特開2020-180476(P2020-180476A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-180476(P2020-180476A)
(43)【公開日】2020年11月5日
(54)【発明の名称】杭打機及び杭打機の輸送方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/16 20060101AFI20201009BHJP
【FI】
   E02D7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-83855(P2019-83855)
(22)【出願日】2019年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】吉仲 智彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛斗
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050EE10
2D050EE14
2D050EE24
2D050EE29
(57)【要約】
【課題】比較的に大きなオーガであっても輸送位置に保持でき、現場移動の際に十分な安全を確保することが可能な輸送用治具を備えた杭打機及び杭打機の輸送方法を提供する。
【解決手段】リーダ15の前面にラックピニオン式昇降装置を介して昇降可能に装着されたオーガ34を備えた杭打機であって、基本リーダ26及び上部リーダ27を一体で後方に倒伏させた状態で、下部リーダ28の上端部には、基本リーダの離反によってなくなった基本ラックギヤ部材32bを補うための補完ラックギヤ部材39を有する着脱可能なアダプタリーダ38が設けられ、オーガは、補完ラックギヤ部材及び下部ラックギヤ部材に噛合するピニオンギヤ36の回転により、下部リーダの前面に沿って昇降可能に構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの前部に設けられたフロントブラケットに起伏可能に装着されたリーダと、該リーダの前面にラックピニオン式昇降装置を介して昇降可能に装着された作業装置とを備えた杭打機において、
前記リーダは、前記フロントブラケットに回動可能に軸支された基本リーダと、該基本リーダの下端部に着脱可能に連結された下部リーダとを有するとともに、前記基本リーダと前記下部リーダとがボルト締結されるフランジ結合部とを備え、
ラックギヤは、前記リーダの全長にわたって設けられるとともに、前記フランジ結合部で上下に分割され、前記基本リーダの長さに対応する基本ラックギヤ部材と、前記下部リーダの長さに対応する下部ラックギヤ部材とからなり、
前記フランジ結合部のボルトを外して前記基本リーダを後方に倒伏させた状態で、前記下部リーダの上端部に補完ラックギヤ部材を備えたアダプタリーダが着脱可能に設けられ、
前記作業装置は、前記補完ラックギヤ部材及び前記下部ラックギヤ部材に噛合するピニオンギヤの回転により昇降可能に構成されていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記補完ラックギヤ部材は、前記アダプタリーダを前記下部リーダに取り付けた状態で、上端部の位置が前記基本リーダの高さを超えない長さで形成されていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記アダプタリーダの上部には、吊り上げ用の吊り部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の杭打機の輸送方法であって、前記作業装置を降下させて前記下部リーダの前面に保持する段階と、前記フランジ結合部のボルトを外して前記基本リーダを後方に倒伏させる段階と、前記下部リーダに前記アダプタリーダを取り付ける段階と、前記ピニオンギヤの回転により前記作業装置を設定高さ位置に上昇させる段階と、該作業装置を前記設定高さ位置に保持した状態で自走によって輸送車の荷台に搭載する段階とを順に行うことを特徴とする杭打機の輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機及び杭打機の輸送方法に関し、詳しくは、リーダを倒伏させた輸送姿勢とすることで、分解することなく輸送可能な杭打機及び杭打機の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小型の杭打機を輸送する際には、あらかじめ、オーガを下部リーダの部分に降下させた後、上部リーダを下部リーダとは独立して後方に倒した輸送姿勢とすることで、全高を低く抑えている。