四隅に配設される。図5において4箇所に留め具6が設置されるが、その数は問わない。吸水体4の位置が、台2の上で、ずれないように、留め具6が設置されればよい。
【0039】
図5および図6に示す例において留め具6は、ピン、ねじ等の長尺物である。留め具6の長手方向が、吸水体4および台2を貫通することにより、吸水体4が台2の所定位置からずれないように形成することができる。
【0040】
また台2が磁性体を有する場合、留め具6は磁石であって、磁力により、吸水体4が台2の所定位置からずれないように形成することができる。この場合、台2は、電極3と絶縁体により分離される。留め具6が磁石の場合、台2および吸水体4に留め具6を貫通させなくても良い。
【0041】
このように留め具6を用いて吸水体4を電極3が設けられる面に配設することにより、吸水体4がずれにくくなる。これにより、吸水体4が電極3を覆うことにより電極3から皮膚に電気が流れにくくなることがなくなり、皮膚に安定的に電気刺激を与えることが可能になる。
【0042】
(第3の変形例)
本発明の実施の形態において、貫通穴41と電極3とが同じ大きさである場合を説明したが、第3の変形例では、貫通穴41は、電極3cよりも小さく形成される場合を説明する。
【0043】
図7(a)に、第3の変形例に係る電極3cを、台2に搭載した状態を示し、図7(b)に、第3の変形例に係る吸水体4cを示す。図7(a)および(b)は同一縮尺で表す。
【0044】
図7(a)に示す電極3は、図7(b)に示す貫通穴41cよりも大きい。図8に示すように、貫通穴41cは、電極3cに包含される。
【0045】
このように、貫通穴41cは、電極3cよりも小さく形成される場合、吸水体4が、電極3cが設置される面においてずれたとしても、ずれる量によっては、吸水体4の貫通穴41cは、電極3cに内包される。従って、吸水体4がずれたとしても、皮膚が電極3cに接触し、皮膚に電気刺激を与えることが可能になる。
【0046】
また第3の変形例のように貫通穴41cは、電極3cよりも小さく形成することにより、電極間の距離の制限も少なくなる。一般的に、皮膚が接触した2つの隣接する電極が近すぎる場合、一方の電極から入力した電気は、皮膚の浅い位置を経由して、網一方の電極で回収される。この場合、電気は、皮膚下の触覚神経に到達しないので、電気刺激を与えることができない。従って、一般的な触覚提示装置は、電気が触覚神経に到達するように、皮膚科の触覚神経に到達できる程度に、電極間の距離を確保する必要がある。
【0047】
これに対し第3の変形例では、吸水体4cに設けた隣接する貫通穴41cの距離によって、電極3cが接触する皮膚の位置を調節することができる。電気が皮膚科の触覚神経に達するように、隣接する貫通穴41cの距離が確保される。従って、隣接する電極3cの距離は、これらの隣接する電極3cが通電しない程度の狭い距離を担保できれば足りるので、個々の電極3cの大きさを、より大きく形成することができる。
【0048】
例えば一般的な指先用の電極は、直径1.4mmで、中心間距離2.0mmの円状電極を用いる。第3の変形例のように貫通穴41cは、電極3cよりも小さく形成される場合、電極の中心間距離が2.0mmであっても、例えば、一辺1.9mmの正方形状電極を用いることができる。なお、図7(a)において電極3cが矩形形状の場合を説明するが、電極3cは、矩形に限らない。
【0049】
このように貫通穴41cは、電極3cよりも小さく形成される場合、吸水体4を貼り忘れた状態で皮膚が電極3cに接した場合でも、電極3cの間隙が狭く、電気は触覚神経に到達しないので、安全を確保することができる。
【0050】
(第4の変形例)
第4の変形例において、電極3が設けられる面が、吸水体4で形成される場合を説明する。
【0051】
一般的に紙の表面に、導電性のインクを印刷することで、簡易的なフレキシブル基板を作成する技術がある(河染 満, 畑村 真理子, 金 槿銖, 菅沼 克昭, 松本 孝典, 堀江 昭一, 棚網 宏, 銀ペーストを用いた紙媒体への印刷配線形成技術,第21回エレクトロニクス実装学会講演大会,2007)。
【0052】
このような技術を用いて、吸水体4となる紙の表面に、導電性のインクで電極を印刷することで、触覚提示装置を形成することができる。換言すると、電極が設けられる基板そのものに、吸水性を持たせる。
