【解決手段】レーダ装置の制御方法は、周波数変調方式を用いて物体を検知するレーダ装置10の制御方法であって、物体を検知するための電波送信を停止した状態で電波受信を行い、第1の受信信号を得る第1の受信ステップ(S10)と、第1の受信ステップの後に、電波送信を停止した状態で電波受信を行い、第2の受信信号を得る第2の受信ステップ(S20)と、第1の受信信号と、第2の受信信号との差分信号の強度を取得する強度取得ステップ(S40)と、強度と閾値との比較を行う比較ステップ(S50)と、比較において、強度が閾値以下である場合に、電波送信を開始する送信開始ステップ(S60)とを含む。
前記待機ステップにおいて、待機した累積期間が第2の閾値より大きい場合に、前記待機ステップの後の前記第2の受信ステップ、前記強度取得ステップ、及び、前記比較ステップの実行を停止する
請求項5に記載のレーダ装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様に係るレーダ装置の制御方法は、周波数変調方式を用いて物体を検知するレーダ装置の制御方法であって、前記物体を検知するための電波送信を停止した状態で電波受信を行い、第1の受信信号を得る第1の受信ステップと、前記第1の受信ステップの後に、前記電波送信を停止した状態で前記電波受信を行い、第2の受信信号を得る第2の受信ステップと、前記第1の受信信号と、前記第2の受信信号との差分信号の強度を取得する強度取得ステップと、前記強度と第1の閾値との比較を行う比較ステップと、前記比較において、前記強度が前記第1の閾値以下である場合に、前記電波送信を開始する送信開始ステップとを含む。
【0013】
これにより、第1の受信信号及び第2の受信信号にレーダ装置の周波数変調方式に応じたノイズであって、時間とともに強度が異なるノイズが含まれている場合であっても、差分信号は、当該ノイズが除去された信号となる。つまり、差分信号の強度は、外部の装置からの電波の強度を示す。よって、周波数変調方式を用いて物体を検知するレーダ装置において、外部の装置からの電波を正確に検知することができる。
【0014】
また、例えば、前記第1の受信ステップでは、前記周波数変調方式で使用する周波数帯に応じて設定された第1の受信周波数帯において、前記電波受信が行われ、前記第2の受信ステップでは、前記周波数変調方式で使用する周波数帯に応じて設定された第2の受信周波数帯において、前記電波受信が行われる。
【0015】
これにより、レーダ装置が物体を検知するときに使用する周波数帯にわたって、電波の有無を判定することができる。よって、物体を検知するときに外部の装置の電波と干渉することをより抑制することができる。
【0016】
また、例えば、前記第1の受信周波数帯、及び、前記第2の受信周波数帯は、同一の周波数帯である。
【0017】
これにより、受信した第1の受信信号及び第2の受信信号の周波数帯全域における差分信号を取得することができる。
【0018】
また、例えば、前記第1の受信周波数帯及び前記第2の受信周波数帯は、複数のチャネルを含み、前記比較ステップでは、前記複数のチャネルのそれぞれにおいて、前記比較を行う。
【0019】
これにより、複数のチャネルのどのチャネルが使用されているかを特定することができる。例えば、レーダ装置は、使用されていると特定されたチャネル以外のチャネルの周波数帯を使用して物体の検知を行うことができる。
【0020】
また、例えば、さらに、前記比較において、前記強度が前記第1の閾値より大きい場合に、所定の期間待機する待機ステップを含み、前記待機ステップの後に、再度、前記第2の受信ステップと、前記強度取得ステップと、前記比較ステップとを実行する。
【0021】
これにより、第1の受信ステップ〜比較ステップまでの処理が、繰り返し実行される。例えば、第1の受信ステップ〜比較ステップまでの処理が繰り返し実行されている途中で外部の装置の通信又は物体検知が終了した場合、当該外部の装置の通信及び物体検知が終了したことを検知することができる。よって、上記の処理を繰り返し実行していない場合に比べて、物体の検知をより確実に実行することができる。
【0022】
また、例えば、前記待機ステップにおいて、待機した累積期間が第2の閾値より大きい場合に、前記待機ステップの後の前記第2の受信ステップ、前記強度取得ステップ、及び、前記比較ステップの実行を停止する。
【0023】
これにより、累積期間が第2の閾値より大きくなると、外部の装置からの電波を検知する処理が停止される。レーダ装置では、所定の時間間隔ごとに物体の検知が実行される。上記の判定を行うことで、外部の装置からの電波を検知し続ける場合において、次の時間間隔における物体の検知に対する動作が実行されなくなることを抑制することができる。
【0024】
また、例えば、さらに、前記第1の受信ステップで取得した前記第1の受信信号を格納する格納ステップを含み、前記強度取得ステップでは、格納されている前記第1の受信信号を用いて、前記強度を取得する。
【0025】
これにより、第1の受信信号は、予め取得された信号を用いることができる。よって、物体の検出を行う時点においては、第1の受信信号及び第2の受信信号のうち、第2の受信信号のみを取得すればよく、外部の装置からの電波の有無の判定に要する時間を短縮することができる。
【0026】
また、例えば、前記第1の受信信号及び前記第2の受信信号は、I信号及びQ信号の少なくとも一方である。
【0027】
これにより、I信号及びQ信号の少なくとも一方を用いて、差分信号の強度を算出することができる。
【0028】
また、例えば、前記周波数変調方式は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)変調である。
【0029】
