【解決手段】ジエン系ゴムと、液晶エラストマーとを含有するゴム組成物。液晶エラストマーが、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が20℃以下のものであることが好ましく、液晶ポリウレタンエラストマーであることがより好ましい。液晶ポリウレタンエラストマーは、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、光重合性基含有化合物との反応物であっても良く、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、多官能化合物との反応物であっても良い。
前記液晶ポリウレタンエラストマーが、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、光重合性基含有化合物との反応物である請求項5に記載のゴム組成物。
前記液晶ポリウレタンエラストマーが、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、多官能化合物との反応物である請求項5に記載のゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムと、液晶エラストマーとを含有する。
【0017】
ゴム成分としては、空気入りタイヤの原料として使用可能なゴム成分を任意に使用可能であるが、本発明ではジエン系ゴムを好適に使用することができる。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられる。必要に応じて、末端を変性したもの(例えば、末端変性BR、末端変性SBRなど)、あるいは所望の特性を付与すべく改質したもの(例えば、改質NR)も好適に使用可能である。また、ポリブタジエンゴム(BR)については、コバルト(Co)触媒、ネオジム(Nd)触媒、ニッケル(Ni)触媒、チタン(Ti)触媒、リチウム(Li)触媒を用いて合成したものに加えて、WO2007−129670に記載のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物を用いて合成したものも使用可能である。
【0018】
空気入りタイヤの低燃費性を考慮した場合、ポリスチレンブタジエンゴムについては、スチレン含有量10〜40質量%、ブタジエン部のビニル結合量10〜70質量%、およびcis分10質量%以上であるものが好ましく、スチレン含有量15〜25質量%、ブタジエン部のビニル結合量10〜60質量%、およびcis分20質量%以上であるものが特に好ましい。また、本発明に係るゴム組成物を空気入りタイヤのトレッドゴム部として使用する場合、油添タイプよりも非油添タイプのポリスチレンブタジエンゴムを使用することが好ましい。
【0019】
本発明においては、液晶エラストマーとしては、例えば液晶ポリエステルエラストマー、液晶ポリアクリレートエラストマー、液晶ポリシロキサンエラストマー、および液晶ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、ゴム組成物に配合した場合、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスをより高いレベルで改良することができるため、特に液晶ポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0020】
ジエン系ゴム中での分散性を考慮した場合、本発明で使用する液晶エラストマーの平均粒子径は500μm以下に設計されることが好ましい。ジエン系ゴム中への液晶エラストマーの分散性を考慮した場合、液晶エラストマーの平均粒子径は300μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。液晶エラストマーの平均粒子径の下限は特に限定されないが、例えば2μm程度が例示可能である。
【0021】
本発明に係るゴム組成物中、液晶エラストマーの配合量は、ゴム組成物のtanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランス向上の見地から、ジエン系ゴムの全量を100質量部としたとき、1〜50質量部に設計することが好ましい。ゴム組成物中、液晶エラストマーの配合量が1質量部未満であると、最終製品である空気入りタイヤのWET性能および低燃費性をバランス良く向上することが困難となり、液晶エラストマーの配合量が50質量部を超えると、ゴム物性が損なわれる可能性がある。最終製品である空気入りタイヤのゴム物性を維持しつつ、WET性能および低燃費性をバランス良く向上するためには、ジエン系ゴムの全量を100質量部としたとき、液晶エラストマーの配合量は3〜50質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましい。
【0022】
本発明においては、ゴム組成物のtanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスをより高いレベルで改良するために、液晶エラストマーが、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が20℃以下のものであることが好ましく、Tiが5℃以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明においては、液晶エラストマーが、ジエン系ゴムと反応する官能基を有するものであることが好ましく、前記官能基が、硫黄原子を少なくとも含む官能基であることがより好ましい。硫黄原子を少なくとも含む官能基を有する液晶エラストマーとしては、例えば後述する、ポリスルフィド含有化合物の反応物である液晶ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
【0024】
本発明で使用可能な液晶ポリウレタンエラストマーとしては、例えば、(i)少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、光重合性基含有化合物との反応物であっても良く、(ii)少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、多官能化合物との反応物であっても良い。前記(i)および(ii)のいずれも、ポリスルフィド含有化合物の反応物である液晶ポリウレタンエラストマーに該当する。以下、各構成について説明する。