このような小型の杭打機の中でも、下部リーダに備わる下部ガイドのサイズが大きくなると、輸送車への積み込み積み下ろしの際に登坂角度(デパーチャアングル)を十分に確保できず、下部ガイドが登坂板や地面に干渉するおそれがあった。そこで、オーガと下部ガイドとを互いの連結片を介して連結し、オーガとともに下部ガイドを上昇させることにより、必要な登坂角度を確保するように形成した小型杭打機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−141937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、施工現場の多様化に伴い、従来よりも掘削能力の高い比較的に大きなオーガを備えた小型杭打機のニーズが高まってきている。しかしながら、大きなオーガは寸法的な制限を受けやすく、例えば、輸送車への積み込み積み下ろしの際に、必要な登坂角度を確保できないおそれがあった。特に、上述の特許文献1に記載されたラックピニオン式昇降装置の駆動で昇降するオーガでは、輸送姿勢において、オーガが上昇し過ぎた際に、ラックとピニオンとの噛み合いが外れてしまい、元の状態への復旧が困難になるという課題があった。そうだからといって、下部リーダにオーガの移動を許容するだけの十分な長さをもたせるのであれば、大幅な構造変更を必要とするだけでなく、輸送姿勢にも悪影響を及ぼしかねない。
【0005】
そこで本発明は、比較的に大きなオーガであっても輸送位置に保持でき、現場移動の際に十分な安全を確保することが可能な輸送用治具を備えた杭打機及び杭打機の輸送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ベースマシンの前部に設けられたフロントブラケットに起伏可能に装着されたリーダと、該リーダの前面にラックピニオン式昇降装置を介して昇降可能に装着された作業装置とを備えた杭打機において、前記リーダは、前記フロントブラケットに回動可能に軸支された基本リーダと、該基本リーダの下端部に着脱可能に連結された下部リーダとを有するとともに、前記基本リーダと前記下部リーダとがボルト締結されるフランジ結合部とを備え、ラックギヤは、前記リーダの全長にわたって設けられるとともに、前記フランジ結合部で上下に分割され、前記基本リーダの長さに対応する基本ラックギヤ部材と、前記下部リーダの長さに対応する下部ラックギヤ部材とからなり、前記フランジ結合部のボルトを外して前記基本リーダを後方に倒伏させた状態で、前記下部リーダの上端部に補完ラックギヤ部材を備えたアダプタリーダが着脱可能に設けられ、前記作業装置は、前記補完ラックギヤ部材及び前記下部ラックギヤ部材に噛合するピニオンギヤの回転により昇降可能に構成されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記補完ラックギヤ部材は、前記アダプタリーダを前記下部リーダに取り付けた状態で、上端部の位置が前記基本リーダの高さを超えない長さで形成されていることを特徴としている。さらに、前記アダプタリーダの上部には、吊り上げ用の吊り部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の杭打機の輸送方法は、前記杭打機の輸送方法であって、前記作業装置を降下させて前記下部リーダの前面に保持する段階と、前記フランジ結合部のボルトを外して前記基本リーダを後方に倒伏させる段階と、前記下部リーダに前記アダプタリーダを取り付ける段階と、前記ピニオンギヤの回転により前記作業装置を設定高さ位置に上昇させる段階と、該作業装置を前記設定高さ位置に保持した状態で自走によって輸送車の荷台に搭載する段階とを順に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基本リーダから上の部分を後方に倒伏させた輸送姿勢で、下部リーダの上端部に、補完ラックギヤ部材を有したアダプタリーダを取り付け、補完ラックギヤ部材及び下部ラックギヤ部材に噛合するピニオンギヤの回転により作業装置を昇降可能に構成しているので、比較的に大きな作業装置であっても、輸送車への積み込み積み下ろしの際に、地上から高い位置で作業装置を保持することが可能となり、十分な登坂角度を確保することができる。また、下部リーダとアダプタリーダとの互いのラックギヤ部材が合うのでピニオンギヤを円滑に昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
図2】同じくアダプタリーダを取り付けた状態を示す要部側面図である。
図3】同じく要部正面図である。
図4】同じくアダプタリーダの斜視図である。
図5】同じくオーガを下部リーダに保持した状態を示す説明図である。
