(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-174900(P2020-174900A)
(43)【公開日】2020年10月29日
(54)【発明の名称】抗癌剤を分解するための薬剤および方法
(51)【国際特許分類】
A62D 3/30 20070101AFI20201002BHJP
A62D 101/20 20070101ALN20201002BHJP
【FI】
A62D3/30
A62D101:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-79001(P2019-79001)
(22)【出願日】2019年4月18日
(71)【出願人】
【識別番号】519142125
【氏名又は名称】緒方 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(72)【発明者】
【氏名】堀川隆広
(57)【要約】
【課題】 医療従事者および患者家族に対する抗癌剤曝露による健康被害を防止するため、医療現場において残留する抗癌剤を迅速かつ簡便に分解除去することができる方法および分解剤を提供する。
【解決手段】 本発明は、次亜塩素酸を含む、抗癌剤を分解するための分解剤を提供する。また、本発明は、対象物または対象空間に残留した抗癌剤を分解する方法であって、次亜塩素酸を含む溶液を対象物または対象空間に噴霧する工程を含む、方法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸を含む、抗癌剤を分解するための分解剤。
【請求項2】
前記次亜塩素酸が10ppm以上である、請求項1に記載の分解剤。
【請求項3】
噴霧用容器に収容された、請求項1または2に記載の分解剤。
【請求項4】
対象物または対象空間に残留した抗癌剤を分解する方法であって、
次亜塩素酸を含む溶液を前記対象物または対象空間に噴霧して抗癌剤と接触させる工程を含む、方法。
【請求項5】
前記接触させる工程の後に、1分以上静置する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記接触させる工程の後に、前記噴霧された溶液を拭き取る工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液に含まれる次亜塩素酸が10ppm以上である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療現場において残留する抗癌剤を分解除去するための方法および分解剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、癌の治療には、多くの種類の抗癌剤が用いられている。抗癌剤は、癌治療には非常に有用であるが、それを取り扱う医療従事者や患者の家族に対して健康被害を引き起こす可能性が指摘されている。
【0003】
抗癌剤など、人々に健康被害を及ぼすおそれのある薬剤はハザードドラッグ(HD)ともよばれる。HDは、米国国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health:NIOSH)によって、1)発癌性、2)催奇性、3)生殖毒性、4)臓器障害、5)遺伝毒性、および6)危険薬剤に構造あるいは毒性が類似している、という6個の項目のいずれか1つ以上を満たしている薬剤であると定義されている。
【0004】
世界的に、抗癌剤を取り扱う看護師などの医療従事者に対する抗癌剤の曝露が問題視されている。抗癌剤の曝露は、発癌性、催奇性、臓器障害および急性症状などの健康被害を引き起こすおそれがある。急性症状には、過敏反応、免疫反応、消化器症状、循環器症状および神経症状などがある。
【0005】
抗癌剤の曝露は、たとえば抗癌剤の調製、投与準備、運搬、保管、投与(点滴、注射および内服)、こぼれた薬剤の処理、付着物の取り扱いおよび廃棄ならびに患者の排泄物の取り扱いなどにおいて起こり得る。近年、在宅での抗癌剤投与による家族や介護者への曝露も問題になっている。一般的に、抗癌剤治療後48時間は、患者の体液中に薬剤が残存していると言われており、患者の尿、便および吐物によって抗癌剤曝露の危険がある。また、患者の体液が付着した衣類やシーツ等を取り扱う際にも抗癌剤曝露の危険がある。さらに、病室の床や壁などの表面および空間内にも抗癌剤が残留しているおそれがある。
【0006】
