【解決手段】保護素子1aは、絶縁基板10と、絶縁基板10の上面10a上に設けられた第1の電極11及び第2の電極12と、絶縁基板10の上面10a上に設けられた発熱体と、発熱体に接続する第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14と、第2の発熱体電極14に引出線15を介して接続する第3の電極16と、第3の電極16上に配置された低融点金属30と、第1の電極11と低融点金属30との間を接続する第1短尺ワイヤー31と、第2の電極12と低融点金属30との間を接続する第2短尺ワイヤー32とを有する。低融点金属30が溶融することによって、低融点金属30と接触している第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32の一部が溶食されて、溶断されるように構成されている。
前記ヒューズエレメントワイヤーは、前記第1の電極と前記低融点金属との間を接続する第1短尺ワイヤーと、前記第2の電極と前記低融点金属との間を接続する第2短尺ワイヤーとを含む、請求項1又は2に記載の保護素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る保護素子の本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る保護素子の概略平面図であり、
図2は、本発明の第1実施形態に係る保護素子の電極および発熱体の配置を示す概略平面図であり、
図3は、
図1のIII−III線断面図である。
【0015】
図1〜3に示す第1実施形態の保護素子1aは、絶縁基板10と、絶縁基板10の上面10a上に設けられた第1の電極11及び第2の電極12と、絶縁基板10の上面10a上に設けられた発熱体20と、発熱体20に接続する第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14と、第2の発熱体電極14に引出線15を介して接続する第3の電極16と、第3の電極16上に配置された低融点金属30と、第1の電極11と低融点金属30との間を接続する第1短尺ワイヤー31と、第2の電極12と低融点金属30との間を接続する第2短尺ワイヤー32とを有する。第1短尺ワイヤー31と第2短尺ワイヤー32とが、第1の電極11と第2の電極12とを接続するヒューズエレメントワイヤーを形成する。
【0016】
絶縁基板10は矩形状であり、一組の対向する両端部に第1の電極11及び第2の電極12が形成され、他方の一組の対向する両端部に第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14が形成されている。
図2に示すように、発熱体20の対向する両端部に、第1の発熱体電極13と第2の発熱体電極14が接続されている。
【0017】
絶縁基板10としては、絶縁性を有する材質のものであれば特に制限されず、例えば、セラミックス基板やガラスエポキシ基板のようなプリント配線基板に用いられる基板の他、ガラス基板、樹脂基板、絶縁処理金属基板等を用いることができる。なお、これらの中で、耐熱性に優れ、熱良伝導性の絶縁基板であるセラミックス基板が好適である。
【0018】
第1の電極11、第2の電極12、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14は、比較的抵抗が低い低抵抗導電性材料から形成されている。低抵抗導電性材料としては、Cuなどの金属単体や、少なくとも表面がAg、Ag−Pt、Ag−Pd、Au等から形成されているものを用いることができる。第1の電極11、第2の電極12、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14は、これら金属あるいは合金のペーストを塗布し、必要に応じて焼成する方法、蒸着、スパッタなどの電極の形成方法として利用されている公知の方法によって形成される。
【0019】
第1の電極11、第2の電極12、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14はそれぞれ、絶縁基板10の上面10aと下面10bに形成されている。
図3に示すように、上面側の第1の電極11aと下面側の第1の電極11bは第1導通部11sを介して接続し、上面側の第2の電極12aと下面側の第2の電極12bは第2導通部12sを介して接続している。なお、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14も同様に、上面側の電極と下面側の電極は導通部を介して接続している。第1の電極11、第2の電極12、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14はそれぞれ、はんだ部41〜44が設けられていて、はんだ部41〜44を介して保護回路に接続される。
【0020】
