【解決手段】光源から出射するレーザ光を外部に照射し、当該照射されたレーザ光が外部に存在する対象物により反射された反射光を受光することで当該対象物を検知する検知装置であって、反射光が通過する光学素子と、光学素子を通過した光を変更させるために光学素子を制御する制御部と、一の方向に偏向された光を受光する受光部と、外部の対象物までの距離に関する距離情報を取得する取得部と、を備える。制御部は、距離情報に基づく時間範囲において、光学素子を通過する光が一の方向に偏向され、時間範囲以外において、光学素子を通過する光が一の方向とは異なる他の方向に偏向されるように光学素子を制御する。
  光源から出射するレーザ光を外部に照射し、当該照射されたレーザ光が前記外部に存在する対象物により反射された反射光を受光することで当該対象物を検知する検知装置であって、
  前記反射光が通過する光学素子と、
  前記光学素子を通過する光を偏向させるために、前記光学素子を制御する制御部と、
  一の方向に偏向された光を受光する受光部と、
  前記外部の対象物までの距離に関する距離情報を取得する取得部と、
  を備え、
  前記制御部は、前記距離情報に基づく時間範囲において、前記光学素子を通過する光が前記一の方向に偏向され、前記時間範囲以外において、前記光学素子を通過する光が前記一の方向とは異なる他の方向に偏向されるように前記光学素子を制御する、ことを特徴とする検知装置。
  前記取得部は、前記距離情報を取得するために前記レーザ光を走査する第1の走査を行う測距装置による測距結果に基づき、前記距離情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の検知装置。
  前記制御部は、前記第1の走査において第1の閾値以上の強度の前記反射光を受光した受光タイミングの情報を取得し、前記第2の走査において前記受光タイミングに対応するタイミングで前記反射光を前記一の方向に偏向させるように前記光学素子を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の検知装置。
  前記制御部は、前記第1の走査において第2の閾値以上の強度の前記反射光を受光した受光タイミングの情報を取得し、前記第2の走査において前記受光タイミングに対応するタイミングで前記反射光を前記他の方向に偏向させるように前記光学素子を制御することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1に記載の検知装置。
  レーザ光を外部に照射する照射部と、入射した光を通過させる光学素子と、前記光学素子を通過した光の偏向方向を制御する制御部と、前記光学素子を通過して1の方向に偏向された光を受光する受光部と、前記外部の対象物までの距離に関する距離情報を取得する取得部と、を有する検知装置が実行する検知方法であって、
  前記照射部が、光源から出射された前記レーザ光を方向可変に走査するように照射するステップと、
  前記光学素子が、外部に存在する対象物により反射された前記レーザ光を反射光として通過させるステップと、
  前記受光部が、前記光学素子を通過して一の方向に偏向された前記反射光を受光するステップと、
  前記制御部が、前記対象物の位置に関する情報を取得するステップと、
  前記制御部が、前記情報に基づいて前記反射光の進行方向を変更させるように前記光学素子を制御するステップと、
  を含むことを特徴とする検知方法。
  レーザ光を外部に照射する照射部と、入射した光を通過させる光学素子と、前記光学素子を通過した光の偏向方向を制御する制御部と、前記光学素子を通過して1の方向に偏向された光を受光する受光部と、前記外部の対象物までの距離に関する距離情報を取得する取得部と、を有する検知装置に搭載されたコンピュータに、
  光源から出射された前記レーザ光を方向可変に走査するように前記照射部を制御するステップと、
  外部に存在する対象物の位置に関する情報を取得するステップと、
  前記情報に基づいて前記対象物により反射された前記レーザ光の進行方向を変更させるように前記光学素子を制御するステップと、
  を実行させることを特徴とするプログラム。
  レーザ光を外部に照射する照射部と、入射した光を通過させる光学素子と、前記光学素子を通過した光の偏向方向を制御する制御部と、前記光学素子を通過して1の方向に偏向された光を受光する受光部と、前記外部の対象物までの距離に関する距離情報を取得する取得部と、を有する検知装置に搭載されたコンピュータに、
  光源から出射された前記レーザ光を方向可変に走査するように前記照射部を制御するステップと、
  外部に存在する対象物の位置に関する情報を取得するステップと、
