【解決手段】通気抵抗0.7〜1.5kPa・s/m、厚さ5〜30mmの無機繊維のニードル加工物からなる無機繊維成形体を基材として有することを特徴とする無機繊維含有マットであり、好ましくは、前記無機繊維成形体が、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合が80〜100%である無機繊維含有マットである。
通気抵抗0.7〜1.5kPa・s/m、厚さ5〜30mmの無機繊維のニードル加工物からなる無機繊維成形体を基材として有することを特徴とする無機繊維含有マット。
前記無機繊維成形体が、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合が80〜100%であるものである請求項1に記載の無機繊維含有マット。
前記無機繊維成形体からなる基材の表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合が80〜100%である請求項4に記載の排気管用減音構造体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明に係る無機繊維含有マットについて説明する。
本発明に係る無機繊維含有マットは、通気抵抗0.7〜1.5kPa・s/m、厚さ5〜30mmの無機繊維のニードル加工物からなる無機繊維成形体を基材として有することを特徴とするものである。
【0015】
上記無機繊維成形体を構成する無機繊維としては、平均繊維径が、5〜20μmのものが好ましく、5〜15μmのものがより好ましく、7〜10μmのものがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、無機繊維の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察画像において任意に抽出した400箇所の断面径を測定したときの算術平均値を意味する。
【0016】
無機繊維成形体を構成する無機繊維としては、平均繊維長が、20〜300mmであるものが好ましく、40〜200mmであるものがより好ましく、60〜100mmであるものがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、無機繊維の平均繊維長は、任意に抽出した400本の無機繊維の繊維長をピーコック社製ダイヤルシックネスゲージで測定したときの算術平均値を意味する。
【0017】
無機繊維成形体を構成する無機繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ロックウール、バサルト繊維、ジルコニア繊維等から選ばれる一種以上を挙げることができ、経済性や入手の容易性等を考慮するとガラス繊維であることが好ましい。
【0018】
無機繊維含有マットの基材として無機繊維成形体を採用することにより、無機繊維間の空隙を排気音が粗密波として空気伝搬する際に、空隙壁と摩擦を生じて音圧エネルギーが熱エネルギーに変換される結果、排気音を低減することができる。
【0019】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、上記無機繊維成形体としては、無機繊維をニードルパンチ加工してなるニードル加工物が使用される。
上記無機繊維成形体を製造する場合、具体的には、厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、無機繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針)を高速で上下に往復動させ、無機繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状の成形体を得ることができる。
【0020】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、基材となる無機繊維成形体は、マット厚さ方向に平均化したニードル加工孔の孔径として、基材表面における、全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合が80〜100%である無機繊維のニードル加工物からなるものが好ましく、全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合が85〜100%である無機繊維のニードル加工物からなるものがより好ましく、全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合が90〜100%である無機繊維のニードル加工物からなるものがさらに好ましい。
【0021】
本出願書類において、無機繊維成形体の表面に設けられたニードル加工孔の孔径は、X線CT装置(BRUKER社製Skyscan1272Micro-CT)により測定した孔の断層写真より、無機繊維成形体の表面(入針面)から裏面までの孔容積を求め、上記無機繊維成形体の表面から裏面までの高さと同一の高さを有し上記孔容積と同一の体積を有する円柱に近似したときの円柱の直径を意味する。
また、本出願書類において、全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合(%)は、上記方法により基材表面における100箇所のニードル加工孔の孔径を測定したときに、下記式により算出される値を意味する。
孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合(%)=(孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の数/100)×100
【0022】
無機繊維成形体からなる基材表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合は、例えば無機繊維成形体の製造時に使用するニードルパンチ装置に装着するニードル(針)の針径を調整することにより制御することができる。
