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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-176259(P2020-176259A)
(43)【公開日】2020年10月29日
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20201002BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20201002BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20201002BHJP
   C08G 69/00 20060101ALI20201002BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K3/08
   C08K3/013
   C08G69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-45439(P2020-45439)
(22)【出願日】2020年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2019-76995(P2019-76995)
(32)【優先日】2019年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】網谷 健
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001DC11
4J001EB08
4J001EC08
4J001GA13
4J001GA14
4J001GB02
4J001GB03
4J001GD07
4J001GD08
4J001JB18
4J001JB32
4J001JB33
4J001JC02
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL051
4J002DA018
4J002DA028
4J002DA038
4J002DA078
4J002DA086
4J002DA098
4J002DC008
4J002DE056
4J002DE188
4J002DE207
4J002DE227
4J002DE248
4J002DH008
4J002DH048
4J002DJ008
4J002DJ038
4J002DJ048
4J002DJ058
4J002DK008
4J002DL008
4J002FA048
4J002FD018
4J002FD066
4J002FD067
4J002FD200
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】耐熱エージング性及び耐酸性に優れるポリアミド組成物及び前記ポリアミド組成物を成形してなる成形品を提供する。
【解決手段】ポリアミド組成物は、ポリアミドと、元素鉄と、アルカリ金属塩と、を含有する。成形品は、前記ポリアミド組成物を成形してなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドと、元素鉄と、アルカリ金属塩と、を含有するポリアミド組成物。
【請求項2】
ISO188に準拠した耐熱老化試験において前記ポリアミド組成物からなる成形品を200℃で1500時間加熱する場合に、
前記成形品の灰分率をZ1とし、
前記耐熱老化試験において1500時間加熱後の前記成形品の総質量をW1とし、
前記耐熱老化試験において1500時間加熱後の前記成形品のヘキサフルオロイソプロパノールに対する不溶成分の質量をW2としたときに、下記式(1)の関係を満たす、請求項1に記載のポリアミド組成物。
(W2/W1×100)−Z1 > 10 (1)
【請求項3】
前記元素鉄の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下である、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記アルカリ金属塩の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対して0.01質量部以上2質量部以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属塩が炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
充填材を更に含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を成形してなる、成形品。
【請求項8】
自動車用材料部品である、請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
前記自動車用材料部品がターボダクトである、請求項8に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、強度、耐熱性、耐薬品性に優れ、比重に優れている。すなわち、ポリアミドは、金属よりも比重が小さいことから、従来から金属代替材料として、自動車の機構部品等に使用されている。特に、エンジン周辺の部材には、高温環境下での耐久性が要求されることから、種々の耐熱エージング性に優れるポリアミド組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。なお、本明細書中において、前記「耐熱エージング性」とは、成形品の形状を維持したまま融点以下での高温条件下で、大気雰囲気下中に長時間放置した際、実用上十分な機械的特性を保持でき、また色調の変化の少ない、いわゆる熱酸化に対する耐性のことをいう。
【0003】
近年、燃費向上のための手段の一つとして、自動車のダウンサイジングが行われている。これにより自動車エンジンルームの部品は高密度化し、エンジンルーム内の環境温度が高くなる傾向にある。また、その他にも、燃費向上のため、過給機によるエンジンの高出力化が行われており、これに伴い、エンジンルーム内の環境温度は増々高くなる傾向にある。
従って、従来よりも高温度条件下での、長期に亘る耐熱エージング性がポリアミドに求められている。具体的には、150℃以上230℃以下程度の高温条件下で長時間使用した際にも、実用上十分な機械的特性を保持でき、また色調の変化の少ない耐久材の要求が高まっている。
【0004】
ポリアミドの耐熱エージング性を向上させる技術として、ポリアミドに微粒元素鉄を添加する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、同様に、耐熱エージング性を向上させる技術として、ポリアミドにアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を添加する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013−501095号公報
【特許文献2】特表2013−521393号公報
【特許文献3】特表2006−528260号公報
