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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-176635(P2020-176635A)
(43)【公開日】2020年10月29日
(54)【発明の名称】支承装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20201002BHJP
   F16F 1/40 20060101ALI20201002BHJP
   F16B 31/04 20060101ALI20201002BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20201002BHJP
【FI】
   F16F15/04 E
   F16F15/04 P
   F16F1/40
   F16B31/04 Z
   E04H9/02 331A
   E04H9/02 331E
   E04H9/02 331D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-77031(P2019-77031)
(22)【出願日】2019年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】牛坂 伸也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139CA01
2E139CA21
2E139CB01
2E139CB04
2E139CB20
3J048AA03
3J048BA08
3J048BG02
3J048CB09
3J048CB30
3J048DA01
3J048EA38
3J059AB11
3J059AE01
3J059BA43
3J059BB01
3J059BC06
3J059BD01
3J059CA14
3J059CB03
3J059CC01
3J059EA15
3J059GA41
(57)【要約】
【課題】積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープを生じさせつつ、引抜抵抗力を有する支承装置を提案する。
【解決手段】支承装置100は、上部構造体B1の下側に配置された転がり支承部1と、転がり支承部1の下側に配置された積層ゴム支承部2と、を備え、積層ゴム支承部2は、転がり支承部1の下側に配置され、転がり支承部1が固定されたベースプレート21と、ベースプレート21の下側に配置された積層ゴム23と、積層ゴム23の水平方向の移動を規制する水平移動拘束部24と、ベースプレート21及び積層ゴム23を貫通し、下部構造体B1に固定されたアンカーボルト26と、ベースプレート21に固定され、アンカーボルト26に緊結された緊結機構3と、を有し、緊結機構3は、長期荷重により積層ゴム23が沈み込んだ際にアンカーボルト26との緊結状態を保持することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と下部構造体との間に配置される支承装置であって、
前記上部構造体の下側に配置された転がり支承部及び積層ゴム支承部のいずれか一方と、
前記転がり支承部及び前記積層ゴム支承部のいずれか一方の下側に配置された前記転がり支承部及び前記積層ゴム支承部の他方と、を備え、
該積層ゴム支承部は、
前記転がり支承部が固定されたベースプレートと、
該ベースプレートを挟んで前記転がり支承部側と反対側に配置された積層ゴムと、
該積層ゴムの水平方向の移動を規制する水平移動拘束部と、
前記ベースプレート及び前記積層ゴムを貫通し、前記上部構造体及び前記下部構造体のいずれか一方に固定されたアンカーボルトと、
前記ベースプレートに固定され、前記アンカーボルトに緊結された緊結機構と、を有し、
前記緊結機構は、長期荷重により前記積層ゴムが沈み込んだ際に前記アンカーボルトとの緊結状態を保持することを特徴とする支承装置。
【請求項2】
前記緊結機構は、ラチェット機構であることを特徴とする請求項1に記載の支承装置。
【請求項3】
前記ラチェット機構は、
前記アンカーボルトの上部の外周面に形成され、水平方向に沿って形成された嵌合面と、該嵌合面の外縁から上方に向かうにしたがって次第に径方向の内側に傾斜するように形成された傾斜面と、を有するラチェット歯部が鉛直方向に複数配置されたラチェット軸部と、
