【課題】基板間で発生したアウトガスを効率的に排出すること、及び、素子で発生した熱を効率的に排出することが可能な多層配線板を、その構造を徒に複雑化することなく実現する。
【解決手段】多層配線板(1)は、第1の基板(11)と、一方の主面(12a)の少なくとも一部が第1の基板(11)の一方の主面(11a)の少なくとも一部と接着剤層(13)により接着された第2の基板(12)とを備えている。第1の基板(11)の貫通孔(11c)には、第1のビア(14)が形成されており、第2の基板(12)の貫通孔(12c)には、第2のビア(15)が形成されている。第1の基板(11)の一方の主面(11a)に形成された、第1のビア(14)の第1のパッド(14a)と、第2の基板(12)の一方の主面(12a)に形成された、第2のビア(15)の第3のパッド(15a)とが、互いに離間し、第1のパッド(14a)の少なくとも一部と、前記第3のパッド(15a)の少なくとも一部とは、互いに対向している。
前記第1のパッドから前記アンテナ素子までの平面視における距離、又は前記第2のパッドから前記アンテナ素子までの平面視における距離のうち短い方が、前記アンテナ素子の動作周波数に対応する波長λの1/2以上である、
ことを特徴とする請求項7に記載の多層配線板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層配線板においては、多層配線板を構成する基板間で発生したアウトガスを効率的に排出することに加えて、多層配線基板に実装された素子で発生した熱を効率的に排出することが求められる。
【0006】
従来、これらの要求に応えるためには、基板間で発生したアウトガスを排出するための貫通孔とは別に、素子で発生した熱を排出するためのビア(しばしば「サーマルビア」と呼ばれる)を設ける必要があった。このため、多層配線板の構造が複雑になり、その結果、多層配線板の製造コストが高価になるという問題があった。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、基板間で発生したアウトガスを効率的に排出すること、及び、素子で発生した熱を効率的に排出することが可能な多層配線板を、その構造を徒に複雑化することなく実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1に係る多層配線板は、第1の基板と、接着剤層を介して一方の主面の少なくとも一部が前記第1の基板の一方の主面の少なくとも一部に接着された第2の基板と、を備え、前記第1の基板には、第1の貫通孔が形成されており、前記第1の基板の前記一方の主面において当該第1の貫通孔の周りに形成された第1のパッドと、前記第1の基板の他方の主面において当該第1の貫通孔の周りに形成された第2のパッドと、当該第1の貫通孔の側壁に形成され、当該第1のパッドと当該第2のパッドとを短絡する第1の導体とにより、第1のビアが構成されており、前記第2の基板には、第2の貫通孔が形成されており、前記第2の基板の前記一方の主面において当該第2の貫通孔の周りに形成された第3のパッドと、前記第2の基板の他方の主面において当該第2の貫通孔の周りに形成された第4のパッドと、当該第2の貫通孔の内部に形成され、当該第3のパッドと当該第4のパッドとを短絡する第2の導体とにより、第2のビアが構成されており、前記第1のパッドと、前記第3のパッドとが互いに離間し、前記第1のパッドの少なくとも一部と、前記第3のパッドの少なくとも一部とは、互いに対向している構成が採用されている。
【0009】
本態様によれば、前記第1の基板と前記第2の基板との間で発生したアウトガスを、前記第1の基板の前記他方の主面側及び前記第2の基板の前記他方の主面側に排出する機能、及び、前記第4のパッドに接続された熱源で発生した熱を、前記第1の基板の前記他方の主面側に排出する機能を、前記第1のビア及び前記第2のビアにより実現することができる。したがって、本態様によれば、これら2つの機能の両方を有する多層配線板を、その構造を徒に複雑化することなく実現することができる。
【0010】
本発明の態様2に係る多層配線板は、態様1に係る多層配線板において、前記第1のパッドと前記第3のパッドとの間には、前記接着剤層が介在している、という構成を採用したものである。
【0011】