これにより、上記の制御方法をFMCW変調方式のレーダ装置に適用することができる。また、FMCW変調方式を用いることで、レーダ装置は、物体を高精度に検知することができる。
【0030】
また、本発明の一態様に係るレーダ装置は、周波数変調方式を用いて物体を検知するレーダ装置であって、前記物体を検知するための電波送信を停止した状態で電波受信を行い、第1の受信信号を得る第1の受信部と、前記第1の受信部が前記第1の受信信号を得た後に、前記電波送信を停止した状態で前記電波受信を行い、第2の受信信号を得る第2の受信部と、前記第1の受信信号と、前記第2の受信信号との差分信号の強度を取得する信号強度取得部と、前記強度と閾値との比較を行う比較部と、前記比較おいて、前記強度が前記閾値以下である場合に、前記電波送信を開始する制御を行うレーダ制御部とを備える。
【0031】
これにより、上記の制御方法と同様の効果を奏するレーダ装置を実現することができる。
【0032】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0033】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0034】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0035】
また、本明細書において、同じなどの要素間の関係性を示す用語、および、直線状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0036】
(実施の形態)
[1.レーダ装置の構成]
まず、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成を示すブロック図である。
【0037】
レーダ装置10は、例えば、車両(例えば、自動車)に搭載された物体検知装置として適用することができる。この場合、レーダ装置10が検知する対象である対象物は、例えば自車両の周囲に存在する物体である。なお、レーダ装置は、上記以外の装置等にも適用可能である。例えば、レーダ装置10は、AI(Artificial Intelligence)スピーカ等に搭載されたユーザインタフェースとして適用することができる。この場合、レーダ装置が検知する対象である対象物は、例えばAIスピーカを操作するユーザである。ユーザは、ジェスチャを行うことにより、AIスピーカに対して、ジェスチャに対応したAIスピーカの操作を指示することができる。例えば、ユーザが左腕を振り上げるジェスチャを行った際には、AIスピーカの音量を上げることができ、ユーザが左腕を振り下ろすジェスチャを行った際には、AIスピーカの音量を下げることができる。
【0038】
図1に示すように、レーダ装置10は、レーダセンサ100と、デジタルシグナルプロセッサ200(以降において、DSP200とも記載する)とを備える。本実施の形態に係るレーダ装置10は、物体を検出するための物体検知モードと、外部の装置等が使用している電波を受信するための電波検知モードとを、所定の条件で切り替える。また、物体検知モードで動作する期間である物体検出期間と、電波検知モードで動作する期間である電波検出期間とは、互いに異なる期間である。なお、レーダ装置10は、周波数変調方式を用いて物体を検知する装置である。また、外部の装置等が使用している電波は、例えば、レーダ装置10が物体を検知するための電波を送信した場合、当該物体検知用の電波と干渉する電波を意味する。
【0039】
レーダセンサ100は、物体を検出するための電波を送受信する、及び、外部の装置等が使用している電波を受信するためのRF(Radio Frequency)ユニットである。レーダセンサ100は、PLL110と、送信ユニット120と、受信ユニット130とを有している。
【0040】
PLL(Phase Locked Loop:位相同期)110は、DSP200からのPLL制御信号に基づいて、物体を検知するための変調信号(電波)を生成する。PLL110は、例えば、変調動作(チャープ動作)を行う位相同期制御回路と連携して変調信号を生成する。当該変調信号(電波)は、例えば、連続波を周波数変調したFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダ信号である。言い換えると、レーダ装置10の周波数変調方式は、FMCW変調である。PLL110は、生成した電波を、送信ユニット120のパワーアンプ121(後述する)及び受信ユニット130のIQ生成回路133(後述する)の各々に出力する。PLL110にPLL制御を適用する構成により、物体検出のための電波(ミリ波)用の変調信号源が構成される。
【0041】
送信ユニット120は、パワーアンプ121と、送信アンテナ122とを有している。
【0042】
パワーアンプ121は、PLL110からの電波を増幅させる。
【0043】
送信アンテナ122は、パワーアンプ121からの電波を、物体に向けて送信する。
【0044】
受信ユニット130は、受信アンテナ131と、ローノイズアンプ132と、IQ生成回路133と、直交検波器134と、ADコンバータ135とを有している。
【0045】
受信アンテナ131は、物体で反射した電波の反射波を受信する。また、受信アンテナ131は、送信アンテナ122が電波を送信していない期間において、外部の装置等が使用している電波(外部の装置からの電波とも記載する)を受信する。
【0046】
ローノイズアンプ132は、受信アンテナ131で受信された反射波(反射信号)及び外部の装置からの電波(干渉信号)を増幅し、直交検波器134に出力する。
【0047】
IQ生成回路133は、PLL110から受けた電波より90°位相差のある電波のローカル信号を生成し、直交検波器134に出力する。
【0048】