発熱体20(ヒーター)は、比較的抵抗が高く、通電すると発熱する高抵抗導電性材料から形成されている。発熱体20は、例えば、酸化ルテニウムやカーボンブラック等の導電性材料と、水ガラス等の無機系バインダや熱硬化性樹脂等の有機系バインダとからなる抵抗ペーストを塗布し、必要に応じて焼成することによって形成される。また、発熱体20としては、酸化ルテニウムやカーボンブラック等の薄膜を、印刷、メッキ、蒸着、スパッタの工程を経て形成してもよく、これらフィルムの貼付や積層等によって形成してもよい。
【0021】
発熱体20は、絶縁部材21で覆われている。絶縁部材21の上面には第3の電極16が配置されている。第3の電極16は引出線15を介して第2の発熱体電極14と接続しており、発熱体20が発熱したときは、その熱が第2の発熱体電極14と引出線15を介して、第3の電極16に伝わるようにされている。
【0022】
絶縁部材21の材料としては、例えば、セラミックス、ガラスなどの絶縁材料を用いることができる。絶縁部材21は、絶縁材料のペーストを塗布し、焼成する方法によって形成することができる。
【0023】
引出線15及び第3の電極16の材料としては、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14と同じものを用いることができる。引出線15及び第3の電極16は、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14と同様に、金属あるいは合金のペーストを塗布し、必要に応じて焼成する方法、蒸着、スパッタなどの電極の形成方法として利用されている公知の方法によって形成される。
【0024】
低融点金属30は、融点が、保護素子1aを実装する際に行なわれるリフロー時の加熱温度(通常は、約220℃)以上で、280℃以下の範囲内にあることが好ましい。低融点金属としては、Sn−Sb合金、Bi−Sn−Pb合金、Bi−Pb合金、Bi−Sn合金、Sn−Pb合金、Sn−Ag合金、Pb−In合金、Zn−Al合金、In−Sn合金、Pb−Ag−Sn合金、Sn−Ag−Cu合金、SN−Ag−Ni合金、SN−Ag−Cu−Ni合金、Sn−Ag−Cu−Bi−Ni合金、Sn−Cu合金、Sn−Bi−Cu合金、Sn−Pb−Sb合金等を用いることができる。これらの合金の中では、錫を含む錫合金が好ましい。
【0025】
第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32は、融点が低融点金属30よりも高く、低融点金属30が溶融した溶融物に溶食され得るものであることが好ましい。例えば、低融点金属30が錫を含む場合は、銅ワイヤーあるいは銀ワイヤーまたは金ワイヤーを用いることが好ましい。
【0026】
第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32は、ワイヤーの直径によって、ワイヤーを流れる電流の容量を変えることができ、これにより電流遮断時の特性を調整することができる。また、ワイヤーの直径によって、ワイヤーが低融点金属30の溶融物に溶食されて溶断されるまでの時間を変えることができ、これにより発熱遮断時の特性を調整することができる。第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32は、ワイヤー直径が0.01mm以上0.20mm以下の範囲内にあることが好ましく、0.01mm以上0.10mm以下の範囲内にあることがより好ましく、0.02mm以上0.05mm以下の範囲内にあることが特に好ましい。ワイヤー直径が大きくなりすぎると、ワイヤーが低融点金属30の溶融物に溶食されて溶断されるまでの時間が長くなりすぎるおそれがある。一方、ワイヤー直径が小さくなりすぎると、ワイヤーに流せる電流容量が少なくなりすぎる。また、ワイヤーを並列して、電極間を接続するワイヤーの本数を増やすことによって電極間に流せる電流容量を確保できるが、低融点金属30の溶融物によって低融点(リフロー時の加熱温度)でワイヤーの一部が溶食されて溶断されると、電極間に流せる電流量が少なるおそれがある。
【0027】
第1短尺ワイヤー31と第1の電極11又は第3の電極16を接続する方法、第2短尺ワイヤー32と第2の電極12又は第3の電極16を接続する方法としては、ボールボンディング法、ウェッジボンディング法、はんだ付け法などの金属板とワイヤーとを接続する方法として利用されている公知の方法を用いることができる。第1短尺ワイヤー31と第3の電極16及び第2短尺ワイヤー32と第3の電極16を、はんだ付け法により接続する場合は、はんだ材として低融点金属30を用いることができる。
【0028】
次に、第1実施形態に係る保護素子1aを用いた保護回路の構成と電流遮断動作について説明する。
図4は、第1実施形態に係る保護素子1aを用いた保護回路の構成を示す概略回路図である。
【0029】
