【解決手段】 本発明のトレーニング装置は、重量物を用いて行う筋力トレーニング用のトレーニング装置であって、枠体と、重量物を下方より支持可能な支持体と、支持体を枠体に沿って昇降移動させる移動手段と、移動手段を制御する制御手段と、重量物又は使用者の状況を検出する状況検出手段を備え、制御手段によって、状況検出手段で検出される検出信号に基づいて移動手段が制御されるようにしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明のトレーニング装置の一例を、図面を参照して説明する。本発明のトレーニング装置は、重量物を用いて行う筋力トレーニング用の装置である。以下では、重量物がシャフトW1の長手方向両端にプレート(錘)W2が設けられたバーベルWの場合を一例として説明する。
【0013】
一例として
図1(a)に示すトレーニング装置は、枠体10と、バーベルWを支持する支持体20と、支持体20を枠体10に沿って昇降移動させる移動手段30と、バーベルWや使用者の状況を検出する状況検出手段40と、移動手段30を制御する制御手段50を備えている。
【0014】
前記枠体10は、トレーニング装置の躯体となる部分である。この実施形態の枠体10は、左右に間隔をあけて平行に配置された二本の枠体ベース11a、11bと、それぞれの枠体ベース11a、11bの前後方向に間隔をあけて立設された四本の支柱12(第一支柱12aから第四支柱12d)を備えている。両枠体ベース11a、11bは、その一端側が第一ベース連結材11cで、他端側が第二ベース連結材11dで連結されている。第一ベース連結材11cには段差プレート11eが設けられている。
【0015】
前記四本の支柱12のうち、第一支柱12aと第二支柱12bは第一連結材13aで、第三支柱12cと第四支柱12dは第二連結材13bで連結されている。第一連結材13aと第二連結材13bの間の一端側には第三連結材13cが、他端側には第四連結材13dが、中央位置には懸垂バー14が架設されている。四本の支柱12a〜12dの内側には、使用者がトレーニングを行うトレーニングスペースS1が形成されている。
【0016】
四本の各支柱12a〜12dの内面側は、補助支持体15が設けられている。この実施形態の補助支持体15は、各支柱12に固定された係止プレート15aと、当該係止プレート15aに着脱可能に取付けれらたセーフティーバー15bを備えている。
【0017】
この実施形態の係止プレート15aは、支柱12に沿って配置された縦長の板状部材であり、その表面にはセーフティーバー15bを係止可能な係止孔15cが高さ方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0018】
この実施形態のセーフティーバー15bは、背面に係止突起(図示しない)が設けられた棒状の部材である。セーフティーバー15bは、第一連結材13a及び第二連結材13bと平行に配置される。セーフティーバー15bは、その係止突起をトレーニング種目に適した任意の係止孔15cに係止することで、係止プレート15aに取付けることができる。補助支持体15は必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することができる。
【0019】
前記枠体10の構成は一例であり、これ以外の構成とすることもできる。
【0020】
前記支持体20は、バーベルWを下方から支持するものである。この実施形態では、支持体20が、第一支柱12aと第二支柱12bの間に一体、第三支柱12cと第四支柱12dの間に一体(合計二体)設けられている。両支持体20は、同じ高さの対向位置に設けられている。バーベルWはその長手方向両端側がこれら二体の支持体20によって水平に支持される。
【0021】
一例として
図2(a)〜(c)に示す支持体20は、支持体ベース21と、支持体ベース21の幅方向に間隔をあけて設けられた緩衝体22と、緩衝体22の上部に設けれられた受け部23を備えている。
【0022】
前記支持体ベース21は横長の箱状であり、その幅方向両端が後述するスライダー32に保持されている。支持体ベース21には、受け部23にかかる衝撃を緩和する緩衝体22として、ショックアブソーバーが設けられている。この実施形態では、ショックアブソーバーを五つ設ける場合を一例としているが、ショックアブソーバーは五つより多くても少なくてもよい。