直交検波器134は、IQ生成回路133からの電波のローカル信号と、ローノイズアンプ132で増幅された電波の反射波とを直交検波することにより、電波のアナログIQデータを生成する。
【0049】
また、直交検波器134は、送信アンテナ122が電波を送信していない期間におけるIQ生成回路133からの漏れ信号と、ローノイズアンプ132で増幅された外部の装置からの電波とを直交検波することにより、外部の装置からの電波のアナログIQデータを生成する。
【0050】
ADコンバータ135は、入力されたサンプリングクロック信号に基づいて、直交検波器134からの、電波のアナログIQデータ、及び、外部の装置からの電波のアナログIQデータを、電波のデジタルIQデータ及び外部の装置からの電波のデジタルIQデータに変換する。ADコンバータ135は、反射波のデジタルIQデータ及び外部の装置からの電波のデジタルIQデータを、DSP200に出力する。
【0051】
上記のようなレーダセンサ100のRF周波数は60GHz帯であるとする。ここで、レーダセンサ100のRF周波数が60GHz帯である場合における周波数帯について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、電波の周波数帯の一例を説明するための図である。
【0052】
図2に示すように、60GHz帯のRF周波数は、例えば、およそ57GHz〜64GHzである。レーダセンサ100は、およそ57GHz〜64GHzの周波数帯を使用して、物体の検知を行う。本実施の形態のレーダセンサ100は、ミリ波を用いたミリ波センサである。また、
図2に示すように、レーダセンサ100の周波数帯は、WiFi(登録商標)の無線規格として無線通信規格IEEE802.11adが使用されたときのチャネルCH1〜CH4のうち、チャネルCH1〜CH3と重複する。つまり、レーダセンサ100の電波は、60GHz帯の周波数帯を使用している他のレーダセンサ、及び、チャネルCH1〜CH3を使用して通信している無線通信装置の電波と干渉するおそれがある。
【0053】
無線通信規格IEEE802.11adは、高速通信を実現するものである。そのため、今後、60GHz帯のミリ波を使用した無線通信は、増加するものと想定される。よって、60GHz帯の周波数帯を使用するレーダ装置10において、特に、60GHz帯の周波数帯を使用して通信する無線通信装置との電波の干渉を抑制することは、レーダ装置10の物体検出精度を向上させる観点から、非常に有益である。
【0054】
なお、本実施の形態では、レーダセンサ100に用いる周波数を60GHz帯としたが、これには限定されない。24GHz帯又は79GHz帯等、レーダとして使用できる周波数帯であれば任意の周波数帯でもよい。
【0055】
図1を再び参照して、DSP200は、レーダセンサ100を制御するためのコントロールユニットである。DSP200は、例えば予めインストールされたコード又はハードロジックに基づいて、レーダセンサ100を動作させる。DSP200は、信号処理部210と、レーダ制御部220とを有している。
【0056】
信号処理部210は、レーダセンサ100のADコンバータ135からの電波のデジタルIQデータ及び外部の装置からの電波のデジタルIQデータに所定の処理を行い、処理の結果に応じた出力を行う。なお、
図1では、外部の装置からの電波のデジタルIQデータに所定の処理を行うための構成を図示している。
【0057】
図1に示すように、信号処理部210は、第1のリスニング部211と、第2のリスニング部212と、演算部213と、信号強度検知部214と、干渉検知部215とを有する。なお、信号処理部210が有する各構成要素は、回路(または集積回路)によって実現されてもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路を構成してもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路又は専用の回路でもよい。また、信号処理部210は、例えば、マイクロコンピュータにより実現されてもよい。
【0058】
第1のリスニング部211は、ADコンバータ135から第1のリスニングにおいて受信された第1の受信信号(外部の装置からの電波)を受信する受信装置である。また、第1のリスニング部211は、受信した第1の受信信号を格納する記憶レジスタを有していてもよい。第1のリスニング部211は、第1の受信部の一例である。なお、第1のリスニングの詳細は後述するが、電波の送信を停止し、かつ、外部の装置からの電波の受信を行うことを意味する。
【0059】
第2のリスニング部212は、ADコンバータ135から第2のリスニングにおいて受信された第2の受信信号(外部の装置からの電波)を受信する受信装置である。また、第2のリスニング部212は、受信した第2の受信信号を格納する記憶レジスタを有していてもよい。第2のリスニング部212は、第2の受信部の一例である。なお、第2のリスニングは、第1のリスニング後に行われ、第1のリスニングと同様、電波の送信を停止し、かつ、外部の装置からの電波の受信を行うことを意味する。
【0060】
演算部213は、第1のリスニング部211からの第1の受信信号と、第2のリスニング部212からの第2の受信信号とに、所定の演算を行い、演算結果を信号強度検知部214に出力する。本実施の形態では、演算部213は、第1の受信信号と第2の受信信号との差分を算出することで差分信号を生成する差演算器(減算器)である。演算部213は、生成した差分信号を、信号強度検知部214に出力する。なお、演算部213は、第1の受信信号と第2の受信信号との比を算出することで比信号を生成する比演算器(除算器)であってもよい。
【0061】