【特許文献4】特開2016−153459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3、4に記載の技術によりポリアミド組成物からなる成形品の耐熱エージング性は向上するが、一定期間を超えると機械物性が著しく低下するため、より長期間にわたって耐熱エージング性が維持されることが望まれている。また、自動車のエアダクトの材料としてポリアミド組成物を用いた場合には、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)及びこれらの混合物からなる排気ガス凝集物に対する耐性(耐酸性)も求められるが、ポリアミド組成物の耐熱エージング性を向上させながら、耐酸性も向上させる技術は知られていない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐熱エージング性及び耐酸性に優れるポリアミド組成物及び前記ポリアミド組成物を成形してなる成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るポリアミド組成物は、ポリアミドと、元素鉄と、アルカリ金属塩と、を含有する。
上記第1態様に係るポリアミド組成物において、ISO188に準拠した耐熱老化試験において前記ポリアミド組成物からなる成形品を200℃で1500時間加熱する場合に、前記成形品の灰分率をZ1とし、前記耐熱老化試験において1500時間加熱後の前記成形品の総質量をW1とし、前記耐熱老化試験において1500時間加熱後の前記成形品のヘキサフルオロイソプロパノールに対する不溶成分の質量をW2としたときに、下記式(1)の関係を満たしてもよい。
【0009】
(W2/W1×100)−Z1 > 10 (1)
【0010】
前記元素鉄の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下であってもよい。
前記アルカリ金属塩の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対して0.01質量部以上2質量部以下であってもよい。
前記アルカリ金属塩が炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであってもよい。
上記第1態様に係るポリアミド組成物は、充填材を更に含有してもよい。
【0011】
本発明の第2態様に係る成形品は、上記第1態様に係るポリアミド組成物を成形してなる。
上記第2態様に係る成形品は、自動車用材料部品であってもよい。
前記自動車用材料部品がターボダクトであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記態様のポリアミド組成物によれば、耐熱エージング性及び耐酸性に優れるポリアミド組成物を提供することができる。上記態様の成形品は、耐熱エージング性及び耐酸性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0014】
なお、本明細書において、「ポリアミド」とは主鎖中にアミド(−NHCO−)基を有する重合体を意味する。
【0015】
≪ポリアミド組成物≫
本実施形態のポリアミド組成物は、ポリアミドと、元素鉄と、アルカリ金属塩と、を含有する。本実施形態のポリアミド組成物は、上記構成を有することで、ポリアミド組成物からなる成形品の特に表面に存在するポリアミド、元素鉄及びアルカリ金属塩が緻密な架橋構造を形成することができ、耐熱エージング性及び耐酸性に優れる成形品を得ることができる。
【0016】
また、本実施形態のポリアミド組成物からなる成形品を、ISO188に準拠した耐熱老化試験において200℃で1500時間加熱する場合に、ISO188に準拠した耐熱老化試験において前記ポリアミド組成物からなる成形品を200℃で1500時間加熱する場合に、前記成形品の灰分率をZ1とし、前記耐熱老化試験において1500時間加熱後の前記成形品の総質量をW1とし、前記耐熱老化試験において1500時間加熱後の前記成形品のヘキサフルオロイソプロパノール(以下、「HFIP」と略記する場合がある)に対する不溶成分の質量をW2としたときに、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
【0017】
(W2/W1×100)−Z1 > 10 (1)
【0018】
式(1)において、「(W2/W1×100)−Z1」は、耐熱老化試験後のポリアミド組成物からなる成形品の総質量に対する、耐熱老化試験(200℃、1500時間)後の前記成形品の不溶成分の質量の比から前記成形品の灰分率を引いた値(質量%)(以下、「不溶分率」と称する場合がある)である。不溶分率は、耐熱老化試験(200℃、1500時間)を行った際に前記成形品中で形成されて増加する、HFIPに対する不溶成分の質量の割合ということもできる。ポリアミド組成物からなる成形品の灰分率は、例えば、ポリアミド組成物からなる成形品を650℃で2時間加熱した後、その質量を測定し、加熱後の前記成形品の質量の、加熱前の前記成形品の質量に対する百分率を算出することで得られる。耐熱老化試験後のポリアミド組成物からなる成形品の総質量は、例えば、ポリアミド組成物からなる成形品を200℃で1500時間加熱する耐熱老化試験を行った後、当該成形品の質量を測定することで得られる。不溶成分の質量は、例えば、200℃で1500時間加熱する耐熱老化試験後のポリアミド組成物からなる成形品をHFIPに溶解させた後に、残存する成分の質量を測定することで得られる。不溶分率は、具体的には、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
不溶分率は10超であり、10超95以下が好ましく、20以上70以下がより好ましく、20以上40以下がさらに好ましい。
不溶分率が上記下限値以上であることで、耐熱エージング性及び耐酸性をより良好なものとすることができる。
なお、不溶成分は、200℃という高温環境下で、1500時間という長時間加熱された際に形成される、ポリアミド組成物からなる成形品の特に表面における緻密な架橋構造に由来するものと推察される。また、この不溶成分の存在により、成形品の特に表面において耐酸性がより向上するものと考えられる。
以下、本実施形態のポリアミド組成物の各構成成分について詳細に説明する。
【0019】
<(A)ポリアミド>
(A)ポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、(A−a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(A−b)ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(A−c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びに、これらの共重合物等が挙げられる。ポリアミドとしては、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(A−a)ポリアミドの製造に用いられるラクタムとしては、以下に制限されないが、例えば、ピバロラクタム、ピロリドン、カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタム(ラウロラクタム)等が挙げられる。