【0023】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機繊維成形体からなる基材表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合が上記範囲内にあることにより、すなわち無機繊維成形体表面における小径のニードル加工孔の割合が高いことにより、無機繊維含有マットの基材として使用したときに、ニードル加工孔による音抜けを抑制して所望の減音(吸音)効果を容易に発揮することができる。
【0024】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、基材となる無機繊維成形体の通気抵抗は、0.7〜1.5kPa・s/mであり、0.8〜1.5kPa・s/mであることが好ましく、0.8〜1.2kPa・s/mであることがより好ましい。
【0025】
本出願書類において、無機繊維成形体の通気抵抗は、JIS L 1096に規定する通気性A法(フラジール形法)に基づき、測定対象となる無機繊維成形体を、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3となるように調整した上で、その主表面に対して垂直方向に差圧0.125kPaで空気を通過させたときにおける空気の流量を流れ抵抗測定器(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック(株)製)で測定し、通気抵抗に換算したものを意味する。
【0026】
無機繊維成形体として上記通気抵抗を有するものを用いた場合、所望の吸音性を発揮しつつ、優れた耐熱性および断熱性を容易に発揮することができる。
【0027】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機繊維成形体の厚みは、5〜30mmであり、5〜20mmであることが好ましく、5〜10mmであることがより好ましい。
【0028】
本出願書類において、無機繊維成形体の厚みは、無機繊維成形体の任意に抽出した10か所の厚みをピーコック社製ダイヤルシックネスゲージで測定したときの算術平均値を意味する。
【0029】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、基材となる無機繊維成形体の厚みが上記範囲内にあることにより、車両床下側の狭小なスペースであっても無機繊維含有マットを容易に設置することができる。
【0030】
上記無機繊維成形体が、後述する内管および外管の同軸二重円筒構造を有する自動車用排気管の上記内管および外管間に配置されるものである場合、断熱性や遮音性を向上させる上では、上記無機繊維成形体の厚み(mm)は、上記内管と外管との距離(mm)以上の長さであることが望ましい。
本発明に係る無機繊維含有マットが、後述する内管および外管の同軸二重円筒構造を有する自動車用排気管の上記内管および外管間に配置されるものである場合、上記内管と外管との距離(上記内管と外管との間に規定される隙間の幅)に対する上記無機繊維成形体の厚みの割合((無機繊維成形体の厚み(mm)/内管と外管との距離(mm))×100)は、100〜400%であることが好ましく、100〜300%であることがより好ましく、100〜200%であることがさらに好ましい。
上記無機繊維成形体の厚みは、具体的には、5〜15mmが好ましく、6〜12mmがより好ましく、8〜10mmがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、無機繊維成形体の厚みは、無機繊維成形体の任意に抽出した10箇所の厚みをピーコック社製ダイヤルシックネスゲージで測定したときの算術平均値を意味し、上記内管と外管との距離も、ピーコック社製ダイヤルシックネスゲージにより測定した値を意味する。
【0031】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機成形体の厚みが上記内管および外管の距離と同等以上であることにより、自動車用排気管の上記内管および外管間に配置された場合に、無機繊維成形体を基材とする無機繊維含有マットが内管(排気用配管)と外管(筒状の遮熱板)との間で押圧された状態で保持されるため、十分な弾性(反発力)を発揮して、外管の振動を好適に抑制しつつ所望の減音性(吸音性)を発揮することができる。
【0032】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機繊維成形体の嵩密度は、50〜300kg/m
3が好ましく、80〜200kg/m
3がより好ましく、100〜160kg/m
3がさらに好ましい。
本出願書類において、無機繊維成形体の嵩密度は、100mm×100mmに切り出した無機繊維成形体の厚みをノギス等で測定して容積を求め、別途電子天秤により測定した重量を上記容積で除すことによって求めた値を意味する。
【0033】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機繊維成形体の厚みや嵩密度が上記範囲内にあることにより、無機繊維含有マットが所望の耐熱性や断熱性を発揮して、排気管用減音構造体に対向する車輌本体側の部材の熱劣化を抑制し易くなるとともに、排気管減音構造体の内部温度を容易に一定範囲に制御することができる。
【0034】
本発明に係る無機繊維含有マットは、無機繊維成形体からなる基材中に無機バインダーが分散されてなるものであることが好ましい。
【0035】
無機バインダーとしては、ベントナイト等の粘度鉱物や、ホウ珪酸ガラス、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0036】
本発明に係る無機繊維含有マットは、固形分換算したときに、無機繊維成形体からなる基材95〜99.5質量%中に無機バインダー0.5〜5質量%が分散されてなるものであることが好ましく、無機繊維成形体からなる基材97〜99質量%中に無機バインダー1〜3質量%が分散されてなるものであることがより好ましく、無機繊維成形体からなる基材97〜98質量%中に無機バインダー2〜3質量%が分散されてなるものであることがさらに好ましい。
