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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-179780(P2020-179780A)
(43)【公開日】2020年11月5日
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20201009BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20201009BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20201009BHJP
【FI】
   B60W30/10
   B60W40/06
   B60W30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-84286(P2019-84286)
(22)【出願日】2019年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大森 陽介
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA14
3D241BA18
3D241BB27
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE05
3D241DB01B
3D241DB01Z
3D241DB03Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DB20B
3D241DB20Z
3D241DB27B
3D241DB27Z
3D241DB28Z
3D241DB32Z
3D241DB40Z
3D241DC25Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC43Z
3D241DC45Z
3D241DC48Z
3D241DC50Z
(57)【要約】
【課題】車両の可動域を越えるような走行が車両に対して要求されることを抑制できる車両の走行制御装置を提供すること。
【解決手段】走行制御装置100は、目標軌跡から車両が逸脱しているときに、アクチュエータ32,42,52を駆動させることにより、目標軌跡からの車両の逸脱を解消させる装置である。走行制御装置100は、車両の走行状態を基に、アクチュエータ32,42,52の駆動によって車両が到達可能な範囲である可動範囲を導出する可動範囲導出部13と、目標軌跡のうち、可動範囲に含まれる点を目標位置として設定する目標設定部14と、目標位置に車両を向かわせる駆動をアクチュエータ32,42,52に指示する指示部22とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標軌跡から車両が逸脱しているときに、車両のアクチュエータを駆動させることにより、前記目標軌跡からの車両の逸脱を解消させる車両の走行制御装置であって、
車両の走行状態を基に、前記アクチュエータの駆動によって車両が到達可能な範囲である可動範囲を導出する可動範囲導出部と、
前記目標軌跡のうち、前記可動範囲に含まれる点を目標位置として設定する目標設定部と、
前記目標位置に車両を向かわせる駆動を前記アクチュエータに指示する指示部と、を備える
車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記可動範囲導出部は、前記アクチュエータの駆動に伴う車両の走行状態、車両の走行する路面の状態、及び、車両の乗員が感じる乗り心地に関する指標を基に、前記可動範囲を導出する
請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記目標位置に車両が到達した際の当該車両の姿勢角の目標を目標姿勢角とした場合、
前記可動範囲導出部は、
車両の旋回方向を変更させない場合の可動範囲である一方向旋回時可動範囲を導出する処理と、
車両の右方向及び左方向のうちの一方に車両を旋回させた後に他方に車両を旋回させる場合の可動範囲である双方向旋回時可動範囲を導出する処理と、
前記目標軌跡のうち、前記一方向旋回時可動範囲に含まれる点を仮目標位置とした場合、車両の現在位置、前記仮目標位置、及び、前記目標姿勢角を基に、前記一方向旋回時可動範囲及び前記双方向旋回時可動範囲のうちの一方を前記可動範囲として選択する処理と、を実行し、
前記指示部は、前記目標位置に車両を向かわせ、且つ、車両が前記目標位置に到達した際の当該車両の姿勢角を前記目標姿勢角とする駆動を前記アクチュエータに指示する
請求項1又は請求項2に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記走行制御装置は、互いに情報の送受信が可能な複数の電子制御装置を備えるものであり、
複数の前記電子制御装置のうち、第1電子制御装置は前記目標設定部及び前記可動範囲導出部を含み、第2電子制御装置は前記指示部を含んでおり、
前記可動範囲導出部は、前記第2電子制御装置と前記第1電子制御装置との間での情報の送受信に要する時間を加味して前記可動範囲を導出する
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設定されている目標軌道に追随して車両を走行させる走行制御装置の一例が記載されている。目標軌道に追随して走行する車両に外乱が入力されると、車両が目標軌道から逸脱することがある。ここでいう「外乱の入力」としては、例えば、車両が横風を受けること、及び、路面上の轍を車輪が通過することを挙げることができる。
【0003】