【0023】
図2(c)に示すように、五つのショックアブソーバーのうち両外側に配置されたショックアブソーバーの外側には、ブッシュ24aと当該ブッシュ24a内に収まるシャフト24bを備えたガイド24が設けられている。ガイド24は受け部23が水平方向にずれることなく上下動できるように案内するものである。ブッシュ24aは支持体ベース21に、シャフト24bは受け部23に設けられている。
【0024】
前記五つのショックアブソーバーの上部には、前記受け部23が設けられている。受け部23はバーベルWを下側から支える部分である。受け部23は重量物を支持する支持面を備えている。この実施形態の受け部23は長手方向両端側から中央部に向けて下り傾斜のV字状に構成されている。バーベルWは前記支持面上を移動可能な状態で支持される。
【0025】
受け部23の両傾斜面(前下がり傾斜面23a及び後下がり傾斜面23b)はバーベルWを前後方向中央部(最下部)に誘導する誘導部(前後方向誘導部)として機能する(
図3(a)〜(c))。受け部23は、最下部が中央部から前後にずれた位置となるようにすることもできる。受け部23は上面が水平なものであってもよい。
【0026】
この実施形態の受け部23は、前下がり傾斜面23a及び後下がり傾斜面23bに加えて、外側に傾斜する外下がり傾斜面23cを備えている。外下がり傾斜面23cはバーベルWを左右方向中央部に誘導する誘導部(横方向誘導部)として機能する。
【0027】
具体的には、後述するバーベル70(
図11(a)〜(c)参照)を用いる場合に、鍔72の円錐部72aと当接することによって、バーベル70が左右方向中央部に誘導されることになる(
図4(a)〜(c))。
【0028】
前記受け部23の長手方向両端側にはセンサブラケット25が一つずつ設けられ、それぞれのセンサブラケット25には近接検出手段26が設けられている。近接検出手段26は、重量物が基準離間距離よりも支持体に接近したことを検出する手段である。
【0029】
近接検出手段26には、例えば、各種レーザセンサを用いることができるが、レーザセンサ以外のセンサを用いることもできる。
【0030】
この実施形態では、受け部23にバーベルWが支持体20(受け部23)に接触したことを検出する接触検出手段27(
図5)が設けられている。この実施形態では、接触検出手段27としてロードセンサを用いている。
【0031】
接触検出手段27は、支持体20(受け部23)に接触したことを検出することができるものであればロードセンサ以外のものを用いることもできる。例えば、バーベルWの接触によってONとなる物理スイッチや、高周波磁界を利用してバーベルWとの距離を測定する渦流センサ等を用いることができる。接触検出手段27は必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することもできる。
【0032】
前記支持体20の構成は一例であり、これ以外の構成とすることもできる。
【0033】
前記移動手段30は、支持体20を枠体10の支柱12に沿って昇降移動させるものである。この実施形態では、移動手段30として、ガイドレール31とガイドレール31に沿ってスライドするスライダー32を備えたリニアアクチュエータを用いている。
【0034】
この実施形態では、ガイドレール31が、第一支柱12aの前面側に一体、第二支柱12bの後面側に一体、第三支柱12cの前面側に一体、第四支柱の後面側に一体の(合計四体)設けられている。
【0035】
第一支柱12aの前面側のガイドレール(第一ガイドレール31a)には第一スライダー32aが、第二支柱12bの後面側のガイドレール(第二ガイドレール31b)には第二スライダー32bが、第三支柱12cの前面側のガイドレール(第三ガイドレール31c)には第三スライダー32cが、第四支柱12dの後面側のガイドレール(第四ガイドレール31d)には第四スライダー32dが設けられている。
【0036】
第一スライダー32aと第二スライダー32bの間には二体の支持体20のうちの一体が架設され、第三スライダー32cと第四スライダー32dの間には他の一体が架設されている。両支持体20は長手方向の両端がスライダー32に保持されている。
【0037】