【0025】
前記(i)および(ii)において使用するメソゲン基含有化合物としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が使用可能である。
【化1】
【0026】
上記一般式(1)において、Xは活性水素基であり、R
1は隣接する結合基の一部をなす単結合、−N=N−、−CO−、−CO−O−、または−CH=N−であり、R
2は隣接する結合基の一部をなす単結合、または−O−であり、R
3は隣接する結合基の一部をなす単結合、または炭素数1〜20のアルキレン基である。ただし、R
2が−O−であり、且つR
3が隣接する結合基の一部をなす単結合であるものを除く。)なお、「隣接する結合基の一部をなす単結合」とは、当該単結合が隣接する結合基の一部と共有されている状態を意味する。例えば、上記一般式(1)において、R
1が隣接する結合基の一部をなす単結合である場合、単結合であるR
1は両側のベンゼン環と共有された状態となり、当該両側のベンゼン環とともにビフェニル構造を形成する。Xとしては、例えば、OH、SH、NH
2、COOH、二級アミンなどが挙げられる。メソゲン基含有化合物の配合量は、液晶ポリウレタンエラストマーの原材料全体の中で、30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%となるように調整される。メソゲン基含有化合物の配合量が30質量%未満の場合、生成したポリマーに液晶性が発現し難くなる。メソゲン基含有化合物の配合量が80質量%を超える場合、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が高くなり、常温を含む低温領域でポリマーを成形することが困難となる。
【0027】
メソゲン基含有化合物には、アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドを併用することが好ましい。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドは、液晶ポリウレタンエラストマーにおける液晶相の発現温度を低下させるように機能するため、メソゲン基含有化合物にアルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドを併用して生成した液晶ポリウレタンエラストマーは、液晶相から等方相への転移温度(Ti)を所望の温度範囲に容易に設計可能となる。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはブチレンオキシドを使用することができる。上掲のアルキレンオキシドは、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。スチレンオキシドについては、ベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有するものでもよい。アルキレンオキシドは、上掲のアルキレンオキシドと、上掲のスチレンオキシドとを混合したものを使用することも可能である。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドの配合量は、メソゲン基含有化合物1モルに対して、アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドが4〜20モル、好ましくは6〜15モル付加されるように調整される。
【0028】
前記(i)および(ii)において使用するイソシアネート化合物は、例えば下記に示すジイソシアネート化合物を使用することができる。ジイソシアネート化合物を例示すると、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、およびm−キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;並びに1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。例示したジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。なお、本発明ではイソシアネート化合物として3官能以上のイソシアネート化合物を併用しても良いが、最終的に液晶ポリウレタンエラストマーを乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーまたは懸濁重合液晶ポリウレタンエラストマーとするためには、使用するイソシアネート化合物の全量を100質量%としたとき、ジイソシアネート化合物の割合は98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、略100質量%であることがさらに好ましい。3官能以上のイソシアネート化合物を例示すると、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどのトリイソシアネート、およびテトライソシアネートシランなどのテトライソシアネートが挙げられる。
【0029】
液晶ポリウレタンエラストマーを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、イソシアネート化合物の割合は10〜40質量部であることが好ましく、15〜30質量部であることがより好ましい。イソシアネート化合物の配合量が10質量部未満である場合、ウレタン反応による高分子化が不十分となる。一方、イソシアネート化合物の割合が40質量部を超える場合、液晶ポリウレタンエラストマーの原材料全体に占めるメソゲン基含有化合物の配合量が相対的に少なくなるため、液晶ポリウレタンエラストマーの液晶性が低下する。
【0030】
