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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-180654(P2020-180654A)
(43)【公開日】2020年11月5日
(54)【発明の名称】膨張弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 49/00 20060101AFI20201009BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20201009BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20201009BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20201009BHJP
【FI】
   F16K49/00 B
   F25B1/00 304K
   F25B41/06 Q
   F16K31/68 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-84473(P2019-84473)
(22)【出願日】2019年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
(72)【発明者】
【氏名】當山 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
【テーマコード(参考)】
3H057
3H066
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB06
3H057CC06
3H057DD05
3H057EE03
3H057FB09
3H057FC01
3H057HH01
3H057HH11
3H066AA01
3H066BA36
(57)【要約】
【課題】適切に過熱度制御することができる膨張弁および冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】一次ポート221から受け入れた冷媒の熱を駆動エレメント6に伝達することで、操作室66を加熱することができ、操作室66内の温度が感温筒7の温度よりも低くなることを抑制し、操作室66内において冷媒を凝縮しにくくすることができる。従って、感温筒7における温度変化に応じてダイヤフラム63を適切に変形させて弁体5を駆動し、蒸発器13の出口側温度に応じて弁ポート431の開度を調節し、適切に過熱度制御することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス封入方式の温度膨張弁であって、
凝縮器からの高圧の冷媒を受け入れる一次ポートと、
前記一次ポートから流入した冷媒を通過させる弁ポートを有する弁本体と、
前記弁本体に移動自在に設けられて前記弁ポートの開度を変更する弁体と、
ダイヤフラムおよび操作室を有して前記弁体を駆動する駆動エレメントと、
蒸発器の出口側温度に応じて封入ガスにより前記操作室の内圧を変化させる感温筒と、
前記弁ポートを通過した冷媒を前記蒸発器に送り出す二次ポートと、を備え、
前記一次ポートから受け入れた冷媒の熱を前記弁本体および前記駆動エレメントの少なくとも一方に伝達する熱伝達手段を備えることを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
前記弁本体を収容するとともに前記一次ポートおよび前記二次ポートが形成されるハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記弁本体を収容する収容部と、前記一次ポートに連続して冷媒が滞留する滞留空間と、前記滞留空間と前記収容部とを連通させて冷媒を当該収容部に送る連通流路と、前記滞留空間と前記収容部とを区画する界壁と、を備え、
前記熱伝達手段は、前記界壁を介して前記滞留空間内の冷媒の熱を前記弁本体および前記駆動エレメントの少なくとも一方に伝達することを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項3】