前記アンカーボルトの径方向の外側に配置され、水平方向に延びる軸部に回動可能に設けられ、一の前記ラチェット歯部の前記嵌合面に嵌合されたラチェット嵌合部と、
該ラチェット嵌合部を前記ラチェット歯部側に付勢するラチェット付勢部と、を有することを特徴とする請求項2に記載の支承装置。
【請求項4】
前記緊結機構は、カム機構であることを特徴とする請求項1に記載の支承装置。
【請求項5】
前記カム機構は、
前記アンカーボルトの上部の外周面に形成され、摩擦係数が高い高摩擦面と、
前記アンカーボルトの径方向の外側に配置され、水平方向に延びる軸部に回動可能に設けられたカム部と、
該カム部の外周面に形成され、前記高摩擦面を押圧する押圧面と、
該押圧面を前記高摩擦面側に付勢するカム付勢部と、を有し、
前記押圧面の上部と前記軸部との離間距離は、前記押圧面の下部と前記軸部との離間距離よりも長いことを特徴とする請求項4に記載の支承装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支承装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、免震層に設ける支承材として、積層ゴム支承が知られている。積層ゴム支承は、鉛直方向の圧縮荷重に対しては大きな支持力(抵抗力)を有しているものの、鉛直方向の引抜力に対しては圧縮荷重程の抵抗力を有さない。そこで、支承材に引抜力が作用する場合には、引抜力に抵抗する機能がある転がり支承を使用することがある(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−210121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図4(a)に示すように、柱101と基礎102との間の免震層103に、積層ゴム支承104と転がり支承105とを併用する場合、クリープ変形により支承104,105間で鉛直方向に変形差が生じてしまうという課題がある。これは、積層ゴム支承104の特性として長期的に作用する圧縮荷重で鉛直クリープが生じるのに対し、転がり支承105は鉛直クリープが生じないためである。図4(b)に示すように、竣工後100年経過すると、積層ゴム支承104にはh1=10mm程度の鉛直クリープ変形が生じて、積層ゴム支承104に支持された柱101側が下方に10mm程度沈み込んでしまう。これにより、梁106が強制変形を受けて、梁106にひび割れaなどの損傷が生じる可能性があるとともに、床面107が傾斜するなどして居住性に支障をきたす可能性がある。
【0005】
この問題を解決するために、図5に示すように、積層ゴム110を転がり支承105の下側または上側に設置する(図5では積層ゴム110を転がり支承105の下側に設置した構成を示している)とともに、積層ゴム110の水平方向の移動を拘束する拘束部111を設けた支承112が考えられる。この支承112では積層ゴム110により積層ゴム支承104と同程度の鉛直クリープが生じるため、建築物全体での鉛直変位を揃えることができる。しかしながら、図6に示すように、積層ゴム110には長期的に作用する圧縮荷重で鉛直クリープが生じるため、ベースプレート113を基礎102(図5参照)に固定しているアンカーボルト120を締め付けているナット121の下面121dとベースプレート113の上面113uとの間に隙間s1が生じてしまい、積層ゴム支承104の場合と同様に引抜力に対しては十分な抵抗力を期待できないという問題点が残ってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープを生じさせつつ、引抜抵抗力を有する支承装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る支承装置は、上部構造体と下部構造体との間に配置される支承装置であって、前記上部構造体の下側に配置された転がり支承部及び積層ゴム支承部のいずれか一方と、前記転がり支承部及び前記積層ゴム支承部のいずれか一方の下側に配置された前記転がり支承部及び前記積層ゴム支承部の他方と、を備え、該積層ゴム支承部は、前記転がり支承部が固定されたベースプレートと、該ベースプレートを挟んで前記転がり支承部側と反対側に配置された積層ゴムと、該積層ゴムの水平方向の移動を規制する水平移動拘束部と、前記ベースプレート及び前記積層ゴムを貫通し、前記上部構造体及び前記下部構造体のいずれか一方に固定されたアンカーボルトと、前記ベースプレートに固定され、前記アンカーボルトに緊結された緊結機構と、を有し、前記緊結機構は、長期荷重により前記積層ゴムが沈み込んだ際に前記アンカーボルトとの緊結状態を保持することを特徴とする。
