【解決手段】圧縮機11を発熱体として利用することにより、簡単な構成で駆動エレメント6を加熱することができる。即ち、駆動エレメント6を加熱するために配管を複雑に配索する必要がなく、冷凍サイクルシステム100A全体が複雑化しにくい。また、駆動エレメント6を加熱することにより、操作室66内の温度が感温筒7の温度よりも低くなることを抑制し、操作室66内での冷媒の凝縮を抑制することができる。これにより、感温筒7における温度変化に応じてダイヤフラム63を適切に変形させて弁体5を駆動し、蒸発器13の出口側温度に応じて弁ポート431の開度を調節し、蒸発器13が必要とする冷媒の量を適切に制御することができる。
冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させて減圧する膨張弁と、減圧した冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備えた冷凍サイクルシステムであって、
前記膨張弁は、前記凝縮器からの冷媒を受け入れる一次ポートと、該一次ポートから流入した冷媒を通過させる弁ポートを有する弁本体と、該弁本体に移動自在に設けられて前記弁ポートの開度を変更する弁体と、ダイヤフラムおよび操作室を有して前記弁体を駆動する駆動エレメントと、前記操作室に連通して封入ガスが封入された感温筒と、前記弁ポートを通過した冷媒を前記蒸発器に送り出す二次ポートと、を有し、前記感温筒が感知する前記蒸発器の出口側温度に応じて前記弁ポートの開度が変更されるガス封入方式の温度膨張弁であり、
当該冷凍サイクルシステム中の発熱体の熱により前記駆動エレメントを加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように操作室に封入ガスが封入されたガス封入方式の温度膨張弁では、感温筒の温度よりも操作室の温度が低くなると、操作室内で封入ガスが凝縮してしまうことがあり、感温筒の温度変化に対して弁ポートの開度が正常に調節されなくなってしまう可能性がある。そこで、引用文献1に記載された冷凍装置では、2つの膨張弁が設けられており、一方の膨張弁に向かって延びる配管を、他方の膨張弁に対して沿わせることにより、他方の膨張弁の操作室を保温している。
【0005】
しかしながら、引用文献1に記載されたように配管を設けると、配管の配索形状が複雑になってしまう。また、一方の膨張弁の操作室を保温することができない。さらに、1つの膨張弁のみが設けられる場合、沿わせる配管が存在しない。従って、簡単な構成で駆動エレメントの操作室を加熱することにより、操作室内における封入ガスの凝縮を抑制し、感温筒の温度に応じて膨張弁の弁ポートの開度を適切に調節する(即ち冷凍サイクルシステムにおいて蒸発器が必要とする冷媒の量を適切に制御する)ことが望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で蒸発器が必要とする冷媒の量を適切に制御することができる冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷凍サイクルシステムは、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させて減圧する膨張弁と、減圧した冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備えた冷凍サイクルシステムであって、前記膨張弁は、前記凝縮器からの冷媒を受け入れる一次ポートと、該一次ポートから流入した冷媒を通過させる弁ポートを有する弁本体と、該弁本体に移動自在に設けられて前記弁ポートの開度を変更する弁体と、ダイヤフラムおよび操作室を有して前記弁体を駆動する駆動エレメントと、前記操作室に連通して封入ガスが封入された感温筒と、前記弁ポートを通過した冷媒を前記蒸発器に送り出す二次ポートと、を有し、前記感温筒が感知する前記蒸発器の出口側温度に応じて前記弁ポートの開度が変更されるガス封入方式の温度膨張弁であり、当該冷凍サイクルシステム中の発熱体の熱により前記駆動エレメントを加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
