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特開2020-178936診断支援装置及び診断支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-178936(P2020-178936A)
(43)【公開日】2020年11月5日
(54)【発明の名称】診断支援装置及び診断支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20201009BHJP
【FI】
   A61B5/00 101M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-84716(P2019-84716)
(22)【出願日】2019年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】598093897
【氏名又は名称】スターメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 諭
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB01
4C117XB09
4C117XC21
4C117XD27
4C117XE27
4C117XG22
4C117XJ34
(57)【要約】
【課題】食道の運動障害の診断を行うための検査結果の解析に必要なランドマークを自動で設定するとともに、解析後に自動設定されたランドマークの位置を確認する場合に当たっては、測定回ごとの画像を一覧表示する。
【解決手段】実施の形態における診断支援装置は、検査部と、ランドマーク設定部と、解析診断部と、表示制御部と、を備える。検査部は、被検体内部の消化管を物が通過する際の圧力を、消化管の長手方向に沿って配置されるセンサから取得する。ランドマーク設定部は、検査部において取得された検査結果に基づき、予め定められている条件に従ってランドマークを自動で設定する。解析診断部は、設定されたランドマークを用いて検査結果を解析して解析結果を取得する。表示制御部は、解析結果を表示部に表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内部の消化管を物が通過する際の圧力を、前記消化管の長手方向に沿って配置されるセンサから取得する検査部と、
前記検査部において取得された検査結果に基づき、予め定められている条件に従ってランドマークを自動で設定するランドマーク設定部と、
設定された前記ランドマークを用いて前記検査結果を解析して解析結果を取得する解析診断部と、
前記解析結果を表示部に表示する表示制御部と、
を備えることを特徴とする診断支援装置。
【請求項2】
医師が前記ランドマークの確認を行い、前記ランドマークの修正が必要となった場合には、前記表示制御部は、検査における測定回ごとの前記検査結果を示す画像を一覧で前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の診断支援装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記医師が前記ランドマークの修正が必要であるとして選択した特定の測定回の前記画像を、前記ランドマークとともに前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2に記載の診断支援装置。
【請求項4】
前記解析診断部は、前記医師による前記ランドマークの修正が完了した後に、新たに設定された前記ランドマークを用いて改めて前記検査結果の解析を実行することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の診断支援装置。
【請求項5】
前記解析診断部は、前記解析結果に基づいて診断結果を算出し、前記表示制御部は、前記診断結果を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の診断支援装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記診断結果を算出するに至った理由を併せて前記表示部に表示させることを特徴とする請求項5に記載の診断支援装置。
【請求項7】
前記解析診断部は、前記医師による前記ランドマークの修正が完了した場合には、新たに設定された前記ランドマークを用いて取得された前記解析結果に基づいて改めて診断結果を算出することを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の診断支援装置。
【請求項8】
診断支援装置に、
被検体内部の消化管を物が通過する際の圧力を測定する検査についての検査結果を取得するステップと、
医師からの解析要求を受けて、前記検査結果に対する解析処理を開始するステップと、
前記検査結果を構成する複数の測定回のそれぞれにランドマークを自動で設定するステップと、
設定された前記ランドマークを用いて前記検査結果を解析して解析結果を取得するステップと、
を含む処理を実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項9】
前記診断支援プログラムは、さらに、
前記検査結果の前記解析結果を表示させた後に、前記医師による前記ランドマークの修正要求を受けて、前記測定回ごとの前記検査結果を示す画像を一覧で表示させるステップを実行することを特徴とする請求項8に記載の診断支援プログラム。
【請求項10】
前記診断支援プログラムは、さらに、
前記検査結果の解析を実行するステップの後に、取得された前記解析結果に基づいて診断結果を算出するステップを実行することを特徴とする請求項8に記載の診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、診断支援装置及び診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の消化管では、消化管壁の収縮と弛緩を繰り返すことにより、消化管内の物を移動させる。例えば、当該消化管が食道の場合、咽頭から胃に向かって、食道の蠕動運動(筋肉の収縮)が順に行われることで飲み込んだ飲食物が移動される。
【0003】
この運動については、食道の蠕動運動を計測し波形で表した場合に、当該波形における圧力の高い山が順に移動することからも分かる。これが、何らかの疾患を抱えていると、圧力に異常を来すことになるため、圧力値を見て疾患の有無、場所等を把握する必要がある。
【0004】
ここで、食道の運動障害の診断を行うべく実施される食道の収縮に伴う圧力を測定する検査については、これまで様々な方法が開発されている。その方法としては、例えば、Infused catheter法やTransducer法を挙げることができる。
【0005】
Infused catheter法は、サイドホールが複数設けられているカテーテル内に持続的にゆっくりと水を流し、サイドホールからの水の流れを妨げる圧力を測定する方法である。この方法の場合、圧測定センサは、水を流すポンプに取り付けられている。一方Transducer法は、カテーテルに直接圧測定センサを取り付けて、挿入された食道の内圧を測定する方法である。また、これらの方法においてカテーテルに設けられるサイドホールや圧測定センサの数は少なかった。