【0037】
本発明に係る無機繊維含有マットが、無機繊維成形体からなる基材中に無機バインダーが所定量分散されてなるものである場合には、基材を構成する無機繊維の交点に無機バインダーが付着して繊維同士の結束点を増加させ一体性を高めることができる。また、無機繊維含有マットを構成する無機繊維骨格に対し、排気音が粗密波及び横波として振動伝搬(固体伝搬)する際に、上記複数の結束点を中心としてマットを構成する無機繊維を振動変形することにより、機械エネルギー減衰(無機繊維の振動による音圧エネルギーの減衰)を生じさせ、無機繊維含有マットによる減音(吸音)特性を一層高めることができる。
上記固体伝搬音の減衰効果(機械エネルギー減衰効果)は、上述した無機繊維間の空隙を排気音が粗密波として伝搬する際に空隙壁と摩擦を生じて音圧エネルギーが熱エネルギーに変換される空気伝搬音の減衰効果と比較した場合、1kHz以下の低周波数領域における減衰効果が高く、特に300〜500Hzの範囲では支配的な減衰効果を示すと考えられる。
【0038】
無機繊維成形体量(基材量)に対する無機バインダー量が少な過ぎると上記結束点を十分に形成することができず、無機繊維成形体量(基材量)に対する無機バインダー量が多過ぎると、無機繊維成形体を構成する無機繊維間の隙間全体を埋めるように無機バインダーが分散して無機繊維同士を強固に結着するために、無機繊維の振動による減衰を生じ難くなる。
【0039】
上記無機バインダーの分散は、例えば、上述した無機繊維成形体中に所望の無機バインダーを含有する分散液を含浸させた後、適宜フェルトローラー等で絞って含浸量を調整したり、乾燥処理を施すこと等により行うことができる。
【0040】
本発明に係る無機繊維含有マットは、無機繊維成形体からなる基材の片側主表面上に、通気抵抗が1.8〜2.6kPa・s/mである無機多孔質膜を有するものであることが好ましい。
【0041】
無機多孔質膜としては、ベントナイト含有膜等から選ばれる一種以上を挙げることができ、ベントナイト含有膜であることが好ましい。
【0042】
本出願において、無機多孔質膜とは、上記ベントナイト等の無機多孔性物質を無機バインダーとして含有する膜を意味する。
ベントナイト(Bentonite)は、モンモリロナイトを主成分とし、石英、α−クリストバライト、オパール等の珪酸鉱物を副成分として、長石、マイカ、ゼオライト等の珪酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイト、ジプサム等の炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物、パイライト等の硫化鉱物を含み得る弱アルカリ性粘土鉱物である。
【0043】
無機多孔質膜は、無機バインダーを、85〜100質量%含むものであることが好ましく、90〜100質量%含むものであることがより好ましく、95〜100質量%含むものであることがさらに好ましい。
【0044】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機多孔質膜の厚みは、10〜1,000μmであることが好ましく、100〜1,000μmであることがより好ましく、200〜500μmであることがさらに好ましい。
【0045】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機多孔質膜の厚みは、無機繊維含有マットの断面をマイクロスコープで50箇所観察したときの算術平均値を意味する。
【0046】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機多孔質膜の開孔率は、0.01〜2%であることが好ましく、0.01〜1%であることがより好ましく、0.01〜0.5%であることがさらに好ましい。
また、本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機多孔質膜の開孔径は、0.1〜400μmであることが好ましく、0.1〜100μmであることがより好ましく、0.1〜10μmであることがさらに好ましい。
【0047】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機多孔質膜の開孔率は、無機多孔質膜の表面をSEM(日本電子(株)、JSF−6300A)で観察した際に、(得られたSEM画像における100μm×100μmの観察範囲を画像解析処理して白黒二値化処理し、白色で表される検出粒子面積を除いて黒色部分の面積を孔部(隙間)面積として近似計算した凝集無機バインダー粒子間の孔部全面積/無機多孔質膜の面積)×100により算出される開孔割合の任意の50箇所における算術平均値を意味する。
【0048】
また、本出願書類において、無機多孔質膜の開孔径は、無機多孔質膜の表面を上記SEM観察した際に、得られたSEM画像における100μm×100μmの観察範囲を画像解析処理して白黒二値化処理し、白色で表される検出粒子間に形成される黒色で表示される任意の50箇所の孔部の面積を各々求めた上で、各孔部面積と同一の面積を有する円の直径を凝集無機バインダー粒子間の孔部直径として個々に求めたときの、算術平均値を意味する。
【0049】
無機多孔質膜は、特に上記膜厚の範囲内において、無機繊維成形体と同程度の柔軟性を発揮して、無機繊維含有マットの構成被膜として自動車用排気管の内管および外管間に屈曲させて配設する際も、無機繊維成形体と一体となって変形させつつ容易に配設することができる。
【0050】
本発明に係る無機線含有マットにおいて、無機繊維成形体からなる基材の主表面上に設けられる無機多孔質膜の通気抵抗は、1.8〜2.6kPa・s/mであることが好ましく、1.8〜2.5kPa・s/mであることがより好ましく、1.8〜2.3kPa・s/mであることがさらに好ましい。
【0051】
本出願書類において、無機多孔質膜の通気抵抗は、無機バインダーを塗布した無機繊維成形体をJIS L1096に規定する通気性A法(フラジール形法)に基づいて、無機バインダーの塗布面側から無機繊維成形体の主表面に対して垂直方向に差圧0.125kPaで空気を通過させたときにおける空気の流量を、流れ抵抗測定器(カトーテック(株)製、製品名:KES−F8−AP1)で測定し、通気抵抗に換算したものを意味する。