  前記情報に基づいて前記対象物により反射された前記レーザ光の進行方向を変更させるように前記光学素子を制御するステップと、
  を実行させるプログラムを記録することを特徴とする記録媒体。
  光源から出射するレーザ光を外部に照射し、当該照射されたレーザ光が前記外部に存在する対象物により反射された反射光を受光することで当該対象物を検知する検知装置であって、
  前記反射光を受光する受光部と、
  前記受光部に入射する前記反射光を遮蔽可能な光遮蔽部と、
  前記光遮蔽部を制御する制御部と、
  前記外部の対象物までの距離に関する距離情報を取得する取得部と、
  を備え、
  前記制御部は、前記距離情報に基づく時間範囲において前記反射光が前記光遮蔽部を通過し、前記時間範囲以外において前記反射光が前記遮蔽部により遮蔽されるように前記光遮蔽部を制御する、ことを特徴とする検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
  以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
 
【実施例1】
【0015】
  図1は、本実施例の測距装置100の構成を示す概略構成図である。測距装置100は、光学的に対象物までの距離を測定するLiDAR(Light Detection and Ranging)等の光測距装置から構成され、当該対象物の位置を検知する検知装置である。測距装置100は、測距領域RAに向けてレーザ光を照射し、測距領域RA内の対象物(図示せず)によって反射されたレーザ光(以下、戻り光と称する)を受光することにより、対象物までの距離を測定する。
【0016】
  本実施例の測距装置100は、同軸光学系方式の測距装置として構成されている。測距装置100は、レーザ出射部11、ミラー部12、望遠レンズ13、穴あきミラー14、集光レンズ15、光偏向器16、フォトダイオード17及びレーザビーム吸収体ダンパ18(以下ダンパ18)を含む。
【0017】
  レーザ出射部11は、パルス状のレーザ光(すなわち、パルス光)を出射する光源であり、例えばレーザダイオードから構成されている。以下の説明では、レーザ出射部11から出射されたパルス状のレーザ光を出射光LAと称する。
【0018】
  ミラー部12は、レーザ出射部11からの出射光LA及び測距領域RA内の対象物からの戻り光LBを反射する光反射面を有する。ミラー部12は、例えば2次元的に揺動するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーとして構成されている。ミラー部12が揺動することにより、出射光LAは出射方向(光軸方向)を変化させつつ測距領域RAに向けて出射される。
【0019】
  望遠レンズ13は、出射光LAの走査角度を拡大するとともに、戻り光LBを広角で受光するために設けられた拡大レンズである。望遠レンズ13は、ミラー部12により反射された出射光LA及び測距領域RAからの戻り光LBの光路上(例えば、ミラー部12と測距装置100の図示せぬ出射口との間)に設けられている。
【0020】
  穴あきミラー14は、中央部付近に開口部を有し、周縁部に光反射面を有する。穴あきミラー14は、例えばレーザ出射部11とミラー部12との間の出射光LAの光路上に設けられている。レーザ出射部11から出射された出射光LAは、穴あきミラー14の開口部を通過してミラー部12に入射する。また、ミラー部12によって反射された戻り光LBは、穴あきミラー14の光反射面で反射される。
【0021】
  集光レンズ15は、凸レンズとして構成され、入射した光を集光する。集光レンズ15は、穴あきミラー14の光反射面で反射された戻り光LBが入射する位置に設けられている。
【0022】
  光偏向器16は、入射した光の進行方向を第1の方向と第2の方向とに変更可能な装置である。光偏向器16は、例えば電圧の印加により光を偏向させる光偏向素子から構成されている。
【0023】
  フォトダイオード17は、入射した光を受光して電流信号に変換する受光素子であり、例えばAPD(Avalanche Photodiode)から構成されている。フォトダイオード17は、光偏向器16を透過して第1の方向に進行する第1の戻り光L1を受光する位置に設けられている。
【0024】
  ダンパ18は、入射した光を吸収する光吸収体であり、例えば光を吸収して熱に変換するビームダンパから構成されている。ダンパ18は、光偏向器16を透過して第2の方向に進行する第2の戻り光L2を受光する位置に設けられている。
【0025】
  図2は、
図1に示した測距装置100の機能ブロックを示すブロック図である。測距装置100は、レーザ出射部11、光偏向器16、処理制御部20、レーザドライバ21、光偏向ドライバ22及び閾値比較回路25からなる制御系のブロック26と、フォトダイオード17、電流/電圧変換増幅器23及び距離算出部24からなる測距系のブロック27とを含む。