以上のような本発明によれば、冷凍サイクルシステム中の発熱体を利用することにより、簡単な構成で駆動エレメントを加熱することができる。即ち、比較的高温な冷媒が通過する配管を駆動エレメントに対して沿わせる構成と比較して、配管の配索形状を簡素化することができ、冷凍サイクルシステム全体が複雑化しにくい。また、駆動エレメントを加熱することにより、操作室内の温度が感温筒の温度よりも低くなることを抑制し、操作室内において冷媒を凝縮しにくくすることができる。これにより、感温筒における温度変化に応じてダイヤフラムを適切に変形させて弁体を駆動し、蒸発器の出口側温度に応じて弁ポートの開度を調節し、蒸発器が必要とする冷媒の量を適切に制御することができる。
【0009】
この際、本発明の冷凍サイクルシステムでは、前記膨張弁は、前記弁本体を収容するとともに前記一次ポートおよび前記二次ポートが形成されたハウジングを有し、前記駆動エレメントは、前記ハウジングに収容され、前記加熱手段は、前記ハウジングを介して前記駆動エレメントを加熱することが好ましい。このような構成によれば、駆動エレメントが直接加熱しにくい寸法や形状を有する場合であっても、ハウジングは比較的大型で加熱しやすく伝熱面積を大きくしやすいため、駆動エレメントを容易に加熱することができる。
【0010】
さらに、本発明の冷凍サイクルシステムでは、前記発熱体は、前記ハウジングに対して直接または間接的に接触するように配置されていることが好ましい。このような構成によれば、発熱体からハウジングに対して効率よく熱を伝達することができ、駆動エレメントを容易に加熱することができる。
【0011】
また、本発明の冷凍サイクルシステムでは、前記発熱体は、前記ハウジングから離隔して配置され、前記加熱手段は、前記発熱体から前記ハウジングに向かって流体が流れるようにして伝熱する流体伝熱手段を有していてもよい。このような構成によれば、ハウジングが過度に加熱されてしまうことを抑制することができる。また、冷凍サイクルシステムにおいて発熱体の配置に制約がある場合であっても、発熱体からハウジングに対して熱を伝達することができる。
【0012】
また、本発明の冷凍サイクルシステムでは、前記膨張弁は、前記弁本体、前記弁体、前記駆動エレメントおよび前記感温筒を一組の弁組体とする複数の弁組体を有し、前記ハウジングが、前記一次ポートおよび前記弁組体ごとに前記二次ポートを有するとともに前記複数の弁組体の前記弁本体、前記弁体および前記駆動エレメントを収容することにより、当該ハウジングおよび当該弁組体が膨張弁ユニットを構成することが好ましい。このような構成によれば、発熱体によって1つのハウジングを加熱することにより、複数の弁組体における駆動エレメントを容易に加熱することができる。尚、ハウジングは、1個の一次ポートと複数の二次ポートとを有していてもよいし、複数の一次ポートと複数の二次ポートとを有していてもよく、一次ポートの数と二次ポートの数とが同じであってもよいし異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷凍サイクルシステムによれば、冷凍サイクルシステム中の発熱体によって駆動エレメントを加熱することにより、簡単な構成で蒸発器が必要とする冷媒の量を適切に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の冷凍サイクルシステム100Aは、
図1に示すように、冷媒を膨張させて減圧する膨張弁10と、冷媒を圧縮する圧縮機11と、冷媒を凝縮する凝縮器12と、冷媒を蒸発させる蒸発器13と、を備える。この冷凍サイクルシステム100Aは、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、空気調和機等に用いられる。また、本実施形態では、鉛直方向をZ方向とし、水平面に沿うとともに互いに直交する2方向をX方向およびY方向とする。
【0016】
膨張弁10は、
図2に示すように、1つのハウジング2と、2つの弁組体3A、3Bと、を有するガス封入方式の温度膨張弁である。ハウジング2は、ハウジング本体21と、入口コネクタ22と、を別体に有する。尚、膨張弁に設けられる弁組体の数および後述する二次ポートの数は、蒸発器13の数に応じたものであればよく、3以上であってもよい。
【0017】