【0008】
このように構成された支承装置では、積層ゴムが設けられているため、長期荷重により積層ゴムが沈み込んだ際には、他の積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープが生じる。また、積層ゴムは水平移動拘束部により水平移動が規制されているため、上部構造体に水平移動が生じても、積層ゴムに挿通されたアンカーボルトは損傷することがなく、アンカーボルトの上部構造体及び下部構造体のいずれか一方への固定状態が保持されている。また、長期荷重により積層ゴムが沈み込んだ際に、緊結機構はアンカーボルトとの緊結状態を保持するため、その後引抜力が作用すると、引抜力に抗することができる。
【0009】
また、本発明に係る支承装置では、前記緊結機構は、ラチェット機構であってもよい。
【0010】
このように構成された支承装置では、緊結機構を簡易な構成として、積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープを生じさせつつ、引抜抵抗力を有することができる。
【0011】
また、本発明に係る支承装置では、前記ラチェット機構は、前記アンカーボルトの上部の外周面に形成され、水平方向に沿って形成された嵌合面と、該嵌合面の外縁から上方に向かうにしたがって次第に径方向の内側に傾斜するように形成された傾斜面と、を有するラチェット歯部が鉛直方向に複数配置されたラチェット軸部と、前記アンカーボルトの径方向の外側に配置され、水平方向に延びる軸部に回動可能に設けられ、一の前記ラチェット歯部の前記嵌合面に嵌合されたラチェット嵌合部と、該ラチェット嵌合部を前記ラチェット歯部側に付勢するラチェット付勢部と、を有していてもよい。
【0012】
このように構成された支承装置では、ラチェット付勢部によりラチェット歯部側に付勢されたラチェット嵌合部が、アンカーボルトの外周面に形成された嵌合面に嵌合されている。長期荷重により積層ゴムが沈み込んだ際には、ラチェット嵌合部は、軸部回りに回動する。ラチェット嵌合部は、ラチェット歯部の下方に向かうにしたがって次第に径方向の外側に傾斜する傾斜面上を下方に摺動する。ラチェット嵌合部は、一つのラチェット歯部を乗り越えると、ラチェット付勢部の付勢力により径方向の内側に付勢され、その下のラチェット歯部に嵌合する。積層ゴムの沈み込み量に応じて、ラチェット嵌合部がラチェット歯部を乗り越えることを繰り返して、ラチェット嵌合部は所定の位置のラチェット歯部の嵌合面に嵌合する。このようにして、積層ゴムが沈み込む際に、ラチェット嵌合部及びラチェット付勢部は積層ゴムに追従して下方に変位し、ラチェット機構はアンカーボルトとの緊結状態を保持することができる。
また、支承装置に引抜力が作用して、積層ゴム支承部のベースプレートに固定されたラチェット機構が上方に変位しようとしても、ラチェット嵌合部がラチェット歯部の嵌合面に嵌合しているため、緊結手段は嵌合面により上方への移動を規制され、引抜力に抗することができる。
【0013】
また、本発明に係る支承装置では、前記緊結機構は、カム機構であってもよい。
【0014】
このように構成された支承装置では、緊結機構を簡易な構成として、積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープを生じさせつつ、引抜抵抗力を有することができる。
【0015】
また、本発明に係る支承装置では、前記カム機構は、前記アンカーボルトの上部の外周面に形成され、摩擦係数が高い高摩擦面と、前記アンカーボルトの径方向の外側に配置され、水平方向に延びる軸部に回動可能に設けられたカム部と、該カム部の外周面に形成され、前記高摩擦面を押圧する押圧面と、該押圧面を前記高摩擦面側に付勢するカム付勢部と、を有し、前記押圧面の上部と前記軸部との離間距離は、前記押圧面の下部と前記軸部との離間距離よりも長くてもよい。