【0006】
ここで食道の運動障害の診断を行うためには、例えば、食道と胃との間にある下部食道括約筋(LES:Lower esophageal sphincter)の機能評価が重要となる。しかしながら、上述した方法ではLESの持続的な測定ができなかったり、測定が煩雑であったりする等の不都合が生じていた。
【0007】
そこで、これらの不都合を解消する検査方法として、高解像度食道内圧測定(HRM:High resolution manometry)が開発されている。この方法は、上述したTransducer法を改良した方法であるといえ、検査において、圧測定センサの数を、例えば、36個配置したカテーテルを利用する。このようなカテーテルを用いることによって、圧測定センサが少ないことに起因するセンサ間の死角がなくなり、咽頭から胃までの食道全体にわたってその内圧を連続して測定することができるようになった。
【0008】
またこのHRMの検査方法を用いると、食道内の各所における圧の変化を波形で表示させるだけではなく、例えば、高圧の領域を赤、低圧の領域を青というように、圧の変化を色の変化で画像表示(トポグラフィー表示)させることも可能である。
【0009】
このような食道の運動障害の診断を行うためには、診断の精度を上げるためにも複数回の検査が行われる。そのため、例えば、LESや上部食道括約筋(UES:Upper esophageal sphincter)等、解析に必要な項目(以下、このような項目を適宜「ランドマーク」と表す)を測定するセンサの位置は検査の回数に拘わらず食道内においていつも同じ位置に配置されている必要がある。
【0010】
但し、このHRMの検査方法を用いる場合、検査ごとに被検体が飲む液体、或いは、食道の収縮によって測定の度にカテーテルが移動することが考えられる。つまりセンサの食道内における位置は、測定回ごとに変化してしまう可能性がある。そこで、現実には診断を行う医師が、検査終了後にセンサの位置、すなわち、ランドマークの位置を検査ごとに調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第8790275号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、食道の運動障害の診断を行うための上記検査は、各被検体に対して、それぞれ、一般的に10回、最低でも8回は繰り返し検査をする必要がある。このような状態の下で、医師が測定回ごとに都度ランドマークの位置を調整しなければならないとすると診断までの対応が非常に煩雑となる。
【0013】
また、ランドマークの位置を調整するためには、調整の対象となる測定回の表示画像を都度表示させて調整処理を行う必要がある。そのため、複数の検査に対して調整が必要な場合は、検査ごとに画像を表示させなければならない。また、検査全体の画像をまとめて見ることもできず、煩雑、不便である。
【0014】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、食道の運動障害の診断を行うための検査結果の解析に必要なランドマークを自動で設定するとともに、解析後に自動設定されたランドマークの位置を確認する場合に当たっては、測定回ごとの画像を一覧表示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施の形態における診断支援装置は、検査部と、ランドマーク設定部と、解析診断部と、表示制御部と、を備える。検査部は、被検体内部の消化管を物が通過する際の圧力を、消化管の長手方向に沿って配置されるセンサから取得する。ランドマーク設定部は、検査部において取得された検査結果に基づき、予め定められている条件に従ってランドマークを自動で設定する。解析診断部は、設定されたランドマークを用いて検査結果を解析して解析結果を取得する。表示制御部は、解析結果を表示部に表示する。
【0016】
実施の形態における診断支援プログラムは、診断支援装置に、被検体内部の消化管を物が通過する際の圧力を測定する検査についての検査結果を取得するステップと、医師からの解析要求を受けて、検査結果に対する解析処理を開始するステップと、検査結果を構成する複数の測定回のそれぞれにランドマークを自動で設定するステップと、設定されたランドマークを用いて検査結果を解析して解析結果を取得するステップとを含む処理を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明はこのような構成を採用したことから、食道の運動障害の診断を行うための検査結果の解析に必要なランドマークを自動で設定するとともに、解析後に自動設定されたランドマークの位置を確認する場合に当たっては、測定回ごとの画像を一覧表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態における診断支援装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態において表示部に表示される解析結果、診断結果及びその理由の表示態様の一例を示す説明図である。
図3】実施の形態における表示部に表示される、検査における測定回ごとの検査結果を示す画像の一覧の表示例である。
図4図3に示される画像一覧に表示された測定回ごとの検査結果を示す画像の拡大図の一例である。
図5】実施の形態において画像一覧の中から選択されて表示部に表示されたランドマークの修正対象となる測定回の画像を示す表示例である。
図6】実施の形態において消化管の運動障害の診断を行う際の大まかな流れを示すフローチャートである。
図7】実施の形態において消化管の運動障害の診断を行う際に行われる検査の流れを示すフローチャートである。
図8】実施の形態において消化管の運動障害の診断を行う際に行われる解析、診断の流れを示すフローチャートである。
図9】実施の形態において消化管の運動障害の診断を行う際に行われる解析、診断の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[診断支援装置の構成]
図1は、実施の形態における診断支援装置1の全体構成を示すブロック図である。診断支援装置1は、例えば、パーソナルコンピュータである。また、例えば、医療機関内に構築されている各種ネットワークシステムに接続可能とされているワークステーションであっても良い。さらに、診断支援装置1は、後述する各種機能を実行可能に構成された診断支援のための専用の装置であっても良い。
【0021】
診断支援装置1は、消化管の運動障害の検査、検査技師や診断を行う医師(以下、これらの者をまとめて「医療従事者」と表す。)が利用する装置であることから、いわゆる検査室や診察室等に配置されている。但し、このように据え置かれて利用されるだけではなく、例えば、訪問検査等における利用も考慮して、可搬型、携帯型の態様を採用することもできる。
【0022】
医療従事者は、診断支援装置1を利用して、消化管の運動障害の検査、診断を行う。ここで「消化管」としては、様々な部位が該当するが、以下の説明においては食道を例に挙げて説明する。