図6】同じくアダプタリーダを取り付けた状態を示す説明図である。
図7】同じくオーガを設定高さ位置に上昇させた状態を示す説明図である。
図8】同じく輸送車の荷台上でオーガを輸送高さ位置に保持した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図8は、本発明の杭打機の一形態例を示すもので、杭打機11は、図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ用の起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するフロントブラケット17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、油圧配管を支持する配管支持部材18が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部にはエンジンや油圧ユニットを収納した機器室20がそれぞれ設けられている。また、上部旋回体13の前後左右の4箇所には、フロントジャッキ21及びリヤジャッキ22がそれぞれ設けられている。
【0012】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結したもので、後面に設けられたシリンダブラケット23に起伏シリンダ16のシリンダロッド16aが接続ピン24を介して回動可能に連結されている。また、リーダ15は、前記フロントブラケット17に設けられたベースマシン幅方向の支軸25に回動可能に取り付けられた基本リーダ26と、該基本リーダ26の上部に連結された上部リーダ27と、基本リーダ26の下部に連結された下部リーダ28とに分割形成され、さらに、上部リーダ27は、上部第1部材27a、上部第2部材27b、上部第3部材27c、上部第4部材27d及び上部第5部材27eの各リーダ部材に分割形成されている。
【0013】
各リーダ部材は、隣接する部分において、ボルト・ナットによる締結がなされるフランジ結合部29を有して形成されている。また、各フランジ結合部29は、ボルト孔のサイズ及び配置ピッチを全て共通にして形成されており、ボルト・ナットを外すことによってリーダ長さの異なる仕様に組み替え可能になっている。さらに、上部リーダ27の上端部にはトップシーブブロック30が、下部リーダ28の下部前方には振止部材31がそれぞれ配置されており、リーダ15の前面側中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成品の一つであるラックギヤ32が、幅方向両側面の前端部には、ガイド部材である左右一対のガイドパイプ33が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられている。
【0014】
ラックギヤ32は、縦長な板状部材の両側端面に歯列32aを有するとともに、各フランジ結合部29に対応する位置で上下に分割され、基本リーダ26の長さに対応する長さを有した基本ラックギヤ部材32bと、上部リーダ27の各リーダ部材27a,27b,27c,27d,27eの長さに対応する長さを有した複数の上部ラックギヤ部材32cと、下部リーダ28の長さに対応する長さを有した下部ラックギヤ部材32dとからなる。したがって、各ラックギヤ部材32b,32c,32dは、これらに対応するリーダ部材と共に一体で分離・結合が可能になっている。
【0015】
作業装置となるオーガ34は、その後面側に、前記ガイドパイプ33に摺接する係合部材である左右一対のガイドギブ35が後方に突出して設けられるとともに、前記ラックギヤ32に歯合する上下多段の左右一対のピニオンギヤ36をピニオン駆動装置である昇降用油圧モータ37でそれぞれ回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。この杭打機11を地盤改良を目的として使用する場合には、下端に掘削具を備えた掘削ロッドをオーガ34に装着し、該オーガ34によって掘削ロッドを回転駆動するとともに、昇降用油圧モータ37を作動させてラックギヤ32を介してオーガ34をリーダ15に沿って下降させながら、掘削ロッドの上端に設けたスイベルジョイントを介してホースからセメントミルクを地中に注入することによって行われる。
【0016】