本態様によれば、前記第1のパッドと前記第3のパッドとの間に空気が介在している場合と比べて、前記第3のパッドから前記1のパッドへの熱の伝導効率を高めることができる。したがって、本態様によれば、前記第1のパッドと前記第3のパッドとの間に空気が介在している場合と比べて、第4のパッドに接続された熱源で発生した熱を、より効率的に前記第1の基板の前記他方の主面側に排出することができる。
【0012】
本発明の態様3に係る多層配線板は、態様1又は2に係る多層配線板において、前記接着剤層の水蒸気透過係数は、5[g・20μ/m2・day](40℃、90%RH環境下)以上である、という構成を採用したものである。
【0013】
本態様によれば、アウトガスが前記接着剤層内を移動しやすい。したがって、アウトガスを効率的に前記第1の基板の前記他方の主面側に排出することができる。
【0014】
本発明の態様4に係る多層配線板は、態様1〜3の何れかに係る多層配線板において、前記第2の導体が前記第2の貫通孔を充填する導体である、という構成を採用したものである。
【0015】
本態様によれば、前記第2の基板の前記他方の主面側にアウトガスを排出することはできなくなるが、熱伝導は向上する。アウトガスの発生が少なく、放熱効果を高めたい時に有効である。
【0016】
本発明の態様5に係る多層配線板は、態様1〜4の何れかに係る多層配線板において、前記第2の基板の水蒸気透過係数は、0.5[g・20μ/m2・day](40℃、90%RH環境下)以下である、という構成を採用したものである。
【0017】
本態様によれば、第1のビアや第2のビアを用いてアウトガスを逃がさないと、多層配線板の膨れや第1の基板と第2の基板との剥離などの問題が生じ易い。
【0018】
本発明の態様6に係る多層配線板は、態様1〜5の何れかに係る多層配線板において、前記第1の基板の前記一方の主面と前記第2の基板の前記一方の主面との間にスペーサが設けられている、という構成を採用したものである。
【0019】
本態様によれば、前記第1のパッドと前記第3のパッドとを前記スペーサによって確実に離間させることができる。したがって、本態様によれば、前記第1の基板と前記第2の基板との間で発生したアウトガスを、より確実に前記第1の基板の前記他方の主面側及び前記第2の基板の前記他方の主面側に排出することができる。
【0020】
本発明の態様7に係る多層配線板は、態様1〜6の何れかに係る多層配線板において、前記第2の基板の前記一方の主面にアンテナ素子が設けられており、前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記接着剤層は、誘電率と誘電正接との積が0.02以下になる材料を用いて構成されている、という構成を採用したものである。
【0021】
本態様によれば、前記アンテナ素子から送信された電磁波を、前記第1の基板の前記他方の主面側から出射することができる。特に、本態様においては、前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記接着剤層の材料として、誘電率と誘電正接との積が0.02以下になる材料が用いられているので、本態様によれば、前記アンテナ素子から送信された電磁波を、効率的に前記第1の基板の前記他方の主面側から出射することができる。
【0022】
本発明の態様8に係る多層配線板は、態様7に係る多層配線板において、前記第1のパッドから前記アンテナ素子までの平面視における距離、又は前記第2のパッドから前記アンテナ素子までの平面視における距離のうち短い方が、前記アンテナ素子の動作周波数に対応する波長λの1/2以上である、構成を採用したものである。
【0023】
本態様によれば、前記第1のビアの前記第1のパッドが前記アンテナ素子の特性に与える影響を十分に小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、基板間で発生したアウトガスを効率的に排出すること、及び、素子で発生した熱を効率的に排出することが可能な多層配線板を、その構造を徒に複雑化することなく実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(多層配線板の構成)
本発明の一実施形態に係る多層配線板1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、多層配線板1の断面図である。
【0027】