【0021】
(A−b)ポリアミドの製造に用いられるω−アミノカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸等が挙げられる。ω−アミノカルボン酸として具体的には、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。ω−アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。
また、上記ラクタム又は上記ω−アミノカルボン酸としては、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
【0022】
(A−c)ポリアミドの製造に用いられるジアミン(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、直鎖状の脂肪族ジアミン、分岐鎖状の脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
直鎖状の脂肪族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミンン等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンともいう)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン等が挙げられる。
脂環族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0023】
(A−c)ポリアミドの製造に用いられるジカルボン酸(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジグリコール酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。
上記した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種単独又は2種以上組み合わせて縮合させてもよい。
【0024】
なお、ポリアミドは、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸に由来する単位をさらに含んでもよい。3価以上の多価カルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(A)ポリアミドとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド116(ポリウンデカメチレンアジパミド)、ポリアミドTMHT(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド2Me−5T(ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、2Me−8T(ポリ2−メチルオクタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド2Me−5C(ポリ2−メチルペンタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド9C(ポリノナメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、2Me−8C(ポリ2−メチルオクタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミドPACM12(ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドジメチルPACM12(ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド12T(ポリドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド11C(ポリウンデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド12C(ポリドデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)等が挙げられる。
なお、上記「Me」は、メチル基を示す。
【0026】
中でも、(A)ポリアミドとしては、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、及び、これらを構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミドが好ましい。
また、(A)ポリアミドの構成としては、耐熱エージング性の観点から、(A)ポリアミドの総質量に対して、50質量%以上90質量%以下のポリアミド66と、10質量%以上50質量%以下のポリアミド66よりも融点が低いポリアミドとの組み合わせが特に好ましい。
【0027】
ポリアミドの末端は、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよい。
このような末端封止剤は、上記ジカルボン酸と上記ジアミンと、必要に応じて、上記ラクタム及び上記アミノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とから、ポリアミドを製造する際に、分子量調節剤としても添加することができる。
【0028】
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水フタル酸等が挙げられる。これら末端封止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、末端封止剤としては、モノカルボン酸又はモノアミンが好ましい。ポリアミドの末端が末端封止剤で封鎖されていることにより、熱安定性により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
【0029】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、ポリアミドの末端に存在し得るアミノ基との反応性を有するものであればよい。モノカルボン酸として具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等が挙げられる。
脂環族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等が挙げられる。
これらモノカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、ポリアミドの末端に存在し得るカルボキシ基との反応性を有するものであればよい。モノアミンとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミン、芳香族モノアミン等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。