この実施形態では、両支持体20が水平な姿勢を保持したまま同じ高さで昇降するように、第一スライダー32a、第二スライダー32b、第三スライダー32c及び第四スライダー32dのすべてが同期して昇降するようにしてある。なお、リニアアクチュエータは、一体の支持体20につき一台(合計一台)とすることもできる。この場合、各支持体20は長手方向の一端側のみがアクチュエータ付きのスライダー32で保持され、他端側はアクチュエータのないスライド機構により保持される。
【0038】
この実施形態のリニアアクチュエータは、前記制御手段50によって制御される。リニアアクチュエータの制御については後述する。なお、支持体20を昇降移動させられるものであれば、移動手段30にはリニアアクチュエータ以外のものを用いることもできる。
【0039】
前記状況検出手段40は、バーベルWや使用者の状況を検出する手段である。この実施形態では、状況検出手段40として深度カメラ(深度センサ)を用いている。この実施形態の深度カメラは、バーベルWのシャフトW1の位置情報を検出するものである。この実施形態の深度カメラでは、深度カメラからバーベルW(シャフトW1)までの距離を計測することができる。
【0040】
図1(a)(b)に示すように、この実施形態では、深度カメラを、その下端部が最上位にある支持体20の上面から40cm程度上側に位置するように、第二支柱12bの上方に設けている。深度カメラはこれ以外の位置に設けることもできる。深度カメラは、所望の画角を得られるように設置位置や設置角度を適宜調整することができる。この実施形態では、深度カメラを一台用いる場合を一例としているが、深度カメラは二台以上設けることもできる。
【0041】
図示は省略しているが、深度カメラで取得した情報は深度カメラと接続された処理部に送信され、当該処理部で処理されるようにしてある。この実施形態では、処理部において、深度カメラで取得した位置情報の時系列変化に基づいて、バーベルWの移動速度や軌道、左右バランスを算出できるようにしてある。
【0042】
具体的には、画素ピクセル数に基づいてバーベルWの角度を算出することができ、その角度と深度カメラで計測したシャフトW1までの距離からシャフトW1の位置を特定することができる。
【0043】
この実施形態では、深度カメラによって取得した情報や処理部で算出された情報は制御手段50に送信され、その送信された情報に基づいて移動手段30が制御されるようにしてある。
【0044】
状況検出手段40には、深度カメラのほか、バーベルの動きや使用者の動きなどを撮影する光学カメラや、使用者の発する声等を検出する音センサなどを用いることもできる。
【0045】
状況検出手段40として、前記光学カメラを用いる場合、光学カメラで得られた画像データ(動画)から機械学習によってバーベルWの位置や移動速度、軌道、左右バランス等を算出できるようにすることができる。この場合も、光学カメラによって取得した情報や処理部で算出された情報が制御手段50に送信され、その送信された情報に基づいて移動手段30が制御されるようにすることができる。
【0046】
状況検出手段40として、前記音センサを用いる場合、音センサで使用者の音声が検出されたときに使用者が限界に達していると判断し、移動手段30が制御されるようにすることができる。
【0047】
前記状況検出手段40は、バーベルWに設けることもできる。例えば、バーベルにジャイロセンサを装備し、そのジャイロセンサでバーベルWの加速度を計測するようにしてもよい。ジャイロセンサはバーベルWに内蔵することも外装することもできる。ジャイロセンサのほか、バーベルWに使用者が操作するスイッチを設け、そのスイッチ操作によって使用者の状況を検出できるようにしてもよい。
【0048】
前記状況検出手段40は一例であり、これ以外の構成とすることもできる。
【0049】
前記制御手段50は、前記移動手段30やその他の各種機器を制御するものである。
図5に示すように、この実施形態では、近接検出手段26から送信される信号や接触検出手段27から送信される信号、状況検出手段40から送信される信号に基づいて、移動手段30が制御されるようにしてある。
【0050】
以下、近接検出手段26からの送信信号に基づく制御、接触検出手段27からの送信信号に基づく制御、及び状況検出手段40からの送信信号に基づく制御について説明する。なお、以下の制御は一例であり、これら以外の制御を行えるようにすることもできる。