【0023】
実施の形態における診断支援装置1は、入力部11と、ディスプレイ12と、記憶部13と、通信制御部14と、リムーバブルディスク15と、検査部16と、ランドマーク設定部17と、解析診断部18と、表示制御部19と、制御部20とを備えている。また、これらの各部はバスBを介して互いに接続されている。
【0024】
入力部11は、例えば、検査プロトコルの選択、画像表示、画像の切り替え、モード指定や各種設定などの医療従事者による様々な入力操作を受け付ける。入力部11を介して入力された医療従事者の操作は、入力信号に変換されてバスBを介して制御部20等に送信される。
【0025】
この入力部11としては、例えば、GUI(Graphical User Interface)、或いは、ボタンやキーボード、トラックボール、ディスプレイ12に表示されるタッチパネル等の入力デバイスを用いることが可能である。
【0026】
ディスプレイ12は、制御部20の処理結果等を表示する。また、食道の運動障害の診断に必要な検査条件を表示し、或いは、検査結果に基づく解析結果や自動診断の結果を表示する。さらに、表示制御部19からバスBを介して出力信号を受信し、例えばランドマークの修正が必要な場合に測定回ごとの検査結果を一覧で表示する。
【0027】
ディスプレイ12は、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどを用いることが可能である。また、当該ディスプレイ12の他、後述する診断支援装置1に接続される、印刷機等の外部表示装置も含めて、ディスプレイ12は表示部の一部を構成する。
【0028】
なお、本発明の実施の形態においては、図1に示すように、入力部11、ディスプレイ12を診断支援装置1の1つの構成要素として記載しているが、このような構成に限られない。例えば、ディスプレイ12を診断支援装置1の構成要素ではなく、診断支援装置1とは別体に構成することも可能である。また、入力部11を当該別体のディスプレイを用いたタッチパネルとすることも可能である。
【0029】
記憶部13は、例えば、半導体や磁気ディスクで構成されており、制御部20等で実行されるプログラムやデータが記憶されている。また、例えば、診断支援装置1に上述したセンサSが接続されている場合には、当該センサSから送信されてくる信号である、例えば検査結果が記憶される。或いは、解析、診断の処理が行われる際に用いられる基準値(閾値)等が記憶されている。
【0030】
さらに、記憶部13には、食道の運動障害の診断を行う際に利用される検査プログラムや診断支援プログラムが記憶されている。なお、検査プログラム、診断支援プログラムについては、ここでは別々のプログラムとして示しているが、両者を1つのプログラムとして構成し、記憶部13に記憶させることとしても良い。
【0031】
なお、本発明の実施の形態においては、診断支援装置1内に記憶部13が設けられている場合を前提に以下、説明する。但し、診断支援装置1と無線、有線を問わず接続される、サーバ装置やハードディスクドライブ等の外部記憶媒体を記憶部として利用することとしても良い。
【0032】
またここでは、上述した検査プログラムや診断支援プログラム、センサSから送信されてくる信号等は全て記憶部13内に記憶されていることを前提としている。但し、記憶部13を複数設けて、検査プログラムや診断支援プログラム、センサSから送信されてくる信号等をそれぞれ別に記憶させることも可能である。
【0033】
通信制御部14は、図示しない通信ネットワークに互いに接続される、例えば、図示しない医用画像診断装置(モダリティ)、サーバ装置やワークステーション等と診断支援装置1とを接続させる役割を担っている。通信ネットワークNの例としては、LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークを挙げることができる。
【0034】
また、この通信制御部14及び通信ネットワークを介して他の機器とやり取りされる情報や医用画像に関する規格は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等、いずれの規格であっても良い。また、通信ネットワーク等との接続に当たっては、有線、無線を問わない。
【0035】
リムーバブルディスク15は、光ディスクやフレキシブルディスクのことであり、ディスクドライブによって読み書きされた信号は、バスBを介して制御部20に送受信される。また、このリムーバブルディスク15を上述した記憶部13の一部として利用することも可能である。
【0036】
検査部16は、食道の運動障害の診断のための検査を実行する。ここで当該検査は、上述したHRM(高解像度食道内圧測定)の方法で行われる。この検査は、被検体の鼻からカテーテル(後述)を挿入して、被検体に水等の液体を嚥下してもらうことで、喉から食道、胃に向けて物(ここでは液体)が落ちていく状態(流れ)を観察するものである。具体的には、カテーテルに設けられているセンサで液体を飲んだ時の圧力(食道の内圧)を計測する。
【0037】
検査自体は、10回(最低8回)行われて診断の基礎とされる。また、複数回を連続して行うのではなく、液体を飲む(計測開始)、測定終了、インターバルの繰り返しで行われる。測定回ごとに波形が取得される。そして取得された波形を基に、解析が行われ、例えば、解析結果がカラートポグラフィー(color−topography)で表され、ディスプレイ12に表示される。また、解析結果を用いて診断結果をディスプレイ12に表示させることもできる。
【0038】
検査部16には、センサSが接続されている。このセンサSは、例えば、カテーテルと言われる、診断支援装置1とは別の装置に設けられている。食道の運動障害の検査が行われる際に、鼻から被検体の内部に当該カテーテルが挿入されることで、センサSが配置される食道の各部における食道の収縮時の圧力が測定される。
【0039】
このようにセンサSは、カテーテルに設けられた食道の内圧を測定するための圧測定センサである。圧測定センサであれば、その形態は問わない。カテーテルには、当該センサSが、例えば、カテーテルの長手方向に沿って、例えば36個設けられていることから、カテーテルが食道に挿入された際に、センサSが食道の上部から胃との境までの間に配置されることになる。
【0040】
検査部16の具体的な処理は、概ね次の通りである。すなわち、検査部16は、例えば、入力部11を介して医療従事者からの検査実行の信号を受信すると、表示制御部19等を介して、検査条件等の入力画面をディスプレイ12に表示させる。また、検査条件等が定まり、実際に検査が開始されると、センサSにおいて測定された食道の内圧に関する情報(波形データ)が検査結果として取得される。取得された検査結果は、例えば、記憶部13に送信されて記憶される。
【0041】
食道の運動障害の診断に必要な検査においては、上述したように、概ね10回の測定が行われる。検査部16では、測定回ごとの検査結果を都度記憶部13に送信し記憶させる。但し、複数の測定回の検査結果をまとめて記憶部13に送信することとしても良い。
【0042】
