【実施例】
【0015】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の具体的な適用例であるハムエッグ及びその製造方法を例示的に説明する。
図1は、ハムエッグを焼成するための焼成型を示す。焼成型2は、複数の第1型4が直列に並んだ平面視長方形の第1の型列6と、第1型4に対応した第2型8が直列に並んだ平面視長方形の第2の型列10とで構成され、第1、第2の型列6、10は、その互いに対向する長辺同士が複数のヒンジ12によって互いに連結されている。
図1は、第1型4と第2型8が型開きした状態を示している。ヒンジ12の軸線を中心にして第1の型列6又は第2の型列10が回動することにより、第1、第2の型4、8を型閉じさせることができる。第1、第2の型列6、10からなる焼成型2はコンベアによって搬送されながら制御された加熱処理が行われてハムエッグを焼成し、そして、出来上がったハムエッグは焼成型2から取り出される。
【0016】
第1型4と第2型8は共に上方に開放した凹所4a、8aを有する。第1型4と第2型8は実質的に同じ形状を有していることから、第1型4を代表して説明する。第1型4に含まれる凹所4aの平面視形状は任意であるが、実施例では凹所4aは平面視楕円形の開口を有している。この凹所4aの開口は平面視円形であってもよい。また、凹所4aは、
図2から分かるように、上方に向けて開放し且つ下方に凸の断面アーチ状の形状を有している。
図2に示す参照符号14は直火の加熱手段の一例であるガスバーナを示す。以下に、焼成型2を使ったハムエッグの製造方法を説明する。
【0017】
ハム片準備(図3):
図3を参照して、ハムエッグを製造する準備工程として、第1型4に投入するハム片を準備する工程を説明する。ハム材料20をデンプン粉24を収容した第1容器26に投入し、ハム材料20の表面にデンプン粉を付着させる(第1工程)。ハム材料20は、生のハムであってもよいし冷凍のハムでもよい。冷凍のハムを使用するときには、解凍した後に第1容器26に投入される。次に、卵白調整液28を収容した第2容器30にハム材料20を浸漬してハム材料20の表面に卵白調整液28を付着させ(第2工程)、次いでハム材料20を第2容器30から取り出す(第3工程)。
図3の第3工程に示す参照符号32は、上述した準備が終わった後の第1ハム片を示す。第1ハム片32は、ハム材料20と、その表面に付着したデンプン粉24及び卵白調整液28とで構成されている。
【0018】
第1ハム片32の変形例として、第1工程を省いた第2ハム片34であってもよい。すなわち、第1工程は必須ではない。第1工程を省くことにより、第2ハム片34は、ハム材料20と、その表面に付着した卵白調整液28とで構成される。
【0019】
ハム材料20を浸漬する卵白調整液28は、冷凍卵白を解凍した卵白液又は生卵白液に澱粉、増粘剤、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤に加えて、食塩、天然及び/又は化学調味料などの調味料などが添加されている。澱粉は、コーンスターチ、加工澱粉及び未加工澱粉を含む。食用油脂としては、菜種油及び大豆油などを例示的に挙げることができる。
【0020】
ハムエッグ製造(図4、図5):
図4、
図5は、ハムエッグを製造する工程を説明するための図である。焼成型2は制御された加熱が行われていることを前提に以下に各工程を説明する。
【0021】
第1工程(ハム片を第1型に投入):
図4に示す第1工程において、第1型4の凹所4aにハム片32(又は34)が投入され、ハム片32(又は34)の加熱が行われる。ハム片32(又は34)はその表面に卵白調整液28が付着していることから、第1型4にハム片32(又は34)が接着するのを防止でき、また、ハム片32(又は34)の焦げ付きを防止できる。
【0022】
第2工程(第1型に卵白液を充填):