【0016】
このように構成された支承装置では、カム付勢部により高摩擦面側に付勢されている押圧面が、アンカーボルトの外周面に形成された高摩擦面を押圧している。長期荷重により積層ゴムが沈み込んだ際には、カム部は、軸部回りに回動する。押圧面の下部の方が上部よりも軸部からの距離が短いため、押圧面とアンカーボルトの高摩擦面との接触面積が小さくなり、カム部は高摩擦面に接触しつつスムーズに下方に移動することができる。積層ゴムの沈み込みが停止すると、カム部の高摩擦面は、カム付勢部の付勢力により、アンカーボルトの高摩擦面側に向かって付勢され、高摩擦面における沈む込み前よりも下方の部分を押圧する。このようにして、積層ゴムが沈み込む際に、カム部及びカム付勢部は積層ゴムに追従して下方に変位し、カム機構はアンカーボルトとの緊結状態を保持している。
また、支承装置に引抜力が作用して、積層ゴム支承部のベースプレートに固定されたカム機構が上方に変位しようとして、カム部が回動しようとしても、押圧面の上部の方が下部よりも軸部からの距離が長いため、回動すると押圧面が高摩擦面を更に押圧することになる。よって、カム部の回動が規制され、カム部及びカム付勢部の上方への変位が規制され、引抜力に抗することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る支承装置によれば、積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープを生じさせつつ、引抜き抵抗力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態に係る支承装置の構成を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る支承装置の要部の拡大図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る支承装置の要部の拡大図である。
図4】従来の積層ゴム支承と転がり支承とを併用する構成において、(a)竣工直後を示し、(b)竣工後100年経過後の状態を示している。
図5図4の転がり支承の下部に積層ゴムを設置した構成において、竣工後100年経過後の状態を示している。
図6図5の積層ゴム支承の上側のベースプレートを基礎に固定するアンカーボルトの周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態による支承装置について、図1及び図2に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る支承装置の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る支承装置100は、上部構造体B1と、基礎(下部構造体)B2との間に配置されている。支承装置100は、転がり支承部1と、積層ゴム支承部2と、を備えている。
なお、上部構造体B1と基礎B2との間には、支承装置100と併用して他に図4に示すような積層ゴム支承104を設置してもよい。
【0020】
転がり支承部1は、上部構造体B1の下側に配置されている。転がり支承部1は、引抜き抵抗力を有し、公知の構成であり、例えば、下部フランジプレート11と、下部リニアレール12と、上部フランジプレート13と、上部リニアレール14と、リニアブロック15と、を有している。
【0021】
下部フランジプレート11は、積層ゴム支承部2の上側に固定されている。下部リニアレール12は、下部フランジプレート11の上面に設置されている。上部フランジプレート13は、上部構造体B1の下側に固定されている。上部リニアレール14は、上部フランジプレート13の下面に設置されている。上部リニアレール14は、下部リニアレール12の延在方向と直交する方向に延びている。リニアブロック15は、下部リニアレール12及び上部リニアレール14に摺動自在に係合している。
【0022】
積層ゴム支承部2は、転がり支承部1の下側に配置されている。積層ゴム支承部2は、上部プレート(ベースプレート)21と、下部プレート22と、積層ゴム23と、複数の水平移動拘束材(水平移動拘束部)24と、アンカーボルト26と、ラチェット機構(緊結機構)3と、を備えている。
【0023】
