【解決手段】本発明の車両用電源装置10は、複数のバッテリセル20から成るバッテリ11と、バッテリ11を周囲から保持するバッテリ保持部21と、バッテリセル20の電極22どうしを接続するバスバ23と、を具備する。また、バッテリセル20は、第1バッテリセル(バッテリセル20A、バッテリセル20M)と、第2バッテリセル(バッテリセル20Bないしバッテリセル20L)と、を有する。更に、第1バッテリセルの電極22と、第2バッテリセルの電極22とを接続するバスバ23Aに、衝撃が作用した際に第2バッテリセルが移動することで、第1バッテリと前記第2バッテリとの導通を遮断する遮断部としての切欠部24を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された発明では、衝突時に於けるバッテリセルどうしの位置ずれを利用して、バスバの切欠部を電極から外していたため、衝突時に於いてバスバを安定的に電極から外すことが必ずしも保証されない課題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明では、バスバに形成されるスリットは、バスバの貫通孔に安定的に電極を挿入させるものである為、衝突事故発生時にバスバをバッテリセルの電極から離脱させるものではなかった。
【0008】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、車両衝突等により衝撃が作用した際に、バッテリセルの電極からバスバを確実に離脱させることで、安全性を向上することができる車両用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用電源装置は、複数のバッテリセルから成るバッテリと、前記バッテリを周囲から保持するバッテリ保持部と、前記バッテリの電極どうしを接続するバスバと、を具備し、前記バッテリセルは、一定の保持力により保持される第1バッテリセルと、前記第1バッテリセルよりも前記保持力が小さい第2バッテリセルと、を有し、前記第1バッテリセルの前記電極と、前記第2バッテリセルの前記電極とを接続する前記バスバに、衝撃が作用した際に前記第2バッテリセルが移動することで、前記第1バッテリセルと前記第2バッテリセルとの導通を遮断する遮断部を形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バッテリ保持部は、端部に配置された前記バッテリセルを保持するエンドプレートと、前記エンドプレートにより両端側が固定されるバインドバと、を具備し、前記第1バッテリセルは、前記エンドプレートにより支持され、前記第2バッテリセルは、前記第1バッテリセルに隣接することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の車両用電源装置では、前記遮断部は、前記バスバに形成された切欠部であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バスバは、一端側に配置されて第1切欠部が形成された第1バスバと、他端側に配置されて第2切欠部が形成された第2バスバと、を有し、前記第1切欠部が開口する方向と、前記第2切欠部が開口する方向とは、逆方向であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バインドバと前記バッテリセルとの間には、前記第2バッテリセルの移動を許容する間隙が形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バインドバは、前記第2バッテリセルが移動可能な方向に沿って、変位可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バインドバの、前記エンドプレートに締結される部分に、スリットを形成することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バッテリセルは、車両の幅方向に沿って積層されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車両用電源装置では、衝突時に於ける前記バスバの回転を抑制する回転抑制部を更に具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用電源装置は、複数のバッテリセルから成るバッテリと、前記バッテリを周囲から保持するバッテリ保持部と、前記バッテリの電極どうしを接続するバスバと、を具備し、前記バッテリセルは、一定の保持力により保持される第1バッテリセルと、前記第1バッテリセルよりも前記保持力が小さい第2バッテリセルと、を有し、前記第1バッテリセルの前記電極と、前記第2バッテリセルの前記電極とを接続する前記バスバに、衝撃が作用した際に前記第2バッテリセルが移動することで、前記第1バッテリセルと前記第2バッテリセルとの導通を遮断する遮断部を形成することを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、車両衝突などによる衝撃が作用した際に、保持力が大きい第1バッテリよりも、保持力が小さい第2バッテリが大きく変位するので、この変位によりバスバの遮断部が第2バッテリの電極端子から外れ、第1バッテリと第2バッテリとの導通を遮断できる。