【課題】羽根ケース68の延設部の内周側開口部76を通過する(通り過ぎる)流れが発生し、損失が生じて吐出流量が低下してしまうことのない高流量の遠心ポンプを提供する。
【解決手段】 上方に流体導入流路84を形成するとともに、下方に回転羽根部材12を収容する回転部収容空間S2を形成する羽根ケース68と、流体導入流路84から導入された流体が、回転部収容空間S2に至るように、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76とを備えた遠心ポンプ10であって、流体導入流路84を形成する導入路形成部21が、流体導入流路84から導入された流体を、回転羽根部材12の羽根車部材16に至る内周側開口部76へ導く案内ガイド面23を形成している。
前記案内ガイド面が、羽根ケースに開口形成された内周側開口部の内周端部から、羽根車部材方向に延設された円筒形状案内部を備えることを特徴とする請求項1に記載の遠心ポンプ。
前記円筒形状案内部の羽根車部材方向の端部が、羽根車部材に接触しない位置まで羽根車部材方向に延設されていることを特徴とする請求項2から3のいずれかに記載の遠心ポンプ。
前記案内ガイド面が、羽根ケースに開口形成された内周側開口部の内周端部に向かって傾斜するテーパー傾斜面を形成していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の遠心ポンプ。
前記羽根ケースの側周壁が、水平方向の断面視で、羽根車部材の回転方向Kにおいて、吐出口側の内径が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の遠心ポンプ。
前記回転部収容空間から流体が吐出される吐出口が、水平方向の断面視で、羽根車部材の回転方向Kにおいて、側周壁部分の接線方向Pに形成されていることを特徴とする請求項8に記載の遠心ポンプ。
前記羽根ケースの側周壁が、水平方向の断面視で、羽根車部材の回転方向Kにおいて、吐出口側の内径が大きくなる部分の上流側に、略直線案内面を備えることを特徴とする請求項8から9のいずれかに記載の遠心ポンプ。
前記上側本体ケースの側周壁には、吸込側継手部材を固定するための開口部が形成されており、前記吸入側継手部材の内部の空間が吸入口を形成していることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の遠心ポンプ。
前記上側本体ケースの側周壁には、吐出側継手部材を固定するための開口部が形成されており、前記吐出側継手部材の内部の空間が吐出口を形成していることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の遠心ポンプ。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の遠心ポンプの縦断面図、
図11は、
図10の従来の遠心ポンプのA−A線での断面図、
図12は、
図10の従来の遠心ポンプのB−B線での断面図である。
【0003】
なお、本明細書中、「上側」、「上部」、「上方」、「下側」、「下部」、「下方」などの上下方向を示す用語、「左側」、「左方」、「右側」、「右方」などの左右方向を示す用語などの方向についての用語は、各図面において、上下方向、左右方向などの方向を示すものであり、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0004】
また、
図10〜
図12においては、説明の便宜上、ロータマグネット122の周囲に位置するように、下側本体ケース138のロータマグネット収容部146の外周に配置され、回転羽根部材102を回転させるコイル部、その他の駆動用の構成部材を省略して図示している。
【0005】
図10に示したように、従来の遠心ポンプ100は、回転羽根部材102を備えている。この回転羽根部材102は、円管状の軸受け部104の上部に、外周方向に放射状に延設された複数枚の羽根車部材106を備えている。
【0006】
また、羽根車部材106は、軸受け部104の下部外周方向に延設された基端部分108と、この基端部分108から上方に外周方向に拡径した拡径部110と、この拡径部110から外周方向に延設された外側羽根部112とから構成されている。
【0007】
また、回転羽根部材102は、基端部分108の外周に、環状の永久磁石からなるロータマグネット122が設けられている。
【0008】
なお、ロータマグネット122と羽根車部材106との間は、係止リング101によって、羽根車部材106に対するロータマグネット122の回り止め、抜け落ちが防止される構造となっている。また、羽根車部材106がロータマグネット122とともに、軸部材154の周りを回転するように構成されている。
【0009】
さらに、従来の遠心ポンプ100は、
図10に示したように、回転羽根部材102を収容する本体ケース124を備えている。本体ケース124は、上側本体ケース126を備えており、上側本体ケース126は、頂壁128と、頂壁128の外周から下方に延設された側周壁130とから構成されている。
【0010】
上側本体ケース126の側周壁130には、
図10、
図11に示したように、吸込側継手部材(吸い込み側導管)132が、密封状態で固着されている。これにより、本体ケース124内に、吸込側継手部材132が連通するように構成されている。
【0011】
また、上側本体ケース126の側周壁130には、
図10、
図11に示したように、吸込側継手部材132と中心角度90°離間して(平面視で直角方向に)、吐出側継手部材(吐き出し側導管)136が、密封状態で固着されている。これにより、本体ケース124内に、吐出側継手部材136が連通するように構成されている。
【0012】
また、
図10に示したように、本体ケース124は、下側本体ケース(ロータケース)138を備えている。そして、上側本体ケース126の側周壁130の下端141の内壁に、下側本体ケース138の外周フランジ142が密封状態で固着されている。これにより、本体ケース124内に、上側本体ケース126と下側本体ケース138で囲まれた内部空間S1が形成されている。
【0013】
この下側本体ケース138は、
図10に示したように、下側本体ケース138の外周フランジ142から、内周側に延びた羽根収容部144と、この羽根収容部144から下方に延びたロータマグネット収容部146とを備えている。さらに、このロータマグネット収容部146の下方に、有底筒状の軸固定部材収容部148が形成されている。
【0014】
そして、軸固定部材収容部148に、軸固定部材150が、例えば、圧入などによって嵌着されている。この軸固定部材150に形成された軸穴152に、軸部材154の下端部156が、軸支されるように固定されている。
【0015】
また、この回転羽根部材102の軸受け部104内に、回転羽根部材102が回転できるように軸部材154が挿通されている。
【0016】
さらに、本体ケース124は、羽根ケース158を備えている。この羽根ケース158は、吸込側継手部材132側において、この羽根ケース158の外周フランジ160が、上側本体ケース126の側周壁130の下方に、密封状態で固着されている。
【0017】
すなわち、羽根ケース158の外周フランジ160が、上側本体ケース126の側周壁130の下端141の内壁と、下側本体ケース138の外周フランジ142との間に挟着されるように、密封状態で固着されている。
