【解決手段】光軸方向に移動可能なレンズ移動部材6と、カム溝4aが形成されたカム筒4とを備えたレンズ鏡筒1において、レンズ移動部材6は、カム溝4aに入り込む第1のコマ12と、カム溝4aに入り込む第2のコマ18と、第1のコマ12と第2のコマ18とがカム溝4aの異なる縁にそれぞれ当接するように付勢する引張コイルばねからなるコイルばねと、を備え、第1のコマ12及び第2のコマ18がカム筒4のカム溝4aに入り込むことによりレンズ移動部材6の移動がガイドされる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態によるカム構造を備えたレンズ鏡筒を図面を参照しながら説明する。本実施形態のレンズ鏡筒は受光素子を備えたカメラ本体に取り付けられて用いられるものである。
【0016】
図1A〜
図1Cは、本発明の第1実施形態によるカム構造を備えたレンズ鏡筒を示し、
図1Aは斜視図、
図1Bは上面図、
図1Cは側面図である。また、
図2は
図1Aに示すレンズ鏡筒の分解斜視図である。
図1A〜
図1C及び
図2に示すように、レンズ鏡筒1は、カメラ本体に固定される固定筒2と、固定筒2の外周に回動可能に取り付けられるカム筒4と、固定筒2内に配置され、光軸方向に移動可能なレンズ移動部材(移動部材)6とを備える。
【0017】
固定筒2は、カメラ本体に取り付けられるマウント部2Aと、マウント部2Aから被写体側に延びる円筒状の円筒部2Bとを備える。円筒部2Bには、3対の縦溝(第2の溝)2a、2bが周方向に略等しい角度間隔で形成されている。それぞれの対となる縦溝2a、2bは周方向に隣接するように形成されており、光軸方向に延びる長孔として形成されている。また、固定筒2の前端部にはコマを取り付けるための、コマ取付穴2cが形成されている。
【0018】
カム筒4は、円筒状に形成されており、固定筒2に対して光軸を中心として回動可能に設けられている。カム筒4の中間部には、周方向に等角度間隔で3つのカム溝(第1の溝)4aが形成されている。各カム溝4aは、周方向一端に向かって被写体側に傾斜するように形成されている。また、カム筒4の前端部には周方向に延びる周方向溝4bが形成されている。
【0019】
図3及び
図4は、
図1に示すレンズ鏡筒のレンズ移動部材を示し、
図3は拡大斜視図、
図4は分解斜視図である。
図3及び
図4に示すように、レンズ移動部材6は、レンズ枠8と、レンズ枠8に対して光軸方向に移動可能な移動枠10と、レンズ枠8と移動枠10の間を結ぶ引張コイルばね(付勢部材)20と、を備える。レンズ枠8は、円環状に形成されており、中心の開口にレンズが取り付けられる。また、レンズ枠8の半径方向の外周面には略等しい角度間隔で3つの第1のコマ12が立設されている。
【0020】
レンズ枠8は、結像側の大径部8Aと、被写体側の小径部8Bとを備える。小径部8Bの半径方向外周面には、大径部8Aから被写体側に延びる3つの突出部8Cが周方向に等角度間隔で形成されている。また、小径部8Bの外周面には、突出部8Cに隣接して半径方向に凹むような第1の凹部8D及び第2の凹部8Eが形成されている。第1の凹部8D及び第2の凹部8Eは半径方向外周面及び被写体側の面に開口している。第2の凹部8E内には、半径方向外方に向かって固定棒8bが立設されている。各突出部8Cの半径方向外周面には、それぞれ第1のコマ取付穴8aが形成されている。
【0021】
図5A〜Cは、
図1Aに示すレンズ鏡筒における第1のコマを構成するコロを示し、
図5Aは頭部側から見た図、
図5Bは
図5AにおけるB−B断面図、
図5Cは
図5AにおけるC−C断面図である。
図5A〜
図5Cに示すように、コロ12aは、円筒状の基部12a1と、基部12a1に連続する円筒状の頭部12a2とを有する。頭部12a2の直径は基部12a1の直径よりも大きく、基部12a1及び頭部12a2の中心軸は同一直線上に位置している。コロ12aには軸方向中心に略円筒状の貫通孔12a3が形成されている。貫通孔12a3の半径方向内端部は縮径されている。頭部12a2の半径方向外周面には、中心軸を通るような直線溝12a4が形成されている。第1のコマ12は、コロ12aの基部12a1を第1のコマ取付穴8aに挿入し、ねじ軸12bをコロ12aの貫通孔12a3に挿入して第1のコマ取付穴8aに締め付けることにより構成されている。第1のコマ12を構成するコロ12aの頭部12a2の直径は、カム筒4に形成されたカム溝4aの軸方向の幅よりも小さい。
【0022】