よって、車両用電源装置に衝突履歴を残すことができ、衝突事故により性能が劣化した車両用電源装置が再利用されてしまうことを防止できる。
【0019】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バッテリ保持部は、端部に配置された前記バッテリセルを保持するエンドプレートと、前記エンドプレートにより両端側が固定されるバインドバと、を具備し、前記第1バッテリセルは、前記エンドプレートにより支持され、前記第2バッテリセルは、前記第1バッテリセルに隣接することを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、衝突発生時に於いて、エンドプレートで支持される第1バッテリセルは衝撃により移動しない一方、第2バッテリセルは移動する。よっ、て、両者の電極どうしを接続するバスバの前記遮断部を、電極から離脱させることができる。
【0020】
また、本発明の車両用電源装置では、前記遮断部は、前記バスバに形成された切欠部であることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、衝突発生時に於いて、バッテリセルの電極から切欠きが離脱することで、第1バッテリセルと第2バッテリセルとの導通を遮断できる。
【0021】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バスバは、一端側に配置されて第1切欠部が形成された第1バスバと、他端側に配置されて第2切欠部が形成された第2バスバと、を有し、前記第1切欠部が開口する方向と、前記第2切欠部が開口する方向とは、逆方向であることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、一方側に衝撃が作用した場合は、第1切欠部が電極から外れることで、第1バッテリセルと第2バッテリセルとの導通が遮断される。一方、他方側に衝撃が作用した場合は、第2切欠部が電極から外れることで、第1バッテリセルと第2バッテリセルとの導通が遮断される。例えば、車両が前方向から衝突された場合でも、後方向から衝突された場合でも、第1バッテリセルと第2バッテリセルとの導通が遮断される。
【0022】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バインドバと前記バッテリセルとの間には、前記第2バッテリセルの移動を許容する間隙が形成されることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、バインドバとバッテリセルとの間隙を、第2バッテリセルがスライドすることで、事故発生時に、第1バッテリセルと第2バッテリとの導通を遮断することができる。
【0023】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バインドバは、前記第2バッテリセルが移動可能な方向に沿って、変位可能に取り付けられていることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、事故発生時に於いて、第2バッテリセルにより押されたバインドバが変位するので、バインドバが第2バッテリセルの移動を阻害することなく、事故時にバッテリセル同士の導通を遮断することができる。
【0024】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バインドバの、前記エンドプレートに締結される部分に、スリットを形成することを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、事故発生時には、スリットが形成されることで、バインドバが移動するので、バインドバが第2バッテリセルの移動を阻害することが無い。
【0025】
また、本発明の車両用電源装置では、前記バッテリセルは、車両の幅方向に沿って積層されることを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、車両の前後方向に沿って入力する衝撃により、第1バッテリセルと第2バッテリセルとの導通を遮断することができる。