当該検査が行われることで、例えば、正常な人であれば、咽頭から胃に向かって、食道の蠕動運動(筋肉の収縮)が順に行われる。この点は、センサSによって取得された波形データを見ても圧力の高い山が時間軸に沿って順に移動することからも分かる。これが、何らかの疾患を抱えていると、圧力に異常を来すことになる可能性がある。つまり検査によって取得された圧力値を見て疾患の有無、場所等を把握する。
【0043】
すなわち、HRMの検査方法を用いて検査を行うことによって、簡易かつ適切に上述した上部食道括約筋(UES)から下部食道括約筋(LES)まで連続的に食道の運動機能を評価することができる。
【0044】
ランドマーク設定部17は、医療従事者から検査結果の解析、診断を求められた場合に測定回ごとの検査結果に対して自動的にランドマークを付与する。ここでランドマークとは、検査結果を解析、診断するために必要な項目のことである。
【0045】
ランドマークとしては、例えば、上述したUES、LESの他、スワロー、GASTRIC等を挙げることができる。まず、スワロー(SW)は、検査時における嚥下のタイミングを表している。また、「GASTRIC」は、胃の位置を表している。
【0046】
上述したように、検査を行う場合には、被検体の鼻からカテーテルを挿入することでカテーテルに設けられているセンサSが食道の内圧を測定する。但し、検査のために液体を嚥下した場合、或いは食道の収縮等により、測定のたびにカテーテルが上下に移動する可能性がある。
【0047】
カテーテルの位置が上下に移動する、ということは、すなわち、センサSの位置が上下することに他ならず、測定の都度測定位置が変化してしまってはランドマークも移動することになり、正確な検査結果を得ることは難しい。
【0048】
そのためこれまでは、医師が全ての測定回について都度、ランドマークの位置を設定していた。すなわち、医師は、全ての測定が完了した後、或いは、個々の測定が完了する度にランドマークを設定して、カテーテルが移動することによる解析結果のずれをなくすように処理していた。しかしながら、測定回ごとにランドマークを設定することは非常に手間が掛かり、迅速でバラツキのない診断結果を得る、という観点からは適切ではない場合も出てくる。
【0049】
そこで、本発明の実施の形態におけるランドマーク設定部17は、測定が完了して得られた検査結果に対して、測定回ごとに自動的にランドマークを設定する。具体的には、まずランドマーク設定部17は、記憶部13に記憶されている波形データを取得する。そして、測定回ごとにランドマークを1つずつ設定する。
【0050】
例えば、UESについては、ランドマーク設定部17は、波形データの、例えば上部1/3の部分における静止状態の縦方向の波形を求め、平均波形を算出する。そして、算出された平均波形から、所定の値を超えるピーク位置を算出する。ピーク位置が1つだけ算出できた場合には、その位置をUES位置とする。また、この他、当該ピーク位置がある場合、単数か複数かによって、それぞれ適切な位置をUES位置と設定する。
【0051】
また、例えば、LESについては、ランドマーク設定部17は、波形データの、例えば下部1/3の部分における静止状態の縦方向の波形を求め、平均波形を算出する。そして算出された平均波形から所定の値を超えるピーク位置を算出する。ピーク位置が1つだけ算出できた場合には、その位置をLES位置とする。また、この他、当該ピーク位置がある場合、単数か複数かによって、それぞれ適切な位置をLES位置と設定する。
【0052】
スワローの場合は、ランドマーク設定部17は、UESの波形に基づいて、順に圧力値を把握し、例えば、圧力値が落ち込む時点をスワローの位置と判定し、スワローのランドマークを設定する。
【0053】
このようにランドマーク設定部17が自動で全ての測定回における検査結果に対してランドマークを設定することで、医師が個別にランドマークを設定するよりもそのバラツキを抑えることができる。従って、ランドマークを設定する医師の癖等を排除でき、より普遍的な解析結果、診断結果を迅速に提供することができる。
【0054】
以上、ランドマーク設定部17によるランドマークの設定について、いくつかのランドマークを例示として挙げて説明した。ランドマーク設定部17は、設定の必要な上述したランドマーク以外のランドマークについても、全ての測定回ごとに1つずつ自動で設定する。
【0055】
一方、ランドマーク設定部17が自動設定したランドマークを基に、測定回ごとの解析結果や診断結果が出された後に、医師がランドマークの確認を行い、ランドマークの修正が必要となった場合には、医師がランドマークを個別に修正することになる。この場合、医師が手動でランドマークの再設定を行うことになるが、この場合には、ランドマーク設定部17は、医師の入力部11を介した入力作業に応じて、ランドマークの位置を移動させる。
【0056】
解析診断部18は、医師が検査の結果を要求した場合に、検査結果を基にした解析結果、診断結果を算出する。なお、以下においては、測定回ごとの結果を算出することを「解析」すると表現し、全ての測定回における解析結果を基に、医師が最終的な診断を行う際に参照可能な情報を算出することを「診断」と表現する。
【0057】
図2は、実施の形態において表示部に表示される解析結果、診断結果及びその理由の表示態様の一例を示す説明図である。具体的には、ディスプレイ12に表示される状態を示している。
【0058】
図2における説明図においては、大きな枠の中に左上に「検査値」と記載された表示領域と、左上に「理由」と記載された表示領域が上下二段にわたって表示されている。「検査値」の表示領域には解析結果が、一方、「理由」の表示領域には診断結果が、その理由とともに表示されている。
【0059】
まず、「検査値」の表示領域には、測定回ごとの解析結果が示されている。当該表示領域には、左から「Swallow」、「IRP」、「DCI」、「DL」、「PB」、「Contractility」、「BASE」の7つの項目が示されている。
【0060】
このうち、「Swallow」は、測定回を示している。ここでは「WS#1」から「WS#10」までの10個の項目が縦に表示されており、これらがそれぞれの測定回を示している。例えば、「WS#1」は、1回目の測定を示している。そして、10個の項目が表示されているということは、10回検査が行われたことを示している。
【0061】
従って、「Swallow」以外の5つの項目が解析結果ということになり、測定回ごとに横に値を見ていくことによって、各測定回における項目ごとの解析結果が把握できることになる。
【0062】
「IRP」とは、「integrated relaxation pressure」の略で、積算弛緩圧、つまり、LESの部分における、例えば低い方から4秒間の(所定の時間内の)平均的な圧力を示している。また、「DCI」とは、「distal contractile integral」の略で、積算遠位収縮を示している。「DL」は、「distal latency」の略で遠位潜時を、また、「PB」は「peristaltic breaks」の略で蠕動の中断を示している。さらに、「Contractility」は、収縮性を示している。また、「BASE」は、UESとLESの間を示す食道体部の平均圧力である。
【0063】
