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特開2020-175792ダイカストホイールおよび鞍乗型車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-175792(P2020-175792A)
(43)【公開日】2020年10月29日
(54)【発明の名称】ダイカストホイールおよび鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B60B 1/08 20060101AFI20201002BHJP
【FI】
   B60B1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-79752(P2019-79752)
(22)【出願日】2019年4月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】岩村 文明
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マグネシウム合金製のダイカストホイールにおいて、ダンパ収納部をハブ部等と一体化した場合の鋳造品質の低下を抑制し、且つ、ダンパ収納部の強度の確保と十分な軽量化とを両立させる。
【解決手段】マグネシウム合金製のダイカストホイール(100)は、リム部と、ハブ部(120)と、複数のスポーク部とを備える。ハブ部は、内筒部(121)と、外筒部(122)と、連結部(123)と、ダンパ収納部(124)と、ダンパ収納部内に設けられた複数のリブ(140)とを含み、一体に形成されている。各リブは、連結部から車軸方向における外側に突出して径方向に延びる一対の第1縦壁部(141)と、車軸方向に交差する方向に広がり第1縦壁部を互いに接続する横壁部(143)と、横壁部から車軸方向における外側または内側に突出し、周方向に延びて第1縦壁部を互いに接続する少なくとも1つの第2縦壁部(142)とを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のリム部と、
車軸が挿通される内筒部と前記内筒部を包囲する外筒部とを含むハブ部と、
前記リム部と前記ハブ部とを連結する複数のスポーク部と、
を備えたマグネシウム合金製のダイカストホイールであって、
前記ハブ部は、
前記内筒部と前記外筒部とを連結する連結部と、
前記内筒部、前記外筒部および前記連結部によって規定され、複数のダンパが収納されるダンパ収納部と、
前記ダンパ収納部内に設けられた複数のリブであって、それぞれに前記複数のダンパのいずれかが係止される複数のリブとをさらに含み、
前記ハブ部は、一体に形成されており、
前記複数のリブのそれぞれは、
前記連結部から車軸方向における外側に突出する一対の第1縦壁部であって、所定の間隔で配置されて前記ダイカストホイールの径方向に延びる一対の第1縦壁部と、
車軸方向に交差する方向に広がる横壁部であって、前記一対の第1縦壁部を互いに接続する横壁部と、
前記横壁部から車軸方向における外側または内側に突出する少なくとも1つの第2縦壁部であって、前記ダイカストホイールの周方向に延び、前記一対の第1縦壁部を互いに接続する少なくとも1つの第2縦壁部と、
を有するダイカストホイール。
【請求項2】
前記複数のリブのそれぞれは、前記一対の第1縦壁部、前記少なくとも1つの第2縦壁部、前記横壁部、前記内筒部および前記外筒部によって規定される複数の凹部を有する請求項1に記載のダイカストホイール。
【請求項3】
前記ダンパ収納部の深さd1および前記複数の凹部の深さd2は、(0.1)・d1≦d2≦(0.7)・d1の関係を満足する請求項2に記載のダイカストホイール。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2縦壁部の厚さは、前記一対の第1縦壁部のそれぞれの厚さよりも大きい請求項1から3のいずれかに記載のダイカストホイール。
【請求項5】
前記横壁部の厚さは、前記一対の第1縦壁部のそれぞれの厚さよりも大きい請求項1から4のいずれかに記載のダイカストホイール。
【請求項6】
