特開2020-180340(P2020-180340A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-180340(P2020-180340A)
(43)【公開日】2020年11月5日
(54)【発明の名称】蒸着マスク
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20201009BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201009BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20201009BHJP
【FI】
   C23C14/04 A
   H05B33/14 A
   H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-84183(P2019-84183)
(22)【出願日】2019年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】石川 樹一郎
(72)【発明者】
【氏名】田丸 裕仁
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG33
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
(57)【要約】
【課題】枠体の下面に逃げ凹部を備える蒸着マスクにおいて、基板に対してマスク本体が備えるパターン形成領域を適正に密着させて、多数独立の蒸着通孔からなる蒸着パターンに対応した蒸着層を基板上に高精度に形成できるようにする。
【解決手段】各マスク本体2は、蒸着通孔13が形成される内側のパターン形成領域8と、上面が金属層4で覆われる外側の接合領域9とを含むように構成する。パターン形成領域8と接合領域9との間に、通孔および/または凹みが形成されない吸着領域10を設ける。これにより、パターン形成領域8の外側周囲にマグネットチャック49の磁気吸着力を大きく作用させてマスク本体2を強固に吸着保持できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数独立の蒸着通孔(13)からなる蒸着パターンを備えるマスク本体(2)と、マスク本体(2)が配置されるマスク開口(5)を有する補強用の枠体(3)と、マスク開口(5)の内周面(5a)から開口中心に向かって延出されてマスク本体(2)と枠体(3)とを不離一体的に接合する金属層(4)とを備え、少なくとも枠体(3)が配置される下面に凹み形成される逃げ凹部(50)を有する蒸着マスクであって、
各マスク本体(2)は、蒸着通孔(13)が形成される内側のパターン形成領域(8)と、上面が金属層(4)で覆われる外側の接合領域(9)とを含み、
パターン形成領域(8)と接合領域(9)との間に、通孔および/または凹みが形成されない吸着領域(10)が設けられていることを特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
金属層(4)は、マスク開口(5)の内周面(5a)から内向きに延出される接合部(4b)を備えており、
マスク開口(5)の内周面(5a)から金属層(4)の延出先端(4c)までの接合部(4b)の距離を(W1)、金属層(4)の延出先端(4c)からパターン形成領域(8)までの吸着領域(10)の距離を(W2)としたとき、前記接合部(4b)の距離(W1)と前記吸着領域(10)の距離(W2)とが、式(W2/(W1+W2)=0.4〜0.8)を満足するように設定されている請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記接合部(4b)の距離(W1)と前記吸着領域(10)の距離(W2)とが、不等式(W2≧W1)を満足するように設定されている請求項2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
マスク本体(2)の接合領域(9)の距離を(W3)としたとき、前記接合領域(9)の距離(W3)と前記吸着領域(10)の距離(W2)とが、不等式(W3≦W2)を満足するように設定されている請求項3に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