【0018】
一方、
図11、
図12に示したように、羽根ケース158は、吐出側継手部材136側において、その側周壁162に開口部が形成され、この側周壁162の開口部の周囲が、本体ケース124の側周壁130に、吐出側継手部材136とともに、密封状態で固着されている。
なお、吐出側継手部材136は、
図11に示したように、本体ケース124の回転部収容空間S2と連通している。
【0019】
また、
図10に示したように、羽根ケース158は、外周フランジ160から上方に延びた側周壁162と、側周壁162から、羽根車部材106の外側羽根部112に沿うように水平方向内側に延設された延設部164を備えている。
【0020】
このような形状とすることで、羽根ケース158と下側本体ケース138の羽根収容部144との間に、羽根車部材106を収容することができるようになっている。
【0021】
また、
図10、
図12に示したように、羽根ケース158によって、上側本体ケース126と下側本体ケース138とで形成された内部空間S1が仕切られて、上方に流体導入流路174が形成されるとともに、下方に回転羽根部材102を収容する回転部収容空間S2が形成されている。
【0022】
また、図示しないが、従来の遠心ポンプ100は、ロータマグネット122の周囲に位置するように、下側本体ケース138のロータマグネット収容部146の外周に配置され、回転羽根部材102を回転させるコイル部を備えている。
【0023】
このように構成される従来の遠心ポンプ100では、図示しないコイル部のコイルに電流を流すことによって、コイルが励磁される。これにより、回転羽根部材102のロータマグネット122に作用して、
図11の矢印Cで示したように、反時計方向に、回転羽根部材102が軸受け部104に挿通された軸部材154の周りで回転できるようになっている。
【0024】
これにより、吸込側継手部材132から吸い込まれた流体が、羽根ケース158と上側本体ケース126によって形成された流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aを通過する。そして、内周側開口部164aを通過した流体は、羽根ケース158と下側本体ケース138によって形成された回転部収容空間S2に導入されるようになっている。
【0025】
また、回転羽根部材102の羽根車部材106の回転力によって、回転部収容空間S2に導入された流体は、本体ケース124の回転部収容空間S2から、吐出側継手部材136を介して吐出されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
ところで、流体の循環によって機器の冷却を行う冷却システムに用いられる遠心ポンプは、近年、機器の小型化、高性能化に伴って、発熱量が増加しているために、小型の寸法で、高流量の遠心ポンプが求められている。
【0028】
このように、遠心ポンプの小型化を実現するためには、限られたスペースに構成部品を納める必要がある。
【0029】
しかしながら、このためには、遠心ポンプの流路の形状が複雑になり、流体の流れの損失の影響によって、流量が低下することにつながる。
【0030】
従って、遠心ポンプの内部の構造を最適化しつつ、遠心ポンプの寸法を変えずに、遠心ポンプの性能を高流量化する必要がある。
【0031】
しかしながら、従来の遠心ポンプ100では、
図10、
図12に示したように、流体導入流路174において、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aを超えた反対側の延設部分164bと、上側本体ケース126の当接壁部126aとの間に、滞留空間部分125が形成されている。
【0032】
このため、
図12の矢印Mに示したように、吸込側継手部材132から吸い込まれた流体が、流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aの周囲を回る(迂回する)ように通過して、
図10、
図12の矢印Eに示したように、滞留空間部分125に流れてしまうことになる。
【0033】
また、
図10、
図12の矢印Dに示したように、吸込側継手部材132から吸い込まれた流体が、流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aを通過して、
図10、
図12の矢印Eに示したように、滞留空間部分125に流れてしまうこともある。
【0034】
そして、滞留空間部分125に一時滞留した後、
図10、
図12の矢印Fに示したように、滞留空間部分125から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aを通過することになる。
【0035】
その後、内周側開口部164aを通過した流体は、羽根ケース158と下側本体ケース138によって形成された回転部収容空間S2に導入される。
【0036】
このため、吸込側継手部材132から吸い込まれた流体が、慣性によって、流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164a内に浸入せずに、内周側開口部164a上を通過する(通り過ぎる)流れが発生し、損失が生じて、流量が低下してしまうことになる。
【0037】
また、従来の遠心ポンプ100では、
図11に示したように、回転羽根部材102の羽根車部材106の回転力によって、回転部収容空間S2に導入された流体は、本体ケース124の回転部収容空間S2から、吐出側継手部材136を介して、
図11の矢印Gで示したように、吐出されるようになっている。
【0038】
しかしながら、従来の遠心ポンプ100では、
図11に示したように、吸込側継手部材132と中心角度90°離間して(平面視で直角方向に)、吐出側継手部材136が、密封状態で固着されている。
【0039】
従って、
図11に示したように、回転羽根部材102の回転方向の接線Uの法線V上に、吐出側継手部材136の回転部収容空間S2側の開口が位置することになる。
【0040】
このため、本体ケース124の回転部収容空間S2から、吐出側継手部材136を介して、流体が効率的に吐出されず、流量が低下することになる。
【0041】
本発明は、このような現状に鑑み、遠心ポンプの内部の構造を最適化しつつ、複雑な流路、構造ではなく、遠心ポンプの寸法を変えずに、小型の寸法で、かつ簡単に遠心ポンプの性能を高流量化することが可能な高流量の遠心ポンプを提供することを目的とする。
【0042】
また、本発明は、従来の遠心ポンプ100のように、流体が、慣性によって、流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164a内に浸入せずに、内周側開口部164a上を通過する(通り過ぎる)流れの発生を防止することで圧力損失が生じにくく、吐出流量が低下してしまうことのない高流量の遠心ポンプを提供することを目的とする。
【0043】
また、本発明は、従来の遠心ポンプ100のように、回転羽根部材102の羽根車部材106の回転力が効率的に流体に伝達されず、流体の流れを阻害して損失となることがなく、本体ケース124の回転部収容空間S2から、流体が効率的に吐出され、流量が低下することのない高流量の遠心ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の遠心ポンプは、