前記複数のリブの幅wは、15mm以上であり、且つ、前記ダンパ収納部の深さd1は、30mm以上である請求項1から5のいずれかに記載のダイカストホイール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のダイカストホイールを備えた鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストホイールに関し、特に、マグネシウム合金製のダイカストホイールに関する。また、本発明は、そのようなダイカストホイールを備えた鞍乗型車両にも関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト鋳造は、重力鋳造などと比べて製造時間を短くできる利点があるので、生産性の向上を期待できる。また、ダイカスト鋳造によってマグネシウム合金製のホイールを製造する技術が確立されつつある。材料としてマグネシウム合金を用いることにより、従来一般的に用いられてきた鋼やアルミニウム合金を用いる場合に比べてホイールの軽量化を図ることができる。ダイカスト鋳造により製造されるホイールは、「ダイカストホイール」と呼ばれることもある。マグネシウム合金製のダイカストホイールは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のダイカストホイールでは、リム部、ハブ部およびスポーク部が、マグネシウム合金からダイカスト鋳造により一体に形成されている。また、ハブダンパ(以下では単に「ダンパ」と呼ぶ)を収納するためのダンパハウジングが、ハブ部に複数のボルトによって取り付けられている。つまり、ダンパを収納する部分(ダンパハウジング)が、ハブ部等とは別体で形成されている。特許文献1には、ダンパハウジングの材料や製法については言及されていないが、ダンパハウジングは、例えばアルミニウム合金製の鍛造品であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−118684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、ダンパを収納する部分(以下では「ダンパ収納部」と呼ぶ)をハブ部等と一体に形成することにより、製造コストおよび部品点数の削減や、さらなる軽量化を図ることを検討した。その結果、ダンパ収納部をハブ部等と一体化すると、以下のような新たな問題が発生することがわかった。
【0006】
ダンパ収納部内には、ダンパを係止するためのリブが設けられる。ダンパ収納部に十分な強度を確保するためにリブの肉厚を大きくすると、リブとダンパ収納部の他の部分(例えば底部)との肉厚差が大きくなり、そのことに起因する引け割れが鋳造時に発生するおそれがある。マグネシウム合金は、その特性上、凝固速度が速いので、肉厚の異なる部位同士では、溶湯を注入してから溶湯が凝固するまでの時間の差が比較的大きい。そのため、凝固が遅い部位において引け割れが発生しやすい。
【0007】
一方、上述したような引け割れの発生を防止するために、ダンパ収納部の他の部分の肉厚をリブの肉厚に近付けると、重量の増加を招いてしまう。つまり、マグネシウム合金による軽量化の利点を十分に活かすことができない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、マグネシウム合金製のダイカストホイールにおいて、ダンパ収納部をハブ部等と一体化した場合の鋳造品質の低下を抑制し、且つ、ダンパ収納部の強度の確保と十分な軽量化とを両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によるダイカストホイールは、環状のリム部と、車軸が挿通される内筒部と前記内筒部を包囲する外筒部とを含むハブ部と、前記リム部と前記ハブ部とを連結する複数のスポーク部と、を備えたマグネシウム合金製のダイカストホイールであって、前記ハブ部は、前記内筒部と前記外筒部とを連結する連結部と、前記内筒部、前記外筒部および前記連結部によって規定され、複数のダンパが収納されるダンパ収納部と、前記ダンパ収納部内に設けられた複数のリブであって、それぞれに前記複数のダンパのいずれかが係止される複数のリブとをさらに含み、前記ハブ部は、一体に形成されており、前記複数のリブのそれぞれは、前記連結部から車軸方向における外側に突出する一対の第1縦壁部であって、所定の間隔で配置されて前記ダイカストホイールの径方向に延びる一対の第1縦壁部と、車軸方向に交差する方向に広がる横壁部であって、前記一対の第1縦壁部を互いに接続する横壁部と、前記横壁部から車軸方向における外側または内側に突出する少なくとも1つの第2縦壁部であって、前記ダイカストホイールの周方向に延び、前記一対の第1縦壁部を互いに接続する少なくとも1つの第2縦壁部と、を有する。
【0010】
ある実施形態において、前記複数のリブのそれぞれは、前記一対の第1縦壁部、前記少なくとも1つの第2縦壁部、前記横壁部、前記内筒部および前記外筒部によって規定される複数の凹部を有する。
【0011】
ある実施形態において、前記ダンパ収納部の深さd1および前記複数の凹部の深さd2は、(0.1)・d1≦d2≦(0.7)・d1の関係を満足する。