移動枠10は、移動枠本体14と、移動枠本体14の被写体側に取り付けられる枠縁体16とにより構成される。移動枠10の外周面には、等角度間隔で3つの第2のコマ18が立設されている。
【0023】
移動枠本体14は、円環状の円環部14Aと、円環部14Aから結像側に延びる円筒状の円筒部14Bとを有する。円環部14Aの中心の開口の周囲の縁には、結像側に凹む円環状の凹部14aが形成されている。凹部14aの半径方向外側の縁部には、略等しい間隔で3つの開口14bが形成されている。凹部14aの被写体側の表面の開口14bの近傍には、3つのねじ穴14fが等角度間隔で形成されている。また、円筒部14Bには、結像側の縁から前方に延びる3つの第1の凹部14cが等角度間隔で形成されている。円筒部14Bには、第1の凹部14cに周方向に隣接して、半径方向内方に突出する3つの突部14dが周方向に等間隔で形成されている。さらに、円筒部14Bには、突部14dに隣接して、結像側の縁から前方に延びる3つの第2の凹部14gが等角度間隔で形成されている。円筒部14Dの外周面の突部14dに当たる位置には、それぞれコマ取付穴14eが形成されている。第2のコマ18は、第1のコマ12と同様にコロ18a及びねじ軸18bにより構成されている。第2のコマ18を構成するコロ18aの構成は、
図5A〜
図5Cを参照して説明した第1のコマ12を構成するコロ12aの構成と同一である。第2のコマ18は、コロ18aの基部をコマ取付穴14eに挿入し、ねじ軸18bをコロ18aの貫通孔に挿入してコマ取付穴14eに締め付けることにより構成されている。第2のコマ18を構成するコロ18aの頭部の直径は、カム筒4に形成されたカム溝4aの軸方向の幅よりも小さい。
【0024】
枠縁体16は、円環状の板材により構成されている。枠縁体16の外径は、移動枠本体14の凹部14aの内径と等しくなっている。枠縁体16の外周部には半径方向外方に向かって延びる3つの突部16aが等角度間隔で形成されている。また、枠縁体16の外周部の突部16aの近傍には切り欠き部16bが形成されている。
【0025】
枠縁体16は、突部16aが移動枠本体14の開口14bと光軸方向に並ぶように、枠縁体16を移動枠本体14の凹部14aに嵌め込み、ねじを被写体側から枠縁体16の切り欠き部16bを通して移動枠本体14のねじ穴14fに締め付けることにより、移動枠本体14に取り付けられている。
【0026】
レンズ枠8は、移動枠本体14の円筒部14Bの内側に小径部8Bが入り込むように、移動枠本体14に対して配置されている。また、レンズ枠8の各突出部8Cが、移動枠本体14の第1の凹部14cに入り込むとともに、レンズ枠8の各第1の凹部8Dに、移動枠本体14の突部14dが入り込んでいる。このような構成により、レンズ枠8は移動枠10に対して光軸方向に移動可能である。なお、後述するように、レンズ枠8に立設された第1のコマ12が固定筒2の第1の縦溝2aを挿通し、移動枠10に立設された第2のコマ18が固定筒2の第2の縦溝2bを挿通しているため、レンズ枠8は移動枠10に対して光軸を中心として回転することはない。
【0027】
また、レンズ枠8の各突出部8Cが移動枠本体14の第1の凹部14cに入り込んだ状態において、第2の凹部14gがレンズ枠8の第2の凹部8Eの半径方向外方に整列している。引張コイルばね20は、一端が枠縁体16の突部16aに取り付けられ、他端がレンズ枠8の固定棒8bに取り付けられている。引張コイルばね20の固定棒8bへの取付作業は、第2の凹部14gを通じて行えばよい。このような構成により、移動枠10はレンズ枠8に光軸方向に近接するように付勢されている。なお、移動枠10がレンズ枠8に対して最も近接した状態、すなわち、レンズ枠8の小径部8Bの被写体側の面が移動枠本体14の円環部14Aの結像側の面に当接した状態で、第1のコマ12を取り付ける第1のコマ取付穴8a及び第2のコマ18を取り付けるコマ取付穴14eが、カム溝4a内に露出するように、第1のコマ取付穴8a及びコマ取付穴14eは配置されている。
【0028】
図1A〜
図1C及び
図2に示すように、カム筒4は、固定筒2の円筒部2Bを取り囲むように取り付けられている。固定筒2のコマ取付穴2cには、第3のコマ22が取り付けらており、この第3のコマ22はカム筒4の周方向溝4b内に位置している。これにより、カム筒4は固定筒2に対して光軸を中心として回動可能であるとともに、カム筒4の固定筒2に対する光軸方向の移動が拘束されている。
【0029】
図6は、
図1Aに示すレンズ鏡筒のカム筒のカム溝を拡大して示す図である。レンズ移動部材6は固定筒2の内側に配置されている。レンズ移動部材6のレンズ枠8の第1のコマ取付穴8aには第1のコマ12が立設され、レンズ移動部材6の移動枠10の第2のコマ取付穴14eには第2のコマ18が立設されている。