このように形成された杭打機11を輸送する際には、あらかじめ、オーガ34を下部リーダ28の部分に降下させた後、基本リーダ26及び下部リーダ28間のフランジ結合部29においてボルトを外して解除を行うとともに、起伏シリンダ16を縮小作動させて基本リーダ26及び上部リーダ27を一体で後方に倒伏させた輸送姿勢とする。ここで、輸送車の荷台には、車両を自走によって積み込み又は積み下ろしすることから、地面と荷台との段差を解消する登坂板の傾斜角度よりも大きな角度が、つまり地面とオーガ34下端との干渉を回避可能な登坂角度が得られるまでオーガ34を下部リーダ28の前面に沿って上昇させることとなる。そこで、図2乃至図4に示すように、下部リーダ28の上端部には、基本リーダ26の離反によってなくなった基本ラックギヤ部材32b及び左右一対のガイドパイプ33,33を補うための補完ラックギヤ部材39及び左右一対の補完ガイドパイプ40,40を有するアダプタリーダ38が取り付けられる。
【0017】
アダプタリーダ38は、着脱可能な輸送用治具として、下部リーダ28に保持されたオーガ34を昇降可能にするための補完ラックギヤ部材39及び左右一対の補完ガイドパイプ40,40を主要構成部材とする小型で軽量な溶接構造であって、下部リーダ28の上面前部に複数のボルト41及びナット42で固定されるボルト孔43aを有した下板43と、中央に吊り上げ用の吊り部44aが設けられた上板44と、下部リーダ28の下部ラックギヤ部材32d及び左右一対のガイドパイプ33,33の位置に対応してそれぞれ配置され、上下板43,44間をつなぐように設けられたギヤ板固定部45及び左右一対の補完ガイドパイプ40,40とを有して形成され、背板46や複数の補強板47によって全体として剛性が高められている。そして、補完ラックギヤ部材39が複数のボルト48でギヤ板固定部45に固定されることにより、アダプタリーダ38の取り付け時に、ガイドパイプ33及び補完ガイドパイプ40同士が一体的に連結されるとともに、下部ラックギヤ部材32dの上端と補完ラックギヤ部材39の下端とが互いに接近した状態となる。これにより、上下の歯列32a,39a同士の突き合わせ部分には、ピニオンギヤ36の歯に対応する等ピッチの連結歯列49が形成される。
【0018】
また、上板44の高さ位置は、アダプタリーダ38を取り付けた状態で、基本リーダ26の上面の高さPよりも若干低くなるように設定されている。さらに、ギヤ板固定部45に固定された補完ラックギヤ部材39についても、その上端部の位置が高さPを超えない長さで形成されている。これにより、アダプタリーダ38全体として、その高さが輸送時の全高を飛び出さない程度に確保されている。また、下板43のボルト孔43aは、基本リーダ26と下部リーダ28とのフランジ結合がなされるボルト孔の位置に対応して設けられており、アダプタリーダ38の取り付けに使用されるボルト41及びナット42は、このフランジ結合に使用されたものの一部が用いられている。
【0019】
ここで、杭打機11の輸送方法について、図5乃至図8を参照しながら説明する。まず、図5に示すように、あらかじめ、下部リーダ28の下端部から振止部材31及びストッパ50を取り外し、オーガ34を下部リーダ28の部分に降下させた後、基本リーダ26及び下部リーダ28間のフランジ結合部29においてボルトを外して解除を行い、基本リーダ26から上の部分を後方に倒伏させた輸送姿勢とする。このとき、オーガ34は、上中下の3段のピニオンギヤ対(全部で6個のピニオンギヤ)の全てのピニオンギヤ36a,36b,36cを下部ラックギヤ部材32dに噛合させた状態で下部リーダ28の前面に保持されている。また、下部リーダ28は、フロントブラケット17の前下部に斜め下方に突出して設けられたリンク連結片17aのピン孔と、下部リーダ28に設けられたリンク51の先端のピン孔とを一致させた状態で、連結ピン52及びベータピン53によって固定されているため、連結軸54回りの回動が規制されて起立状態に保持されている。
【0020】
次いで、用意したアダプタリーダ38の吊り部44aにワイヤロープを取り付けた後、図6に示すように、クレーンの巻き上げ操作によって吊り上げたアダプタリーダ38を下部リーダ28の上面前部に配置し、複数のボルト41及びナット42で固定する。これにより、上下のガイドパイプ33及び補完ガイドパイプ40同士が一体的に連結されるとともに、下部ラックギヤ部材32dの上端と補完ラックギヤ部材39の下端とが互いに接近した等ピッチの状態となり、上下の歯列32a,39a同士の突き合わせ部分に連結歯列49が形成される。
【0021】
次いで、図7に示すように、補完ラックギヤ部材39及び下部ラックギヤ部材32dに噛合する各ピニオンギヤ36a,36b,36cの回転により、オーガ34を設定高さ位置に上昇させる。ここで、「設定高さ位置に上昇させる」とは、例えば、クローラ12aの接地部の前端とフロントジャッキ21の下端とを結ぶ直線が地面との間になす角度A(デパーチャアングル)を基準とした場合に、オーガ34の下端34aの位置が角度A(例えば略19度)をなす直線よりも高位置にあることを意味する。これにより、車両を輸送車の荷台に積み込む際に、登坂板の傾斜角度(例えば略15度)よりも大きな角度が、つまり地面とオーガ34の下端34aとの干渉を回避可能な十分な登坂角度が得られる。また、この状態では、ガイドギブ35の上部が補完ガイドパイプ40に係合しているので、オーガ34の前後方向のガタつきも抑制されている。