目標軌道から車両が逸脱している場合、特許文献1に記載の装置では、車両の現在位置よりも前方の目標軌道上の複数の点のうち、当該現在位置に最も近い点が目標位置として設定される。そして、当該目標位置に向かうように車両走行が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−131042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように目標軌道上の複数の点のうちの車両の現在位置に最も近い点を目標位置として設定する場合、車両の現在位置と当該目標位置とが近すぎると、車両の可動域を越えるような走行が車両に対して要求されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両の走行制御装置は、目標軌跡から車両が逸脱しているときに、車両のアクチュエータを駆動させることにより、前記目標軌跡からの車両の逸脱を解消させる装置である。この走行制御装置は、車両の走行状態を基に、前記アクチュエータの駆動によって車両が到達可能な範囲である可動範囲を導出する可動範囲導出部と、前記目標軌跡のうち、前記可動範囲に含まれる点を目標位置として設定する目標設定部と、前記目標位置に車両を向かわせる駆動を前記アクチュエータに指示する指示部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、目標軌跡のうち、アクチュエータの駆動によって車両に到達させることのできる点が目標位置として設定される。すなわち、アクチュエータを最大限駆動させても車両が到達できないような点が目標位置として設定されることを抑制できる。そのため、車両の可動域を越えるような走行が車両に対して要求されることを抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の走行制御装置を備える車両の概略構成を示すブロック図。
図2】(a),(b)は、車両の可動範囲の一例を示す模式図。
図3】車両の可動範囲の一例を示す模式図。
図4】可動範囲を導出する際に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
図5】目標軌跡と可動範囲とを基に目標位置を設定する様子を説明する模式図。
図6】第2実施形態の走行制御装置を示すブロック図。
図7】変更例において、車両の可動範囲の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、車両の走行制御装置の第1実施形態を図1図5に従って説明する。
図1に示すように、走行制御装置100には、周辺監視装置111及びナビゲーション装置112から情報が入力される。また、走行制御装置100には、車両の運動量を検出する各種のセンサ121,122,123,124から検出信号が入力される。
【0010】
周辺監視装置111は、例えば、カメラなどの撮像装置、及びレーダーを有している。周辺監視装置111は、車両周辺に存在する障害物の大きさや位置に関する情報である障害物情報を取得する。ここでいう障害物とは、車両との接触の回避が必要な大きさのものをいう。こうした障害物としては、例えば、他の車両、歩行者、ガードレール及び壁を挙げることができる。そして、周辺監視装置111は、取得した障害物情報を走行制御装置100に送信する。
【0011】
ナビゲーション装置112は、車両が走行する地域の地図に関する情報である地図情報、及び、地図上での車両の位置を特定する情報である車両位置情報を走行制御装置100に送信する。ここでいうナビゲーション装置112は、走行制御装置100に地図情報及び車両位置情報を送信可能な装置であれば、車載のナビゲーション装置であってもよいし、車外に設置されているサーバであってもよいし、車両の乗員が所有する携帯端末であってもよい。
【0012】
各種のセンサとして、例えば、ヨーレートセンサ121、前後加速度センサ122、横加速度センサ123及び車輪速度センサ124を挙げることができる。ヨーレートセンサ121は、車両のヨーレートYrを車両の運動量として検出し、ヨーレートYrに応じた信号を検出信号として出力する。前後加速度センサ122は、車両の前後加速度Gxを車両の運動量として検出し、前後加速度Gxに応じた信号を検出信号として出力する。横加速度センサ123は、車両の横加速度Gyを車両の運動量として検出し、横加速度Gyに応じた信号を検出信号として出力する。車輪速度センサ124は、車両の車輪毎に設けられている。そして、車輪速度センサ124は、対応する車輪の車輪速度VWを車両の運動量として検出し、車輪速度VWに応じた信号を検出信号として出力する。そして、走行制御装置100では、各車輪の車輪速度VWを基に車両の車体速度VSが導出される。
【0013】
本実施形態の走行制御装置100は、第1電子制御装置としての運転計画生成ECU10と、第2電子制御装置としての運転制御ECU20とを備えている。「ECU」とは、「Electronic Control Unit」の略記である。各ECU10,20は、互いに各種の情報の送受信が可能である。運転計画生成ECU10には、周辺監視装置111及びナビゲーション装置112から情報が入力される。運転制御ECU20には、上記各種のセンサ121〜124からの検出信号が入力される。
【0014】
詳しくは後述するが、運転計画生成ECU10は、入力された情報を基に、車両を自動運転させる際の車両の走行軌跡の指標を目標軌跡TTLとして生成し、生成した目標軌跡TTL上の点を目標位置PTrとして運転制御ECU20に送信する。運転制御ECU20は、上記各種のセンサ121〜124からの検出信号、及び、運転計画生成ECU10から送信された各種の情報を基に、車載の各種のアクチュエータ32,42,52を駆動させる。本実施形態では、運転制御ECU20は、各種のアクチュエータ32,42,52のうちの制動アクチュエータ32を制御する機能も有している。また、運転制御ECU20は、車両の駆動装置40の駆動制御部41、及び、車両の転舵装置50の転舵制御部51と通信可能である。