【0052】
本発明に係る無機繊維含有マットにおいて、無機多孔質膜は、無機繊維成形体に無機バインダー含有液を塗布して膜形成する際に、固形分が凝集、固定して形成し得るものであり、膜を構成する微小粒子間に形成される隙間によって通気性を発揮することができる。
無機多孔質膜の通気抵抗は、無機バインダー含有液に含まれる無機バインダーの濃度を調整すること等により容易に制御することができる。
【0053】
本発明に係る無機繊維含有マットは、上記所定の通気抵抗を有する無機多孔質膜の膜振動による共鳴効果(共振効果)により減音特性を一層向上させることができる。
【0054】
片側表面に無機多孔質膜を設けた無機繊維含有マットは、Helmfortz型の膜振動(共振)特性を有すると考えられ、子安勝(遮音・吸音材料の理論と複合材料、日本複合材料学会誌 第2巻 第4号(1976))の報告に基づけば、本発明に係る無機繊維含有マットの吸音性能の共振周波数の極大値(構造共振周波数)f
0も、下記式(1)で表し得ると考えられる。
【0055】
【数1】
(但し、f
0:構造共振周波数(Hz)
c :音速(m/s)
p :無機多孔質膜の開孔率
t :無機多孔質膜の厚み(m)
d :無機繊維含有マットの開孔径(m)
L :無機繊維含有マットの厚さ(m)
である。)
【0056】
そして、上記無機繊維含有マットの開孔径dに関し、無機繊維含有マットを構成する無機繊維成形体および無機多孔質膜のいずれもが開孔部を有する場合について鋭意検討したところ、上記無機繊維含有マットの開孔径dは、実験的に下記式(2)で近似し得ることを見出した。
【0057】
d=−0.6892T
r+T
r0 (2)
(但し、d:無機繊維含有マットの開孔径(m)
T
r:無機多孔質膜の通気抵抗(kPa・s/m)
T
r0:無機繊維成形体の通気抵抗(kPa・s/m)
である。)
【0058】
上式(1)に上式(2)を代入して整理することにより、下記式(3)が導かれる。
【数2】
(但し、f
0:構造共振周波数(Hz)
c :音速(m/s)
P :無機多孔質膜の開孔率
t :無機多孔質膜の厚み(m)
T
r :無機多孔質膜の通気抵抗(kPa・s/m)
T
r0 :無機繊維成形体の通気抵抗(kPa・s/m)
L :無機繊維含有マットの厚さ(m)
である。)
【0059】
上式(3)より、音速cとともに、無機多孔質膜の開孔率p、無機多孔質膜の厚みt、無機繊維成形体の通気抵抗T
r0、無機繊維含有マットの厚さLが一定値を採る場合、無機多孔質膜の通気抵抗T
rを制御することにより、無機繊維含有マットの共振周波数の極大値である構造共振周波数f
0を任意に規定し得ることが分かる。
従って、本発明に係る無機繊維含有マットにおいては、無機多孔質膜の通気抵抗T
rを所定範囲内に制御することにより、無機繊維含有マットの構造共振周波数f
0を1kHz以下の周波数に制御して、1kHz以下の低周波領域における吸音特性(減音特性)を効果的に向上し得ると考えられる。
【0060】
片側主表面に無機多孔質膜を設けた無機繊維含有マットは、無機繊維成形体の片側主表面に、無機バインダー含有液を塗布することにより作製することができる。
無機バインダー含有液としては、無機バインダーを含有する水溶液を挙げることができる。無機バインダー含有液中の無機バインダー濃度は、0.5〜5質量%であることが好ましい。
無機バインダー含有液の塗布方法は特に制限されず、スプレー塗布または刷毛塗りおよびローラー塗布等の方法を挙げることができる。
【0061】
本発明によれば、所定厚さを有する無機繊維成形体からなる基材によって耐熱性および断熱性とともに吸音(減音)特性を発揮させ、係る減音特性を無機繊維成形体からなる基材の通気抵抗を制御することによって容易に向上させることができる。
特に、小径のニードル加工孔による音抜けの抑制、所定の通気抵抗を有する無機多孔質膜の膜振動による共鳴効果または所定量の無機バインダーによる無機繊維間の結束点増加に伴う振動減衰性(無機繊維の振動による音圧エネルギーの減衰効果)により一層高めることができる。
【0062】
本発明に係る無機繊維含有マットは、その厚みが、5〜30mmであることが好ましく、5〜20mmであることがより好ましく、5〜10mmであることがさらに好ましい。
【0063】
本出願書類において、無機繊維含有マットの厚みは、無機繊維含有マットの任意に抽出した10か所の厚みをピーコック社製ダイヤルシックネスゲージで測定したときの算術平均値を意味する。
【0064】
本発明に係る無機繊維含有マットによれば、厚さが薄くても特に1kHz以下の低周波音に対して十分な減音性能を有するとともに優れた耐熱性および断熱性を発揮することができる。
【0065】
次に、本発明に係る排気管用減音構造体について説明する。
本発明に係る排気管用減音構造体は、内管および外管の同軸二重円筒構造を有する自動車用排気管の前記内管および外管間に配置された無機繊維含有マットを有する排気管用減音構造体であって、
前記無機繊維含有マットが、無機繊維成形体からなる基材を有し、
前記無機繊維成形体が、通気抵抗0.7〜1.5kPa・s/m、厚さ5〜30mmの無機繊維のニードル加工物からなる
ことを特徴とするものである。
【0066】
本発明に係る排気管用減音構造体は、内管および外管の同軸二重円筒構造を有する自動車用排気管の内管および外管間に無機繊維含有マットが配置されてなるものである。
【0067】
本発明に係る減音構造体を配置する排気管としては、自動車の排気ガスを排出する配管であればとくに制限されず、例えば、センターマフラー、メインマフラー、テールエンドパイプ、マフラーカッター等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0068】
以下、本発明に係る排気管用減音構造体について、自動車用排気管の末端に配置されるマフラーカッターを例にとって適宜図面を参照しつつ説明するものとする。
