特開2020-175401(P2020-175401A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-175401遮熱装置およびこれを備える溶接トーチ
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  • 特開2020175401-遮熱装置およびこれを備える溶接トーチ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-175401(P2020-175401A)
(43)【公開日】2020年10月29日
(54)【発明の名称】遮熱装置およびこれを備える溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20201002BHJP
   B23K 9/29 20060101ALI20201002BHJP
【FI】
   B23K9/32 Z
   B23K9/29 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-77622(P2019-77622)
(22)【出願日】2019年4月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 夏芽
(72)【発明者】
【氏名】宮原 寿朗
(72)【発明者】
【氏名】前田 朋彦
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LD13
4E001LH02
4E001NA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶接部からの熱の遮熱効果をより高めることができる遮熱装置およびこれを備える溶接トーチを提供する。
【解決手段】溶接トーチ300の適部に取り付けるための遮熱装置A1であって、溶接トーチ300に連結される支持部100と、支持部100に支持される遮熱部200と、備え、遮熱部200は、第1の遮熱板210と、第1の遮熱板210との間に断熱部250を介して配置される第2の遮熱板220と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチの適部に取り付けるための遮熱装置であって、
上記溶接トーチに連結される支持部と、
上記支持部に支持される遮熱部と、を備え、
上記遮熱部は、第1の遮熱板と、
上記第1の遮熱板との間に断熱部を介して配置される第2の遮熱板と、
を含むことを特徴とする、遮熱装置。
【請求項2】
上記断熱部は、上記第1の遮熱板と当該第1の遮熱板の厚み方向に離隔して位置する上記第2の遮熱板との間の空気層である、請求項1に記載の遮熱装置。
【請求項3】
上記第2の遮熱板は、上記第1の遮熱板に対して着脱可能に取り付けられている、請求項2に記載の遮熱装置。
【請求項4】
上記第2の遮熱板の上記第1の遮熱板と反対側に、それぞれ、上記第1の遮熱板側に隣接する遮熱板との間に断熱部を介して配置される1または複数の遮熱板をさらに含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の遮熱装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の遮熱装置が上記支持部を介して連結されていることを特徴とする、溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱装置およびこれを備える溶接トーチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、たとえばアーク溶接用の手動溶接トーチにおいて、アークによる高熱を発する溶接部からの輻射熱を遮熱して、高熱が作業者の手に伝播するのを防止する遮熱装置が設けられることがある。
【0003】
同文献に記載された遮熱装置は、溶接部からの輻射熱を遮蔽してこの輻射熱が溶接トーチのグリップ部に到達することを防止するために、1枚の遮熱板を溶接トーチの適部に支持して構成されている。
【0004】
ところで近年、溶接作業の効率化、高速化を実現するため、より大きな溶接電流により溶接作業が行われるに至っており、溶接部が発する熱の熱量も増大してきている。そのため、単に一枚の遮熱板を設けるだけの遮熱装置では十分な遮熱が行われないという課題が顕在化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭53−53438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、溶接部からの熱の遮熱効果をより高めることができる遮熱装置およびこれを備える溶接トーチを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の側面によって提供される遮熱装置は、溶接トーチの適部に取り付けるための遮熱装置であって、上記溶接トーチに連結される支持部と、上記支持部に支持される遮熱部と、を備え、上記遮熱部は、第1の遮熱板と、上記第1の遮熱板との間に断熱部を介して配置される第2の遮熱板と、を含むことを特徴とする。