信号強度検知部214は、演算部213からの差分信号に基づいて、当該差分信号の強度を算出することで、当該強度を検知する。信号強度検知部214は、差分信号にFFT(Fast Fourier Transform)処理を施すことにより、差分信号の強度(例えば、パワースペクトル)を算出してもよいし、差分信号の統計値に基づいて差分信号の強度を算出してもよい。信号強度検知部214は、例えば、統計値として、差分信号の信号強度の最大値、最小値、平均値、中央値、又は、RMS(Root Means Square)処理されたRMS値を差分信号の強度として算出してもよい。また、信号強度検知部214は、RSSI(Received Signal Strength Indication)の差分(差分信号)に基づいて、強度を算出してもよい。
【0062】
干渉検知部215は、差分信号の強度と、予め設定されている第1の閾値(閾値)とに基づいて、自装置が使用する周波数帯に外部の装置の電波があるか否かを検知する。例えば、干渉検知部215は、差分信号の強度と第1の閾値とを比較し、差分信号が第1の閾値より小さい場合、外部の装置の電波がないことを検知する。そして、干渉検知部215は、レーダ制御部220を制御するための制御信号であるモード切替信号を出力する。モード切替信号は、電波検知モードから物体検知モードに切り替えるための信号である。干渉検知部215は、例えば、検知結果が外部の装置からの電波がないことを示す場合、電波検知モードから物体検知モードに切り替えるためのモード切替信号を出力する。
【0063】
また、干渉検知部215は、差分信号の強度と第1の閾値とを比較し、差分信号の強度が第1の閾値以上である場合、外部の装置の電波があることを検知する。この場合、干渉検知部215は、モード切替信号を出力しない。例えば、干渉検知部215は、電波検知モードを継続することを示す信号をレーダ制御部220に出力してもよい。なお、第1の閾値は、干渉が発生するか否かを判定するための信号強度の閾値である。
【0064】
レーダ制御部220は、レーダセンサ100の動作を制御する制御装置である。レーダ制御部220は、信号処理部210からのモード切替信号に基づいて、レーダセンサ100を電波検知モードから物体検知モードに切り替える制御を行う。レーダ制御部220は、電波検知モードでは、電波検知モードにおけるレーダセンサ100の各構成要素を制御するための受信制御信号を生成する。レーダ制御部220は、生成した受信制御信号をレーダセンサ100に出力する。また、レーダ制御部220は、物体検知モードでは、PLL110を変調動作させるためのPLL制御信号、及び、物体検知モードにおけるレーダセンサ100の各構成要素を制御するための送信制御信号及び受信制御信号を生成する。レーダ制御部220は、生成したPLL制御信号をレーダセンサ100のPLL110に出力し、生成した送信制御信号及び受信制御信号をレーダセンサ100に出力する。
【0065】
また、レーダ制御部220は、低消費電力化のためにレーダセンサ100の動作をオン・オフさせるための間欠制御信号を、レーダセンサ100に出力してもよい。
【0066】
レーダ制御部220は、例えば、マイクロコンピュータにより実現されてもよい。信号処理部210がマイクロコンピュータにより実現される場合、信号処理部210及びレーダ制御部220は、1つのマイクロコンピュータにより実現されてもよいし、別々のマイクロコンピュータにより実現されてもよい。
【0067】
[2.レーダ装置の動作]
次に、上記のような周波数変調方式を用いて物体を検知するレーダ装置10の動作について、
図3〜
図8を参照しながら説明する。
図3は、本実施の形態に係るレーダ装置10の動作を示すフローチャートである。
図3に示すステップS10〜S50、S70、及び、S80は、レーダ装置10が物体の検知を行う前に実行される動作であり、電波検知モードにおける動作を示す。
【0068】
図3に示すように、レーダ装置10は、まず、第1のリスニングを実行する(S10)。第1のリスニングとは、送信アンテナ122が電波を送信していない(つまり、物体を検知するための電波送信を停止した)状態で電波受信を行い、受信アンテナ131を介して第1の受信信号を得る動作を意味する。第1のリスニングでは、例えば、上記の状態で、外部の装置の電波(信号)がレーダ装置10で使用する周波数帯にいるか否か検知するために受信アンテナ131がセンシングを行う。第1のリスニングにおいて、受信アンテナ131によって受信され、かつ直交検波器134から出力された信号は、ADコンバータ135によりデジタルIQデータに変換され、第1のリスニング部211に第1の受信信号として出力される。これにより、第1のリスニング部211は、第1の受信信号を得ることができる。第1のリスニング部211は、取得したデジタルIQデータを記憶レジスタに格納してもよい。なお、ステップS10は、第1の受信ステップの一例である。
【0069】
第1のリスニングでは、受信アンテナ131は、例えば、受信周波数を変化させながら外部の装置からの電波を受信する。具体的には、第1のリスニングでは、受信アンテナ131は、物体の検知を行うための電波に使用する周波数帯(本実施の形態では、60GHz帯であり、周波数変調方式で使用する周波数帯の一例)に応じて設定された受信周波数帯(第1の受信周波数帯の一例)において、電波受信が行われる。つまり、第1のリスニングでは、受信周波数を変化させながら電波受信が行われる。
【0070】
また、第1のリスニングでは、受信アンテナ131は、例えば、物体検知モードにおける周波数変調方式に応じて、受信周波数を変化させてもよい。物体検知モードにおける周波数変調方式がFMCW方式である場合、受信周波数は、当該FMCW方式に応じて連続的に周波数が変化されてもよい。受信周波数は、例えば、