【0026】
また、本発明の車両用電源装置では、衝突時に於ける前記バスバの回転を抑制する回転抑制部を更に具備することを特徴とする。これにより、本発明の車両用電源装置によれば、回転抑制部によりバスバの回転を抑制することで、衝突事故発生時にバスバをより確実にバッテリセルの電極から離すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る車両用電源装置10を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では、自車に後方から衝突が発生する事象を後突と称し、自車に前方から衝突が発生する事象を前突と称する。
【0029】
図1(A)は、車両用電源装置10を搭載した車両12を説明する斜視図である。
図1(B)は、車両12の接続構成を示す平面図である。
【0030】
図1(A)に示す如く、自動車や電車等の車両12には、モータや様々な電装部品に電力を供給するための車両用電源装置10が搭載されている。車両12としては、EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle)等を採用できる。そして、これらの車両12にも、高い蓄電機能を有した車両用電源装置10が搭載されている。
【0031】
車両12は、車体13と、車両12の底面14の近傍に規定されたバッテリ配置領域15に配設された車両用電源装置10と、車両用電源装置10から供給される電力により駆動されるモータ(図示せず)と、モータの駆動力で回転するタイヤ(図示せず)と、を有している。ここで、バッテリ配置領域15は、底面14以外の領域に配置することも可能であり、例えば、後部座席の後方にバッテリ配置領域15を設定することもできる。
【0032】
図1(B)に示す如く、上記したバッテリ配置領域15には複数の車両用電源装置10が配置されている。また、車両用電源装置10は、車両12の幅方向に沿う長手方向を有している。後述するバッテリセル20は、車両12の幅方向に沿って多数が積層配置されている。
【0033】
図2の斜視図および
図3の分解斜視図を参照して、車両用電源装置10を詳述する。以下の説明では、バッテリセル20Aないしバッテリセル20Mを、バッテリセル20またはバッテリ11と総称する場合もある。また、エンドプレート251とエンドプレート252を、エンドプレート25と総称する場合もある。更に、バインドバ261ないしバインドバ264を、バインドバ26と総称する場合もある。更にまた、バスバ23Aないしバスバ23Lを、バスバ23と総称することもある。
【0034】
車両用電源装置10は、左右方向に沿って積層配置されたバッテリセル20と、バッテリセル20の両端に配置されたエンドプレート25と、バッテリセル20の側方に配置されたバインドバ26とを有する。
【0035】
バッテリセル20は、リチウムイオンバッテリやニッケル水素バッテリであり、板状に成形されている。バッテリセル20は、本実施形態では、バッテリセル20Aないしバッテリセル20Mを有し、左右方向に沿って積層配置されている。ここで、バッテリは、バッテリスタック、バッテリモジュール等とも称される。ここで、バッテリセル20Aおよびバッテリセル20Mが、エンドプレート25により強固に保持される第1バッテリセルである。一方、バッテリセル20Bないしバッテリセル20Lが、第1バッテリセルよりも保持力が弱い第2バッテリセルである。ここで、
図3では、バッテリセル20を構成するバッテリセル20Aないしバッテリセル20Iのみを示している。
【0036】
バッテリセル20どうしの間には、セパレータ19が配置されている。セパレータ19は、エンドプレート25と比較すると低強度な樹脂から成る板状部材である。セパレータ19は、バッテリセル20どうしの絶縁、バッテリセル20同士の間に於ける風路形成、短絡時に於ける熱伝導抑制等を目的として、バッテリセル20同士の間に配設されている。
【0037】
上記したバッテリセル20等は、バッテリ保持部21により支持されている。バッテリ保持部21は、左右方向における両端部に配置された板状部材であるエンドプレート25と、エンドプレート25同士の間に架設されるバインドバ26と、を有する。
【0038】