なお、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基は、メソゲン基含有化合物が有する水酸基などの活性水素基、ポリスルフィド含有化合物が有する水酸基などの活性水酸基、および光重合性基含有化合物が有する水酸基などの活性水素基と反応し得る。メソゲン基含有化合物、ポリスルフィド含有化合物および光重合性基含有化合物が有する活性水素基の理論量に対するイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の理論量であるNCO INDEX(NCO/OH)は、0.70〜1.10であることが好ましく、0.8〜0.95であることがより好ましい。本発明において、特に液晶エラストマーを乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーまたは懸濁重合液晶ポリウレタンエラストマーで構成する場合、NCO INDEXをかかる範囲内に設計することにより、エラストマーの分子量を低下させることができるため好ましい。
【0031】
前記(i)および(ii)において使用するポリスルフィド含有化合物は、例えば水酸基などの活性水酸基とポリスルフィド基を含有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ジチオジグリコール酸、3,3−ジチオジプロピオン酸、4,4−ジチオニ酪酸、2,2−ジチオジプロピオン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ジスルフィド、2,2−ジチオ二安息香酸、6,6−ジチオジニコチン酸、5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)、2,2−ジチオジアニリン、4,4−ジチオジアニリン(R)−α−リポ酸、キサンタンヒドリド、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸、シスタミン二塩酸塩、ホルムアミジンジスルフィド二塩酸塩、シスチン(DL−,meso−混合物)、L−(−)−シスチン、L−(−)−シスチン二塩酸塩、L−シスチンジメチル二塩酸塩、DL−ホモシスチン、ビス[2−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド、2,2’−ジチオビス(6−フルオロ安息香酸)、リポアミド−PEG12−カルボン酸、ビス(2−ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、N,N’−ジカルボベンゾキシ−L−シスチン、ピリチノールなどが挙げられる。
【0032】
液晶ポリウレタンエラストマーを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、ポリスルフィド含有化合物の割合は0.01〜30質量部であることが好ましく、0.01〜20質量部であることがより好ましい。ポリスルフィド含有化合物の配合量が0.01質量部未満である場合、ゴム組成物中での液晶ポリウレタンエラストマーの分散性が悪化し、ゴム組成物のゴム物性、およびtanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスがいずれも向上しない場合がある。一方、ポリスルフィド含有化合物の割合が30質量部を超える場合、液晶ポリウレタンエラストマーの原材料全体に占めるメソゲン基含有化合物の配合量が相対的に少なくなるため、液晶ポリウレタンエラストマーの液晶性が低下する。
【0033】
前記(i)において使用する光重合性基含有化合物は、例えば、アクリロイル基含有化合物、メタクリロイル基含有化合物、アリル化合物を使用することができる。アクリロイル基含有化合物を例示すると、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ビスフェノールA PO2mol付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。メタクリロイル基含有化合物を例示すると、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンジメタクリレート、ビスフェノールA PO2mol付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネートなどが挙げられる。アリル基含有化合物を例示すると、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどが挙げられる。
【0034】
液晶ポリウレタンエラストマーを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、光重合性基含有化合物の割合は1〜12質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。光重合性基含有化合物の割合が前記記載の範囲外である場合、ゴム組成物に配合したとき、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスが十分に向上しない場合がある。
【0035】
前記(i)および(ii)において使用する活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、光重合性基含有化合物とに加え、液晶ポリウレタンエラストマーの原材料として、活性水素基含有化合物を使用してもよい。活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオール化合物、アミン化合物が挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、meso−エリトリトール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどが挙げられる。アミン化合物としては、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、およびモノプロパノールアミンなどが挙げられる。上掲の各活性水素基含有化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
【0036】