図4に示すように、センシング期間Tc(受信時のスイープ時間)の間に、受信周波数を変調帯域BWだけ連続して直線状に変化させた周波数であってもよい。fLOは、受信周波数の中心周波数を示す。センシング期間Tc、変調帯域BW、及び、中心周波数fLOは、特に限定されないが、例えば、センシング期間Tc=22μsecであり、変調帯域BW=6GHzであり、中心周波数fLO=60G.5Hzである。
図4は、本実施の形態に係るレーダ装置10の受信時における受信周波数の変化の一例を示す図である。
【0071】
なお、周波数変調方式は、FMCW方式に限定されず、例えば、複数のCW(Continuous Wave)を組み合わせたFSKCW(Frequency Shift Keying CW)方式であってもよい。この場合、受信周波数は、ステップ状の周波数(互いに連続していない複数の周波数)となる。以下では、周波数変調方式は、FMCW方式である場合について説明する。
【0072】
なお、第1のリスニングで受信した信号は、第1の受信信号の一例である。また、第1の受信信号は、I信号及びQ信号の少なくとも一方である。
【0073】
ここで、第1のリスニングにおいて、外部の装置からの電波(信号)を受信した場合、及び、受信していない場合の第1の受信信号について、
図5A及び
図6Aを参照しながら説明する。
図5Aは、外部の装置からの電波を受信していない場合における第1の受信信号の一例を示す図である。
図6Aは、外部の装置からの電波を受信している場合における第1の受信信号の一例を示す図である。
図5A及び
図6Aに示す縦軸は受信した受信信号の値を示しており、横軸は、サンプリング回数を示す。ここでは、センシング期間Tc=22μsecの間に、変調帯域BW=6GHz、中心周波数fLO=60GHz付近を32回に分けてサンプリングした結果を示す。受信周波数を変調帯域BWだけ連続して単調増加的に変化させたとすると、サンプリング回数「0」が最小の受信周波数のときの結果を示しており、サンプリング回数「31」(破線部分を参照)が最大の受信周波数のときの結果を示している。また、
図5A、及び、
図6Aは、第1のリスニング部211が取得した信号(デジタル信号)を示す。
【0074】
図5Aに示すように、他の装置が電波を発信していない場合であっても、受信アンテナ131が電波を受信しているような信号が検出される。この信号は、送信アンテナ122から電波が送信されていない場合であっても、PLL110から送信ユニット120及び受信ユニット130の少なくとも一方に信号がリークしている(漏れている)ことに起因するノイズである。つまり、
図5Aに示す信号は、ノイズを示す。
【0075】
レーダ装置10は、周波数変調方式を用いて外部の装置からの電波を検知する。そのため、PLL110から送信ユニット120及び受信ユニット130の少なくとも一方にリークする信号の周波数とリーク量とは、一定ではなく、時間とともに、又は、時間に応じて変化する。これにより、本実施の形態では、
図5Aに示すように、時間とともにノイズの信号強度が変化する。なお、PLL110から送信ユニット120に信号がリークしている場合、ノイズは、レーダ装置10の外部の環境(例えば、温度、物体の位置など)に応じて変化する。
【0076】
図5Aに示す受信信号を用いて、レーダ装置10が使用する周波数帯が外部の装置で使用されているか否かを判定した場合、当該判定を正確に行うことが難しい。例えば、サンプリング回数が10回辺り(受信周波数が60GHz辺り)ではノイズの信号強度が高くなっており、60GHz辺りの周波数が使用されていると誤検知される場合がある。そのため、このようなノイズを除去することが望まれるが、このような時間的に変化するノイズを除去することは容易ではない。
【0077】
なお、本明細書において「ノイズ」とは、送信アンテナ122が電波を送信していない状態で、上記のようにPLL110及びIQ生成回路133の少なくとも一方からのリークに基づいて取得される信号を意味する(例えば、
図5A参照)。ノイズは、PLL110及びIQ生成回路133の少なくとも一方から送信ユニット120に漏れた信号が送信アンテナ122から送信され、当該信号が物体で反射した反射波を受信アンテナ131が受信することによって生成されるものを含む。また、ノイズは、PLL110及びIQ生成回路133の少なくとも一方から受信ユニット130に漏れた信号が直交検波器134(具体的には、ミキサ)に入力されたことによって生成されるものを含む。
【0078】
また、
図6Aに示すように、他の装置がチャネルCH2(
図6Aのサンプリング回数11〜21に対応)を使用していた場合、チャネルCH2に対応するサンプリング回数のときの信号強度が、不規則に変動する。この不規則性は、CH2で通信している情報が常に同じでなく、また変調(OFDMなど)されていることによる。しかしながら、
図5Aに示すノイズも受信されるので、
図5Aの場合と同様、
図6Aに示す受信信号を用いて、レーダ装置10が使用する周波数帯が外部の装置において使用されているか否かを判定する場合、正確に判定することが難しい。
【0079】
そこで、
図3に示すように、本実施の形態に係るレーダ装置10は、第1のリスニングの後に、第2リスニングを実行する(S20)。第2のリスニングとは、送信アンテナ122から電波を送信していない(つまり、物体を検知するための電波送信を停止した)状態で電波受信を行い、第2の受信信号を得る動作を意味する。第2のリスニングでは、例えば、上記の状態で、受信アンテナ131が外部の装置の電波(信号)がレーダ装置10で使用する周波数帯にいるか否か検知するためにセンシングを行う。第1のリスニングでは、例えば、上記の状態で、受信アンテナ131が外部の装置の電波(信号)がレーダ装置10で使用する無線周波数にいるか否かをセンシングする。第2のリスニングにおいて、受信アンテナ131によって受信され、かつ直交検波器134から出力された信号は、ADコンバータ135によりデジタルIQデータに変換され、第2のリスニング部212に第2の受信信号として出力される。これにより、第2のリスニング部212は、第2の受信信号を得ることができる。第2のリスニング部212は、取得したデジタルIQデータを記憶レジスタに格納してもよい。なお、ステップS20は、第2の受信ステップの一例である。
