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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-179369(P2020-179369A)
(43)【公開日】2020年11月5日
(54)【発明の名称】空気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/41 20060101AFI20201009BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20201009BHJP
   B03C 3/45 20060101ALI20201009BHJP
   B03C 3/47 20060101ALI20201009BHJP
   B03C 3/53 20060101ALI20201009BHJP
   B03C 3/80 20060101ALI20201009BHJP
【FI】
   B03C3/41 A
   B03C3/40 A
   B03C3/41 Z
   B03C3/45 Z
   B03C3/47
   B03C3/53
   B03C3/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-85464(P2019-85464)
(22)【出願日】2019年4月26日
(71)【出願人】
【識別番号】719002791
【氏名又は名称】合同会社MRC
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA11
4D054BA02
4D054BB01
4D054BB02
4D054BB08
4D054BB09
4D054BB19
4D054BC03
4D054BC06
4D054BC24
4D054BC31
4D054BC40
4D054DA07
(57)【要約】
【課題】浮遊微粒子に電荷を与える荷電装置を出来るだけ低電圧、低電流で動作させること
【解決手段】直径15μm以下の導電性繊維を束ねたコロナ放電極によりコロナ開始電圧を低くできるが、安定放電のために、コロナ放電部に導電性の液体を供給する、放電部に高速気流を流す、などで、微粒子の付着などによるコロナ放電の不安定化を抑制。加えて、弱いコロナ放電でも充分な荷電ができるよう、コロナ放電部では、その直後に置く、平行平板電極で構成される誘導帯電電極内で帯電微粒子が電気力で電極方向に移動して接触できるよう、電荷を与える。一旦接触すると微粒子は誘導帯電二より荷電される。その値はコロナ放電の強さに依存せず、接触部の電界強度などで決まるため、コロナ放電は微弱でも強力な荷電が可能。その後段で電気集塵またはフィルタにより、帯電した微粒子の集塵により、高性能の空気清浄装置が実現可能
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径15ミクロン以下の炭素繊維、ステンレス繊維など導電性繊維束をチューブに入れ、先端部に導電性繊維束を突出させたコロナ放電発生用電極
【請求項2】
導電性繊維束をチューブに入れて用いるコロナ放電電極において、チューブを介して導電性の液体を導電性繊維束先端のコロナ放電領域に供給する電極
【請求項3】
導電性繊維束をチューブに入れて用いるコロナ放電電極において、チューブを介して圧縮ガスを送り、チューブから突出したコロナ放電極先端に高速気流を作る放電極
【請求項4】
導電性繊維を吸水性の高い綿などの繊維と撚り合わせ、吸水性繊維を介してコロナ放電領域に液を送るコロナ放電用電極
【請求項5】
潮解性を有する塩の高濃度溶液を吸水性パッドなどに染み込ませて保持したものをコロナ放電極近傍に設置して、ここに請求項4の撚り腺を接続し、空気中からの水分を取り込み、コロナ放電部に供給する水分の供給方法
【請求項6】
コロナ放電電極の後段に、平行平板、同心円筒、あるいは絶縁板に対向して配置した電極を用いて電界を形成し、その電極に接触した微粒子を誘導帯電する荷電装置