吸着領域(10)の厚みを(T1)、金属層(4)を含む接合領域(9)における厚みを(T2)としたとき、前記吸着領域(10)の厚み(T1)と前記接合領域(9)の厚み(T2)とが、不等式(T1<T2)を満足するように設定されている請求項1から4のいずれかひとつに記載の蒸着マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着パターンを備えるマスク本体を枠体で支持する形態の蒸着マスクに関する。本発明に係る蒸着マスクは、例えば有機EL素子の発光層を形成する際に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
基板(蒸着対象)上に有機EL素子の発光層(蒸着層)が形成された有機ELディスプレイは、蒸着マスク法により製造されるが、この種の蒸着マスクは、例えば本出願人が先に提案した特許文献1に開示されている。図9に示すように、特許文献1の蒸着マスク101は、マトリクス状に配置される複数のマスク本体102と、各マスク本体102を囲むように配置される補強用の枠体103と、両者102・103を不離一体的に接合する金属層104とで構成される。各マスク本体102は多数独立の蒸着通孔105からなる蒸着パターンを備えている。マスク本体102、枠体103、および金属層104はいずれも磁性金属で形成されている。有機ELディスプレイの製造時には、消磁されているマグネットチャック107上にまず基板108を載置し、次いで基板108上に蒸着マスク101を載置したのちマグネットチャック107を着磁する。これにて、マグネットチャック107上に基板108および蒸着マスク101が移動不能に固定され、この状態で蒸着工程を行うことにより、マスク本体102の蒸着通孔105に対応する蒸着層が基板108上に形成される。枠体103および金属層104の枠体寄りの下側には逃げ凹部109が形成されており、蒸着マスク101の固定時において、蒸着マスク101と基板108とが接触して基板表面に傷が付くことを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−210633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスク本体102を囲むように配置される枠体103は補強用であるため、その厚みはマスク本体102に比べて十分に厚く設定される。例えばマスク本体102の厚みが約8μmであるのに対して、枠体103の厚みは約1mmに設定される。また、金属層104は蒸着通孔105の近傍まで形成される。例えば枠体103から内方に延出する金属層104の距離W4が約1.2mmであるのに対して、金属層104の端部から蒸着通孔105の形成領域106までの距離W5は0.2mmに設定される(図10参照)。蒸着マスク101および基板108をマグネットチャック107で固定するとき、マスク本体102よりも厚み寸法が大きい枠体103にはより大きな磁気吸着力が作用する。また、蒸着通孔105の形成領域106は、蒸着通孔105の分だけマスク本体102の体積が減少しているため、当該領域106に作用する磁気吸着力は弱くなる。そのため、枠体103が逃げ凹部109側に沈み込み、図9の拡大図に示すように逃げ凹部109の縁Fを支点にして、延出端側の金属層104が反り上がり、マスク本体2が浮き上がることがある。このとき、蒸着通孔105の形成領域106が浮き上がると、基板108と蒸着通孔105との間に隙間が生じるため、蒸着層が適正な形状から大きくにじんだように形成され、蒸着パターン通りの蒸着層を得ることができない。とくに蒸着通孔105の形成領域106の外縁側でにじみが大きくなる。
【0005】
本発明は、枠体の下面に逃げ凹部を備える蒸着マスクにおいて、基板に対してマスク本体が備えるパターン形成領域を適正に密着させて、多数独立の蒸着通孔からなる蒸着パターンに対応した蒸着層を基板上に高精度に形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多数独立の蒸着通孔13からなる蒸着パターンを備えるマスク本体2と、マスク本体2が配置されるマスク開口5を有する補強用の枠体3と、マスク開口5の内周面5aから開口中心に向かって延出されて各マスク本体2と枠体3とを不離一体的に接合する金属層4とを備え、少なくとも枠体3が配置される下面に上向きに凹み形成される逃げ凹部50を有する蒸着マスクを対象とする。各マスク本体2は、蒸着通孔13が形成される内側のパターン形成領域8と、上面が金属層4で覆われる外側の接合領域9とを含む。そして、パターン形成領域8と接合領域9との間に、通孔および/または凹みが形成されない吸着領域10が設けられていることを特徴とする。