【0080】
第2のリスニングでは、受信アンテナ131は、例えば、受信周波数を変化させながら外部の装置の電波を受信する。具体的には、第2のリスニングでは、受信アンテナ131は、物体の検知を行うための電波に使用する周波数帯(本実施の形態では、60GHz帯であり、周波数変調方式で使用する周波数帯の一例)に応じて設定された受信周波数帯(第2の受信周波数帯の一例)において、電波受信が行われる。つまり、第2のリスニングでは、受信周波数を変化させながら電波受信が行われる。
【0081】
なお、ステップS20において電波受信する第2の受信周波数帯は、ステップS10において電波受信する第1の受信周波数帯を含む。例えば、第1の受信周波数帯及び第2の受信周波数帯は、同一の周波数帯で電波の受信を行ってもよい。
【0082】
また、第2のリスニングでは、受信アンテナ131は、例えば、物体検知モードにおける周波数変調方式に応じて、受信周波数を変化させてもよい。例えば、
図4に示すように、センシング期間Tc(受信時のスイープ時間)の間に、受信周波数を変調帯域BWだけ連続して変化させてもよい。センシング期間Tcは、変調帯域BW、及び、中心周波数fLOは、例えば、第1のリスニングと同じであるが、異なっていてもよい。
【0083】
なお、第2のリスニングで受信した信号は、第2の受信信号の一例である。また、第2の受信信号は、I信号及びQ信号の少なくとも一方である。
【0084】
ここで、第2のリスニングにおいて、外部の装置からの電波(信号)を受信した場合、及び、受信していない場合の第2の受信信号について、
図5B及び
図6Bを参照しながら説明する。
図5Bは、外部の装置からの電波を受信していない場合における第2の受信信号の一例を示す図である。
図6Bは、外部の装置からの電波を受信している場合における第2の受信信号の一例を示す図である。また、
図5B及び
図6Bは、第2のリスニング部212が取得した信号を示す。なお、
図5B及び
図6Bに示す縦軸は、受信した受信信号の値を示しており、横軸は、サンプリング回数を示す。
【0085】
図5Bに示すように、他の装置が電波を発信していない場合であっても、受信アンテナ131が電波を受信しているような信号が検出される。この信号は、
図5Aと同様、ノイズである。例えば、第1のリスニング及び第2のリスニングが行われる時間間隔が短い場合(例えば、1sec以内)、
図5A及び
図5Bに示すノイズは、実質的に同一の信号となる。時間間隔が短いと、PLL110から送信ユニット120及び受信ユニット130の少なくとも一方にリークする信号のリーク量、及び、レーダ装置10の外部の環境が、大きく変化しないと考えられるためである。
【0086】
また、
図6Bに示すように、他の装置がチャネルCH2(
図6Bのサンプリング回数11〜21に対応)を使用していた場合、チャネルCH2に対応するサンプリング回数のときの信号強度が、不規則に変動する。このとき、チャネルCH2に対応するサンプリング回数11〜21における信号は、
図5Bに示すサンプリング回数11〜21における信号と異なる。第1のリスニングと第2のリスニングとで同じチャネルCH2を外部の装置が使用していたとしても、第1のリスニングと第2のリスニングとで送信する情報等が同じではないためである。
【0087】
図3を再び参照して、次に、レーダ装置10は、第1の受信信号と第2の受信信号との差分を算出する(S30)。具体的には、演算部213は、第1の受信信号を第1のリスニング部211から取得し、かつ、第2の受信信号を第2のリスニング部212から取得する。そして、演算部213は、第1の受信信号と第2の受信信号との差分である差分信号を算出する。演算部213は、算出した差分信号を信号強度検知部214に出力する。なお、ステップS30は、強度取得ステップの一例である。
【0088】
信号強度検知部214は、取得した差分信号に基づいて、当該差分信号の強度(信号強度)を検知する(S40)。信号強度検知部214における差分信号の強度の算出方法は、上記で説明した方法のいずれかが採用される。以下では、信号強度検知部214は、RMS(2乗平均平方根)値を差分信号の強度として算出する例について説明する。なお、ステップS40は、強度取得ステップの一例である。
【0089】
信号強度検知部214が算出する差分信号の強度について、
図5C及び
図6Cを参照しながら説明する。
図5Cは、外部の装置からの電波を受信していない場合における差分信号の強度の一例を示す図である。
図6Cは、外部の装置からの電波を受信している場合における差分信号の強度の一例を示す図である。
図5C及び
図6Cに示す縦軸は、差分信号の信号強度(RMS値)を示しており、横軸は、サンプリング回数を示す。なお、
図5C及び
図6Cに示す強度は、チャネルCH1〜CH3のそれぞれにおける、差分信号のRMS値を示している。
【0090】
図5Cに示すように、他の装置からの電波を受信していない場合、差分信号の強度は、チャネルCH1〜CH3のそれぞれで、ほぼゼロとなる。
図5A及び
図5Bに示すように、ノイズが実質的に変化しないので、その差分をとることで、ノイズが除去された信号(例えば、差分信号)の強度を取得することができる。
【0091】
また、
図6Cに示すように、他の装置からの電波を受信している場合、差分信号の強度は、チャネルCH2以外でほぼゼロとなる。また、チャネルCH2の周波数帯(