【0026】
  処理制御部20は、例えばCPU(Central Processing Unit)から構成され、測距装置100の各部の処理の制御を行う。例えば、処理制御部20は、レーザドライバ21によるレーザ出射部11の駆動制御を行う。また、処理制御部20は、ミラー部20を制御して2次元方向に揺動させる。
【0027】
  また、処理制御部20は、光偏向ドライバ22を制御し、光偏向器16に入射した光の進行方向を第1の方向又は第2の方向に変更させる。本実施例では、処理制御部20は、閾値比較回路25の比較結果に基づいて、論理レベル0(Lレベル)及び論理レベル1(Hレベル)に信号レベルが変化するゲート信号を生成する。そして、処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル1である期間において、光偏向器16を通過する光をフォトダイオード17に入射する方向(すなわち、第1の方向)に進行させるように光偏向ドライバ22を制御する。また、処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル0である期間において、光偏向器16を通過する光をダンパ18に入射する方向(すなわち、第2の方向)に進行させるように光偏向ドライバ22を制御する。
【0028】
  レーザドライバ21は、レーザ出射部11を駆動する駆動装置である。レーザドライバ21は、例えば駆動信号をレーザ出射部11に印加することにより、レーザ出射部11にパルス状のレーザ光を出射させる。
【0029】
  光偏向ドライバ22は、光偏向器16を駆動する駆動装置である。光偏向ドライバ22は、光偏向器16に電圧を印加することにより、光偏向器16に入射した光の進行方向を変更させる。
【0030】
  電流/電圧変換増幅器23は、電流電圧変換回路及びヘッドアンプから構成されている。電流/電圧変換増幅器23は、フォトダイオード17の後段に設けられており、フォトダイオード17から出力された電流信号を電圧信号に変換し、電圧値を増幅して距離算出部24に供給する。
【0031】
  距離算出部24は、電流/電圧変換増幅器23により増幅された電圧信号(以下、受光信号と称する)に基づいて、対象物までの距離を算出する。例えば、距離算出部24は、TOF(Time of Flight)法により対象物までの距離を算出する。
【0032】
  閾値比較回路25は、戻り光LBの強度が所定のレベルを超えているか否かを判定するため、電流/電圧変換増幅器23から出力された受光信号の信号強度と所定の閾値Th1とを比較する回路である。閾値比較回路25は、受光信号の信号強度と閾値Th1とを比較した比較結果を処理制御部20に供給する。なお、閾値Th1は、目標とする対象物からの戻り光の受光信号の強度として想定される値を基準として予め定められている。
【0033】
  次に、本実施例の測距装置100が実行するゲート信号の生成処理について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
  まず、測距装置100は、距離を算出するための出射光LAの走査に先立って、ゲート信号を生成するための出射光LAの予備的な走査(以下、予備的スキャンと称する)を行う(STEP101)。具体的には、処理制御部20は、ミラー部12を揺動させるとともに、レーザドライバ21を制御してレーザ出射部11を駆動させる。レーザ出射部11は、パルス状のレーザ光を出射光LAとして出射する。出射光LAは、ミラー部12によって反射され、望遠レンズ13を透過して測距領域RAに向けて出射される。ミラー部12は、処理制御部20の制御により2次元方向に揺動するため、出射光LAは測距領域RA内を走査するように光軸を変化させつつ投光される。なお、予備的スキャンでは、実際に対象物までの距離を算出するための通常の走査よりも出射間隔を長くして粗い密度で出射光LAの照射を行うようにしてもよい。
【0035】
  測距領域RAに向けて出射された出射光LAは、測距領域RA内の対象物によって反射され、戻り光LBとして測距装置100に入射する。戻り光LBは、望遠レンズ13を透過してミラー部12及び穴あきミラー14の光反射面で反射され、集光レンズ15を透過して光偏向器16に入射する。
【0036】
  予備的スキャンを実行している間、処理制御部20は、光偏向器16を透過する光の進行方向が第1の方向となるように光偏向ドライバ22を制御する。これにより、第1の方向に進行した戻り光LBは、第1の戻り光L1としてフォトダイオード17に入射する。
【0037】