このような抗癌剤を分解する方法として、複数の分解液を使用する方法や、オゾン水を使用する方法などが知られている。しかし、いずれも方法が煩雑であり、医療現場において迅速かつ簡便に抗癌剤を分解する手段が求められている。また、漂白剤である次亜塩素酸ナトリウムで抗癌剤を拭き取る手段が用いられているが、次亜塩素酸ナトリウムは抗癌剤分解作用が高くなく、抗癌剤を効果的に除去することができない。
【0007】
また、特許文献1には、光触媒水性組成物を用いた抗癌剤分解法が開示されている。この光触媒水性組成物は、光触媒活性な二酸化チタン粒子および界面活性剤を含み、分解対象物である抗癌剤上に噴霧して使用されるものである。しかし、この方法でも、抗癌剤を完全に除去することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−91114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、医療従事者および患者家族に対する抗癌剤曝露による健康被害を防止するため、医療現場において残留する抗癌剤を迅速かつ簡便に分解除去することができる方法および分解剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、次亜塩素酸を含む水溶液を抗癌剤が付着する対象物に噴霧したところ、短時間で抗癌剤がほとんど分解されることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、次亜塩素酸を含む、抗癌剤を分解するための分解剤を提供する。
【0012】
また、本発明は、次亜塩素酸が10ppm以上である、上記分解剤を提供する。
【0013】
また、本発明は、噴霧用容器に収容された、上記分解剤を提供する。
【0014】
また、本発明は、対象物または対象空間に残留した抗癌剤を分解する方法であって、次亜塩素酸を含む溶液を対象物または対象空間に噴霧して抗癌剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、噴霧して接触させる工程の後に、1分以上静置する工程をさらに含む、上記方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、噴霧して接触させ工程の後に、噴霧された溶液を拭き取る工程をさらに含む、上記方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、溶液に含まれる次亜塩素酸が10ppm以上である、上記方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、医療現場において残留する抗癌剤を迅速かつ簡便に分解除去することができる。したがって、本発明の分解剤および分解方法により、医療従事者および患者家族に対する抗癌剤曝露による健康被害を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、次亜塩素酸を含む、抗癌剤を分解するための分解剤を提供する。
【0020】
抗癌剤とは、悪性腫瘍(癌)の増殖を抑えることを目的とした化学療法剤をいう。本発明によって分解することが可能な抗癌剤の種類は、特に限定されない。本発明の分解剤は、特に限定されないが、たとえばシクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、チオテパ、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、プロカルバシン、テモゾロマイド、カルムスチン、ストレプトゾトシンおよびベンダムスチンなどのアルキル化薬、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンおよびネダプラチンなどの白金製剤、フルオロウラシル(5-FU)、フルシトシン、メソトレキセート、トリメトプリム、ピリメタミン、シタラビン、ゲムシタビン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、ペメトレキセド、ネララビン、エノシタビン、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、ペントスタチンなどの代謝拮抗剤、イリノテカン、ノギテカンおよびエトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害薬、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの微小管阻害薬ならびにアクラルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、ミトキサントロン、アムルビシンおよびゲムツズマブオゾガマイシンなどの抗生物質などの抗癌剤に使用することができる。
