(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-174577(P2020-174577A)
(43)【公開日】2020年10月29日
(54)【発明の名称】植物育成ケース
(51)【国際特許分類】
A01G 9/16 20060101AFI20201002BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20201002BHJP
【FI】
A01G9/16 Z
A01G9/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-79198(P2019-79198)
(22)【出願日】2019年4月18日
(71)【出願人】
【識別番号】519142549
【氏名又は名称】山下 佳之
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】山下 佳之
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029HB01
2B029HB08
2B029MA01
2B029XA10
(57)【要約】
【課題】収容した植物が生長したときに内部空間を拡張できるようにすると共に、ケース内の水交換や掃除を行いやすくする。
【解決手段】底面水槽21と、透光性を有し内部に植物を収容可能なケース本体31と、底面水槽とケース本体を分離可能に連結する連結部33を有する植物育成ケースで、ケース本体は、底面水槽の上部空間Sの周囲を取り囲む側壁32と、植物12を支持する植物支持部41とを備え、天面が開放され、底面において底面水槽と連通するように連結部によって底面水槽と連結される無底無蓋の箱状体で、側壁を上方へ延長し底面水槽の上部空間を上方へ拡張する無底箱状の縦拡張フレームをケース本体31の上に積み重ねるように天面に連結可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留可能な底面水槽と、
透光性を有し内部に植物を収容可能なケース本体と、
前記底面水槽と前記ケース本体とを分離可能に連結する連結部と
を有する植物育成ケースであって、
前記ケース本体は、
前記底面水槽の上部空間の周囲を取り囲む側壁と、
当該ケース本体内に収容した植物を支持する植物支持部と
を備え、
天面が開放されている一方、底面において前記底面水槽と連通するように前記連結部によって前記底面水槽と連結される無底無蓋の箱状体であり、
前記側壁を上方へ延長し前記底面水槽の上部空間を上方へ拡張する無底箱状の縦拡張フレームを当該ケース本体の上に積み重ねるように天面に連結可能である
ことを特徴とする植物育成ケース。
【請求項2】
前記連結部は、
前記ケース本体の側壁の内面側下端部から略垂直下方へ立ち下がり当該ケース本体の下縁より下方へ突出して前記底面水槽に差し込まれることにより前記ケース本体と前記底面水槽との間の水平方向への相対移動を規制する差込係合部を備える
請求項1に記載の植物育成ケース。
【請求項3】
前記差込係合部は、前記ケース本体の底面の略全周に亘って延在する
請求項2に記載の植物育成ケース。
【請求項4】
前記植物支持部は、通気性を有し且つ植物を載せることが可能な板状の植物載置板である
請求項1から3のいずれか一項に記載の植物育成ケース。
【請求項5】
前記連結部は、前記ケース本体の底面部に備えられ、
前記植物載置板は、当該連結部に支持される
請求項4に記載の植物育成ケース。
【請求項6】
前記ケース本体の天面を開閉可能に閉塞する蓋体をさらに備え、
当該蓋体は、当該蓋体の底面から略垂直下方へ立ち下って前記ケース本体の天面から当該ケース本体内に差し込まれることにより当該蓋体と前記ケース本体との間の水平方向への相対移動を規制する差込係合部を備えている
請求項1から5のいずれか一項に記載の植物育成ケース。
【請求項7】
前記差込係合部は、前記ケース本体の天面の略全周に亘って延在する
請求項6に記載の植物育成ケース。
【請求項8】
前記底面水槽内に貯留した水を加熱するヒーターをさらに備えた
請求項1から7のいずれか一項に記載の植物育成ケース。
【請求項9】
透光性を有し内部に植物を収容可能で植物の収容空間を水平方向に拡張するための横拡張フレームであって、
当該横拡張フレームは、
水を貯留可能な底面水槽を2以上底面部に連結する連結部と、
当該2以上の底面水槽の上部空間の周囲を取り囲む側壁と、
当該横拡張フレーム内に収容した植物を支持する植物支持部と