多層配線板1は、
図1に示すように、第1の基板11と、第2の基板12と、接着剤層13と、第1のビア14と、第2のビア15と、を備えている。
【0028】
第1の基板11は、誘電体により構成された板状部材である。本実施形態においては、第1の基板11として、リジッド基板を用いている。第1の基板11は、第1の主面11a(特許請求の範囲における「第1の基板の一方の主面」の一例)と第2の主面11b(特許請求の範囲における「第1の基板の他方の主面」の一例)とを有している。ここで、第1の基板11の主面とは、第1の基板11の表面を構成する6つの面のうち、面積が最大の2つの面のことを指す。また、第1の基板11には、第1の基板11を第1の主面11aから第2の主面11bまでを貫通する貫通孔11cが設けられている。
【0029】
第1の基板11において、第1の主面11aにおける貫通孔11cの周りの領域には、第1のパッド14aが形成されている。第1のパッド14aは、導体により構成された膜状部材であり、その平面視形状(第1の主面11a及び第2の主面11bに直交する方向から視た形状)は、環状(本実施形態においては円環状)である。また、第1の基板11において、第2の主面11bにおける貫通孔11cの周りの領域には、第2のパッド14bが形成されている。第2のパッド14bは、導体により構成された膜状部材であり、その平面視形状は、環状(本実施形態においては円環状)である。第1のパッド14aと第2のパッド14bとは、貫通孔11cの内部に形成された第1の導体14cにより短絡されている。第1のパッド14a、第2のパッド14b、及び、第1の導体14cは、第1のビア14を構成する。
【0030】
なお、第1のビア14は、中空ビアである。すなわち、第1の導体14cの厚みは、貫通孔11cの断面の半径よりも小さい。このため、第1の主面11a側の空間と第2の主面11b側の空間とは、第1のビア14を介して互いに連通している。
【0031】
第2の基板12は、誘電体により構成された板状部材である。本実施形態においては、第2の基板12として、フレキシブル基板を用いている。第2の基板12は、複数の誘電体層が積層された多層基板であってもよい。第2の基板12は、第3の主面12a(特許請求の範囲における「第2の基板の一方の主面」の一例)と第4の主面12b(特許請求の範囲における「第2の基板の他方の主面」の一例)とを有している。ここで、第2の基板12の主面とは、第2の基板12の表面を構成する6つの面のうち、面積が最大の2つの面のことを指す。また、第2の基板12には、第2の基板12を第3の主面12aから第4の主面12bまでを貫通する第2の貫通孔12cが設けられている。第3の主面12aの少なくとも一部は、接着剤層13によって第1の主面11aの少なくとも一部に接着されている。
【0032】
第2の基板12において、第3の主面12aにおける貫通孔12cの周りの領域には、第3のパッド15aが形成されている。第3のパッド15aは、導体により構成された膜状部材であり、その平面視形状は、環状(本実施形態においては円環状)である。また、第2の基板12において、第4の主面12bにおける貫通孔12cの周りの領域には、第4のパッド15bが形成されている。第4のパッド15bは、導体により構成された膜状部材であり、その平面視形状は、環状(本実施形態においては円環状)である。第3のパッド15aと第4のパッド15bとは、貫通孔12cの内部に形成された第2の導体15cにより短絡されている。第3のパッド15a、第4のパッド15b、及び、第2の導体15cは、第2のビア15を構成する。第2のビア15は、第3のパッド15aの少なくとも一部が第1のパッド14aの少なくとも一部と対向する(平面視において重なり合う)位置に設けられている。
【0033】
なお、第2のビア15は、中空ビアであってもよいし、中実ビアであってもよいが、本実施形態においては、中空ビアである。中空ビアの場合、第2の導体は第2の貫通孔12cの側壁に形成された導体層である。中実ビアの場合、第2の導体は第2の貫通孔12cに充填された導体である。いずれの場合においても、第2の導体によって第3のパッド15aと第4のパッド15bとが短絡される。
【0034】
第1の主面11aと第3の主面12aとの間隔、すなわち、接着剤層13の厚みは、第1のパッド14aの厚みと第3のパッド15aの厚みとの和よりも大きい。したがって、第1のパッド14aと第3のパッド15aとは、互いに離間している。