図4に示す保護回路2は、リチウムイオン二次電池51のパック電池に組み込まれている。保護素子1aの第1の電極11と第2の電極12は正極側電源ラインに接続されている。保護素子1aの第1の発熱体電極13は、スイッチング素子52を介して負極側電源ラインに接続されている。スイッチング素子52は、電界効果トランジスタ(FET)により構成され、制御素子53に接続されている。制御素子53は、過電流の発生以外の異常を検出し、異常が検出された場合には、スイッチング素子52を作動させる。例えば、制御素子53は、リチウムイオン二次電池51の電圧を計測し、リチウムイオン二次電池51の電圧が異常値になった場合には、スイッチング素子52を作動させる。
【0030】
保護回路2において、過電流が発生した場合は、第1短尺ワイヤー31あるいは第2短尺ワイヤー32が、その過電流によって発熱して溶断することによって、保護回路2の電流経路を遮断する(電流遮断)。
【0031】
一方、保護回路2において、過電流の発生以外の異常が発生した場合は、制御素子53がスイッチング素子52を作動させて、発熱体20に電流を流す。電流が流れることによって、発熱体20は発熱し、その熱は、第2の発熱体電極14と引出線15とを介して、第3の電極16に伝わっていく。そして、第3の電極16に伝わった熱によって、第3の電極16上に配置された低融点金属30が加熱されて溶融し、生成した低融点金属30の溶融物に第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32が溶食されて溶断されることによって、保護回路2の電流経路を遮断する(発熱遮断)。
【0032】
以上のような構成された本実施形態の保護素子1aは、ヒューズエレメントワイヤーとして、直径の小さい第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32を使用するので、電流遮断と発熱遮断の両者に対して遮断速度を速くすることができる。特に、第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32の端部は、第3の電極16上に配置された低融点金属30に直接接続しており、熱が伝わりやすいので、発熱遮断時の溶食が進みやすく、遮断速度が速くなる。また、短尺のワイヤーは、電極に固定しやすい。さらに、本実施形態の保護素子1aでは、ヒューズエレメントワイヤーが第3の電極16の上に配置された低融点金属30に部分的に接触しているだけであるので、例えば、保護素子1aを実装する際に行なわれるリフロー時の加熱によって、低融点金属30が部分的に溶融した場合でも、ヒューズエレメントワイヤーが変形しにくい。
【0033】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る保護素子の概略平面図であり、
図6は、
図5のVI−VI線断面図である。
図5〜6に示す第2実施形態に係る保護素子1bは、発熱体20と、発熱体20を被覆する絶縁部材21が絶縁基板10の下面10bに配置されている点において第1実施形態に係る保護素子1aと相違する。なお、第2実施形態の保護素子1bと第1実施形態の保護素子1aとで共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
発熱体20は、絶縁基板10の下面10bに形成されている第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極(不図示)と接続している。第3の電極16は、絶縁基板10の上面10aに形成されている第2の発熱体電極14と引出線15を介して接続している。第2実施形態の保護素子1bでは、発熱体20が発熱したときは、その熱が絶縁基板10の下面10bに形成されている第2の発熱体電極から導通部(不図示)を介して、絶縁基板10の上面10aに形成されている第2の発熱体電極14に伝わる。そして、その熱が、引出線15を介して、第3の電極16に伝わるようにされている。
【0035】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態に係る保護素子の概略平面図であり、
図8は、
図7のVIII−VIII線断面図である。
図7〜8に示す第3実施形態に係る保護素子1cは、ヒューズエレメントワイヤーが、第1の電極11と第2の電極12とを直接接続する長尺ワイヤー33とされている点において第1実施形態に係る保護素子1aと相違する。なお、第3実施形態の保護素子1cと第1実施形態の保護素子1aとで共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
長尺ワイヤー33は、第1実施形態の保護素子1aの第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32と同様に、融点が低融点金属30よりも高く、低融点金属30が溶融した溶融物に溶食され得るものであることが好ましい。長尺ワイヤー33のワイヤー直径は、0.01mm以上0.20mm以下の範囲内にあることが好ましく、ワイヤー直径が0.01mm以上0.10mm以下の範囲内にあることがより好ましく、0.02mm以上0.05mm以下の範囲内にあることが特に好ましい。長尺ワイヤー33としては、例えば、低融点金属30が錫を含む場合は、銅ワイヤーあるいは銀ワイヤーまたは金ワイヤーを用いることが好ましい。また、長尺ワイヤー33と第1の電極11又は第2の電極12を接続する方法としては、ボールボンディング法、ウェッジボンディング法、はんだ付け法などの金属板とワイヤーとを接続する方法として利用されている公知の方法を用いることができる。