上部プレート21は、転がり支承部1の下側に配置されている。上部プレート21は、転がり支承部1の下部フランジプレート11に固定されている。上部プレート21は、平面視で例えば円形状または矩形状をなしている。
【0024】
下部プレート22は、基礎B2に上側に配置されている。下部プレート22は、アンカーボルト22a及びナット22bにより基礎B2に固定されている。下部プレート22は、平面視で例えば円形状または矩形状をなしている。下部プレート22は、上部プレート21よりも大きな形状をなしている。
【0025】
積層ゴム23は、上部プレート21と下部プレート22との間に配置されている。積層ゴム23は、ゴムと薄鋼板とを鉛直方向に積層した公知の構成のものであり、水平方向に弾性変形可能に構成されている。
【0026】
積層ゴム23は、例えば円柱状に形成され、軸線方向を鉛直方向に向けて配置されている。上部プレート21、下部プレート22及び積層ゴム23は、同軸上に配置されている。平面視で、積層ゴム23は、上部プレート21及び下部プレート22よりも小さい形状をなしている。
【0027】
水平移動拘束材24は、下部プレート22上に設けられている。水平移動拘束材24は、積層ゴム23の径方向の外側に配置されている。
【0028】
水平移動拘束材24の上部は、上部プレート21に水平方向にのみ支持され、鉛直方向には移動可能とされている。水平移動拘束材24の下部は、下部プレート22に固定されている。水平移動拘束材24は、平面視で例えば積層ゴム23の四方の四箇所等複数箇所に配置されている。なお、水平移動拘束材24は、積層ゴム23の径方向の外側に周方向にわたって配置されていてもよい。
【0029】
積層ゴム23が水平移動しようとすると水平移動拘束材24に当接するため、積層ゴム23は水平方向の移動が規制されている。
【0030】
上部プレート21、積層ゴム23及び下部プレート22には、それぞれ鉛直方向に貫通する挿通孔21h,23h,22hが形成されている。
【0031】
アンカーボルト26は、円柱状をなしていて、軸線方向を鉛直方向に向けて配置されている。アンカーボルト26は、上部プレート21、積層ゴム23及び下部プレート22の挿通孔21h,23h,22hに挿通されている。アンカーボルト26の下部26dは、基礎B2に固定されている。アンカーボルト26の上端部26uは、上部プレート21よりも上方に突出している。
【0032】
図2は、支承装置100の要部の拡大図である。
図2に示すように、ラチェット機構3は、取付体30と、ラチェット軸部40と、ラチェット嵌合部50と、ラチェットばね(ラチェット付勢部)61と、を有している。
【0033】
取付体30は、取付プレート31と、筐体部35と、を有している。
【0034】
取付プレート31は、上部プレート21上に設けられている。取付プレート31は、上部プレート21にボルト(不図示)及びナット31bにより固定されている。
【0035】
筐体部35は、周壁部36と、上壁部37と、を有している。
【0036】
周壁部36は、取付プレート31から立設されている。周壁部36は、アンカーボルト26の径方向の外側に配置されている。周壁部36は、アンカーボルト26の周方向の全周にわたって配置されていてもよいし、図2に示すように、アンカーボルト26を挟んで対向する二方向に配置されていてもよい。
【0037】
周壁部36には、径方向の内側に向かって突出する取付片36aが設けられている。取付片36aは、後述するラチェット嵌合部50と対応する箇所に設けられている。なお、取付片36aの下端部が取付プレート31に繋がっていて、取付片36aが取付プレート31から上方に延びるように設けられていてもよい。
【0038】
上壁部37は、周壁部36の上端部から径方向の内側に向かって延びている。
【0039】
取付プレート31及び上壁部37には、それぞれ鉛直方向に貫通する挿通孔31h,37hが形成されている。取付プレート31及び上壁部37の挿通孔31h,37hには、アンカーボルト26が挿通されている。
【0040】
ラチェット軸部40は、アンカーボルト26の上部の外周面に形成されている。ラチェット軸部40は、アンカーボルト26における筐体部35の内部に配置される部分に形成されている。ラチェット軸部40は、アンカーボルト26における上壁部37の挿通孔37hに配置される部分や、上部プレート21の挿通孔21hに配置される部分にまで形成されていてもよい。