【0051】
はじめに、近接検出手段26からの送信信号に基づく制御及び接触検出手段27からの送信信号に基づく制御について説明する。
図6(a)〜(d)に示すように、支持体20の上昇時にバーベルWが基準離間距離よりも支持体20に接近したことが近接検出手段26で検出されると、支持体20が減速するように移動手段30が制御される。このように制御することで、支持体20に加わるバーベルWの衝撃が緩和される。
【0052】
前記制御によって支持体20が減速したのち、バーベルWが支持体20に接触したことが接触検出手段27で検出されると、支持体20が加速するように移動手段30が制御される。このように制御することで、バーベルWを迅速に上昇させ、使用者がバーベルWによって押しつぶされるのを防止することができる。
【0053】
出願人が行ったシミュレーションでは、使用者が保持している120kgのバーベルW(静止状態)に支持体20が移動速度270mm/sで接触するときの衝撃力が893kgfであったのに対し、支持体20の移動速度を50mm/sまで減速させたときの衝撃力は31kgfであった。このシミュレーション結果から、支持体20を減速させることによる大幅な緩衝効果が認められた。
【0054】
前記制御では、支持体20にかかる荷重のすべて(100%)を支えるのではなく、予め設定されたバーベルWの重量と接触検出手段(ロードセンサ)27で検出される重量との差を算出し、その差分だけを補助するように移動手段30を制御することもできる。
【0055】
例えば、予め設定されたバーベルWの重量が100kgの場合において、ロードセンサで検出された重量が30kgであるときは、使用者に70kgを持ち上げるだけの余力があると判断し、不足する30kg分だけ補助するように制御することができる。
【0056】
次に、状況検出手段40から送信される信号に基づく制御について説明する。この実施形態では、「Normal MODE(ノーマルモード)」、「Forced−Reps MODE(フォーストレップスモード)」、「Drop−Sets MODE(ドロップセットモード)」の三つのモードごとに、移動手段30が制御されるようにしてある。
【0057】
前記「Normal MODE(ノーマルモード)」とは補助者なしで行う一般的なフリーウェイトトレーニングと同様のトレーニングを行う場合のモード、「Forced−Reps MODE(フォーストレップスモード)」はフォーストレップストレーニングと同様のトレーニングを行う場合のモード、「Drop−Sets MODE(ドロップセットモード)」はドロップセットトレーニングと同様のトレーニングを行う場合のモードである。
【0058】
ここで、フォーストレップストレーニングとは、使用者がバーベルWを持ち上げられなくなったときに補助者がバーベルWの持上げをサポートし、使用者が一人でトレーニングを行う場合よりもバーベルWの持上げ回数を増やせるようにしたトレーニング方法のことをいう。
【0059】
また、ドロップセットトレーニングとは、使用者が限界に近づきバーベルWを持ち上げられなくなったタイミングで補助者がバーベルの重量を少しずつ軽くし、使用者が一人でトレーニングをする場合よりもバーベルWの持上げ回数を増やせるようにしたトレーニング方法のことをいう。いずれも、短期間で成果を得られる最も効率的なトレーニング方法の一つと言われている。
【0060】
以下、「Normal MODE(ノーマルモード)」、「Forced−Reps MODE(フォーストレップスモード)」、「Drop−Sets MODE(ドロップセットモード)」の各トレーニングモードにおける制御について説明する。
【0061】
図7に示すように、「Normal MODE(ノーマルモード)」では、下まで下げられたバーベルWが一定時間以上持ち上げられないこと(Limit Detect)、使用者が声又はバーベル動作によって介入を指示したこと(User Action)、又は事前に設定された繰り返し回数を完了したこと(Final Rep)が状況検出手段40で検出されると、支持体20が上昇するように移動手段30が制御される(Slider Up)。
【0062】