図1は、本発明に係る排気管用減音構造体1の実施形態例を示す断面図であり、
図1(a)は排気管用減音構造体1の長手方向に対して直角方向の垂直断面図であり、
図1(b)は排気管用減音構造体1の長手方向に沿った垂直断面図である。
【0069】
図1に示すように、排気管用減音構造体1は内管2を有している。
本出願書類において、内管とは、内部を排気ガス(燃焼ガス)が流通する排気用配管を意味し、内管としては、内部を流通する排気ガスの温度等に対応した材質からなり、目的とする温度特性や吸音特性を発揮し得るものから適宜選択することが好ましい。
上記内管としては耐熱性を有するものが好適であり、具体的には、金属管や耐熱性樹脂からなる樹脂管を挙げることができ、金属管であることが好ましい。
【0070】
金属管としては、耐熱性や耐食性の観点からステンレス鋼製のもの(SUS管)が主に使用されるが、アルミニウム製のもの(アルミ管)であってもよい。
【0071】
内管の平均厚みは、0.5〜2.0mmであることが適当であり、0.7〜1.8mmであることがより適当であり、0.9〜1.6mmであることがさらに適当である。
なお、本出願書類において、内管の平均厚みは、ノギスにより10箇所の厚みを測定したときの算術平均値を意味する。
また、内管の外径は、20〜90mmであることが適当であり、30 〜80mmであることがより適当であり、40〜70mmであることがさらに適当である。
なお、本出願書類において、内管の外径は、ノギスにより測定した値を意味する。
【0072】
内管の平均厚みや内径が上記範囲内にあることにより、内管の内部および外部の温度を好適な範囲に制御し易くなる。
【0073】
内管の断面形状としても特に制限されず、
図1(a)に断面図で示すように円形であってもよいし、楕円形等であってもよい。
また、内管は、その長手方向の側壁に複数の孔が設けられてなるものであってもよく、例えばパンチングメタルによって形成されてなるものであってもよい。
【0074】
図1に例示するように、本発明に係る排気管用減音構造体1は、内管(排気用配管)2の外周に当該内管2と同軸状に設けられた外管3を有している。
【0075】
本出願書類において、外管とは、排気用配管の内部を流通する排気ガスから放射される熱が車輌本体側に放射されることを抑制し得る筒状の遮熱板を意味し、車輌本体側に放射される熱に対応した耐熱性を有し、劣化等を生じない材質からなるものから適宜選択することが好ましく、金属製のものが好ましい。
【0076】
外管を構成する金属としては、耐熱性、耐食性、美観性等の観点からステンレス鋼(SUS)が主に使用され、また、アルミニウムであってもよいが、放射率が低く美観性も高いことからステンレス鋼が好ましい。
【0077】
外管の平均厚みは、0.5〜2.0mmであることが適当であり、0.7〜1.8mmであることがより適当であり、0.9〜1.6mmであることがさらに適当である。
なお、本出願書類において、外管の平均厚みは、ノギスにより10箇所の厚みを測定したときの算術平均値を意味する。
また、外管の外径は、24〜114mmであることが適当であり、34〜104mmであることがより適当であり、44〜94mmであることがさらに適当である。
なお、本出願書類において、外管の外径は、ノギスにより測定した値を意味する。
【0078】
外管の平均厚みや外径が上記範囲内にあることにより、外管の内部および外部の温度を好適な範囲に制御し易くなる。
【0079】
外管の断面形状としても特に制限されず、
図1(a)に示すように概略円形であってもよいし、楕円形等であってもよい。
【0080】
上記内管または外管は、一体成形物であってもよいし、分割物の接合物であってもよい。
例えば、
図2に示すように、本発明に係る排気管用減音構造体において、外管3は、筒状物を半割状にした上部遮熱板3aと、同じく筒状物を半割状にした下部遮熱板3bとの接合物からなるものであってもよい。
外管3が半割状の上部遮熱板3aと半割状の下部遮熱板3bとからなるものであることにより、無機繊維含有マットを内管に巻き付けた後、その外周に上部遮熱板3aおよび下部遮熱板3bを介装し、両者を接合することにより、本発明に係る排気管用減音構造体を容易に作製することができる。
【0081】
図1においては、マフラーカッターを例にとって説明しているが、上記内管および外管からなる同軸二重円筒構造が自動車用排気管全体に亘って形成されるかマフラカッター以外の他の部分に形成されることにより、本発明に係る排気管用減音構造体を成していてもよい。
【0082】
図1に示すように、本発明に係る排気管用減音構造体1は、内管2と該内管2と同軸状に設けられた外管3との間に配置された、無機繊維含有マット4を有するものである。
無機繊維含有マットとしては、本発明に係る無機繊維含有マットを挙げることができ、その詳細は上述したとおりである。
【0083】
本発明によれば、内管および外管間に所定の特性を有する無機繊維含有マットを有することから、厚さが薄くても特に1kHz以下の低周波音に対して十分な減音性能を有するとともに耐熱性および断熱性に優れた新規な排気管用減音構造体を提供することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
(1)ガラス繊維成形体の作製工程
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.58mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合95%であるもの)を得た。
また、上記ガラス繊維成形体を複数枚積層し、加圧して、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、1.0kPa・s/mであった。
【0086】
(2)無機バインダーの含浸工程
上記厚さ6mmのガラス繊維成形体に対し、ベントナイト含有濃度が2.5質量%である水分散液を含浸させ、フェルトローラーで絞ることで含浸量を固形分換算で2.5質量%になるように調整した後、乾燥処理して、内部にベントナイトを含浸、分散させた無機バインダー含有ガラス繊維成形体(ガラス繊維成形体の含有割合97.5質量%、ベントナイトの含有割合2.5質量%)を得た。