ハウジング本体21は、全体が金属部材によって構成されるとともに、Z方向下方側に開口した入口開口部211と、Z方向上方側に開口した2つの収容部212と、Y方向に開口した2つの二次ポート213と、を有する。入口開口部211は、2つの収容部212の全てと連通している。2つの収容部212は、Z方向下方の小径部212Aと上方の大径部212Bとを有しており、大径部212Bにおいて、各収容部212に対応した二次ポート213と連通している。
【0018】
入口コネクタ22は、全体が金属部材によって構成されるとともに、凝縮器12の出口側に接続される一次ポート221が形成されている。入口コネクタ22がハウジング本体21の入口開口部211に取り付けられる。これにより、一次ポート221から各収容部212を通過して二次ポート213に至る流路が形成される。尚、ハウジング本体21と入口コネクタ22との間にはOリング23が設けられ、ハウジング2内部の気密性が保たれる。
【0019】
弁組体3A、3Bは、いずれも同様の構成を有しており、以下では弁組体3Aについて説明する。弁組体3Aは、弁本体4と、弁体5と、駆動エレメント6と、感温筒7と、によって構成される。
【0020】
弁本体4は、樹脂部材によって構成され、ハウジング本体21の収容部212に収容される。弁本体4のうち小径部212Aに収容される下側部分41は、Z方向を軸方向とする円筒状に形成され、側面に開口部411を有するとともに下端開口に調節ねじ51が設けられ、調節ばね52および弁体5を収容する。
【0021】
弁本体4のうち大径部212Bに収容される上側部分42は、後述する弁座部43の上方においてZ方向に沿って延びる筒状の案内部422と、案内部422に略直交するように延びる冷媒通過部423と、上面に形成された溝状のばね収容部424と、を有する。後述する下蓋62が弁本体4にインサート成形されることにより、下蓋62の一部である弁座部43が下側部分41の内側空間の上方に配置される。ばね収容部424と冷媒通過部423とは、均圧孔によって連通されている。尚、ばね収容部424と冷媒通過部423とは、案内部422と後述する連結棒8との間の微小な隙間により連通されていてもよく、この場合には均圧孔が形成されていなくてもよい。即ち、ばね収容部424に適宜な量の冷媒が導入されるような構成とされていればよい。
【0022】
案内部422の内側には、連結棒8が配置され、連結棒8はZ方向に沿って移動するように案内される。連結棒8の下端部は、弁ポート431を通過可能な外径を有するように先細り形状となっている。
【0023】
弁体5は、下面が開口した有底筒状に形成され、上端に形成されたニードル部53が後述する弁座部43に対して接近または離隔することで弁ポート431の開度が調節されるようになっている。調節ばね52は、弁体5に対して下方に設けられて上方への付勢力を付与し、調節ねじ51によってこの付勢力が調節可能となっている。また、弁体5の上面部には貫通孔54が形成されており、上面部の両側空間(筒の内側空間およびその上方空間)が連通するようになっている。弁体5の筒部が下側部分41の上部によって案内されることにより、弁体5は弁本体4に対してZ方向に移動自在となっている。
【0024】
連結棒8の先端は、弁体5のニードル部53の先端と常に当接する。後述するように駆動エレメント6によって連結棒8がZ方向に駆動されることにより、弁体5が連結棒8に従動してZ方向に移動する。これにより、弁ポート431に対するニードル部53の位置が調節されるようになっている。
【0025】
弁本体4とハウジング本体21との間には、下側部分41の上端部に対応する位置と、上側部分42の上端部に対応する位置と、のそれぞれにOリング44、45が設けられている。これにより、収容部212の外部空間に対する気密性が保たれる。また、小径部212A内の空間と大径部212B内の空間とが弁ポート431以外において連通しないようになっている。
【0026】
膨張弁10において、一次ポート221は凝縮器12から冷媒を受け入れ、この冷媒は、収容部212に導入された後、弁本体4の下側部分41の開口部411および調節ねじ51の貫通孔511、弁体5の貫通孔54、弁ポート431および冷媒通過部423をこの順で通過し、二次ポート213から蒸発器13に送り出される。尚、本実施形態では、下側部分41の開口部411および調節ねじ51の貫通孔511の両方により、下側部分41内に冷媒を導入しているが、開口部411と貫通孔511とのうちいずれか一方のみを形成し、一方のみにより下側部分41内に冷媒を導入する構成としてもよい。