【0012】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの第2縦壁部の厚さは、前記一対の第1縦壁部のそれぞれの厚さよりも大きい。
【0013】
ある実施形態において、前記横壁部の厚さは、前記一対の第1縦壁部のそれぞれの厚さよりも大きい。
【0014】
ある実施形態において、前記複数のリブの幅wは、15mm以上であり、且つ、前記ダンパ収納部の深さd1は、30mm以上である。
【0015】
本発明の実施形態による鞍乗型車両は、上述したいずれかの構成を有するダイカストホイールを備える。
【0016】
本発明の実施形態によるマグネシウム合金製ダイカストホイールでは、ダンパ収納部を含むハブ部が一体に形成されているので、ダンパ収納部がハブ部と別体で形成されている場合に比べ、製造コストおよび部品点数の削減や軽量化を図ることができる。また、本発明の実施形態によるダイカストホイールでは、ダンパ収納部内に設けられるリブは、径方向に延びる一対の第1縦壁部と、車軸方向に交差する方向に広がり一対の第1縦壁部を互いに接続する横壁部とを有する。つまり、リブは、単純な中実構造ではなく、中実構造のリブに対して肉抜きがされた構造と言える。そのため、リブとダンパ収納部の他の部分との肉厚差を小さくすることができ、引け割れの発生を抑制することができる。さらに、リブは、周方向に延び一対の第1縦壁部を互いに接続する少なくとも1つの第2縦壁部を有しているので、リブの(ひいてはダンパ収納部の)強度を十分に確保することができる。また、引け割れの発生を抑制するためにダンパ収納部のリブ以外の部分の肉厚を大きくする必要がないので、十分な軽量化を実現することができる。このように、本発明の実施形態によれば、マグネシウム合金製のダイカストホイールにおいて、ダンパ収納部をハブ部等と一体化した場合の鋳造品質の低下を抑制し、且つ、ダンパ収納部の強度の確保と十分な軽量化とを両立させることができる。
【0017】
各リブは、リブの一対の第1縦壁部、少なくとも1つの第2縦壁部および横壁部と、ハブ部の内筒部および外筒部とによって規定される複数の凹部を有することが好ましい。言い換えると、リブの第2縦壁部は、一対の第1縦壁部の上端部以外の部分同士を接続していることが好ましい。ダンパ収納部の裏側(ダイカストホイールの外表面である)に対して、表面を検査する工程が行われることがある。リブが上述したような凹部を有しない場合、つまり、第2縦壁部が一対の第1縦壁部の上端部同士を接続している場合、表面検査用のツールが横壁部の裏側に届きにくいおそれがある。これに対し、リブが上述したような凹部を有する構成では、表面検査用のツールが横壁部の裏側に届きやすいので、鋳造後の外表面の検査を好適に行うことができる。
【0018】
ダンパ収納部の裏側表面の検査を好適に行う観点からは、凹部の深さd2は、大きいことが好ましく、具体的には、ダンパ収納部の深さd1の10%以上であることが好ましい。ただし、凹部の深さd2が大きすぎると、つまり、横壁部が第1縦壁部の下端部に近すぎると、金型の凹部140aに対応する部分の形状が細長くなりすぎ、ダイカスト鋳造を好適に行うことが難しくなるおそれがある。そのため、凹部の深さd2は、ダンパ収納部の深さd1の70%以下であることが好ましい。このように、ダンパ収納部の深さd1および凹部の深さd2は、(0.1)・d1≦d2≦(0.7)・d1の関係を満足することが好ましい。
【0019】
リブは、ダンパから周方向の応力を受ける。そのため、第2縦壁部の厚さは、第1縦壁部の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0020】
また、同じ理由から、横壁部の厚さは、第1縦壁部の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0021】
リブの幅wに特に制限はないが、リブの幅wが比較的大きい場合には、ダンパ収納部の容量を十分に確保する(つまり弾性体であるダンパの体積を十分に確保する)ために、ダンパ収納部の深さd1を大きくすることが好ましい。具体的には、リブの幅wが15mm以上である場合には、ダンパ収納部の深さd1は、30mm以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の実施形態によるダイカストホイールは、自動二輪車をはじめとする種々の鞍乗型車両に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によると、マグネシウム合金製のダイカストホイールにおいて、ダンパ収納部をハブ部等と一体化した場合の鋳造品質の低下を抑制し、且つ、ダンパ収納部の強度の確保と十分な軽量化とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態による自動二輪車1を模式的に示す左側面図である。