前記収容部は、前記一次ポートにおける冷媒の導入方向に沿って延びるとともに、前記一次ポート側において前記連通流路と連通し、前記一次ポートから離れた側において前記駆動エレメントが設けられ、
前記滞留空間は、前記連通流路よりも前記一次ポートから離れた位置まで延びていることを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項4】
前記滞留空間は、前記弁ポートよりも前記一次ポートから離れた位置まで延びていることを特徴とする請求項3に記載の膨張弁。
【請求項5】
前記滞留空間は、前記二次ポートよりも前記一次ポートから離れた位置まで延びていることを特徴とする請求項3又は4に記載の膨張弁。
【請求項6】
前記ハウジングは金属製であり、前記弁本体は前記ハウジングの金属よりも熱伝導率の低い樹脂製であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の膨張弁。
【請求項7】
前記弁本体、前記弁体、前記駆動エレメントおよび前記感温筒を一組の弁組体とする複数の弁組体を備え、
前記ハウジングには、1個の前記一次ポートと前記弁組体ごとに前記二次ポートとが形成されるとともに、前記弁組体ごとに前記収容部が形成されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の膨張弁。
【請求項8】
冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させて減圧する請求項1〜7のいずれか1項に記載の膨張弁と、減圧した冷媒を蒸発させる1又は複数の蒸発器と、を備えることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス封入方式の膨張弁および該膨張弁を備えた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度式膨張弁として、一次ポートから弁ポートを通過させて二次ポートに至る流路と、熱源と熱交換した冷媒を通過させる流路と、が1つの弁本体に形成された所謂ブロック式の膨張弁が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1、2に記載された膨張弁では、作動室にガスが封入されており、熱源と熱交換した冷媒が流路を通過することで、封入ガスに熱伝達されて弁体が駆動され、弁ポートの開度が調節されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−066733号公報
【特許文献2】特開2004−053182号公報
【特許文献3】特開平06−117731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたようなブロック式の膨張弁では、熱源と熱交換した冷媒を通過させるために、弁本体に接続される配管の本数が増大する。このとき、配管と弁本体との間にOリング等を設けて気密性を保つ必要があるものの、Oリングの劣化等によって冷媒が漏れ出す可能性があった。配管の本数が多くなるほど、冷媒漏れが生じる可能性が高くなる。
【0005】
これに対し、温度式膨張弁として、ダイヤフラム室(駆動エレメントの操作室)と、感温筒と、を備えたガス封入式の膨張弁が提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に記載された膨張弁では、ダイヤフラム室に冷媒(封入ガス)が封入されるとともに、蒸発器の出口側に感温筒が設けられ、感温筒とダイヤフラム室とがキャピラリチューブによって接続される。これにより、蒸発器の出口側温度に応じてダイヤフラム室の内圧が変化し、膨張弁の流出孔(弁ポート)を通過する冷媒量が調節されるようになっている。感温筒付の膨張弁では、ブロック式の膨張弁と比較して、接続される配管数が少なく、冷媒漏れが生じにくい。
【0006】
温度式膨張弁におけるチャージ(封入)方式としては、各種方式が知られており、その中に、吸着チャージ(Cチャージ)式とガス封入(Gチャージ)式とが存在する。吸着チャージ式では、封入ガスが凝縮しにくいという利点があるものの、発熱量が著しく変化する環境下で使用する場合、蒸発温度変化が大きいと過熱度偏差が大きくなってしまうため、蒸発温度により過熱度が大きく変わってしまい、冷凍効率が悪くなるという不都合があった。
【0007】