【0027】
駆動エレメント6は、上蓋61と、下蓋62と、ダイヤフラム63と、を有し、当金64および連結棒8を介して弁体5を駆動する。平面視円状のダイヤフラム63の外縁部が上蓋61と下蓋62とによって挟み込まれて溶接されることにより、ダイヤフラム63と上蓋61との間に操作室66が形成される。
【0028】
下蓋62は、プレス加工により成形され、Z方向に沿って延びる孔付筒部と、弁座部43を構成する孔付有底部と、を有し、この筒部および有底部が弁本体4にインサート成形されている。当金64は、ダイヤフラム63の下面に設けられるとともに、連結棒8の上端部がカシメ等により接続される。即ち、ダイヤフラム63の変形が、当金64を介して連結棒8に伝達されるようになっている。
【0029】
また、弁本体4にはコイルばね65が配置され、コイルばね65は、弁本体4のばね収容部424に収容され、その上端部が当金64に当接する。即ち、コイルばね65は、当金64を介してダイヤフラム63に対して上方への付勢力を付与する。
【0030】
操作室66の内圧が上昇または低下すると、操作室66が膨張または収縮するようにダイヤフラム63が変形する。ダイヤフラム63の変形に伴い、連結棒8がZ方向に移動する。具体的には、例えば、操作室66の内圧が低下した場合、ダイヤフラム63に対して上側から加わる下方向への力(内圧相当荷重)が低下し、ダイヤフラム63に対して下側から加わる上方向への力(二次圧力相当荷重とコイルばね65の荷重と調節ばね52の荷重との総和)を下回ると、操作室66が収縮するようにダイヤフラム63が変形する。これにより、連結棒8がZ方向上側に移動し、弁開度が小さくなる。
【0031】
ハウジング本体21には、抜け止め部材67が取り付けられており、上蓋61の外縁部の上面が抜け止め部材67によって係止されることにより、駆動エレメント6および弁本体4が収容部212から脱落しないようになっている。尚、抜け止め部材67は、例えばバネ材により構成されることで弾性を有することにより、Z方向において駆動エレメント6をハウジング本体21に押し付けるような力を付与し、これにより駆動エレメント6をハウジング本体21に密着させて隙間が生じないようにすることが好ましい。
【0032】
感温筒7は、蒸発器13の出口近傍に配置される。感温筒7の内部空間と操作室66の内部空間とは、キャピラリチューブ9を介して連通するとともに封入ガスが封入されている。尚、封入ガスは、冷凍サイクルシステム100Aにおいて循環する装置冷媒と同一のガスであってもよいし、装置冷媒と同一または類似した温度圧力特性を有するガスであってもよいし、不活性ガスが混合されていてもよい。
【0033】
感温筒7内の封入ガスは、蒸発器13の出口側温度に応じて加熱または冷却され、感温筒7の内圧が変化する。これに伴い、キャピラリチューブ9を介して操作室66の内圧も変化し、上記のようにダイヤフラム63が変形する。
【0034】
ハウジング2は、1個の一次ポート221および弁組体3A、3Bごとに二次ポート213を有する(計2個の二次ポート213を有する)とともに、2つの弁組体3A、3Bの弁本体4、弁体5および駆動エレメント6を収容する。これにより、ハウジング2および弁組体3A、3Bが膨張弁ユニットを構成する。尚、本実施形態ではハウジング2が1個の一次ポート221を有するものとするが、ハウジングが複数の一次ポートを有していてもよい。例えば、2個の一次ポートに対してそれぞれ2つの弁組体および2個の二次ポート(計4つの弁組体および計4個の二次ポート)が設けられる構成としてもよいし、4個の一次ポートに対してそれぞれ1つの弁組体および1個の二次ポート(計4つの弁組体および計4個の二次ポート)が設けられる構成としてもよい。このとき、ハウジングは、冷凍サイクルシステムに設けられる蒸発器の数に応じた数(例えば同数)の二次ポートを有していればよい。
【0035】