【0015】
駆動装置40は、各種のアクチュエータ32,42,52のうちのパワーユニット42を有している。パワーユニット42は、エンジンや電気モータなどの車両の動力源を有している。パワーユニット42は、駆動制御部41によって制御される。つまり、運転制御ECU20は、パワーユニット42の駆動を駆動制御部41に指示することによって、パワーユニット42を駆動させることができる、すなわち車両の駆動力を調整することができる。
【0016】
転舵装置50は、各種のアクチュエータ32,42,52のうちの転舵アクチュエータ52を有しており、転舵アクチュエータ52の駆動は転舵制御部51によって制御される。つまり、運転制御ECU20は、転舵アクチュエータ52の駆動を転舵制御部51に指示することによって、転舵アクチュエータ52を駆動させることができる、すなわち車輪の転舵角を調整することができる。
【0017】
次に、運転計画生成ECU10の機能構成について説明する。
運転計画生成ECU10は、機能部として、目標軌跡生成部11、状態推定部12、可動範囲導出部13及び目標設定部14を有している。
【0018】
目標軌跡生成部11は、目標軌跡TTLを生成する。走行レーン内を車両に走行させる場合、目標軌跡生成部11は、例えば、走行レーンの幅方向における中心を車両が通るような軌跡を目標軌跡TTLとして生成する。また、目標軌跡生成部11は、車両の前方に障害物が存在する場合、障害物を迂回する軌跡を目標軌跡TTLとして生成する。
【0019】
状態推定部12は、運転制御ECU20で把握されている車両の運動状態に関する情報を受信することにより、車両の走行状態及び車両の走行する路面の状態を推定する。車両の運転状態に関する情報としては、車両のヨーレートYr、横加速度Gy、前後加速度Gx及び車体速度VSなどの車両の運動量を挙げることができる。これらの運動量は、各種のアクチュエータ32,42,52の駆動に伴う車両の走行状態を表している。そして、状態推定部12は、車両の走行状態として、例えば、車両が直進しているか否か、車両が旋回している場合には左旋回であるのか右旋回であるのか、及び、所定以上のスリップが発生している車輪があるか否かを推定する。また、状態推定部12は、路面の状態として、例えば、路面のμ値及び路面の勾配を推定する。
【0020】
また、状態推定部12は、運転制御ECU20から受信した情報を基に、各種のアクチュエータ32,42,52の駆動状態を取得する。状態推定部12は、制動アクチュエータ32の駆動量DBP、パワーユニット42の駆動量DPU、及び転舵アクチュエータ52の駆動量DSTを駆動状態として取得する。
【0021】
可動範囲導出部13は、各種のアクチュエータ32,42,52の駆動によって車両が到達可能な範囲である可動範囲RTを導出する。すなわち、可動範囲導出部13は、状態推定部12によって推定された車両の走行状態及び路面の状態、状態推定部12によって取得された各種のアクチュエータ32,42,52の駆動状態、及び、車両の乗員が感じる乗り心地に関する指標Zを基に、可動範囲RTを導出する。可動範囲RTの導出処理については後述する。
【0022】
車両の横加速度Gyなどの車両の運動量が大きくなったり、運動量の変化速度でもあるジャークが大きくなったりすると、車両の乗員が不快に感じやすい。そこで、目標軌跡TTLに車両を追従させる走行制御を実施する上で、車両の乗員が感じる不快さを数値化したものが指標Zに相当する。本実施形態では、当該指標Zは、予め設定されている。
【0023】
目標設定部14は、目標軌跡生成部11によって生成された目標軌跡TTLから車両が逸脱しているか否かを判定する。例えば、目標設定部14は、上記車両位置情報を基に、目標軌跡TTLからの車両の逸脱量を導出する。この場合、目標軌跡TTLと車両の現在位置との最短距離を、目標軌跡TTLからの車両の逸脱量として導出することができる。そして、目標設定部14は、導出した逸脱量が判定逸脱量未満であるときには目標軌跡TTLから車両が逸脱しているとの判定をなさない一方で、逸脱量が判定逸脱量以上であるときには目標軌跡TTLから車両が逸脱しているとの判定をなす。
【0024】
目標設定部14は、目標軌跡TTLから車両が逸脱しているとの判定をなしていないときには、車両の現在位置よりも前方における目標軌跡TTL上の複数の点のうち、車両に最も近い点を目標位置PTrとして設定する。
【0025】
一方、目標設定部14は、目標軌跡TTLから車両が逸脱しているとの判定をなしているときには、車両の現在位置よりも前方における目標軌跡TTL上の複数の点のうち、可動範囲導出部13によって導出された可動範囲RTに含まれる点を目標位置PTrとして設定する。
【0026】
なお、目標設定部14は、車両が目標位置PTrに到達した際における車両の姿勢角の目標である目標姿勢角θTgtも設定する。ここでいう「姿勢角θ」とは、現時点での車両の前後方向と、車両が目標位置PTrに到達した時点での当該車両の前後方向とのなす角である。目標軌跡TTLから車両が逸脱しているとの判定をなしているときにおける目標位置PTr及び目標姿勢角θTgtの設定処理については後述する。
【0027】
そして、運転計画生成ECU10は、目標設定部14で目標位置PTr及び目標姿勢角θTgtを設定すると、当該目標位置PTr及び目標姿勢角θTgtを運転制御ECU20に送信する。
【0028】
次に、運転制御ECU20の機能構成について説明する。
運転制御ECU20は、機能部として、制御量導出部21、指示部22及び制動制御部23を有している。
【0029】