なお、上記の他、声又はバーベル動作以外の方法(例えば、足で踏むスイッチなど)による使用者の介入指示や、使用者の体の状態(例えば、心拍数の異常など)を状況検出手段40で検出し、当該検出結果に基づいて移動手段30を制御してもよい。
【0063】
また、怪我や事故の蓋然性が高い状況であることが状況検出手段40で検出された場合に、支持体20が上昇するように移動手段30を制御してもよい。具体的には、光学カメラ等の状況検出手段40でトレーニングフォームをリアルタイムに計測し、怪我につながるフォームの崩れや実際にバランスを崩して倒れそうな状況が明らかな場合(例えば、使用者のフォームが予め設定された基準フォームの範囲外になった場合等)に、支持体20が自動的に上昇してバーベルWを保持するように制御することができる。同様に、バイタルセンサ等の状況検出手段40で心拍や呼吸などのバイタルが異常値となったことが検出された場合(例えば、使用者のバイタルデータが予め設定された基準バイタルの範囲外になった場合等)に支持体20が自動的に上昇してバーベルWを保持するように制御することもできる。
【0064】
その後、支持体20によってバーベルWがスタート位置まで上昇すると、その位置で支持体20が停止するように移動手段30が制御される(Start Position)。
【0065】
なお、移動体20が上昇する際には、発報手段28(
図5)によってアラートが発せられるようにすることもできる。
【0066】
図8に示すように、「Forced−Reps MODE(フォーストレップスモード)」では、下まで下げられたバーベルWが一定時間以上持ち上げられないこと、又は使用者が声又はバーベル動作によって介入を指示したことが状況検出手段40で検出されると、バーベルWを支持可能な位置まで支持体20が上昇するように移動手段30が制御される。
【0067】
上昇した支持体20によってバーベルWが支持されると、使用者の残存筋力を考慮して支持体20が上昇するように移動手段30が制御される(Power Assist)。
【0068】
その後、支持体20によってバーベルWがスタート位置まで上昇すると、支持体20でのサポートが解除される。
【0069】
このモードでは、事前に設定された繰り返し回数が完了するまで前記制御が行われる。一方で、バーベルWの下降速度が予め設定された速度よりも速いこと(Descend Speed)が状況検出手段40で検出されると、バーベルWを支持可能な位置まで支持体20が上昇するように移動手段30が制御される。支持体20によってバーベルWが支持されると、移動手段30が自動停止する。
【0070】
なお、「Normal MODE(ノーマルモード)」の場合と同様、このモードでも、支持体20が上昇する際には、発報手段28(
図5)によってアラートが発せられるようにすることができる。
【0071】
図9に示すように、「Drop−Sets MODE(ドロップセットモード)」では、下まで下げられたバーベルWが一定時間以上持ち上げられないこと、使用者が声又はバーベル動作によって介入を指示したこと、バーベルの持上げ速度が予め設定された速度よりも遅いこと(Ascend Speed)、又はバーベルがトップポジション(使用者が手を伸ばした位置)で予め設定された一定時間以上保持されていること(Position Hold)が状況検出手段40で検出されると、バーベルWを支持可能な位置まで支持体20が上昇するように移動手段30が制御される。
【0072】
上昇した支持体20によってバーベルWが支持されると、所定位置(例えば、後述するプレートラック60の所定の支持バー63の位置)で錘W2の重さが自動で変更され(Plate Change)、その後、使用者はインターバルなしでバーベルWの上げ下げを再開する。
【0073】
前述のように、錘W2を自動で変更できるようにすることで、使用者が自身で錘W2を交換する必要がなくなるため、インターバル(休憩)なしですぐに次のセットを開始することができ、ドロップセットトレーニングを効率的に行うことができる。ただし、錘W2の自動変更機能は必須ではなく、不要な場合には省略することもできる。錘W2の自動変更機能を用いない場合、例えば、
図10(a)〜(c)に示すようなプレートラック60を用いることができる。
【0074】
次に、錘W2の交換について説明する。