【0007】
金属層4は、マスク開口5の内周面5aから内向きに延出される接合部4bを備えており、マスク開口5の内周面5aから金属層4の延出先端4cまでの接合部4bの距離をW1、金属層4の延出先端4cからパターン形成領域8までの吸着領域10の距離をW2としたとき、前記接合部4bの距離W1と前記吸着領域10の距離W2とが、式(W2/(W1+W2)=0.4〜0.8)を満足するように設定されている。
【0008】
前記接合部4bの距離W1と前記吸着領域10の距離W2とが、不等式(W2≧W1)を満足するように設定されている。
【0009】
マスク本体2の接合領域9の距離をW3としたとき、前記接合領域9の距離W3と前記吸着領域10の距離W2とが、不等式(W3≦W2)を満足するように設定されている。
【0010】
吸着領域10の厚みをT1、金属層4を含む接合領域9における厚みをT2としたとき、前記吸着領域10の厚みT1と前記接合領域9の厚みT2とが、不等式(T1<T2)を満足するように設定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る蒸着マスクでは、蒸着通孔13が形成される内側のパターン形成領域8と、上面が金属層4で覆われる外側の接合領域9とを含むように各マスク本体2を構成し、パターン形成領域8と接合領域9との間に、通孔および/または凹みが形成されない吸着領域10を設けた。このようにパターン形成領域8の外側に吸着領域10を設けると、パターン形成領域8の外側周囲にマグネットチャック49の磁気吸着力を大きく作用させてマスク本体2を強固に吸着保持できる。また、マスク本体2を強固に吸着保持することで、枠体3が逃げ凹部50側に沈み込むのを阻止できるので、枠体3が逃げ凹部50側に沈み込むことに由来する、マスク本体2の浮き上がりを解消できる。仮に枠体3が逃げ凹部50側に沈み込んで、金属層4近傍の吸着領域10が浮き上がった場合でも、吸着領域10に作用する吸着力で、同領域10の中途部で再びマスク本体2を基板48に密着させて、パターン形成領域8におけるマスク本体2と基板48との間の隙間の形成を防止できる。以上のように、本発明によれば、基板48に対してマスク本体2が備えるパターン形成領域8を適正に密着させて、基板48上に多数独立の蒸着通孔13からなる蒸着パターンに対応した蒸着層を高精度に形成できる。
【0012】
接合部4bの距離をW1、吸着領域10の距離をW2としたとき、前記距離W1と前記距離W2とが、式(W2/(W1+W2)=0.4〜0.8)を満足するように設定されていると、パターン形成領域8の周囲に十分な磁気吸着力が得られる吸着領域10を形成できるので、吸着領域10に作用する磁気吸着力で的確にマスク本体2を基板48に密着させることができる。
【0013】
接合部4bの距離W1と吸着領域10の距離W2との関係を、式(W2/(W1+W2)=0.4〜0.8)を満足するように設定するのは以下の理由に拠る。前記距離W2を前記距離W1+W2で除した値が0.4未満であると、吸着領域10が小さいため磁気吸着力が吸着領域10に十分に作用せず、パターン形成領域8が基板48から浮き離れるおそれがある。また、前記距離W2を前記距離W1+W2で除した値が0.8を超えると、枠体3のサイズとマスク本体2の配置形態との関係でマスク開口5の内周面5aからパターン形成領域8までの距離(W1+W2)を長く形成できないとき、マスク本体2の接合領域9が小さくなり、金属層4とマスク本体2との接合強度を十分に確保できない。
【0014】
接合部4bの距離W1と吸着領域10の距離W2とは、不等式(W2≧W1)を満足するように設定されていることが望ましい。これによれば、枠体3から蒸着通孔13までの距離(W1+W2)の半分以上を吸着領域10とすることができるので、十分な磁気吸着力が作用する吸着領域10を形成して、マスク本体2を強固に吸着保持できる。
【0015】
接合領域9の距離W3と吸着領域10の距離W2とが、不等式(W3≦W2)を満足するように設定されていると、パターン形成領域8を除くマスク本体2における吸着領域10が占める割合を大きくして、十分な磁気吸着力が作用する吸着領域10を形成できる。
【0016】
吸着領域10の厚みT1と金属層4を含む接合領域9の厚みT2とが、不等式(T1<T2)を満足するように設定されていると、金属層4を含む接合領域9に作用する磁気吸着力で、枠体3が逃げ凹部50側に沈み込むのを抑制してマスク本体2の浮き上がりを阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る蒸着マスクの要部を示す縦断正面図である。