制御量導出部21は、運転計画生成ECU10から受信した目標位置PTrまで車両を走行させるための経路を目標走行経路TTRとして導出する。目標走行経路TTRの導出処理については後述する。そして、制御量導出部21は、導出した目標走行経路TTR上を車両に走行させるための各種のアクチュエータ32,42,52の制御量DBPc,DPUc,DSTcを導出する。この際、制御量導出部21は、目標姿勢角θTgtも考慮して各種のアクチュエータ32,42,52の制御量DBPc,DPUc,DSTcを導出する。
【0030】
なお、ここで導出された各種のアクチュエータ32,42,52の制御量DBPc,DPUc,DSTcは、運転計画生成ECU10に送信される。運転計画生成ECU10の状態推定部12では、当該制御量DBPc,DPUc,DSTcがアクチュエータ32,42,52の駆動量DBP,DPU,DSTとして取得される。
【0031】
指示部22は、目標位置PTrに車両を向かわせる駆動を各種のアクチュエータ32,42,52に指示する。すなわち、指示部22は、制御量導出部21によって導出された制動アクチュエータ32の制御量DBPcで制動アクチュエータ32を駆動させることを制動制御部23に指示する。また、指示部22は、制御量導出部21によって導出されたパワーユニット42の制御量DPUcでパワーユニット42を駆動させることを駆動制御部41に指示する。指示部22は、制御量導出部21によって導出された転舵アクチュエータ52の制御量DSTcで転舵アクチュエータ52を駆動させることを転舵制御部51に指示する。
【0032】
制動制御部23は、指示部22で導出された制御量DBPcを基に制動アクチュエータ32を制御する。すなわち、指示部22で導出された制御量DBPcでの制動アクチュエータ32の駆動を制動制御部23に指示することが、目標位置PTrに車両を向かわせる駆動を制動アクチュエータ32に指示することに該当する。
【0033】
なお、運転制御ECU20からパワーユニット42の制御量DPUcが駆動制御部41に送信されると、駆動制御部41は、受信した制御量DPUcを基にパワーユニット42を制御する。すなわち、指示部22で導出された制御量DPUcでのパワーユニット42の駆動を駆動制御部41に指示することが、目標位置PTrに車両を向かわせる駆動をパワーユニット42に指示することに該当する。
【0034】
また、運転制御ECU20から転舵アクチュエータ52の制御量DSTcが転舵制御部51に送信されると、転舵制御部51は、受信した制御量DSTcを基に転舵アクチュエータ52を制御する。すなわち、指示部22で導出された制御量DSTcでの転舵アクチュエータ52の駆動を転舵制御部51に指示することが、目標位置PTrに車両を向かわせる駆動を転舵アクチュエータ52に指示することに該当する。
【0035】
次に、可動範囲導出部13によって実行される可動範囲RTの導出処理について説明する。なお、図2及び図3において、「前後方向X」とは現時点での車両の前後方向であり、「横方向Y」とは現時点での車両の横方向である。
【0036】
可動範囲導出部13は、車両の旋回方向を変更させない場合の可動範囲である一方向旋回時可動範囲RTAを導出する処理と、車両の右方向及び左方向のうちの一方に車両を旋回させた後に他方に車両を旋回させる場合の可動範囲である双方向旋回時可動範囲RTBを導出する処理とを実行する。また、可動範囲導出部13は、一方向旋回時可動範囲RTA及び双方向旋回時可動範囲RTBのうちの一方を可動範囲RTとして選択する処理を実行する。
【0037】
はじめに、図2(a),(b)を参照し、一方向旋回時可動範囲RTAの導出処理について説明する。
図2(a)には、車両60が直進走行している状況下で導出された一方向旋回時可動範囲RTAの一例が図示されている。図2(a)において実線で示す右旋回時限界線LTRは、車両60の横滑りの発生を抑制できる範囲において、車両60の右方向への旋回量を最大とした際の車両60の旋回軌跡の予測結果である。同様に、図2(a)において実線で示す左旋回時限界線LTLは、車両60の横滑りの発生を抑制できる範囲において、車両60の左方向への旋回量を最大とした際の車両60の旋回軌跡の予測結果である。右旋回時限界線LTR及び左旋回時限界線LTLは、車両60の重量、車両60の走行する路面のμ値、車両60の車輪61のコーナーリングパワー、及び、車輪61の横すべり角を基にそれぞれ導出される。コーナーリングパワーは、車両60の車体速度VS、横加速度Gy及びヨーレートYrなどを基に導出することができる。
【0038】
図2(a)に一点鎖線で示す車両中心線LCは、前後方向Xに延び、且つ車両の重心位置60aを通過する直線である。横方向Yにおいて、車両中心線LCと右旋回時限界線LTRとの間隔、及び、車両中心線LCと左旋回時限界線LTLとの間隔は、車両60の現在位置から前後方向Xに離間するにつれて広くなるものの、右旋回時限界線LTRと左旋回時限界線LTLとの中心は車両中心線LC上に位置する。また、当該間隔は、路面のμ値が低いほど、車両60の現在位置から前後方向Xに離間しても広がりにくい。また、当該間隔は、車両60の重量が小さいほど、車両60の現在位置から前後方向Xに離間しても広がりにくい。また、当該間隔は、コーナーリングパワーが小さいほど、車両60の現在位置から前後方向Xに離間しても広がりにくい。また、当該間隔は、車輪61の横すべり角が小さいほど、車両60の現在位置から前後方向Xに離間しても広がりにくい。
【0039】
図2(a)には、車両の乗員が感じる乗り心地に関する指標Zを考慮した車両60の旋回軌跡の予測結果として、制限右旋回時限界線LTRL及び制限左旋回時限界線LTLLが図示されている。車両60の旋回軌跡が、制限右旋回時限界線LTRLと制限左旋回時限界線LTLLとによって囲まれる領域よりも横方向Yにおける外側になる場合、車両60の乗員が不快に感じるおそれがある。