図5に示すように、第1のコマ12は、カム筒4のカム溝4a及び固定筒2の第1の縦溝2aを挿通している。また、第2のコマ18は、カム筒4のカム溝4a及び固定筒2の第2の縦溝2bを挿通している。
【0030】
カム筒4に形成されたカム溝4aは、周方向の一端(
図5の下端側端部)が他端に比べて結像側に位置するように傾斜して形成されている。このため、第2のコマ18がカム溝4aの結像側の縁に当接して被写体側に移動するとともに、第1のコマ12がカム溝4aの被写体側の縁に当接して結像側に移動し、第2のコマ18が第1のコマ12に対して被写体側に位置している。これにより、第1のコマ12が立設された移動枠10は、第2のコマ18が立設されたレンズ枠8に対して離間し、引張コイルばね20が移動枠10とレンズ枠8とが近接するように付勢される。このため、移動枠10に立設された第1のコマ12が矢印Aで示すように被写体側に付勢されるとともに、レンズ枠8に立設された第2のコマ18が矢印Bで示すように結像側に付勢され、第1のコマ12の側面がカム溝4aの被写体側の縁に当接し、かつ、第2のコマ18の側面がカム溝4aの結像側の縁に当接し、ガタの発生が防止される。
【0031】
また、第1のコマ12及び第2のコマ18がそれぞれ固定筒2の縦溝2a、2bを挿通しているため、レンズ移動部材6は固定筒2に対して回転が拘束されている。このため、このような状態で、カム筒4を固定筒2に対して回動させると、第1のコマ12及び第2のコマ18がカム溝4aに沿ってガイドされ、レンズ移動部材6が光軸方向に移動する。
【0032】
本実施形態のレンズ鏡筒1は以下のようにして組み立てることができる。
まず、レンズ移動部材6を組み立てる。レンズ移動部材6を組み立てる際には、まず、レンズ枠8の小径部8Bが移動枠本体14の円筒部14Bの内側に位置するように、レンズ枠8を移動枠本体14に対して配置する。次に、この状態で、移動枠本体14の第2の凹部14gを通して、レンズ枠8の第2の凹部8E内の固定棒8bに引張コイルばね20の一端を固定する。次に、引張コイルばね20の他端を移動枠本体14の開口14bを通して被写体側に引き出し、枠縁体16の突部16aに取り付ける。そして、枠縁体16を移動枠本体14の凹部14aに嵌め込み、ねじを被写体側から移動枠本体14のねじ穴14fに締め付けることにより組み立てることができる。(移動枠組立ステップ)
【0033】
次に、固定筒2の外側にカム筒4を配置し、組み立てが完了した第1のコマ12及び第2のコマ18が取り付けれていない状態のレンズ移動部材6を固定筒2の内側に配置する(配置ステップ)。このようにレンズ移動部材6を配置した状態では、引張コイルばね20により付勢され、レンズ枠8と移動枠10とは最も近接した状態となっている。このため、カム筒4を配置した状態で、第1のコマ12を取り付ける第1のコマ取付穴8a及び第2のコマ18を取り付ける第2のコマ取付穴14eが、カム溝4a内に露出している。
【0034】
次に、レンズ移動部材6のレンズ枠8の第1のコマ取付穴8aにコロ12aの基部12a1を挿入する。そして、ねじ軸12bをコロ12aの貫通孔12a3に挿入して第1のコマ取付穴8aに締め付けることにより第1のコマ12を取り付ける。また、移動枠本体14の第2のコマ取付穴14eにコロ18aの基部を挿入し、ねじ軸18bをコロ18aの貫通孔に挿入して第2のコマ取付穴14eに締め付けることにより第2のコマ18を取り付ける。また、固定筒2のコマ取付穴2cに第3のコマ22を取り付ける。(コマ取付ステップ)
以上の工程により、レンズ鏡筒1を組み立てることができる。
【0035】
本実施形態によれば以下の効果が奏される。
本実施形態では、第1のコマ12及び第2のコマ18の直径が、カム溝4aの幅よりも小さいため、温度が上昇しても第1のコマ12及び第2のコマ18がカム溝4aをスムーズに移動できる。また、引張コイルばね20により第1のコマ12と第2のコマ18とがカム溝4aの異なる縁にそれぞれ当接するように付勢されているため、温度低下が生じたとしても、第1のコマ12と第2のコマ18とがカム溝4aの両縁に当接するため、ガタの発生を防止できる。
【0036】
本実施形態では、レンズ移動部材6は、第1のコマ12が立設され、レンズを保持するレンズ枠8と、第2のコマ18が立設され、レンズ枠8を光軸方向に移動可能に保持する移動枠10と、を備え、引張コイルばね20はレンズ枠8と移動枠10との間に設けられているため、レンズ枠8と移動枠10とが光軸方向に付勢され、第1のコマ12及び第2のコマ18をカム溝4aの異なる縁に当接するように付勢することができる。