【請求項7】
荷電した浮遊微粒子の集塵用電極として、電極面に高濃度の潮解性を持つ塩の水溶液を吸収させた電極を用いる装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
浮遊する微粒子に電荷を与え、電気力で集塵する電気集塵装置、あるいはフィルタの捕集効率は微粒子が電荷を帯びている方が高くなることを利用する集じん装置、微粒子を荷電しつつ凝集肥大化するなど、微粒子を荷電して集塵する技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微粒子の制御には静電気力が有効であり、そのために微粒子に電荷を与える荷電装置が用いられる。コロナ放電は、例えば針対平板などの不平等性の高い対の電極を用い、これに直流高電圧を印加することで発生できる。この時尖った電極の先端部分の電界強度が高くなるため高電界域に電離が局所的に発生する。これがコロナ放電として知られている。コロナ放電の電離した領域では、電子とイオンが生成しており、電界により電極間に引き出され対向電極に移動する。その間に微粒子が存在すると、微粒子に付着して、それを荷電する。この方法は、微粒子を除去する電気集塵装置や、カーボンなどの微粒子を制御して画像形成するコピー機などに広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-222717 電気集塵機用高電圧荷電装置 のように、コロナ放電電極として針対平板電極が用いられる。このとき、チタンを針電極に用いることで、人体に有害なオゾンの生成を低くできる。
【特許文献2】特願平6−288563 炭素繊維を放電極としたコロナ放電ユニットとそれを用 いた電気集塵装置、ガス浄化装置ならびに除電装置 においてはコロナ放電極の材料として金属に代わって炭素繊維を使用することで、従来よりも低い電圧で強力なコロナ放電を発生できることが述べられている。またコロナ放電によってコロナ放電極の放電部尖端が極めて緩慢ながら酸化消失し、そのために電極先端への微粒子の付着・成長が起こらない。また炭素繊維はその素線の繊維径が極めて細く、従ってこれを単体ないし束状の繊維束として用いる場合、コロナ放電が発生する素線尖端の有効曲率半径は金属製コロナ放電極の放電部に比べて遥かに小さくでき、従来より低電圧で強力なコロナ放電を発生できる。
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”炭素繊維植毛電極による弱コロナ放電を利用する電気集塵装置”静電気学会講演論文集2015、pp.45-48 では、平板対平板電極を用い、一方の平板電極に導電性の炭素繊維を付着させ、その先端からコロナ放電を発生させて、微粒子を荷電している。この方法は、炭素繊維が極めて細いため電界の不平等性が高まり、低い電圧からコロナ放電を発生できることが有利な点であることが報告されている。
【非特許文献2】Electrostatic Precipitator Using Induction Charging, IJPEST (International Journal of Plasma Environmental Science and Technology, vol.10, no.2, 2016 において、コロナ放電発生用に炭素繊維を用い、これをコロナ開始電圧よりごくわずかに高い電圧で動作させようとした。しかしながら炭素繊維は金属に比べ高い電気抵抗を持っているため、使用時の湿度に、コロナ放電の電流値が大きく依存し、特にコロナ放電が開始する付近の低い電圧で動作させる場合には、再現性に問題があることが明らかとなった。この論文で、誘導帯電により微粒子の荷電が促進されることが述べられている。