【0021】
抗癌剤に対する曝露は、たとえば抗癌剤の皮膚吸収、吸入および経口摂取、抗癌剤で汚染された環境表面や物質への接触、抗癌剤の使用時にバイアルからの採取に使用した針による針刺し事故、抗癌剤のバイアルの外側に付着した抗癌剤に対する接触、抗癌剤が投与された患者の排泄物、寝具および漏れた抗癌剤、抗癌剤を扱うエリア内での飲食等によって汚染された食物の摂取、並びに気化またはエアロゾル化した抗癌剤を吸い込むことにより起こる吸入曝露などが想定される。したがって、本発明の分解剤は、上記のような抗癌剤に対する曝露が想定される対象物または対象空間の抗癌剤を迅速かつ簡便に分解することができる。たとえば、本発明の分解剤は、病、処置室、看護師の作業台、点滴下、廃棄ボックス付近、手袋、患者の排泄物の袋、病室カーテン、排泄物のごみ箱、畜尿器のふた、尿カップ、ガウン、安全キャビネットの内部および排気口、PC付近、洋式トイレ便座、男子小便器、床、壁、棚、ドアノブ、ベッド、並びに患者のリネン一式などの対象物または対象空間の抗癌剤を迅速かつ簡便に分解することができる。
【0022】
次亜塩素酸は、塩素のオキソ酸の1つであり、HClOの組成式で表される。本発明の分解剤は、次亜塩素酸の水溶液などの任意の溶液の形態であってもよい。
【0023】
本発明の分解剤における次亜塩素酸の濃度は、特に限定されないが、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上、たとえば50ppmおよび100ppm以上であってもよい。また、本発明の分解剤における次亜塩素酸の濃度の上限は、特に限定されないが、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下および200ppm以下であってもよい。たとえば、本発明の分解剤は、20〜1000ppmの次亜塩素酸水溶液であることができる。
【0024】
本発明の分解剤のpHは、特に限定されないが、弱酸性であってもよい。本発明の分解剤は、たとえばpH3.5〜7.5、特に4.0〜7.0であれば次亜塩素酸が分子状で存在する割合を高くすることができる。一般に、水溶液中の次亜塩素酸濃度は、そのpHに応じて汎化することが知られている。次亜塩素酸水溶液は、pH4.0では塩素ガスを実質的に発生せず、pH3.5程度までは塩素ガスをしないと考えられている。したがって、本発明の分解剤のpHは、このようなpH以上のpHの範囲を含む。また、溶液中の次亜塩素酸濃度は、pH6.5付近で最高となることが知られている。したがって、本発明の分解剤のpHは、6.5付近であると最高の活性を有すると考えられる。また、溶液のpHが高いとアルカリ性の性質を有するため分解剤の使い勝手が悪い。したがって、本発明の分解剤のpHは、たとえば4.0〜7.0であることが好ましい。
【0025】
次亜塩素酸は、従来知られている任意の方法により製造することが可能である。たとえば、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩水溶液のpHを下げることによって次亜塩素酸の含有率が高い水溶液を製造することができる。具体的には、たとえば次亜塩素酸ナトリウム水溶液と塩酸とを混合することにより、次亜塩素酸水溶液を得ることができる。また、次亜塩素酸の製造方法として従来知られている電解法またはイオン交換により、pH3.5〜7.5の次亜塩素酸含有率の高い水溶液を製造することも可能である。
【0026】
また、次亜塩素酸を安全に製造する方法として、次亜塩素酸塩溶液を、塩素ガスが発生するpH以上、たとえばpH3.5〜7.5で緩衝作用を持つ弱酸性イオン交換体で処理する方法を使用することができる。たとえば、弱酸性イオン交換体を充填したカラムに次亜塩素酸塩溶液を通過させることにより、次亜塩素酸水溶液を生成することができる。次亜塩素酸塩溶液には、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムおよび次亜塩素酸カルシウムなどの溶液を使用することができる。弱酸性イオン交換体には、たとえばカルボン酸基(-COOH)を交換基として持つイオン交換体を使用することができ、たとえばメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂およびアクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂などの弱酸性イオン交換樹脂を使用することができる。たとえば、弱酸性イオン交換体には、アンバーライトIRC-76(オルガノ株式会社)を使用することができる。