そこで、発熱量の変化が大きい環境下でも冷凍効率を高く保つために、過熱度偏差が小さいガス封入式を採用することが望まれていた。しかしながら、ガス封入式において正確な過熱度制御を行うためには、駆動エレメントの温度(上蓋やダイヤフラム、下蓋等の各部の温度)を感温筒の温度よりも常に高くし、封入ガスが感温筒側においてのみ凝縮するような構成とする必要があった。
【0008】
本発明の目的は、適切に過熱度制御することができる膨張弁および冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の膨張弁は、ガス封入方式の温度膨張弁であって、凝縮器からの高圧の冷媒を受け入れる一次ポートと、前記一次ポートから流入した冷媒を通過させる弁ポートを有する弁本体と、前記弁本体に移動自在に設けられて前記弁ポートの開度を変更する弁体と、ダイヤフラムおよび操作室を有して前記弁体を駆動する駆動エレメントと、蒸発器の出口側温度に応じて封入ガスにより前記操作室の内圧を変化させる感温筒と、前記弁ポートを通過した冷媒を前記蒸発器に送り出す二次ポートと、を備え、前記一次ポートから受け入れた冷媒の熱を前記弁本体および前記駆動エレメントの少なくとも一方に伝達する熱伝達手段を備えることを特徴とする。
【0010】
以上のような本発明によれば、熱伝達手段によって、弁本体および駆動エレメントの少なくとも一方に冷媒の熱が伝達されることで、駆動エレメントの操作室内の温度が感温筒の温度よりも低くなることを抑制し、操作室内において冷媒を凝縮しにくくすることができる。従って、感温筒における温度変化に応じてダイヤフラムを適切に変形させて弁体を駆動し、蒸発器の出口側温度に応じて弁ポートの開度を調節し、適切に過熱度制御することができる。
【0011】
この際、本発明の膨張弁では、前記弁本体を収容するとともに前記一次ポートおよび前記二次ポートが形成されるハウジングを備え、前記ハウジングは、前記弁本体を収容する収容部と、前記一次ポートに連続して冷媒が滞留する滞留空間と、前記滞留空間と前記収容部とを連通させて冷媒を当該収容部に送る連通流路と、前記滞留空間と前記収容部とを区画する界壁と、を備え、前記熱伝達手段は、前記界壁を介して前記滞留空間内の冷媒の熱を前記弁本体および前記駆動エレメントの少なくとも一方に伝達することが好ましい。このような構成によれば、一次ポートからハウジング内に導入された冷媒は、滞留空間、連通流路および収容部をこの順で通過し、二次ポートに向かう。このとき、滞留空間を通過する冷媒によって弁本体および駆動エレメントの少なくとも一方に熱を伝達し、操作室内の温度低下を抑制することができる。
【0012】
さらに、本発明の膨張弁では、前記収容部は、前記一次ポートにおける冷媒の導入方向に沿って延びるとともに、前記一次ポート側において前記連通流路と連通し、前記一次ポートから離れた側において前記駆動エレメントが設けられ、前記滞留空間は、前記連通流路よりも前記一次ポートから離れた位置まで延びていることが好ましい。このような構成によれば、一次ポートからハウジング内に導入された冷媒は、一次ポートから離れるように進行した後、滞留空間内で向きを変え、一次ポートに近づくように進行してから連通流路を通過して収容部に向かう。このように、一次ポートから収容部に向かって直接的に冷媒が流れるようにするのではなく、冷媒を一次ポートから離れた位置まで一旦進行させることにより、一次ポートから離れた位置に配置される駆動エレメントの操作室内の温度低下を抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明の膨張弁では、前記滞留空間は、前記弁ポートよりも前記一次ポートから離れた位置まで延びていることが好ましく、前記滞留空間は、前記二次ポートよりも前記一次ポートから離れた位置まで延びていることがより好ましい。即ち、滞留空間が駆動エレメントの近傍まで延びているほど、操作室内の温度低下を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の膨張弁では、前記ハウジングは金属製であり、前記弁本体は前記ハウジングの金属よりも熱伝導率の低い樹脂製であることが好ましい。このような構成によれば、滞留空間内の冷媒と駆動エレメントとがハウジングを介して熱伝達されやすく、弁ポートを通過することで膨張して温度低下した冷媒と駆動エレメントとが断熱されやすい。これにより、操作室の温度低下を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の膨張弁では、前記弁本体、前記弁体、前記駆動エレメントおよび前記感温筒を一組の弁組体とする複数の弁組体を備え、前記ハウジングには、1個の前記一次ポートと前記弁組体ごとに前記二次ポートとが形成されるとともに、前記弁組体ごとに前記収容部が形成されることが好ましい。このような構成によれば、ハウジングに形成された滞留空間に冷媒が導入されることにより、複数の弁組体における弁本体および駆動エレメントのいずれか一方を加熱することができる。