を備え、
天面が開放されている一方、底面において前記2以上の底面水槽と連通するように前記連結部によって前記2以上の底面水槽と連結可能な無底無蓋の箱状体である
ことを特徴とする横拡張フレーム。
【請求項10】
nを2以上の自然数とした場合に、
前記横拡張フレームは、
前記底面水槽の横幅の略n倍の横幅寸法を有し、
前記底面水槽をn個横に並べるように底面部に連結可能である
請求項9に記載の横拡張フレーム。
【請求項11】
前記側壁を上方へ延長し前記底面水槽の上部空間を上方へ拡張する無底箱状の縦拡張フレームを上に積み重ねるように天面に連結可能である
請求項9または10に記載の横拡張フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観賞用の植物を収容し温度等の管理を可能とするケースに係り、特に、植物の生長に合わせて内部空間を拡張し、また日常のメンテナンスを簡易化できるようにした植物育成ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
草花樹木の美しさを観て楽しむだけでなく、室内で身近に自然を感じることができ、インテリアアイテムの一つとして部屋の雰囲気作りにも役立つ観賞用の植物が鉢植えなどの形態で今日広く提供されている。
【0003】
これらの植物には、育成に比較的手間がかからない一般的な観葉植物も様々あるが、例えば蘭や食虫植物など趣味嗜好性の高いものもある。このような植物は、販売地とは異なる温暖な地方や、熱帯雨林のような日本とは違った気候風土を持つ国々で生育するものも少なくなく、育成にあたってはその植物に合った温度や湿度を保つ必要がある。
【0004】
例えば、蘭や食虫植物は、比較的高温多湿の気候環境に生育しているものが多く、これらを育成するためには従来、温室のほか観賞魚を飼育する水槽が利用されることがあった。具体的には、植物を水槽の中に収容し、冬の間ヒーターで槽内の温度を上げるともに水槽の底に常に水を溜めて槽内が乾燥しないようにする。
【0005】
また、植物の育成に適する温度などの環境条件を整える技術を開示する文献として下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−53449号公報
【特許文献2】特開平2−124038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように生育環境を整え、手をかけて育成した植物が元気で生長することは悦ばしいことである一方で、背が高くなり、あるいは枝が伸び、葉が生い茂って幅が広がると生長した植物が水槽に納まりきれなくなることがある。このような場合、従来ではサイズの大きな水槽に買い替えるしか対処法がなかった。
【0008】
また、水槽を利用した育成方法では、底に溜めた水にアオコが発生したり水槽の内面にコケやカビが発生するなど時間経過に伴って槽内が汚れるため、頻繁に水を換え、水槽を掃除する必要がある。
【0009】
掃除にあたっては中の植物を取り出し、清掃後に再び水槽に植物を戻す必要があるが、葉や枝、花などを傷めないように植物を出し入れすることは必ずしも楽な作業ではなく、不注意から植物を傷つけてしまうおそれもあった。特に、前述のような趣味嗜好性の高い植物は一般的な観葉植物と比べ高価なものもあり、神経を使う清掃作業は植物を育成するうえでの心理的負担となる場合があった。
【0010】
一方、前記特許文献記載の発明は、植物を容器内に収容して気温などの生育環境条件を管理できるものではある。しかしながら、植物を覆う覆い8(特許文献1)や、植物を収容する容器12,13(特許文献2)はいずれも大きさが固定されており、収容した植物の生長に対処できるものではない。また、上記のようなメンテナンス(水交換や容器内の掃除)の煩わしさを解消できるものでもない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、植物の生長に柔軟に対応可能な新たなケース構造を提示するとともに、ケース内に溜め置く水の交換やケース内の掃除を行いやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本願の第一の発明に係る植物育成ケースは、水を貯留可能な底面水槽と、透光性を有し内部に植物を収容可能なケース本体と、底面水槽とケース本体とを分離可能に連結する連結部とを有する植物育成ケースである。また、前記ケース本体は、底面水槽の上部空間の周囲を取り囲む側壁と、当該ケース本体内に収容した植物を支持する植物支持部とを備え、天面が開放されている一方、底面において底面水槽と連通するように連結部によって底面水槽と連結される無底無蓋の箱状体であり、側壁を上方へ延長し底面水槽の上部空間を上方へ拡張する無底箱状の縦拡張フレームを当該ケース本体の上に積み重ねるように天面に連結可能である。