しかしどのような条件で誘導帯電が利用できるかが明確にされておらず、再現性に乏しいと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出来るだけ低い電圧で動作する微粒子荷電装置を実現することが課題で、これにより、人体に有害なオゾンやNOの発生を減らし、感電に対する安全性を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1本の繊維の直径が10ミクロン前後の炭素繊維、あるいはステンレス繊維の束をコロナ放電極として使用する。動作電圧がコロナ放電発生電圧付近でもコロナ電流が安定に発生するよう、繊維束に導電性の液を供給する。これにより繊維束の電気抵抗を低く保ち、先端のコロナ放電の発生する部分への微粒子の付着を減らすことができる。また対向する電極表面にも液が静電噴霧で飛散するので、表面に絶縁性のダスト被膜ができても電流が流れやすくなるため、コロナ電流を安定に流すことができる。
【0007】
液を使うことが難しい場合、コロナ放電電極先端付近への微粒子付着を減らす方法として、繊維束を入れたチューブに圧縮ガスを供給し、先端部から高速に噴出することも有効である。
【0008】
動作電圧が低いコロナ放電は荷電性能が低い問題点がある。この点を補って強力に荷電を行うために、誘導帯電を利用する。コロナ放電電極の後に、平行平板電極を置き内部に直流電界を形成する。コロナ放電でごくわずかに荷電した微粒子が平行平板内で電気力により電極に接触するようにコロナ放電の電圧・電流と平行平板内の電界強度を調整する。コロナ放電と同極性に帯電した微粒子が電気力を受けて電極に接触すると、誘導帯電により、電荷の極性が逆転して引き戻される力が働き、空中に飛び出す。この誘導帯電による電荷量は、電極間の電界強度に比例し、コロナ放電の電圧、電流値に依存しない。また、誘導帯電する際に微粒子は電極表面で他の微粒子とも接触しやすく、肥大化も起こりやすい。凝集して肥大化した帯電微粒子は、従来のフィルタなどでも捕集しやすい。
【発明の効果】
【0009】
繊維束に導電性の液を供給するため、繊維束先端のコロナ放電発生部付近を除く大部分を、繊維束が入る程度の内径のチューブに入れ、チューブを介して液を供給する。あるいは導電性の繊維束と吸水性の高い綿などの繊維を撚り合わせて液を供給しても良く、導電性繊維束と吸水性繊維を撚り合わせたものをチューブにいれ、チューブを介して溶液を供給しても良い。繊維束先端の高電界部分に向かって比誘電率の高い液体に電気的な力が働くため、溶液は先端へと流れ繊維束の電気抵抗を下げるとともに先端部への微粒子の付着を妨げる。このため、金属に比べ電気抵抗の高い炭素繊維束を使う場合、液の供給によりコロナ電流を安定に流すことができる。さらに、液は、先端の高電界部で静電霧化により微粒化し、対向電極に飛散する。このため、対向電極のコロナ放電電流が流れ込む部分の電気抵抗も低下する。これにより、電極表面に形成されやすい酸化膜などの絶縁性被膜ができにくく、電気抵抗の高い微粒子が層状に付着した場合も微粒化した液により電気抵抗が下がるため、コロナ放電が安定に発生できる。
【0010】
導電性の液の仕様が難しい場合、導電性繊維束を内蔵するチューブに圧縮ガスを供給し、先端からガスを噴出させることで、導電性繊維束先端部のコロナ放電発生部位への微粒子の付着を抑制できる。これによっても先端部の曲率半径を小さく保てるために、荷電装置としての動作に必要なコロナ放電電圧の上昇を防ぐことができる。
【0011】
誘導帯電は、電界が加わっている電極に接触している物体が、電極と同極性の電荷を帯びること、その帯電量は電界強度ならびに接触時間に依存する。理論的には、帯電量の最大値は、物体表面の電束密度の積分地で決まり、それに到達するまでの変化は、物体の電気抵抗率と誘電率の積に依存する物体の電荷緩和時間に対する接触時間の割合で決まる。