図2】蒸着マスクの全体を示す斜視図である。
図3】蒸着マスクの縦断正面図である。
図4】蒸着マスクの要部を示す平面図である。
図5】蒸着マスクの製造方法の前段を示す説明図である。
図6】蒸着マスクの製造方法の中断を示す説明図である。
図7】蒸着マスクの製造方法の後段を示す説明図である。
図8】密着めっき層の形成領域の別実施例を示す縦断正面図である。
図9】従来の蒸着マスクの問題点を説明するための縦断正面図である。
図10】従来の蒸着マスクの接合部位を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例) 図1から図7に、本発明に係る蒸着マスクを有機ELディスプレイの製造に使用される蒸着マスクに適用した実施例を示す。なお、本実施例の各図における厚みや幅などの寸法は、実際の様子を示したものではなく、それぞれ模式的に示したものである。
【0019】
図2および図3に示すように蒸着マスク1は、マトリクス状に配置される複数(本実施例では8枚)のマスク本体2と、各マスク本体2を囲むように配置される補強用の枠体3と、両者2・3を不離一体的に接合する金属層4とを含む。枠体3は、マスク本体2と同数のマスク開口5を備える。各マスク開口5はマスク本体2よりも一回り大きく形成されており、各マスク開口5にマスク本体2が1枚ずつ配置されている。本実施例の各マスク開口5は、長手方向の長さ寸法が125mmであり、短手方向の長さ寸法が71mmである。
【0020】
図3および図4に示すように各マスク本体2は、四隅が丸められた長方形状に形成されており、内側のパターン形成領域8と、外側の接合領域9と、パターン形成領域8と接合領域9との間に設けられる吸着領域10とを備える。吸着領域10は四角枠状に形成されてパターン形成領域8の外側を囲んでおり、接合領域9は四角枠状に形成されて吸着領域10の外側を囲んでいる。パターン形成領域8には、多数独立の蒸着通孔13からなる蒸着パターンが形成されており、接合領域9には、マスク本体2の各辺に沿って二列に並ぶ多数個の接合通孔14が形成されている。吸着領域10は、通孔や凹み等が形成されていない、板厚が均一な領域である。本実施例の各マスク本体2は、長手方向の長さ寸法が122mmであり、短手方向の長さ寸法が68mmである。また、接合領域9は各辺部の幅寸法(後述する距離W3)が0.65mmであり、吸着領域10は各辺部の幅寸法(後述する距離W2)が1.7mmである。なお、マスク本体2の長手および短手方向の長さ寸法は、製造される有機ELディスプレイのサイズに対応する。マスク本体2の寸法および先のマスク開口5の寸法は、有機ELディスプレイを製造する場合の参考値であり、有機ELディスプレイは、スマートフォン、スマートウォッチ、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどに用いることができる。
【0021】
このマスク本体2は、ニッケルからなる電着金属を素材として電鋳法で形成される。各マスク本体2の厚みは、好ましくは8〜100μmの範囲とし、本実施例では10μmに設定した。なおマスク本体2は、ニッケル以外にニッケルコバルト等のニッケル合金、銅、その他の電着金属を素材として形成することができる。さらにマスク本体2は、二層以上の積層構造であってもよく、具体的には例えば、光沢めっき層からなる上層と、無光沢めっき層からなる下層とを有するマスク本体2を形成し、各層の厚み比率を例えば上層:下層=5:7に設定することができる。マスク本体2が二層以上の積層構造において、光沢めっき層と無光沢めっき層の順番や各層の厚み比率は自由に設定できる。
【0022】
金属層4はマスク本体2と枠体3を接合しており、ニッケルからなる電着金属を素材として電鋳法で形成される。具体的には、金属層4は、枠体3の上面部を覆う被覆部4aと、被覆部4aに連続してマスク開口5の内周面5aから開口中心に向かって延出される結合部4bを備えている。マスク本体2の接合領域9の上面は結合部4bの延出先端4c側で覆われており、当該部分でマスク本体2と枠体3は接合されている。なお、金属層4は、被覆部4aが省略された形態であってもよく、この場合には、枠体3の上面が蒸着マスク1の外面に露出する。
【0023】