羽根車部材を備えた回転羽根部材と、
前記回転羽根部材を収容する本体ケースとを備え、
前記本体ケースが、
上側本体ケースと、
前記上側本体ケースに固定された下側本体ケースと、
前記上側本体ケースと下側本体ケースとで形成された内部空間を仕切り、上方に流体導入流路を形成するとともに、下方に回転羽根部材を収容する回転部収容空間を形成する羽根ケースと、
前記流体導入流路から導入された流体が、回転部収容空間に至るように、羽根ケースに開口形成された内周側開口部と、
を備えた遠心ポンプであって、
前記流体導入流路を形成する羽根ケースの導入路形成部が、
前記流体導入流路から導入された流体を、回転羽根部材の羽根車部材に至る内周側開口部へ導く案内ガイド面を形成していることを特徴とする。
【0045】
このように構成することによって、流体が、流体導入流路から、案内ガイド面に案内されて、羽根ケースの延設部の内周側開口部を効率的に通過することになる。
【0046】
そして、内周側開口部を通過した流体は、羽根ケースと下側本体ケースによって形成された回転部収容空間S2に導入されて、回転羽根部材の羽根車部材に効率的に導入されることになる。
【0047】
これにより、回転羽根部材の羽根車部材の回転力が効率的に流体に伝達され、流体の流れが阻害されることによる圧力損失が生じにくく、吐出流量が低下してしまうことがない。
【0048】
従って、従来の遠心ポンプのように、滞留空間部分が存在しないため流体が、慣性によって、流体導入流路から、羽根ケースの延設部の内周側開口部内に浸入せずに、内周側開口部上を通過する(通り過ぎる)流れも発生せず、圧力損失が生じにくくなる。
【0049】
また、本発明の遠心ポンプは、前記案内ガイド面が、羽根ケースに開口形成された内周側開口部の内周端部から、羽根車部材方向に延設された円筒形状案内部を備えることを特徴とする。
【0050】
このように構成することによって、流体が、流体導入流路から、羽根車部材方向に延設された円筒形状案内部から構成される案内ガイド面に案内される。
【0051】
これにより、円筒形状案内部に案内された流体の流れは、羽根車部材へ向かう方向性を持つことなるので、回転部収容空間S2内の余空間に流体が拡散しにくくなり、回転羽根部材の羽根車部材にさらに効率的に流体が導入されることになる。
このため、回転羽根部材の羽根車部材の回転力が効率的に流体に伝達されることとなり、吐出流量を増加させることができる。
【0052】
また、本発明の遠心ポンプは、前記円筒形状案内部の羽根車部材方向の端部が、羽根車部材の上端の位置よりも羽根車部材方向に延設されていることを特徴とする。
【0053】
このように構成することによって、流体が、流体導入流路から、羽根車部材の上端の位置よりも羽根車部材方向に延設された円筒形状案内部を介して、羽根車部材へ向かうことになる。
【0054】
これにより、円筒形状案内部に案内された流体の流れは、羽根車部材へ向かう方向性を持つことなるので、回転部収容空間S2内の余空間に流体が拡散しにくくなり、回転羽根部材の羽根車部材にさらに効率的に流体が導入されることになる。
このため、回転羽根部材の羽根車部材の回転力が効率的に流体に伝達されることとなり、吐出流量を増加させることができる。
【0055】
また、本発明の遠心ポンプは、前記円筒形状案内部の羽根車部材方向の端部が、羽根車部材に接触しない位置まで羽根車部材方向に延設されていることを特徴とする。
【0056】
これにより、最も効率良く回転力を流体に与えることができる回転羽根車部材(外羽根部)の高さ方向の中心(羽根車部材の中心軸と並行な方向の中心)に、流体が導入されることとなる。
従って、回転羽根部材の羽根車部材の回転力が、効率的に流体に伝達され、吐出流量を増加させることができる。
【0057】
また、本発明の遠心ポンプは、前記案内ガイド面が、羽根ケースに開口形成された内周側開口部の内周端部に向かって傾斜するテーパー傾斜面を形成していることを特徴とする。
【0058】
このように構成することによって、羽根ケースに開口形成された内周側開口部の内周端部に向かって傾斜するテーパー傾斜面である案内ガイド面を介して、流体が、流体導入流路から、羽根ケースの延設部の内周側開口部をさらに効率的に通過して、羽根ケースと下側本体ケースによって形成された回転部収容空間S2に導入されて、回転羽根部材の羽根車部材にさらに効率的に導入されることになる。
【0059】
また、本発明の遠心ポンプは、
前記案内ガイド面の内周開口部の直径D1と、前記羽根車部材の羽根内周端の直径D2との関係が、
D1>D2
との関係になるように設定されていることを特徴とする。
【0060】
これにより、羽根ケースと下側本体ケースによって形成された回転部収容空間S2に導入される際に、回転羽根部材の中心軸近傍だけではなく、羽根車部材にさらに効率的に導入されることになる。
【0061】
また、本発明の遠心ポンプは、
前記上側本体ケースの流体導入流路形成部分において、導入された流体が当接する当接端部を有し、
前記当接端部が、羽根ケースに開口形成された内周側開口部の開口端部に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0062】
このように構成することによって、流体が、流体導入流路から、当接端部に当接して、羽根ケースの延設部の内周側開口部をさらに効率的に通過する。
【0063】
従って、従来の遠心ポンプのように、流体が、慣性によって、流体導入流路から、羽根ケースの延設部の内周側開口部内に浸入せずに、内周側開口部上を通過する(通り過ぎる)流れが発生しないため、圧力損失が生じにくく、吐出流量が低下してしまうことがない。
【0064】
また、本発明の遠心ポンプは、前記羽根ケースの側周壁が、水平方向の断面視で、羽根車部材の回転方向Kにおいて、吐出口側の内径が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0065】
このように構成することによって、流体が羽根ケースの側周壁の内壁に沿って流れやすくなるので吐出口から流体が吐出されやすくなる。
【0066】
また、本発明の遠心ポンプは、前記回転部収容空間から流体が吐出される吐出口が、水平方向の断面視で、羽根車部材の回転方向Kにおいて、側周壁部分の接線方向Pに形成されていることを特徴とする。
【0067】
このように構成することによって、羽根車部材によって回転力を与えられた流体が回転部収容空間S2から吐出口に、さらに吐出されやすくなる。
【0068】
また、本発明の遠心ポンプは、前記羽根ケースの側周壁が、水平方向の断面視で、羽根車部材の回転方向Kにおいて、吐出口側の内径が大きくなる部分の上流側に、略直線案内面を備えることを特徴とする。
【0069】
このように構成することによって、吐出口側の内径が大きくなる部分の上流側に、略直線案内面を備えるので、、吐出口側の内径が大きくなる部分の部分の内壁に沿って流れやすくなり、吐出口から流体が吐出されやすくなる。
具体的には、例えば、半径R1とR2へと曲率が変化する場合であっても、半径R2の部分の内壁に沿って流れやすくなり、吐出口から流体が吐出されやすくなる。
【0070】
また、本発明の遠心ポンプは、前記上側本体ケースの側周壁には、吸込側継手部材を固定するための開口部が形成されており、前記吸入側継手部材の内部の空間が吸入口を形成していることを特徴とする。