【0037】
本実施形態では、レンズ枠8に立設された第1のコマ12の数と、移動枠10に立設された第2のコマ18の数はともに3つかつ同数である。これにより、引張コイルばね20によりレンズ枠8に対して移動枠10が付勢されてもレンズ枠8及び移動枠10が光軸に対して垂直になるように正確に保持され、光学系の精度が向上する。
【0038】
また、本実施形態では、引張コイルばね20により第1のコマ12と第2のコマ18とがカム溝4aの異なる縁にそれぞれ当接するように付勢されている。特許文献1に記載されているようにねじリコイルばねを用いた場合には、ねじりコイルばねの付勢力が小さいいため、十分にガタを抑えることができなかった。これに対して、本実施形態では、引張コイルばね20を用いているため、十分に移動枠のガタを抑えることができる。また、ねじリコイルばねはコマの半径方向内側に配置されるため、鏡筒の直径が大きくなってしまう。これに対して、引張コイルばね20は、第1のコマ12及び第2のコマ18の半径方向内側に設ける必要がないため、ねじリコイルばねを用いた場合に比べてレンズ鏡筒1の直径を小さく抑えることができる。また、引張コイルばね20は、ねじリコイルばねに比べて付勢力を大きくしやすいため、レンズ移動部材6の重量が大きくても、レンズ移動部材6を所望の位置に確実に保持することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、レンズ枠8と移動枠10との間に引張コイルばねを設けたが、これに限らず、圧縮コイルばねを設けてもよい。このような構成によっても、レンズ枠8と移動枠10とが離間する方向に付勢され、第1のコマと第2のコマとが光軸方向に離間する方向に付勢され、ガタを防止できる。
【0040】
また、本実施形態では、カム筒4に形成されたカム溝4a内に第1のコマ及び第2のコマを配置したが、これに限らず、固定筒などに形成された縦溝内に第1のコマ及び第2のコマを配置し、縦溝の対向する縁に第1のコマ及び第2のコマを当接するように、縦溝を横切る方向に第1のコマ及び第2のコマが離間するように付勢してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、レンズを保持するレンズ移動部材6の移動をガイドする場合について説明したが、これに限らず、移動可能な摺動筒などの移動をガイドする場合についても本発明を適用できる。
【0042】
また、本実施形態では、第1のコマ及び第2のコマをそれぞれ3つずつ設けたが、第1のコマ及び第2のコマはそれぞれ2つ以上設ければよく、また、第1のコマ及び第2のコマは同数であることが好ましい。
【0043】
<第2実施形態>
第1実施形態におけるレンズ鏡筒を組み立てる際に、コマ取付ステップにおいて第1のコマ12を取り付けてしまうと、第2のコマ18を取り付けるための第2のコマ取付穴14eがカム溝4aの縁の近傍に位置してしまい、第2のコマ18の頭部がカム溝4aの縁と干渉してしまい、第2のコマ18の取付作業が困難になる。第2実施形態は、この点を改善したものである。
【0044】
以下、本発明の第2実施形態によるカム構造を備えたレンズ鏡筒を図面を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図7A及び
図7Bは、本発明の第2実施形態によるカム構造を備えたレンズ鏡筒を示し、
図7A上面図、
図7Bは側面図である。本発明の第2実施形態によるレンズ鏡筒101は、カメラ本体に固定される固定筒2と、固定筒2の外周に取り付けられるカム筒4と、固定筒2内に配置されるレンズ移動部材6とを備える。第2実施形態によるレンズ鏡筒は、レンズ移動部材6に取り付けられた第2のコマ118が偏心コマである点が第1実施形態と異なり、その他の構成は、第1実施形態と同様である。第2のコマ118は、レンズ移動部材6を構成する移動枠10の外周面に立設されており、コロ118aがねじ軸18bにより移動枠本体14の第2のコマ取付穴14eに取り付けることにより構成されている。
【0046】
図8A〜
図8Cは、
図7A及び
図7Bに示すレンズ鏡筒における第2のコマを構成するコロを示し、
図8Aは頭部側から見た図、
図8Bは
図8AにおけるB−B断面図、
図8Cは
図8AにおけるC−C断面図である。
図8A〜