【0087】
(3)ベントナイト含有膜の形成工程
次いで、(2)で得られた無機バインダー含有ガラス繊維成形体の片側主表面上に、ベントナイト濃度が10質量%である水分散液をローラ塗布し、塗布面を内周面側として円筒状に巻き付け処理した後乾燥処理することにより、ガラス繊維成形体の内側主表面にベントナイト含有膜(厚さ0.2mm、開孔率0.5%、通気抵抗2.3kPa・s/m、ベントナイト含有率100質量%)を形成した、全体形状が円筒形状を有するガラス繊維含有マット(厚さ10mm、内径40mm、外径60mm)を得た。
【0088】
(4)ガラス繊維含有マットの充填工程
図1に示すように、内管(排気用配管)2として、長手方向の側壁全体に複数の開口部が設けられたパンチングメタル状になっているSUS管(内径38mm、外径40mm)を用意するとともに、外管(筒上の遮熱板)3として、SUS管(内径60mm、外径62mm)を用意した。
上記内管2と外管3とを同軸状に配置したとき、両者間には幅10mmの隙間が形成される。
図1に示すように、実施例1で得られたガラス繊維含有マットを内管2および外管3との隙間に挿入することにより、内管および外管の同軸二重円筒構造を有し、内管および外管間にマット材が配置された排気管用減音構造体1を作製した。
なお、上記ガラス繊維含有マットを内管2および外管3間の隙間に挿入する際、ベントナイト含有膜が設けられた面が内管に面するように配置した。
【0089】
(吸音性評価)
上記排気管用減音構造体1の吸音特性を、
図5に示す方法により測定した。
すなわち、
図5に示すように、上記排気管用減音構造体1の両端部に、内径が内管2の内径と同径の筒状体T
1およびT
2を内管2と同軸状に配置するとともに、筒状体T
1およびT
2に音入射側A,B/音透過側C,Dの2本づつコンデンサーマイクMを配置した。この状態で、筒状体T
1の端部にスピーカー(Fostex社製103E)Sを配置し、排気管用減音構造体1の内管2内に向けてランダムノイズを発生させたときの、排気管用減音構造体1の前後に配置したコンデンサーマイクM、M間の音圧レベルを四端子法で測定し、別途測定したマット材挿入前における音圧レベルとの差分を各周波数毎の透過損失として求めた。
周波数800Hz〜2000Hzにおける透過損失を
図3に示す。
【0090】
図3より、実施例1で得られた排気管用減音構造体1は、耐熱性および断熱性に優れるとともに、厚さが薄くても特に800Hz〜1.25kHz付近の低周波領域における透過損失(減音量)に優れることが分かる。
【0091】
上記減音特性は、ガラス繊維含有マットが所定の通気抵抗を有するものであることにより、Helmfortz型の膜振動(共振)特性を有するバネ効果を生じ、特に800Hzから1.25kHzの低周波数域の振動減衰がより大きくなったために生じたものと考えられる。
【0092】
(比較例1)
(1)ガラス繊維成形体の作製工程
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.85 mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合20%以下であるもの)を得た。また、上記ガラス繊維成形体を複数枚積層し、加圧して、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、0.3kPa・s/mであった。
(2)無機バインダーの含浸工程
上記厚さ6mmのガラス繊維成形体に対し、ベントナイト含有濃度が5質量%である水分散液を含浸させ、フェルトローラーで絞ることで含浸量を固形分換算で5質量%になるように調整した上で、断面直径が60mmとなるように円筒状に巻き付け処理した後乾燥処理して、内部にベントナイトを含浸、分散させた全体形状が円筒形状を有する厚さ10mmの無機バインダー含有ガラス繊維成形体を得た。
(3)無機バインダー含有ガラス繊維成形体の充填工程
実施例1の(4)において、ガラス繊維含有マットに代えて上記(3)で得られた無機バインダー含有ガラス繊維成形体を内管2および外管3との隙間に挿入することにより、内管および外管の同軸二重円筒構造を有し、内管および外管間にマット材が配置された比較用排気管用減音構造体を作製した。
【0093】
(吸音性評価)
実施例1記載の吸音性評価において、排気管用減音構造体1に代えて上記比較用排気管用減音構造体を用いた以外は、実施例1と同様にして吸音性を評価した。
周波数800Hz〜2000Hzにおける透過損失を
図3に示す。
【0094】
図3より、比較例1で得られた無機バインダー含有ガラス繊維成形体は、ガラス繊維成形体からなる基材が所定の物性を有さないことから、特に低周波領域における減音性能に劣ることが分かる。
【0095】
(実施例2)
(1)ガラス繊維成形体の作製工程
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.58 mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合95%であるもの)を得た。また、上記ガラス繊維成形体を積層し、加圧して、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、1.0kPa・s/mであった。
(2)無機バインダーの含浸工程
上記厚さ6mmのガラス繊維成形体に対し、ベントナイト含有濃度が2.5質量%である水分散液を含浸させ、フェルトローラーで絞ることで含浸量を固形分換算で2.5質量%になるように調整した後、乾燥処理して、内部にベントナイトを含浸、分散させた無機バインダー含有ガラス繊維成形体(ガラス繊維成形体の含有割合97.5質量%、ベントナイトの含有割合2.5質量%)を得た。
(3)ベントナイト含有膜の形成工程
