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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-179828(P2020-179828A)
(43)【公開日】2020年11月5日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20201009BHJP
【FI】
   B60C11/03 C
   B60C11/03 300A
   B60C11/03 300E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-86198(P2019-86198)
(22)【出願日】2019年4月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 俊也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC19
3D131CB05
3D131EA08U
3D131EB03U
3D131EB31V
3D131EB43V
3D131EB44V
3D131EB47V
3D131EB51U
3D131EB63V
3D131EB64V
3D131EB67U
3D131EC15V
(57)【要約】
【課題】タイヤのウェット性能およびスノー性能を向上できる空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に対して他方に傾斜しつつ延在して他方のタイヤ接地端Tに開口する複数の第二傾斜主溝2Bと、隣り合う一対の第一傾斜主溝2A、2Aに区画されて成る複数の第一陸部3Aと、隣り合う一対の第二傾斜主溝2B、2Bに区画されて成る複数の第二陸部3Bと、を備える。また、第一陸部3Aおよび第二陸部3Bのそれぞれが、陸部3A;3Bを貫通して一対の傾斜主溝2A、2A;2B、2Bに開口する複数の貫通溝41〜43と、貫通溝41〜43に区画されて成る複数のブロック51〜54とを有する。また、ブロック51〜54が、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部71〜74を有すると共に、先着側のエッジ部に面取部を有さない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ回転方向を指定する表示部を備える空気入りタイヤであって、
タイヤ周方向に対して一方に傾斜しつつ延在して一方のタイヤ接地端に開口する複数の第一傾斜主溝と、
タイヤ周方向に対して他方に傾斜しつつ延在して他方のタイヤ接地端に開口する複数の第二傾斜主溝と、
隣り合う一対の前記第一傾斜主溝に区画されて成る複数の第一陸部と、
隣り合う一対の前記第二傾斜主溝に区画されて成る複数の第二陸部と、を備え、且つ、
前記第一陸部および前記第二陸部のそれぞれが、前記陸部を貫通して前記一対の傾斜主溝に開口する複数の貫通溝と、前記貫通溝に区画されて成る複数のブロックとを有し、且つ、
前記ブロックが、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部を有すると共に、先着側のエッジ部に面取部を有さないことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ブロックのうち、少なくともトレッド部センター領域に配置されたセンターブロックが、前記面取部を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記面取部が、0.5[mm]≦Wc≦3.0[mm]の面取幅Wcおよび0.5[mm]≦Hc≦3.0[mm]の面取深さHcを有する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
1つの前記ブロックにおける前記面取部の面取幅が、タイヤ幅方向外側に向かって漸増する請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ブロックの前記面取幅Wcの最大値Wc_maxと最小値Wc_minとの比が、1.50≦Wc_max/Wc_min≦3.00の関係を有する請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
1つの前記ブロックにおける前記面取部の面取深さが、タイヤ幅方向外側に向かって漸増する請求項1〜5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ブロックの前記面取深さHcの最大値Hc_maxと最小値Hc_minとの比が、1.50≦Hc_max/Hc_min≦3.00の関係を有する請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ブロックのうちトレッド部センター領域にあるセンターブロックのそれぞれが前記面取部を有し、且つ、
前記センターブロックの前記面取部の面取幅あるいは面取深さが、最もタイヤ赤道面に近いセンターブロックから順にタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する請求項1〜7のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
少なくとも1つの前記ブロックが、タイヤ周方向に対して0[deg]以上45[deg]以下の法線をもつエッジ部をタイヤ回転方向の後着側に有すると共に、当該エッジ部に面取部を有する請求項1〜8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第一傾斜主溝および前記第二傾斜主溝が、タイヤ赤道面に開口し、
前記第一陸部が、隣り合う一対の前記第一傾斜主溝および1本の前記第二傾斜主溝に区画されて成ると共にタイヤ赤道面から前記一方のタイヤ接地端まで延在し、
前記第二陸部が、隣り合う一対の前記第二傾斜主溝および1本の前記第一傾斜主溝に区画されて成ると共にタイヤ赤道面から前記他方のタイヤ接地端まで延在し、
複数の前記第一陸部が、タイヤ周方向に隣り合って配列され、
複数の前記第二陸部が、タイヤ周方向に隣り合って配列され、且つ、