図2】自動二輪車1が備えるホイール(ダイカストホイール)100を模式的に示す左側面図である。
図3】ホイール100を模式的に示す右側面図である。
図4】ホイール100をその径方向から見た平面図である。
図5】ダンパ40を模式的に示す斜視図である。
図6】ハブ部120のダンパ収納部124内に複数のダンパ40が収納された状態を示す図である。
図7】ドリブンフランジ50およびドリブンスプロケット60をダンパ40と併せて示す図である。
図8】ハブ部120およびその近傍を左側から見た斜視図である。
図9図8中のIX−IX’線に沿った断面図である。
図10図8中のX−X’線に沿った断面図である。
図11】リブ140の他の構成の例を示す断面図である。
図12】リブ140の他の構成の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の説明では、本発明の実施形態による鞍乗型車両として、自動二輪車を例示する。
【0026】
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態による自動二輪車1の全体構成を説明する。図1は、自動二輪車1を模式的に示す左側面図である。以下の説明において、前、後、左、右、上および下は、自動二輪車1のシート19に着座した乗員から見た前、後、左、右、上および下を意味する。
【0027】
自動二輪車1は、図1に示すように、車体フレーム10、パワーユニット18、前輪26、後輪27および燃料タンク30を備えている。
【0028】
車体フレーム10は、ヘッドパイプ11、左右一対のタンクフレーム12、左右一対のリアフレーム13および左右一対のリアアーム14を含んでいる。ヘッドパイプ11は、自動二輪車1の前部に配置されている。一対のタンクフレーム12は、それぞれヘッドパイプ11から後方へ延びている。側面視において、タンクフレーム12のそれぞれは、下方に湾曲した部分を有している。一対のリアフレーム13は、それぞれ対応するタンクフレーム12の湾曲した部分に接続されている。一対のリアアーム14は、それぞれ対応するタンクフレーム12の後端に接続されている。
【0029】
ヘッドパイプ11に、ステアリングシャフト17が回転自在に挿入されている。ステアリングシャフト17の上部には、ハンドル16が接続されている。ステアリングシャフト17に、ブラケット(不図示)を介して左右一対のフロントフォーク15が取り付けられている。フロントフォーク15の下端には、前輪26が回転自在に支持されている。ハンドル16の操作に伴って、前輪26は左右方向に回転する。
【0030】
リアアーム14の後端には、後輪27が回転自在に支持されている。後輪27は、パワーユニット18の動力が伝達されることにより回転する。後輪27は、ホイール100と、ホイール100の外周(後述するリム部110)に装着されたタイヤ27aとを含む。
【0031】
燃料タンク30は、タンクフレーム12およびリアフレーム13に取り付けられている。燃料タンク30の後方には、シート19が配置される。
【0032】
ハンドル16の前方には、フロントカウル21が配置される。ハンドル16の後方には、カバー22が配置される。カバー22の下方には、左右一対のサイドカバー23が配置されている。サイドカバー23は、タンクフレーム12およびリアフレーム13に取り付けられている
次に、図2図3および図4を参照しながら、ホイール100の構成を説明する。図2および図3は、それぞれホイール100を模式的に示す左側面図および右側面図である。図4は、ホイール100をその径方向から見た平面図である。
【0033】
ホイール100は、マグネシウム合金を用いてダイカスト鋳造により製造されている。つまり、ホイール100は、マグネシウム合金製のダイカストホイールである。ホイール100の材料であるマグネシウム合金としては、公知の種々の組成のマグネシウム合金を用いることができる。ホイール100は、図2図3および図4に示すように、リム部110と、ハブ部120と、複数のスポーク部130とを備えている。
【0034】
リム部110は、環状であり、周方向に延びている。リム部110は、内周面110aおよび外周面110bを有する。リム部110の外周面110bに、タイヤ27aが装着される。
【0035】
ハブ部120は、車軸が挿通される内筒部121と、内筒部121を包囲する外筒部122とを含む。内筒部121は、略円筒状であり、内周面121aおよび外周面121bを有する。車軸は、内筒部121の内周面121aによって規定される孔(車軸挿通孔)に挿通される。外筒部122は、略円筒状であり、内周面122aおよび外周面122bを有する。