第1型4の凹所4aに第1卵白液40を充填して加熱する。第1卵白液40は、鶏卵を割った生卵液から卵黄を分離した卵白液に植物油、食塩、増粘剤、加工デンプンなどを添加することで調味された卵白液が用いられる。この卵白液は、上述した卵白調整液28と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、生卵液から抽出した卵白液に代えて凍結卵白を解凍した卵白液を使用してもよい。このことは、上述した卵白調整液28でも同様である。
【0023】
第3工程(第2型に卵白液を充填):
第2型8に第2卵白液42を充填して加熱する。第2卵白液42は、上述の第2工程で説明した第1卵白液40と同じ卵白液を採用するのが好ましい。第2型8に充填する第2卵白液42の量と、第1型4に充填する第1卵白液40の量とを比較すると、任意であるが、第2卵白液42の量が相対的に多くなるように設定されている。勿論、第1、第2の卵白液40、42は同量であってもよいし、第1卵白液40の量が相対的に多くなるように設定してもよい。
【0024】
第4工程(卵黄液の充填):
図5に図示の第4工程において、第2型8に卵黄液44を充填する。卵黄液44は、鶏卵を割った生卵液から卵白を分離した卵黄液又は冷凍卵黄を解凍した卵黄液に、水飴などの糖類、植物油、食塩、粉寒天、ゼラチン、化学及び/又は天然調味料、ゲル化剤などを添加することで調味された卵黄液が好ましくは用いられる。変形例として、予め加工及び調味した加工卵黄液を用いてもよい。
【0025】
卵黄液44を第2型8に充填するタイミングは、第2型8の第2卵白液42の内部及び上表面が流動性を有している状態で行うのが好ましい。これにより、卵黄液44は第2型8の凹所8aに充填されたときに第2卵白液42の中で自重及び重力により適度に沈降することができる。この作用を奏するのに、卵黄液44は第2卵白液42よりも比重が大きいのが好ましい。
【0026】
第5工程(型閉じ):
ヒンジ12を中心にして第1の型列6を反転させ、反転した第1型4を第2型8の上に載置することで型閉じが行われる。型閉じは、第1型4の第1卵白液40がある程度の流動性を有している状態つまり第1卵白液40が完全に凝固していない状態で行うのが好ましい。これにより、型閉じにより第1型4の中の第1卵白液40の一部が第2型8の凹所8aの中に流下し、また、反転した第1型4の内部において、
図5の第5工程に図示のように、第1卵白液40の上表面の盛り上がりを平坦化することができる。この型閉じ状態で第2型8の加熱を継続することでハム、卵白、卵黄が一体化したハムエッグ50が焼成される。この第5工程において、更に好ましくは、第1型4の第1卵白液40と同様に、第2型8の第2卵白液42もある程度の流動性を有している状態つまり第2卵白液42が完全に凝固していない状態で型閉じするのがよい。
【0027】
前述した第4工程(卵黄液の充填)の変形例として、第2型8に代えて第1型4に卵黄液44を充填してもよく、或いは第1型4と第2型8との双方に卵黄液44を充填するようにしてもよい。これらの変形例において、卵黄液44を第1型4に充填するタイミングは、第1型4の第1卵白液40の内部及び上表面が流動性を有している状態で行うのが好ましい。また、これらの変形例において、上記第5工程の型閉じは、第1型4及び第2型8の第1、第2卵白液40、42がある程度の流動性を有している状態つまり第1、第2卵白液40、42が完全に凝固していない状態で型閉じするのがよい。
【0028】
第6工程(取出し):
型開きして第2型8の中に位置しているハムエッグ50を焼成型2から取り出す。取り出した後のハムエッグ50は冷した後に包装され、そして必要であれば冷凍保存される。
【0029】
図6ないし
図9は、上記の工程を経て焼成したハムエッグ50を説明するための図である。
図6は平面図、
図7は底面図、
図8は側面図、
図9は
図6のa−a線に沿って切断した断面図である。ハムエッグ50の卵黄部分52を上に位置させ、ハム54を下に位置させる食事の時の状態に基づいて「上」「下」又は「上下方向」という言葉を使用すると、