【0016】
本発明の冷凍サイクルシステムは、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させて減圧する上記いずれかに記載の膨張弁と、減圧した冷媒を蒸発させる1又は複数の蒸発器と、を備えることを特徴とする。このような本発明によれば、上記のように膨張弁において操作室を加熱することにより、蒸発器の出口側温度に応じて弁ポートの開度を調節し、流量調節することができ、冷凍サイクルシステムにおいて適切に過熱度制御することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の膨張弁および冷凍サイクルシステムによれば、熱伝達手段によって、弁本体および駆動エレメントの少なくとも一方に冷媒の熱が伝達されることで、駆動エレメントの操作室内の温度が感温筒の温度よりも低くなることを抑制し、蒸発器の出口側温度に応じて弁ポートの開度を調節でき、適切に過熱度制御することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクルシステムを示すシステム図である。
図2】前記冷凍サイクルシステムに設けられる膨張弁を示す断面図である。
図3】本発明の変形例の膨張弁を示す断面図である。
図4】本発明の他の変形例の膨張弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の冷凍サイクルシステム100Aは、図1に示すように、冷媒を膨張させて減圧する膨張弁10と、冷媒を圧縮する圧縮機11と、冷媒を凝縮する凝縮器12と、冷媒を蒸発させる蒸発器13と、を備える。この冷凍サイクルシステム100Aは、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、空気調和機等に用いられる。尚、本実施形態では、鉛直方向をZ方向とし、水平面に沿うとともに互いに直交する2方向をX方向およびY方向とする。
【0020】
膨張弁10は、図2に示すように、1つのハウジング2と、2つの弁組体3A、3Bと、を有するガス封入方式の温度膨張弁である。ハウジング2は、ハウジング本体21と、入口コネクタ22と、を別体に有する。尚、膨張弁に設けられる弁組体の数および後述する二次ポートの数は、蒸発器の数に応じたものであればよく、3以上であってもよい。
【0021】
ハウジング本体21は、全体が金属部材によって構成されるとともに、Z方向下方側に開口した入口開口部211と、Z方向上方側に開口した2つの収容部212と、Y方向に開口した2つの二次ポート213と、凹部214と、連通流路215と、を有する。2つの収容部212は、それぞれZ方向(後述する一次ポート221における冷媒の導入方向)に沿って延びる筒状に形成され、Z方向下方の小径部212Aと上方の大径部212Bとを有しており、大径部212Bにおいて、各収容部212に対応した二次ポート213と連通している。
【0022】
入口コネクタ22は、全体が金属部材によって構成されるとともに、凝縮器12の出口側に接続される一次ポート221が形成されている。入口コネクタ22がハウジング本体21の入口開口部211に取り付けられる。尚、ハウジング本体21と入口コネクタ22との間にはOリング23が設けられ、ハウジング2内部の気密性が保たれる。
【0023】
ハウジング本体21には、入口開口部211からZ方向上方側(一次ポート221から離れた側)に向かって延びるように、凹部214が形成され、凹部214の内側が滞留空間となる。凹部214は、底部(Z方向上方側)214Aに向かうにしたがって内径が小さくなるすり鉢形状を有している。収容部212の小径部212Aは、Z方向下方側(一次ポート221側)端部に開口部212Cを有する。凹部214の開口側において入口コネクタ22の上面に沿って開口部212Cに向かって延びる流路が、凹部214と収容部212とを連通させる連通流路215となる。また、収容部212と凹部214とはX方向に並んでおり、ハウジング本体21は、収容部212と凹部214とを区画する界壁216を有する。