図8Cに示すように、コロ118aは、円筒状の基部118a1と、基部118a1に連続する円筒状の頭部118a2とを有する。頭部118a2の直径は基部118a1の直径よりも大きく、カム筒4のカム溝4aの幅よりも小さい。
図8Bに示すように、頭部118a2の中心軸X2は、基部118a1の中心軸X1に対して横方向に離間している。コロ118aには、基部118a1の中心軸X1を中心として略円柱状の貫通孔118a3が形成されている。貫通孔118a3の半径方向内端部は縮径されている。頭部118a2の半径方向外周面には、基部118a1及び頭部118a2の中心軸X1、X2を通るような直線溝118a4が形成されている。このため、基部118a1の中心軸X1から直線溝118a4に沿った頭部118a2の一方の縁(
図8Aの左縁)までの距離が、基部118a1の中心軸X1から頭部118a2の縁までの最短距離D1となり、また、基部118a1の中心軸X1から頭部118a2の他方の縁(
図8Aの右縁)までの距離が基部118a1の中心軸X1から頭部118a2の縁までの最大距離D2となっている。第2のコマ118は、コロ118aの基部118a1を第1のコマ取付穴8aに挿入し、ねじ軸18bをコロ118aの貫通孔118a3に挿入して第1のコマ取付穴8aに締め付けることにより構成されている。
【0047】
図7A及び
図7Bに示すように、本実施形態のレンズ鏡筒101では、第2のコマ118は、コロ118aの基部118a1の中心軸X1から頭部118a2の縁までの距離が大きい側が結像側に位置するように構成されている。
【0048】
以下、第2実施形態のレンズ鏡筒を組み立てる方法を説明する。第2実施形態のレンズ鏡筒の組み立て方法は、第1実施形態とコマ取付ステップのみが異なる。
すなわち、第2実施形態のレンズ鏡筒を組み立てる際には、まず、第1実施形態と同様にレンズ枠8と移動枠10とを引張コイルばね20で連結する移動枠組立ステップと、レンズ移動部材6を固定筒2の内側に配置し、固定筒2の外側にカム筒4を配置する配置ステップと、を行う。次に、以下に説明するように、コマ取付ステップを行う。
【0049】
図9A〜
図9Cは、本発明の第2実施形態のレンズ鏡筒を組み立てる方法におけるコマ取付ステップを説明するための図である。
まず、
図9Aに示すように、レンズ移動部材6のレンズ枠8の第1のコマ取付穴8aにコロ12aの基部12a1を挿入する。そして、ねじ軸12bをコロ12aの貫通孔12a3に挿入して第1のコマ取付穴8aに締め付けることにより第1のコマ12を取り付ける。
【0050】
次に、
図9Bに示すように、コロ118aの頭部118a2の縁までの距離が最短となる側が結像側に位置するように、移動枠本体14の第2のコマ取付穴14eにコロ118aの基部118a1を挿入する。そして、ねじ軸18bをコロ118aの貫通孔118a3に挿入して第2のコマ取付穴14eに締め付けることにより第2のコマ118を取り付ける。
【0051】
次に、
図9Cに示すように、コロ118aの直線溝118a4にマイナスドライバーなどの冶具を挿入し、コロ118aを基部118a1の中心軸X1を中心に略180度回転させる。これにより、コロ118aの頭部118a2の縁までの距離が最長となる側が結像側に位置し、偏心コマの基部118a1の中心軸から、偏心コマの頭部118a2が当接するカム溝4eの縁までの距離が広がる。このような構成によれば、レンズ枠8と移動枠10とが離間し、レンズ枠8と移動枠10とを連結する引張コイルばね20が伸長するため、第1のコマ12及び第2のコマ118に作用する付勢力が大きくなる。これにより、レンズ移動部材6のガタをより抑えることができる。
【0052】
本実施形態によれば、第1実施形態で奏された作用効果に加えて以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、コマ取付ステップにおいて、第1のコマ12及び第2のコマ118を取り付けた後に、第2のコマ118の基部118a1の中心軸から、第2のコマ118の頭部118a2が当接するカム溝4eの縁までの距離が広がるように、コロ118aを回転させる。これにより、第2のコマ118の取付作業を容易に行うことができるとともに、引張コイルばね20の付勢力を増大させることができる。
【0053】
また、コマ取付ステップにおいて、レンズ枠8に形成された第1のコマ12を取り付けるための第1のコマ取付穴8aと、移動枠10に形成された第2のコマ18を取り付けるための第2のコマ取付穴14eがカム溝4aを通して外部に露出しているため、第1のコマ12及び第2のコマ18の取付作業を容易に行うことができる。