図9を参照して、ハムエッグ50は卵黄部分52が卵白部分56によって包囲された形態を有している。卵白部分56のうち、卵黄部分52の上方に位置する卵白表層56aは第2型8に充填した第2卵白液42によって構成される。
【0030】
上述したように、第2卵白液42が凝固する前に卵黄液44が第2型8の凹所8aに充填され、卵黄液44は第2卵白液42の中に沈降する。これにより、ハムエッグ50の卵黄部分52の上方に位置する卵白表層56aの厚みD1は、任意であるが、卵黄部分52の下方に位置し且つハム54の上に位置する中間卵白層56bの厚みD2との対比で相対的に薄い。ハムエッグ50の中心鉛直軸における中間卵白層56bの厚みD2は例えば5mm程度であり、上方の卵白表層56aの厚みD1はこれよりも薄い。勿論、上方卵白表層56aの厚みD1と中間卵白層56bの厚みD2との関係は任意であり、また、中間卵白層56bの厚みD2、約5mmも任意である。例えば、上方卵白表層56aの厚みD1が中間卵白層56bの厚みD2よりも相対的に厚くてもよい。
【0031】
第1、第2の型4、8は、共に断面アーチ状の凹所4a、8aを有し、この中に第1、第2の卵白液40、42が充填される。第1型4に充填した第1卵白液40が完全に凝固していない状態のときに、第1型4を反転して型閉じすることにより、前述したように、ハム54の周囲に位置する下方卵白部分56cは、前述したように比較的フラットな底面を形作ることができる。他方、卵黄部分52の周囲及び上方に位置する卵白表層56aを含む上方卵白部分56dの表面は、第2型8の断面アーチ状の輪郭によって断面アーチ状に形作られる。
【0032】
図10は、変形例のハムエッグ50(1)を示す、
図7に対応した底面図である。実施例のハムエッグ50では平面視矩形のハム54(
図7)が採用されているが、
図10に図示するように、変形例のハムエッグ50(1)では平面視円形のハム54(1)が採用されている。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は、これに限定されず以下の変形例を包含する。
(1)第1、第2の型4、8の凹所4a、8aは共に断面アーチ状の形状を有しているが、変形例として第1型4又は第2型8又は双方の型4、8の凹所4a、8aが上方に開放した断面コ字状の形状を有していてもよい。
【0034】
(2)ハムエッグ50に代えてベーコンエッグに対しても本発明を適用することができる。この場合には、ハムの代わりに同じ畜肉の一種であるベーコンが採用されることになる。
【0035】
(3)第1型4、第2型8に第1、第2の卵白液40、42を充填する代わりに、全卵液を充填してもよい。この全卵液は、卵白、卵黄に加えて調味料などを混合して調製されるのがよい。
(4)焼成型2は、第2型8無しの第1型4だけで構成されていてもよい。この変形例では、第1型4の凹所4aに充填される卵液として全卵液を採用して例えばオムレツ風の加工食品を製造してもよい。
(5)焼成型2は、凹所4a無しの第1型4と、凹所8aを含む第2型8とで構成してもよい。この場合には、第1型4は第2型8に対する蓋として機能することになる。
【0036】
(6)ハム片やベーコン片の代わりに、ハムカツや豚カツなどのカツ食材を採用してもよく、また小さく切断した鳥肉などの食肉の小さな塊を採用してもよい。これらは、本発明に従う卵加工食品において、その上部又は下部或いは内部の所定位置に食肉が位置するという特色ある卵加工食品を提供することができる。
【0037】
(7)ハムエッグ50では、第1、第2の型4、8の凹所4a、8aを平面視円形の輪郭形状にして平面視円形のハムエッグ50を作ったが、本発明を適用する卵加工食品の平面視の形状は任意であり、オムレツのように平面視楕円形の形状を有していてもよい。勿論、この形状は焼成型2の成形面の輪郭形状によって形作ることができる。
【0038】
(8)本発明に従って製造される卵加工食品及びその製造工程において、卵加工食品が食肉だけでなくチーズや野菜を含むようにしてもよい。