図10(a)〜(c)に示すプレートラック60は、枠体10の幅方向両外側に配置して使用するものである。このプレートラック60は、足場プレート61と、足場プレート61に立設されたラック支柱62と、ラック支柱62から横向きに突設された支持バー63を備えている。
【0075】
この実施形態では、支持バー63がラック支柱62の高さ方向に間隔をあけて三本突設されている。左右のプレートラック60の支持バー63は、下側同士、中央同士、上側同士が同じ高さとなるようにしてある。
【0076】
各支持バー63には錘W2が保持されてる。この実施形態では、下側の支持バー63aに保持された錘W2よりも中央の支持バー63bに保持された錘W2の方が軽く、中央の支持バー63bに保持された錘W2よりも上側の支持バー63cに保持されたプレートの方が軽くなるようにしてある。
【0077】
使用者が錘W2を交換する場合、シャフトW1に取り付けられた錘W2をスライドさせて、シャフトW1と同じ高さにある支持バー63に移動させる(使用していた錘W2を取り外す)。
【0078】
その後、支持体20を、シャフトW1が別の支持バー63と同じ高さになるように移動させて、その支持バー63に保持された錘W2をスライドさせてシャフトW1に移動させる(別の錘W2を取付ける)ことで、錘W2を簡単に交換することができる。
【0079】
本発明のトレーニング装置を利用する場合、既存のバーベルWを用いることもできるが、本発明のトレーニング装置向けに開発された専用のバーベル70を用いることもできる。
【0080】
一例として
図11(a)〜(c)に示すバーベル70は、本発明のトレーニング装置向けに開発されたものであって、使用者が把持するシャフト71とシャフト71の長手方向両外寄りの位置に設けられた鍔72と両鍔72の外側に設けられた錘装備部73を備えている。錘装備部73には、錘W2が取り付けられる。
【0081】
図11(c)に示すように、前記シャフト71はパイプ状であり、その長手方向両端部に丸棒状の芯材74が差し込まれている。両芯材74のシャフト71寄りの位置には、第一軸受75を介して鍔72が回転可能に取り付けられている。なお、シャフト71にはパイプではなく芯材(中が空洞でない部材)を用いてもよい。
【0082】
両鍔72は円錐部72aの先端側に円筒部72bを備えた形状をしている。両芯材74のうち、両鍔72の外側には第二軸受76を介して円筒状の錘装備部73が回転可能に設けられている。両錘装備部73は芯材74から抜け落ちないように、ロックナット77で保持されている。
【0083】
前記バーベルWは、シャフト71と鍔72と錘装備部73のそれぞれが軸受を介して回転可能に連結されているため、錘装備部73の円錐部を支持体20の受け部23に載せたときに、錘が装備されていてもスムーズに中央部(最下部)に誘導されることになる。
【0084】
また、前述のとおり、バーベルWにおける鍔72の円錐部72aは、支持体20における受け部23の外下がり傾斜面23cと当接する。これにより、バーベルWが左右方向中央部に誘導される。
【0085】
なお、
図11(a)〜(c)に示すバーベル70は一例であり、バーベルWには、既存のものも含め、
図11(a)〜(c)に示すバーベル70以外の構造のものを用いることもできる。
【0086】
(実施形態2)
本発明のトレーニング装置の他例を、図面を参照して説明する。この実施形態のトレーニング装置の基本的構成は、実施形態1の場合と同様である。異なるのは、
図12に示すように、トレーニングスペースS1の前方側に身体計測スペースS2が設けられていること、当該身体計測スペースS2に使用者の身体データを取得可能な身体データ取得手段80が設けられていることである。以下では、実施形態1と異なる事項を中心に説明し、実施形態1と同様の事項については、適宜その説明を省略する。
【0087】
この実施形態の枠体10は、第二支柱12bの前方側に立設された追加第一支柱12eと、第四支柱12dの前方側に立設された追加第二支柱12fを備えている。追加第一支柱12eは第二支柱12bの前方側に延設された枠体ベース11a、11b上に、追加第二支柱12fは第四支柱12dの前方側に延設された枠体ベース11a、11b上に立設されている。
【0088】
両枠体ベース11a、11bの延設された前端部は追加連結材11fで連結されている。追加第一支柱12eと追加第二支柱12fの上端部は、第五連結材13eで連結されている。