【0054】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態によるカム構造を備えたレンズ鏡筒を図面を参照しながら説明する。本実施形態のレンズ鏡筒は受光素子を備えたカメラ本体に取り付けられて用いられるものである。
【0055】
図10A〜
図10Cは、本発明の第3実施形態によるカム構造を備えたレンズ鏡筒を示し、
図10Aは斜視図、
図10Bは上面図、
図10Cは側面図である。また、
図11は
図10Aに示すレンズ鏡筒の分解斜視図である。
図10A〜
図10C及び
図11に示すように、レンズ鏡筒201は、カメラ本体に固定される固定筒202と、固定筒202の外周に取り付けられるカム筒204と、固定筒202内に配置されるレンズ移動部材206とを備える。
【0056】
固定筒202は、カメラ本体に取り付けられるマウント部202Aと、マウント部202Aから被写体側に延びる円筒状の中間円筒部202Bと、中間円筒部202Bの被写体側の先端部に取り付けられた先端円筒部202Cと、を備える。中間円筒部202Bには、3対の第1の縦溝202a、202bが周方向に略等しい角度間隔で形成されている。それぞれの対となる縦溝202a、202bは周方向に隣接するように形成されており、光軸方向に延びる同じ長さの長孔として形成されている。第1の縦溝202a、202bの幅は、それぞれ、後述するカム溝用コマ組立体212の第1のコマ216及び第2のコマ218の直径よりも大きくなっている。
【0057】
また、中間円筒部202Bの内面には、光軸方向に延びる3つの第2の縦溝202dが周方向に略等しい角度間隔で形成されている。第2の縦溝202dの周方向の幅は、直進溝用コマ組立体213の第3のコマ213A及び第4のコマ213Bの直径と略等しくなっている。
【0058】
先端円筒部202Cは中間円筒部202Bよりも直径の大きな円筒状であり、結像側の端部がねじ止めにより中間円筒部202Bの先端部に固定されている。先端円筒部202Cの外周面には、先端円筒部202Cの前端部にはコマを取り付けるための、コマ取付穴202cが形成されている。
【0059】
カム筒204は、円筒状の小径部204Aと、小径部204Aの被写体側に設けられた円筒状の大径部204Bとを備える。大径部204Bの直径は、小径部204Aの直径よりも大きい。カム筒204は、固定筒202に対して光軸を中心として回動可能に設けられている。カム筒204の小径部204Aには、周方向に等角度間隔で3つのカム溝204aが形成されている。各カム溝204aは、周方向一方に向かって光軸方向に被写体側に向かって傾斜するように形成されている。さらに、各カム溝204aはカム筒204を展開した場合に直線状になるような形状となっている。また、カム筒204の大径部204Bには周方向に延びる周方向溝204bが形成されている。
【0060】
図12A〜
図12Dは、
図10Aに示すレンズ鏡筒のレンズ移動部材を示し、
図12Aは斜視図、
図12Bは正面図、
図12Cは側面図、
図12Dは下面図である。また、
図13は、
図10Aに示すレンズ鏡筒のレンズ移動部材の分解斜視図である。また、
図14は、
図10Aに示すレンズ鏡筒のカム溝用コマ組立体及び縦溝用コマ組立体を説明するための斜視図であり、移動部材本体を省略して示す。
図12A〜
図12D及び
図13に示すように、レンズ移動部材206は、移動部材本体208と、移動部材本体208に取り付けられた環状体210と、一端が環状体210に取り付けられた引張コイルばね224と、を備える。
【0061】
移動部材本体208は円環状に形成されており、中心の開口208Aにレンズが取り付けられる。また、移動部材本体208の半径方向の外周面には略等しい角度間隔で3つのカム溝用コマ組立体212と、直進溝用コマ組立体213とが交互に設けられている。
【0062】
移動部材本体208の外周面のカム溝用コマ組立体212が取り付けられる部位には平坦面208Bが形成されており、各平坦面208Bには取付穴208cが形成されている。また、平坦面208Bの取付穴208cの近傍には、平坦面208Bから垂直に延びる垂直穴208bが形成されている。また、移動部材本体208の被写体側の面の垂直穴208bに当たる部位には、光軸方向に延びる軸方向穴208aが形成されている。垂直穴208bは軸方向穴208aに連通している。
【0063】