エンドプレート25は、左端側に配置されるエンドプレート251と、右端側に配置されるエンドプレート252とを有する。エンドプレート25は、グラファイトが添加された高強度樹脂または金属から成る板状の部材である。エンドプレート251は、左端に配置されたバッテリセル20Aを抱え込むように左方から支え、これにより、バッテリセル20Aは前後方向に於いてエンドプレート251に固定されている。同様に、エンドプレート252は、右端に配置されたバッテリセル20Mを抱え込むように右方から支え、これにより、バッテリセル20Mは前後方向に於いてエンドプレート252に固定されている。即ち、車両12に衝突事故が発生することで、車両用電源装置10に前後方向に衝撃、即ち加速度が作用した場合でも、エンドプレート251とバッテリセル20Aとの、前後方向に於ける相対的位置は基本的には変更がない。同様に、エンドプレート252とバッテリセル20Mとの、前後方向に於ける相対的位置は基本的には変更がない。また、
図3に示すように、左端側に配置されるエンドプレート251は2枚の板状材料から成り、係る事項は右端側に配置されるエンドプレート252に関しても同様である。
【0039】
バッテリセル20の電極同士は、バスバ23により接続されている。具体的には、バッテリセル20Aとバッテリセル20Bとはバスバ23Aにより接続され、バッテリセル20Bとバッテリセル20Cとはバスバ23Bにより接続され、バッテリセル20Cとバッテリセル20Dとはバスバ23Cにより接続される。また、バッテリセル20Dとバッテリセル20Eとはバスバ23Dにより接続され、バッテリセル20Eとバッテリセル20Fとはバスバ23Eにより接続され、バッテリセル20Fとバッテリセル20Gとバスバ23Fにより接続される。更に、バッテリセル20Gとバッテリセル20Hとはバスバ23Gにより接続され、バッテリセル20Hとバッテリセル20Iとはバスバ23Hにより接続され、バッテリセル20Iとバッテリセル20Jとはバスバ23Iにより接続される。バッテリセル20Jとバッテリセル20Kとはバスバ23Jにより接続され、バッテリセル20Kとバッテリセル20Lとはバスバ23Kにより接続され、バッテリセル20Lとバッテリセル20Mとはバスバ23Lにより接続される。また、各バッテリセル20の電極は、ナット27により、バスバ23に締結されている。
【0040】
また、エンドプレート251とエンドプレート252との間には、バインドバ26が架設される。具体的には、エンドプレート251の四隅近傍と、エンドプレート252との四隅近傍との間に、バインドバ261、バインドバ262、バインドバ263およびバインドバ264が架設される。係る構成のエンドプレート25およびバインドバ26により、左右方向に於いてバッテリセル20およびセパレータ19に圧縮力が与えられる。バッテリセル20に圧縮力を与えることで、前後方向に於いて、各バッテリセル20と各セパレータ19との間に発生する摩擦力により、バッテリセル20Bないしバッテリセル20Lの位置は固定される。
【0041】
図4を参照して、バスバ23Aの構成を説明する。
図4(A)はバスバ23Aを示す平面図であり、
図4(B)はバスバ23Aの変形例を示す平面図である。
【0042】
図4(A)を参照して、バスバ23Aは、略矩形形状の金属板から成り、接続用孔231と接続用孔232が形成されている。
図2に示したように、接続用孔231にはバッテリセル20Aの柱状の電極22が挿入され、接続用孔232にはバッテリセル20Bの電極22が挿入される。
【0043】
接続用孔231は、バスバ23Aの外縁から離間した孔として形成されている。一方、接続用孔232とバスバ23Aの外縁との間には、切欠部24が形成されている。切欠部24の左右方向の幅は、接続用孔232の左右方向の幅よりも短くされる。また、切欠部24の左右方向の幅は、
図2に示したバッテリセル20の電極22の直径よりも短くされる。これにより、事故が発生していない通常時に於いては、電極22が接続用孔232に嵌合し、切欠部24を経由して電極22が不用意にバスバ23Aから離脱してしまうことを防止できる。また、後述するように、衝突事故が発生した際には、電極22が切欠部24を経由して、バスバ23Aから離脱し、バッテリセル20同士の導通を遮断することで、事故発生時に於ける安全性を確保できる。
【0044】
ここで、切欠部24は、バスバ23Aに形成されて衝突事故発生時にバッテリセル20どうしの導通を遮断する遮断部の一例である。遮断部としては、切欠部24以外の形態を採用することもでき、例えば、切欠部24に相当する部位を肉薄にした肉薄部等を、遮断部として採用することもできる。遮断部として肉薄部が採用された場合は、衝突事故発生時に肉薄部が断裂することで、上記した電極22がバスバ23Aから外れる。
【0045】
図4(B)に示すバスバ23Aでは、接続用孔232の近傍の形状が、
図4(A)に示したバスバ23Aとは異なる。ここでは、バスバ23Aの右方部分が後方に向かって湾曲しており、係る構成とすることで接続用孔232の周囲の強度を向上できる。更に、ここでは、切欠部24が左右方向に幅広に形成されており、係る構成により事故発生時に電極22を容易にバスバ23Aから離脱できる。更には、締結時に於いて他の導電部材と接触する面積を大きくとることができる。