【0013】
本願の第一の発明に係る植物育成ケースは、植物の収容空間を縦方向に拡張できるようにしたもので、植物を収容するケース本体の天面が開放されており、当該天面に縦拡張フレームを連結することが出来る。この縦拡張フレームは、植物の収容空間を上方へ拡張するためのもので、ケース本体内に収容した植物が生長して背が高くなった場合には、ケース本体の上に積み重ねるように縦拡張フレームを接続することにより植物の育成スペース(ケース内の空間)を上方へ拡げ、これにより植物の生長に対処することを可能とする。
【0014】
また、上記縦拡張フレームとして、様々な高さ寸法のものを用意しておくか、あるいは2以上の縦拡張フレームを縦に積み重ねて連結できるようにすれば、植物の縦方向の生長により一層柔軟に対処することが可能となる。縦拡張フレームとケース本体との間、また縦拡張フレーム同士の連結構造としては、例えば、底面水槽とケース本体とを接続する上記連結部と同様の連結部を備えれば良い。
【0015】
また、ケース本体(縦拡張フレームや後に述べる横拡張フレームも同様)は、収容した植物を外部から観賞できるように、全体または少なくとも一部が透光性を有するものとする。また透光性を有することにより、収容した植物に外部から光を供給することも可能となる。ケース本体を形成する材料としては、例えば、高強度で破損し難く軽量で扱いやすい樹脂材料(例えばアクリル樹脂)を好ましく使用することが出来る。ただし、ガラスなど樹脂以外の材料を用いることを本発明は禁止するものではない。また本発明では、典型的にはケース本体全体が剛性を有する構造とするが、例えば、剛性を有する骨組に柔軟なフィルムを張ったような構造とすることも可能である。
【0016】
ケース本体の底面部には、底面水槽(以下単に「水槽」又は「槽」と言うことがある/後に述べる実施形態においても同様)を備える。この底面水槽には水を溜めることができ、これによりケース内の湿度を高めることが出来る。また、底面水槽に溜めた水を加熱するヒーターを備え、槽内の水を温めることによりケース内の温度を上げることも可能である。
【0017】
底面水槽は、連結部によりケース本体と分離可能に連結されているから、メンテナンス時には、収容した植物ごとケース本体を持ち上げて水槽を分離することにより、水の交換や汚れやすい水槽内の掃除を楽に行うことができ、メンテナンスの労力負担を軽減することが出来る。また、ケース本体から植物を出し入れする必要がないから、メンテナンス時に植物を傷める危険性も格段に低下させることが出来る。
【0018】
好ましい態様として上記連結部は、ケース本体の側壁の内面側下端部から略垂直下方へ立ち下がり当該ケース本体の下縁より下方へ突出して底面水槽に差し込まれることによりケース本体と底面水槽との間の水平方向への相対移動を規制する差込係合部を備える。
【0019】
このような連結構造によれば、ケース本体と底面水槽との間の着脱操作が簡便になるうえに、ケース本体が不用意に横ずれして倒れたり水槽から落下して中の植物が損傷を受けるようなアクシデントが生じることを防ぐことが出来る。
【0020】
また、上記差込係合部は、ケース本体の底面の略全周に亘って延在するよう形成することが望ましい。ケース内が結露した場合に、側壁内面に沿って流れ落ちる結露水を差込係合部に沿って底面水槽内に導くためで、これによりケース本体と底面水槽を分離可能に構成することによって生じる可能性がある接続部からの結露水の漏水の問題(ケース本体と底面水槽との間から結露水が外部へ漏れ出す可能性)を回避することが出来る。
【0021】
ケース本体内に植物を支持する植物支持部は、通気性を有し且つ植物を載せることが可能な板状の植物載置板(例えば網や格子状の部材)とすることがある。植物載置板に通気性を持たせることで、ケース本体内の水平断面全体に亘って広がるように植物載置板を備えたとしても底面水槽で温められた空気や湿気(水蒸気)が植物支持部(直物載置板)を通過してケース本体の内部へ上昇し、植物にこれらを供給することが可能となる。
【0022】
またこの植物載置板は、ケース本体の底面部に備えた前記連結部を利用し、当該連結部に支持されるようにしても良い。さらにこの植物載置板は、ケース本体(又は連結部)に対して固定された構造とすることも、あるいは着脱自在に設置することも可能である。