【0036】
ハブ部120は、さらに、内筒部121と外筒部122とを連結する連結部123と、複数のダンパ(不図示)が収納されるダンパ収納部124と、ダンパ収納部124内に設けられた複数のリブ140とを含む。ダンパ収納部124は、内筒部121、外筒部122および連結部123によって規定される空間である。図示している例では、ダンパ収納部124は、ホイール100において左側に位置している。複数のリブ140のそれぞれには、後述するように、複数のダンパのいずれかが係止される。図示している例では、ダンパ収納124内には、5つのリブ140が設けられており、ダンパ収納部124は、5つのリブ140によって5つの領域に分割されているといえる。なお、複数のリブ140の個数は、ここで例示する5に限定されない。
【0037】
本実施形態では、上述した構成を有するハブ部120は、一体に形成されている。つまり、本実施形態では、ハブ部120とは別体に形成されたダンパハウジングは取り付けられない。
【0038】
複数のスポーク部130は、リム部110とハブ部120とを連結する。より具体的には、複数のスポーク部130は、リム部110の内周面110aとハブ部120の外筒部122の外周面122bとを連結している。なお、図示している例では、ホイール100は10個のスポーク部130を有しているが、スポーク部130の個数は、10に限定されない。また、図示している例では、互いに隣接する2つのスポーク部130は、ハブ部120側で一体となっているが、スポーク部130はこのような構成に限定されない。
【0039】
図5に、ダンパ収納部124内に収納されるダンパ40を示す。ダンパ40は、第1弾性体41と、第1弾性体41よりも小さい第2弾性体42と、第1弾性体41と第2弾性体42とを連結するブリッジ部43とを含む。
【0040】
図6に、ダンパ収納部124内に複数のダンパ40が収納された状態を示す。図6に示すように、各ダンパ40は、そのブリッジ部43が対応するリブ140に跨るように配置されており、リブ140によって係止されている。図示している例では、ダンパ収納部124は、5つのリブ140によって5つの領域に分割されている。5つの領域のそれぞれ内には、あるダンパ40の第1弾性体41と、別のあるダンパ40の第2弾性体42とが位置している。
【0041】
自動二輪車1の後輪27において、ダンパ40が収納されたダンパ収納部124近傍には、図7に示すようなドリブンフランジ50およびドリブンスプロケット60が配置される。
【0042】
ドリブンフランジ50は、環状のフランジ本体部51と、フランジ本体部51から車軸方向における内側に突出した複数の凸部(爪部)52とを有する。ドリブンフランジ50は、各凸部52が互いに隣接する2つのダンパ40の間に位置するように配置される。ドリブンスプロケット60は、ドリブンフランジ50のフランジ本体部51の車軸方向における外側の側面に、例えばボルト(不図示)によって締結される。
【0043】
ここで、さらに図8図9および図10も参照しながら、ハブ部120が有する複数のリブ140の構成をより詳しく説明する。図8は、ハブ部120およびその近傍を左側から見た斜視図であり、図9および図10は、それぞれ図8中のIX−IX’線およびX−X’線に沿った断面図である。
【0044】
図8図9および図10に示すように、複数のリブ140のそれぞれは、単純な板状ではない。各リブ140は、一対の第1縦壁部141と、横壁部143と、少なくとも1つの第2縦壁部142とを有する。
【0045】
一対の第1縦壁部141は、図8および図10に示すように、連結部123から車軸方向における外側に突出している。また、一対の第1縦壁部141は、所定の間隔で配置されてホイール100の径方向に延びている。
【0046】
横壁部143は、図9および図10に示すように、車軸方向に交差(典型的には略直交)する方向に広がる。横壁部143は、一対の第1縦壁部141を互いに接続する。図示している例では、横壁部143は、一対の第1縦壁部141の車軸方向における中間部同士を接続している。
【0047】
少なくとも1つの第2縦壁部142は、ここでは、図8および図9に示すように、2つの第2縦壁部142である。各第2縦壁部142は、横壁部143から車軸方向における外側に突出している。また、各第2縦壁部142は、ホイール100の周方向に延びており、一対の第1縦壁部141を互いに接続する。
【0048】