【0071】
また、本発明の遠心ポンプは、前記上側本体ケースの側周壁には、吐出側継手部材を固定するための開口部が形成されており、前記吐出側継手部材の内部の空間が吐出口を形成していることを特徴とする。
【0072】
また、本発明の遠心ポンプを用いた冷却システムは、
前述のいずれかに記載の遠心ポンプを用いた冷却システムであって、
被冷却物体を冷却するための熱媒体循環経路を備えた冷却システムにおいて、熱媒体循環経路に遠心ポンプを配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0073】
本発明によれば、羽根ケースの流体導入流路を形成する導入路形成部が、流体導入流路から導入された流体を、回転羽根部材の羽根車部材に至る内周側開口部へ導く案内ガイド面を形成している。
【0074】
従って、流体が、流体導入流路から、案内ガイド面に案内されて、羽根ケースの内周側開口部を効率的に通過することになる。
【0075】
そして、内周側開口部を通過した流体は、羽根ケースと下側本体ケースによって形成された回転部収容空間S2に導入されて、回転羽根部材の羽根車部材に効率的に導入されることになる。
【0076】
これにより、回転羽根部材の羽根車部材の回転力が効率的に流体に伝達され、流体の流れが阻害されることによる圧力損失が生じにくく、吐出流量が低下してしまうことがない。
【0077】
従って、従来の遠心ポンプのように、滞留空間部分が存在しないため流体が、慣性によって、流体導入流路から、羽根ケースの内周側開口部内に浸入せずに、内周側開口部上を通過する(通り過ぎる)流れも発生せず、圧力損失が生じにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
(実施例1)
【0080】
図1は、本発明の遠心ポンプの縦断面図、
図2は、
図1の遠心ポンプのA−A線での断面図、
図3は、
図1の遠心ポンプのB−B線での断面図、
図4は、
図1の遠心ポンプのU部の部分拡大縦断面図、
図5は、本発明の遠心ポンプの他の実施例を説明する
図3と同様な
図1の遠心ポンプのB−B線での断面図である。
【0081】
図1においては、符号10は、全体で本発明の遠心ポンプを示している。
【0082】
図1に示したように、本発明の遠心ポンプ10は、回転羽根部材12を備えている。この回転羽根部材12は、円管状の軸受け部14の上部に、外周方向に放射状に延設された複数枚の羽根車部材16を備えている。
【0083】
なお、この羽根車部材16の枚数は、遠心ポンプ10の用途、必要とするポンプ能力に応じて選択すれば良く、特に限定されるものではない。
【0084】
図1に示したように、羽根車部材16は、軸受け部14の下部外周方向に延設された基端部分18と、この基端部分18から上方に外周方向に拡径した拡径部20と、この拡径部20から外周方向に延設された外側羽根部22とから構成されている。
【0085】
羽根車部材16の形状をこのような形状とすることで、羽根車部材16の回転による外側羽根部22の作用によって、吐出能力を向上することができる。
【0086】
また、回転羽根部材12は、基端部分18の外周に、環状の永久磁石からなるロータマグネット32が設けられている。
【0087】
なお、ロータマグネット32と羽根車部材16との間は、係止リング11によって、羽根車部材16に対するロータマグネット32の回り止め、抜け落ちが防止される構造となっている。また、羽根車部材16がロータマグネット32とともに、軸部材64の周りを回転するように構成されている。
【0088】
また、本発明の遠心ポンプ10は、
図1に示したように、回転羽根部材12を収容する本体ケース34を備えている。本体ケース34は、上側本体ケース36を備えており、上側本体ケース36は、頂壁38と、頂壁38の外周から下方に延設された側周壁40とから構成されている。
【0089】
そして、
図1、
図2に示したように、上側本体ケース36の側周壁40には、吸込側継手部材42を固定するための開口部が形成されており、吸入側継手部材42の内部の空間が吸入口42aとなっている。
図2に示したように、この開口部に、吸込側継手部材42が、例えば、溶接、ろう付、溶着などによって、密封状態で固着されている。これにより、本体ケース34内に、吸込側継手部材42の吸入口42aが連通するように構成されている。
【0090】
上側本体ケース36の側周壁40には、
図2に示したように、吐出側継手部材(吐き出し側導管)46を固定するための開口部が形成されており、吐出側継手部材46の内部の空間が吐出口46aとなっている。
【0091】
図2に示したように、この開口部に、吐出側継手部材46が、例えば、溶接、ろう付、溶着などによって、密封状態で固着されている。これにより、本体ケース34内に、吐出側継手部材46の吐出口46aが連通するように構成されている。
【0092】
また、
図1に示したように、本体ケース34は、下側本体ケース(ロータケース)48を備えている。そして、上側本体ケース36の側周壁40の下端51の内壁に、下側本体ケース48の外周フランジ52を、例えば、溶接、ろう付、溶着などによって、密封状態で固着されている。これにより、本体ケース34内に、上側本体ケース36と下側本体ケース48で囲まれた内部空間S1が形成されている。
【0093】
この下側本体ケース48は、
図1に示したように、下側本体ケース48の外周フランジ52から、内周側に水平に延びた羽根収容部54と、この羽根収容部54から下方に延びたロータマグネット収容部56とを備えている。さらに、このロータマグネット収容部56の下方に、有底筒状の軸固定部材収容部58が形成されている。
【0094】
そして、軸固定部材収容部58に、軸固定部材60が、例えば、圧入などによって嵌着されている。この軸固定部材60に形成された軸穴62に、軸部材64の下端部66が、例えば、圧入などによって軸支されるように固定されている。
【0095】
すなわち、
図1に示したように、この実施例の遠心ポンプ10では、軸部材64の上端部が軸支されず、軸部材64が、本体ケース34の軸固定部材収容部58に、軸固定部材60を介して固定されている。すなわち、軸部材64が、軸部材64の軸方向のロータマグネット32側の端部で固定されているいわゆる「片持ち形式」となっている。
【0096】
従って、軸部材64が傾いて固定される場合がないので、ポンプの作動効率が低下することがなく、組み立てに細心の注意が不要で、精密性が要求されることもない。
【0097】
また、この実施例の遠心ポンプ10では、羽根車部材16の軸受け部14の軸方向の流体導入流路84側の端部、すなわち、軸受け部14の上端部14aが、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76から上方に突設され、流体導入流路84に露出している。
【0098】
従って、いわゆる「片持ち形式」であるので、従来のいわゆる「両持ち形式」のように、羽根ケースの内周側開口部に軸固定部が存在しない。
【0099】
これにより、流体の軸固定部への衝突に起因する流体の流れに圧力損失が生じることがなく、ポンプ効率が低下することもなく、しかも、異音などの騒音の発生もなく、耐久性、静音性に優れ、所期の目的とするポンプ性能を保持することが可能である。
【0100】