【0023】
また、この第一の発明に係るケース(後述の第二の発明に係るフレームも同様)は、ケース本体の天面を開閉可能に閉塞する蓋体を備えることが好ましい。ケース内の温度や湿度を一定に保つためである。この蓋体は、当該蓋体の底面から略垂直下方へ立ち下ってケース本体の天面から当該ケース本体内に差し込まれることにより当該蓋体とケース本体との間の水平方向への相対移動を規制する差込係合部を備えることがある。蓋体が横ずれしてケース本体から離脱することを防ぐためである。さらに、この差込係合部は、前記連結部と同様にケース本体の天面の略全周に亘って延在することが好ましい。蓋体内面(底面)に結露した水が蓋とケース本体の間から外部へ漏れ出ることを防ぐためである。
【0024】
一方、本願の第二の発明に係る横拡張フレームは、透光性を有し内部に植物を収容可能で植物の収容空間を水平方向に拡張するためのフレームであって、当該フレームは、水を貯留可能な底面水槽を2以上底面部に連結する連結部と、当該2以上の底面水槽の上部空間の周囲を取り囲む側壁と、当該フレーム内に収容した植物を支持する植物支持部とを備え、天面が開放されている一方、底面において前記2以上の底面水槽と連通するように前記連結部によって前記2以上の底面水槽と連結可能な無底無蓋の箱状体である。
【0025】
前述した第一の発明に係るケースは、植物を収容するケース本体の内部空間を縦方向に(上方へ)拡張することを可能とするものであったが、この第二の発明に係る横拡張フレームは、当該空間を横方向に(左右方向へ)拡張するものである。
【0026】
具体的には、この横拡張フレームは、前記第一の発明が備えるケース本体と同様に無底無蓋の箱状の部材であるが、底面に2つ又は3つ以上の底面水槽を連結することが出来る。これらの底面水槽は、第一の発明における底面水槽と同じサイズの水槽を使用することができ、その分、この横拡張フレームは第一の発明に係るケース本体より横幅が大きい。
【0027】
したがって例えば、前記第一の発明に係るケースを使用して育成していた植物が横に(左右方向へ)生長し、ケース本体に納まりきれなくなったときには、この第二の発明に係る横拡張フレームを使用してこのフレーム内に植物を収容すれば、引き続き当該植物を育成することが可能となる。なお、底面水槽は、第一の発明のケースで使用していたものに加えて、同様の底面水槽を当該横拡張フレームの幅に合わせて1つ又は2つ以上用意し、横拡張フレームの底面に接続すれば良い。
【0028】
横拡張フレームのサイズについては特に限定されるものではないが、典型的な例では、後に述べる実施形態のように横拡張フレームが底面水槽の横幅の略n倍(nは2以上の自然数)の横幅寸法を有し、底面水槽をn個横に並べて底面部に連結できるようにする。
【0029】
さらにこの横拡張フレームにおいても、側壁を上方へ延長し底面水槽の上部空間を上方へ拡張する無底箱状の縦拡張フレームを上に積み重ねるように天面に連結できるようにしても良い。この縦拡張フレームは、第一の発明のケース本体と同様の構造を有し、横拡張フレームに積み重ねるように前記連結部と同様の連結部により横拡張フレームの天面に接続可能なものとすることが出来る。
【0030】
また、横拡張フレームについても第一の発明に係るケースと同様に、天面を閉塞する蓋体を必要に応じて備えることが出来る。この蓋体は、横拡張フレームの全幅に亘って広がる1枚ものの蓋であっても良いが、第一の発明における蓋体を複数枚横に並べる形でも横拡張フレームの天面を塞ぐことが可能である。
【0031】
なお、ケース本体や横拡張フレーム、底面水槽の内部には、槽内の水またはケース内の空気を温めるヒーター(加熱装置)、ケース内の空気を循環させるファン(扇風機)、槽内の水を循環させるポンプなどを適宜備えることができ、これらに電力を供給するコード類を通す孔や溝をケース本体や横拡張フレーム、底面水槽に備えることがある。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、収容空間を拡張することにより植物の生長に柔軟に対応することができ、日常のメンテナンスを簡易化することが可能となる。
【0033】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る植物育成ケースを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、前記第1実施形態に係る植物育成ケースを示す分解斜視図(斜め上から見た状態)である。