複数のリブ140のそれぞれは、複数の凹部140aを有する。図示している例では、複数の凹部140aは、一対の第1縦壁部141、2つの第2縦壁部142、横壁部143、内筒部121および外筒部122によって規定される3つの凹部である。各凹部140aは、車軸方向における内側に凹んでいる。言い換えると、各凹部140aは、車軸方向における外側が開いている。
【0049】
上述したように、本実施形態のホイール(マグネシウム合金製ダイカストホイール)100では、ダンパ収納部124を含むハブ部120が一体に形成されているので、ダンパ収納部124をハブ部120と別体で形成されている場合に比べ、製造コストおよび部品点数の削減や軽量化を図ることができる。また、本実施形態のホイール100では、ダンパ収納部124内に設けられるリブ140は、径方向に延びる一対の第1縦壁部141と、車軸方向に交差する方向に広がり一対の第1縦壁部141を互いに接続する横壁部143とを有する。つまり、リブ140は、単純な中実構造ではなく、中実構造のリブに対して肉抜きがされた構造と言える。そのため、リブ140とダンパ収納部124の他の部分との肉厚差を小さくすることができ、引け割れの発生を抑制することができる。さらに、リブ140は、周方向に延び一対の第1縦壁部141を互いに接続する少なくとも1つの第2縦壁部142を有しているので、リブ140の(ひいてはダンパ収納部124の)強度を十分に確保することができる。また、引け割れの発生を抑制するためにダンパ収納部124のリブ140以外の部分の肉厚を大きくする必要がないので、十分な軽量化を実現することができる。
【0050】
このように、本発明の実施形態によれば、マグネシウム合金製のダイカストホイール100において、ダンパ収納部124をハブ部120等と一体化した場合の鋳造品質の低下を抑制し、且つ、ダンパ収納部124の強度の確保と十分な軽量化とを両立させることができる。
【0051】
なお、横壁部143の車軸方向における位置は、図10などに示した例に限定されない。図11および図12に、横壁部143の位置の他の例を示す。図11および図12に示す例では、横壁部143は、一対の第1縦壁部141の上端部同士を接続している。そのため、第2縦壁部142は、横壁部143から車軸方向における内側に突出している。図11および図12に示す構成を採用した場合でも、引け割れの発生を抑制しつつ、十分な軽量化を実現することができる。
【0052】
ただし、各リブ140は、図9および図10などに示すように、リブ140の一対の第1縦壁部141、少なくとも1つの第2縦壁部142および横壁部143と、ハブ部120の内筒部121および外筒部122とによって規定される複数の凹部140a(車軸方向における内側に凹んだ凹部140a)を有することが好ましい。言い換えると、リブ140の第2縦壁部142は、一対の第1縦壁部141の上端部以外の部分同士を接続していることが好ましい。以下、この理由を説明する。
【0053】
ダンパ収納部124の裏側(ホイール100の外表面である)に対して、表面を検査する工程が行われることがある。リブ140が上述したような凹部140aを有しない場合、つまり、図11および図12に示すように、第2縦壁部142が一対の第1縦壁部141の上端部同士を接続している場合、表面検査用のツールが横壁部143の裏側に届きにくいおそれがある。これに対し、リブ140が上述したような凹部140aを有する構成では、表面検査用のツールが横壁部143の裏側に届きやすいので、鋳造後の外表面の検査を好適に行うことができる。
【0054】
ここで、ダンパ収納部124の深さd1および凹部140aの深さd2の好ましい関係の例を説明する。図10に示すように、ダンパ収納部124の深さd1は、リブ140の上端(第1縦壁部141の上端)から連結部123の表面までの距離であり、凹部140aの深さd2は、リブ140の上端(第1縦壁部141の上端)から横壁部143の表面までの距離である。
【0055】
既に説明したことからわかるように、凹部140aの深さd2が大きいほど、表面検査用のツールが横壁部143の裏側に届きやすい。そのため、ダンパ収納部124の裏側表面の検査を好適に行う観点からは、凹部140aの深さd2は、大きいことが好ましく、具体的には、ダンパ収納部124の深さd1の10%以上であることが好ましい。ただし、凹部の深さd2が大きすぎると、つまり、横壁部143が第1縦壁部141の下端部に近すぎると、金型の凹部140aに対応する部分の形状が細長くなりすぎ、ダイカスト鋳造を好適に行うことが難しくなるおそれがある。そのため、凹部140aの深さd2は、ダンパ収納部124の深さd1の70%以下であることが好ましい。このように、ダンパ収納部124の深さd1および凹部140aの深さd2は、(0.1)・d1≦d2≦(0.7)・d1の関係を満足することが好ましい。
【0056】