【0046】
図5を参照して、衝突実発生時にバスバ23Aによりバッテリセル20の接続を遮断する方法を説明する。
図5(A)は衝突事故が発生していない通常時における車両用電源装置10を示す平面図であり、
図5(B)は衝突事故が発生した後の車両用電源装置10を示す平面図である。ここでは、バッテリセル20を前方に向かって移動させるような衝突事故が発生した場合を例に説明する。
【0047】
図5(A)を参照して、通常時に於いては、バッテリセル20どうしは、バスバ23より相互に接続されている。また、車両用電源装置10からの電力は、ここでは図示しないインバータにより所定の交流電力に変換された後に、その交流電力より図示しないモータが回転され、これにより車両12に駆動力が与えられる。バッテリセル20Aないしバッテリセル20Mは、左右方向に沿って一列に整列している。
【0048】
車両12に衝突事故が発生した場合、バッテリセル20を前方に移動させようとする加速度が作用する。ここで、バッテリセル20の左端に配置されたバッテリセル20Aは、エンドプレート251に抱え込まれており保持力が大きいため、前方には移動しない。同様に、バッテリセル20の右端に配置されたバッテリセル20Mは、エンドプレート252に抱え込まれていることで保持力が大きいため、前方に移動しない。
【0049】
一方、バッテリセル20Bないしバッテリセル20Lの前後方向に於ける位置は、互いの間に発生する摩擦力である小さな保持力により保持されている。また、衝突事故が発生した際には、各バッテリセル20には、その自重に衝突加速度を乗算した値に相当する力が作用する。後突の場合は、その力は各バッテリセル20を前方に向かって移動させようとする。この力は、中央部が最も小さく、端部で最大となる。即ち、中央部に配置されたバッテリセル20Fに作用する力が最小であり、端部に配置されたバッテリセル20Aおよびバッテリセル20Mに作用する力が最大である。しかしながら、上記したように、バッテリセル20Aはエンドプレート251により強固に保持されているため、バッテリセル20Aは移動しない。同様に、バッテリセル20Mは、エンドプレート252により保持されているため移動しない。よって、バッテリセル20全体を前方に移動させるような衝撃加速度が作用した場合、バッテリセル20Aとバッテリセル20Bとの間、および、バッテリセル20Mとバッテリセル20Lとの間で、加速度に起因したズレが発生し、バッテリセル20Bないしバッテリセル20Lが、前方に向かって移動する。
【0050】
図5(B)に、衝突による衝撃が作用した後の、車両用電源装置10の状態を示す。ここでは、バッテリセル20の両端に配置されたバッテリセル20Aおよびバッテリセル20Mは、衝突発生前と同じ位置に配置されている。一方、バッテリセル20Bないしバッテリセル20Lは、衝突により付与された加速度により、前方に向かって移動している。
【0051】
よって、バッテリセル20Bは、バッテリセル20Aに対して前方に向かって相対的に移動している。このことから、バッテリセル20Bの電極22は、バスバ23Aから離脱し、バッテリセル20Bとバッテリセル20Aとの導通は遮断される。また、バッテリセル20Lは、バッテリセル20Mに対して前方に向かって相対的に移動している。これにより、バッテリセル20Lの電極22は、バスバ23Lから離脱し、バッテリセル20Lとバッテリセル20Mとの導通は遮断される。
【0052】
上記のように、バッテリセル20の内部に於ける導通が遮断されると、ここでは図示しないCPUである制御装置の指示により、車両用電源装置10とインバータとの接続ラインに介装されたメインリレーを遮断し、車両用電源装置10の外部への電力供給を遮断する。また、車両用電源装置10の内部に於いては、バスバ23による接続が遮断されているので、車両用電源装置10を再度接続して利用しようとしても、制御装置の故障検出機能が動作することで、車両用電源装置10から他の機器に対して電源を供給することはできない。
【0053】
図6を参照して、
図5に示した状況に於いて、バッテリセル20Bの電極22がバスバ23Aから離脱する構成を詳述する。
図6は、衝突による衝撃が作用することで、バッテリセル20Bの電極22が、バスバ23Aの接続用孔232から離脱した後の状況を示す拡大平面図である。
【0054】
図6に示すように、接続用孔232の切欠部24から、電極22は前方に向かって離脱している。切欠部24の左右方向に於ける幅は、電極22の直径よりも短い。従って、バッテリセル20Bの電極22が、バスバ23Aから離脱する際には、切欠部24を左右方向に押し広げながら離脱する。このようにすることで、バッテリセル20Bの電極22が一旦、接続用孔232から外れたら、バッテリセル20Bの電極22を接続用孔232に再び挿入することは簡単ではない。よって、衝突事故を経た車両用電源装置10が再利用されてしまうことを防止できる。