【0041】
ラチェット軸部40は、複数のラチェット歯部41を有している。ラチェット歯部41は、アンカーボルト26の鉛直方向に沿って複数配置されている。
【0042】
各ラチェット歯部41は、軸部42と、嵌合面43と、傾斜面44と、を有している。
【0043】
軸部42は、アンカーボルト26における積層ゴム23に挿通されている部分よりも径が小さい円柱状をなしている。
【0044】
嵌合面43は、軸部42から径方向の外側に水平方向に突出している。嵌合面43は、平面視で環状をなしている。
【0045】
傾斜面44は、嵌合面43の外縁から上方に向かうにしたがって次第に径方向の内側に傾斜するように形成されている。
【0046】
ラチェット嵌合部50は、筐体部35の取付片36aに設けられている。取付片36aには、水平方向を向く回動軸部(軸部)42が設けられている。ラチェット嵌合部50は、回動軸部42回りに回動自在に設けられている。
【0047】
ラチェット嵌合部50は、ラチェット軸部40の径方向の外側に配置されている。ラチェット嵌合部50は、図2に示すように、ラチェット軸部40を挟んで両側の2箇所に設けられていてもよいし、1箇所または3箇所以上に設けられていてもよい。
【0048】
図2に示す状態で、ラチェット嵌合部50は、上方に向かうにしたがって次第に径方向の内側に向かうように延びている。ラチェット嵌合部50の径方向の内側の先端部は、第一面51と、第二面52と、摺動面53と、を有している。
【0049】
第一面51は、水平面に沿って配置されている。第一面51は、一つのラチェット歯部41の嵌合面43に当接している。
【0050】
第二面52は、第一面51の径方向の内側の端部から下方に向かって延びている。摺動面53は、第二面52の下端部から、下方に向かうにしたがって次第に径方向の外側に向かって傾斜している。
【0051】
ラチェットばね61は、筐体部35の内部において、取付片36aよりも上方に配置されている。ラチェットばね61は、径方向に沿って配置されている。ラチェットばね61の径方向の外側の端部は、筐体部35の周壁部36に固定されている。ラチェットばね61の径方向の内側の端部は、ラチェット嵌合部50の先端部の径方向の外側の部分に固定されている。
【0052】
本実施形態では、ラチェットばね61は、圧縮バネである。ラチェットばね61は、ラチェット嵌合部50の先端部側を径方向の内側、つまりラチェット歯部41側に向かって付勢している。このようにして、ラチェット嵌合部50の第一面51は、ラチェット軸部40の嵌合面43に嵌合している。
【0053】
このように構成された支承装置100では、積層ゴム23が設けられているため、長期荷重により積層ゴム23が沈み込んだ際には、他の積層ゴム支承(例えば図4に示す積層ゴム支承104。以下同じ。)と同程度の鉛直クリープが生じる。また、積層ゴム23は水平移動拘束材24により水平移動が規制されているため、上部構造体B1に水平移動が生じても、積層ゴム23に挿通されたアンカーボルト26は損傷することがなく、アンカーボルト26の基礎2Bへの固定状態が保持されている。また、長期荷重により積層ゴム23が沈み込んだ際に、ラチェット機構3はアンカーボルト26との緊結状態を保持するため、その後引抜力が作用すると、引抜力に抗することができる。
【0054】
また、支承装置100と積層ゴム支承とを併用して設置する際には、支承装置100は積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープ変形をするため、不同沈下を起こすことがない。また、支承装置100と積層ゴム支承とを併用して設置することで、免震周期を長周期化することができる。
【0055】
また、緊結機構を簡易な構成として、積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープを生じさせつつ、引抜抵抗力を有することができる。
【0056】