【
図3】
図3は、前記第1実施形態に係る植物育成ケースを示す分解斜視図(斜め下から見た状態)である。
【
図4】
図4は、前記第1実施形態に係る植物育成ケースを示す縦断面図(
図1のA−A断面)である。
【
図6】
図6は、前記第1実施形態に係る植物育成ケースを分解した状態で示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、前記第1実施形態に係る植物育成ケースに縦拡張フレームを使用した状態を示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、前記第1実施形態に係る植物育成ケースに縦拡張フレームを使用した状態を示す縦断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る横拡張フレームを使用した植物育成ケースの構成例を分解した状態で示す斜視図である。
【
図10】
図10は、前記第2実施形態に係る横拡張フレームを使用した植物育成ケースの構成例を分解した状態で示す縦断面図である。
【
図11】
図11は、前記第2実施形態に係る横拡張フレームを使用した植物育成ケースの構成例を示す縦断面図である。
【
図12】
図12は、前記第2実施形態に係る横拡張フレームを使用した植物育成ケースの別の構成例を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、前記第2実施形態に係る横拡張フレームの別の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
図1から
図8に示すように本発明の第1の実施形態に係る植物育成ケース11は、水13を溜め置くことが可能な底面水槽21と、底面水槽21の上に載せるように底面水槽21と連結して内部に植物12を収容するケース本体31と、ケース本体31の内部に備えられて植物12を載せることが可能な植物載置板41と、ケース本体31と底面水槽21とを連結する連結部33と、ケース本体31の天面31aを塞ぐ蓋体51とを有する。なお、各図には前後方向、左右方向および上下方向を表す互いに直交する二次元または三次元座標を示しており、以下、これらの方向に基づいて説明を行う。
【0036】
底面水槽21は、前後左右に位置する平板状の4枚の側板(側壁)と、下面を塞ぐ平板状の底板とからなり、天面21aが開放された(天板が無い)直方体形状の箱体である。
【0037】
一方、ケース本体31は、植物12の収容空間Sとなる底面水槽21の上方空間の前側、後側、左側および右側をそれぞれ覆う平板状の4枚の側板(側壁)32を備え、天面31aと底面31bが開放された(天板と底板が無く開口となっている)立方体形状の枠体で、その内部に連結部33と植物載置板41を備える。
【0038】
連結部33は、天板および底板が無く、平面形状がケース本体よりひと回り小さい枠体で、ケース本体31の底面部(側板32の下縁部の内面側)に固定されている。より具体的には連結部33は、
図5に拡大して示すようにその上側部分である上枠部33aと、下側部分である下枠部(差込係合部)33bとからなる。上枠部33aはケース本体側壁32の内面に固定される。一方、下枠部33bはケース本体側板32の下縁より垂直下方へ突出して底面水槽21の天面部に差し込まれる。そしてこのように下枠部33bが底面水槽21に対して入れ子状に嵌り込むことでケース本体31が底面水槽21に接続される。この接続状態では、下枠部(差込係合部)33bが底面水槽21の側板内面に当接し、これによりケース本体31と底面水槽21が互いに水平方向へずれる(相対移動する)ことが阻止される。
【0039】
また、連結部33はケース本体31の下縁部内面の全周に亘って設置されている。したがって、ケース本体31内で生じ側壁32の内面に沿って流れ落ちる結露水は、底面水槽21に差し込まれた連結部33に導かれて水槽21内に落下することとなり、ケース本体31と水槽21との接続部から外部へ漏れ出ることがない。なお、連結部33は、別部材として作製してケース本体31に溶着や接着等の処理により固定されたものであっても良いし、ケース本体31と一体成形されたものであっても構わない。
【0040】