【0055】
また、バッテリセル20Aの電極22の近傍には、回転抑制部30が配置されている。回転抑制部30は、例えば、バッテリセル20Aの上面から上方に向かって突起する突起状部位である。または、回転抑制部30としては、後方からバスバ23Aを引っかけるような構成が採用されても良い。回転抑制部30は、接続用孔231よりも右方側に於いて、バスバ23Aの前方側面に、前方から当接している。回転抑制部30を設けることで、衝突事故発生時に於いて、バスバ23Aが不必要に回転してしまうことを防止し、これにより、バスバ23Aの接続用孔232から、バッテリセル20Bの電極22を確実に離脱させることができる。
【0056】
図7を参照して、切欠部24の各形態を説明する。
図7(A)、
図7(B)および
図7(C)では、バッテリセル20Aを接続するバスバ23A、および、バッテリセル20Mを接続するバスバ23Lを示している。具体的には、
図7(A)は切欠部24が前方に向かって形成される場合を示し、
図7(B)は切欠部24が後方に向かって形成される場合を示し、
図7(C)は切欠部24が前後方向に向かって形成される場合を示している。
【0057】
図7(A)を参照して、ここでは、切欠部24は前方に向かって形成されている。具体的には、左端のバスバ23Aでは、切欠部24は、接続用孔232とバスバ23Aの前方側辺との間に形成されている。同様に、右端のバスバ23Lでも、切欠部24は、接続用孔232とバスバ23Lの前方側辺との間に形成されている。係る構成により、車両12に対して他車が後方から追突する後突が発生した際に、その衝撃を利用して、バスバ23Aの接続用孔232から、
図5(B)に示したバッテリセル20Bの電極22を離脱させることができる。同時に、バスバ23Lの接続用孔232から、
図5(B)に示したバッテリセル20Lの電極22を離脱させることができる。ここで、バスバ23Aに形成された切欠部24が第1切欠部であり、バスバ23Lに形成された切欠部24が第2切欠部である。
【0058】
図7(B)を参照して、ここでは、切欠部24は後方に向かって形成されている。具体的には、左端のバスバ23Aでは、切欠部24は、接続用孔232とバスバ23Aの後方側辺との間に形成されている。同様に、右端のバスバ23Lでも、切欠部24は、接続用孔232とバスバ23Lの後方側辺との間に形成されている。係る構成により、車両12に対して他車が前方から追突する前突が発生した際に、その衝撃を利用して、バスバ23Aの接続用孔232から、
図5(B)に示したバッテリセル20Bの電極22を離脱させることができる。同時に、バスバ23Lの接続用孔232から、
図5(B)に示したバッテリセル20Lの電極22を離脱させることができる。
【0059】
図7(C)を参照して、ここでは、切欠部24は後方および後方に向かって形成されている。具体的には、左端のバスバ23Aでは、切欠部24は、接続用孔232とバスバ23Aの前方側辺との間に形成されている。逆に、右端のバスバ23Lでは、切欠部24は、接続用孔232とバスバ23Lの後方側辺との間に形成されている。係る構成により、前突が発生した際は、その衝撃を利用して、バスバ23Lの接続用孔232から、
図5(B)に示したバッテリセル20Lの電極22を離脱させることができる。逆に、後突が発生した場合は、その衝撃を利用して、バスバ23Aの切欠部24から、
図5(B)に示したバッテリセル20Bの電極22を離脱させることができる。ここで、バスバ23Aが第1バスバに対応し、バスバ23Lが第2バスバに対応している。
【0060】
図8以降の図を参照して、衝突発生時に於いてバッテリセル20の移動を許容するためのバインドバ26の構成を説明する。
【0061】
図8を参照して、バインドバ26に間隙31を形成する構成を説明する。
図8(A)はバインドバ26の構成を示す車両用電源装置10の側面図であり、
図8(B)は衝撃が作用した後の車両用電源装置10を示す側面図である。
【0062】
図8(A)を参照して、車両用電源装置10では、エンドプレート25の四隅にバインドバ26が配置されている。具体的には、エンドプレート25の上側左隅にバインドバ261が配置され、下側左隅にバインドバ262が配置され、上側右隅にバインドバ263が配置され、下側右隅にバインドバ264が配置されている。また、各バインドバ26の端部は、ボルトナットなどからなる締結部29により、エンドプレート25に締結されている。
【0063】
また、バインドバ261の前端は、エンドプレート25(バッテリセル20)の前端よりも前方にせり出している。よって、バインドバ261の内部には、間隙31が形成されている。同様に、バインドバ262の前端が、エンドプレート25の前端よりも前方にせり出していることで、間隙31が形成されている。