脂環族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等が挙げられる。
これらモノアミンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
末端封止剤により末端封止されたポリアミドを含有するポリアミド組成物は、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性により優れる傾向にある。
【0032】
(A)ポリアミドの分子量は、特に制限されないが、硫酸相対粘度ηrで1.5以上3.5以下であることが好ましく、流動性と機械的特性のバランスにより優れるという観点から1.8以上3.0以下であることがより好ましく、2.0以上2.9以下がさらに好ましい。
なお、硫酸相対粘度ηrはJIS K6920に準拠して測定することができる。
【0033】
(A)ポリアミドの末端基濃度は、ポリアミド1kg当たりアミノ基末端濃度が10μmol/g以上100μmol/g以下であり、カルボキシ基末端濃度が40μmol/g以上150μmol/g以下であることが好ましく、アミノ基末端濃度が20μmol/g以上90μmol/g以下であり、カルボキシ基末端濃度が50μmol/g以上120μmol/g以下であることがより好ましい。
なお、アミノ基末端濃度及びカルボキシ基末端濃度は、後述する実施例に示す方法により測定することができる。
【0034】
(A)ポリアミドの融点の下限値は、特に限定されないが、200℃が好ましく、210℃がより好ましく、240℃がさらに好ましい。
(A)ポリアミドの融点が上記下限値以上であることで、本実施形態のポリアミド組成物の耐熱性がより向上する傾向にある。
一方、本実施形態において、(A)ポリアミドの融点の上限値は、特に限定されないが、340℃が好ましい。
(A)ポリアミドの融点が上記上限値以下であることで、本実施形態のポリアミド組成物の溶融加工中の熱分解や劣化をより効果的に抑制できる傾向にある。
(A)ポリアミドの融点は、JIS−K7121に準じて測定することができる。
測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製、Diamond DSC等を用いることができる。
【0035】
(A)ポリアミドのビカット軟化点は、250℃以下が好ましく、230℃以上240℃以下がより好ましい。
なお、ビカット軟化点は、JIS−K7206に準拠して測定することができる。
【0036】
(A)ポリアミドの含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、33質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上75質量%以下がより好ましい。
(A)ポリアミドの含有量が上記範囲であることで、本実施形態のポリアミド組成物は強度、耐熱性、耐薬品性、比重等により優れる傾向にある。
【0037】
<(B)熱安定剤>
本実施形態のポリアミド組成物は、熱安定剤として、(B1)元素鉄及び(B2)アルカリ金属塩を含有する。これにより、ポリアミド組成物からなる成形品の特に表面に存在するポリアミド、元素鉄及びアルカリ金属塩が緻密な架橋構造を形成することができ、耐熱エージング性及び耐酸性に優れる成形品を得ることができる。
【0038】
[(B1)元素鉄]
本実施形態のポリアミド組成物に含まれる(B1)元素鉄としては、重量平均粒度が450μm以下の小粒子の元素鉄であることが好ましい。
(B1)元素鉄の重量平均粒度の上限値は、450μmが好ましく、250μmがより好ましく、200μmがさらに好ましく、100μmが特に好ましく、50μmが最も好ましい。一方、(B1)元素鉄の重量平均粒度の下限値は、特別な限定はないが、1μmとすることができ、5μmとすることができ、10μmとすることができる。
重量平均粒度は、ASTM 規格D1921−89、方法Aに従って、Dmとして求められる。最大寸法と理解される元素鉄粒子の少なくとも50質量%の粒径は50μmが好ましく、250μmがより好ましく、200μmがさらに好ましく、100μmが特に好ましく、50μmが最も好ましい。また、元素鉄粒子の少なくとも75質量%、さらには90質量%の粒径が上記数値範囲を満足することがより好ましい。
【0039】
(B1)元素鉄の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。
(B1)元素鉄の含有量が上記下限値以上であることで、耐熱エージング性がより良好になる。
【0040】
(B1)元素鉄はマスターバッチに添加してもよい。マスターバッチに用いられるポリマーとしては、(A)ポリアミドに限らず他のポリマーであってもよく、融点が(A)ポリアミドよりも低いものが好ましい。
【0041】
[(B2)アルカリ金属塩]
アルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩として具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、等が挙げられる。これら炭酸塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ金属の炭酸水素塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。これら炭酸水素塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリの水酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、(B2)アルカリ金属塩としては、耐熱エージング性の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムが好ましく、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
【0042】
(B2)アルカリ金属塩の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下が好ましく、0.2質量部以上0.6質量部以下がより好ましい。
(B2)アルカリ金属塩の含有量が上記下限値以上であることで、耐熱エージング性及び成形品の外観がより良好になる。
【0043】
本実施形態のポリアミド組成物において、(B2)アルカリ金属塩は、当該(B2)アルカリ金属塩中、粒子径が1μm以上である(B2)アルカリ金属塩の粒子の含有量は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
粒子径が1μm以上の(B2)アルカリ金属塩の粒子の含有量が、(B2)アルカリ金属塩中、上記上限値以下であることで、本実施形態のポリアミド組成物においてより優れた耐熱エージング性が得られる。
ここで、(B2)アルカリ金属塩の粒子径とは、本実施形態のポリアミド組成物中に存在する(B2)アルカリ金属塩の粒子径である。
ポリアミド組成物中での(B2)アルカリ金属塩の粒子径は、例えば、ポリアミド組成物をHFIPに溶解させ、レーザー回折式粒度分布装置を用いることにより測定することができる。