また、このように構成することによって、回転羽根部材12が回転して、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、羽根ケース68と上側本体ケース36によって形成された流体導入流路84から、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76を通過する。
【0101】
この際に、流体が羽根車部材16の上端部14aの回転運動に沿って、この回転により回転流(整流)となる。
【0102】
これによって、流入孔である内周側開口部76を介して、内部空間S1、回転部収容空間S2に円滑に流入しやすくなり、その結果、圧力損失を低減することができるように構成されている。
【0103】
従って、流体の流れに圧力損失が生じることがなく、ポンプ効率が低下することもなく、しかも、異音などの騒音の発生もなく、耐久性、静音性に優れ、所期の目的とするポンプ性能を保持することが可能である。
【0104】
また、この回転羽根部材12の軸受け部14内に、回転羽根部材12が回転できるように軸部材64が挿通されている。
【0105】
さらに、
図1に示したように、本体ケース34は、羽根ケース68を備えている。この羽根ケース68は、吸込側継手部材42側において、この羽根ケース68の外周フランジ70が、上側本体ケース36の側周壁40の下方に、密封状態で固着されている。
【0106】
すなわち、羽根ケース68の外周フランジ70が、上側本体ケース36の側周壁40の下端51の内壁と、下側本体ケース48の外周フランジ52との間に挟着されるように、例えば、溶接、ろう付、溶着などによって、密封状態で固着されている。
【0107】
一方、
図2に示したように、羽根ケース68は、吐出側継手部材46側において、その側周壁72に開口部が形成され、この側周壁72の開口部の周囲が、本体ケース34の側周壁40に、吐出側継手部材46とともに、密封状態で固着されている。
なお、吐出側継手部材46は、
図2に示したように、本体ケース34の回転部収容空間S2と連通している。
【0108】
また、
図1に示したように、羽根ケース68は、外周フランジ70から上方に延びた側周壁72と、側周壁72から、羽根車部材16の外側羽根部22に沿うような形状で水平方向内側に延設された延設部74を備えている。
【0109】
このような形状とすることで、羽根ケース68と下側本体ケース48の羽根収容部54との間に、羽根車部材16を収容することができるようになっている。
【0110】
また、
図1、
図2に示したように、羽根ケース68の側周壁72の外径は、上側本体ケース36の側周壁40の内径より小さく形成されている。
【0111】
さらに、上側本体ケース36の頂壁38の一部が中心軸から側周壁72に亘って上部に膨出されている。この膨出した部分が流体導入流路形成部分36aを形成している。そして、羽根ケース68の側周壁72の高さは、上側本体ケース36の流体導入流路形成部分36aの高さより小さく形成されている。
これにより、上側本体ケース36の下面と、下側本体ケース48との間に吸入口42aと連通する間隙が形成されている。
【0112】
これにより、羽根ケース68によって、上側本体ケース36と下側本体ケース48とで形成された内部空間S1が仕切られて、上方に流体導入流路84が形成されるとともに、下方に回転羽根部材12を収容する回転部収容空間S2が形成されている。
【0113】
また、図示しないが、本発明の遠心ポンプ10は、ロータマグネット32の周囲に位置するように、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56の外周に配置され、回転羽根部材12を回転させるコイル部を備えている。
【0114】
このように構成される本発明の遠心ポンプ10は、以下のように作動される。
【0115】
先ず、図示しないコイル部のコイルに電流を流すことによって、コイルが励磁され、これにより、回転羽根部材12のロータマグネット32に作用して、
図2の矢印Hで示したように、反時計方向に、回転羽根部材12が軸受け部14に挿通された軸部材64の周りで回転できるようになっている。
【0116】
これにより、回転羽根部材12が回転して、
図1、
図4の矢印Iで示したように、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、羽根ケース68と上側本体ケース36によって形成された流体導入流路84から、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76を通過する。
【0117】
そして、内周側開口部76を通過した流体は、羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入される。
【0118】
また、回転羽根部材12の羽根車部材16の回転力によって、回転部収容空間S2に導入された流体は、
図2の矢印Jで示したように、本体ケース34の回転部収容空間S2から、吐出側継手部材46の吐出口46aを介して吐出されるようになっている。
【0119】
ところで、このような本発明の遠心ポンプ10では、回転羽根部材12と軸部材64との回転摺動による摩耗や接触音を防止するために、
図1に示したように、回転羽根部材12の下端部12aと、軸固定部材60の上端部60aとの間の軸部材64の周囲に、スラストワッシャー50が介装されている。
【0120】
すなわち、スラストワッシャー50を介装することによって、回転羽根部材12(軸受け部14)と軸部材64の2部材の間の動摩擦を緩和している。このように動摩擦を緩和することによって、回転羽根部材12(軸受け部14)と軸部材64との間の摩耗による異物の発生や接触音の発生を防いでいる。
【0121】
さらに、スラストワッシャー50には、回転羽根部材12に発生するスラスト方向(すなわち、回転軸である軸部材(シャフト)64に向かう方向)の力を緩和する効果もあり、回転羽根部材12(軸受け部14)と、回転軸である軸部材64との間の摩耗を防ぐ作用がある。
【0122】
ところで、従来の遠心ポンプ100では、
図10、
図11に示したように、流体導入流路174において、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aを超えた反対側の延設部分164bと、上側本体ケース126の当接壁部126aとの間に、滞留空間部分125が形成されている。
【0123】
このため、
図12の矢印Mに示したように、吸込側継手部材132から吸い込まれた流体が、流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aの周囲を回る(迂回する)ように通過して、
図10、
図12の矢印Eに示したように、滞留空間部分125に流れてしまうことになる。
【0124】
また、
図10、
図12の矢印Dに示したように、吸込側継手部材132から吸い込まれた流体が、流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aを通過して、
図10、
図12の矢印Eに示したように、滞留空間部分125に流れてしまうこともある。
【0125】
そして、滞留空間部分125に一時滞留した後、
図10、
図11の矢印Fに示したように、滞留空間部分125から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164aを通過することになる。