【0027】
次亜塩素酸を上述した弱酸性イオン交換体で処理する方法で製造すれば、弱酸性イオン交換体で処理した後の溶液のpHがpH3.5〜7.5の範囲であり、塩素ガスを発生するおそれがなく、安全に製造することができる。
【0028】
本発明の分解剤は、対象物に付着した抗癌剤を分解するために、対象物に噴霧または塗布されてもよい。また、本発明の分解剤を含浸させた布、不織布および脱脂綿等を対象物に接触させてもよい。本発明の分解剤は、対象空間に滞留する抗癌剤を分解するために、対象空間に噴霧されてもよい。
【0029】
本発明の分解剤は、噴霧用容器に収容されてもよい。噴霧用容器は、対象物または対象空間に内容物を霧状に散布できる機能を有するものであれば、特に限定されない。噴霧用容器は、たとえば従来公知のスプレー容器、エアゾール容器、超音波式噴霧器および気化式噴霧器などであることができる。
【0030】
本発明の分解剤は、次亜塩素酸以外の他の成分をさらに含有してもよい。たとえば、本発明の分解剤は、その他の分解剤等をさらに含有することができる。
【0031】
また、本発明は、対象物または対象空間に残留した抗癌剤を分解する方法であって、次亜塩素酸を含む溶液を対象物または対象空間に噴霧して抗癌剤と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0032】
対象物は、対象物には、抗癌剤が付着して残留し得る任意の物、たとえば抗癌剤が投与される患者の病室および処置室などの床、壁、棚およびベッドなどの表面、並びに抗癌剤を調製する作業台の表面など、が含まれる。対象空間には、抗癌剤が空間中に滞留し得る任意の場所、たとえば病室、処置室および調剤室内の空間などが含まれる。
【0033】
次亜塩素酸を含む溶液には、上述した本発明の分解剤を使用することができる。
【0034】
本発明の方法における噴霧する工程では、従来公知の噴霧手段を使用することができる。たとえば、スプレー式、エアゾール式、超音波式および気化式などの噴霧手段を使用することができる。また、本発明の方法では、対象物の上に置かれた布、不織布または脱脂綿の上から溶液を噴霧してもよい。
【0035】
本発明の方法は、噴霧する工程の後に、1分以上、たとえば1〜5分間、静置する工程を含んでもよい。溶液を噴霧した後数分間静置(放置)することにより、抗癌剤をより確実に分解することができる。
【0036】
本発明の方法は、噴霧する工程の後、または噴霧する工程および静置する工程の後に、噴霧された溶液を拭き取る工程をさらに含んでもよい。溶液を噴霧した後に拭き取ることにより、抗癌剤をより確実に対象物から除去することができる。溶液を拭き取るためには、特に限定されないが、布、不織布および脱脂綿など、液体を拭き取ることができる素材の物を使用することができる。
【実施例】
【0037】
(実施例1 次亜塩素酸水溶液との混合による抗癌剤に対する効果)
分解剤として、200ppmの次亜塩素酸水溶液(エヴァ水200ppm:株式会社ハートフル九州)を使用した。対照には、精製水(超純水)を使用した。
【0038】
被験物質には、シクロホスファミドおよびフルオロウラシルを使用した。注射用エンドキサン100mgに生理食塩水5mlを加えて溶かした溶液することによってシクロホスファミド原液(20mg/mL)を調整した。この原液5mLを正確に量り、精製水を加え正確に200mlの希釈液とした(500μg/mL)。この希釈液5mLを正確に量り、精製水を加え正確に25mlとし、シクロホスファミド被検物質溶液とした(100μg/mL)。また、5-FU注250mgをフルオロウラシル原液(50mg/mL)とした。この原液5mLを正確に量り、精製水を加え正確に50mlの希釈液とした(5mg/mL)。この希釈液5mLを正確に量り、精製水を加え正確に250mLとし、フルオロウラシル被検物質溶液とした(100μg/mL)。
【0039】
分解剤(エヴァ水200ppm)9mlに各被験物質溶液(100μg/mL)1mlを加えて振り混ぜ、試料溶液を調製した。10分静置後にすみやかにLC/UVを使用して測定した。測定は、3回行った。また、対照として、精製水に各被験物質溶液を加えたものを同様に測定した。
【0040】
シクロホスファミドについての結果を表1に、フルオロウラシルについての結果を表2にそれぞれ示す。表1および表2に示すように、分解剤は、シクロホスファミドおよびフルオロウラシルに対し、3回とも分解率が100%であった