前記第一陸部および前記第二陸部が、タイヤ赤道面に沿って千鳥状に配列される請求項1〜9のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記貫通溝の溝幅が、タイヤ赤道面に最も近い前記貫通溝から順にタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する請求項1〜10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記貫通溝のタイヤ周方向に対する傾斜角が、タイヤ赤道面に最も近い前記貫通溝から順にタイヤ幅方向外側に向かって単調減少する請求項1〜11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記ブロックのうちトレッド部センター領域にあるセンターブロックを定義し、
タイヤ赤道面に最も近い最内センターブロックの接地面積と前記センターブロックの接地面積の総和との比が、0.20以上0.30以下の範囲にある請求項1〜12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記センターブロックの接地面積が、前記最内センターブロックの接地面積からタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する請求項13に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
トレッド部センター領域にある前記ブロックのうち最もタイヤ幅方向外側にある前記最外センターブロックを定義し、
前記最外センターブロックのタイヤ幅方向外側の端部からタイヤ赤道面までの距離D3が、タイヤ接地幅TWに対して0.22≦D3/TW≦0.35の関係を有する請求項1〜14のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤのウェット性能およびスノー性能を向上できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のウインタータイヤでは、スノー性能に加えて、高いウェット性能が要求されている。このような課題に関する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−81076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、タイヤのウェット性能およびスノー性能を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ回転方向を指定する表示部を備える空気入りタイヤであって、タイヤ周方向に対して一方に傾斜しつつ延在して一方のタイヤ接地端に開口する複数の第一傾斜主溝と、タイヤ周方向に対して他方に傾斜しつつ延在して他方のタイヤ接地端に開口する複数の第二傾斜主溝と、隣り合う一対の前記第一傾斜主溝に区画されて成る複数の第一陸部と、隣り合う一対の前記第二傾斜主溝に区画されて成る複数の第二陸部と、を備え、且つ、前記第一陸部および前記第二陸部のそれぞれが、前記陸部を貫通して前記一対の傾斜主溝に開口する複数の貫通溝と、前記貫通溝に区画されて成る複数のブロックと、を有し、且つ、前記ブロックが、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部を有すると共に、先着側のエッジ部に面取部を有さないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、(1)第一傾斜主溝および第二傾斜主溝により、トレッド部のエッジ成分が増加してタイヤのスノー制動性能が向上し、また、トレッド部の排水性が向上してタイヤのウェット制動性能が向上する。また、(2)第一陸部および第二陸部が、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部を有することにより、傾斜主溝の溝容積が増加して、タイヤのウェット性能が向上する。一方で、(3)第一陸部および第二陸部が、タイヤ回転方向の先着側のエッジ部に面取部を有さないので、車両制動時におけるブロックの先着側のエッジ成分が確保されて、タイヤのスノー制動性能が適正に確保される。これらにより、タイヤのスノー制動性能およびウェット制動性能が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図3図3は、図2に記載した陸部を示す説明図である。
図4図4は、図2に記載した空気入りタイヤの要部を示す拡大図である。
図5図5は、図2に記載した空気入りタイヤの要部を示す拡大図である。
図6図6は、図3に記載した空気入りタイヤの面取部を示す説明図である。
図7図7は、図3に記載した空気入りタイヤの面取部を示す説明図である。
図8図8は、図6に記載した面取部の変形例を示す説明図である。
図9図9は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図10図10は、従来例の空気入りタイヤを示すトレッド平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0009】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
【0010】
同図において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の測定点の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。
【0011】
空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
【0012】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0013】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、80[deg]以上100[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0014】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141〜143を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。ベルトプライ141〜143は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを含む。
【0015】
一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で15[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。また、一対の交差ベルト141、142は、カーカス層13のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0016】