また、前記(i)および(ii)において使用する活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、光重合性基含有化合物とを反応させる場合、当業者に公知のウレタン重合触媒を使用してもよい。かかる重合触媒としては、ジブチル錫ジラウレートやオクチル酸錫などの有機錫系触媒、トリエチレンジアミンおよびその誘導体、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルなどの第3級アミン系触媒、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカルボン酸金属塩触媒、イミダゾール系触媒などが挙げられる。これらの中でも、トリエチレンジアミンおよびその誘導体の使用が好ましい。
【0037】
前記(i)において、原料反応物を製造する際の製造条件としては、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、光重合性基含有化合物との4者を例えば60〜150℃に加熱した状態で加熱溶融しつつ、前記4者を反応させる方法が挙げられる。
【0038】
前記(i)において、均一かつ所望の粒子径に制御する見地から、液晶ポリウレタンエラストマーが、乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーまたは懸濁重合液晶ポリウレタンエラストマーであることが好ましい。一例として、以下に乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーについて説明する。
【0039】
乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーは、例えば、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、光重合性基含有化合物との反応物(以下、「原料反応物」とも言う)を、界面活性剤存在下、水中で乳化重合することにより製造することができる。乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーの原料とする場合、原料反応物の分子量はそれほど大きくないことが好ましく、例えば重量平均分子量で1000〜20000程度が好ましい。
【0040】
界面活性剤としては、乳化重合の際に一般的に使用されるものが使用可能であり、アニオン性、非イオン性、およびカチオン性のいずれの界面活性剤でも使用可能である。乳化重合の際の界面活性剤の使用量は、製造される液晶エラストマーの平均粒子径を所望の範囲に調製するために任意に設計可能であるが、例えば水中の界面活性剤の量が0.01〜5質量%となるように設計すれば良い。
【0041】
界面活性剤存在下、水中で原料反応物を乳化重合する際、重合開始剤を使用しても良い。重合開始剤は光重合開始剤および熱重合開始剤のいずれも使用可能である。光重合開始剤を使用する場合、生産性および光重合開始剤の均一分散の見地から、原料反応物を製造する際、光重合開始剤存在下で、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、ポリスルフィド含有化合物と、光重合性基含有化合物との4者を反応させることにより、光重合性開始剤含有原料反応物を製造し、これを界面活性剤存在下、水中で波長200〜600nm光を照射することにより、所望の平均粒子径である乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーを製造しても良い。
【0042】
光重合開始剤は、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフォンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン/ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル/オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)/プロピレンカーボネート、トリアリールスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリアリールスルフォニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート、オキシムスルホネート系光酸発生剤を使用することができる。光重合開始剤の割合は、原料反応物を構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜8質量部であることがより好ましい。光重合開始剤の配合量が0.1質量部未満の場合、光照射時に均一に重合反応が進行しないため、あるいは硬化が不十分となる場合がある。光反応開始剤の配合量が10質量部を超える場合、生成したエラストマー中のメソゲン基の含有量が減少するため、液晶相が発現し難くなる場合がある。光反応開始剤は、200〜600nmに吸収波長を有するものが好ましい。光反応開始剤が上記範囲の吸収波長を有していれば、液晶ポリウレタンエラストマーまたはその原材料の透明度(可視光の透過率)が低いものであっても、光反応開始剤が光を吸収し、確実に光架橋反応を進行させることができる。
【0043】
前記乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーの平均粒子径は、例えば乳化重合後、水中で分散状態の乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーの平均粒子径をレーザー回折法で測定することができる。レーザー回折法では、0.03〜1000μm程度の粒子径が測定可能である。また、得られる乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーの平均粒子径が小さい場合、動的光散乱法(DLS)によっても測定することができる。DLSでは、0.0014〜7μm程度の粒子径が測定可能である。本発明で乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーを原料として使用する場合、レーザー回折法またはDLSで測定した平均粒子径をゴム組成物中に配合する前に測定した平均粒子径と見做すことができる。