例えば、「WS#2」の欄を見てみると、「IRP」の値は「7.9」、「DCI」の値は「3771」、「DL」の値は「5.2」、「PB」の値は「0.0」であり、「Contractility」の項目は「Contraction」と表示されている。また、「BASE」の値は、「6.4」である。すなわち、2回目の検査における「IRP」、「DCI」、「DL」、「PB」、「BASE」の値は、上述した通りであり、また、「Contractility」はノーマルとの結果が出されている。
【0064】
なお、「IRP」等、解析結果として算出される項目については、予め定められていても、或いは、任意に設定することも可能である。また、ディスプレイ12に表示させる項目についても任意に選択することができる。
【0065】
また、各測定回の解析結果の上部には、「Jump」と「Detail」の2つのボタンが設けられている。測定回が選択されて「Jump」のボタンが押し下げられると、当該測定回の検査結果を示すトポグラフィーがディスプレイ12に表示される。一方、例えば、特定の測定回を選択した上で、「Detail」のボタンが押し下げられると、ディスプレイ12に表示されていないその他の項目を含む当該測定回に関する詳細な情報が表示される。
【0066】
次に、「理由」の表示領域には、全ての測定回に関する解析結果を基に判定された、医師が診断を行う際に参考可能な診断結果が表示されている。なお、図2に示す画面例では、診断結果は「判定(参考)」と表示されている。また、ここで「(参考)」と表示されているのは、最終的な診断は、当然医師が行うものであり、あくまでも診断支援装置1としては解析結果を基にした参考情報を提供するに過ぎないからである。
【0067】
「理由」の表示領域の上段には、全ての測定回における解析結果を基にして算出された診断結果(判定)について、どのようにして当該診断結果に到達したのか、簡潔に示している。また、その下段には「判定(参考)」として、「Normal esophageal motility」と表示されている。これは、食道の運動機能は平常である旨、すなわち、異常なしであることを示している。
【0068】
また、当該表示領域には、その他に「理由」の表示の横に「最新の解析結果により判定更新」とのボタンが設けられている。このボタンは、医師が解析結果、或いは、判断結果に疑問を持ち、各測定回の解析結果を確認し、その結果、改めてランドマークを手動で設定したような場合に、改めて解析結果を算出するためのボタンである。
【0069】
また、その横には「方式」と書かれた表示領域が設けられており、表示方式が選択可能とされている。また、「判定(参考)」の下には、「判定自動更新しない」とのチェックボックスが設けられている。チェックボックスにチェックを入れると、解析結果が変更になった場合でも自動では判定が更新されない処理を選択することができる。
【0070】
解析診断部18が測定回ごとに解析結果を算出する場合、例えば、得られた検査結果と記憶部13に記憶されている項目ごとの基準値(閾値)とを比較する。例えば、DCIの場合、検査結果における値と基準値とを比較して、当該基準値よりも低い値を示すと、何らかの疾患がある可能性を導くことができる。つまり一般的に健常者の場合、飲食物が嚥下されると、このDCIの値は基準値を含むある範囲内に収まる。これは、嚥下された飲食物を食道から胃に送るべく、蠕動運動が行われるからである。
【0071】
当該基準値は、例えば、これまで取得された症例等の数値であり、事前に記憶部13に記憶されている。また、解析を行う際に、複数の基準値を組み合わせて利用することも可能である。
【0072】
また、上述したように、解析診断部18は、測定回ごとに設定されたランドマークを基に検査結果の解析を行う。また全ての測定回における解析結果を基に診断結果を算出するが、診断結果の算出に用いられる解析結果は、例えば、IRPのように測定回ごとの解析結果に現れる数値をそのまま用いても、或いは、平均値や中央値を取って用いても良い。また、項目によっては、例えば基準値との比較において異常値とされる回数を考慮する。さらに、診断結果を算出する基となる情報は、これら解析結果だけに限られるものではない。
【0073】
例えば、解析結果の中に昇圧の現象が見つかることある。測定された食道内の圧力における昇圧の現象は、一時的に食道の一部分、或いは、全部の圧力が上昇する現象である。つまり、例えば、飲食物が食道を移動していった先にある胃の入り口が開かないことによって圧力が上がる現象である。従ってこの昇圧の現象が見つかるということは、食道のある部分において狭窄等が存在することが推定される。
【0074】
また、BASEの圧力を見て、例えば圧力が徐々に上がる傾向にある場合には、食道のある部分において狭窄等が存在することが推定される。
【0075】
そこで、本発明の実施の形態における診断支援装置1では、解析診断部18が診断結果を算出する場合には、当該昇圧の現象が生じているか否かを確認する。また、昇圧の現象の他、収縮や蠕動といった現象が起きていないかについても勘案して診断結果を算出する。
【0076】
なお、図2に示す画面例は、上述したようにディスプレイ12に表示された状態の一例を示しているが、当該画面例をディスプレイ12の画面全面に表示させることも、或いは、例えば、測定回ごとの検査結果を示す一覧を表示させた上に、重ねるように小さな画面で表示させることも可能である。
【0077】
表示制御部19は、ディスプレイ12や印刷機を含む表示部に、例えば、解析結果や診断結果を表示させるための制御を行う。また、医師が解析結果や診断結果から改めてランドマークの設定を行う場合に、測定回ごとの検査結果を示す画像をディスプレイ12に表示させる制御を行う。
【0078】
ランドマーク設定部17が自動的に設定したランドマークを基に、解析診断部18が検査結果について解析、診断を行った結果をディスプレイ12に表示させることについては、上述した通りである。しかしながら、これらの解析結果等を医師が確認した場合に、解析結果等に疑義を持つ場合がある。この時、医師は、なぜこのような解析結果等が導き出されたか、測定回ごとの検査結果を確認、参照したいことが多い。
【0079】
表示制御部19は、医師からのこのような要求を受けた場合に、測定回ごとの検査結果を一覧でディスプレイ12に表示させる。医師が特に確認したい測定回だけではなく、対象となる被検体の全ての測定回における検査結果を一覧で表示させることによって、医師も確認が容易になる。
【0080】
図3は、実施の形態における表示部に表示される、検査における測定回ごとの検査結果を示す画像の一覧の表示例である。一覧表示される検査結果の画像は、いわゆるカラートポグラフィーである。従って、測定された食道内の圧力が圧力値ごとに色分けされて表示されている。但し、図3(及び後述する図4及び図5)においては、カラーでの表示の代わりにハッチングで描くことによって、色分けを表している。
【0081】
また、測定回ごとの画像においては、破線で囲われた領域が示されている。当該破線で示される領域は、解析範囲を示すものである。解析範囲は、被検体が液体を嚥下した瞬間を含む、その前後を含むある時間的な幅で表される範囲で示される。また、この解析範囲は、例えば、検査前に医師が解析診断の1つの条件として設定することができる。
【0082】