さらに、ケース本体側壁32の内面に沿って水平に延びる上枠部33aの上には、植物載置板41を載せることが可能で、これにより植物載置板41をケース本体31の中に設置する。植物載置板41は、多数の孔42が開いた網状の板状部材で通気性を有する。したがって、底面水槽21で温められた空気や湿気(水蒸気)は植物載置板41を通り抜け、ケース本体31の内部に自由に侵入することが出来る。
【0041】
ケース本体31の天面31aを塞ぐ蓋体51は、ケース本体31に対して着脱自在で、したがってケース本体31の天面31aは開閉可能である。蓋体51の下面には、ケース本体31が備える前記下枠部33bと同様の差込係合部52を備えてある。すなわち、当該差込係合部52は、蓋体51の下面から垂直下方へ立ち下る枠状の突出部で、ケース本体31の天面31aに差し込まれるようにケース本体31に嵌り込む。この差込係合部52を蓋体51の下面周縁に沿って全周に亘って備えることにより、前記ケース本体31の差込係合部33aと同様に、蓋体51の着脱を簡便にすることが出来るとともに、蓋体51が横ずれしてケース本体31から落ちることを防ぎ、さらに蓋体51の下面に結露した水が蓋体51とケース本体31の間から外部に漏れ出ることを防ぐことが出来る。
【0042】
ケース本体31と蓋体51、ならびに、後に述べる縦拡張フレーム61と横拡張フレーム71は、収容した植物12に光を供給するとともに外部から植物12を観ることが出来るように、透光性を有する材料(例えば透明なアクリル樹脂)により形成する。なお、底面水槽21については、同様に透光性を有するものとしても良いが、本実施形態では、槽内に設置するヒーター14やコード類14aが見えないように透光性の無い材料で構成する。
【0043】
植物12は、
図4に示すように植物載置板41の上に載せてケース内に収容するが、この植物12が生長して背が高くなった場合には、
図7および
図8に示すようにケース本体31の上に縦拡張フレーム61を積み重ねるように接続してケースの内部空間Sを上方へ拡張することが出来る。
【0044】
この縦拡張フレーム61は、本実施形態の場合、ケース本体31と全く同一の形状・寸法および構造を有する。したがって、縦拡張フレーム61の底面部に備えた連結部33(前記ケース本体31の連結部33と同じ構造を有する)を使用して、蓋体51を外したケース本体31の天面31aに縦拡張フレーム61を接続すれば、背の高くなった植物12a(
図8参照)を収容することが出来る。なお、縦拡張フレーム61の天面61aには、ケース本体31に使用していた蓋体51を装着すれば良い。また、同様にして縦拡張フレーム61の上にさらに同様の縦拡張フレーム(図示せず)を積み上げて内部空間Sをさらに上方へ拡張することも可能である。
【0045】
また、縦拡張フレーム61の連結部33もケース本体31の連結部33と同じ構造を有し、ケース本体31と縦拡張フレーム61の間も、前記ケース本体31と底面水槽21の間と同じ連結構造により接続されるから、縦拡張フレーム61が横ずれしてケース本体31から滑り落ちることもなく、当該接続部から結露水が外部に漏れ出すこともない。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、ケース内の空間Sを横方向へ拡げる横拡張フレームを本発明の第2実施形態として説明する。
【0047】
図9から
図12に示すように、本発明の第2の実施形態に係る横拡張フレーム71は、植物12の育成空間Sを横に拡げるもので、前記ケース本体31の幅w1の2倍の幅寸法w2を有し、底面に前記底面水槽21を2個接続可能なものである。
【0048】
より具体的には、横拡張フレーム71は、前記第1実施形態のケース本体31と同様の枠状の連結部33を2つ底面部に備え、これら連結部33を使用して底面に水槽21を2つ横に並べて接続することが出来る。また、各連結部33の上には、前記第一実施形態と同様に植物載置板41を載せることができ、これら植物載置板41の上に、横に生長した植物12bを載せることでケース内に収容することが出来る(
図11参照)。また、横拡張フレーム71の天面71aは、前記第1実施形態における蓋体51と同様の差込係合部54を備えるが当該蓋体51より幅寸法の大きな蓋体53により閉塞する。
【0049】
なお、横拡張フレーム71の高さ寸法h1および奥行寸法dは、前記ケース本体31の各寸法h1およびdと同じである。また、植物載置板41は、
図9に示すように前記第1実施形態で使用したものを2枚設置しても良いし、
図10および
図11に示すように横拡張フレーム71の横幅に合わせて幅の大きな植物載置板41を構成しこれを1枚設置するようにしても良い。
【0050】
また