図2に示すように枠体3は、矩形枠状の外周枠17と、外周枠17内にマスク開口5を区画する格子枠18とを備える。図3に拡大して示すように、枠体3は積層構造となっており、同一形状の上枠19と下枠20を接着層21で貼り合わせて構成される。上枠19と下枠20は、ニッケル−鉄合金であるインバー材からなる低熱線膨張係数の金属板材で形成されている。本実施例の上枠19と下枠20の厚み寸法はそれぞれ0.5mm(枠体3の厚み寸法は1.0mm)であり、枠体3はマスク本体2よりも十分に肉厚に形成した。また、外周枠17は各辺部の幅寸法が20mmであり、格子枠18は各枠部の幅寸法が10mmである。なお、各枠17・18の寸法は、マスク本体2の配置個数、基板48のサイズ等により適宜変化する。
【0024】
上記の上枠19と下枠20は、上記のインバー材以外に、ニッケル−鉄−コバルト合金であるスーパーインバー材などで形成してもよく、上枠19と下枠20の厚み寸法は異なっていてもよい。また枠体3は、上枠19と下枠20の二層構造以外に、三層以上の積層構造や単層構造であってもよく、上枠19と下枠20を備える枠体3を2つ重ねて貼り合わせた四層構造を採用してもよい。接着層21としては、シート状の未硬化感光性ドライフィルムレジストや、市販されている種々の接着剤などを用いることができる。
【0025】
本実施例に係る蒸着マスク1の製造方法の一例を図5から図7に示す。まず図5(a)に示すように、導電性を有する例えばステンレスや真ちゅう製の電鋳母型24の表面に、ネガタイプのフォトレジスト層25を形成する。次いで、フォトレジスト層25の上に、ガラスマスクからなるパターンフィルム26を密着させ、パターンニング前段体27を得る。パターンフィルム26には、マスク本体2の蒸着通孔13に対応する透光孔26aと、同本体2の接合通孔14に対応する透光孔26bとが形成されている。さらにパターンフィルム26には、マスク本体2の外周に対応する透光枠26cが形成されている。
【0026】
次いで、紫外線ランプ28を備える紫外線照射装置の炉内を、露光作業時の炉内温度に予熱する。予熱が完了したら、得られたパターンニング前段体27を紫外線照射装置の炉内に収容し、パターンニング前段体27を炉内温度に馴染ませたのち、紫外線ランプ28で紫外線光を照射することにより、パターンフィルム26を介してフォトレジスト層25を露光する。露光後のパターンニング前段体27を取り出し、フォトレジスト層25からパターンフィルム26を取り外し、フォトレジスト層25の未露光部分を溶解除去(現像)することにより、図5(b)に示すように、電鋳母型24上に一次パターンレジスト29を形成する。一次パターンレジスト29は、パターンフィルム26の各透光孔26a、26bおよび透光枠26cに対応するレジスト体29a〜29cで構成される。
【0027】
次いで、図5(c)に示すように、レジスト体29a〜29cで覆われていない電鋳母型24の表面に電鋳処理を施すことにより、レジスト体29a〜29cの高さの範囲内で一次電鋳層30を形成する。一次電鋳層30は、蒸着マスク1の完成品を構成する複数のマスク本体2と、その完成前に除去される枠体支持部31とで構成される。一次電鋳層30の形成後、図5(d)に示すように、一次パターンレジスト29を溶解除去する。これにより、マスク本体2の蒸着通孔13および接合通孔14が現れる。
【0028】
次工程では、マスク本体2に対する金属層4の接合強度(密着性)を高めるための密着めっき層34(図3参照)を形成する。本実施例のマスク本体2においては、接合領域9の上面および外周面と、接合通孔14の内周面とに密着めっき層34を形成する。なお密着めっき層34は、ニッケルや銅などを素材として、ストライクめっきや無光沢めっきにより、一次電鋳層30よりも十分に薄く形成される。
【0029】
密着めっき層34の形成手順としては、まず図6(a)に示すように、一次電鋳層30の表面全体にネガタイプのフォトレジスト層35を形成し、その上にパターンフィルム36を密着させる。このパターンフィルム36は、マスク本体2の接合領域9に対応する矩形枠状の非透光部36aと、その他の部分を占める透光部36bとを備える。次いで、紫外線ランプ28で紫外線光を照射して、パターンフィルム36を介してフォトレジスト層35を露光する。露光後、フォトレジスト層35からパターンフィルム36を取り外し、フォトレジスト層35の未露光部分を溶解除去(現像)することにより、図6(b)に示すパターンレジスト37を形成する。このパターンレジスト37は、マスク本体2の接合領域9を露出させる開口37aを有する。つまりパターンレジスト37は、密着めっき層34の形成領域を除く一次電鋳層30の表面全体を覆う。