【0009】
好ましい実施の形態では、上記断熱部は、上記第1の遮熱板と当該第1の遮熱板の厚み方向に離隔して位置する上記第2の遮熱板との間の空気層である。
【0010】
好ましい実施の形態では、上記第2の遮熱板は、上記第1の遮熱板に対して着脱可能に取り付けられている。
【0011】
好ましい実施の形態では、上記第2の遮熱板の上記第1の遮熱板と反対側に、それぞれ、上記第1の遮熱板側に隣接する遮熱板との間に断熱部を介して配置される1または複数の遮熱板をさらに含む。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される溶接トーチは、上記第1の側面に係る遮熱装置が上記支持部を介して連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の遮熱装置によれば、遮熱板を少なくとも2枚有するだけではなく、各遮熱板間に断熱部が介在しているので、溶接部からの高熱の輻射熱が溶接トーチのたとえば作業者が握持するハンドル部に伝播されることを効果的に防止することができ、大電流を用いて溶接作業をする場合においても、安全を確保することができる。
【0014】
また、断熱部を遮熱板間の空気層で構成し、第2の遮熱板を第1の遮熱板に対して着脱可能とすることにより、1枚の遮熱板を有する既存の遮熱装置を容易に本発明に係る遮熱装置とすることができる。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る遮熱装置を有する溶接トーチの一例の側面図であ る。
図2】本発明の一実施形態に係る遮熱装置の側面図である。
図3図2に示した遮熱装置の正面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る遮熱装置A1が取り付けられた溶接トーチ300の一例を示す。
【0019】
溶接トーチ300は、消耗電極式アーク溶接を手動で行うためのものであり、トーチ本体310と、ノズル320と、トーチ本体310の一部を覆うように設けられるハンドル部330とを有し、当該溶接トーチ300の後端はコンジットケーブル340に連結されている。トーチ本体310は、ハンドル部330の前方側において、下向きに湾曲してノズル320に至っている。図示しないワイヤ送給装置によりコンジットケーブル340内を送給されてくるワイヤ(図示略)は、トーチ本体310内で給電をうけつつ、ノズル320の先端から送出される。ノズル320には、不活性ガスからなるシールドガスが供給され、シールドガスは、ワイヤを取り囲むようにしてノズル320の先端から噴出させられる。ハンドル部330にはトリガスイッチ331が設けられ、ハンドル部330を握持する手でトリガスイッチ331を操作することにより、溶接トーチ300のオン・オフ、すなわち、ワイヤ送給およびシールドガス供給のオン・オフが制御される。
【0020】
遮熱装置A1は、支持部100と、遮熱部200とを備える。
【0021】
支持部100は、遮熱部200を支持してこれを溶接トーチ300の適部に連結するためのものである。本実施形態では、支持部100は、円管状のトーチ本体310におけるハンドル部330の前方に近接する部位に対してこれを抱くようにして連結する構成をとっている。すなわち、支持部100は、図3に表れているように、上面に円筒内面状の凹陥部111を有する台座部110と、凹陥部111の側部において台座部110に対して回動可能な押圧片120を設けて構成されている。支持部100は、凹陥部111にトーチ本体310を嵌め込み、トーチ本体310の上部を横断する姿勢に回動させた押圧片120を、台座部110にねじ込まれるボルト121の作用によりトーチ本体310に押し
付けることにより、トーチ本体310に対して連結される。なお、支持部100の台座部110および押圧片120は、たとえば金属または耐熱樹脂により形成することができる。
【0022】
遮熱部200は、第1の遮熱板210と、第2の遮熱220と、これら第1の遮熱板210と第2の遮熱板220との間に介在する断熱部250と、を有する。
【0023】
第1の遮熱板210は、下方に向かうにつれ幅が縮小する平板部211と、この平板部211の両側縁に隣接する左右の側板部212を有する。左右の側板部212は、平板部211に対して後方に向けて傾斜している。第1の遮熱板210は、図1に示されるように、トーチ本体310に対してやや後方に傾斜しつつ下方に延びる姿勢をとるように支持部100に対して連結され、ノズル320先端の前方の溶接部からハンドル部330に向かう輻射熱を遮蔽する。当該第1の遮熱板210の支持部100に対する連結は、図4に表れているように、平板部211の上部に設けた透孔213を通したねじ214を支持部100の適部にねじ込むなどして行うことができる。なお、この第1の遮熱板210は、たとえば金属または耐熱樹脂などで形成することができる。