従って本発明にかかるできるだけ低い動作電圧・電流値でコロナ放電を用いる場合も、コロナ放電による微粒子荷電量を見積もる必要がある。これは直径0.2μm程度以下の微粒子の場合、拡散荷電の理論により見積もることができる。その電荷量を持つ微粒子の、電界中の移動速度は、粒子電荷量と電界強度の積に比例する電気力と、移動に伴ってうける粘性力との釣り合いで決まるので、計算で求めることができる。微粒子が平行平板内を通過する時間内に一方の電極まで、電気力で移動できる条件が、微粒子を誘導帯電することができる条件である。また、平行平板の電界は、例えば大気圧の空気中の場合、30kV/cmを超えると空気の絶縁破壊が起こり、それ以上の電界を加えることができない。この絶縁破壊電圧はパッシェンの法則として知られており、平行平板電極に印加できる最大電圧、あるいは最大電界を与える。この上限値の1/2程度が実際に利用できる最大値であり、これをもとに、誘導帯電を行うことのできる装置が設計可能である。弱いコロナ放電でわずかに荷電された微粒子でも、いったん平行平板電極に接触すればその後は平行平板中の電界に依存する誘導電荷を得るため、平行平板の電界をできるだけ高めることで、微粒子を強力に荷電できる。なお、いったん電極に接触した微粒子は電極と同じ極性に誘導帯電するので、空間に引きこまれる電気力が働くようになり、付着力以上の力となれば、再度空間へ飛び出し、後段に運ばれる。また微粒子は平板電極表面にとどまっている際、平板と同極性となると同時に周囲の平板より尖っているため電界が集中する。このため、後続のガス中の帯電微粒子は、平板上にとどまっている微粒子に向かって力を受けやすく、微粒子同士の衝突が発生しやすく、微粒子の凝集肥大化が起こりやすい。強力に帯電した大きな粒子ほど集塵しやすいため、誘導帯電は空気浄化に有利に働く。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】導電性繊維束をコロナ放電電極として用いる。導電性繊維束として、直径7ミクロン程度の炭素繊維、あるいは直径12ミクロン程度のステンレス繊維の束を用いることができる。導電性繊維束をチューブに入れて用いる。このとき、チューブを介して、導電性の液体を導電性繊維束先端に供給する。液体は水道水のほか、塩化カルシウムあるいは塩化ナトリウムなど潮解性の大きい化合物の溶液でも良い。またオゾンを減らすためにはアスコルビン酸あるいはリンゴ酸など、酸化性ラジカルとの反応性の高い分子を溶液として用いても良い。溶液は図に示すようにポンプ等で送ることもできるが、高低差を利用して圧力で送ることもできる。
図2】導電性繊維を吸水性の高い綿などの繊維と撚り合わせて、吸水性繊維を介して液を送る方法である。この時、外部から液体を供給することもできるが、図に示すように、潮解性を有する塩の高濃度溶液を吸水性パッドなどに染み込ませて保持したものをコロナ放電極近傍に設置して、ここに撚り腺を接続し、空気中からの水分を取り込み、導電性繊維束に供給しても良い。上記の導電性繊維を用いる場合、例えばコロナ放電極先端と対向する接地電極との距離を15mmとした場合、約3kVからコロナ放電が開始する。炭素繊維束の場合は、液体を供給することで、コロナ電流の安定性、コロナ放電開始電圧の再現性が高まる。
図3】コロナ放電の電圧・電流特性を示す。ステンレス繊維束を用いた場合、コロナ放電が約3kVで開始した。これに比し、従来の金属針電極でのコロナ開始電圧は約4.5kVであった。電圧値6kVで比較するとステンレス繊維束の方が2倍以上高いコロナ電流を供給できる。炭素繊維束の場合もコロナ放電開始電圧は3kV付近であるが、電流値のばらつきが大きい。この点、表面を濡らすことでコロナ電流値が安定した。
図4】低電圧でコロナ放電を利用しつつ、荷電量を高くするための誘導帯電の方法の一例を示す。図1あるいは図2に示すコロナ放電極の後段に平行平板による誘導帯電電極を設置する。コロナ放電極は誘導帯電電極の接地電極に向かってコロナ電流が流れるように配置する。これにより、低電圧で動作するコロナ放電で弱く荷電された微粒子が誘導帯電電極に導入され、その電極に接触して誘導帯電される。
図5】コロナ放電極に対向して網状接地電極を置き、その後に誘導帯電電極方法を示す。
図6】コロナ放電極に対抗して円筒状の接地電極を配置するとともに、誘導帯電電極として同心円筒電極を用いる。コロナ放電極はこれに限らず、図4のようにコロナ放電極に対向して網状電極を配置しても良い。