また、長期的に作用する圧縮荷重で鉛直クリープ(図2に示す矢印参照)が生じ、積層ゴム23が沈み込むと、積層ゴム支承部2の上部プレート21に固定された取付体30も共に下方に変位しようとする。ラチェット嵌合部50は、取付片36aに設けられた回動軸部42回りに、先端部を径方向の外側に向けるように回動する。ラチェット嵌合部50の摺動面53が、ラチェット軸部40の傾斜面44上を下方に摺動する。ラチェット嵌合部50は、一つのラチェット歯部41を乗り越えると、ラチェットばね61の付勢力により径方向の内側に付勢され、その下のラチェット歯部41に嵌合する。積層ゴム23の沈み込み量に応じて、ラチェット嵌合部50がラチェット歯部41を乗り越えることを繰り返して、積層ゴム23の沈み込みが停止すると、ラチェット嵌合部50の第一面51がアンカーボルト26の外周面に形成されたラチェット歯部41の嵌合面43に嵌合して静止する。このようにして、積層ゴム23が沈み込む際に、取付体30、ラチェット嵌合部50及びラチェットばね61は積層ゴム23に追従して下方に変位し、ラチェット機構3はアンカーボルト26との緊結状態(アンカーボルト26との間で緩みがない状態)を保持している。
【0057】
また、支承装置100に引抜力が作用して、積層ゴム支承部2の上部プレート21に固定された取付体30が上方に変位しようとしても、ラチェット嵌合部50の第一面51がラチェット歯部41の嵌合面43に嵌合しているため、取付体30、ラチェット嵌合部50及びラチェットばね61は嵌合面43により上方への変位が規制され、引抜力に抗することができる。
【0058】
また、転がり支承部1は積層ゴム支承部2の上部プレート21に固定され、積層ゴム支承部2はアンカーボルト26により基礎B2に固定されている。このように、転がり支承部1は、積層ゴム支承部2を介して基礎B2に固定されていても、引抜抵抗力を発揮することができる。
【0059】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態による支承装置について、主に図3に基づいて説明する。
以下に示す実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3は、本発明の第二実施形態に係る支承装置の要部の拡大図である。
図3に示すように、本実施形態に係る支承装置100Aの緊結機構は、カム機構7である。
【0060】
カム機構7は、取付体30と、高摩擦面70と、カム部80と、カムばね(カム付勢部)62と、を有している。
【0061】
高摩擦面70は、アンカーボルト26の上部の外周面に形成され、摩擦係数が高い面である。高摩擦面70の摩擦係数は、例えば0.45程度である。高摩擦面70は、アンカーボルト26における筐体部35の内部に配置される部分に形成されている。高摩擦面70は、アンカーボルト26における上壁部37の挿通孔37hに配置される部分や、上部プレート21の挿通孔21hに配置される部分にも形成されていてもよい。
【0062】
カム部80は、アンカーボルト26の高摩擦面70の径方向の外側に配置されている。カム部80は、筐体部35の取付片36aに設けられた回動軸部42回りに回動自在に設けられている。
【0063】
図3に示す状態で、カム部80の径方向の内側の外周面には、緩やかに膨らみ湾曲した押圧面81が形成されている。押圧面81は、上方且つ径方向の内側を向くように配置されている。押圧面81の下部81dよりも上部81uの方が、回動軸部42からの距離が長い。押圧面81の上端部81vと回動軸部42との離間距離は、回動軸部42とアンカーボルト26の高摩擦面70との離間距離(水平方向の距離)よりも長い。押圧面81の下部81dは、アンカーボルト26の高摩擦面70に当接している。押圧面81における高摩擦面70に当接している部分は、回動軸部42と同じ高さまたは回動軸部42よりも高い位置に配置されている。
【0064】
カムばね62は、筐体部35の内部において、取付片36aよりも下方に配置されている。カムばね62は、径方向に沿って配置されている。カムばね62の径方向の外側の端部は、筐体部35の周壁部36に固定されている。カムばね62の径方向の内側の端部は、カム部80の下端部の径方向の外側の部分(以下、ばね固定部と称する)80cに固定されている。
【0065】
本実施形態では、カムばね62は、引張バネである。カムばね62は、カム部80のばね固定部80cを径方向の外側に引っ張っている。これにより、カム部80におけるばね固定部80cよりも上方且つ径方向の内側に配置された押圧面81は、径方向の内側、つまりアンカーボルト26の高摩擦面70側に向かって付勢されている。
【0066】