さらに、解析範囲を示す破線内に、縦線が示されている。この縦線はSWであり、上述したように、被検体による嚥下の開始時期を示すものである。ランドマーク設定部17は、UESが途切れている部分を検出して、当該縦線の設定位置を決定する。
【0083】
図3に示す表示例においては、WS#1からWS#10までの10回の全ての測定回の検査結果が表示されている。その他、画面左上に「CONTROL」と表示されている画面も表示されている。この「CONTROL」は、液体を嚥下することで行われる検査を開始する前に、液体を嚥下しない状態で食道内の圧力を測定した結果を示すものである。
【0084】
「CONTROL」の画像では、被検体は何も嚥下していないので、食道内の圧力に変化が起こらず、従って、WS#1以下、実際に液体を嚥下した場合と異なり、食道中間部における圧力の変化が示されていない。
【0085】
一方、「CONTROL」以外のその他のWS#1からWS#10までの各測定回の検査結果を示す画像は、いずれも被検体が液体を嚥下した際の食道内の圧力がそれぞれ示されている。
【0086】
なお、図3においては、表示制御部19の処理により、「CONTROL」の画像を含む11枚の画像が縦3枚、横4枚の一覧で表示されている。但し、一覧表示できれば縦横に表示される画像の枚数は任意に設定することができる。
【0087】
また、図3においては、ランドマーク設定部17によって自動的に設定された各画像におけるランドマークについては、その図示を省略している。実際の一覧表示においては、それぞれの測定回の検査結果を基にランドマーク設定部17によって設定されたランドマークも表示されている。
【0088】
図4は、図3に示される画像一覧に表示された測定回ごとの検査結果を示す画像の拡大図の一例である。すなわち、図4では、図3において一覧表示されているWS#1の検査結果を示す画像を拡大して示している。
【0089】
図4に明らかなように、カラートポグラフィーが示されている領域は、測定された圧力ごとにハッチングを変えて、食道内における高い圧力から低い圧力まで示している。図3ないし後述する図5に示されるカラートポグラフィーにおいて、圧力の高い順に、左上から右下に伸びる斜線、右上から左下に伸びる斜線、波線、水玉のハッチングが付されている。
【0090】
食道内において高い圧力を示す領域は、時間の経過とともに、左上から右下に掛けて連続するように示されている。これは、被検体が嚥下した液体が、食道内を上部から下部に向けて徐々に移動することに伴う、食塊のクリアランスとしての食道体部の筋肉収縮が上部から下部に移動していることを示している。
【0091】
また、上述したように、解析範囲として設定された領域は、破線で囲まれた範囲である。また、被検体による嚥下の開始時期を示す縦線が当該破線で囲まれた範囲内に示されている。
【0092】
カラートポグラフィーで表示される領域の右側には、上から下に向けて「CH1」から「CH36」と表示されている表示が示されている。これは、カテーテルに設けられているセンサSのそれぞれの位置を示している。ここでは、「CH1」から「CH36」と表示されていることから、カテーテルには、36個のセンサS(36チャンネル)が設けられていることが分かる。
【0093】
なお、図4においては、チャンネル数を示しているが、例えば、食道上部から下部までの長さを、例えばcmの単位をもって表示させることも可能である。また、そもそもこれらの表示を行わないこともできる。
【0094】
また、カラートポグラフィーで表示される領域の下側には、時間軸を示すスケールが表示されており、これは、左から右に向けて時間が経過することを示している。
【0095】
チャンネル数の表示の横には、ランドマークが示されている。これは上述したように、ランドマーク設定部17が自動的に設定したものである。図4では、「UES」、「Esoph」、「LES」及び「GASTRIC」の4つのランドマークが示されている。ここで「Esoph」は、食道の長さの概ね中央部を示すランドマークである。
【0096】
図5は、実施の形態において画像一覧の中から選択されて表示部に表示されたランドマークの修正対象となる測定回の画像を示す表示例である。当該表示例は、一覧で表示された測定回ごとの検査結果の中から、医師がランドマークの修正が必要と認めて選択されることで、表示制御部19によってディスプレイ12に表示される。
【0097】
図5に示される表示例からも分かる通り、カラートポグラフィーで表示される内容は、例えば図4において説明した通りである。図5の表示例においては、さらにカラートポグラフィーの表示の左側に圧力を示すカラーバーが表示されている。図5ではその色分けが示されていないが、上述したように、例えば、高い圧力は赤色、低い圧力は青色というようにそれぞれの圧力を示す色分けが示されている。また、食道内の圧力を示す数字(単位mmHg)がカラーバーに沿って示されている。
【0098】
一方、カラートポグラフィーの右側には、食道を長手方向に切断した状態を示す模型図が表示されている。また、当該模型図に重ねて、それぞれの位置における圧力がグラフとして示されている。
【0099】
カラートポグラフィーの右側、模型図に重なるように、図4において説明したランドマークが表示されている。医師は、例えば、入力部11を構成する各種デバイスを操作して、具体的には、例えばマウスを用いて修正しようとするランドマークを掴んで上下に移動させることで、自身が適切であると考える位置に該当のランドマークを配置することができる。
【0100】
カラートポグラフィーの下側、時間軸を示すスケールのさらに下には、測定回を示す表示がされている。図3に示すように、一覧表示されている検査結果は、「CONTROL」も含めて11である。そして、現在表示されている測定回については、黒丸の印が表示されている。図5において表示されているカラートポグラフィーはWS#1であり、当該表示も表示されているカラートポグラフィーがWS#1のものであることを示している。
【0101】
なお、WS#1のカラートポグラフィーを示しているのに左から2つ目の表示が黒丸となっているのは、最も左側の表示は「CONTROL」のカラートポグラフィーを示しているからである。
【0102】
制御部20は、診断支援装置1の各部を統括的に制御する。制御部20は、例えば、医療従事者からの入力部11を介しての操作指示を入力信号として受け付け、所望の操作が行われるよう、各部を制御する。
【0103】
制御部20は、例えば図示しない、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えている。
【0104】
CPUは、入力部11からの入力信号に基づいてROMから診断支援装置1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶部13に格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。またCPUは、入力部11等を介して、図1において図示していないその他の外部機器からの入力信号に基づいて各種装置の制御を行う。さらにCPUは、RAMや記憶部13等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAMにロードするとともに、RAMから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、データの計算、加工等、一連の処理を実現する処理装置である。