【0030】
次いで、開口37aに臨む一次電鋳層30の表面にめっき処理(密着処理)を施すことにより、図6(c)に拡大して示す密着めっき層34を形成することができる。なお密着めっき層34は、開口37aに臨む電鋳母型24の表面にも不可避的に形成されるが、電鋳母型24上の密着めっき層34は、後にマスク本体2を電鋳母型24から剥離する際の妨げになるため、その面積をなるべく小さくすることが好ましい。密着めっき層34の形成後にパターンレジスト37を溶解除去すると、図6(c)に示す状態になる。なお、接合領域9と接合通孔14に密着めっき層34を形成するのに代えて、酸浸漬や電解処理等の活性化処理(密着処理)を施してもよい。これによってもマスク本体2に対する金属層4の接合強度(密着性)を高めることができる。
【0031】
次工程では、一次電鋳層30のマスク本体2に対して、枠体3を金属層4で接合する。具体的にはまず、図7(a)に示すように、密着めっき層34を形成した一次電鋳層30の表面全体にネガタイプのフォトレジスト層40を形成し、その上にパターンフィルム41を密着させる。このパターンフィルム41は、マスク本体2のパターン形成領域8および吸着領域10に対応する角を丸めた長方形状の透光孔41aを備える。
【0032】
次いで、紫外線ランプ28で紫外線光を照射して、パターンフィルム41を介してフォトレジスト層40を露光する。露光後、フォトレジスト層40からパターンフィルム41を取り外し、フォトレジスト層40の未露光部分を溶解除去(現像)することにより、図7(b)に示す二次パターンレジスト42を形成する。二次パターンレジスト42は、マスク本体2のパターン形成領域8および吸着領域10の表面を覆う。パターン形成領域8の蒸着通孔13は二次パターンレジスト42で覆われるため、その後の電鋳処理の際に、同通孔13に電鋳液が浸入することは無い。
【0033】
次いで、図7(c)に示すように、一次電鋳層30の枠体支持部31の上面の所定の位置に枠体3を載置する。平面視において枠体支持部31は枠体3よりもひとまわり大きく形成されている。枠体支持部31で支持される枠体3の下面には、剥離層44を介して接着層45が予め積層されており、この接着層45によって枠体3は枠体支持部31に対してズレ動き不能に固定される。本実施例では剥離層44をニッケルで形成し、接着層45を未露光のフォトレジスト層で形成した。
【0034】
次いで、図7(d)に示すようにめっき処理を施して、枠体3の表面からマスク本体2にわたって連続する二次電鋳層すなわち金属層4を形成する。一次電鋳層30の表面における金属層4は、二次パターンレジスト42の高さの範囲内で形成する。またこのとき、接合通孔14内に金属層4を形成することにより、接合通孔14の内周面に密着めっき層34を形成していることと相俟って、マスク本体2に対する金属層4の接合強度がより向上する。電鋳処理後、電鋳母型24から一次電鋳層30および金属層4を剥離する。次いで一次電鋳層30の枠体支持部31を接着層45および剥離層44と共に、枠体3および金属層4から剥離することにより、後述する逃げ凹部50が形成される。最後に二次パターンレジスト42を除去することにより、図7(e)に示す蒸着マスク1の完成品を得ることができる。なお、二次パターンレジスト42の除去は、一次電鋳層30および金属層4の剥離前に行っても良いし、枠体支持部31、接着層45および剥離層44の剥離前に行っても良い。
【0035】
電鋳母型24から剥離した完成後の蒸着マスク1において、各マスク本体2には内方へ収縮しようとする応力が作用する。これは、マスク本体2を含む一次電鋳層30を形成する際の電鋳槽の液温(例えば40〜50℃)が、常温よりも高いことなどに起因するものである。各マスク本体2が収縮しようとすることにより、枠体3には金属層4を介して引張応力が作用する。
【0036】
基板(蒸着対象)48上への蒸着層(発光層)の形成は、蒸着装置内において、蒸着マスク1と基板48とを密着固定した状態で行われる。具体的には、図1に示すように、基板48を消磁されているマグネットチャック49上に位置合わせして載置し、次いで蒸着マスク1を基板48上に位置合わせして載置する。この状態でマグネットチャック49を着磁することにより、マグネットチャック49上において、蒸着マスク1と基板48とが上下に積層され、マスク本体2が基板48の表面に密着した状態で、移動不能に固定される。両者1・48を固定したとき、マスク本体2以外の蒸着マスク1の下面が基板48と接触するのを極力避けるために枠体3および枠体3寄りの金属層4の下側に、逃げ凹部50が上向きに凹み形成されている。この逃げ凹部50は、マスク本体2以外が接触することによる基板48表面の傷付きを抑制するために設けられている。