  フォトダイオード17は、第1の戻り光L1を受光して電流信号に変換する。電流/電圧変換増幅器23は、フォトダイオード17から出力された電流信号を電圧信号に変換して増幅し、受光信号として閾値比較回路25に供給する。
【0038】
  閾値比較回路25は、電流/電圧変換増幅器23から供給された受光信号の信号強度と閾値Th1とを比較し、比較結果を処理制御部20に供給する。処理制御部20は、閾値比較回路25による比較結果に基づいて、閾値Th1以上の受光信号に相当する戻り光LBの光パルスを選択する(STEP102)。
【0039】
  処理制御部20は、選択した光パルスの立ち上がりから立下りまでの期間を含む期間において論理レベル1となるゲート信号を生成する。すなわち、論理レベル1の期間をゲート信号のゲート幅とすると、処理制御部20は、光パルスのパルス幅よりも大きいゲート幅を有するゲート信号を生成する(STEP103)。
【0040】
  予備的スキャンの後、測距装置100は、実際に対象物までの距離を算出するための出射光LAの走査を行う。その際、処理制御部20は、ゲート信号の論理レベルに応じて光偏向ドライバ22を制御する。
【0041】
  具体的には、処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル0である期間において、光偏向器16を透過した光の進行方向が第2の方向となるように光偏向ドライバ22を制御する。これにより、ゲート信号が論理レベル0の期間において、光偏向器16を透過した戻り光LBは第2の方向に進行し、第2の戻り光L2としてダンパ18に入射する。
【0042】
  一方、処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル1である期間において、光偏向器16を透過した光の進行方向が第1の方向となるように光偏向ドライバ22を制御する。これにより、ゲート信号が論理レベル1の期間において、光偏向器16を透過した戻り光LBは第1の方向に進行し、第1の戻り光L1としてフォトダイオード17に入射する。
【0043】
  図4は、出射光LAのレーザパルス、予備的スキャンにおける受光信号、ゲート信号及び実際のスキャンにおける受光信号を示す図である。ここでは、レーザ出射部11が一定の時間間隔で出射光LAを出射する場合を例として示している。
【0044】
  処理制御部20は、予備的スキャンにおける受光信号の信号強度と閾値Th1とを比較した比較結果に基づいて、信号強度のピークが閾値Th1以上となる受光信号を選択する。これにより、
図4にLPとして示すピーク波形の受光信号が選択される。
【0045】
  処理制御部20は、選択した受光信号のピーク波形の立ち上がりから立下りまでを含む期間で論理レベル1となるゲート信号を生成する。これにより、
図4に示すようにピーク波形の幅よりも大なる幅を有するゲート信号が生成される。
【0046】
  処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル1である期間において、光偏向ドライバ22を制御し、光偏向器16を透過する戻り光の進行方向を第1の方向としてフォトダイオード17に入射させる。これにより、ゲート信号の論理レベル1の期間が、フォトダイオード17による戻り光の受光期間となる。このような受光期間で戻り光LBを受光することにより、対象物までの距離の算出に必要な受光信号のピークを得ることができる。
【0047】
  以上のように、本実施例の測距装置100では、予備的スキャンの結果に基づいて、対象物からの戻り光LBを受光するタイミングに合わせて戻り光LBをフォトダイオード17に入射させ、それ以外の期間では戻り光LBをダンパ18に入射させる。従って、本実施例の測距装置100によれば、対象物からの戻り光以外の光(例えば、背景光)をフォトダイオード17が受光することを抑制し、対象物までの距離を正確に測定することが可能となる。
 
【実施例2】
【0048】
  次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例の測距装置は、実施例1の測距装置100と同様の構成を有し、ゲート信号の生成処理において実施例1と異なる。
【0049】
  本実施例の閾値比較回路25は、電流/電圧変換増幅器23から出力された受光信号の信号強度と閾値Th1及び閾値Th2とを比較し、比較結果を処理制御部20に供給する。閾値Th1は、実施例1と同様、目標とする対象物について想定される戻り光の強度を基準として予め定められている。これに対し、閾値Th2は、フォトダイオード17の受光感度に応じて、フォトダイオード17が飽和しないレベル且つ対象物からの戻り光の想定される強度を超えるレベルの強度に予め定められている。
【0050】