【0024】
即ち、一次ポート221からハウジング2内に導入された冷媒は、一次ポート221に連続した凹部214内に滞留した後、連通流路215を通過して収容部212に送り込まれ、後述する弁ポート431を通過して二次ポート213に向かうようになっている。このとき、ハウジング2は、弁組体3A、3Bの各収容部212に対応した計2つの連通流路215と、2つの連通流路215の全てと連通した1つの凹部214と、を有しており、即ち、凹部214は、2つの収容部212に共通して設けられている。尚、一次ポート221からハウジング2内に導入された冷媒の一部が、凹部214を経由せずに収容部212に流れ込んでもよい。
【0025】
弁組体3A、3Bは、いずれも同様の構成を有しており、以下では弁組体3Aについて説明する。弁組体3Aは、弁本体4と、弁体5と、駆動エレメント6と、感温筒7と、によって構成される。
【0026】
弁本体4は、樹脂部材によって構成され、ハウジング本体21の収容部212に収容される。弁本体4のうち小径部212Aに収容される下側部分41は、Z方向を軸方向とする円筒状に形成され、側面に開口部411を有するとともに下端開口に調節ねじ51が設けられ、調節ばね52および弁体5を収容する。
【0027】
弁本体4のうち大径部212Bに収容される上側部分42は、後述する弁座部43の上方においてZ方向に沿って延びる筒状の案内部422と、案内部422に略直交するように延びる冷媒通過部423と、上面に形成された溝状のばね収容部424と、を有する。後述する下蓋62が弁本体4にインサート成形されることにより、下蓋62の一部である弁座部43が下側部分41の内側空間の上方に配置される。ばね収容部424と冷媒通過部423とは、均圧孔によって連通されている。尚、ばね収容部424と冷媒通過部423とは、案内部422と後述する連結棒8との間の微小な隙間により連通されていてもよく、この場合には均圧孔が形成されていなくてもよい。即ち、ばね収容部424に適宜な量の冷媒が導入されるような構成とされていればよい。
【0028】
案内部422の内側には、連結棒8が配置され、連結棒8はZ方向に沿って移動するように案内される。連結棒8の下端部は、弁ポート431を通過可能な外径を有するように先細り形状となっている。
【0029】
弁体5は、上面が閉塞されて下面が開口した有底筒状に形成され、上端に形成されたニードル部53が後述する弁座部43に対して接近または離隔することで弁ポート431の開度が調節されるようになっている。調節ばね52は、弁体5に対して下方に設けられて上方への付勢力を付与し、調節ねじ51によってこの付勢力が調節可能となっている。また、弁体5の上面部には貫通孔54が形成されており、上面部の両側空間(筒の内側空間およびその上方空間)が連通するようになっている。弁体5の筒部が下側部分41の上部によって案内されることにより、弁体5は弁本体4に対してZ方向に移動自在となっている。
【0030】
連結棒8の先端は、弁体5のニードル部53の先端と常に当接する。後述するように駆動エレメント6によって連結棒8がZ方向に駆動されることにより、弁体5が連結棒8に従動してZ方向に移動する。これにより、弁ポート431に対するニードル部53の位置が調節されるようになっている。
【0031】
弁本体4とハウジング本体21との間には、下側部分41の上端部に対応する位置と、上側部分42の上端部に対応する位置と、のそれぞれにOリング44、45が設けられている。これにより、収容部212の外部空間に対する気密性が保たれる。また、小径部212A内の空間と大径部212B内の空間とが弁ポート431以外において連通しないようになっている。
【0032】
膨張弁10において、一次ポート221は凝縮器12から冷媒を受け入れ、この冷媒は、収容部212に導入された後、弁本体4の下側部分41の開口部411および調節ねじ51の貫通孔511、弁体5の貫通孔54、弁ポート431および冷媒通過部423をこの順で通過し、二次ポート213から蒸発器13に送り出される。尚、本実施形態では、下側部分41の開口部411および調節ねじ51の貫通孔511の両方により、下側部分41内に冷媒を導入しているが、開口部411と貫通孔511とのうちいずれか一方のみを形成し、一方のみにより下側部分41内に冷媒を導入する構成としてもよい。