冷凍サイクルシステム100Aにおいて、圧縮機11が、ハウジング2のハウジング本体21に直接接触するように配置されている。圧縮機11が発熱体として機能し、この発熱体を含む加熱手段によって、駆動エレメント6が加熱される。尚、圧縮機11は入口コネクタ22に直接接触してもよい。また、圧縮機11とハウジング2との間に例えば金属製の伝熱部材が挟み込まれる(圧縮機11がハウジング2に対して間接的に接触する)配置であってもよい。
【0036】
即ち、圧縮機11からハウジング本体21に伝達された熱が、駆動エレメント6の上蓋61、下蓋62およびダイヤフラム63に伝達され、操作室66内の封入ガスが加熱される。これにより、弁ポート431を通過することで膨張して温度低下した冷媒が、ばね収容部424に導入されても、操作室66内の封入ガスの温度が低下しにくい。さらに、蒸発器13の出口近傍に配置される感温筒7内の封入ガスの温度よりも、操作室66内の封入ガスの温度を高く保ちやすい。
【0037】
ここで、膨張弁10の詳細な動作について説明する。まず、蒸発器13の出口側温度が低下した場合、感温筒7内の封入ガスの温度が低下し、感温筒7の内圧が低下する。これにより、操作室66の内圧も低下し、操作室66が収縮するようにダイヤフラム63が上方に向かって変形する。ダイヤフラム63の変形に伴い、連結棒8が上方に向かって移動し、さらに弁体5も上方に向かって移動する。即ち、弁体5のニードル部53が弁座部43に接近し、弁ポート431の開度が小さくなり、通過する冷媒の流量が減少する。このように、蒸発器13の出口側温度が低下した場合には、膨張弁10を通過する冷媒の流量が減少し、膨張弁10による冷却作用が低下する。
【0038】
一方、蒸発器13の出口側温度が上昇した場合、感温筒7内の封入ガスの温度が上昇し、感温筒7の内圧が上昇する。これにより、操作室66の内圧も上昇し、操作室66が膨張するようにダイヤフラム63が下方に向かって変形する。ダイヤフラム63の変形に伴い、連結棒8が下方に向かって移動し、さらに弁体5も下方に向かって移動する。即ち、弁体5のニードル部53が弁座部43から遠ざかり、弁ポート431の開度が大きくなり、通過する冷媒の流量が増加する。このように、蒸発器13の出口側温度が上昇した場合には、膨張弁10を通過する冷媒の流量が増加し、膨張弁10による冷却作用が上昇する。
【0039】
以上の本実施形態によれば、圧縮機11を発熱体として利用することにより、簡単な構成で駆動エレメント6を加熱することができる。即ち、駆動エレメント6を加熱するために配管を複雑に配索する必要がなく、冷凍サイクルシステム100A全体が複雑化しにくい。また、駆動エレメント6を加熱することにより、操作室66内の温度が感温筒7の温度よりも低くなることを抑制し、操作室66内での冷媒の凝縮を抑制することができる。これにより、感温筒7における温度変化に応じてダイヤフラム63を適切に変形させて弁体5を駆動し、蒸発器13の出口側温度に応じて弁ポート431の開度を調節し、蒸発器13が必要とする冷媒の量を適切に制御することができる。
【0040】
また、発熱体としての圧縮機11によって、ハウジング2を介して駆動エレメント6を加熱することにより、駆動エレメント6が直接加熱しにくい寸法や形状を有する場合であっても、ハウジング2は比較的大型で加熱しやすく伝熱面積を大きくしやすいため、操作室66を容易に加熱することができる。
【0041】
また、発熱体としての圧縮機11をハウジング2に対して直接接触させることで、圧縮機11からハウジング2に対して効率よく熱を伝達することができ、操作室66を容易に加熱することができる。
【0042】
また、本発明の冷凍サイクルシステムでは、1つのハウジング2および2つの弁組体3A、3Bが膨張弁ユニットを構成することで、発熱体としての圧縮機11によって1つのハウジング2を加熱することにより、2つの弁組体3A、3Bにおける駆動エレメント6を容易に加熱することができる。
【0043】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、圧縮機11を発熱体として利用するものとしたが、変形例1の冷凍サイクルシステム100Bとして