次いで、(2)で得られた無機バインダー含有ガラス繊維成形体の片側主表面上に、ベントナイト濃度が9.5質量%である水分散液をローラ塗布し、塗布面を内周面側として円筒状に巻き付け処理した後乾燥処理することにより、ガラス繊維成形体の内側主表面にベントナイト含有膜(厚さ0.17mm、開孔率0.55%、通気抵抗1.83kPa・s/m、ベントナイト含有率100質量%)を形成した、全体形状が円筒形状を有するガラス繊維含有マット(厚さ10mm、内径40mm、外径60mm)を得た。
(4)ガラス繊維含有マットの充填工程
上記(3)で得られたガラス繊維含有マットを用い、実施例1(4)と同様にして、ガラス繊維含有マットを内管2および外管3との隙間に挿入することにより、内管および外管の同軸二重円筒構造を有し、内管および外管間にマット材が配置された排気管用減音構造体1を作製した。
なお、上記ガラス繊維含有マットを内管2および外管3間の隙間に挿入する際、ベントナイト含有膜が設けられた面が内管に面するように配置した。
【0096】
(実施例3)
(1)ガラス繊維成形体の作製工程
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.58mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合95%であるもの)を得た。
また、上記ガラス繊維成形体を複数枚積層し、加圧して、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、1.0kPa・s/mであった。
(2)無機バインダーの含浸工程
上記厚さ6mmのガラス繊維成形体に対し、ベントナイト含有濃度が2.5質量%である水分散液を含浸させ、フェルトローラーで絞ることで含浸量を固形分換算で2.5質量%になるように調整した後、乾燥処理して、内部にベントナイトを含浸、分散させた無機バインダー含有ガラス繊維成形体(ガラス繊維成形体の含有割合97.5質量%、ベントナイトの含有割合2.5質量%)を得た。
(3)ベントナイト含有膜の形成工程
次いで、(2)で得られた無機バインダー含有ガラス繊維成形体の片側主表面上に、ベントナイト濃度が10質量%である水分散液をローラ塗布し、塗布面を内周面側として円筒状に巻き付け処理した後乾燥処理することにより、ガラス繊維成形体の内側主表面にベントナイト含有膜(厚さ0.18mm、開孔率0.55 %、通気抵抗1.9 kPa・s/m、ベントナイト含有率100質量%)を形成した、全体形状が円筒形状を有するガラス繊維含有マット(厚さ10mm、内径40mm、外径60mm)を得た。
(4)ガラス繊維含有マットの充填工程
上記(3)で得られたガラス繊維含有マットを用い、実施例1(4)と同様にして、ガラス繊維含有マットを内管2および外管3との隙間に挿入することにより、内管および外管の同軸二重円筒構造を有し、内管および外管間にマット材が配置された排気管用減音構造体1を作製した。
なお、上記ガラス繊維含有マットを内管2および外管3間の隙間に挿入する際、ベントナイト含有膜が設けられた面が内管に面するように配置した。
【0097】
(実施例4)
(1)ガラス繊維成形体の作製工程
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.58mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合95%であるもの)を得た。
また、上記ガラス繊維成形体を複数枚積層し、加圧して、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、1.0kPa・s/mであった。
(2)無機バインダーの含浸工程
上記厚さ6mmのガラス繊維成形体に対し、ベントナイト含有濃度が2.5質量%である水分散液を含浸させ、フェルトローラーで絞ることで含浸量を固形分換算で2.5質量%になるように調整した後、乾燥処理して、内部にベントナイトを含浸、分散させた無機バインダー含有ガラス繊維成形体(ガラス繊維成形体の含有割合97.5質量%、ベントナイトの含有割合2.5質量%)を得た。
(3)ベントナイト含有膜の形成工程
次いで、(2)で得られた無機バインダー含有ガラス繊維成形体の片側主表面上に、ベントナイト濃度が10質量%である水分散液をローラ塗布し、塗布面を内周面側として円筒状に巻き付け処理した後乾燥処理することにより、ガラス繊維成形体の内側主表面にベントナイト含有膜(厚さ0.19mm、開孔率0.55 %、通気抵抗2.05kPa・s/m、ベントナイト含有率100質量%)を形成した、全体形状が円筒形状を有するガラス繊維含有マット(厚さ10mm、内径40mm、外径60mm)を得た。
(4)ガラス繊維含有マットの充填工程
上記(3)で得られたガラス繊維含有マットを用い、実施例1(4)と同様にして、ガラス繊維含有マットを内管2および外管3との隙間に挿入することにより、内管および外管の同軸二重円筒構造を有し、内管および外管間にマット材が配置された排気管用減音構造体1を作製した。
なお、上記ガラス繊維含有マットを内管2および外管3間の隙間に挿入する際、ベントナイト含有膜が設けられた面が内管に面するように配置した。
【0098】
(実施例5)
(1)ガラス繊維成形体の作製工程
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.58mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合95%であるもの)を得た。
また、上記ガラス繊維成形体を複数枚積層し、加圧して、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、1.0kPa・s/mであった。
(2)無機バインダーの含浸工程
上記厚さ6mmのガラス繊維成形体に対し、ベントナイト含有濃度が2.5質量%である水分散液を含浸させ、フェルトローラーで絞ることで含浸量を固形分換算で2.5質量%になるように調整した後、乾燥処理して、内部にベントナイトを含浸、分散させた無機バインダー含有ガラス繊維成形体(ガラス繊維成形体の含有割合97.5質量%、ベントナイトの含有割合2.5質量%)を得た。
(3)ベントナイト含有膜の形成工程