【0037】
マグネットチャック49を着磁すると、マスク本体2よりも厚みが大きな枠体3にはより大きな磁気吸着力が作用する。そのため、枠体3が逃げ凹部50側に沈み込もうとするが、先に説明したように、本実施例のマスク本体2にはパターン形成領域8の外側に吸着領域10が設けられているので、パターン形成領域8の外側周囲にマグネットチャック49の磁気吸着力を大きく作用させてマスク本体2をマグネットチャック49に引き寄せ強固に吸着保持できる。また、マスク本体2を強固に吸着保持することで、枠体3が逃げ凹部50側に沈み込むのを阻止できるので、枠体3が逃げ凹部50側に沈み込むことに由来する、マスク本体2の浮き上がりを解消できる。仮に枠体3が逃げ凹部50側に沈み込んで、金属層4近傍の吸着領域10が浮き上がった場合でも、吸着領域10に作用する磁気吸着力で、同領域10の中途部で再びマスク本体2を基板48に密着させて、パターン形成領域8におけるマスク本体2と基板48との間の隙間の形成を防止できる。以上のように、本実施例によれば、基板48に対してマスク本体2が備えるパターン形成領域8を適正に密着させて、基板48上に多数独立の蒸着通孔13からなる蒸着パターンに対応した蒸着層を高精度に形成できる。
【0038】
金属層4が備える接合部4b、すなわちマスク開口5の内周面5aから金属層4の延出先端4cまでの距離をW1、吸着領域10、すなわち金属層4の延出先端4cからパターン形成領域8までの距離をW2としたとき、接合部4bの距離W1と吸着領域10の距離W2とが、式(W2/(W1+W2)=0.4〜0.8)を満足するように設定されている。このように前記距離W1と前記距離W2とが、式(W2/(W1+W2)=0.4〜0.8)を満足するように設定されていると、パターン形成領域8の周囲に十分な磁気吸着力が得られる吸着領域10を形成できるので、吸着領域10に作用するマグネットチャック49の磁気吸着力で的確にマスク本体2を基板48に密着させることができる。
【0039】
上記のように、接合部4bの距離W1と吸着領域10の距離W2との関係を、式(W2/(W1+W2)=0.4〜0.8)を満足するように設定するのは以下の理由に拠る。前記距離W2を前記距離W1+W2で除した値が0.4未満であると、吸着領域10が小さいためマグネットチャック49の磁気吸着力が吸着領域10に十分に作用せず、パターン形成領域8が基板48から浮き離れるおそれがある。また、前記距離W2を前記距離W1+W2で除した値が0.8を超えると、枠体3のサイズとマスク本体2の配置個数の関係で前記距離W1を長く形成できないとき、マスク本体2の接合領域9が小さくなり、金属層4とマスク本体2との接合強度を十分に確保できない。
【0040】
接合部4bの距離W1と吸着領域10の距離W2とは、不等式(W2≧W1)を満足するように設定されていることが望ましい。これによれば、枠体3から蒸着通孔13までの距離(W1+W2)の半分以上を吸着領域10とすることができるので、十分な磁気吸着力が作用する吸着領域10を形成して、マグネットチャック49の磁気吸着力でマスク本体2を確実に基板48に吸着保持して密着させることができる。なお、接合部4bの距離W1が1.0mm以上、1.5mm以下に設定されているとき、吸着領域10の距離W2が1.5mm以上、2.0mm以下であることが好ましい。本実施例では、前記距離W1は1.2mmであり、前記距離W2は1.7mmである。
【0041】
マスク開口5の内周面5aからパターン形成領域8までの距離(W1+W2)は、2.5mm以上、10.0mm以下に設定されていることが望ましい。これは以下の理由に拠る。前記(W1+W2)の距離が2.5mm未満であると、マスク本体2の接合領域9が小さくなり、金属層4とマスク本体2との接合強度を十分に確保できず、さらに、吸着領域10が小さいためマグネットチャック49の磁気吸着力が吸着領域10に十分に作用せず、マスク本体2が基板48から浮き離れるおそれがある。また、前記(W1+W2)の距離が10.0mmを超えると、蒸着マスク1が大型化して基板48の歩留まりが悪化する。一方、歩留まりが良好な基板48を得ようとすると、枠体3の外周枠17および格子枠18の幅寸法を小さくせざるを得ないため、枠体3の構造強度が低下し、蒸着マスク1の破損を招く。