【0033】
駆動エレメント6は、上蓋61と、下蓋62と、ダイヤフラム63と、を有し、当金64および連結棒8を介して弁体5を駆動する。平面視円状のダイヤフラム63の外縁部が上蓋61と下蓋62とによって挟み込まれて溶接されることにより、ダイヤフラム63と上蓋61との間に操作室66が形成される。
【0034】
下蓋62は、プレス加工により成形され、Z方向に沿って延びる孔付筒部と、弁座部43を構成する孔付有底部と、を有し、この筒部および有底部が弁本体4にインサート成形されている。当金64は、ダイヤフラム63の下面に設けられるとともに、連結棒8の上端部がカシメ等により接続される。即ち、ダイヤフラム63の変形が、当金64を介して連結棒8に伝達されるようになっている。
【0035】
また、弁本体4にはコイルばね65が配置され、コイルばね65は、弁本体4のばね収容部424に収容され、その上端部が当金64に当接する。即ち、コイルばね65は、当金64を介してダイヤフラム63に対して上方への付勢力を付与する。
【0036】
操作室66の内圧が上昇または低下すると、操作室66が膨張または収縮するようにダイヤフラム63が変形する。ダイヤフラム63の変形に伴い、連結棒8がZ方向に移動する。具体的には、例えば、操作室66の内圧が低下した場合、ダイヤフラム63に対して上側から加わる下方向への力(内圧相当荷重)が低下し、ダイヤフラム63に対して下側から加わる上方向への力(二次圧力相当荷重とコイルばね65の荷重と調節ばね52の荷重との総和)を下回ると、操作室66が収縮するようにダイヤフラム63が変形する。これにより、連結棒8がZ方向上側に移動し、弁開度が小さくなる。
【0037】
ハウジング本体21には、抜け止め部材67が取り付けられており、上蓋61の外縁部の上面が抜け止め部材67によって係止されることにより、駆動エレメント6および弁本体4が収容部212から脱落しないようになっている。尚、抜け止め部材67は、例えばバネ材により構成されることで弾性を有することにより、Z方向において駆動エレメント6をハウジング本体21に押し付けるような力を付与し、これにより駆動エレメント6をハウジング本体21に密着させて隙間が生じないようにすることが好ましい。
【0038】
感温筒7は、蒸発器13の出口近傍に配置される。感温筒7の内部空間と操作室66の内部空間とは、キャピラリチューブ9を介して連通するとともに封入ガスが封入されている。尚、封入ガスは、冷凍サイクルシステム100Aにおいて循環する装置冷媒と同一のガスであってもよいし、装置冷媒と同一または類似した温度圧力特性を有するガスであってもよいし、不活性ガスが混合されていてもよい。
【0039】
感温筒7内の封入ガスは、蒸発器13の出口側温度に応じて温度変化し、感温筒7の内圧が変化する。これに伴い、キャピラリチューブ9を介して操作室66の内圧も変化し、上記のようにダイヤフラム63が変形する。
【0040】
ハウジング2は、1個の一次ポート221および弁組体3A、3Bごとに二次ポート213を有する(計2個の二次ポート213を有する)とともに、2つの弁組体3A、3Bの弁本体4、弁体5および駆動エレメント6を収容する。これにより、ハウジング2および弁組体3A、3Bが膨張弁ユニットを構成する。尚、本実施形態ではハウジング2が1個の一次ポート221を有するものとするが、ハウジングが複数の一次ポートを有していてもよい。例えば、2個の一次ポートに対してそれぞれ2つの弁組体および2個の二次ポート(計4つの弁組体および計4個の二次ポート)が設けられる構成としてもよいし、4個の一次ポートに対してそれぞれ1つの弁組体および1個の二次ポート(計4つの弁組体および計4個の二次ポート)が設けられる構成としてもよい。このとき、ハウジングは、冷凍サイクルシステムに設けられる蒸発器の数に応じた(例えば同数)の二次ポートを有していればよい。
【0041】
以下に、ハウジング2における冷媒の流れおよび熱伝達の詳細について説明する。一次ポート221からハウジング2に導入された冷媒は、拡散されつつZ方向上方側に進行する。この冷媒は、凹部214の底部214Aまたは界壁216に衝突し、進行方向を変えたりその場に滞留したりする。進行方向を変えた冷媒は、Z方向下方側に進行して連通流路215に到達すると、収容部212に流れ込む。