続いて、第1縦壁部141の厚さt1(図10参照)、第2縦壁部142の厚さt2(図9参照)および横壁部143の厚さt3(図10参照)の好ましい関係の例を説明する。
【0057】
後輪27の回転に伴い、リブ140は、ダンパ40から周方向の応力を受ける。周方向からの応力に対し、第2縦壁部142および横壁部143は、第1縦壁部141を支持する役割を果たす。そのため、第2縦壁部142の厚さt2は、第1縦壁部141の厚さt1よりも大きいことが好ましく、横壁部143の厚さt3は、第1縦壁部141の厚さt1よりも大きいことが好ましい。第1縦壁部141の厚さt1は、例えば2mm以上8mm以下である。第2縦壁部142の厚さt2は、例えば2mm以上8mm以下である。横壁部143の厚さt3は、例えば2mm以上8mm以下である。
【0058】
続いて、リブ140の幅wの好ましい例を説明する。リブ140の幅wに特に制限はないが、リブ140の幅wが比較的大きい場合には、ダンパ収納部124の容量を十分に確保するため(つまり第1弾性体41および第2弾性体42を含むダンパ40の体積を十分に確保するため)に、ダンパ収納部124の深さd1を大きくすることが好ましい。具体的には、リブの幅wが15mm以上である場合には、ダンパ収納部124の深さd1は、30mm以上であることが好ましい。
【0059】
なお、これまでの説明では、各リブ140が2つの第2縦壁部142を有する構成を例示したが、第2縦壁部142の個数は2に限定されるものではない。各リブ140の第2縦壁部142の個数は、1であってもよいし、3以上であってもよい。
【0060】
また、本実施形態では、鞍乗型車両としてスポーツタイプの自動二輪車1を例示したが、本発明の実施形態によるダイカストホイールは、スポーツタイプ以外の自動二輪車に用いられてもよいし、三輪または四輪の鞍乗型車両に用いられてもよい。
【0061】
上述したように、本発明の実施形態によるダイカストホイール100は、環状のリム部110と、車軸が挿通される内筒部121と内筒部121を包囲する外筒部122とを含むハブ部120と、リム部110とハブ部120とを連結する複数のスポーク部130と、を備えたマグネシウム合金製のダイカストホイール100である。ハブ部120は、内筒部121と外筒部122とを連結する連結部123と、内筒部121、外筒部122および連結部123によって規定され、複数のダンパ40が収納されるダンパ収納部124と、ダンパ収納部124内に設けられた複数のリブ140であって、それぞれに複数のダンパ40のいずれかが係止される複数のリブ140とをさらに含む。ハブ部120は、一体に形成されている。複数のリブ140のそれぞれは、連結部123から車軸方向における外側に突出する一対の第1縦壁部141であって、所定の間隔で配置されてダイカストホイール100の径方向に延びる一対の第1縦壁部141と、車軸方向に交差する方向に広がる横壁部143であって、一対の第1縦壁部141を互いに接続する横壁部143と、横壁部143から車軸方向における外側または内側に突出する少なくとも1つの第2縦壁部142であって、ダイカストホイール100の周方向に延び、一対の第1縦壁部141を互いに接続する少なくとも1つの第2縦壁部142と、を有する。
【0062】
本発明の実施形態によるマグネシウム合金製ダイカストホイール100では、ダンパ収納部124を含むハブ部120が一体に形成されているので、ダンパ収納部124がハブ部120と別体で形成されている場合に比べ、製造コストおよび部品点数の削減や軽量化を図ることができる。また、本発明の実施形態によるダイカストホイール100では、ダンパ収納部124内に設けられるリブ140は、径方向に延びる一対の第1縦壁部141と、車軸方向に交差する方向に広がり一対の第1縦壁部141を互いに接続する横壁部143とを有する。つまり、リブ140は、単純な中実構造ではなく、中実構造のリブに対して肉抜きがされた構造と言える。そのため、リブ140とダンパ収納部124の他の部分との肉厚差を小さくすることができ、引け割れの発生を抑制することができる。さらに、リブ140は、周方向に延び一対の第1縦壁部141を互いに接続する少なくとも1つの第2縦壁部142を有しているので、リブ140の(ひいてはダンパ収納部124の)強度を十分に確保することができる。また、引け割れの発生を抑制するためにダンパ収納部124のリブ140以外の部分の肉厚を大きくする必要がないので、十分な軽量化を実現することができる。このように、本発明の実施形態によれば、マグネシウム合金製のダイカストホイール100において、ダンパ収納部124をハブ部120等と一体化した場合の鋳造品質の低下を抑制し、且つ、ダンパ収納部124の強度の確保と十分な軽量化とを両立させることができる。