【0040】
そして、右旋回時限界線LTR、左旋回時限界線LTL、制限右旋回時限界線LTRL及び制限左旋回時限界線LTLLを基に、可動範囲RTが導出される。すなわち、右旋回時限界線LTR及び制限右旋回時限界線LTRLのうち、横方向Yにおいて車両中心線LCに近い方が右側限界線LTRaとして選択される。同様に、左旋回時限界線LTL及び制限左旋回時限界線LTLLのうち、横方向Yにおいて車両中心線LCに近い方が左側限界線LTLaとして選択される。そして、右側限界線LTRaと左側限界線LTLaとの間の領域が可動範囲RTとして導出される。すなわち、右旋回時限界線LTRと左旋回時限界線LTLとによって囲まれる領域を最大可動範囲とし、制限右旋回時限界線LTRLと制限左旋回時限界線LTLLとによって囲まれる領域を制限可動範囲とした場合、最大可動範囲及び制限可動範囲のうち、狭い方が可動範囲RTとして選択される。
【0041】
なお、図2(a)では、横方向Yにおいて右旋回時限界線LTRが制限右旋回時限界線LTRLよりも外側に位置し、横方向Yにおいて左旋回時限界線LTLが制限左旋回時限界線LTLLよりも外側に位置する場合の一例が図示されている。そのため、制限右旋回時限界線LTRLが右側限界線LTRaとして選択され、制限左旋回時限界線LTLLが左側限界線LTLaとして選択される。すなわち、制限可動範囲が、可動範囲RTとして選択される。しかし、車両の走行状態や路面の状態によっては、横方向Yにおいて右旋回時限界線LTRが制限右旋回時限界線LTRLよりも内側に位置し、横方向Yにおいて左旋回時限界線LTLが制限左旋回時限界線LTLLよりも内側に位置することもある。この場合、右旋回時限界線LTRが右側限界線LTRaとして選択され、左旋回時限界線LTLが左側限界線LTLaとして選択される。すなわち、最大可動範囲が、可動範囲RTとして選択される。
【0042】
図2(b)には、転舵アクチュエータ52の駆動による車輪61の転舵によって車両60が右旋回している状況下で導出された一方向旋回時可動範囲RTAの一例が図示されている。車両60が既に右旋回している場合、車両60の右方向への旋回量をさらに大きくしやすい一方で、車両60を左旋回させにくい。そのため、図2(b)に示すように、車両中心線LCと右旋回時限界線LTRとの間隔、及び、車両中心線LCと左旋回時限界線LTLとの間隔は、車両60の現在位置から前後方向Xに離間するにつれて広くなるものの、右旋回時限界線LTRと左旋回時限界線LTLとの中心は、車両中心線LCよりも右側に位置する。
【0043】
転舵アクチュエータ52の駆動による車輪61の転舵によって車両60が左旋回している状況下にあっては、車両60の左方向への旋回量をさらに大きくしやすい一方で、車両60を右旋回させにくい。そのため、車両中心線LCと右旋回時限界線LTRとの間隔、及び、車両中心線LCと左旋回時限界線LTLとの間隔は、車両60の現在位置から前後方向Xに離間するにつれて広くなるものの、右旋回時限界線LTRと左旋回時限界線LTLとの中心は、車両中心線LCよりも左側に位置する。
【0044】
なお、指標Zを考慮した制限右旋回時限界線LTRL及び制限左旋回時限界線LTLLの横方向Yにおける外側への広がり方についても、図2(b)に示すように、右旋回時限界線LTR及び左旋回時限界線LTLの横方向Yにおける外側への広がり方と同様である。
【0045】
次に、図3を参照し、双方向旋回時可動範囲RTBの導出処理について説明する。図3において、「前後方向X」とは現時点での車両60の前後方向であり、「横方向Y」とは現時点での車両60の横方向である。
【0046】
図3に示す右側限界線LTRLbは、車両60を右旋回させた後、車両60を左旋回させた場合の線である。右側限界線LTRLbの前半部分は、図2を用いて説明した右側限界線LTRaと同じ方法で導出される前半右側限界線LTRLb1である。右側限界線LTRLbの後半部分は、前半右側限界線LTRLb1の終点SRに車両60が位置するという仮定の下、図2を用いて説明した左側限界線LTLaと同じ方法で導出される後半右側限界線LTRLb2である。
【0047】
一方、図3に示す左側限界線LTLLbは、車両60を左旋回させた後、車両60を右旋回させた場合の線である。左側限界線LTLLbの前半部分は、図2を用いて説明した左側限界線LTLaと同じ方法で導出される前半左側限界線LTLLb1である。左側限界線LTLLbの後半部分は、前半左側限界線LTLLb1の終点SLに車両60が位置するという仮定の下、図2を用いて説明した右側限界線LTRaと同じ方法で導出される後半左側限界線LTLLb2である。
【0048】
次に、図4及び図5を参照し、一方向旋回時可動範囲RTA及び双方向旋回時可動範囲RTBのうちの一方を可動範囲RTとして選択する処理について説明する。本処理ルーチンは、一方向旋回時可動範囲RTA及び双方向旋回時可動範囲RTBの導出が完了すると実行される。
【0049】
本処理ルーチンにおいて、ステップS11では、車両60よりも前方の目標軌跡TTLのうち、一方向旋回時可動範囲RTAに含まれる点が仮目標位置PTrAとして設定される。すなわち、図5に示すように、一方向旋回時可動範囲RTAに含まれる目標軌跡TTL上の複数の点のうち、前後方向Xで車両60に最も近い点が仮目標位置PTrAとして設定される。
【0050】
図4に戻り、次のステップS12では、目標姿勢角θTgtが設定される。例えば、車両60の走行レーンに応じた姿勢角θが目標姿勢角θTgtとして設定される。この場合、車両60の走行レーンがカーブ路である場合、カーブ路の曲率半径に応じた姿勢角θが目標姿勢角θTgtとして設定される。すなわち、「0(零)」とは異なる値が目標姿勢角θTgtとして設定される。一方、車両60の走行レーンが直線路である場合、目標姿勢角θTgtとして「0(零)」又は「0(零)」に近い値が設定される。