ベルトカバー143は、スチールあるいは有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のコード角度を有する。また、ベルトカバー143は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141、142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成される。
【0017】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0018】
[トレッドパターン]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、ウィンター用タイヤのトレッド面を示している。
【0019】
図2において、タイヤ回転方向は、タイヤ使用時にて使用頻度が高い回転方向、より具体的には車両前進時における回転方向として定義される。また、タイヤ回転方向により、タイヤ接地時におけるブロックの先着側(いわゆる踏み込み側あるいはトゥ側)および後着側(いわゆる蹴り出し側あるいはヒール側)が定義される。また、空気入りタイヤが、タイヤ回転方向を示す回転方向表示部(図示省略)を備える。回転方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸によって構成される。
【0020】
また、タイヤ接地端Tは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0021】
また、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0022】
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、第一および第二の傾斜主溝2A、2Bと、これらの傾斜主溝2A、2Bに区画されて成る第一および第二の陸部3A、3Bと、を備える。
【0023】
第一傾斜主溝2Aは、タイヤ周方向に対して一方(図中左側)に傾斜しつつ延在して、タイヤ赤道面CLおよび一方のタイヤ接地端Tに開口する。また、複数の第一傾斜主溝2Aが、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。第二傾斜主溝2Bは、タイヤ周方向に対して他方(図中右側)に傾斜しつつ延在してタイヤ赤道面CLおよび他方のタイヤ接地端Tに開口する。また、複数の第二傾斜主溝2Bが、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。具体的には、第一および第二の傾斜主溝2A、2Bがタイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側に向かってタイヤ回転方向の逆側(すなわち、接地後着側)に傾斜する。また、第一および第二の傾斜主溝2A、2Bのそれぞれが、タイヤ赤道面CLを越えて延在する。
【0024】
第一および第二の傾斜主溝2A、2Bは、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、2.5[mm]以上の溝幅および6.5[mm]以上の溝深さ(図中の寸法記号省略)を有する。図2の構成では、傾斜主溝2A、2Bの溝幅が、タイヤ接地端Tからタイヤ赤道面CLに向かって単調減少し、他の傾斜主溝2B、2Aに対する開口位置にて最小となる。また、傾斜主溝2A;2Bの溝幅が、他の傾斜主溝2B;2Aに対して側方から接続する位置にて最小となる。
【0025】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における対向する溝壁間の距離として測定される。切欠部あるいは面取部を溝開口部に有する構成では、溝幅方向かつ溝深さ方向に平行な断面視におけるトレッド踏面の延長線と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。
【0026】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から最大溝深さ位置までの距離として測定される。また、部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0027】
また、1本の第一傾斜主溝2Aが、1本の第二傾斜主溝2Bに対してY字状に開口して1つの主溝ユニット(一対の傾斜主溝2A、2Bから成るユニット。図中の符号省略)を構成する。具体的には、1本の第一傾斜主溝2Aが、第二傾斜主溝2Bに対して側方から接続し、その溝中心線の延長線上にある第二陸部3Bに交差することなく終端する。また、上記主溝ユニットの第二傾斜主溝2Bが、タイヤ回転方向に隣り合う他の主溝ユニットの第一傾斜主溝2Aに対してY字状に開口する。また、第二傾斜主溝2Bが、第一陸部3Aに対して側方から接続し、その溝中心線の延長線上にある第一陸部3Aに交差することなく終端する。そして、複数の主溝ユニット(2A、2B)が、タイヤ周方向に繰り返し配列されて接続される。これにより、第一傾斜主溝2Aと第二傾斜主溝2Bとがタイヤ周方向に交互かつY字状に接続されて、複数の傾斜主溝22A、2Bをタイヤ周方向に連ねて成るトレッドパターンが形成される。
【0028】
上記の構成では、傾斜主溝2A、2Bが、上記したタイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまで延在する長尺な陸部3A、3Bを貫通することなく、相互にY字状に接続されてタイヤ周方向に配列される。これにより、傾斜主溝2A、2Bおよび長尺な陸部3A、3Bの配置効率が適正化されて、タイヤ接地領域における排水性および剛性が適正化される。
【0029】
例えば、図2の構成では、第一および第二の傾斜主溝2A、2Bが、タイヤ赤道面CLを中心として線対称な構造を有し、タイヤ周方向に千鳥状に配列される。また、第一および第二の傾斜主溝2A、2Bが、緩やかに湾曲した円弧形状ないしは緩やかに屈曲したL字形状を有する。また、第一および第二の傾斜主溝2A、2Bの傾斜角(図中の寸法記号省略)が、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する。これにより、タイヤ接地領域の排水性が高められている。
【0030】