【0037】
長尺ワイヤー33は、第3の電極16上に配置された低融点金属30と接触している。長尺ワイヤー33と低融点金属30とを接触させる方法としては、例えば、最初に、長尺ワイヤー33と第1の電極11又は第2の電極12を接続し、長尺ワイヤー33の一部を、第3の電極16に押し当てた状態で、低融点金属30の溶融物を第3の電極16上に塗布して、固化させる方法を用いることができる。
【0038】
以上のような構成された本実施形態の保護素子1cは、ヒューズエレメントワイヤーとして、直径の小さい長尺ワイヤー33を使用するので、電流遮断と発熱遮断の両者に対して遮断速度を速くすることができる。また、第1の電極11と第2の電極12とを一つの長尺ワイヤー33で接続することによって、第1短尺ワイヤー31及び第2短尺ワイヤー32を用いた場合と比較して、接続箇所が少なくなるため、導電抵抗値のばらつきが低減できると共に、加工時間を短くできる。さらに、本実施形態の保護素子1cは、長尺ワイヤー33が第3の電極16の上に配置された低融点金属30に部分的に接触しているだけであるので、例えば、保護素子1c実装する際に行なわれるリフロー時の加熱によって、低融点金属30が部分的に溶融した場合でも、長尺ワイヤー33が変形しにくい。
【0039】
[第4実施形態]
図9は、本発明の第4実施形態に係る保護素子の概略平面図であり、
図10は、
図9のX−X線断面図である。
図9〜10に示す第4実施形態に係る保護素子1dは、第2実施形態に係る保護素子1bと比較すると、ヒューズエレメントワイヤーが、第1の電極11と第2の電極12とを直接接続する長尺ワイヤー33とされている点において相違する。また、第3実施形態に係る保護素子1cと比較すると、発熱体20と、発熱体20を被覆する絶縁部材21が絶縁基板10の下面10bに配置されている点において相違する。なお、第4実施形態の保護素子1dと第2実施形態に係る保護素子1b及び第3実施形態の保護素子1cとで共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
第4実施形態に係る保護素子1dにおいて、発熱体20で発熱した熱の伝わり方は、第2実施形態に係る保護素子1bの場合と同じである。また、長尺ワイヤー33の材料、長尺ワイヤー33と第1の電極11又は第2の電極12の接続方法、長尺ワイヤー33と低融点金属30とを接触される方法は、第3実施形態の保護素子1cの場合と同じである。
【0041】
[第5実施形態]
図11は、本発明の第5実施形態に係る保護素子の概略平面図であり、
図12は、
図11のXII−XII線断面図である。
図11〜12に示す第5実施形態に係る保護素子1eは、長尺ワイヤー33が複数本とされている点において第3実施形態に係る保護素子1cと相違する。なお、第4実施形態の保護素子1eと第3実施形態の保護素子1cとで共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
第5実施形態の保護素子1eでは、長尺ワイヤー33が複数本とされているので、個々の長尺ワイヤー33の直径を小さくしても、第1の電極11と第2の電極12との間に流せる電流の容量を多くすることができる。そして、個々の長尺ワイヤー33の直径を細くすることによって、長尺ワイヤー33が低融点金属30の溶融物によって浸食されて、溶断されるまでの時間を短くすることができる。
【0043】
以上に述べたように本実施形態の保護素子1a〜1eによれば、過電流が発生したときは電流遮断によって電流経路を遮断することができ、過電流の発生以外の異常時に発熱遮断により電流経路を遮断することができる。また、電流遮断による遮断時間や発熱遮断による遮断時間を、ヒューズエレメントワイヤー(第1短尺ワイヤー31、第2短尺ワイヤー32、長尺ワイヤー33)の直径や並列本数によって調整することができる。さらに、発熱遮断による遮断時間は、ヒューズエレメントワイヤーと低融点金属30の種類によって調整することができる。
【0044】
また、本実施形態の保護素子1a〜1eでは、ヒューズエレメントワイヤーが第3の電極16の上に配置された低融点金属30に部分的に接触しているだけであるので、例えば、保護素子1aを実装する際に行なわれるリフロー時の加熱によって、低融点金属30が部分的に溶融した場合でも、ヒューズエレメントワイヤーが変形しにくい。
【0045】
なお、本実施形態では、第1の電極11、第2の電極12、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14はそれぞれ、絶縁基板10の上面10aと下面10bに形成されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の電極11、第2の電極12、第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14は、絶縁基板10の上面10aと下面10bのいずれか一方に形成されていればよい。