【0044】
界面活性剤存在下、水中で原料反応物を乳化重合する際に熱重合開始剤を使用する場合、水中に乳化するもの、あるいは原料反応物と予め混合したものを使用可能である。熱重合開始剤については、当業者に公知のものが使用可能である。
【0045】
懸濁重合液晶ポリウレタンエラストマーは、原料反応物と水とを、機械的に撹拌しつつ懸濁重合させることにより製造することができる。懸濁重合の際、必要に応じて界面活性剤および/または重合開始剤も使用可能であり、これらの例として乳化重合で使用可能な物が例示可能である。また、懸濁重合液晶ポリウレタンエラストマーの平均粒子径も、乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーのときと同様の方法により決定可能である。
【0046】
前記(ii)において使用する多官能化合物は、活性水素基またはイソシアネート基と反応し得る官能基を3つ以上有する化合物が挙げられる。具体的には例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール;ペンタエリスリトールなどのテトラオール;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ―4,4’ジアミノジフェニルメタン(MOCA)などのジアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミンなどのアミノアルコール;前記の3官能以上のイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0047】
本発明に係るゴム組成物には、前記ゴム成分および液晶エラストマーに加えて、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、オイルなどの軟化剤、および加工助剤などの各種配合剤を配合することができる。
【0048】
カーボンブラックは、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。
【0049】
シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカを用いることができるが、特に、含水ケイ酸を主成分とする湿式シリカを用いることが好ましい。
【0050】
シランカップリング剤としては、ジエン系ゴムに対し反応活性を有するシランカップリング剤を使用する。本発明において使用可能なシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。
【0051】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0052】
加硫系配合剤以外の配合剤を混合する工程の後、さらに加硫系配合剤を混合・分散させる。加硫系配合剤を混合する工程において使用する加硫系配合剤としては、硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などが挙げられる。
【0053】
硫黄系加硫剤としての硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。
【0054】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0055】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分および液晶エラストマー、必要に応じてカーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、加硫系配合剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、やオイルなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0056】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄系加硫剤、および加硫促進剤などの加硫系配合剤以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0057】
本発明では、ジエン系ゴムと液晶エラストマーとを混合した後、好適にはジエン系ゴムと、ジエン系ゴムと反応する官能基を有する液晶エラストマーとを混合した後、さらに好適にはジエン系ゴムと、ジエン系ゴムと反応するポリスルフィド含有化合物の反応物である液晶ポリウレタンエラストマーとを混合した後、得られたゴム組成物を加硫することにより、ジエン系ゴム中に液晶エラストマーが分散した加硫ゴムを製造することができる。かかる加硫ゴムは、ジエン系ゴムと液晶エラストマーとが化学的に反応した構造となっているため、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とがバランスに優れ、ゴム物性にも優れる。したがって、例えば空気入りタイヤのトレッド部材として特に有用である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0059】
<転移温度(Ti)>
原料反応物1〜6および液晶ポリウレタンフィラー1〜8について、示唆走査熱量分析計[DSC](品名:X−DSC 7000、日立ハイテクサイエンス社製)を使用し、転移温度(Ti)を測定した。
【0060】
<液晶ポリウレタンフィラー1〜2の平均粒子径>
冷凍粉砕後の粒子径を走査型電子顕微鏡(品名;SU3500、日立ハイテクノロジーズ社製)の画像解析(加速電圧15kV)により算出した。
【0061】
<液晶ポリウレタンフィラー3〜8の平均粒子径>
液晶ポリウレタンフィラー3〜8(乳化重合液晶ポリウレタンエラストマー)の平均粒子径は、乳化重合後、水中で分散状態の乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーの平均粒子径を、レーザー回析式粒度分布測定装置(製品名「SALD−2200」、島津製作所社製)を用いて、レーザー回折法により測定した。
【0062】
<動的粘弾性測定>