【0064】
図8(B)を参照して、後突が発生することで、バッテリセル20が前方に押し出されると、バッテリセル20の前端部分は、バインドバ261およびバインドバ262に形成される間隙31に収納される。具体的には、
図5(B)に示した、バッテリセル20Bないしバッテリセル20Lの前端部分が間隙31に収納される。係る構成により、
図5(B)に示した後突時に於けるバッテリセル20Bないしバッテリセル20Lの前方への移動が、バインドバ261およびバインドバ262で阻害されることがない。よって、
図5(B)に示したように、後突時に於いてバスバ23Aから、バッテリセル20Bの電極22が確実に離脱し、車両用電源装置10の内部に於けるバッテリどうしの導通を確実に遮断することができる。
【0065】
図9は他の形態に係る、車両用電源装置10を示す側面図である。ここでは、バインドバ261およびバインドバ262が、エンドプレート25(バッテリセル20)の前端部によりも前方にせり出している。係る構成により、後突時に於いてバッテリセル20が前方に移動することが許容される。また、バインドバ263およびバインドバ264は、エンドプレート25(バッテリセル20)の後端よりも後方にせり出している。係る構成により、前突時に於いてバッテリセル20が後方に移動することが許容される。
【0066】
図10を参照して、バインドバ26にスリット28を形成する構成を説明する。
図10(A)はバインドバ26の構成を示す車両用電源装置10の側面図であり、
図10(B)は衝撃が作用した後の車両用電源装置10を示す側面図である。
【0067】
図10(A)を参照して、車両用電源装置10では、エンドプレート25の四隅にバインドバ26が配置されている。係る事項は
図8(A)を参照して説明した通りである。
【0068】
ここでは、バインドバ261およびバインドバ262は、前後方向に対して移動可能にエンドプレート25に取り付けされている。具体的には、バインドバ261およびバインドバ262には、前後方向に向かって伸びるスリット28が形成されている。スリット28に係合する締結部29により、バインドバ261およびバインドバ262は、前後方向に沿って移動可能とされている。一方、エンドプレート25の後端側に配置されるバインドバ263およびバインドバ264は、締結部29により移動しない状態で締結されている。
【0069】
図10(B)を参照して、後突が発生することで、バッテリセル20が前方に押し出されると、バインドバ261およびバインドバ262は、バッテリセル20の先端部に押されて、バッテリセル20と共に前方に向かって移動する。よって、
図5(B)に示したように、後突時に於いてバスバ23Aから、バッテリセル20Bの電極22が確実に離脱し、車両用電源装置10の内部に於けるバッテリどうしの導通を確実に遮断することができる。ここで、バッテリセル20の移動後に於いて、バインドバ261およびバインドバ262は、エンドプレート25に繋がったままでも良いし、エンドプレート25から離脱しても良い。
【0070】
図11は他の形態に係る、車両用電源装置10を示す側面図である。ここでは、バインドバ261、バインドバ262、バインドバ263およびバインドバ264の全てに、スリット28が形成される。また、バインドバ261ないしバインドバ264は、締結部29に係合する締結部29により、前後方向に沿って移動可能な状態でエンドプレート25に取り付けられている。
【0071】
係る構成により、後突時に於いてはバインドバ261およびバインドバ262がバッテリセル20と共に前方に向かって移動することで、
図5(B)に示したように、バッテリセル20の導通を遮断できる。また、前突時に於いてはバインドバ263およびバインドバ264がバッテリセル20と共に後方に向かって移動することで、バッテリセル20の導通を遮断できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、上記した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0073】
例えば、
図5(B)を参照して、上記した本実施形態では、バッテリセル20Aないしバッテリセル20Mは、車両12の車幅方向である左右方向に沿って積層されていたが、バッテリセル20Aないしバッテリセル20Mを車両12の前後方向に沿って積層することもできる。この場合、車両12に側方から入力する衝突加速度で、バッテリセル20Bないしバッテリセル20Lが移動することで、バスバ23Aとバッテリセル20Bとの接続が解除され、車両用電源装置10の不用意な再利用を防止できる。