図12に示すように、横拡張フレーム71の天面に縦拡張フレーム61を接続することも可能で、横方向に加えて縦方向にも収容空間を拡げることが出来る。なお、
図12に示した例では、前記第1実施形態で使用した縦拡張フレーム61を接続したが、この縦拡張フレーム61に代え、本実施形態の横拡張フレーム71と同じ幅寸法w2を有する同一の横拡張フレーム(図示せず)を載せて内部空間を拡げることも可能である。
【0051】
さらに
図13に示すように、前記ケース本体31の幅w1の3倍の幅寸法w3を有して底面に底面水槽21を3個接続可能な横拡張フレーム81を構成することもでき(
図13では植物載置板および蓋体は図示を省略している)、同様にして4個以上の水槽21を接続可能な横拡張フレームを構成することも可能である。
【0052】
ケースやフレーム各部の寸法は様々に変更可能であり、特に限定されるものではないが、一例を述べれば、前記ケース本体31および縦拡張フレーム61は幅w1、奥行dおよび高さh1がすべて30cm、底面水槽21は幅w1および奥行dが30cmで、高さhtが10cm、横拡張フレーム71は奥行dと高さh1が共に30cmで、幅w2(
図9〜
図11の例)が60cm、幅w3(
図13の例)が90cmとすることが出来る。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0054】
例えば、前記実施形態では、縦拡張フレーム61と横拡張フレーム71,81はいずれも天板が無く、天面を蓋体51,53で閉塞する構造としたが、天板を備えることも可能で、最上部に接続する拡張フレームに天板を備えれば蓋は不要となる。また、横拡張フレーム71,81は、左右方向にケース内空間を拡張するものとしたが、幅寸法に加えて奥行寸法も大きなフレームを構成することにより、左右方向と前後方向(奥行方向)の双方にケース内空間を拡張できるようにすることも可能である。
【0055】
また、本発明の適用範囲は必ずしも加温用のケースに限定されず、クーラーを備えて内部を冷却するケースを本発明は除外するものではない。例えば、植物の種類によっては日本の夏の気温が高すぎるものもあり、このような植物を育成するため、夏季に水槽内の水を冷却するなどして内部の温度を下げるケースも本発明を適用すれば同様に構成することが出来るからである。
【0056】
また、ケースに収容する植物は、様々なものであって良くその種類を問わない。典型的には、観賞用の植物、例えば観葉植物や、前述した蘭などの花を楽しむ植物や食虫植物、盆栽、その他様々な観賞用植物であるが、必ずしも観賞用に限られず、野菜や果物などの食用を目的とした植物、あるいはそれ以外の目的で栽培される植物についても本発明を同様に適用することが可能である。
【0057】
また当該植物は、典型的には鉢植えの植物、すなわち、鉢(例えば素焼や陶器・磁器等の焼き物の鉢、樹脂製・金属製またはガラス製の鉢など)に植えられた植物であるが、炭や石材、軽石などで出来たポットや、プランター、苔玉、ミズゴケなど鉢以外のものを利用して植えられたものや、植込み材を使用しないものなど植物の生育状態は様々であって良い。さらに植物載置板の上に植物を載せるだけでなく、例えば縦拡張フレームを1つ以上ケース本体の上に接続し、最上段の縦拡張フレームの連結部に載せた植物載置板に蘭のような空中栽培が可能な植物を吊るしてケース内に配置するようなことも可能である。
【0058】
また図では植物を1鉢だけ示したが、複数の植物を収容することも勿論可能で、複数の鉢植え植物を収容したり寄せ植えするなど、ケース内において様々に植物を配置して楽しむことが出来る。さらに、縦拡張フレームや横拡張フレームを各種組み合わせて植物の育成空間を自由にカスタマイズすることが出来るから、植物の生長に対処するだけでなく、置き場所や各自の好みに応じて観賞魚用水槽を利用した従来の育成方法に比べ格段に個性的な育成環境を創り上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
11 植物育成ケース
12,12a,12b 植物
13 水
14 ヒーター
14a コード類
21 底面水槽
21a 底面水槽の天面
31 ケース本体
31a ケース本体の天面(開口)
31b ケース本体の底面(開口)
32 側板(側壁)
33 連結部
33a 上枠部
33b 下枠部(差込係合部)
41 植物載置板
42 孔
51,53 蓋体
52,54 差込係合部
61 縦拡張フレーム
71,81 横拡張フレーム
71a,81a 横拡張フレームの天面(開口)