【0053】
このような触覚提示装置においても、皮膚に電気刺激を与えるとともに、紙により皮膚の汗を吸水することが可能になる。このような紙に印刷された電極は、一度の使用で廃棄されても良い。
【0054】
(第5の変形例)
上記において、指先のように、触知覚の空間解像度が高い部位に対して、陽極および陰極をマトリクス状に並べる場合を説明した。これに対し第5の変形例では、前腕などの触知覚の空間解像度が低い部位に対する電極を説明する。このような電極を用いる触覚提示装置は、電極間に吸水体4を設ける点では同じだが、電極の配置が異なる。
【0055】
第5の変形例において、図9(a)に示すように、陽極3aと陰極3bとが同心円状に配設された電極セット30が用いられる。電極セット30は、内側に、不関電極となる陽極3aが設けられ、外側に刺激電極となる陰極3bが設けられる。電極セット30は、さらに、陽極3aと陰極3bの間に、ドーナツ形状を有する吸水体4を配設する。
【0056】
触覚提示装置1eは、図9(b)に示すように、図9(a)に示す複数の電極セットを、マトリクス状に並べる。さらに、電極セット30間に、吸水体4を配設する。
【0057】
第5の変形例に係る触覚提示装置は、触知覚の空間解像度が低い部位に対する電極についても、電極間に吸水体4を配設することにより、発汗の影響を抑制して安全に電気刺激による触覚提示を行うことができる。また第5の変形例に係る構成は、心電図を計測する端子に用いることも可能である。
【0058】
(第6の変形例)
第6の変形例に係る触覚提示装置1fにおいて、台2は、台2から上方に向けて伸びる複数の立ち上がり部21を有する。複数の電極3は、立ち上がり部21の上に設けられる。複数の立ち上がり部21は、それぞれ独立して形成される。
【0059】
このような触覚提示装置1fは、図10に示すように、立ち上がり部21の間に空間を形成する。立ち上がり部21の上に電極3が配設されるので、電極3の間に空間が形成される。
【0060】
一般的に、皮膚の表面が塞がれることによって皮膚の発汗が促進されることが知られる。これに対し電極3の間に空間が形成されると、皮膚の一部が電極3に接触するとともに、電極3に接触した皮膚の部分に隣接する部分は、台2に塞がれることなく空間に露出する。これにより皮膚の電極3の間の発汗が抑制され、触覚提示装置1fは、電気刺激を適切に与えることができる。
【0061】
また第6の変形例に係る触覚提示装置1fは、図11に示すように、気流発生装置7を備えても良い。気流発生装置7は、電極3の間に形成された空間に、気流を発生する。これにより電極3の間から露出する皮膚に気流を当て、この皮膚に発生した汗を、蒸発または吹き飛ばすなどにより、除去することが可能になる。
【0062】
図11に示す例において気流発生装置7は、Y軸方向に気流を発生させる場合を説明するがこれに限られない。例えば気流発生装置7は、X軸方向に気流を発生させても良いし、X軸方向とY軸方向の両方に、気流を発生させても良い。
【0063】
このように、電極3の間に空間を形成し、さらに空間に気流を発生する方法でも、皮膚の発汗を抑制し、電極3の間の発汗を抑制し、触覚提示装置1fは、電気刺激を適切に与えることができる。
【0064】
なお、図10に示す例では、1つの立ち上がり部21に1つの電極3が設けられる場合を説明するが、発汗の影響が及ばない場合、1つの立ち上がり部21に複数の電極3が設けられても良い。
【0065】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態とその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0066】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 触覚提示装置
2 台
3 電極
3a 陽極
3b 陰極
4 吸水体
5 粘着剤
6 留め具
7 気流発生装置
9 指
21 立ち上がり部
30 電極セット
41 貫通穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11