【0044】
上記のように、(B2)アルカリ金属塩中、粒子径が1μm以上である(B2)アルカリ金属塩の粒子の含有量を上記上限値以下に抑制するためには、水分の少ない状態で(B2)アルカリ金属塩と、(A)ポリアミドとを混合することが有効である。
例えば、押出機を用いて(B2)アルカリ金属塩を、(A)ポリアミドに溶融混練する方法が挙げられる。
一方、(A)ポリアミドの縮重合工程で(B2)アルカリ金属塩を含有させると、(B2)アルカリ金属塩が大径化する虞がある。すなわち(A)ポリアミドの重合工程が完了し、(A)ポリアミドを取り出し、ポリアミド組成物の製造工程である溶融混練の段階で(A)ポリアミドと(B2)アルカリ金属塩とを混合することが好ましい。
(B2)アルカリ金属塩は、(A)ポリアミドに対して、重合時添加、溶融混練時の添加のいずれのタイミングで添加してもよい。
(B2)アルカリ金属塩の分散性の観点、及び上記のように、粒子径が1μm以上である(B2)アルカリ金属塩の粒子の含有量を上記上限値以下に抑制する観点から、溶融混練時の添加が好ましい。
【0045】
<(C)中和剤>
本実施形態のポリアミド組成物は、上記(B2)アルカリ金属塩を含む場合、本実施形態のポリアミド組成物がアルカリ性となることからpHを中和するために、(C)中和剤を更に含むことが好ましい。
【0046】
(C)中和剤としては、酸性化合物であればよく、特別な限定はないが、例えば、有機酸が挙げられる。有機酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、チオール基、エノール基を有する化合物等が挙げられる。これら有機酸は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
[カルボキシ基を有する化合物]
カルボキシ基を有する化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、安息香酸、シュウ酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1、3、5−テトラベンゼンテトラカルボン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩、グルコン酸等が挙げられる。これらカルボキシ基を有する化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、カルボキシ基を有する化合物としては、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1、3、5−テトラベンゼンテトラカルボン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩等の、一分子の中に2以上のカルボキシ基を有する化合物が好ましい。
【0048】
[スルホ基を有する化合物]
スルホ基を有する化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フルオロスルホン酸、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらスルホ基を有する化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
[ヒドロキシ基を有する化合物]
ヒドロキシ基を有する化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキサノール、デカノール、デカンジオール、ドデカノール、ドデカンジオール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ジ−トリメチロールプロパン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、フェノール、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらヒドロキシ基を有する化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
中でも、(C)中和剤としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましい。
【0051】
本実施形態のポリアミド組成物において、(A)ポリアミド100質量部に含まれる前記(C)中和剤の酸価に対する、前記(A)ポリアミド100質量部に含まれる前記(B2)アルカリ金属塩のアルカリ価の比(X)が、下記式(4)を満たすことが好ましい。
【0052】
0<X≦5 (4)
【0053】
式(4)において、0<X≦3がより好ましく、0<X≦2がさらに好ましく、0<X≦1が特に好ましい。
前記(A)ポリアミド100質量部に含まれる前記(C)中和剤の酸価は、JIS K0070に基づき定義される。
すなわち、酸価:試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。
前記(A)ポリアミド100質量部に含まれる前記(B2)アルカリ金属塩のアルカリ価は、JIS K0070に基づき定義される。
すなわち、アルカリ価:試料1gをアセチル化させたとき,水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。
また、上記において「(A)ポリアミド100質量部に含まれる」とは、本実施形態のポリアミド組成物中の(A)ポリアミドを100質量部としたとき、の意味であり、かかる場合の(B2)アルカリ金属塩の含有量と(C)中和剤の含有量とを考慮して、上記式(4)を算出する。
【0054】
さらに、本実施形態のポリアミド組成物において、前記(A)ポリアミド100質量部に含まれる前記(C)中和剤の酸価、及び、(A)ポリアミドのカルボキシ基末端の酸価の和に対する、前記(A)ポリアミド100質量部に含まれる前記(B2)アルカリ金属塩のアルカリ価の比(Y)が、下記式(5)を満たすことが好ましい。
【0055】
0<Y≦3 (5)
【0056】
式(5)において、0<Y≦2がより好ましく、0<Y≦1.5がさらに好ましく、0<Y≦1.2が特に好ましい。
また、上記において「(A)ポリアミド100質量部に含まれる」とは、本実施形態のポリアミド組成物中の(A)ポリアミドを100質量部としたとき、の意味であり、かかる場合の(B2)アルカリ金属塩の含有量と(C)中和剤の含有量とを考慮して、上記式(5)を算出する。
【0057】
(C)中和剤と、(A)ポリアミド中のカルボン酸又は末端封止剤との関連について以下に補足する。
(A)ポリアミドの原料モノマー又は末端封止剤として用いられるカルボン酸は、その目的からポリマー中に取り込まれている。具体的には、ポリマー鎖中で共有結合している。
一方で、本明細書中では、その目的からポリマーと共有結合していないカルボン酸官能基を有する有機酸成分を、(C)中和剤とする。(A)ポリアミドの原料モノマー又は末端封止剤として用いられるカルボン酸と、(C)中和剤として用いられるカルボン酸とが同一成分である場合、(A)ポリアミドの原料モノマー又は末端封止剤として用いられるカルボン酸は、ポリマー鎖中で共有結合しているカルボン酸を指し、(C)中和剤として用いられたカルボン酸はポリマーと共有結合していないカルボン酸を指す。