傾斜主溝2A、2Bの傾斜角は、傾斜主溝の溝中心線に対する接線とタイヤ回転方向の逆方向とのなす角として定義される。傾斜主溝の溝中心線は、傾斜主溝の左右の溝壁の中点を接続した滑らかな曲線として定義される。
【0031】
また、図2の構成では、一方の傾斜主溝2A;2Bが他方の傾斜主溝2B;2Aに対してその側方からY字状に開口する位置にて、一方の傾斜主溝2A;2Bの延長線上にある陸部3B;3Aが、一方の傾斜主溝2A;2Bの開口部に対向する位置に切欠部を有していない。このため、傾斜主溝2A、2Bの接続部に、X字状ではなく、上記したY字状の溝部が形成されている。しかし、これに限らず、一方の傾斜主溝2A;2Bの延長線上にある第二陸部3B;3Aが、一方の傾斜主溝2A;2Bの開口部に対向する位置に切欠部を有しても良い(図示省略)。
【0032】
第一陸部3Aは、タイヤ周方向に隣り合う一対の第一傾斜主溝2A、2Aと1本の第二傾斜主溝2Bとに区画されて成り、タイヤ赤道面CLから一方(図中左側)のタイヤ接地端Tまで延在する長尺構造を有する。また、複数の第一陸部3A、3Aが、タイヤ周方向に隣り合って配列される。同様に、第二陸部3Bは、タイヤ周方向に隣り合う一対の第二傾斜主溝2B、2Bと1本の第一傾斜主溝2Aとに区画されて成り、タイヤ赤道面CLから他方(図中右側)のタイヤ接地端Tまで延在する長尺構造を有する。また、複数の第二陸部3Bが、タイヤ周方向に隣り合って配列される。そして、第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、相互に長手方向を反転させつつタイヤ赤道面CLに沿って千鳥状に配列される。
【0033】
例えば、図2の構成では、第一および第二の陸部3A、3Bが、タイヤ赤道面CLを中心として線対称な構造を有し、タイヤ周方向に千鳥状に配列される。また、第一および第二の陸部3A、3Bが、緩やかに湾曲ないしは屈曲した長尺形状を有する。また、第一および第二の陸部3A、3Bの長手方向が、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側に向かってタイヤ回転方向の逆側(すなわち、接地後着側)に傾斜する。また、第一および第二の陸部3A、3Bの幅(図中の寸法記号省略)が、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する。これにより、タイヤの接地特性が高められている。
【0034】
陸部3A、3Bの幅は、陸部3A、3Bの長手方向、すなわち陸部3A;3Bを区画する傾斜主溝2A、2Bの延在方向に対して垂直な方向の幅として定義される。
【0035】
上記の構成では、(1)第一傾斜主溝2Aおよび第二傾斜主溝2Bがタイヤ接地端Tからタイヤ赤道面CLまで延在するので、トレッド部のエッジ成分が増加してタイヤのスノー制動性能が向上し、また、トレッド部の排水性が向上してタイヤのウェット制動性能が向上する。また、(2)タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまで延在する陸部3A、3Bがタイヤ周方向に隣り合って配列されるので、これらの陸部3A、3Bの間に第三の陸部が配置される構成(例えば、図10参照)と比較して、傾斜主溝2A、2Bおよび陸部3A、3Bの配置効率が適正化されて、タイヤ接地領域における排水性および剛性が適正化される。また、(3)第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、相互に長手方向を反転させつつタイヤ赤道面CLに沿って千鳥状に配列されるので、タイヤのスノートラクション性能およびスノー制動性能が向上する。これらにより、タイヤのスノー性能およびウェット性能が向上する。
【0036】
図3は、図2に記載した陸部を示す説明図である。同図は、単体の陸部3A(3B)を抽出した拡大図を示している。
【0037】
図3に示すように、1つの陸部3A(3B)は、複数の貫通溝41〜43と、これらの貫通溝41〜43に区画されて成る複数のブロック51〜54とを備える。また、1つの陸部3A(3B)における貫通溝の数が2本以上4本以下であり、ブロックの数が3つ以上5つ以下であることが好ましい。
【0038】
貫通溝41〜43は、陸部3A(3B)を貫通するオープン構造を有し、隣り合う一対の傾斜主溝2A、2A(2B、2B)に開口する。また、複数の貫通溝41〜43が、陸部3A(3B)の長手方向に所定間隔で配置される。
【0039】
また、貫通溝41〜43は、1.5[mm]以上の溝幅W1〜W3および3.0[mm]以上の溝深さ(図示省略)を有し、タイヤ接地時に開口して溝として機能する。また、複数の貫通溝41〜43の溝幅W1〜W3が、W1≦W2≦W3の関係を有し、タイヤ赤道面CLに最も近い最内貫通溝41から順にタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する。図2の構成では、最内貫通溝41の溝幅W1が、最も狭く、1.5[mm]≦W1≦2.5[mm]の範囲にある。また、タイヤ幅方向の最外側にある最外貫通溝43の溝幅W3が、最も広く、3.0[mm]≦W3≦5.0[mm]の範囲にある。
【0040】
また、貫通溝41〜43が、10[deg]以上90[deg]以下の傾斜角θ1〜θ3を有し、タイヤ回転方向に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜する。また、複数の貫通溝41〜43の傾斜角θ1〜θ3が、θ1≧θ2≧θ1の関係を有し、最内貫通溝41から順にタイヤ幅方向外側に向かって単調減少する。図2の構成では、最内貫通溝41のタイヤ周方向に対する傾斜角θ1が、80[deg]≦θ1≦90[deg]の範囲にある。また、最外貫通溝43の傾斜角θ3が、10[deg]≦θ3≦30[deg]の範囲にある。また、最内貫通溝41と最外貫通溝43との間にある貫通溝42の傾斜角θ2が、30[deg]≦θ2≦50[deg]の範囲にある。
【0041】
貫通溝41〜43の傾斜角θ1〜θ3は、傾斜主溝2A、2Bに対する貫通溝41〜43の左右の開口部を接続した仮想直線とタイヤ回転方向の逆方向とのなす角として測定される。
【0042】
また、図2の構成では、複数の最外貫通溝43がタイヤ周方向に配列され、また、これらの最外貫通溝43が上記した傾斜角θ3を有することにより、傾斜主溝2A;2Bに対する開口位置を相互にオフセットさせて配置されている。これにより、最外貫通溝43と傾斜主溝2A;2Bの一部とをタイヤ周方向に交互に接続して成るジグザグ形状の周方向溝が形成されている。
【0043】