【0022】
次いで、オーガ34を前記設定高さ位置に保持したままで、自走によって輸送車の荷台に搭載した後、図8に示すように、下部リーダ28の下端部にストッパ50を取り付け、枕木55で下部リーダ28の下端を支持する。そして、オーガ34を輸送高さ位置に降下させることにより、輸送車への積み込みが完了し、この状態で目的地まで輸送される。すなわち、着脱可能なアダプタリーダ38を備えることによって、オーガ34を車体に保持した状態のままで輸送することが可能となる。こうして、別の現場に搬入された杭打機11は、上述と逆の手順で輸送車の荷台から下ろされ、アダプタリーダ38が取り外された後、基本リーダ26から上の部分を前方に起仰させた使用状態に組み立てられる。
【0023】
このように、基本リーダ26から上の部分を後方に倒伏させた輸送姿勢で、下部リーダ28の上端部に、補完ラックギヤ部材39を有したアダプタリーダ38を取り付け、補完ラックギヤ部材39及び下部ラックギヤ部材32dに噛合するピニオンギヤ36の回転により、オーガ34を下部リーダ28の前面に沿って昇降可能に構成しているので、比較的に大きなオーガ34であっても、輸送車への積み込み積み下ろしの際に、地上から高い位置でオーガ34を保持することが可能となり、十分な登坂角度を確保することができる。また、下部リーダ28とアダプタリーダ38との互いのラックギヤ部材32d,39が合うのでピニオンギヤ36を円滑に昇降させることができる。
【0024】
また、補完ラックギヤ部材39の上端部の位置が、アダプタリーダ38を下部リーダ28に取り付けた状態で、基本リーダ26の高さPを超えない長さで形成されているので、輸送車の荷台上で全高を低く抑えた状態を維持することができ、輸送中の安全も確保される。さらに、アダプタリーダ38の上部に吊り上げ用の吊り部44aを設けているので、下部リーダ28の前部にオーガ34が存在しているような込み入った状況であっても、アダプタリーダ38の着脱を安全に行うことができ、さらには小型で軽量な溶接構造と相俟って、現場での取り扱いが極めて容易な輸送用治具の構造を得ることができる。
【0025】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものでなく、アダプタリーダは、車両の積み込み積み下ろし時に、必要な登坂角度が得られる設定高さ位置にオーガを保持可能に構成できればよく、例えば、補完ガイドパイプの長さを補完ラックギヤ部材の長さよりも短くしたり、補完ガイドパイプ自体をなくしたりするなど、アダプタリーダが取り付けられる杭打機の形式や構造に応じて適宜に変更することができる。また、本形態例では、アダプタリーダを比較的に薄い鋼板で構成して安価で製作を容易なものとしたが、これに限られず、例えば、補完ラックギヤ部材の板厚を下部ラックギヤ部材の板厚と同一になるように大きくして、上下の歯列の突き合わせ部分に板厚差のないラックギヤ部材同士からなる連結歯列を形成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、16a…シリンダロッド、17…フロントブラケット、17a…リンク連結片、18…配管支持部材、19…運転室、20…機器室、21…フロントジャッキ、22…リヤジャッキ、23…シリンダブラケット、24…接続ピン、25…支軸、26…基本リーダ、27…上部リーダ、27a…上部第1部材、27b…上部第2部材、27c…上部第3部材、27d…上部第4部材、27e…上部第5部材、28…下部リーダ、29…フランジ結合部、30…トップシーブブロック、31…振止部材、32…ラックギヤ、32a…歯列、32b…基本ラックギヤ部材、32c…上部ラックギヤ部材、32d…下部ラックギヤ部材、33…ガイドパイプ、34…オーガ、34a…下端、35…ガイドギブ、36…ピニオンギヤ、36a…上段ピニオンギヤ、36b…中段ピニオンギヤ、36c…下段ピニオンギヤ、37…昇降用油圧モータ、38…アダプタリーダ、39…補完ラックギヤ部材、39a…歯列、40…補完ガイドパイプ、41…ボルト、42…ナット、43…下板、43a…ボルト孔、44…上板、44a…吊り部、45…ギヤ板固定部、46…背板、47…補強板、48…ボルト、49…連結歯列、50…ストッパ、51…リンク、52…連結ピン、53…ベータピン、54…連結軸、55…枕木
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8