【0051】
続いて、ステップS13において、車両60の旋回方向を変えずに仮目標位置PTrAまで車両60を走行させた際に仮目標位置PTrAでの姿勢角θを目標姿勢角θTgtとすることが可能であるか否かの判定が行われる。本実施形態では、以下の関係式(式1)及び(式2)を用い、当該判定が行われる。関係式(式1)において、「YTgt」とは、車両60の現在位置と仮目標位置PTrAとの横方向Yにおけるずれ量である横ずれ量である。「XTgt」とは、車両60の現在位置と仮目標位置PTrAとの前後方向Xにおけるずれ量である前後ずれ量である。
【0052】
α=arctan(YTgt/XTgt) ・・・(式1)
|θTgt|≧2・α ・・・(式2)
関係式(式1)を用いて算出した角度である算出角度αと「2」との積が目標姿勢角θTgtの絶対値以下である場合、車両60の旋回方向を変えずに仮目標位置PTrAまで車両60を走行させた際に仮目標位置PTrAでの姿勢角θを目標姿勢角θTgtとすることが可能との判定がなされる。一方、算出角度αと「2」との積が目標姿勢角θTgtの絶対値よりも大きい場合、可能との判定がなされない。そのため、算出角度αと「2」との積が目標姿勢角θTgtの絶対値以下である場合(ステップS13:YES)、処理が次のステップS14に移行される。ステップS14において、可動範囲RTとして一方向旋回時可動範囲RTAが選択される。そして、本処理ルーチンが終了される。一方、算出角度αと「2」との積が目標姿勢角θTgtの絶対値よりも大きい場合(ステップS13:NO)、処理が次のステップS15に移行される。ステップS15において、可動範囲RTとして双方向旋回時可動範囲RTBが選択される。そして、本処理ルーチンが終了される。すなわち、本実施形態では、車両の現在位置、仮目標位置PTrA、及び、目標姿勢角θTgtを基に、一方向旋回時可動範囲RTA及び双方向旋回時可動範囲RTBのうちの一方が可動範囲RTとして選択される。
【0053】
次に、図5を参照し、可動範囲RTを基に目標位置PTrを設定する際に目標設定部14が実行する処理について説明する。
図5に示すように、車両60よりも前方の目標軌跡TTLのうち、可動範囲RTに含まれる点が目標位置PTrとして設定される。本実施形態では、可動範囲RTに含まれる目標軌跡TTL上の複数の点のうち、前後方向Xで車両60に最も近い点が目標位置PTrとして設定される。そして、目標位置PTrの設定処理が終了される。
【0054】
なお、図5では、可動範囲RTとして一方向旋回時可動範囲RTAが選択されている場合の一例が図示されている。可動範囲RTとして双方向旋回時可動範囲RTBが選択されている場合の目標位置PTrの設定については、可動範囲RTとして一方向旋回時可動範囲RTAが選択されている場合と同様である。
【0055】
そして、目標位置PTrが設定されると、運転計画生成ECU10は、目標位置PTrと目標姿勢角θTgtを運転制御ECU20に送信する。この際、可動範囲RTとして一方向旋回時可動範囲RTAが選択されたのか又は双方向旋回時可動範囲RTBが選択されたのかに関する情報も、運転制御ECU20に送信される。
【0056】
次に、目標走行経路TTRを導出する際に制御量導出部21が実行する処理について説明する。
運転計画生成ECU10から運転制御ECU20が目標位置PTr及び目標姿勢角θTgtを受信すると、制御量導出部21によって、目標走行経路TTRが導出される。この際、目標位置PTrに車両60が到達した際の姿勢角θが目標姿勢角θTgtと等しくなるような経路が目標走行経路TTRとして導出される。具体的には、目標位置PTrの設定の際に選択された可動範囲RTが一方向旋回時可動範囲RTAであるのか双方向旋回時可動範囲RTBであるのかに基づき、目標走行経路TTRが導出される。一方向旋回時可動範囲RTAが選択されているときには、車両60が目標位置PTrに到達するまでの間に車両60の旋回方向が変更されないような経路が目標走行経路TTRとして導出される。一方、双方向旋回時可動範囲RTBが選択されているときには、車両60が目標位置PTrに到達するまでの途中で車両60の旋回方向を切り替えるような経路が目標走行経路TTRとして導出される。このように目標走行経路TTRが導出されると、目標走行経路TTRの導出処理が終了される。
【0057】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)目標軌跡TTLのうち、アクチュエータ32,42,52の駆動によって車両60に到達させることのできる点が目標位置PTrとして設定される。すなわち、アクチュエータ32,42,52を最大限駆動させても車両60が到達できないような点が目標位置PTrとして設定されることがない。そのため、目標軌跡TTLからの車両60の逸脱を解消させる際に、車両60の可動域を越えるような走行が車両60に対して要求されることを抑制できる。
【0058】
(2)本実施形態では、車両60の走行状態を考慮して可動範囲RTが導出される。例えば、車両60が右旋回している場合、車両60の右側には大きく広がる一方で、車両60の左側にはあまり広がらない態様の可動範囲RTが導出される。そして、目標軌跡TTLのうち、こうした可動範囲RTに含まれる点が目標位置PTrとして設定される。すなわち、目標軌跡TTLのうち、アクチュエータ32,42,52の駆動によって車両60に到達させることのできない点が目標位置PTrとして設定されることの抑制効果を高めることができる。
【0059】