ブロック51〜54は、複数の貫通溝41〜43に区画されて成り、陸部3A(3B)を区画する一対の傾斜主溝2A、2A(2B、2B)に沿って一列に配列される。図3の構成では、1つの陸部3A(3B)が4つのブロック51〜54を備える。また、トレッド部センター領域のブロック51〜53が、一対の傾斜主溝2A、2A(2B、2B)側のエッジ部を略平行な対辺とする台形状を有する。また、タイヤ赤道面CLに最も近い最内センターブロック51が、鋭角な角部をタイヤ回転方向の先着側およびタイヤ幅方向外側に有する。
【0044】
トレッド部センター領域CE(図2参照)は、タイヤ幅方向の最外側にある最外貫通溝43を境界とするタイヤ幅方向内側の領域として定義される。また、トレッド部ショルダー領域SHは、最外貫通溝43を境界とするタイヤ幅方向外側の領域として定義される。
【0045】
また、タイヤ赤道面CLに最も近い最内センターブロック51が、タイヤ赤道面CL上に配置される。また、タイヤ赤道面CLに対する最内センターブロック51の突出量Dp(図3参照)が、タイヤ接地幅TWに対して0<Dp/TW≦0.15の関係を有することが好ましく、0.01≦Dp/TW≦0.10の関係を有することが好ましい。また、最内センターブロック51の突出量Dpが、0.5[mm]≦Dp≦5.0[mm]の範囲にあることが好ましく、1.0[mm]≦Dp≦4.0[mm]の範囲にあることがより好ましい。
【0046】
また、トレッド部センター領域にあるセンターブロック51〜53において、タイヤ赤道面CLからセンターブロック51〜53のタイヤ幅方向外側の角部までの距離D1〜D3が、D1<D2<D3の関係を有し、タイヤ赤道面CLに最も近い最内センターブロック51から順にタイヤ幅方向外側に向かって増加する。また、最内センターブロック51の角部の距離D1が、タイヤ接地幅TWに対して0.10≦D1/TW≦0.15の関係を有する。また、タイヤ幅方向の最外側にある最外センターブロック53の角部の距離D3が、タイヤ接地幅TWに対して0.22≦D3/TW≦0.35の関係を有する。
【0047】
また、センターブロック51〜53の接地面積S1〜S3が、S1≦S2≦S3の関係を有し、最内センターブロック51からタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する。また、隣り合うセンターブロック51、52;52、53の接地面積S1〜S3の比S2/S1、S3/S2が、1.01以上1.50以下の範囲にあることが好ましく、1.05以上1.30以下の範囲にあることがより好ましい。また、最内センターブロック51の接地面積S1とセンターブロック51〜53の接地面積S1〜S3の総和ΣSceとの比S1/ΣSceが、0.20以上0.30以下の範囲にある。また、最外センターブロック53の接地面積S3とセンターブロック51〜53の接地面積S1〜S3の総和ΣSceとの比S3/ΣSceが、0.30以上0.45以下の範囲にある。また、図3の構成では、トレッド部ショルダー領域にあるショルダーブロック54の接地面積が、最外センターブロック53の接地面積よりも大きい。
【0048】
上記の構成では、タイヤ赤道面CLに近い領域におけるブロックのエッジ成分が相対的に大きくなり、タイヤ接地領域のスノートラクション性が向上する。一方で、タイヤ接地端Tに近い領域の陸部3A、3Bの剛性が増加して、タイヤ接地領域のウェット制動性能が向上する。これにより、タイヤのスノー性能とウェット性能とが両立する。
【0049】
また、一対の傾斜主溝2A、2A(2B、2B)に区画されたセンターブロック51〜53のエッジ部のうち、短尺なエッジ部のエッジ長La1〜La3と長尺なエッジ部のエッジ長Lb1〜Lb3との比La1/Lb1、La2/Lb2、La3/Lb3が、Lb1/La1≦Lb2/La2≦Lb3/La3の関係を有し、最内センターブロック51からタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する。したがって、センターブロック51〜53の形状が、最内センターブロック51からタイヤ幅方向外側に向かって略台形から略平行四辺形ないしは略矩形に近づく。また、最内センターブロック51のエッジ長の比La1/Lb1が、0.30≦La1/Lb1≦0.50の範囲にある。また、最外センターブロック53のエッジ長の比La3/Lb3が、0.60≦La3/Lb3≦0.90の範囲にある。なお、エッジ長La1〜La3は、ブロック51〜53のエッジ部の両端部の直線距離として測定される。
【0050】
上記の構成では、ブロックのエッジ成分がタイヤ赤道面CLに近い領域で相対的に大きくなり、タイヤ接地領域のスノートラクション性が向上する。一方で、陸部3A、3Bの剛性がタイヤ接地端Tに近い領域で増加して、タイヤ接地領域のウェット制動性能が向上する。これにより、タイヤのスノー性能とウェット性能とが両立する。
【0051】
なお、各ブロック51〜54が、複数のサイプ(図中の符号省略)を有する。サイプは、トレッド踏面に形成された切り込みであり、1.5[mm]未満のサイプ幅および2.0[mm]以上のサイプ深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。
【0052】
図4および図5は、図2に記載した空気入りタイヤの要部を示す拡大図である。これらの図において、図4は、タイヤ赤道面CL付近における陸部3A、3Bの配置構成を示し、図5は、タイヤ赤道面CLに最も近い単体のブロック51を示している。
【0053】
図2の構成では、上記のように、第一傾斜主溝2Aおよび第二傾斜主溝2Bが、タイヤ赤道面CLを越えて延在し、また、第一傾斜主溝2Aおよび第二傾斜主溝2Bがタイヤ周方向に交互に配置されて相互にY字状に交差する。また、第一傾斜主溝2Aおよび第二傾斜主溝2Bに区画された第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、タイヤ赤道面CLに沿って千鳥状に配列される。
【0054】
このとき、図4に示すように、第一傾斜主溝2Aおよび第二傾斜主溝2Bの溝中心線の交点(図中の符号省略)が、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ周方向に千鳥状に配列される。これにより、第一傾斜主溝2Aおよび第二傾斜主溝2Bの一部から成るジグザグ状の主溝が、タイヤ赤道面CL上に形成される。また、第一陸部3Aおよび第二陸部3Bの最内センターブロック51が、タイヤ赤道面CL上に踏面を有し、また、第一陸部3Aの最内センターブロック51と第二陸部3Bの最内センターブロック51とが、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ周方向に千鳥状に配列される。