【0126】
このため、吸込側継手部材132から吸い込まれた流体が、慣性によって、流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164a内に浸入せずに、内周側開口部164a上を通過する(通り過ぎる)流れが発生し、損失が生じて、流量が低下してしまうことになる。
【0127】
このような問題を解決するために、本発明の遠心ポンプ10では、以下のような構成を備えている。
【0128】
すなわち、本発明の遠心ポンプ10では、
図1、
図3〜
図4に示したように、羽根ケース68の流体導入流路84を形成する導入路形成部21が、流体導入流路84から導入された流体を、回転羽根部材12の羽根車部材16に至る内周側開口部76へ導く案内ガイド面23を形成している。
【0129】
このように構成することによって、
図1、
図4の矢印Iで示したように、吸込側継手部材42の吸入口42aから吸い込まれた流体が、流体導入流路84から、案内ガイド面23に案内されて、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76を効率的に通過することになる。
【0130】
そして、内周側開口部76を通過した流体は、羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入されて、回転羽根部材12の羽根車部材16に効率的に導入されることになる。
【0131】
これにより、回転羽根部材12の羽根車部材16の回転力が効率的に流体に伝達され、流体の流れが阻害されることによる圧力損失が生じにくく、吐出流量が低下してしまうことがない。
【0132】
従って、従来の遠心ポンプ100のように、滞留空間部分125が存在しないため、慣性によって、流体導入流路174から、羽根ケース158の内周側開口部164a内に浸入せずに、内周側開口部164a上を通過する(通り過ぎる)流れも発生せず、圧力損失が生じにくくなる。
【0133】
具体的には、この実施例の本発明の遠心ポンプ10では、
図1〜
図4に示したように、案内ガイド面23が、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の内周端部から、羽根車部材16の方向に延設された円筒形状案内部25を備えている。
【0134】
このように構成することによって、流体が、流体導入流路84から、羽根車部材16の方向に延設された円筒形状案内部25から構成される案内ガイド面23に案内される。
【0135】
これにより、円筒形状案内部25に案内された流体の流れは、羽根車部材16へ向かう方向性を持つことなるので、回転部収容空間S2内の余空間に流体が拡散しにくくなり、回転羽根部材12の羽根車部材16にさらに効率的に流体が導入されることになる。
このため、回転羽根部材12の羽根車部材16の回転力が効率的に流体に伝達されることとなり、吐出流量を増加させることができる。
【0136】
この場合、
図4の拡大図に示したように、この実施例の本発明の遠心ポンプ10では、円筒形状案内部25の羽根車部材16の方向の端部25aが、羽根車部材16の上端の位置16aよりも羽根車部材16の方向に延設されている。
【0137】
そして、羽根ケース68の延設部74の底面74cと、羽根車部材16の上端部16bとの間の距離をH1とし、
羽根ケース68の延設部74の底面74cと、円筒形状案内部25の羽根車部材16の方向の端部25aととの間の距離をH2とした場合に、
H1≦H2とするのが望ましい。
【0138】
この場合、
図1、
図4の拡大図に示したように、羽根車部材16の羽根ケース68側の端面は、中心軸に向かうにつれて羽根ケース68の底面74cから離れる傾斜部22aを有している。
また、羽根車部材16の外側羽根部22は、外周縁に連なる平坦部22bと、平坦部22bに接続され中心軸に向かうにつれて高さが小さくなる傾斜部22aとを備えている。
また、
図4に示したように、羽根車部材16の傾斜部22aと、羽根ケース68の延設部74の底面74cとの間に、空間S4が形成されている。
そして、円筒形状案内部25は、この空間S4に向けて突出している。ここで、平坦部22bと羽根ケース68の延設部74の底面74cとの間の距離が、上述のH1となる。
【0139】
なお、この場合、
図13(A)に示したように、羽根車部材16の傾斜部22aは、
図4に示したようなテーパー形状の傾斜面からなる傾斜部22a以外にも、階段状の傾斜部22a、これらのテーパー形状の傾斜面からなる傾斜部22aと、階段状の傾斜部22aとを組み合わせた形状など適宜変更することが可能である。
【0140】
また、
図13(B)に示したように、羽根車部材16の傾斜部22aが形成されておらず、平坦部22bのみから構成することももちろん可能である。
【0141】
なお、内周側開口部76は、回転羽根部材の羽根車部材16の軸部材64近傍に至るように、羽根ケース68に開口形成されている。この場合、「軸部材64近傍」とは、内周側開口部76が、空間S4、傾斜部22a、平坦部22bの内周側部分まで含むように開口形成されてものであって、内周側開口部76が、軸部材64と同軸に開口形成されている場合、内周側開口部76が、軸部材64と同軸ではなく偏って形成されている場合のいずれも含むものである。
【0142】
このように、H1≦H2と設定することによって、
図4の矢印Iで示したように、
内周側開口部76を通過した流体は、円筒形状案内部25の端部25aを介して、羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入されて、回転羽根部材12の羽根車部材16に効率的に導入されることとなり、吐出流量を増加させることができる。
【0143】
なお、この場合、円筒形状案内部25の羽根車部材16の方向の端部25aが、羽根車部材16に接触しない位置まで羽根車部材方向に延設されているのが望ましい。
【0144】
すなわち、羽根車部材16の傾斜部22aと、羽根ケース68の延設部74の底面74cとの間に形成された、空間S4に向けて、円筒形状案内部25が突出されているので、円筒形状案内部25の羽根車部材16の方向の端部25aが、羽根車部材16の上端の位置16aよりも羽根車部材16の方向に延設され、かつ、羽根車部材16に接触しないようにできる。
【0145】
これにより、最も効率良く回転力を流体に与えることができる回転羽根車部材16(外羽根部22)の高さ方向の中心(羽根車部材16の中心軸と並行な方向の中心)に、流体が導入されることとなる。
従って、回転羽根部材12の羽根車部材16の回転力が、効率的に流体に伝達され、吐出流量を増加させることができる。
【0146】
さらに、この場合、本発明の遠心ポンプ10では、
図4の拡大図に示したように、案内ガイド面23の内周開口部23aの直径D1(この実施例の場合には、円筒形状案内部25の内周の直径をD1)とし、
羽根車部材16の内径側に形成された凹部16cの羽根内周端16dの直径をD2とした場合に、
D1>D2
との関係になるように設定されているのが望ましい。
【0147】
これにより、羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入される際に、回転羽根部材12の中心軸近傍だけではなく、羽根車部材16にさらに効率的に導入されることになる。