環状体210は円環状の板材である。環状体210の外周部には当角度間隔で半径方向外方に突出する突出部210aが形成されている。また、環状体210の外周部には、突出部210aに隣接して切り欠き部210bが形成されている。環状体210は、移動部材本体208の被写体側の面の開口208Aの周囲に、切り欠き部210b内に配置された止めねじ210Aにより固定される。移動部材本体208に取り付けた状態で、環状体210の突出部210aは、移動部材本体208の軸方向穴208aの被写体側に位置している。
【0064】
図14に示すように、カム溝用コマ組立体212は、移動部材本体208に回転可能に支持された回転プレート214と、回転プレート214に取り付けられた第1のコマ216及び第2のコマ218を備える。
【0065】
回転プレート214は、長尺の板状部材からなり、中央に第1の取付穴214aが形成され、第1の取付穴214aの両側に第2の取付穴214bが形成されている。また、回転プレート214の一端部の縁には、垂直に折り曲げられた屈曲部214cが形成されている。回転プレート214は、第1の取付穴214aの軸受け220を取り付け、軸受け220を軸ねじ222により移動部材本体208の取付穴208cに取り付けられている。軸ねじ222は、光軸を中心とした半径方向に延びるように移動部材本体208に取り付けられており、回転プレート214は軸ねじ222を中心として回転可能に保持されている。また、移動部材本体208に取り付けた状態において、回転プレート214の屈曲部214cは、移動部材本体208の垂直穴208b内に位置している。
【0066】
第1のコマ216は、第1のコロ216aと、第1の軸ねじ216bとを備える。第1のコロ216aは円筒状に形成されている。第1のコマ216は、第1のコロ216aの貫通孔に第1の軸ねじ216bを挿通させ、第1の軸ねじ216bの先端を回転プレートの屈曲部214c側の第2の取付穴214bに固定することにより構成されている。なお、第1のコロ216aの直径は、カム溝204aの幅よりも小さい。
【0067】
第2のコマ218は、第2のコロ218aと、第2の軸ねじ218bとを備える。第2のコロ218aは円筒状に形成されている。第2のコマ218は、第2のコロ218aの貫通孔に第2の軸ねじ218bを挿通させ、第2の軸ねじ218bの先端を回転プレートの屈曲部214cと反対側の第2の取付穴214bに固定することにより構成されている。なお、第2のコロ218aの直径は、カム溝204aの幅よりも小さい。
【0068】
引張コイルばね224は、移動部材本体208の軸方向穴208a内に配置されており、光軸方向に延びている。引張コイルばね224の一端は、移動部材本体208に取り付けられた環状体210の突出部210aに取り付けられている。また、引張コイルばね224の他端は、移動部材本体208の垂直穴208b内に位置する回転プレート214の屈曲部214cに取り付けられている。これにより、回転プレート214は軸ねじ222を中心として、第1のコマ216の側が被写体側に回動するように、引張コイルばね224により付勢されている。
【0069】
直進溝用コマ組立体213は、移動部材本体208の外周面に光軸方向に整列するように設けられた一対の第3のコマ213A及び第4のコマ213Bにより構成される。第3のコマ213A及び第4のコマ213Bは、それぞれ、円筒状のコマ213aがねじ213bにより移動部材本体208に取り付けられて構成されている。
【0070】
図10A〜
図10C及び
図11に示すように、レンズ鏡筒201の組み立て状態において、カム筒204は固定筒202の外周を包囲するように配置されており、カム筒204の小径部204Aが固定筒202の中間円筒部202Bの外周に位置し、カム筒204の大径部204Bが固定筒202の先端円筒部202Cの外周に位置している。また、第5のコマ226がカム筒204の周方向溝204bを挿通し、固定筒202のコマ取付穴202cに取り付けられている。これにより、カム筒204は、固定筒202に対して光軸方向の移動が拘束された状態で、周方向に回動可能に保持される。
【0071】
レンズ移動部材206は固定筒202の内側に配置されている。レンズ移動部材206の直進溝用コマ組立体213の第3のコマ213A及び第4のコマ213Bは、固定筒202の第2の縦溝202d内に入り込んでいる。これにより、レンズ移動部材206は固定筒202に対して光軸方向に移動が拘束された状態で、周方向に回動可能に保持されている。
【0072】
また、レンズ移動部材206のカム溝用コマ組立体212の第1のコマ216及び第2のコマ218は、それぞれ固定筒202の第1の縦溝202a、202bを挿通し、カム筒204のカム溝204aに入り込んでいる。