【0042】
このように冷媒が凹部214に流れたり滞留したりすることにより、ハウジング本体21のうち凹部214の底部214Aに位置する部分や、界壁216に冷媒の熱が伝達される。ハウジング本体21と駆動エレメント6の下蓋62とが接触していることにより、冷媒の熱がハウジング本体21を介して駆動エレメント6に伝達され、操作室66内の封入ガスが加熱される。
【0043】
即ち、凹部214が形成されていることにより、冷媒が駆動エレメント6の近傍にまで流れることができ、駆動エレメント6に熱が伝達されやすくなっている。従って、凹部214が、一次ポート221から受け入れた冷媒の熱を駆動エレメント6に伝達する熱伝達手段として機能する。
【0044】
二次ポート213は、大径部213Aおよび小径部213Bを有し、大径部213Aおよび小径部213Bのそれぞれの内側に位置するように出口コネクタが取り付けられ、出口コネクタの内径が有効二次ポート径となる。有効二次ポート径は、冷媒通過部423の内径と略等しい。本実施形態では、凹部214の底部214Aは、大径部213Aの上端よりもZ方向上方側に位置している。即ち、滞留空間は、二次ポート213よりも一次ポート221から離れた位置まで延びている。
【0045】
尚、凹部214は深く形成されているほど駆動エレメント6に熱伝達しやすい一方で、凹部214と駆動エレメント6との間においてハウジング本体21が薄くなり、強度が低下しやすい。従って、凹部214の深さは、熱伝達性能と強度とのバランスに応じて適宜に設定されればよく、底部214Aが小径部213Bの上端よりもZ方向上方に配置される構成としてもよいし、冷媒通過部423の上端よりもZ方向上方に配置される構成としてもよいし、弁ポート431よりもZ方向上方に配置される構成としてもよい。
【0046】
上記のように冷媒の熱が駆動エレメント6に伝達されることで、弁ポート431を通過することで膨張して温度低下した冷媒が、ばね収容部424に導入されても、操作室66内の封入ガスの温度が低下しにくい。さらに、蒸発器13の出口側において冷却される感温筒7内の封入ガスの温度よりも、操作室66内の封入ガスの温度を高く保ちやすい。
【0047】
ここで、膨張弁10の詳細な動作について説明する。まず、蒸発器13の出口側温度が低下した場合、感温筒7内の封入ガスの温度が低下し、感温筒7の内圧が低下する。これにより、操作室66の内圧も低下し、操作室66が収縮するようにダイヤフラム63が上方に向かって変形する。ダイヤフラム63の変形に伴い、連結棒8が上方に向かって移動し、さらに弁体5も上方に向かって移動する。即ち、弁体5のニードル部53が弁座部43に接近し、弁ポート431の開度が小さくなり、通過する冷媒の流量が減少する。このように、蒸発器13の出口側温度が低下した場合には、膨張弁10を通過する冷媒の流量が減少し、膨張弁10による冷却作用が低下する。
【0048】
一方、蒸発器13の出口側温度が上昇した場合、感温筒7内の封入ガスの温度が上昇し、感温筒7の内圧が上昇する。これにより、操作室66の内圧も上昇し、操作室66が膨張するようにダイヤフラム63が下方に向かって変形する。ダイヤフラム63の変形に伴い、連結棒8が下方に向かって移動し、さらに弁体5も下方に向かって移動する。即ち、弁体5のニードル部53が弁座部43から遠ざかり、弁ポート431の開度が大きくなり、通過する冷媒の流量が増加する。このように、蒸発器13の出口側温度が上昇した場合には、膨張弁10を通過する冷媒の流量が増加し、膨張弁10による冷却作用が上昇する。
【0049】
以上の本実施形態によれば、ガス封入式の温度膨張弁において、一次ポート221から受け入れた冷媒の熱を駆動エレメント6に伝達することで、操作室66を加熱することができ、操作室66内の温度が感温筒7の温度よりも低くなることを抑制し、操作室66内において冷媒を凝縮しにくくすることができる。従って、感温筒7における温度変化に応じてダイヤフラム63を適切に変形させて弁体5を駆動し、蒸発器13の出口側温度に応じて弁ポート431の開度を調節し、適切に過熱度制御することができる。
【0050】