  次に、本実施例の測距装置100が実行するゲート信号の生成処理について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
  まず、測距装置100は、距離を算出するための出射光LAの走査に先立って、ゲート信号を生成するための予備的スキャンを実行する(STEP201)。レーザ出射部11から出射された出射光LAは、ミラー部22によって反射され、望遠レンズ13を透過して測距領域RAに向けて出射される。出射光LAは、測距領域RA内の対象物によって反射され、戻り光LBとして測距装置100に入射する。戻り光LBは、望遠レンズ13を透過してミラー部12及び穴あきミラー14の光反射面で反射され、集光レンズ15を透過して光偏向器16に入射する。
【0052】
  予備的スキャンを実行している間、処理制御部20は、光偏向器16を透過する光の進行方向が第1の方向となるように光偏向ドライバ22を制御する。これにより、第1の方向に進行した戻り光LBは、第1の戻り光L1としてフォトダイオード17に入射する。
【0053】
  フォトダイオード17は、第1の戻り光L1を受光して電流信号に変換する。電流/電圧変換増幅器23は、フォトダイオード17から出力された電流信号を電圧信号に変換して増幅し、受光信号として閾値比較回路25に供給する。
【0054】
  閾値比較回路25は、電流/電圧変換増幅器23から供給された受光信号の信号強度と閾値Th1及び閾値Th2とを比較し、比較結果を処理制御部20に供給する。処理制御部20は、閾値比較回路25による比較結果に基づいて、閾値Th1以上且つ閾値Th2未満の受光信号に相当する戻り光LBの光パルスを選択する(STEP202)。
【0055】
  処理制御部20は、選択した光パルスの立ち上がりから立下りまでの期間を含む期間において論理レベル1となるゲート信号を生成する。すなわち、論理レベル1の期間をゲート信号のゲート幅とすると、処理制御部20は、光パルスのパルス幅よりも大きいゲート幅を有するゲート信号を生成する(STEP203)。
【0056】
  予備的スキャンの後、測距装置100は、実際に対象物までの距離を算出するための出射光LAの走査を行う。その際、処理制御部20は、ゲート信号の論理レベルに応じて光偏向ドライバ22を制御する。
【0057】
  具体的には、処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル0である期間において、光偏向器16を透過した光の進行方向が第2の方向となるように光偏向ドライバ22を制御する。これにより、ゲート信号が論理レベル0の期間において、光偏向器16を透過した戻り光LBは第2の方向に進行し、第2の戻り光L2としてダンパ18に入射する。
【0058】
  一方、処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル1である期間において、光偏向器16を透過した光の進行方向が第1の方向となるように光偏向ドライバ22を制御する。これにより、ゲート信号が論理レベル1の期間において、光偏向器16を透過した戻り光LBは第1の方向に進行し、第1の戻り光L1としてフォトダイオード17に入射する。
【0059】
  本実施例の測距装置100では、実施例1の場合とは異なり、閾値Th1の他に閾値Th2を用いて信号強度の比較を行い、ゲート信号を生成している。かかる構成によれば、強い光が入射することによるフォトダイオード17の飽和を防ぐことができる。これについて、以下説明する。
【0060】
  レーザ出射部11が出射光LAを出射した直後には、出射光LAが測距装置100の内部で反射されることにより生じる回り込み光(すなわち、迷光)が発生する。回り込み光は、近距離で反射される光であるため信号強度が高く、回り込み光の受光はフォトダイオード17を飽和させる原因となる。
【0061】
  また、測距装置100に外部から強い光(以下、強い背景光と称する)が入射する場合にも、フォトダイオード17を飽和させる原因となる。例えば、夕日等の太陽光が強い背景光として測距装置100に入射する場合がある。また、測距装置100が車両等の移動体に搭載されている場合には、対向車のヘッドライト等が強い背景光として測距装置100に入射する場合がある。
【0062】
  図6は、出射光LAのレーザパルス、予備的スキャンにおける受光信号、ゲート信号及び実際のスキャンにおける受光信号を示す図である。ここでは、実施例1と同様、レーザ出射部11が一定の時間間隔で出射光LAを出射する場合を例として示している。
【0063】
  処理制御部20は、予備的スキャンにおける受光信号の信号強度と閾値Th1及び閾値Th2とを比較した比較結果に基づいて、信号強度のピークが閾値Th1以上且つ閾値Th2未満となる受光信号を選択する。これにより、