図3に示すように、凝縮器12を発熱体として利用し、ハウジング2に直接接触させてもよい。このとき、凝縮器12はハウジング2のうちハウジング本体21と入口コネクタ22とのうちいずれに直接接触してもよいし、凝縮器12とハウジング2との間に例えば金属製の伝熱部材が挟み込まれる(凝縮器12がハウジング2に対して間接的に接触する)構成としてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、発熱体をハウジング2に直接接触させるものとしたが、発熱体がハウジング2から離隔して配置され、発熱体からハウジングに向かって流体を送り込むことによって伝熱する構成としてもよい。
【0045】
例えば、変形例2の冷凍サイクルシステム100Cとして
図4に示すように、流体が通過可能な配管部材を備えた流体伝熱手段300を設けてもよい。この配管部材は、凝縮器12に接触するとともにハウジング2に接触する。流体伝熱手段300は、ポンプ等によって、配管部材において凝縮器12からハウジング2に向かって例えば水や冷媒等の流体を流すことにより、凝縮器12において発生した熱をハウジング2に伝える。変形例2では、凝縮器12と流体伝熱手段300とが加熱手段を構成する。
【0046】
また、変形例3の冷凍サイクルシステム100Dとして
図5に示すように、ファン等の送風手段によって構成された流体伝熱手段400を設けてもよい。流体伝熱手段400は、圧縮機11とハウジング2との間に設けられ、圧縮機11からハウジング2に向かって送風することにより、圧縮機11において発生した熱をハウジング2に伝える。変形例3では、圧縮機11と流体伝熱手段400とが加熱手段を構成する。
【0047】
尚、送風手段を有する流体伝熱手段を設ける場合、発熱体からハウジングに向かって流体が流れるようにすればよく、送風手段の配置は限定されない。即ち、変形例3のように発熱体とハウジングとの間に送風手段を配置してもよいし、発熱体およびハウジングに対して送風方向上流側に送風手段を配置してもよいし、発熱体およびハウジングに対して送風方向下流側に送風手段を配置してもよい。また、送風手段や発熱体、ハウジングを覆うように、ダクト等の送風案内部材を設けてもよい。
【0048】
また、前記実施形態および前記変形例3では圧縮機11を発熱体として利用し、前記変形例1、2では凝縮器12を発熱体として利用するものとしたが、発熱体は、冷凍サイクルシステム中に含まれるものであればよく、冷凍サイクルシステム自体を構成する装置や部品に限定されない。即ち、変形例4の冷凍サイクルシステム100Eとして
図6に示すように、冷却対象物200を発熱体として利用し、ハウジング2に直接接触させてもよい。尚、変形例4の冷凍サイクルシステム100Eは、蒸発器13を冷却対象物200に直接接触させることで冷却対象物200を冷却するものである。尚、蒸発器13は冷却対象物200に直接接触してもよいし、蒸発器13と冷却対象物200との間に例えば金属製の伝熱部材が挟み込まれる(蒸発器13が冷却対象物200に対して間接的に接触する)構成としてもよい。冷却対象物200としては、一例としてサーバに搭載されるCPUなどの発熱部品が挙げられる。このとき、冷却対象物200はハウジング2のうちハウジング本体21と入口コネクタ22とのうちいずれに直接接触してもよいし、冷却対象物200とハウジング2との間に例えば金属製の伝熱部材が挟み込まれ、冷却対象物200がハウジング2に対して間接的に接触する構成としてもよい。また、圧縮機11と凝縮器12と冷却対象物200とのうち少なくとも1つを発熱体として利用してもよいし、2つ以上を組み合わせて発熱体として利用してもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、1つのハウジング2および2つの弁組体3A、3Bが膨張弁ユニットを構成するものとしたが、1つのハウジング2と任意の数の弁組体とが膨張弁ユニットを構成すればよい。また、1つのハウジングに対して1つの弁組体が設けられてもよい。即ち、蒸発器13の数に応じた適宜な数の弁組体を設ければよい。
【0050】
また、前記実施形態では、ハウジング2を介して駆動エレメント6を加熱するものとしたが、発熱体を駆動エレメントに直接接触させる構成等によって(即ちハウジングを介さずに)、駆動エレメントを直接加熱してもよい。このような構成によれば、発熱体から駆動エレメントに対して効率よく熱を伝達することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。