【0105】
なお、本発明の実施の形態においては、上述したように「表示制御部19」と「制御部20」とを区別した構成を前提に説明したが、制御部20が上述した表示制御部19の処理を実行する構成としても良い。
【0106】
すなわち、制御部20が、表示制御部19の機能のみならず、検査部16、ランドマーク設定部17、解析診断部18の各部の機能を、それぞれ「検査機能」、「ランドマーク設定機能」、「解析診断機能」として備えるようにしていても良い。
【0107】
なお、上述した検査部16、ランドマーク設定部17、解析診断部18、表示制御部19の各部の働きや制御部20がこれら各部の機能を備えている場合の働きは、例えば記憶部13に記憶されている診断支援プログラムをプロセッサに実行させることを前提にしている。
【0108】
ここで本明細書における「プロセッサ」という文言は、例えば、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit) arithmetic circuit(circuitry)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0109】
プロセッサは、例えば記憶部13に保存された、又は、プロセッサの回路内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムを記憶する記憶部は、プロセッサごとに個別に設けられるものであっても構わないし、或いは、例えば、図1における検査部16等が行う機能に対応するプログラムを記憶するものであっても、さらには図1に示す記憶部13の構成を採用しても構わない。記憶部の構成には、例えば、半導体や磁気ディスクといった一般的なRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置が適用される。
【0110】
さらに、検査部16、ランドマーク設定部17、解析診断部18、表示制御部19の各機能を、制御部20を制御回路として構成し、それぞれを個別に検査回路、ランドマーク設定回路、解析診断回路、或いは、表示制御回路として構成することも可能である。
【0111】
[動作]
次に、図6ないし図9を利用して、診断支援装置1における処理について説明する。図6は、実施の形態において消化管の運動障害の診断を行う際の大まかな流れを示すフローチャートである。医師が食道の運動障害の診断を行う場合には、大きく検査の処理工程(ST1)と解析診断の処理工程(ST3)とに分けることができる。
【0112】
まず、解析診断の処理工程を説明するために検査の処理工程について説明する。図7は、実施の形態において消化管の運動障害の診断を行う際に行われる検査の流れを示すフローチャートである。
【0113】
被検体が実際に液体を嚥下して食道内の圧力を測定する前に、液体を嚥下しない状態での測定を行う(ST11)。これが上述した「CONTROL」である。液体を嚥下していないので、図3に示すように食道内の圧力の変化は測定されない。なお、フローチャートでは図示を省略しているが、「CONTROL」の場合も測定した結果は、検査結果として検査部16から記憶部13に送信されて記憶される。
【0114】
次に、被検体が液体を嚥下した状態の食道内の圧力を測定する検査が開始される(ST12)。被検体が嚥下したタイミングで医療従事者は入力部11を構成する、例えばスワローボタンを押し下げる。検査部16では、当該スワローボタンが押し下げられた信号を受信し(ST13)、センサSが取得した食道内の圧力を示す検査結果(測定データ)を取得する(ST14)。
【0115】
検査部16は、カテーテルの長手方向に沿って設けられている複数のセンサSから全ての測定データが送信されてきたか否かを判断し(ST15)、全てのセンサSから送信データが送られてきていない場合にはそのまま待機となる(ST15のNO)。一方、全てのセンサSから送信データが送られてきたと判断した場合には(ST15のYES)1回の検査が完了したことになるので、取得された検査結果を記憶部13に送信して記憶させる(ST16)。
【0116】
なお、上述したように、食道の運動障害の診断を行うための検査は、所定の回数、例えば、10回行われる。そして、当該検査は連続して行われる。従って検査部16は、所定の回数分の検査結果を連続して記憶部13に記憶させる。
【0117】
検査部16は、1回目の検査であるWS#1から10回目の検査であるWS#10まで10回の測定回の検査結果を取得したか、すなわち、10回目の検査が実行されたことを確認することで10回の検査が全て完了したか否か判断する(ST17)。
【0118】
検査部16が、入力部11を介した医療従事者からの検査完了の信号を受信しない場合には(ST17のNO)、改めてこれまで説明してきた検査の処理工程を実行する。一方、入力部11を介した医療従事者からの検査完了の信号を受信した場合には(ST17のYES)、当該被検体に対する検査は完了する。
【0119】
なお、入力部11を介した医療従事者からの検査完了の信号を受信することに代えて、検査部16が検査完了の判断を行うこともできる。この場合、検査部16が、もし全ての検査が完了していないと判断した場合には、改めてこれまで説明してきた検査の処理工程を実行する。一方、全ての検査が完了したと判断した場合には、当該被検体に対する検査は完了する。
【0120】
次に、解析、診断の処理工程について、図8及び図9を利用して説明する。図8図9は、実施の形態において消化管の運動障害の診断を行う際に行われる解析、診断の流れを示すフローチャートである。
【0121】
医師が被検体の診察を行う際に、検査結果に基づいて当該被検体の状態について診断する必要がある。従って、診断支援装置1としては、検査結果に基づく解析結果や診断結果を提供する。
【0122】
医師は、解析診断の処理工程が開始されるに当たって、例えば、被検体のID等を入力する。当該被検体のID等は、解析診断部18が検査結果の検索を実行する際の検索条件となる。また、医師が特別検索条件を入力しなくても、解析診断部18は、例えば、ディスプレイ12に表示されている内容から検索条件を抽出することも可能である。解析診断部18は、記憶部13から検索条件に合致する検査結果を取得する(ST31)。
【0123】
そして医師は、検査結果を基にした解析結果及び診断結果の呈示(解析要求)を診断支援装置1に求める。具体的には、例えば、入力部11を構成する「オールカルク(All Calc)」ボタン(図8では「解析ボタン」と表している)が押し下げられた信号を解析診断部18が受信することで解析診断の処理工程が開始される(ST32)。
【0124】
解析診断部18は、取得した検査結果をランドマーク設定部17に送信し、ランドマーク設定部17では当該検査結果を受けて、測定回ごとにランドマークを設定する(ST33)。
【0125】