図6Cにおいては、チャネルCH2に対応するサンプリング回数)の強度は、大きな値をとる。
図6Cは、ノイズが除去されて、外部の装置で使用されている周波数帯の電波の強度のみを示している。言い換えると、レーダ装置10は、
図6A及び
図6Bに示すような、取得した時刻が異なる2つの受信信号の差分をとることで、当該2つの受信信号に含まれる他の装置の電波及びノイズのうちノイズのみを除去することで、他の装置の電波の強度を取得することができる。
【0092】
信号強度検知部214は、検知した差分信号の強度を干渉検知部215に出力する。
【0093】
なお、ステップS40では、信号強度検知部214は、格納されている第1の受信信号と、第2のリスニング部212が現在取得した第2の受信信号とに基づく差分信号の強度を算出してもよい。つまり、信号強度検知部214は、格納されている第1の受信信号(例えば、予め取得されている受信信号)を用いて、信号強度を取得してもよい。この場合、ステップS30で、演算部213は、格納されている第1の受信信号と、第2のリスニング部212が現在取得した第2の受信信号とに基づいて差分信号を算出する。
【0094】
格納されている第1の受信信号は、予め受信アンテナ131を介して取得された信号であって、第1のリスニング部211の記憶レジスタに格納されている信号である。格納されている第1の受信信号を用いる場合、第1のリスニング(S10)と第2のリスニング(S20)とは、時間をあけて実行されてもよい。そして、ステップS10(第1のリスニング)とステップS20(第2のリスニング)との間に、第1のリスニングで取得した第1の受信信号を格納する格納ステップを含んでいてもよい。
【0095】
図3を再び参照して、干渉検知部215は、信号強度検知部214から取得した差分信号の強度と第1の閾値との比較を行う(S50)。干渉検知部215は、例えば、強度(例えば、
図5C及び
図6Cに示す信号強度が第1の閾値より小さいか否かを判定する機能を有する。第1の閾値は、例えば、DSP200が備える記憶部(図示しない)に予め格納されている。なお、ステップS50は、比較ステップの一例である。
【0096】
本実施の形態では、干渉検知部215は、RMSの強度と、第1の閾値とを比較することで、上記の判定を行う。干渉検知部215は、強度が第1の閾値より小さいと判定する(S50でYes)と、レーダ制御部220に電波検知モードから物体検知モードに切り替えるためのモード切替信号を出力する。干渉検知部215は、ステップS50でYesの場合、つまりレーダ装置10が使用する周波数帯の電波を外部の装置が使用していない場合、物体を検知するための電波を送信しても干渉等の発生が起こる可能性が低いので、レーダセンサ100に物体の検知を行わせる。
【0097】
レーダ制御部220は、干渉検知部215からモード切替信号を取得すると、レーダ装置10の動作モードを電波検知モードから物体検知モードに切り替える。つまり、レーダ制御部220は、強度が第1の閾値より小さい場合に、レーダセンサ100に物体を検知するための電波の送信を開始させる(S60)。つまり、レーダ装置10は、物体の検知を開始する。なお、ステップS60は、送信開始ステップの一例である。
【0098】
また、干渉検知部215により強度が第1の閾値以上であると判定される(S50でNo)と、レーダ装置10は、所定の期間待機する(S70)。待機とは、例えば、物体検知モードにおける物体の検知及び電波検知モードにおける外部の装置の電波の有無の検知を行わないことを意味する。
【0099】
そして、レーダ制御部220は、所定の期間経過すると、待機した期間の累計である累計期間が第2の閾値より大きいか否かを判定する(S80)。そして、レーダ制御部220は、累積期間が第2の閾値以下である場合(S80でNo)、ステップS10に戻りステップS10〜S50の以降の処理を再度実行する。レーダ制御部220は、累積期間が第2の閾値より大きくなるまで、上記の処理を繰り返し実行する。
【0100】
また、レーダ制御部220は、累積期間が第2の閾値より大きい場合(S80でYes)、リスニングを停止する(S90)。具体的には、レーダ制御部220は、ステップS80の後に、ステップS10からの処理を行わない。このように、レーダ制御部220は、待機した累積期間が第2の閾値より大きい場合に、ステップS70の後にステップS10〜S50の処理の実行を停止する。そして、レーダ装置10は、電波検知モードの動作を終了する。このとき、物体の検出は、例えば、行われなくてもよい。なお、ここでの第2の閾値は、期間を判定するための閾値である。第2の閾値は、例えば、DSP200が備える記憶部(図示しない)に予め格納されている。
【0101】
なお、上記の処理は、例えば、物体の検出を行う前のそれぞれで実行される。レーダ装置10は、例えば、予め定められた期間ごと(例えば、1msecごと)に物体の検知を行う。ステップS70における所定の期間は、当該予め定められた期間より短い期間である。例えば、所定の期間は、当該予め定められた期間と、ステップS10〜S50までの処理に要する期間とに基づいて決定される。例えば、所定の期間は、当該予め定められた期間と、レーダ装置10がレーダとして動作している期間とに基づいて決定される。
【0102】
なお、
図3に示す処理のうち、少なくとも一部は行われなくてもよい。例えば、ステップS70は、行われなくてもよい。
【0103】