【0042】
マスク本体2の接合領域9の距離をW3としたとき(図1参照)、先に説明したように、接合領域9の距離W3と吸着領域10の距離W2とが、不等式(W3≦W2)を満足するように設定されていると、パターン形成領域8を除くマスク本体2における吸着領域10が占める割合を大きくして、十分な磁気吸着力が作用する吸着領域10を形成できる。
【0043】
また、吸着領域10の厚みをT1、金属層4を含む接合領域9における厚みをT2としたとき(図3参照)、前記吸着領域10の厚みT1と前記接合領域9の厚みT2とが、不等式(T1<T2)を満足するように設定されていると、金属層4を含む接合領域9に作用する磁気吸着力で、枠体3が逃げ凹部50側に沈み込むのを抑制してマスク本体2の浮き上がりを阻止できる。
【0044】
本実施例の吸着領域10の面積は、蒸着通孔13を除くパターン形成領域8の面積よりも大きく形成することができる。このように、各領域8・10の面積が前記関係を満たすとき、吸着領域10により大きな磁気吸着力を作用させることができるので、パターン形成領域8が浮き上がるのを確実に解消できる。
【0045】
図8に密着めっき層34の形成領域の別実施例を示す。この実施例の密着めっき層34は、上記実施例の密着めっき層34に比べてマスク本体2の周側面部および上面周縁部が省略されている。なお、密着めっき層34は、接合通孔14部分および接合通孔14に連続するマスク本体2の上面部分に形成されていればよい。
【0046】
蒸着マスク1が有するマスク本体2の枚数や配置態様は、上記実施例に示したものに限られない。また、マスク本体2は複数である必要はなく1個であってもよい。各部の寸法等も上記実施例に示したものに限られない。上記実施例では、磁気吸着で蒸着マスク1と基板48とを密着固定したが、静電吸着、あるいは真空(負圧)吸着で両者1・48を密着固定することもできる。この場合にも、マスク本体2に設けた吸着領域10に作用する静電吸着力、あるいは真空吸着力で、マスク本体2の浮き上がりを解消できる。また、厚み寸法が大きい枠体3の場合、上記密着固定手段を用いずとも、枠体3の自重により、枠体3が逃げ凹部50側に沈み込み、マスク本体2が浮き上がるおそれがあるが、金属層4の延出先端4cからパターン形成領域8までの距離W2(吸着領域10)を確保することで、距離W2(吸着領域10)の中途部で再びマスク本体2を基板48に密着させることができ、パターン形成領域8におけるマスク本体2と基板48との間の隙間の形成を防止できる。
【0047】
本発明の蒸着マスク1は、有機ELディスプレイの製造に使用されるものに限られない。また、蒸着マスク1のマスク構造は、スクリーン印刷用マスク、はんだボール搭載用マスク、はんだボール吸着用マスクとして転用することも可能である。スクリーン印刷用マスクの場合には、パターン形成領域8に印刷パターンに合致する一群のパターン開口が形成され、はんだボール搭載用マスクの場合には、パターン形成領域8にはんだボールより僅かに大径の一群の搭載孔が形成され、はんだボール吸着用マスクの場合には、パターン形成領域8にはんだボールより僅かに小径の一群の搭載孔が形成される。
【0048】
マスク本体2の浮き上がりを抑制できる参考例としては、枠体3の下面側に逃げ凹部50がない構成、あるいは逃げ凹部50内に支持体を形成する構成とすることも考えられる。前者の形成方法の具体例としては、枠体3の下面に形成された接着層45および剥離層44と、枠体3が載置される枠体支持部31とを、枠体3および金属層4から除去せずに残存させたままの状態が考えられる。但し、接着層45は蒸着(昇温)による変質によって発光層の形成に悪影響をもたらすおそれがある。後者の具体例として、逃げ凹部50内に支持体(金属体)を形成し、該支持体の下面とマスク本体2の下面とが一致するように形成する。かかる支持体の形成方法としては、図7(e)に示すように、枠体支持部31、接着層45および剥離層44を除去したあとに、別途凹部50内に支持体(金属体)を形成することが考えられる。
【符号の説明】
【0049】
1 蒸着マスク
2 マスク本体
4 金属層
4b 接合部
4c 延出先端
5 マスク開口
5a 内周面
8 パターン形成領域
9 接合領域
10 吸着領域
13 蒸着通孔
50 逃げ凹部
W1 金属層の接合部の距離
W2 マスク本体の吸着領域の距離
W3 マスク本体の接合領域の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10