(3)本実施形態では、車両60の走行する路面の状態も考慮して可動範囲RTが導出される。例えば、路面のμ値が小さいほど、車両60の左側にも右側にもあまり広がらない態様の可動範囲RTが導出される。そして、目標軌跡TTLのうち、こうした可動範囲RTに含まれる点が目標位置PTrとして設定される。すなわち、目標軌跡TTLのうち、アクチュエータ32,42,52の駆動によって車両60に到達させることのできない点が目標位置PTrとして設定されることの抑制効果を高めることができる。
【0060】
(4)本実施形態では、上記指標Zを考慮して可動範囲RTが導出される。指標Zは、車両の乗員が感じる乗り心地を数値化したものである。目標軌跡TTLのうち、こうした可動範囲RTに含まれる点が目標位置PTrとして設定され、目標位置PTrに向けて車両60の走行が制御される。そのため、目標位置PTrに向けて車両60を走行させる際に、車両の運動量が急変することを抑制できる。したがって、目標位置PTrに向けて車両60を走行させる際に、車両60の乗員が不快に感じることを抑制できる。
【0061】
(5)本実施形態では、一方向旋回時可動範囲RTA及び双方向旋回時可動範囲RTBがそれぞれ導出される。そして、目標姿勢角θTgtを考慮して、一方向旋回時可動範囲RTA及び双方向旋回時可動範囲RTBのうちの一方が可動範囲RTとして選択され、目標軌跡TTLのうち、こうした可動範囲RTに含まれる点が目標位置PTrとして設定される。すると、目標位置PTrに向かう目標走行経路TTRが導出される。この際、可動範囲RTとして、一方向旋回時可動範囲RTAが選択されたのか、又は双方向旋回時可動範囲RTBが選択されたのかを考慮し、目標走行経路TTRとして導出される。そして、こうした目標走行経路TTRに沿って車両60が走行される。その結果、目標位置PTrに車両60が到達した時点では、その姿勢角θを目標姿勢角θTgtとほぼ等しくすることができる。そのため、車両60が目標位置PTrに到達した以降においては、目標軌跡TTLから車両60が逸脱しにくくなる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、車両の走行制御装置の第2実施形態を図6に従って説明する。第2実施形態では、可動範囲RTの導出及び目標位置PTrの設定が運転制御ECUで実行される点が第1実施形態と相違している。そこで、以下の説明においては、第1実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0063】
図6に示すように、走行制御装置100Aは、第1電子制御装置としての運転計画生成ECU10Aと、第2電子制御装置としての運転制御ECU20Aとを備えている。運転計画生成ECU10Aは、機能部として、目標軌跡生成部11を有している。運転計画生成ECU10Aは、目標軌跡生成部11によって生成された目標軌跡TTLから車両60が逸脱しているか否かの判定を行う。そして、運転計画生成ECU10Aは、目標軌跡TTLから車両60が逸脱しているとの判定をなしたときには、その旨を運転制御ECU20Aに送信する。
【0064】
運転制御ECU20Aは、機能部として、可動範囲導出部13、軌跡記憶部25、目標設定部14、制御量導出部21、指示部22及び制動制御部23を有している。
可動範囲導出部13は、上記第1実施形態の場合と同様に可動範囲RTを導出する。運転制御ECU20Aは、制動アクチュエータ32を制御する機能も有している。そのため、運転制御ECU20Aは、車両60のヨーレートYr、横加速度Gy、車輪61のコーナーリングパワー及び車輪61の横すべり角などの車両の運動量を把握しているとともに、車両60の走行する路面の情報も把握している。そのため、可動範囲導出部13は、運転制御ECU20Aが把握している車両の運動量、路面の情報、及び各種のアクチュエータ32,42,52の駆動量DBP,DPU,DSTを基に、可動範囲RTを導出する。
【0065】
軌跡記憶部25は、運転制御ECU20Aが受信した目標軌跡TTLを記憶する。
目標設定部14は、目標軌跡TTLから車両60が逸脱しているとの判定をなした旨を運転計画生成ECU10Aから受信していないときには、車両60の現在位置よりも前方における目標軌跡TTLのうち、車両60に最も近い点を目標位置PTrとして設定する。一方、目標設定部14は、目標軌跡TTLから車両60が逸脱しているとの判定をなした旨を運転計画生成ECU10Aから受信しているときには、車両60の現在位置よりも前方における目標軌跡TTLのうち、可動範囲導出部13によって導出された可動範囲RTに含まれる点を目標位置PTrとして設定する。なお、目標位置PTrの設定に用いられる目標軌跡TTLは、軌跡記憶部25に記憶されている目標軌跡TTLの最新版である。
【0066】
また、目標設定部14は、車両60が目標位置PTrに到達した際における車両60の姿勢角の目標である目標姿勢角θTgtも設定する。
制御量導出部21は、目標設定部14によって目標位置PTrが設定されると、当該目標位置PTrまで車両60を走行させるための経路を目標走行経路TTRとして導出する。そして、制御量導出部21は、上記第1実施形態と同様に、各種のアクチュエータ32,42,52の制御量DBPc,DPUc,DSTcを導出する。
【0067】
指示部22は、上記第1実施形態と同様に、目標位置PTrに車両60を向かわせる駆動を各種のアクチュエータ32,42,52に指示する。
制動制御部23は、上記第1実施形態と同様に、指示部22で導出された制御量DBPcを基に制動アクチュエータ32を制御する。
【0068】