また、内側が滞留空間となる凹部214が熱伝達手段として機能することで、一次ポート221からハウジング2内に導入された冷媒が、収容部212を通過して二次ポート213に向かう際に、冷媒が凹部214を通過し、駆動エレメント6に熱を伝達して操作室66を加熱することができる。
【0051】
また、収容部212がZ方向下方側において連通流路215と連通し、凹部214の底部214Aが連通流路215よりもZ方向上方側に配置されていることで、一次ポート221からハウジング2内に導入された冷媒は、一次ポート221から一旦離れるように進行した後、凹部214の内で向きを変え、一次ポート221に近づくように進行してから連通流路215を通過して収容部212に向かう。これにより、Z方向上方側に配置された駆動エレメント6を加熱しやすい。
【0052】
また、ハウジング2が金属製であり且つ弁本体4が樹脂製であることで、凹部214内の冷媒と駆動エレメント6とがハウジング2を介して熱伝達されやすく、弁ポート431を通過することで膨張して温度低下した冷媒と駆動エレメント6とが断熱されやすい。これにより、操作室66の温度低下を抑制することができる。
【0053】
また、1つのハウジング2に2つの収容部212が形成されるとともに1つの凹部214が形成され、各収容部212に弁組体3A、3Bの弁本体4と弁体5と駆動エレメント6とが収容されることで、ハウジング2に形成された凹部214に冷媒が導入されることにより、2つの弁組体3A、3Bにおける駆動エレメント6を加熱することができる。
【0054】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、膨張弁10において1つのハウジング2と2つの弁組体3A、3Bとによって膨張弁ユニットが構成されるものとしたが、例えば図3に示すように、1つのハウジング2Bに対して1つの弁組体3Aのみが設けられる構成としてもよい。即ち、蒸発器の数に応じた適宜な数の弁組体を設ければよい。
【0055】
また、前記実施形態では、ハウジング本体21に凹部214が形成され、この凹部214に冷媒が進入可能であるものとしたが、図4に示すように、凹部214に例えばハウジング本体21の金属よりも熱伝導率が高い金属製の伝熱部材200を充填することにより、冷媒が進入不能な構成としてもよい。このような構成では、一次ポート221からハウジング2内に導入された冷媒が伝熱部材200に衝突することにより、冷媒の熱が伝熱部材200に伝達され、さらに伝熱部材200からハウジング本体21を介して駆動エレメント6に熱が伝達される。即ち、伝熱部材200が熱伝達手段として機能する。尚、伝熱部材200の材質は、ハウジング本体21の材質よりも熱伝導率が高い材質であれは、金属に限定されない。
【0056】
また、前記実施形態では、一次ポート221から受け入れた冷媒の熱を駆動エレメント6に伝達するものとしたが、冷媒の熱を弁本体に伝達してもよい。冷媒が弁ポートを通過して温度低下するため、弁本体が冷却されやすく、弁本体によって駆動エレメントの熱が奪われる可能性がある。そこで、一次ポートから受け入れた冷媒の熱を弁本体に伝達することにより、駆動エレメントから熱が奪われにくくすることができる。尚、一次ポートから受け入れた冷媒の熱を駆動エレメントと弁本体との両方に伝達してもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、ハウジング2が金属製であり且つ弁本体4が樹脂製であるものとしたが、ハウジングおよび弁本体の材質はこれに限定されない。例えば、滞留空間が駆動エレメントの近傍にまで形成されている場合には、ハウジングを熱伝導率の低い部材によって構成しても、操作室を加熱することができる。また、弁本体と駆動エレメントとが離隔して配置されている場合や、弁本体と駆動エレメントとの間に断熱部材が設けられている場合等には、弁本体を熱伝導率の高い部材によって構成しても、操作室が冷却されてしまうことを抑制することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
100A 冷凍サイクルシステム
10 膨張弁
11 圧縮機
12 凝縮器
13 蒸発器
2 ハウジング
221 一次ポート
212 収容部
213 二次ポート
214 凹部(滞留空間、熱伝達手段)
215 連通流路
216 界壁
3A、3B 弁組体
4 弁本体
5 弁体
6 駆動エレメント
63 ダイヤフラム
66 操作室
7 感温筒
図1
図2
図3
図4