図6にLPとして示すピーク波形の受光信号が選択される。出射光LAの出射直後に発生する回り込み光(
図6にDLとして示す)や、太陽光等の強い背景光(
図6にBLとして示す)は、信号強度のピークが閾値Th2以上となるため、受光信号として選択されない。
【0064】
  処理制御部20は、選択した受光信号のピーク波形の立ち上がりから立下りまでを含む期間で論理レベル1となるゲート信号を生成する。これにより、
図6に示すようにピーク波形の幅よりも大なる幅を有するゲート信号が生成される。
【0065】
  処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル1である期間において、光偏向ドライバ22を制御し、光偏向器16を透過する戻り光の進行方向を第1の方向としてフォトダイオード17に入射させる。これにより、ゲート信号の論理レベル1の期間が、フォトダイオード17による戻り光の受光期間となる。このような受光期間で戻り光LBを受光することにより、対象物までの距離の算出に必要な受光信号のピークを得ることができる。
【0066】
  以上のように、本実施例の測距装置100では、予備的スキャンの結果に基づいて、対象物からの戻り光LBを受光するタイミングに合わせて戻り光LBをフォトダイオード17に入射させ、それ以外の期間では戻り光LBをダンパ18に入射させる。また、本実施例の測距装置100では、閾値Th2以上の光が入射する期間において、ゲート信号の論理レベルを0としている。従って、対象物からの戻り光LBをフォトダイオード17に入射させるとともに、回り込み光や強い背景光がフォトダイオード17に入射することを防ぐことができる。
【0067】
  従って、本実施例の測距装置100によれば、フォトダイオード17が回り込み光や強い背景光等を受光することを抑制して、フォトダイオード17の飽和を防ぐことにより、対象物までの距離を正確に測定することが可能となる。
 
【実施例3】
【0068】
  次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例の測距装置200は、光偏向器ではなく光シャッタを用いてフォトダイオード17への戻り光LBの入射を制御する点で、実施例1の測距装置100と異なる。
【0069】
  図7は、本実施例の測距装置200の構成を示す概略構成図である。測距装置200は、レーザ出射部11、ミラー部12、望遠レンズ13、穴あきミラー14、集光レンズ15、フォトダイオード17、光シャッタ31及び撮像部32を含む。
【0070】
  光シャッタ31は、電圧の印加に応じて透過光を制御可能な液晶シャッタや電気光学素子等を用いたシャッタから構成されている。光シャッタ31は、穴あきミラー14の光反射面で反射された戻り光LBが集光レンズ15を透過して入射する位置に設けられている。
【0071】
  図8は、本実施例の光シャッタ31の構成及び動作原理を模式的に示す図である。光シャッタ31は、液晶パネル33、入射側偏光板34及び出射側偏光板35から構成されている。
【0072】
  入射側偏光板34及び出射側偏光板35は、液晶パネル33を挟むように設けられている。入射側偏光板34及び出射側偏光板35は、互いに90度異なる透過軸を有する。
図8では、A方向が入射側偏光板34の透過軸であり、B方向が出射側偏光板35の透過軸である。
【0073】
  液晶パネル33は、電圧の印加に応じて液晶分子の配列が90度切り替わる。これにより、入射側偏光板34に入射した光の、出射側偏光板34における透過及び遮断が切り替わる。
【0074】
  再び
図7を参照すると、撮像部32は、測距領域RAを撮影して画像を取得する。本実施例の測距装置200は、実施例1及び実施例2のような予備的スキャンを行う代わりに、撮像部32が取得した画像を用いてゲート信号を生成する。
【0075】
  撮像部32は、単眼カメラやステレオカメラ等によって構成されている。単眼カメラを撮像部32として用いる場合、例えばレンズ開口部に水色と黄色のカラーフィルタを内挿したカラー開口付きカメラを用いて撮影を行う。そうすると、ピントの位置を境に色のボケ方が反転するため、画像処理でボケの色と大きさから画素毎に距離を検出することが可能となる。
【0076】
  一方、ステレオカメラを撮像部32として用いた場合、単眼カメラ、LiDAR、ミリ波レーダー等と比べて物体依存性がほとんどなく、高速で位置や形状、相対速度等を正確に検出することができる。例えば、単眼カメラはモデル単体のみ認識が可能であり、LiDARやミリ波レーダーは反射率の高い物体のみに認識可能である。これに対し、ステレオカメラは、全ての立体物を認識することができる。また、単眼カメラの検出速度が約30fps、LiDARの検出速度が約10fps、ミリ波レーダーの検出速度が約15〜20fpsであるのに対し、ステレオカメラは約60fpsの検出速度を有し、160fps程度まで検出速度を上げることが可能である。また、ステレオカメラは、単眼カメラ、LiDAR、ミリ波レーダー等よりも安価で装置への取り付けも容易である。