図7】誘導帯電電極として、絶縁板の上に電極を対向して配置した面状の誘導帯電電極も利用できる。特にフレキシブルプリント基板を利用して電極を作成でき、自由に折り曲げて配置できる特徴を有している。
図8】低電圧で動作するコロナ放電、誘導帯電を利用して空気浄化装置を作成する方法を示す。プレフィルタ、コロナ放電電極、誘導帯電電極、集塵用平行平板電極の順に配置して、この順に空気を流すものである。集塵用の平行平板電極は電極面に吸水性を持たせ、濡れ壁とすることで、付着力を高め、集じん効率を高めることができる。吸水性を持たせる方法の一例として、ろ紙を張り、そこに高濃度の潮解性を持つ塩の水溶液を吸収させて濡れ壁とする。濡れ壁となるよう、液体を電極面に沿って流す方法もある。
図9】集塵用平行平板電極の代わりに、いわゆる準HEPAフィルタなどを用いる方法である。プレフィルタ、コロナ放電電極、平行平板電極、準HEPAフィルタの順に配置する。必要な性能に応じ、適したフィルタを選定して使用することが望ましい。一般に、フィルタを用いる場合、微粒子を凝集させるほど、また微粒子に電荷を持たせるほど、効率が高くなることが知られており、低電圧で動作するコロナ放電・誘導帯電装置をフィルタと組み合わせることで、感電に対する安全性を高めるとともに捕集性能を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の形態は、図8に示すプレフィルタ、コロナ放電電極、誘導帯電電極、フィルタの順に空気を流すものである。
まず、プレフィルタにより、空気中の大きい粒子や繊維状の異物をあらかじめ取り除く。その後、コロナ放電部と誘導帯電部を通過させて微粒子を荷電し、後段のフィルターで浄化する。
【0014】
第2の形態は、図7に示す、プレフィルタ、コロナ放電電極、誘導帯電電極、集塵用平行平板電極の順に構成するものである。最終段の集塵用平行平板電極の電極には、表面に水分を保持させ、濡れ壁とすることで、集じん効率を高くできる。このため、電極表面に吸水性の膜を張り、そこに塩化カルシウムなどの潮解性を有する塩の高濃度溶液を保持する。これが、空気中の水分を吸収するため、常時濡れた状態を保つことが容易となり、集じんした微粒子の付着力を高められるため、集じん効率を高くできる。
なお、濡れ壁を形成する別の方法として、表面に液を供給して流れを作り、集じんした微粒子を洗い流すこともできる。
【0015】
プレフィルタ、コロナ放電電極、誘導帯電電極、集塵用平行平板電極の順に構成する。 集塵用平行平板電極を濡れ壁とするために、液をスプレーなどで供給する。これにより、集じんした微粒子を洗い流し、電極面を清浄に保つ。液として殺菌剤を用いることで、病原菌の集塵も安心して行うことができる。
【実施例】
【0016】
実施例は、図8に示す構成で、低電圧で動作するコロナ放電極を用い、誘導帯電により微粒子を荷電し、準HEPAフィルタで集塵する空気清浄装置である。マスクの代わりに利用可能な、小型で、個人用に適した空気浄化装置に応用した実施例である。
必要空気流量を120L/分、0.3μmの微粒子の集塵効率99% を目標とした。
ステンレス繊維束を用い、先端と対向電極との距離を10mmとした。このときコロナ放電開始電圧は3kVであり、正極性をもちいた。誘導帯電用の電極は平行平板電極とした。その間隔は3mmとした。これはコロナ放電と同じ電源で動かしたいためである。別電源を用いても良い場合は、先の説明で述べた誘導帯電が起こる条件を満たす範囲内で、動作電圧と電極間隔を決めることができる。間隔3mmの平行平板を用いた誘導帯電用電極の接地側の端を、高電圧を印加する電極より、5mmコロナ放電極に近く配置することで、大部分のコロナ電流はこの接地電極に流れ込むようにした。準HEPAフィルタの性能は、通過流速1cm/秒において、0.3μmの粒子の捕集効率約90%である。コロナ電圧を4kVとした場合、捕集効率99%が得られた。なお誘導帯電電極に電圧を印加せず、コロナ放電のみで荷電を行った際には捕集効率は約90%で、コロナ放電を用いない場合との違いがほとんど認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