【0058】
(A)ポリアミドの原料モノマー又は末端封止剤としてカルボン酸を用いた場合、そのカルボン酸がポリマー鎖中で共有結合しているというのは当業者の一般認識である。
カルボン酸をポリマー鎖中で共有結合していない状態で、不純物としての微量含有量以上にポリアミド中に含有させることは意図的な操作であり、その目的をもって組成、製法を工夫する必要があることは、当業者の一般認識である。
すなわち、通常のポリアミド組成物において、原料としてカルボン酸を使用していても、本実施形態において意図している(C)中和剤としてのカルボン酸が意図せず含有されている、ということはないと考える。
上記の記載は、(A)ポリアミド中のカルボン酸又は末端封止剤として使用されうる有機酸、具体的には一分子中に1以上3以下のカルボン酸官能基を有する有機酸に関する。
一方、一分子中に4以上のカルボン酸官能基を有する有機酸分子は、その一部のカルボン酸官能基がポリアミドと共有結合していても、本実施形態における効果を奏する。
すなわち、一分子中に1以上3以下のカルボン酸官能基を有する有機酸は、その一部のカルボン酸官能基がポリアミドと共有結合すると本実施形態における効果を十分に奏することができないが、一分子中に4以上のカルボン酸官能基を有する有機酸は、その一部のカルボン酸官能基がポリアミドと共有結合しても、本実施形態における効果を奏する。
上記の理由として、本発明者らは、一分子中に4以上のカルボン酸官能基を有することにより、その一部がポリアミドと共有結合しても、残りの共有結合していないカルボン酸官能基が本実施形態における効果に寄与するためと推測している。
【0059】
上述した有機酸と(A)ポリアミドのポリマーとの共有結合の確認は、以下に限定するものではないが、例えば、ソックスレー抽出、核磁気共鳴(NMR)、IR等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0060】
(C)中和剤は、(A)ポリアミドに対して、重合時添加、溶融混練時の添加のいずれのタイミングで添加してもよいが、(C)中和剤は、溶融混練時に添加することが好ましい。
【0061】
<(D)充填材>
本実施形態のポリアミド組成物は、上記(A)ポリアミドに加えて、(D)充填材を更に含有してもよい。(D)充填材を含有することにより、靭性及び剛性等の機械物性により優れるポリアミド組成物とすることができる。
【0062】
(D)充填材としては、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、ゼオライト、ベーマイト、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、アパタイト等が挙げられる。
これら(D)充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、(D)充填材としては、剛性及び強度等の観点で、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、又は、アパタイトが好ましい。また、(D)充填材としては、ガラス繊維又は炭素繊維がより好ましく、ガラス繊維がさらに好ましい。
【0063】
(D)充填材がガラス繊維又は炭素繊維である場合、数平均繊維径(d)が3μm以上30μm以下であることが好ましい。また、重量平均繊維長(l)が100μm以上750μm以下であることが好ましい。さらに、重量平均繊維長(l)に対する数平均繊維径(d)のアスペクト比((l)/(d))が10以上100以下であるものが好ましい。上記構成のガラス繊維又は炭素繊維を用いることで、より高い特性を発現することができる。
また、(D)充填材がガラス繊維である場合、数平均繊維径(d)が3μm以上30μm以下であることがより好ましい。重量平均繊維長(l)が103μm以上500μm以下であることがより好ましい。さらに、アスペクト比((l)/(d))が3以上100以下であるものがより好ましい。
【0064】
(D)充填材の数平均繊維径及び重量平均繊維長は、以下の方法を用いて測定することができる。
まず、ポリアミド組成物の成形品を、ギ酸等の、ポリアミドが可溶な溶媒で溶解する。次いで、得られた不溶成分の中から、例えば100本以上の充填材を任意に選択する。次いで、充填材を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡等で観察することで求めることができる。
【0065】
ポリアミド組成物中の(D)充填材の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、1質量%以上80質量%以下が好ましく、10質量%以上70質量%以下がより好ましく、15質量%以上60質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上50質量%以下が特に好ましく、25質量%以上40質量%以下が最も好ましい。
(D)充填材の含有量が上記下限値以上であることにより、ポリアミド組成物の強度及び剛性等の機械物性がより向上する傾向にある。一方、(D)充填材の含有量が上記上限値以下であることにより、より成形性に優れるポリアミド組成物を得ることができる傾向にある。
特に、(D)充填材がガラス繊維であり、且つ、(D)充填材の含有量が、ポリアミド組成物の総質量に対して、上記範囲であることにより、ポリアミド組成物の強度及び剛性等の機械物性がさらに向上する傾向にある。
【0066】
<(E)その他添加剤>
本実施形態のポリアミド組成物は、上記(A)成分に加えて、本実施形態における効果を損なわない範囲で、必要に応じて、(E)その他添加剤を更に含有してもよい。
その他添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、紫外線吸収剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料、他の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
ここで、上記その他添加剤は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施形態の効果をほとんど損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記その他添加剤ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0067】
<ポリアミド組成物の製造方法>
本実施形態のポリアミド組成物は、(A)ポリアミドと、(B1)元素鉄、(B2)アルカリ金属塩及び(C)中和剤、並びに、必要に応じて、(D)充填材及び(E)その他添加剤と、を混合することにより製造することができる。
【0068】
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法においては、単軸又は多軸の押出機によって(A)ポリアミドを溶融させた状態で、(B1)元素鉄、(B2)アルカリ金属塩及び(C)中和剤を混練する方法、すなわち(B1)元素鉄、(B2)アルカリ金属塩及び(C)中和剤を、(A)ポリアミドに対して溶融混練により添加する方法を好ましく用いることができる。