【0077】
  また、距離精度については、例えば単眼カメラは100mの距離に対して±10m、25mの距離に対して±0.5mの距離精度を有するが、ステレオカメラは100mの距離に対して±2m、25mの距離に対して0.08mの距離精度を有する。また、ステレオカメラは、LiDARやミリ波レーダーと比べても近距離での距離精度において優位性を有する。例えば、LiDARは±0.1m、ミリ波レーダーは±0.2mの距離精度を距離範囲全域について有する。これに対し、ステレオカメラは遠距離(例えば、100m)に対する距離精度は低いが、近距離に対する距離精度が高い。例えば、10mの距離に対しては30万画素のステレオカメラで約±4cmの距離精度となり、5mの距離に対しては約1.5cmという極めて高い距離精度となる。例えば、本実施例の測距装置200を車両等の移動体に搭載される衝突防止システムとして用いる場合、衝突回避のブレーキのための距離測定は時間的に余裕のある遠方ではそれほど精度が高い必要はなく、物体に近づくほど高い精度が求められる。従って、このような場合には近距離での距離精度が高いステレオカメラがより有用である。
【0078】
  一方、LiDARやミリ波レーダーは遠距離での距離精度はステレオカメラより優れている。また、LiDARは夜間も昼間同様に対象物を検出可能であり、この点においてもステレオカメラより有用である。
【0079】
  図9は、本実施例の測距装置200の機能ブロックを示すブロック図である。測距装置200は、レーザ出射部11、処理制御部20、レーザドライバ21、光シャッタ31及び光シャッタドライバ36からなる制御系のブロック26と、フォトダイオード17、電流/電圧変換増幅器23及び距離算出部24からなる測距系のブロック27と、
撮像部32及び画像処理部37からなる画像取得ブロック30と、を含む。
【0080】
  光シャッタドライバ36は、光シャッタ31を駆動する駆動装置である。光シャッタドライバ36は、光シャッタ31に電圧を印加することにより、光シャッタ36に入射した光の透過及び遮断を制御する。
【0081】
  画像処理部37は、撮像部32が取得した測距領域RAの画像に対して画像認識を行い、目標とする対象物(以下、目標物と称する)が存在するか否かを判定する。目標物が存在すると判定すると、画像処理部37は、測距装置100を基準とした目標物の位置、すなわち測距装置100から見た方向及び概略距離を算出する。画像処理部37は、例えば20〜100msecの処理速度を有する画像センサから構成されている。画像センサの処理速度が20msecであるとすると、一分間に約3000回(すなわち、60秒÷0.02秒=3000回/分)の検査が可能である。
【0082】
  本実施例の処理制御部20は、画像処理部37が算出した目標物の位置の情報に基づいて、目標物の位置からの戻り光LBを受光する期間において論理レベル1となり、それ以外の期間において論理レベル0となるゲート信号を生成する。
【0083】
  図10は、本実施例の測距装置200が行うカメラ検出処理、画像解析処理及びゲート信号生成処理の処理タイミングを示すタイムチャートである。レーザ出射部11は、レーザパルスを例えば33msec(ミリ秒)の時間間隔で出射する。撮像部32は、レーザ出射部11によるレーザパルスの出射に応じて、画像取得によるカメラ検出処理を行う。このカメラ検出処理は、例えば4.1msecの時間で行われる。
【0084】
  画像処理部37は、撮像部32によりカメラ検出処理の後、目標物までの概略距離を算出するための画像解析処理を行う。この画像解析処理は、例えば20msecの時間で行われる。
【0085】
  処理制御部20は、画像処理部37の画像解析処理により問題となる物体が発見された場合に、ゲート信号生成パルスを生成する。このゲート信号生成パルスは、ゲート信号の生成のためのトリガーパルスとしての役割を有する。そして、処理制御部20は、画像処理部37による画像解析処理で得られた目標物までの概略距離に基づいて、その概算距離に相当する位置からの戻り光を受光する時間帯に論理レベル1となるゲート信号を生成する。  再び
図9を参照すると、本実施例の測距装置200は、ゲート信号の生成後、対象物までの距離を算出するために出射光LAの走査を行う。その際、処理制御部20は、ゲート信号の論理レベルに応じて光シャッタドライバ36を制御する。
【0086】