【0024】
第2の遮熱板220は、本実施形態では、第1の遮熱板210と同じ形態を有するものが使用されている。すなわち、第2の遮熱板220についても、たとえば金属または耐熱樹脂により形成され、下方に向かうにつれ幅が縮小する平板部221と、この平板部221の両側縁に隣接する左右の側板部222を有する。左右の側板部222は、平板部221に対して後方に向けて傾斜している。
【0025】
第2の遮熱板220は、第1の遮熱板210に対し、その厚み方向前方に所定間隔をあけて平行に位置するように配置される。本実施形態では、第2の遮熱板220は、第1の遮熱板210に対し、着脱可能に取り付けられている。具体的には、図4に良く表れているように、第2の遮熱板220の上部に後方に延びる取り付けステー223を一体に設け、この取り付けステー223の後端から下方にのびるU字状弾性クリップ部224を形成し、このU字状弾性クリップ部224で第1の遮熱板210の上部を弾性的に挟み込むようにしている。
【0026】
上記のように第1の遮熱板210に対して第2の遮熱板220が所定間隔をあけて配置されることにより、第1の遮熱板210と第2の遮熱板220との間に、空気層からなる断熱部250が形成される。
【0027】
次に、上記構成の遮熱装置A1の作用について説明する
【0028】
第1の遮熱板210と第2の遮熱板220とを有する遮熱部200がノズル320の先端方の溶接部からハンドル部330に向かう輻射熱を遮蔽することができる。この遮熱装置A1は、第1の遮熱板210と第2の遮熱板220とが二重になって輻射熱を遮蔽するだけではなく、第1の遮熱板210と第2の遮熱板220との間に断熱部250が設けられているので、熱輻射を直接受ける第2の遮熱板220が加熱されても、その熱が断熱部250により吸収されるので、ハンドル部330により近い第1の遮熱板210の昇温が抑制され、これにより、溶接部からハンドル部330に向かう輻射熱の遮蔽効果がより高められる。
【0029】
本実施形態においては、第1の遮熱板210と第2の遮熱板220は、左右の側板部212,222が平板部211,221に対して後方に傾斜しているので、ハンドル部330を握持する作業者の手を前方ないし左右前方から取り囲むようになり、より効果的に作
業者の手を輻射熱から保護することができる。
【0030】
本実施形態では、断熱部250を第1の遮熱板210と第2の遮熱板220との間に介在する空気層により形成しているので、別途の断熱部材が不要であり、コスト的に有利である。
【0031】
さらに、本実施形態では、第2の遮熱板220は第1の遮熱板210に対して着脱可能に構成しているので、既存の遮熱装置が有する遮熱板を第1の遮熱板210とし、追加の遮熱板を第2の遮熱板220として設けることにより、容易に本発明に係る遮熱装置A1を構成することができる。
【0032】
もちろん、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0033】
第1の遮熱板210および第2の遮熱板220の形態は問われず、単なる平板とするほか、前方に凸に湾曲する球面または円筒面を有するものとすることもできる。
【0034】
実施形態では、第2の遮熱板220を第1の遮熱板210と同じ大きさとしているが発熱部により第2の遮熱板220を第1の遮熱板210より大型としてもよい。
【0035】
実施形態では、第2の遮熱板220を第1の遮熱板210に対して着脱可能とする手法として、弾性クリップ部224を第2の遮熱板220に設けているが、着脱可能とする手
法は、ねじを用いるなど、どのような手法であってもよい。
【0036】
実施形態では、断熱部250を第1の遮熱板210と第2の遮熱板220との間の空気層としているが、たとえば、石綿やガラス繊維による不織布の積層物など、種々の耐熱性断熱材を用いることができる。
【0037】
実施形態では、支持部100に連結される第1の遮熱板210に対して、ハンドル部330に対して反対側(溶接部側)に第2の遮熱板220を配置しているが、第2の遮熱板220を第1の遮熱板210に対して、ハンドル部330側に配置してもよい
【0038】
さらに、実施形態では、2枚の遮熱板(第1の遮熱板210および第2の遮熱板220)を有しているが、第2の遮熱板220の第1の遮熱板210と反対側に、それぞれ、上記第1の遮熱板側に隣接する遮熱板との間に断熱部を介して複数の遮熱板を配置するなどして、3枚以上の遮熱板を有するように構成し、遮熱効果をさらに高めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
A1:遮熱装置、100:支持部、200:遮熱部、210:第1の遮熱板、220:第2の遮熱板、250:断熱部
図1
図2
図3
図4