【0063】
ある実施形態において、複数のリブ140のそれぞれは、一対の第1縦壁部141、少なくとも1つの第2縦壁部142、横壁部143、内筒部121および外筒部122によって規定される複数の凹部140aを有する。
【0064】
各リブ140は、リブ140の一対の第1縦壁部141、少なくとも1つの第2縦壁部142および横壁部143と、ハブ部120の内筒部121および外筒部122とによって規定される複数の凹部140aを有することが好ましい。言い換えると、リブ140の第2縦壁部142は、一対の第1縦壁部141の上端部以外の部分同士を接続していることが好ましい。ダンパ収納部124の裏側(ダイカストホイール100の外表面である)に対して、表面を検査する工程が行われることがある。リブ140が上述したような凹部140aを有しない場合、つまり、第2縦壁部142が一対の第1縦壁部141の上端部同士を接続している場合、表面検査用のツールが横壁部143の裏側に届きにくいおそれがある。これに対し、リブ140が上述したような凹部140aを有する構成では、表面検査用のツールが横壁部143の裏側に届きやすいので、鋳造後の外表面の検査を好適に行うことができる。
【0065】
ある実施形態において、ダンパ収納部124の深さd1および複数の凹部140aの深さd2は、(0.1)・d1≦d2≦(0.7)・d1の関係を満足する。
【0066】
ダンパ収納部124の裏側表面の検査を好適に行う観点からは、凹部140aの深さd2は、大きいことが好ましく、具体的には、ダンパ収納部124の深さd1の10%以上であることが好ましい。ただし、凹部140aの深さd2が大きすぎると、つまり、横壁部143が第1縦壁部141の下端部に近すぎると、金型の凹部140aに対応する部分の形状が細長くなりすぎ、ダイカスト鋳造を好適に行うことが難しくなるおそれがある。そのため、凹部140aの深さd2は、ダンパ収納部124の深さd1の70%以下であることが好ましい。このように、ダンパ収納部124の深さd1および凹部140aの深さd2は、(0.1)・d1≦d2≦(0.7)・d1の関係を満足することが好ましい。
【0067】
ある実施形態において、少なくとも1つの第2縦壁部142の厚さt2は、一対の第1縦壁部141のそれぞれの厚さt1よりも大きい。
【0068】
リブ140は、ダンパ40から周方向の応力を受ける。そのため、第2縦壁部142の厚さt2は、第1縦壁部141の厚さt1よりも大きいことが好ましい。
【0069】
ある実施形態において、横壁部143の厚さt3は、一対の第1縦壁部141のそれぞれの厚さt1よりも大きい。
【0070】
また、第2縦壁部142の厚さt2と同じ理由から、横壁部143の厚さt3は、第1縦壁部141の厚さt1よりも大きいことが好ましい。
【0071】
ある実施形態において、複数のリブ140の幅wは、15mm以上であり、且つ、ダンパ収納部124の深さd1は、30mm以上である。
【0072】
リブ140の幅wに特に制限はないが、リブ140の幅wが比較的大きい場合には、ダンパ収納部124の容量を十分に確保する(つまり弾性体であるダンパ40の体積を十分に確保する)ために、ダンパ収納部124の深さd1を大きくすることが好ましい。具体的には、リブ140の幅wが15mm以上である場合には、ダンパ収納部124の深さd1は、30mm以上であることが好ましい。
【0073】
本発明の実施形態による鞍乗型車両1は、上述したいずれかの構成を有するダイカストホイール100を備える。
【0074】
本発明の実施形態によるダイカストホイール100は、自動二輪車1をはじめとする種々の鞍乗型車両に好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の実施形態によると、マグネシウム合金製のダイカストホイールにおいて、ダンパ収納部をハブ部等と一体化した場合の鋳造品質の低下を抑制し、且つ、ダンパ収納部の強度の確保と十分な軽量化とを両立させることができる。
【0076】
本発明の実施形態によるダイカストホイールは、自動二輪車をはじめとする種々の鞍乗型車両に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0077】
1:自動二輪車、40:ダンパ、100:ホイール(ダイカストホイール)、110:リム部、120:ハブ部、121:内筒部、122:外筒部、123:連結部、124:ダンパ収納部、130:スポーク部、140:リブ、140a:凹部、141:第1縦壁部、142:第2縦壁部、143:横壁部
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図12