次いで、(2)で得られた無機バインダー含有ガラス繊維成形体の片側主表面上に、ベントナイト濃度が10質量%である水分散液をローラ塗布し、塗布面を内周面側として円筒状に巻き付け処理した後乾燥処理することにより、ガラス繊維成形体の内側主表面にベントナイト含有膜(厚さ0.18mm、開孔率0.5%、通気抵抗2.1 kPa・s/m、ベントナイト含有率100質量%)を形成した、全体形状が円筒形状を有するガラス繊維含有マット(厚さ10mm、内径40mm、外径60mm)を得た。
(4)ガラス繊維含有マットの充填工程
上記(3)で得られたガラス繊維含有マットを用い、実施例1(4)と同様にして、ガラス繊維含有マットを内管2および外管3との隙間に挿入することにより、内管および外管の同軸二重円筒構造を有し、内管および外管間にマット材が配置された排気管用減音構造体1を作製した。
なお、上記ガラス繊維含有マットを内管2および外管3間の隙間に挿入する際、ベントナイト含有膜が設けられた面が内管に面するように配置した。
【0099】
(吸音性評価)
実施例1記載の吸音性評価において、実施例2〜実施例5のいずれかで得られた排気管用減音構造体1(通気抵抗が、各々、1.83kPa・s/m(実施例2)、1.9kPa・s/m(実施例3)、2.05kPa・s/m(実施例4)、2.1kPa・s/m(実施例5)であるベントナイト含有膜を有するガラス繊維含有マットを使用)を用いた以外は、実施例1と同様にして吸音性を測定した。
その上で、実施例1〜実施例5における800Hz-1.25kHz間における透過損失のOA値(dB和)を各々求めた。
上記方法により各々測定した、各排気管用減音構造体1を構成するガラス繊維含有マットの透過損失のOA値(dB和)を、各ガラス繊維含有マットの表面に設けたベントナイト含有膜の通気抵抗に対してプロットした結果を
図4に示す。
上記方法により各々測定した、各排気管用減音構造体1を構成するガラス繊維含有マットの透過損失のOA値(dB和)を、各ガラス繊維含有マットの表面に設けたベントナイト含有膜の通気抵抗に対してプロットした結果を
図4に示す。
【0100】
図4に示す透過損失を対比することより、ガラス繊維成形体からなる基材が所定の物性を有することに加え、ベントナイト含有膜の通気抵抗が所定範囲内にある場合に、透過損失(減音特性)にさらに優れることが分かる。
【0101】
(実施例6〜実施例10)
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.58mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合95%であるもの)を5個作製した。
上記ガラス繊維成形体を複数枚積層し、加圧して、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、1.04kPa・s/m〜1.46kPa・s/mであった。各成形体のニードル加工孔(平均値)に対して通気抵抗をプロットした結果を
図6に示す。
【0102】
(実施例11〜実施例15)
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.68mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合95%であるもの)を5個作製した。
上記ガラス繊維成形体を複数枚積層し、加圧して、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、0.88kPa・s/m〜1.27kPa・s/mであった。各成形体のニードル加工孔(平均値)に対して通気抵抗をプロットした結果を
図6に示す。
【0103】
(比較例2〜比較例7)
厚み調整ローラにより厚みを調整しながら、平均繊維径10μm、平均繊維長100mmのガラス繊維をニードルパンチ装置に導入し、バーブ(突起)を有する多数のニードル(針径0.58mm)を高速で上下に往復動させ、ガラス繊維同士を絡み合わせる(交絡させる)ことにより、多孔質形状を有するフェルト状のガラス繊維成形体(厚さ6mm、嵩密度100kg/m
3、表面における全ニードル加工孔に占める孔径0.05〜0.70mmのニードル加工孔の割合20%以下であるもの)を6個作製した。
上記ガラス繊維成形体を積層させて、厚さ15mm、嵩密度130kg/m
3で通気抵抗を測定したところ、0.23kPa・s/m〜0.44kPa・s/mであった。各成形体のニードル加工孔(平均値)に対して通気抵抗をプロットした結果を
図6に示す。
【0104】
(吸音性評価)
実施例6〜実施例15および比較例2〜比較例7で得られた厚さ15mmのガラス繊維成形体を各々用いて、以下の方法により吸音性を評価した。
通気抵抗を測定した各ガラス繊維成形体を所定の大きさを有する円形状に打ち抜き、インピーダンスチューブ(ブリュエル・ケアー・ジャパン社製type4206)内においてチューブの軸に垂直になるように設けられたサンプルプレートに設置した。このとき、各サンプルの厚さ、密度は、それぞれ15mm、130kg/m
3になっている。
上記チューブの入口側(手前側)から上記バックプレート側(奥側)に向けてホワイトノイズ(白色雑音)を入力し、1/3オクターブバンド中心周波数で100Hz〜6300Hzまでの垂直入射吸音率を測定した。
その上で、得られた各ガラス繊維成形体サンプルの800Hz、1kHz、1.25kHz、1.6kHz、2kHzにおける吸音率のOA値(和)を各々求めた。
上記方法により各々測定した、ガラス繊維成形体の吸音率のOA値(和)を、各ガラス繊維成形体からなるサンプルの通気抵抗に対してプロットした結果を
図7に示す。
【0105】
図6および
図7より、実施例6〜実施例15で得られたガラス繊維成形体からなる基材は、所定の物性を有するものであることから、800Hz〜2kHzの低周波領域における吸音率OA値が高く、透過損失(減音特性)に優れることが分かる。
一方、比較例2〜比較例7で得られたガラス繊維成形体からなる基材は、所定の物性を有さないことから、800Hz〜2kHzの低周波領域における吸音率OA値が低く、減音性能(減音特性)に劣ることが分かる。