このように構成された支承装置100では、積層ゴム23が設けられているため、長期荷重により積層ゴム23が沈み込んだ際には、他の積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープが生じる。また、積層ゴム23は水平移動拘束材24により水平移動が規制されているため、上部構造体B1に水平移動が生じても、積層ゴム23に挿通されたアンカーボルト26は損傷することがなく、アンカーボルト26の下部構造体への固定状態が保持されている。また、長期荷重により積層ゴム23が沈み込んだ際に、カム機構7はアンカーボルト26との緊結状態を保持するため、その後引抜力が作用すると、引抜力に抗することができる。
【0067】
また、緊結機構を簡易な構成として、積層ゴム支承と同程度の鉛直クリープを生じさせつつ、引抜抵抗力を有することができる。
【0068】
また、長期的に作用する圧縮荷重で鉛直クリープ(図3に示す矢印参照)が生じ、積層ゴム23が沈み込むと、積層ゴム支承部2の上部プレート21に固定された取付体30も共に下方に変位しようとする。カム部80は、取付片36aに設けられた回動軸部42回りに、押圧面81を上方に向けるように回動する。押圧面81の下部の方が上部よりも回動軸からの距離が短いため、押圧面81とアンカーボルト26の高摩擦面70との接触面積が小さくなり、取付体30に設けられたカム部80は高摩擦面70に接触しつつスムーズに下方に移動することができる。積層ゴム23の沈み込みが停止すると、カム部80の高摩擦面70は、カムばね62の付勢力により、アンカーボルト26の高摩擦面70側に向かって付勢され、高摩擦面70における沈む込み前よりも下方の部分を押圧する。このようにして、積層ゴム23が沈み込む際に、取付体30、カム部80及びカムばね62は積層ゴム23に追従して下方に変位し、カム機構7はアンカーボルト26との緊結状態を保持している。
【0069】
また、支承装置100に引抜力が作用して、積層ゴム支承部2の上部プレート21に固定された取付体30が上方に変位しようとして、カム部80が押圧面81を径方向の内側に向ける向きに回動しようとしても、押圧面81の上部の方が下部よりも回動軸からの距離が長いため、回動すると押圧面81が高摩擦面70を更に押圧することになる。押圧面81の上端部81vと回動軸部42との離間距離は、回動軸部42とアンカーボルト26の高摩擦面70との離間距離よりも長いため、カム部80の回動が規制され、取付体30、カム部80及びカムばね62の上方への変位が規制され、引抜力に抗することができる。
【0070】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0071】
例えば、上記に示す実施形態では、緊結機構としてラチェット機構3及びカム機構7を例に挙げて説明したが本発明はこれに限られず、ベースプレート(積層ゴム)の下方への変位に追従するとともに、引抜力に抗する構成であれば、他の構成であってもよい。
【0072】
また、上記に示す実施形態の他に、上部構造体の下側に積層ゴム支承部が設けられ、積層ゴム支承部の下側に転がり支承部が設けられていてもよい。積層ゴム支承部では、転がり支承部が固定されたベースプレートの上側に積層ゴムが配置されている。ベースプレート及び積層ゴムを貫通したアンカーボルトは上部構造体に固定されている。この場合において、ベースプレートに固定された緊結機構が、長期荷重により積層ゴムが沈み込んだ際にアンカーボルトとの緊結状態を保持するように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0073】
1…転がり支承部
2…積層ゴム支承部
3…ラチェット機構(緊結機構)
7…カム機構(緊結機構)
21…上部プレート(ベースプレート)
22…下部プレート
23…積層ゴム
24…水平移動拘束材(水平移動拘束部)
26…アンカーボルト
30…取付体
40…ラチェット軸部
41…ラチェット歯部
42…回動軸部(軸部)
43…嵌合面
44…傾斜面
50…ラチェット嵌合部
51…第一面
53…摺動面
61…ラチェットばね(ラチェット付勢部)
62…カムばね(カム付勢部)
70…高摩擦面
80…カム部
81…押圧面
100…支承装置
B1…上部構造体
B2…基礎(下部構造体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6