【0035】
第4のパッド15bには、熱源Hとなる素子が半田等によって接続される。熱源Hとなる素子としては、例えば、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)等が挙げられる。
【0036】
(第1のビアの機能)
第1のビア14の有する2つの機能について、再び
図1を参照して説明する。
【0037】
第1のビア14の第1の機能は、熱(
図1における黒塗りの矢印)を排出する機能である。すなわち、熱源Hで発生した熱は、導体により構成された第2のビア15を介して第4の主面12b側から第3の主面12a側へと伝導した後、導体により構成された第1のビア14を介して第1の主面11a側から第2の主面11b側へと逃げる。このように、第1のビア14は、熱源Hで発生した熱を、第2の主面11b側へ排出する機能を、第2のビア15と共に担う。
【0038】
なお、第2のビア15から第1のビア14への効率的な熱伝導を実現するために、第2のビア15及び第1のビア14は、
図1に示すように、第3のパッド15aの少なくとも一部と第1のパッド14aの少なくとも一部とが互いに対向する(平面視において互いに重なり合う)ように配置されていることが好ましい。なぜなら、このような配置によって、第2のビア15と第1のビア14との間に介在する接着剤層13中を伝導する熱の伝導経路の長さが最小化されるためである。
【0039】
第1のビア14の第2の機能は、アウトガス(
図1における白塗りの矢印)を排出する機能である。すなわち、接着剤層13、第1の主面11a、又は、第3の主面12aにて発生したアウトガスは、中空ビアである第1のビア14を介して第1の主面11a側から第2の主面11b側へと排出される。このように、第1のビア14は、接着剤層13、第1の主面11a、又は、第3の主面12aにて発生したアウトガスを、第2の主面11b側へ排出する機能を担う。上述したように、第1のパッド14aと第3のパッド15aとを互いに離間させているのは、この機能を発現するためである。
【0040】
なお、アウトガスとしては、例えば、接着剤層13に含まれる水分、又は、第1の主面11a若しくは第3の主面12aに吸着した水分が、リフロー時に蒸発して発生する水蒸気が挙げられる。
【0041】
なお、本実施形態においては、第2のビア15を、第1のビア14と同様、中空ビアとする構成が採用されている。このため、第2のビア15は、第1のビア14と同様、アウトガスを第4の主面側へ排出する機能を担う。
【0042】
(第1の基板の材料及び厚みに関する補足)
上述したように、本実施形態においては、第1の基板11として、リジッド基板が用いられる。第1の基板11と第2の基板12との間にアンテナ素子を設ける場合(後述する変形例参照)、第1の基板11を構成する誘電体材料としては、誘電率と誘電正接との積が0.02以下になる誘電体材料を用いることが好ましい。このような誘電体材料としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレン、又は超低伝送損失多層基板材料が挙げられる。第1の基板11の厚みは、特に限定されず、典型例として0.3mm以上0.6mm以下とすることができる。
【0043】
(第2の基板の材料及び厚みに関する補足)
上述したように、本実施形態においては、第2の基板12として、フレキシブル基板が用いられる。第1の基板11と第2の基板12との間にアンテナ素子を設ける場合(後述する変形例参照)、第2の基板12を構成する誘電体材料としては、誘電率と誘電正接との積が0.02以下になる誘電体材料を用いることが好ましい。このような誘電体材料としては、例えば、液晶ポリマーが挙げられる。第2の基板12の厚みは、特に限定されず、典型例として200μm以上400μm以下とすることができる。
【0044】
なお、第2の基板12の水蒸気透過係数が0.5[g・20μ/m2・day](40℃、90%RH環境下)以下である場合、第1のビア14や第2のビアを用いてアウトガスを逃がさないと、多層配線板1の膨れや第1の基板11と第2の基板12との剥離などの問題が生じ易い。すなわち、第1のビア14のアウトガスを排出する機能は、この場合に特に有効であると言える。
【0045】
(接着剤層の材料及び厚みに関する補足)