【0069】
また、予め(B1)元素鉄及び(B2)アルカリ金属塩の水溶液と、(A)ポリアミドのペレットとをよく撹拌して混合して混合物を得た後に、前記混合物の水分を乾燥させることにより得られたポリアミドのペレットと、(C)中和剤とを、押出機の供給口から供給して溶融混練する方法を好適に用いることができる。
【0070】
さらに、本実施形態のポリアミド組成物の製造方法においては、(B1)元素鉄、(B2)アルカリ金属塩及び(C)中和剤をマスターバッチ化して添加する工程を有することが好ましい。
すなわち、最終的に目的とするポリアミド組成物中に添加する(B1)元素鉄、(B2)アルカリ金属塩及び(C)中和剤よりも高濃度の(B1)元素鉄、(B2)アルカリ金属塩及び(C)中和剤を(A)ポリアミドに溶融混練してペレット化した後に、その他の成分と溶融混練して最終的に目的とするポリアミド組成物を製造することが、耐熱エージング性の観点から好ましい。
【0071】
<ポリアミド組成物の特性>
[ポリアミド組成物の数平均分子量(Mn)]
本実施形態のポリアミド組成物の数平均分子量(Mn)の下限値は、機械物性及び耐熱エージング性の観点から、10000以上が好ましく、12000以上がより好ましく、15000以上がさらに好ましい。
なお、本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(
GPC)を用い、測定サンプルとしてポリアミド組成物を、溶媒としてHFIPを用いて求めることができ、実質的には、ポリアミド組成物中の(A)ポリアミド、又は(A)ポリアミドに共有結合している成分を含めた(A)ポリアミドの数平均分子量に相当する。
本実施形態のポリアミド組成物の数平均分子量(Mn)を上記範囲とするためには、(A)ポリアミドを溶融させた状態で、単軸又は多軸の押出機によって、上記(B)成分〜上記(E)成分を混練する方法を適用することが好ましい。
【0072】
≪成形品≫
本実施形態の成形品は、上記ポリアミド組成物を成形してなるものである。
本実施形態の成形品は、特に限定されるものではないが、例えば、上記ポリアミド組成物を射出成形することにより得られる。
本実施形態の成形品は、以下に限定されるものではないが、例えば、自動車用、機械工業用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用等の各種用途の材料部品として好適に用いることができる。特に、自動車用材料部品として好適に用いられる。また、本実施形態の成形品は、自動車用材料部品の中でも、ターボダクトに好適に用いられる。
本実施形態の成形品は、優れた耐熱エージング性及び耐酸性を有する。
【実施例】
【0073】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
以下、本実施例及び比較例に用いたポリアミド組成物の各構成成分について説明する。
【0075】
<構成成分>
[(A)ポリアミド]
A−1:ポリアミド66
A−2:ポリアミド6(宇部興産社製、型番:SF1013A)
【0076】
[(B)熱安定剤]
B1−1:元素鉄粒子含有マスターバッチ(ALBIS社製、商品名「SHELFPLUSO2 3302DP」)
B2−1:炭酸ナトリウム(トクヤマ(株)社製、商品名「ソーダ灰ライト」)
【0077】
[(C)中和剤]
C−1:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)(新日本理化(株)社製、商品名「リカシッドCHDA」)
【0078】
[(D)充填材]
C−1:ガラス繊維(GF)(日本電気硝子製、商品名「ECS03T275H」平均繊維径10μmφ、カット長3mm)
【0079】
<ポリアミドの製造>
ポリアミドA−1の製造方法について以下に詳細を説明する。なお、下記製造方法によって、得られたポリアミドA−1は、窒素気流中で乾燥し、水分率を約0.2質量%に調整してから、後述の実施例及び比較例におけるポリアミド組成物の原料として用いた。
【0080】
[合成例1]
(ポリアミドA−1(ポリアミド66)の合成)
50質量%のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩の水溶液30kgを調製し、十分撹拌した。当該ポリアミド66の原料の水溶液(以下、単に、「原料の水溶液」と称する場合がある)を、撹拌装置を有し、かつ、下部に抜出しノズルを有する70Lのオートクレーブ中に仕込んだ。その後、50℃の温度下で十分攪拌した。次いで、窒素で雰囲気置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力を、約1.77MPaに保持するよう、水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、さらに約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止した。下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷及びカッティングを行い、ペレットを得た。得られたポリアミドA−1のペレットの98%硫酸相対粘度は2.8であった。また、アミノ基末端濃度は46μmol/gであり、カルボキシ基末端濃度は72μmol/gであった。すなわち、アミノ基末端濃度/カルボキシ基末端濃度は0.64であった。また、融点は264℃であり、ビカット軟化点は238℃であった。
【0081】
なお、98%硫酸相対粘度は、JIS−K6920に従って測定した。
【0082】
アミノ基末端濃度は、中和滴定により以下のとおり測定した。
まず、得られたポリアミド3.0gを90質量%フェノール水溶液100mLに溶解した。次いで、得られた溶液を用い、0.025Nの塩酸で滴定を行い、アミノ基末端濃度(μmol/g)を求めた。終点はpH計の指示値から決定した。
【0083】
カルボキシ基末端濃度は、中和滴定により以下のとおり測定した。
まず、得られたポリアミド4.0gをベンジルアルコール50mLに溶解した。次いで、得られた溶液を用い、0.1NのNaOHで滴定を行い、カルボキシ基末端濃度(μmol/g)を求めた。終点はフェノールフタレイン指示薬の変色から決定した。
【0084】
融点は、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製のDiamond DSCを用いて測定した。
【0085】
ビカット軟化点は、JIS−K7206に従って測定した。
【0086】
<成形品の物性及び評価>
[成形品の製造]
まず、実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。次いで、水分量を調整した各ポリアミド組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E、日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO3167に準拠して、多目的試験片(A型)の成形片を成形した。具体的な射出成形時の条件としては、射出及び保圧の時間:25秒、冷却時間:15秒、金型温度:80℃、シリンダー温度:290℃に設定した。