  具体的には、処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル0である期間において、光シャッタ31が光を遮断するように光シャッタドライバ36を制御する。これにより、ゲート信号が論理レベル0である期間にミラー部12及び穴あきミラー14の光反射面で反射され、集光レンズ15で集光された戻り光LBは、光シャッタ31によって遮断され、フォトダイオード17には入射しない。
【0087】
  一方、処理制御部20は、ゲート信号が論理レベル1である期間において、光シャッタ31が光を透過するように光シャッタドライバ36を制御する。これにより、ゲート信号が論理レベル1である期間にミラー部12及び穴あきミラー14の光反射面で反射され、集光レンズ15で集光された戻り光LBは、光シャッタ31を透過して、フォトダイオード17に入射する。
【0088】
  以上のように、本実施例の測距装置100では、撮像部32が取得した画像に基づいて目標物の位置を算出し、目標物の位置からの戻り光LBを受光するタイミングに合わせて戻り光LBをフォトダイオード17に入射させ、それ以外の期間ではフォトダイオード17への入射を遮断する。本実施例の測距装置100によれば、予備的スキャンを行うことなく、対象物からの戻り光以外の光をフォトダイオード17が受光することを抑制し、対象物までの距離を正確に測定することが可能となる。
【0089】
  なお、本発明の実施形態は、上記実施例で示したものに限られない。例えば、上記実施例1及び実施例2では、光偏向器16から見て、フォトダイオード17とは異なる方向(第2の方向)にダンパ18を設け、ゲート信号が論理レベル0である期間において戻り光をダンパ18に入射させる例について説明した。しかし、進行方向が変更された戻り光の入射先はダンパに限られず、光を吸収する性質を有する他の物体をダンパの代わりに設けてもよい。少なくとも、フォトダイオード17に入射する方向とは異なる方向に戻り光を進行させるように構成されていればよい。
【0090】
  また、上記実施例1及び実施例2では、測距装置100が予備的スキャンを実行する場合を例として説明した。しかし、予備的スキャンと同様の走査を行う他の装置を設け、当該他の装置による走査の結果に基づいてゲート信号を生成する構成であってもよい。
【0091】
  また、上記実施例3では、撮像部32が例えばステレオカメラから構成されている例について説明した。しかし、これに限られず、撮像部32は目標物の画像を取得可能な画像取得手段により構成されていればよい。
【0092】
  また、上記実施例1及び実施例2では、光偏向器16により光の進行方向を変化させることによりフォトダイオード17への戻り光の入射を制御する例について説明した。また、上記実施例3では、光シャッタ31により光の透過及び遮断を切り替えることによりフォトダイオード17への戻り光の入射を制御する例について説明した。しかし、これらとは異なり、ゲート信号が論理レベル0の期間において、レーザ出射部11が出射光LAを出射しないように、処理制御部20がレーザドライバ21を制御する構成としてもよい。
【0093】
  また、上記各実施例では、予備的スキャンや撮像部により目標物を撮影した画像に基づいてゲート信号を生成する例について説明したが、測距装置の工場出荷前に検出ゲート算出のための実験を行い、予めゲート信号を生成するようにしてもよい。かかる実験を行う場合、例えば、想定される数種類の反射率の目標サンプルと想定される対向車のヘッドライトや西日等に相当する強い光を何段階かに分けて照射し、LiDARの出力検出限界の上限をB閾値(すなわち、飽和閾値)、下限をA閾値(すなわち、S/N限界値)として設定する。そして、設定した閾値(実施例3の場合には、当該閾値に対応するステレオカメラの出力)を記録しておき、実際の測距装置の使用時に利用する。
【0094】
  また、上記の各実施例は適宜組み合わせて用いることが可能である。例えば、上記実施例1及び実施例2では、予備的スキャンを用いてゲート信号の生成を行い、光偏向器16を用いて戻り光の進行方向を変化させる構成について説明した。また、上記実施例3では、目標物の画像を取得してゲート信号の生成を行い、光シャッタ31を用いて戻り光の透過及び遮断を切り替える構成について説明した。しかし、目標物の画像を取得してゲート信号の生成を行い、光偏向器16を用いて光の進行方向を変化させる構成としてもよい。同様に、予備的スキャンを用いてゲート信号の生成を行い、光シャッタ31を用いて戻り光の透過及び遮断を切り替える構成としてもよい。
【0095】
  また、上記実施例で説明した一連の処理は、例えばROMなどの記録媒体に格納されたプログラムに従ったコンピュータ処理により行うことができる。