第1の基板11と第2の基板12との間にアンテナ素子を設ける場合(後述する変形例参照)、接着剤層13を構成する接着剤としては、誘電率と誘電正接との積が0.02以下になる誘電体材料を用いることが好ましい。また、接着剤層13、第1の主面11a、第3の主面12aにて発生したアウトガスを、第1のビア14を用いて有効に排出するためには、接着剤層13を構成する接着剤として、水蒸気透過係数が5[g・20μ/m2・day](40℃、90%RH環境下)以上である接着剤を用いることが好ましい。このような接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤が挙げられる。接着剤層13の厚みは、特に限定されず、典型例として25μmとすることができる。
【0046】
(第1のビアの直径及び個数に関する補足)
第1のビア14の直径を大きくすることによって、熱を排出する機能及びアウトガスを排出する機能を高めることができる。第1のビア14の直径は、特に限定されず、典型例として200μmとすることができる。
【0047】
また、第1のビア14の個数を増やすことによっても、熱を排出する機能及びアウトガスを排出する機能を高めることができる。
図1においては、1つの第1のビア14を設ける構成を例示しているが、第1のビア14の個数は特に限定されない。2つの第1のビア14を設ける構成を採用してもよいし、3つ以上の第1のビア14を設ける構成を採用してもよい。
【0048】
(多層配線板の第1の変形例)
多層配線板1の第1の変形例(以下、「多層配線板1A」と記載する)について、
図2を参照して説明する。
【0049】
図2に示す多層配線板1Aは、
図1に示す多層配線板1にスペーサ16を追加したものである。スペーサ16は、
図2に示すように、第1の基板11と第2の基板12との間に配置され、第1の主面11aと第3の主面12aとの間隔、すなわち、接着剤層13の厚みを、所定の値に保つために利用される。スペーサ16の厚みを、第1のパッド14aの厚みと第3のパッド15aの厚みとの和よりも大きくすることで、第1のパッド14aと第3のパッド15aとを確実に離間させることができる。スペーサ16は、第1のパッド14a及び第3のパッド15aを取り囲むように配置された、(1)1つの筒状部材により実現されていてもよいし、(2)3つ以上の柱状部材や球状部材等により実現されていてもよい。また、スペーサ16は、(1)第1の基板11の一部として(第1の主面11aに形成された凸部として)実現されていてもよいし、(2)第2の基板12の一部として(第3の主面12aに形成された凸部として)実現されていてもよいし、(3)第1の基板11の一部として(第1の主面11aに形成された凸部として)、及び第2の基板12の一部として(第3の主面12aに形成された凸部として)実現されていてもよい。
【0050】
多層配線板1Aによれば、第1のパッド14aと第3のパッド15aとをより確実に離間することができる。したがって、第1のビア14のアウトガスを排出する機能を、より確実に発現させることができる。
【0051】
(多層配線板の第2の変形例)
多層配線板1の第2の変形例(以下、「多層配線板1B」と記載する)について、
図3を参照して説明する。
【0052】
図3に示す多層配線板1Bは、
図1に示す多層配線板1にアンテナ素子17を追加したものである。アンテナ素子17は、
図3に示すように、第3の主面12aに形成される。アンテナ素子17は、例えば、要求される特性に応じた平面視形状を有する導体層として実現される。
【0053】
多層配線板1Bによれば、アンテナ素子17から送信された電磁波を、第2の主面11b側から出射することができる。特に、上述したように、第1の基板11、第2の基板12、及び接着剤層13の材料として、誘電率と誘電正接との積が0.02以下になる材料を用いている場合には、アンテナ素子17から送信された電磁波を、効率的に第2の主面11b側から出射することができる。
【0054】
なお、多層配線板1Bにおいては、第1のパッド14aからアンテナ素子17までの平面視における距離、又は、第2のパッド14bからアンテナ素子17までの平面視における距離のうち短い方を距離Dとして、距離Dがアンテナ素子17の動作周波数に対応する波長λの1/2以上であることが好ましい。これにより、第1のパッド14aがアンテナ素子17の特性に与える影響を十分に小さく抑えることができる。