【0148】
さらに、この場合、本発明の遠心ポンプ10では、
図1〜
図4に示したように、上側本体ケース36の流体導入流路形成部分36aにおいて、導入された流体が当接する当接端部36bを有している。また、当接端部36bが、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の開口端部76aに位置するように形成されているのが望ましい。
なお、当接端部36bは、流体導入流路形成部分36aのうち、流体導入流路84を流れる流体の流れ方向に対して対向する壁面である。
【0149】
なお、
図1〜
図4では、当接端部36bは、鉛直方向に形成したが、何ら限定されるものではなく、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76に向かって傾斜するテーパー形状とするなど適宜変更することが可能である。
【0150】
このように構成することによって、
図1、
図4の拡大図に示したように、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、流体導入流路84から、当接端部36bに当接して、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76をさらに効率的に通過する。
【0151】
従って、従来の遠心ポンプ100のように、吸込側継手部材132から吸い込まれた流体が、慣性によって、流体導入流路174から、羽根ケース158の延設部164の内周側開口部164a内に浸入せずに、内周側開口部164a上を通過する(通り過ぎる)流れが発生しないため、圧力損失が生じにくく、吐出流量が低下してしまうことがない。
【0152】
さらに、この場合、本発明の遠心ポンプ10では、
図2に示したように、羽根ケース68の側周壁72が、水平方向の断面視で、羽根車部材16の回転方向Kにおいて、吐出口46a側の内径が大きくなるように形成されているのが望ましい。
【0153】
すなわち、
図2に示したように、中心Oからの羽根ケース68の側周壁72までの半径Rが、吐出口46aの回転方向Kの上流の側の半径R1から、吐出口46aの回転方向Kの下流の側の半径R2に至って、徐々に大きくなるように形成しているのが望ましい。
【0154】
このように構成することによって、流体が羽根ケース68の側周壁72の内壁に沿って流れやすくなるので吐出口46aから流体が吐出されやすくなる。
【0155】
さらに、この場合、本発明の遠心ポンプ10では、
図2に示したように、回転部収容空間S2から流体が吐出される吐出口46aが、水平方向の断面視で、羽根車部材16の回転方向Kにおいて、側周壁部分68aの接線方向Pに形成されているのが望ましい。
【0156】
このように構成することによって、羽根車部材16によって回転力を与えられた流体が回転部収容空間S2から吐出口46aに、さらに吐出されやすくなる。
【0157】
さらに、この場合、本発明の遠心ポンプ10では、
図2に示したように、羽根ケース68の側周壁72が、水平方向の断面視で、羽根車部材16の回転方向Kにおいて、吐出口側46aの内径が大きくなる部分の上流側に、略直線案内面27を備えているのが望ましい。
例えば、この実施例のように、
図2に示したように、羽根ケース68の側周壁72が、水平方向の断面視で、羽根車部材16の回転方向Kにおいて、半径R1の部分とR2の部分とが、略直線案内面27によって接続されているのが望ましい。
【0158】
なお、この略直線案内面27の形状は、後述するような、吐出口46aから流体が吐出されやすくなる効果を奏する形状であれば良く、例えば、湾曲した直線形状、円弧形状など適宜変更することが可能である。
【0159】
このように構成することによって、吐出口側46aの内径が大きくなる部分の内壁に沿って流れやすくなり、吐出口46aから流体が吐出されやすくなる。
具体的には、例えば、半径R1とR2へと曲率が変化する場合であっても、半径R2の部分の内壁に沿って流れやすくなり、吐出口46aから流体が吐出されやすくなる。
【0160】
さらに、この場合、本発明の遠心ポンプ10では、
図2に示したように、羽根ケース68の側周壁72の吐出口46aと固着部分である外周フランジ70には、羽根車部材16の回転方向Kの下流側に、半径方向に延設された流れ制御側壁部70aが形成されているのが望ましい。
【0161】
このように構成することによって、
図2に示したように流れ制御側壁部70aに囲まれた流体を溜める流れ制御空間S3が形成されている。
【0162】
そして、回転羽根部材12の羽根車部材16に回転によって、流体が矢印Qで示したように、流れ制御側壁部70aに案内されて、羽根ケース68内の側の流体圧力が上昇し、流量が増える効果と、前述したような吐出口46aの方向に流体がさらに効率的に導かれる効果に優れることになる。
【0163】
なお、
図3に示したように、上側本体ケース36の流体導入流路形成部分36aにおいて、導入された流体が当接する当接端部36bは、上側本体ケース36の流体導入流路形成部分36aの内径T1を、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の内径T2と略同様の大きさにしても良い。
【0164】
しかしながら、
図5に示したように、上側本体ケース36の流体導入流路形成部分36aにおいて、導入された流体が当接する当接端部36bは、上側本体ケース36の流体導入流路形成部分36aの内径T1を、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の内径T2よりも大きく形成するようにしても良い。
(実施例2)
【0165】
図6は、本発明の遠心ポンプの他の実施例を示す、
図1と同様な遠心ポンプのU部の部分拡大縦断面図である。
【0166】
この実施例の遠心ポンプ10は、
図1〜
図5に示した実施例1の遠心ポンプ10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0167】
この実施例の遠心ポンプ10は、
図6に示したように、円筒形状案内部25の羽根車部材16の方向の端部25aが、裁頭形状であって、導入側の円筒形状案内部25の端部25bの長さの方が、短くなるように形成されている。
(実施例3)
【0168】
図7は、本発明の遠心ポンプの他の実施例を示す、
図1と同様な遠心ポンプのU部の部分拡大縦断面図である。
【0169】
この実施例の遠心ポンプ10は、
図1〜
図5に示した実施例1の遠心ポンプ10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0170】
この実施例の遠心ポンプ10は、案内ガイド面23が、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の内周端部に向かって傾斜するテーパー傾斜面29を形成している。
【0171】
なお、テーパー傾斜面29の傾斜開始位置は、特に限定されるものではない。例えば、
図7に示したように、羽根ケース68の延設部74の当接端部36bに相当位置する位置から、内周側開口部76までとするなど適宜変更することが可能である。
また、テーパー傾斜面29の傾斜開始位置は、吸込側継手部材42側(導入側)の方が、テーパー傾斜面29の長さが長くなるように偏った形状とすることも可能である。