本実施形態では、上記第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・第1実施形態では、可動範囲導出部13は、車両の走行状態、路面の状態、各種のアクチュエータ32,42,52の駆動状態、及び、車両の乗員が感じる乗り心地に関する指標Zを基に可動範囲RTを導出する。車両の走行状態、路面の状態、及び、各種のアクチュエータ32,42,52の駆動状態は、運転制御ECU20から受信した情報に基づいたものである。そのため、可動範囲RTの導出に際して用いられる車両の走行状態、路面の状態、各種のアクチュエータ32,42,52の駆動状態は、通信に要する時間分だけ前の状態である。そこで、可動範囲導出部13は、通信に要する時間を考慮して可動範囲RTを導出するようにしてもよい。
【0070】
図7には、通信に要する時間を考慮して導出された可動範囲RTの一例が図示されている。通信に要する時間TMは、予め把握している。そこで、当該時間TMが経過した時点での車両60の位置が予測され、当該位置を基準として右側限界線LTRa及び左側限界線LTLaが導出される。なお、図7に二点鎖線で示す車両60Aが、時間TMの経過後における車両60の予測位置である。このように右側限界線LTRaと左側限界線LTLaとによって囲まれた領域を、通信に要する時間TMを考慮した可動範囲RTとして導出することができる。そして、目標軌跡TTLのうち、こうした可動範囲RTに含まれる点を目標位置PTrとすることにより、車両60の可動域を越えるような走行を車両60に対して要求されることの抑制効果をより高めることができる。
【0071】
・各実施形態では、上記各関係式(式1)及び(式2)を用い、可動範囲RTとして一方向旋回時可動範囲RTAを選択するのか双方向旋回時可動範囲RTBを選択するのかを決めている。しかし、別の方法を用いて当該選択を行うようにしてもよい。例えば、目標軌跡TTLの形状を基に当該選択を行うようにしてもよい。この場合、目標軌跡TTLが湾曲しているときには一方向旋回時可動範囲RTAを可動範囲RTとして選択し、目標軌跡TTLが湾曲していないときには双方向旋回時可動範囲RTBを可動範囲RTとして選択するようにしてもよい。
【0072】
・上記指標Zを可変させるようにしてもよい。例えば、車両60の周辺に障害物が存在するときには、障害物が存在しないときよりも指標Zを小さくするようにしてもよい。また、車両60の周辺に存在する障害物の数が多いほど指標Zを小さくするようにしてもよい。また、車両60と障害物との距離が短いほど指標Zを小さくするようにしてもよい。この場合、指標Zが小さいほど、制限右旋回時限界線LTRLと制限左旋回時限界線LTLLとの間隔を、車両60の現在位置から前後方向Xに離間するにつれて広がりやすくすることが好ましい。
【0073】
・障害物と車両60との衝突の回避が必要であるときには、上記指標Zを考慮することなく、可動範囲RTを導出するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、一方向旋回時可動範囲RTAに含まれる目標軌跡TTL上の複数の点のうち、前後方向Xで車両60に最も近い点を仮目標位置PTrAとしている。しかし、前後方向Xで車両60に最も近い点以外の点を仮目標位置PTrAとするようにしてもよい。
【0074】
・上記各実施形態では、目標位置PTrの導出に際し、可動範囲RTに含まれる目標軌跡TTL上の複数の点のうち、前後方向Xで車両60に最も近い点を目標位置PTrとしている。しかし、前後方向Xで車両60に最も近い点以外の点を目標位置PTrとするようにしてもよい。
【0075】
・運転制御ECUに可動範囲導出部13を設け、運転計画生成ECUに目標設定部14を設けるようにしてもよい。この場合、可動範囲導出部13によって可動範囲RTが導出されると、当該可動範囲RTが運転計画生成ECUに送信される。そして、目標設定部14では、目標軌跡TTLから車両60が逸脱しているとの判定をなしているときには、受信した可動範囲RTを基に目標位置PTrが設定されることとなる。
【0076】
・上記各実施形態では、運転制御ECUが、制動アクチュエータ32の制御する機能も有していた。しかし、制動制御部23を、運転制御ECUとは別の電子制御装置に設けるようにしてもよい。
【0077】
・目標軌跡生成部11、可動範囲導出部13、目標設定部14、制御量導出部21及び指示部22を1つの電子制御装置に設けるようにしてもよい。
・上記各実施形態では、2つの電子制御装置によって走行制御装置が構成されているが、これに限らず、3つ以上の電子制御装置によって走行制御装置を構成するようにしてもよい。
【0078】
次に、上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記可動範囲導出部は、車両の走行状態及び車両の走行する路面の状態のうち、少なくとも車両の走行状態を基に最大可動範囲を導出し、車両の乗員が感じる乗り心地に関する指標を基に制限可動範囲を導出し、前記最大可動範囲及び前記制限可動範囲のうち、狭い方を前記可動範囲とすることが好ましい。
【0079】
(ロ)前記指示部は、
前記一方向旋回時可動範囲が前記可動範囲として選択されているときには、車両の旋回方向を変更させない駆動を前記アクチュエータに指示する一方、
前記双方向旋回時可動範囲が前記可動範囲として選択されているときには、車両の右方向及び左方向のうち、一方に当該車両を旋回させた後で他方に当該車両を旋回させる駆動を前記アクチュエータに指示することが好ましい。
【符号の説明】
【0080】
10,10A…第1電子制御装置としての運転計画生成ECU、13…可動範囲導出部、14…目標設定部、22…指示部、20,20A…第2電子制御装置としての運転制御ECU、32…アクチュエータの一例である制動アクチュエータ、42…アクチュエータの一例であるパワーユニット、52…アクチュエータの一例である転舵アクチュエータ、60,60A…車両、100,100A…走行制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7