【0087】
[物性1]
(不溶分率(%))
多目的試験片(A型)を2本用意し、一方は灰分率測定用、もう一方は熱老化試験用とし、下記の手順で不溶分率を算出した。
なお、多目的試験片(A型)の寸法は、全長170mm±0.02mm、タブ部間距離109.3mm、平行部の長さ80±0.02mm、肩部の半径24±0.01mm、端部の幅20±0.02mm、中央の平行部の幅10±0.02mm、厚さ4±0.02mmである。
【0088】
灰分率測定用の多目的試験片(A型)をニッパで裁断し、裁断片を約3g分集め、その質量(W0)を測定した。次に予め質量を測定した坩堝(W1a)の中に裁断片を入れた。この坩堝を電気炉(SK−3050F−SP、株式会社モトヤマ製)の中に入れ、650℃で2時間加熱した。2時間後、十分冷ました後に電気炉から坩堝を取り出し、坩堝の質量(W1b)を測定し、下記に示す式(2−1)で灰分率(質量%)(Z1)を算出した。
【0089】
Z1 = 100×(W1b−W1a)/W0 (2−1)
【0090】
次いで、熱老化試験用の多目的試験片(A型)をISO188に準拠したオーブンに入れて、200℃で1500時間加熱して、耐熱老化試験を行った。1500時間後にオーブンから多目的試験片(A型)を取り出し、23℃で24時間冷却させた。この多目的試験片(A型)の平行部より樹脂流動方向にミクロトームで20μm厚に切削し、切削したものを約20mg分集め、その質量(W1)を測定した。この切削片をHFIPに樹脂成分として1.0mg/mLとなるように添加し、溶解させた。次いで、溶解せずに残った不溶成分を取り出し、真空乾燥後にその質量(W2)を測定した。次いで、下記に示す式(2−2)を用いて、不溶分率(質量%)として算出した。
【0091】
不溶分率(質量%) = (W2/W1×100)−Z1 (2−2)
【0092】
[評価1]
(引張強度保持率)
各多目的試験片(A型)を用いて、ISO527に準拠して引張速度5mm/分で引張試験を行い、初期引張強度(MPa)を測定した(S0)。次いで、各多目的試験片(A型)をISO188に準拠したオーブンに入れて、200℃で4000時間加熱して、耐熱老化試験を行った。4000時間後にオーブンから各多目的試験片(A型)を取り出し、23℃で24時間冷却させた。次いで、耐熱老化試験後の各多目的試験片(A型)をISO527に準拠して引張速度5mm/分で上述した方法と同様の方法で引張試験を行い、耐熱老化試験後の引張強度(MPa)を測定した(S1)。次いで、下記に示す式(3)を用いて、引張強度保持率(%)を算出した。
【0093】
引張強度保持率(%) = S1/S0×100 (3)
【0094】
得られた引張強度保持率から、以下の評価基準に従い、引張強度保持率を評価した。
【0095】
(評価基準)
◎:引張強度保持率が95%以上
〇:引張強度保持率が80%以上95%未満
△:引張強度保持率が60%以上80%未満
×:引張強度保持率が60%未満
【0096】
[評価2]
(耐酸性)
各多目的試験片(A型)をISO188に準拠したオーブンに入れて、200℃で2000時間加熱して、耐熱老化試験を行った。2000時間後にオーブンから各多目的試験片(A型)を取り出し、23℃で24時間冷却させた。次いで、耐熱老化試験後の各多目的試験片(A型)を小片(10mm×10mm×40mm)裁断した。次いで、各多目的試験片(A型)の小片を硫酸に添加して、溶解させた。一定時間静置した後、硫酸から小片を取り出して、外観を観察した。以下の評価基準に従い、外観を評価した。
【0097】
(評価基準)
〇:小片の表面が溶解しなかった
×:小片の表面が溶解した
【0098】
[評価3]
(外観)
各多目的試験片(A型)をISO188に準拠したオーブンに入れて、250℃で60時間加熱して、耐熱老化試験を行った。60時間後にオーブンから各多目的試験片(A型)を取り出し、23℃で24時間冷却させた。次いで、耐熱老化試験後の各多目的試験片(A型)について外観を観察した。以下の評価基準に従い、耐酸性を評価した。
【0099】
(評価基準)
〇:膨れがなかった
△:わずかに膨れた
×:膨れた
【0100】
<ポリアミド組成物の製造>
[実施例1]
(ポリアミド組成物PA−1aの製造)
東芝機械社製、TEM35mm2軸押出機(設定温度:280℃、スクリュー回転数300rpm)を用いて、押出機最上流部に設けられたトップフィード口より、(A)ポリアミドA−1及び(A)ポリアミドA−2と、(B)熱安定剤B1−1(元素鉄粒子)、(B)熱安定剤B2−1(炭酸ナトリウム)及び(C)中和剤C−1(CHDA)を予めブレンドしたものと、を供給した。また、押出機下流側(トップフィード口より供給された樹脂が充分溶融している状態)のサイドフィード口より(D)充填材D−1(GF)を供給した。次いで、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして、ポリアミド組成物PA−1aのペレットを得た。各構成成分の含有量は表1に記載のとおりとした。
また、得られたポリアミド組成物PA−1aのペレットを用いて、上記方法により成形品を製造し、各種物性及び評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0101】
[実施例2〜6及び比較例1〜2]
(ポリアミド組成物PA−2a〜PA−6a及びPA−1b〜PA−2bの製造)
各構成成分の含有量を表1に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリアミド組成物PA−2a〜PA−6a及びPA−1b〜PA−2bを得た。
また、得られた各ポリアミド組成物PA−2a〜PA−6a及びPA−1b〜PA−2bを用いて、上記方法により成形品を製造し、各種物性及び評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1から、熱安定剤として元素鉄粒子及び炭酸ナトリウムを併用したポリアミド組成物PA−1a〜PA−6a(実施例1〜6)を用いた試験片では、引張強度保持率、耐酸性及び耐熱老化試験後の外観のいずれも良好であった。
一方、熱安定剤として元素鉄粒子又は炭酸ナトリウムのいずれかを単独で使用したポリアミド組成物PA−1b及びPA−2b(比較例1及び2)を用いた試験片では、引張強度保持率、耐酸性及び耐熱老化試験後の外観の全てが良好なものは得られなかった。また、引張強度保持率について、炭酸ナトリウムを単独で使用したポリアミド組成物(比較例2)を用いた試験片では、試験片が過度に劣化していたため、引張試験前に既に破壊が生じており、保持率が0%と特に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本実施形態のポリアミド組成物によれば、耐熱エージング性及び耐酸性に優れるポリアミド組成物を提供できる。本実施形態の成形品は、前記ポリアミド組成物を成形してなるものであり、例えば、自動車用部品材料等に好適に用いられる。