コロナ放電を用いる微粒子荷電装置であり、誘導帯電を併用することで動作電圧を低くできる。このため、高電圧部の絶縁が簡単になり、また取扱い時の感電危険性も大きく改善できる。したがって人が装着するコロナ放電を用いる装置にも利用できる。たとえば、本実施例で述べたような空気浄化装置に応用できる。装置は持ち運びできる大きさであり、首周りに装着して、そこから菌やウイルスを除去した空気を呼吸用に供給するなど、新しい使い方が実現できる。これまではHEPAフィルタを用いる必要があったが、圧力損失が大きく、ブロアなどの装置も強力なものが必要であったが、本発明で、特に電気集塵タイプとすれば圧力損失は最大1mm水柱程度で、フィルタを用いる場合に比べ低い圧力損失で高い集塵性能を得ることができる。また殺菌剤あるいはアスコルビン酸などを用いることで菌やウイルスの装置内での迅速な破壊、オゾン除去ができる。このため、個人用の空気浄化装置、ベビーカー用の空気浄化装置など、ヒトの身近で微粒子除去などを行うことができるようになり、感染予防と健康維持に役立つ。
また大型化することで、室内用空気清浄器とすることができる。本発明により、従来のコロナ放電を用いる機器に比べ低電圧で動作できるため、安全性も向上できる。公共の空間の空気浄化、工場等の作業環境の改善、また畜産におけるウイルス対策など、低圧力損失に加え、低電圧・低電力動作の特性を生かすことができる。
【符号の説明】
【0018】
1 はコロナ放電発生用の放電極となる導電性繊維束であり、直径15μm以下の炭素繊維やステンレス繊維を束ねたものである。
2 は導電性繊維束を内蔵できるチューブであり、高電圧を供給するため、金属であることが望ましい。
3 は接地電極であり、4は高電圧電極である。この平行平板電極の中にコロナ放電で荷電した微粒子を、電気力により接地電極に接触する条件で導入すると、誘導帯電することができる。
5は液体をチューブのなかに供給するためのポンプ、6は液体の保存容器である。導電性の液体を用いるため、ペリスタポンプなど、液に高電圧が加わっても安全なポンプを用いるかポンプを高電圧に浮かせて使用する。
7は荷電した微粒子を集塵するための平行平板電極のうちの接地電極であり、8は高電圧電極である。これらの電極面には吸水性の膜などを張り、潮解性を有する塩の高濃度溶液を保持させるなどして、濡れ壁とする。
9はファンユニット、10は空気流である。
11は導電性繊維と吸水性繊維を撚り合わせた繊維束で、コロナ放電電極として使用する。12は潮解性を持つ塩の高濃度溶液を保持した吸水パッドであり、空気中の水分を吸収して、それを11の繊維束に供給する。13はこの撚り合わせた繊維束をコロナ放電極とする際の接地電極である。
14はコロナ放電を発生させる際の対向電極の一例である。空気流を通すことができるよう、金網などを使用する。
15は円筒状の接地電極であり、中心にコロナ放電極を接地する構成も利用できる。 16はその後段に置く、同心の多層円筒電極であり、一定距離を保って交互に接地電極、高電圧電極として構成する。この電極を用いても平行平板電極と同様に誘導帯電を行うことが可能である。
17は空気浄化装置を構成する際のプレフィルタである。18は導電性繊維束を用いたコロナ放電極、19は誘導帯電電極である。これらの後段に集塵用の平行平板電極を置く。このとき、それぞれの電極、あるいは一部の電極の表面を濡れ壁とする。この平行平板電極の代わりに、20のフィルタを用いても良い。これら一連のユニットの中を空気が流れるよう、ファンユニットなどを用いる。9がファンユニット、10が空気流である。ファンユニットはこれらのユニットの前段に置くことも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9