【0046】
また、本実施形態では、第3の電極16は、引出線15を介して第2の発熱体電極14に接続しているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第3の電極16は、第1の発熱体電極13に接続していてもよい。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例により説明する。
【0048】
[実施例1]
実施例1では、
図7〜8に示す第3実施形態に係る保護素子1cを作製した。
まず、矩形の絶縁基板10を用意した。絶縁基板の一組の対向する両端部に第1の電極11及び第2の電極12を形成し、他方の一組の対向する両端部に第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14を形成した。第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14に接するように発熱体20を配置した。
【0049】
次に、発熱体の表面を絶縁部材で被覆した。絶縁部材の表面に第3の電極16を形成し、第3の電極16と第2の発熱体電極14との間に引出線15を形成した。
【0050】
次に、第1の電極11と第2の電極12との間を、長尺ワイヤー33として銀ワイヤー(直径D:0.05mm、長さL:0.5mm)を用いて接続した。第1の電極11及び第2の電極12と銀ワイヤーとの接続は、ボールボンディング法により行なった。そして、最後に銀ワイヤーの第3の電極16に押し当てた状態で、低融点金属30(錫合金)の溶融物を第3の電極16上に塗布して、固化させて保護素子を作製した。
【0051】
[実施例2]
第1の電極11と第2の電極12とを接続する銀ワイヤーの本数を2本とし、銀ワイヤーとして、直径D:0.035mm、長さL:0.5mmのものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護素子を作製した。
【0052】
[実施例3]
第1の電極11と第2の電極12とを接続する銀ワイヤーの本数を4本とし、銀ワイヤーとして、直径D:0.025mm、長さL:0.5mmのものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護素子を作製した。
【0053】
[評価]
(1)作製した保護素子の銀ワイヤーについて、下記の物性を算出した。その結果を表1に示す。
【0054】
断面積S:下記の式より算出した。
断面積S=(直径D/2)×(直径D/2)×π
【0055】
切断部長さ:銀ワイヤーが電流もしくは発熱体加熱によって切断したときの切断部位の長さである。切断部長さは0.1mmとした。
【0056】
切断部体積:切断部体積は、電流もしくは発熱体加熱によって切断したときの切断部位の体積である。切断部体積は下記の式より算出した。
切断部体積=断面積S×切断部長さ×銀ワイヤー本数
【0057】
切断部体積比:切断部体積比は、実施例1の切断部体積を1とした相対値である。
【0058】
導体抵抗:導体抵抗は、銀ワイヤーの長さ方向の抵抗値である。導体抵抗は下記の式より算出した。
導体抵抗=銀の比抵抗(1.62×10
−5Ω・mm)×長さL/断面積S
【0059】
表面積:表面積は、銀ワイヤー全体の表面積である。表面積は下記の式より算出した。
表面積=直径R×π×長さL×銀ワイヤー本数
【0060】
表面積比:比表面積比は、実施例1の表面積を100%とした相対値である。
【0061】
(2)電流遮断による遮断時間
第1の電極11及び第2の電極12との間に6mAの電流を流してから、銀ワイヤーが発熱して溶断することによって電流経路が遮断されるまでの時間を計測した。その結果を、表1に示す。
【0062】
(3)発熱遮断による遮断時間
第1の発熱体電極13及び第2の発熱体電極14との間に1mAの電流を流してから、発熱体20が発熱して錫合金が溶融し、生成した錫合金の溶融物に、銀ワイヤーが溶食されて溶断されることによって電流経路が遮断するまでの時間を計測した。その結果を、表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1〜3で作製した保護素子において、電流遮断による遮断時間は、いずれも10秒で同じであった。これは、実施例1〜3の銀ワイヤーの導体抵抗が同じ値であるためであると考えられる。
【0065】
実施例1〜3で作製した保護素子において、発熱遮断による遮断時間は、実施例3が最も短く、実施例2が次に短く、実施例1が最も長くなった。これは、銀ワイヤーは表面積比が大きい方が、錫合金との接触面積が広くなり、錫合金の溶融物によって浸食されやすくなるためであると考えられる。
【0066】
以上の結果から、本実施例の保護素子においては、銀ワイヤーの本数や直径を変えることによって、電流遮断による遮断時間を変えずに、発熱遮断による遮断時間を調整できることが確認された。