【0055】
また、図5において、最内センターブロック51のアスペクト比Wb1/Lb1が、1.50≦Wb1/Lb1≦3.00の範囲にあることが好ましく、1.80≦Wb1/Lb1≦2.50の範囲にあることがより好ましい。寸法Lb1は、傾斜主溝2A;2Bの延在方向におけるブロック51の最大長さであり、寸法Wb1は、傾斜主溝2A;2Bの延在方向に対して直交する方向におけるブロック51の最大幅である。
【0056】
また、図5に示すように、最内センターブロック51が、台形状を有し、長尺な下底側をタイヤ回転方向かつタイヤ幅方向外側に向けて配置されている。また、最内連通溝41が、上記した傾斜角θ1(図3参照)を有することにより、最内センターブロック51の後着側のエッジ部が、タイヤ周方向に法線方向を向けている。これにより、タイヤのスノートラクション性能が高められている。
【0057】
[ブロックの面取部]
図6および図7は、図3に記載した空気入りタイヤの面取部を示す説明図である。これらの図は、ブロック51(52〜54)の概念的な斜視図(図6)および側面図(図7)を示している。
【0058】
図3および図6に示すように、陸部3A(3B)のブロック51〜54は、隣り合う傾斜主溝2A、2A(2B、2B)に沿った前後のエッジ部のうち、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部71〜74を有し、一方で、先着側のエッジ部に面取部を有していない。したがって、面取部71〜74が、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部にのみ形成される。また、面取部71〜43が、少なくともトレッド部センター領域CE(図2参照)のブロック51〜53に形成される。
【0059】
また、図7において、面取部71(72〜74)が、0.5[mm]≦Wc≦3.0[mm]の面取幅Wcおよび0.5[mm]≦Hc≦3.0[mm]の面取深さHcを有する。また、面取深さHcが、傾斜主溝2A(2B)の最大溝深さHgに対して0.05≦Hc/Hg≦0.40の関係を有する。一方で、上記のように、ブロック51〜54の先着側のエッジ部には、面取部が形成されていない。ただし、上記した面取深さHcおよび面取幅Wcの条件を満たさない微細なエッジ加工(図示省略)が、ブロック51〜54のエッジ部に施されても良い。
【0060】
面取部は、隣接する面の交差部を平面(例えば、C面取り)または曲面(例えば、R面取り)で接続する部分として定義される。
【0061】
面取部の幅Wcは、陸部のエッジ部から陸部の踏面における面取部の稜線までのタイヤ幅方向の距離として測定される。また、陸部のエッジ部は、周方向主溝の溝壁の延長線と陸部の踏面との交点として定義される。面取部の稜線は、面取部の壁面と陸部の踏面との境界線として定義される。
【0062】
面取部の深さHcは、陸部の踏面からの最大深さとして測定される。
【0063】
上記の構成では、第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部71〜74を有することにより、傾斜主溝2A、2Bの溝容積が増加して、タイヤのウェット性能が向上する。一方で、第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、タイヤ回転方向の先着側のエッジ部に面取部を有さないので、車両制動時におけるブロック51〜54の先着側のエッジ成分が確保されて、タイヤのスノー制動性能が適正に確保される。これらにより、タイヤのスノー制動性能およびウェット制動性能が向上する。
【0064】
例えば、図3の構成では、上記のように、陸部3A(3B)が、タイヤ周方向に対して傾斜しつつタイヤ赤道面CLからタイヤ接地端まで延在する長尺構造を有し、また、3本の貫通溝41〜43とこれらの貫通溝に区画されて成る4つのブロック51〜54とを備える。また、すべてのブロック51〜54、特にすべてのセンターブロック51〜53が、前後の傾斜主溝2A(2B)側のエッジ部のうち、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部のみに面取部71〜74を有する。また、面取部71〜74のそれぞれが、ブロック51〜54のエッジ部の全域に渡って延在する。
【0065】
また、図3の構成では、上記のように、最内連通溝41が、タイヤ周方向に対して80[deg]≦θ1≦90[deg]の傾斜角θ1を有する。このため、最内センターブロック51が、タイヤ周方向に対して略平行なの法線をもつエッジ部をタイヤ回転方向の後着側に有する。そして、図4および図5に示すように、最内センターブロック51が、この最内連通溝41側のエッジ部にも面取部71’を有する。このように、ブロックが、タイヤ周方向に対して0[deg]以上45[deg]以下の法線をもつエッジ部をタイヤ回転方向の後着側に有する場合には、当該エッジ部にも面取部が形成されることが好ましい。
【0066】
図8は、図6に記載した面取部の変形例を示す説明図である。ブロック51(52〜54)の概念的な斜視図を示している。
【0067】
図3の構成では、図6に示すように、面取部71(72〜74)が一定の面取幅Wcおよび一定の面取深さHcをもってタイヤ幅方向に延在する。
【0068】
しかし、これに限らず、面取部71(72〜74)の面取幅Wcおよび面取深さHcが、タイヤ幅方向外側に向かって増加することが好ましい。概念的には、面取部71(72〜74)の大きさが、タイヤ幅方向外側に向かって増加することが好ましい。
【0069】
例えば、図8に示すように、1つのブロック51(52〜54)に着目したときに、面取部71(72〜74)の面取幅Wcおよび面取深さHcがタイヤ幅方向内側から外側に向かって漸増することが好ましい。このとき、1つのブロック51(52〜54)における面取幅Wcの最大値Wc_maxと最小値Wc_minとの比が、1.50≦Wc_max/Wc_min≦3.00の関係を有し、また、面取深さHcの最大値Hc_maxと最小値Hc_minとの比が、1.50≦Hc_max/Hc_min≦3.00の関係を有することが好ましい。
【0070】
また、例えば、面取部71(72〜74)が一定の面取幅Wcおよび一定の面取深さHcを有する構成(図6参照)において、センターブロック51〜53の面取部71〜73(図3参照)の面取幅あるいは面取深さが、最もタイヤ赤道面CLに近いセンターブロック51から順にタイヤ幅方向外側に向かって単調増加しても良い(図示省略)。すなわち、最内センターブロック51の面取部71の面取幅あるいは面取深さが最も小さく、最外センターブロック53の面取部73の面取幅あるいは面取深さが最も大きくなるように、センターブロック51〜53における面取部71〜73の面取幅あるいは面取深さが設定されても良い。