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
(実施例2 次亜塩素酸水溶液との混合による抗癌剤に対する効果)
分解剤として、200ppmの次亜塩素酸水溶液(エヴァ水200ppm:株式会社ハートフル九州)を使用した。対照には、精製水(超純水)を使用した。
【0044】
被験物質には、シクロホスファミドおよびフルオロウラシルを使用した。注射用エンドキサン100mgに生理食塩水5mlを加えて溶かしたものをシクロホスファミド原液(20mg/mL)とした。この原液2.5mLを正確に量り、精製水を加え正確に100mlの希釈液とした(500μg/mL)。この希釈液10mLを正確に量り、精製水を加え正確に50mlとし、シクロホスフアミド被検物質溶液とした(100μg/mL)。また、5-FU注250mgをフルオロウラシル原液(50mg/mL)とした。この原液2mLを正確に量り、精製水を加え正確に20mlとの希釈液とした(5mg/mL)。この希釈液5mLを正確に量り、精製水を加え正確に250mLとし、フルオロウラシル被検物質溶液とした(100μg/mL)。
【0045】
まず、プラスチック容器内にSUS304板(10cm×10cm)をセットした。次いで、被験物質溶液各1mlを中心から6cmの円内に均一に滴下した。滴下した溶液が乾燥したことを確認後、分解剤をSUS304板の中央、左および右に合計3回噴霧し、噴霧直後、1分放置後、3分放置後および5分放置後に各SUS304板に残留する被験物質をプラスチック容器内で抽出し、試料溶液とした。これらの操作を3回繰り返し、3種類の試料溶液を得た。また、対照として、分解剤の代わりに精製水を使用し、同様の操作を行った。
【0046】
LC/UVを使用して、得られた試料溶液を測定した。対照の結果を基準とし、分解剤による分解量(μg)および分解率(%)を算出した。シクロホスファミドについての結果を表3に、フルオロウラシルについての結果を表4にそれぞれ示す。表3および表4に示すように、分解剤噴霧直後から被験物質に対する分解効果が見られた。1分後、3分後にはさらに分解効果が見られ、5分放置後にはほとんどの被験物質が分解された。本発明の分解剤は、短時間で抗癌剤を迅速に分解できることが示された
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
(実施例3)
分解剤として、200ppmの次亜塩素酸水溶液(エヴァ水200ppm:株式会社ハートフル九州)を使用した。を使用した。
【0050】
被験物質には、シクロホスファミドおよびフルオロウラシルを使用した。注射用エンドキサン100mgに生理食塩水5mlを加えて溶かした溶液をシクロホスファミド原液(20mg/mL)とした。この原液2.5mLを正確に量り、精製水を加え正確に100mlの希釈液とした(500μg/mL)、この液10mLを正確に量り、精製水を加え正確に50mlとし、シクロホスフアミド被検物質溶液とした(100μg/mL)。また、5-FU注250mgをフルオロウラシル原液(50mg/mL)とした。この原液2mLを正確に量り、精製水を加え正確に20mlの希釈液とした(5mg/mL)。この希釈液5mLを正確に量り、精製水を加え正確に250mLとし、フルオロウラシル被検物質溶液とした(100μg/mL)。
【0051】
まず、プラスチック容器内にSUS304板(10cm×10cm)をセットした。次いで、被験物質溶液各1mlを中心から6cmの円内に均一に滴下した。滴下した溶液が乾燥したことを確認後、溶液飛散箇所上に、分解剤(ClariS3)を十分に浸したコットンをすき間なく置いた。コットンを置いた直後、1分放置後、3分放置後および5分放置後に、置いていたコットンで各SUS304板を拭き取り、残留する被験物質をプラスチック容器内で抽出し、試料溶液とした。これらの操作を3回繰り返し、3種類の試料溶液を得た。
【0052】
LC/UV法を使用して、得られた試料溶液を測定し、分解剤による抗癌剤の除去率(%)を算出した。シクロホスファミドについての結果を表5に、フルオロウラシルについての結果を表6に示す。表5および表6に示すように、分解剤を浸したコットンを置いた直後から高い除去効果が見られた。本発明の分解剤は、コットンに浸して拭き取ることにより、より簡便かつ確実に抗癌剤を除去できることが示された
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、医療現場において抗癌剤残留を防ぐための薬品および装置に好適に利用可能である。