図3に示すように、多層配線板1Bにおいては、第1のパッド14aからアンテナ素子17までの平面視における距離が距離Dである。
【0055】
(多層配線板の第3の変形例)
多層配線板1の第3の変形例(以下、「多層配線板1C」と記載する)について、
図4を参照して説明する。
【0056】
図4に示す多層配線板1Cは、
図1に示す多層配線板1の接着剤層13の一部を省略したものである。多層配線板1においては、
図1に示すように、接着剤層13が第1のパッド14aの直下、及び、第3のパッド15aの直上の領域にも設けられている。これに対して、多層配線板1Cにおいては、
図4に示すように、接着剤層13が当該領域に設けられていない。
【0057】
多層配線板1Cにおいても、第1のビア14の熱を排出する機能、及び、アウトガスを排出する機能は有効である。ただし、接着剤の方が空気よりも熱伝導性が高いので、多層配線板1の方が多層配線板1Cよりも第1のビア14の熱を排出する機能が有効に発揮される。一方、第1のビア14のアウトガスを排出する機能については、多層配線板1Cの方が多層配線板1よりも有利である。
【0058】
(多層配線板の第4の変形例)
多層配線板1の第4の変形例(以下、「多層配線板1D」と記載する)について、
図5の(a)及び(b)を参照して説明する。
図5の(a)は、多層配線板1Dの断面図である。
図5の(b)は、多層配線板1Dが備えている第2のビア15の第2の導体15cの拡大断面図であり、
図5の(a)に示したA−A’線に沿った拡大断面図である。
【0059】
図5に示す多層配線板1Dは、
図1に示す多層配線板1の第2の基板12を、複数の誘電体層が積層された多層基板により構成したものである。すなわち、多層配線板1Dが備えている第2の基板12は、第1の誘電体層121と、接着剤層123と、第2の誘電体層122とがこの順番で積層されてなり、第1の誘電体層121の一方の主面の少なくとも一部は、接着剤層123によって第2の誘電体層122の一方の主面の少なくとも一部に接着されている。このように構成された多層配線板1Dの第2の基板12は、フレキシブル基板である。なお、接着剤層123を構成する接着剤は、接着剤層13を構成する接着剤と同じ接着剤であることが好ましい。
【0060】
図5の(b)に示すように、多層配線板1Dを構成する第2の導体15cは、多層配線板1を構成する第2の導体15c(
図1参照)と異なり、第2の貫通孔12cの側壁の一部に形成されている。換言すれば、多層配線板1Dを構成する第2の導体15cは、中空ビアの一部(
図5の(b)では、第2の貫通孔12cを時計とみなした場合、1時半の短針の位置から4時半の短針の位置に対応する部分)を削除したものである。
【0061】
また、
図5の(a)に示すように、第3のパッド15a及び第4のパッド15bの各々には、それぞれ、第2の貫通孔12cと重なる位置に開口が形成されている。したがって、接着剤層123は、(1)第2のビア15を介して第4の主面12b側の空間と連通すると共に、(2)第2のビア15を介して第3の主面12a側の接着剤層13と連通している。
【0062】
多層配線板1Dの第1のビア14及び第2のビア15の各々は、それぞれ、多層配線板1の第1のビア14及び第2のビア15と同じく、熱を排出する機能を有する。なお、
図5の(a)においては、熱を排出する機能を表す矢印(
図1における黒塗りの矢印)の図示を省略している。
【0063】
多層配線板1Dの第2のビア15は、そのうえで更に、第2の基板12で発生するアウトガス(
図5の(a)及び(b)における白塗りの矢印)を排出する機能を有する。具体的には、接着剤層123にて発生したアウトガスは、第2のビア15を介して第3の主面12a側の接着剤層13及び第4の主面12b側の空間へと排出される。なお、第3の主面12a側の接着剤層13に排出されたアウトガスは、第1のビア14を介して第2の主面11b側の空間へ排出される。このように、第2のビア15は、接着剤層123にて発生したアウトガスを、第4の主面12b側の空間及び第2の主面11b側の空間へ排出する機能を担う。
【0064】
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。上述した実施形態及びその変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。