【0071】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転方向を指定する表示部(図示省略)を備える。また、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に対して一方に傾斜しつつ延在して一方のタイヤ接地端Tに開口する複数の第一傾斜主溝2Aと、タイヤ周方向に対して他方に傾斜しつつ延在して他方のタイヤ接地端Tに開口する複数の第二傾斜主溝2Bと、隣り合う一対の第一傾斜主溝2A、2Aに区画されて成る複数の第一陸部3Aと、隣り合う一対の第二傾斜主溝2B、2Bに区画されて成る複数の第二陸部3Bと、を備える(図2参照)。また、第一陸部3Aおよび第二陸部3Bのそれぞれが、陸部3A;3Bを貫通して一対の傾斜主溝2A、2A;2B、2Bに開口する複数の貫通溝41〜43と、貫通溝41〜43に区画されて成る複数のブロック51〜54とを有する。また、ブロック51〜54が、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部71〜74を有すると共に、先着側のエッジ部に面取部を有さない(図3参照)。
【0072】
かかる構成では、(1)第一傾斜主溝2Aおよび第二傾斜主溝2Bにより、トレッド部のエッジ成分が増加してタイヤのスノー制動性能が向上し、また、トレッド部の排水性が向上してタイヤのウェット制動性能が向上する。また、(2)第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部71〜74を有することにより、傾斜主溝2A、2Bの溝容積が増加して、タイヤのウェット性能が向上する。一方で、(3)第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、タイヤ回転方向の先着側のエッジ部に面取部を有さないので、車両制動時におけるブロック51〜54の先着側のエッジ成分が確保されて、タイヤのスノー制動性能が適正に確保される。これらにより、タイヤのスノー制動性能およびウェット制動性能が向上する利点がある。
【0073】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック51〜54のうち、少なくともトレッド部センター領域CEに配置されたセンターブロック51〜53が、面取部71〜73を有する(図3参照)。これにより、面取部71〜73によるタイヤのウェット制動性能の向上作用が適正に確保される利点がある。
【0074】
また、この空気入りタイヤ1では、面取部71〜74が、0.5[mm]≦Wc≦3.0[mm]の面取幅Wcおよび0.5[mm]≦Hc≦3.0[mm]の面取深さHcを有する(図7参照)。これにより、面取幅Wcおよび面取深さHcが適正化される利点がある。
【0075】
また、この空気入りタイヤ1では、1つのブロック51〜54における面取部71〜74の面取幅Wcが、タイヤ幅方向外側に向かって漸増する(図8参照)。これにより、面取部71〜73による排水性の向上作用が高まる利点がある。
【0076】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック51〜54の面取幅Wc(図7参照)の最大値Wc_maxと最小値Wc_minとの比が、1.50≦Wc_max/Wc_min≦3.00の関係を有する。これにより、漸増する面取幅Wcの範囲が適正化される利点がある。
【0077】
また、この空気入りタイヤ1では、1つのブロック51(52〜54)における面取部71(72〜74)の面取深さHcが、タイヤ幅方向外側に向かって漸増する(図8参照)。これにより、面取部71〜73による排水性の向上作用が高まる利点がある。
【0078】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック51〜54の面取深さHc(図7参照)の最大値Hc_maxと最小値Hc_minとの比が、1.50≦Hc_max/Hc_min≦3.00の関係を有する。これにより、漸増する面取深さHcの範囲が適正化される利点がある。
【0079】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック51〜54のうちトレッド部センター領域にあるセンターブロック51のそれぞれが面取部71〜73を有する(図3参照)。また、センターブロック51〜53の面取部71〜73の面取幅Wcあるいは面取深さHcが、最もタイヤ赤道面CLに近いセンターブロック51から順にタイヤ幅方向外側に向かって単調増加する(図示省略)。これにより、面取部71〜73による排水性の向上作用が高まる利点がある。
【0080】
また、この空気入りタイヤ1では、少なくとも1つのブロック51〜54が、タイヤ周方向に対して0[deg]以上45[deg]以下の法線をもつエッジ部をタイヤ回転方向の後着側に有すると共に、当該エッジ部に面取部71〜74を有する(図3参照)。かかる構成では、面取部71〜74が、スノー制動性能に対する影響が小さいエッジ部に形成されるので、タイヤのスノー制動性能が適正に確保される利点がある。
【0081】
また、この空気入りタイヤ1では、第一傾斜主溝2Aおよび第二傾斜主溝2Bが、タイヤ赤道面CLに開口する(図2参照)。また、複数の第一陸部3Aが、隣り合う一対の第一傾斜主溝2A、2Aおよび1本の第二傾斜主溝2Bに区画されて成ると共にタイヤ赤道面CLから一方のタイヤ接地端Tまで延在する。また、複数の第二陸部3Bが、隣り合う一対の第二傾斜主溝2B、2Bおよび1本の第一傾斜主溝2Aに区画されて成ると共にタイヤ赤道面CLから他方のタイヤ接地端Tまで延在する。また、複数の第一陸部3Aが、タイヤ周方向に隣り合って配列され、複数の第二陸部3Bが、タイヤ周方向に隣り合って配列される。また、第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、タイヤ赤道面CLに沿って千鳥状に配列される。かかる構成では、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまで延在する陸部3A、3Bがタイヤ周方向に隣り合って配列されるので、これらの陸部3A、3Bの間に第三の陸部が配置される構成(例えば、図10参照)と比較して、傾斜主溝2A、2Bおよび陸部3A、3Bの配置効率が適正化されて、タイヤ接地領域における排水性および剛性が適正化される。また、第一陸部3Aおよび第二陸部3Bが、相互に長手方向を反転させつつタイヤ赤道面CLに沿って千鳥状に配列されるので、タイヤのスノートラクション性能およびスノー制動性能が向上する。これらにより、タイヤのスノー性能およびウェット性能が向上する利点がある。