実施例1〜8のゴム組成物、および比較例1のゴム組成物について、160℃で20分間加熱することで加硫を行い、所定形状に成形して測定試料とした。各測定試料について、動的粘弾性測定装置(製品名「全自動粘弾性アナライザ VR−7110」、上島製作所社製)により貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)を測定し、tanδ(0℃)およびtanδ(60℃)を求めた。表3は、比較例1のtanδの値を100とした指数で表示してある。測定条件は以下のとおりである。
測定試料のサイズ:長さ40mm、幅3mm、厚み2mm
測定モード :引張モード
測定温度 :0℃、60℃
周波数 :100Hz
動歪み :0.15%
【0063】
<破断伸びおよび破断強度測定>
実施例1〜8のゴム組成物、および比較例1のゴム組成物について、160℃で20分間加熱することで加硫を行い、JIS K 6251に準拠した厚み2mmのダンベル状3号形試験片に成形して測定試料とした。得られた各測定資料について、引張試験装置(島津製作所社製、精密万能試験機 オートグラフAG−X)を使用し、破断強度、および破断伸びを測定した。測定値を表3に示す。
【0064】
(メソゲンジオールAの製造)
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物としてBH6(500g)、水酸化カリウム(19g)、及び溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを1モルのBH6に対して8.8当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールAを得た。メソゲンジオールAの水酸基価は141である。メソゲンジオールAの合成スキームを式(2)に示す。なお、式(2)中に示したメソゲンジオールAは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。式(2)中のn
*は平均4.4である。
【0065】
【化2】
【0066】
(原料反応物1〜6の製造)
メソゲンジオールA100質量部に対し、イソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製)、光重合性基含有化合物として2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学社製)、光反応開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(TPO)(IGM resins社製)、ポリスルフィド含有化合物として3,3−ジチオジプロピオン酸(東京化成工業社製)、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド(東京化成工業社製)、または4,4−ジチオジアニリン(東京化成工業社製)を表1に記載の配合比で配合し、これらを撹拌しながら80℃で混合し、原料反応物1〜6を製造した。
【0067】
(液晶ポリウレタンフィラー1〜2の製造)
表1に記載の配合比で配合し、これらを撹拌しながら80℃で混合し、得られた反応物を液体窒素にて冷却した後、粉砕機(フリッチュ社製 ロータースピードミル P−14)を用いて、下記条件にて冷凍粉砕することで、液晶ポリウレタンフィラー1〜2を製造した。
ローター回転数 [rpm] 15000
篩リング 穴サイズ[mm] 0.5
打撃ローター刃数[枚] 12
【0068】
【表1】
【0069】
(液晶ポリウレタンフィラー3〜8の製造)
原料反応物1〜6、各界面活性剤、水を所定の割合で配合し、卓上型UV硬化装置(品名:アイminiグランテージ(ESC−1511U)、アイグラフィックス社製)を用いて波長200〜600nm光を照射することにより(照射エネルギー800mJ)、液晶ポリウレタンフィラー3〜8(乳化重合液晶ポリウレタンエラストマー)を製造した。乳化重合後、水中で分散状態の乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーの平均粒子径を前記方法により測定後、110℃で10時間乾燥し、さらに110℃で真空乾燥したものを後述のゴム組成物に配合した。
【0070】
【表2】
【0071】
(実施例1〜8のゴム組成物の製造)
得られた液晶ポリウレタンフィラー1〜8を、ラボミキサー(製品名:ラボプラストミル、東洋精機製作所社製)を使用してジエン系ゴム(SBR、商品名:SL563、JSR社製)に配合した。配合手順は、表3に記載の配合比率で、初めに第一段階として、SBRに対しシリカ(商品名:ニップシールAQ、東ソー・シリカ社製)、シランカップリング剤(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、商品名:Si69、エボニック・デグザ社製)、亜鉛華(商品名:亜鉛華1種、三井金属鉱業社製)、ステアリン酸(商品名:ルナックS−20、花王株式会社製)、および老化防止剤(商品名:ノクラック6C、大内新興化学工業株式会社製)を添加して160℃で混練し、次に第二段階として、混練物に液晶ポリウレタンフィラーを添加して160℃で混練し、さらに第三段階として、混練物に、硫黄(ゴム用粉末硫黄150メッシュ、細井化学工業社製)、および加硫促進剤(商品名:ノクセラーCZ(1次加硫促進剤)、ノクセラーD(2次加硫促進剤)、いずれも大内新興化学工業社製)を添加して90℃で混練し、得られたものを実施例1〜8のゴム組成物とした。表3の備考中「粉砕」は配合した液晶ポリウレタンフィラーが「冷凍粉砕品」、「乳化」は配合した液晶ポリウレタンフィラーが「乳化重合品」、例えば「S−S5phr」は「原料反応物中のメソゲンジオールA100質量部に対するポリスルフィド含有化合物の質量部」をそれぞれ意味する。
【0072】
【表3】
【0073】
表3の結果から、実施例1〜8に係るゴム組成物の加硫ゴムは硬度が維持されており、かつtanδ(0℃)が大きく増大しているものの、tanδ(60℃)の増大が抑制されており、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスが改良されていることが分かる。