【0073】
図15は、
図10Aに示すレンズ鏡筒のカム溝を拡大して示す図である。
図15に示すように、カム溝用コマ組立体212を構成する回転プレート214は軸ねじ222を中心として、第1のコマ216の側が被写体側に回動するように、図中矢印で示す方向に引張コイルばね224により付勢されている。これにより、回転プレート214は、軸ねじ222を中心に回動し、第1のコマ216の被写体側の端部がカム溝204aの被写体側の縁に当接し、第2のコマ218の結像側の端部がカム溝204aの結像側の縁に当接する。これにより、レンズ移動部材206のカム溝204aに対するガタが抑えられる。そして、この状態でカム溝204aを固定筒202に対して回動させることにより、カム溝204aにガイドされてレンズ移動部材206は光軸方向に移動する。
【0074】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、第1のコマ216及び第2のコマ218の直径が、カム溝204aの幅よりも小さいため、温度が上昇しても第1のコマ216及び第2のコマ218がカム溝204aをスムーズに移動できる。また、引張コイルばね224により第1のコマ216と第2のコマ218とがカム溝204aの異なる縁にそれぞれ当接するように付勢されているため、温度低下が生じたとしても、第1のコマ216と第2のコマ218とがカム溝204aの両縁に当接するため、ガタの発生を防止できる。
【0075】
本実施形態では、第1のコマ216及び第2のコマ218が立設された回転プレート214が軸ねじ222を中心として回動可能に支持されており、引張コイルばね224が回転プレート214を軸ねじ222を中心として回動するように付勢することにより、第1のコマ216及び第2のコマ218を溝の異なるカム204a縁に当接するように付勢することができる。
【0076】
本実施形態では、回転プレート214に設けられた第1のコマ216の数と、第2のコマ218の数はともに3つかつ同数である。これにより、引張コイルばね224により第1のコマ216と第2のコマ218とカム溝204aの異なる縁にそれぞれ当接するように付勢されても、レンズ移動部材206が光軸に対して垂直になるように正確に保持され、光学系の精度が向上する。
【0077】
また、本実施形態では、引張コイルばね224により第1のコマ216と第2のコマ128とがカム溝204aの異なる縁にそれぞれ当接するように付勢されている。特許文献1に記載されているようにねじリコイルばねを用いた場合には、ねじりコイルばねの付勢力が小さいいため、十分にガタを抑えることができなかった。これに対して、本実施形態では、引張コイルばね224を用いているため、十分に移動枠のガタを抑えることができる。また、ねじリコイルばねはコマの半径方向内側に配置されるため、鏡筒の直径が大きくなってしまう。これに対して、引張コイルばね224は、第1のコマ216及び第2のコマ218の半径方向内側に設ける必要がないため、ねじリコイルばねを用いた場合に比べてレンズ鏡筒201の直径を小さく抑えることができる。また、引張コイルばね224はねじリコイルばねに比べて付勢力を大きくしやすいため、レンズ移動部材206の重量が大きくても、レンズ移動部材206を所望の位置に確実に保持することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、回転プレート214を回動するように付勢させるために引張コイルばね224を設けたが、これに限らず、回転プレート214を同じ方向に回動するように圧縮コイルばねを設けてもよい。また、本実施形態では、第1のコマ216及び第2のコマ218として通常のコマ(頭部と基部の中心軸が一致しているコマ)を使用した場合について説明したが、第2実施形態のように偏心コマ(頭部と基部の中心軸が離間しているコマ)を使用してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、カム筒204に形成されたカム溝204a内に第1のコマ216及び第2のコマ218を配置したが、これに限らず、固定筒などに形成された縦溝内に第1のコマ及び第2のコマを配置し、縦溝の対向する縁に第1のコマ及び第2のコマを当接するように、縦溝を横切る方向に第1のコマ及び第2のコマが離間するように付勢してもよい。
【0080】
また、本実施形態では、レンズを保持するレンズ移動部材206の移動をガイドする場合について説明したが、これに限らず、移動可能な摺動筒などの移動をガイドする場合についても本発明を適用できる。