【0082】
また、この空気入りタイヤ1では、貫通溝41〜43の溝幅が、タイヤ赤道面CLに最も近い貫通溝41〜43から順にタイヤ幅方向外側に向かって単調増加(W1≦W2≦W3)する(図3参照)。これにより、タイヤ接地領域の排水性と剛性とが両立する利点がある。
【0083】
また、この空気入りタイヤ1では、貫通溝41〜43のタイヤ周方向に対する傾斜角θ1〜θ3が、タイヤ赤道面CLに最も近い貫通溝41から順にタイヤ幅方向外側に向かって単調減少(θ1≧θ2≧θ1)する。(図3参照)。これにより、タイヤ接地領域の排水性およびスノートラクション性が両立する利点がある。
【0084】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック51〜53のうちトレッド部センター領域にあるセンターブロック51〜53を定義し、タイヤ赤道面CLに最も近い最内センターブロック51の接地面積S1とセンターブロック51〜53の接地面積S1〜S3の総和との比S1/(S1+S2+S3)が、0.20以上0.30以下の範囲にある。これにより、最内センターブロック51の接地面積S1が適正に確保される利点がある。
【0085】
また、この空気入りタイヤ1では、センターブロック51〜53の接地面積S1〜S3(図中の寸法記号省略)が、最内センターブロック51の接地面積からタイヤ幅方向外側に向かって単調増加(S1≦S2≦S3)する(図3参照)。かかる構成では、タイヤ赤道面CLに近い領域におけるブロックのエッジ成分が相対的に大きくなりタイヤ接地領域のスノートラクション性が向上し、一方で、タイヤ接地端Tに近い領域の陸部3A、3Bの剛性が増加してタイヤ接地領域のウェット制動性能が向上する。これにより、タイヤのスノー性能とウェット性能とが両立する利点がある。
【0086】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッド部センター領域にあるブロック51〜53のうち最もタイヤ幅方向外側にある最外センターブロック53を定義し、最外センターブロック53のタイヤ幅方向外側の端部からタイヤ赤道面CLまでの距離D3が、タイヤ接地幅TWに対して0.22≦D3/TW≦0.35の関係を有する。これにより、最外センターブロック53の剛性バランスが適正化されて、タイヤのスノー性能およびウェット性能が両立する利点がある。
【実施例】
【0087】
図9は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。図10は、従来例の空気入りタイヤを示すトレッド平面図である。
【0088】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)ウェット制動性能および(2)スノー制動性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ205/55R16 91Hの試験タイヤがリムサイズ16×6.5Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤに内圧200[kPa]およびJATMA規定の規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である排気量1500[cc]かつFF(Front engine Front drive)方式の乗用車に装着される。
【0089】
(1)スノー制動性能に関する評価では、試験車両が雪路試験場のスノー路面を走行し、走行速度40[km/h]からの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0090】
(2)ウェット制動性能に関する評価では、試験車両が水深1[mm]で散水したアスファルト路を走行し、走行速度85[km/h]からの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0091】
実施例の試験タイヤは、図1および図2の構成を備え、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまで延在する長尺な陸部3A、3Bが、タイヤ周方向に隣り合って配置され、且つ、タイヤ赤道面CLに沿って千鳥状に配置されている。また、陸部3A、3Bのブロック51〜54が、タイヤ回転方向の後着側のエッジ部に面取部71〜74を有する。また、傾斜主溝2A、2Bが5.0[mm]の溝幅および8.5[mm]の溝深さをそれぞれ有している。また、タイヤ赤道面CL側の2本の貫通溝41、42が2.0[mm]の溝幅および4.5[mm]の溝深さをそれぞれ有し、最も外側にある貫通溝43が4.5[mm]の溝幅および6.5[mm]の溝深さを有している。また、タイヤ接地幅TWが160[mm]である。また、面取部71〜74が2.0[mm]かつ一定の面取幅および面取深さを有する。
【0092】
従来例の試験タイヤは、図10の構成を備え、実施例の試験タイヤと比較して、特に、タイヤ赤道面CLまで延在しない短尺な陸部が隣り合う長尺な陸部の間に挿入される点、ならびに、陸部が4本の連通溝(傾斜角θ1〜θ4を有する。)および4つのセンターブロック(接地面積S1〜S4を有する。)を備える点で相異する。
【0093】
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、従来例の試験タイヤと比較して、タイヤのスノー制動性能およびウェット制動性能が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0094】
1 空気入りタイヤ;11 ビードコア;12 ビードフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141、142 交差ベルト;143 ベルトカバー;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;2A、2B 傾斜主溝;3A、3B 陸部;41〜43 貫通溝;51〜53 センターブロック;54 ショルダーブロック;71〜74 面取部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10