ランドマーク設定部17では、全ての測定回の検査結果に対してランドマークを設定したか判断し(ST34)、設定していなければ(ST34のNO)、引き続き測定回ごとにランドマークを設定する処理を行う。一方、全ての測定回の検査結果に対してランドマークを設定した場合には(ST34のYES)、この情報を解析診断部18に送信する。
【0126】
なお、ここでは解析診断部18が記憶部13から検査結果を取得しランドマーク設定部17に渡しているが、必ずしもこの処理でなくても良い。すなわち、解析ボタンからの信号をまずランドマーク設定部17において受信する。その上で当該ランドマーク設定部17が記憶部13から必要な検査結果を取得し、測定回ごとにランドマークを設定して解析診断部18に対してその情報を送信する、という処理を行うこととしても良い。
【0127】
解析診断部18では、ランドマークが設定された測定回ごとの検査結果を基に、測定回ごとの解析結果を算出する(ST35)。さらに、全ての測定回に関する解析結果を基に自動診断を行うに必要な値を算出する(ST36)。
【0128】
そして表示制御部19は、ディスプレイ12に全ての測定回の画像を一覧で表示させる(ST37)。この状態が図3に示す表示例である。
【0129】
医師はディスプレイ12に一覧表示された全ての測定回の検査結果を総覧する。或いは、気になった測定回の検査結果を重点的に確認し、さらに当該測定回の前後の測定回の検査結果を確認する、ということも行われ得る。
【0130】
なお解析診断部18は、算出された解析結果、診断結果並びに当該診断結果を導き出すに至った理由をディスプレイ12に表示させることもできる。ディスプレイ12に表示される解析結果等は、図2に示した通りである。
【0131】
このように、医師の診断を支援するための情報として、全ての測定回の一覧表示だけではなく、適宜解析結果及び診断結果並びに診断理由がディスプレイ12に表示させることができる。医師はこれらの情報を参考に被検体に対する診断を行う。
【0132】
医師は表示された全ての測定回の一覧表示や解析結果等を見て、気になる点がないか確認する。もし気になる点が見つかった場合には、その点をさらに確認することになる。つまり、医師によるこの確認作業がランドマークの修正処理につながる。診断支援装置1では、医師がランドマークの修正処理を実行するための入力部11を介した何らかの信号の受信の有無を確認する。つまり、ランドマークの修正の有無を判断する(ST38)。
【0133】
具体的な処理としては、例えば、図2に示す「Jump」ボタンや「Detail」ボタンを医師が押し下げ、その信号を表示制御部19が受信して(ST38のYES)、医師が確認をするに必要となる情報をディスプレイ12に表示させる。
【0134】
表示制御部19では、医師が入力部11を介して修正対象となる画像が選択されたか否かを判断する(ST39)。まだ修正対象が選択されていない場合には(ST39のNO)、引き続きディスプレイ12に全ての測定回の画像を一覧で表示させる。
【0135】
一方、修正対象が選択された場合には(ST39のYES)、表示制御部19は、選択された測定回の検査結果のみをディスプレイ12表示させる(図9のST40)。この状態が図5で示した表示例となる。
【0136】
医師は、表示された測定回の検査結果を見て、ランドマーク設定部17によって自動的に設定されたランドマークの位置を修正する。具体的には、上述したように、入力部11を用いてランドマークを選択し(ST41)、当該ランドマークの位置を画面上で上下させて、自身が適切であると考える位置に、再度設定し直す。
【0137】
表示制御部19では医師がランドマークを再設定し、修正が完了したか否かを判断する(ST42)。すなわち、表示制御部19では医師がランドマークを移動させる処理を実行している間は(ST42のNO)、まだ当該ランドマークの修正が完了していないと判断する。一方で、例えば、医師がランドマークを移動させるために掴んでいたランドマークを離す、或いは、一定時間ランドマークの移動をさせない場合には、ランドマークの修正は完了したと判断する(ST42のYES)。
【0138】
解析診断部18では、再度ランドマークが設定された測定回ごとの検査結果を基に、測定回ごとの解析結果を算出する(ST43)。さらに、全ての測定回に関する解析結果を基に自動診断を行うに必要な値を算出する(ST44)。
【0139】
もちろん、修正対象となるランドマークは1つに限定されるわけではなく、1つのランドマークについての修正が完了しても他に修正の必要があるランドマークが選択されて修正されることも考えられる。そこで、表示制御部19は、1つのランドマークの修正が完了した後、新たなランドマークが選択されたか否かの判断を行い(ST45)、新たなランドマークが選択された場合には(ST45のYES)、上述した修正処理の完了を確認する。
【0140】
一方、選択された新たなランドマークについても修正が完了し、他のランドマークが選択されない状態に至ったと判断された場合には(ST45のNO)、解析診断部18は、次に、現在一覧表示されている全ての測定回における検査結果に対する全ての修正が完了したか否かを判断する(ST46)。
【0141】
もし医師が他の測定回の解析結果等を選択する等の処理を行った場合には、表示制御部19は全ての測定回の検査結果におけるランドマークが修正されていないと判断し(ST46のNO)、ステップST37(図8参照)に戻り、改めて全ての測定回の検査結果を一覧で表示させる。そして上述した医師によるランドマークの修正処理を受け付ける。
【0142】
一方、医師が引き続きの修正処理を実行しないと表示制御部19が判断した場合には(ST46のYES)、ディスプレイ12に修正された測定回を含む全ての測定回の画像を一覧で表示させる(ST47)。以上で解析診断の処理が終了する。
【0143】
また上述した通り、解析診断部18は、一覧表示と併せて算出された解析結果、診断結果並びに当該診断結果を導き出すに至った理由をディスプレイ12に表示させることもできる。
【0144】
なお、検査結果に対する解析、診断について、医師が疑義を挟まない場合には、上述したようなランドマークの修正は実行されず(図8のST38のNO)、その時点で解析診断の処理が終了する。
【0145】
以上説明した少なくとも1つの実施の形態によれば、食道の運動障害の診断を行うための検査結果の解析に必要なランドマークを自動で設定するとともに、解析後に自動設定されたランドマークの位置を確認する場合に当たっては、測定回ごとの画像を一覧表示することができる。
【0146】
このようなランドマークの修正が行われることによって、被検体の検査結果に基づいて呈示された解析結果や診断結果と、医師の経験等に基づく診断結果との整合性を取ることができる。
【0147】
従って、本発明の実施の形態における診断支援装置1及び診断支援プログラムを用いることによって、より簡易、確実な診断を行うことができる。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0149】
1 診断支援装置
11 入力部
12 ディスプレイ
13 記憶部
14 通信制御部
15 リムーバブルディスク
16 検査部
17 ランドマーク設定部
18 解析診断部
19 表示制御部
20 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9