【0089】
図12に示すように、この実施形態では、第二支柱12b、第四支柱12d、追加第一支柱12e及び追加第二支柱12fの内側に前記身体計測スペースS2が形成され、その身体計測スペースS2に前記身体データ取得手段80が設けられている。身体データ取得手段80には、既存の3Dスキャナー等を用いることができる。
【0090】
この実施形態では、身体データ取得手段80によって、使用者の身長や手足の長さのほか、首回りや上腕周り、胸周り、腰回り(ウェスト)、尻回り(ヒップ)、太もも周り、大腿周り、小腿周りのサイズ等の各種身体データを計測できるようにしてある。
【0091】
トレーニングの開始前に身体データ取得手段80で身体データを計測し、その計測データに基づいて支持体20の各種設定(例えば、トップポジション(初期位置)及びボトムポジション(バーベルを降下させる最大位置))が自動的に調整されるようにすることができる。このとき、補助支持体15の係止プレート15aはボトムポジションの近傍に固定することが望ましく、そのために後述の表示モニタ81などを用いて使用者にボトムポジションを通知するようにすることもできる。また、身体データ取得手段80でトレーニングの前後の身体データを計測し、そのデータに基づいてトレーニング内容が決定されるようにすることもできる。
【0092】
この実施形態では、追加第一支柱12eと追加第二支柱12fの間に表示モニタ81が設けられている。表示モニタ81には、鏡とディスプレイの機能を兼ね備えたミラーディスプレイやデジタルサイネージ等を用いることができる。
【0093】
表示モニタ81には、使用者のステータス、トレーニング情報、怪我につながる情報、より効果的なトレーニング方法、トレーニング機器やプロテイン等の広告等、様々な情報を表示することができる。
【0094】
なお、表示モニタ81は必要に応じて設ければよく、不要な場合は省略することができる。また、追加第一支柱12eと追加第二支柱12fの間には、表示モニタ81に代えてディスプレイ機能のない鏡などを設けることもできる。
【0095】
(その他の実施形態)
前記実施形態1及び2では説明を省略しているが、トレーニングスペースS1の床面には、昇降床83を設けることもできる。昇降床83には、パンタグラフ式の昇降床など、既存の又は新規のものを用いることができる。
【0096】
昇降床83を設けることで、ヒップスラストやスクワット等の低位置でのトレーニングにも対応することができる。昇降床83は必要に応じて設ければよく、不要な場合は省略することができる。
【0097】
前記実施形態1及び2では説明を省略しているが、トレーニングスペースS1の床面には、圧力センサ(圧力分布センサ)を備えた計測マットを設けることもできる。このような計測マットを設けることにより、トレーニング時に足にかかる荷重バランスを確認することができる。
【0098】
前記実施形態1及び2では説明を省略しているが、両支持体20には、懸垂トレーニングを行う際に懸垂バー14を把持した使用者の脚を載せることができる載置台(図示しない)を設けることもできる。載置台は懸垂トレーニングを行う場合以外には取り外せるようにしてある。
【0099】
載置台を用いることで、チンニングと呼ばれる自重を使った懸垂トレーニングを効果的に行うことができる。全身の体重を握力と腕力で支えるチンニングは、十分な筋力がない使用者が単独で行うことは難しく、一般にパーソナルトレーニングでは、補助者が足を支えた状態でチンニングを行うことでトレーニング効果を高めることができる。しかし、本実施形態では、載置台を用いることで、これと同様のトレーニングを単独で行うことができる。
【0100】
具体的には、使用者は懸垂バー14にぶら下がるとともに載置台に足(膝)を載せ、その状態で懸垂を行うことで、補助者が足を支えた状態でチンニングを行う場合と同様の効果を得ることができる。
【0101】
前記実施形態2では、トレーニングスペースS1と身体計測スペースS2が一つの枠体10内に設けられた場合を一例としているが、トレーニングスペースS1と身体計測スペースS2は別々の枠体10に設けることもできる。この場合、身体計測スペースS2はトレーニングスペースS1を構成する枠体10の近傍に設けるのが好ましい。