【0172】
このように構成することによって、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の内周端部に向かって傾斜するテーパー傾斜面29である案内ガイド面23を介して、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、流体導入流路84から、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76をさらに効率的に通過して羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入されて、回転羽根部材12の羽根車部材16にさらに効率的に導入されることになる。
【0173】
なお、この場合、羽根ケース68の延設部74とテーパー傾斜面29の成す傾斜角度αは、特に限定されるののではない。
しかしながら、前述したように、テーパー傾斜面29である案内ガイド面23を介して、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、流体導入流路84から、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76をさらに効率的に通過して羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入するためには、例えば、羽根車部材16の上端部分の傾斜角度よりも大きい角度となっており、5°〜50°、好ましくは、15°〜45°と設定するのが望ましい。
【0174】
このように構成することによって、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の内周端部に向かって傾斜するテーパー傾斜面29である案内ガイド面23を介して、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、流体導入流路84から、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76をさらに効率的に通過して羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入されて、回転羽根部材12の羽根車部材16にさらに効率的に導入されることになる。
(実施例4)
【0175】
図8は、本発明の遠心ポンプの他の実施例を示す、
図1と同様な遠心ポンプのU部の部分拡大縦断面図である。
【0176】
この実施例の遠心ポンプ10は、
図1〜
図5に示した実施例1の遠心ポンプ10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0177】
この実施例の遠心ポンプ10は、
図8に示したように、案内ガイド面23が、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の内周端部に向かって段階的に傾斜するテーパー傾斜面23bを形成している。
【0178】
このように、案内ガイド面23が、羽根ケース68に開口形成された内周側開口部76の内周端部に向かって段階的に傾斜するテーパー傾斜面23bを形成していても良い。
【0179】
この場合、段階的に傾斜するテーパー傾斜面23bとしては、
図8に示したように、階段状に階的に傾斜するテーパー傾斜面23b、図示しないが、複数のテーパー傾斜面23bの傾斜角度が、徐々に傾斜するように形成するなど、特に限定されるものではない。
【0180】
なお、テーパー傾斜面23bの傾斜開始位置は、特に限定されるものではない。例えば、
図8に示したように、テーパー傾斜面23bの傾斜開始位置は、羽根ケース68の延設部74の当接端部36bに相当位置する位置から、内周側開口部76までとするなど適宜変更することが可能である。
また、テーパー傾斜面29の傾斜開始位置は、吸込側継手部材42側(導入側)の方が、テーパー傾斜面29の長さが長くなるように偏った形状とすることも可能である。
【0181】
これにより、段階的に傾斜するテーパー傾斜面23bを介して、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、流体導入流路84から、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部76をさらに効率的に通過して羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入されて、回転羽根部材12の羽根車部材16にさらに効率的に導入されることになる。
(実施例5)
【0182】
図9は、本発明の遠心ポンプを用いた冷却システム300の実施例を示す概略図である。
【0183】
この実施例の冷却システム300で用いられる遠心ポンプ10は、
図1〜
図8に示した実施例の遠心ポンプ10と基本的には同様な構成である。
【0184】
この実施例の冷却システム300は、
図9に示したように、被冷却物体を冷却するための熱媒体循環経路302を備えた冷却システム300において、熱媒体循環経路302に遠心ポンプ10を配設した構成である。
【0185】
すなわち、この実施例の冷却システム300は、熱媒体循環経路302に、遠心ポンプ10を備えており、熱媒体が、この遠心ポンプ10によって、例えば、水などの熱媒体が熱媒体循環経路302aを介して、ラジエータ304に送られるようになっている。
【0186】
ラジエータ304では、図示しないが、例えば、ファンなどによる空冷、水冷などによって、熱媒体が冷却されるようになっている。
【0187】
そして、このラジエータ304を通過して冷やされた熱媒体が、熱媒体循環経路302b、302cを介して、熱交換器306に送られるようになっている。この熱交換器306には、冷却される被冷却物体308が付設されており、被冷却物体308の熱が、熱媒体に熱交換されて、被冷却物体308が冷却されるとともに、熱媒体が温められるようになっている。
【0188】
そして、熱交換器306を通過することにより温められた熱媒体が、熱媒体循環経路302a、302bを介して、再び、遠心ポンプ10に循環されるようになっている。
【0189】
そして、このような循環冷却サイクルが繰り返し行われるように構成されている。
【0190】
このように構成することによって、例えば、流体の循環を利用して発熱部品、機器などの冷却を補助するシステムに使用した場合に、耐久性、作動性に優れ、異音が発生することがなく、静音性に優れた冷却システムを提供することができる。
【0191】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、本体ケース34、上側本体ケース36、下側本体ケース48、羽根ケース68、回転羽根部材12、スラストワッシャー50、軸部材64などの材質は、金属製であっても樹脂製であっても良く、用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0192】
また、上記実施例では、いわゆる「片持ち形式」について説明したが、従来のいわゆる「両持ち形式」のように、羽根ケースの内周側開口部に軸固定部が存在する遠心ポンプ10に適用することも可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。