なお、上記では、第1の受信信号及び第2の受信信号はともに、他の装置が電波を発信している又は発信していないときに受信した電波に基づく信号である例について説明したが、これに限定されない。第1の受信信号及び第2の受信信号の一方は、他の装置が電波を発信しているときに受信した電波に基づく信号であり、かつ、第1の受信信号及び第2の受信信号の他方は、他の装置が電波を発信していないときに受信した電波に基づく信号であることが起こり得る。言い換えると、第1のリスニングは、他の装置が電波を発信しているとき及び発信していないときの一方において実行されており、第2のリスニングは、他の装置が電波を発信しているとき及び発信していないときの他方において実行されていることが起こり得る。
【0104】
このような場合における差分信号は、例えば、
図5Aに示す第1の受信信号及び
図6Bに示す第2の受信信号、又は、
図6Aに示す第1の受信信号及び
図5Bに示す第2の受信信号の差分から算出される。当該差分信号の強度は、第1の閾値を超える(S50でNoと判定される)ので、この場合は、電波の送信は開始されない。また、第1の閾値は、当該差分信号の強度より小さい強度であるとよい。
【0105】
ここで、ステップS10〜S50の処理について、さらに、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7は、本実施の形態に係るレーダ装置10が複数のチャネルの電波を受信するときの受信動作の一例を説明するための図ある。
図8は、本実施の形態に係るレーダ装置10が複数のチャネルの電波を受信するときの受信動作の他の一例を説明するための図ある。
図7及び
図8では、第1の受信周波数帯及び第2の受信周波数帯がチャネルCH1〜CH3(複数のチャネルの一例)を含む場合を図示している。
【0106】
図7に示すように、レーダセンサ100は、チャネルCH1〜CH3を1回の受信動作で取得してもよい。つまり、レーダセンサ100は、ステップS10及びS20における受信周波数としてチャネルCH1〜CH3を含む周波数帯の電波の受信を行ってもよい。受信アンテナ131は、ステップS10及びS20において、チャネルCH1〜CH3の周波数帯を含む受信周波数帯での電波の受信を行ってもよい。また、レーダセンサ100は、それぞれのCHの一部の周波数帯で受信動作を行ってもよい。
【0107】
そして、演算部213は、ステップS30において、
図7に示す差分信号であって、チャネルCH1〜CH3の周波数帯を含む差分信号を算出する。なお、
図7の差分信号は、一例として、I信号における差分信号を示している。
【0108】
そして、信号強度検知部214は、ステップS40において、
図7に示す差分信号の強度であって、チャネルCH1〜CH3の周波数帯を含む差分信号の強度を算出する。なお、
図7に示す信号強度は、一例として、RMSの強度を示している。
【0109】
そして、干渉検知部215は、ステップS50において、チャネルCH1〜CH3までの周波数帯を含む差分信号の強度と第1の閾値とを比較する。これにより、チャネルCH1〜CH3のうちいずれかのチャネルが使用されている場合、ステップS50でNoと判定することができる。
【0110】
また、
図8に示すように、レーダセンサ100は、ステップS10及びS20における受信周波数としてチャネルCH1〜CH3の少なくとも1つを含む周波数帯の電波の受信を行ってもよい。
図8では、チャネルCH1〜CH3のそれぞれを、別々のタイミングでリスニングする例を示している。この場合、例えば、チャネルCH1〜CH3のそれぞれに対して、ステップS10〜S50の処理が実行される。例えば、複数のチャネルCH1〜CH3のそれぞれにおいて、ステップS50の判定が行われる。
【0111】
そして、例えば、チャネルCH1〜CH3の少なくとも1つにおいてステップS50でYesとなった場合、ステップS60に進み、チャネルCH1〜CH3のそれぞれにおいてステップS50でNoとなった場合、ステップS70に進む。
【0112】
これにより、チャネルCH1〜CH3のうち、外部の装置で使用されていないチャネルを特定することができる。レーダ装置10は、例えば、チャネルCH1〜CH3のうち外部の装置で使用されていないチャネルがある場合、当該チャネルを用いて物体を検出することをできる。
【0113】
また、チャネルCH1〜CH3の少なくとも1つにおいてステップS50でNoと判定された場合、当該ステップS50でNoと判定された時点でステップS70に進んでもよい。これにより、ステップS10〜S50までの処理の高速化を実現できる。
【0114】
[3.効果]
上述したように、電波検知モードにおいて、干渉する可能性があるか否かを判定するために、2回のリスニングが行われる。具体的には、第1のリスニング(S10)、及び、第1のリスニングの後の第2のリスニング(S20)が行われる。そして、第1のリスニングで取得した第1の受信信号と第2のリスニングで取得した第2の受信信号との差分信号に基づいて、干渉する可能性があるか否かの判定が行われる。
【0115】
これにより、レーダ装置10が周波数変調方式を用いて物体を検知するレーダ装置であり、リスニング時の受信信号に当該周波数変調方式に応じたノイズであって、時間とともに強度が変化するノイズが含まれている場合であっても、当該ノイズを除去することができる。よって、干渉する可能性があるか否かの判定を正確に行うことができる。
【0116】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の1つまたは複数の態様に係るレーダ装置10の制御方法、及び、レーダ装置10について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0117】
例えば、上記実施の形態では、第1のリスニング及び第2のリスニングにおけるセンシング期間Tcが同じである例について説明したが、センシング期間Tcは、互いに異なっていてもよい。
【0118】
また、上記実施の形態では、受信信号の信号強度は、相対値である例について説明したが、これに限定されない。例えば、信号強度は、絶対値であってもよい。
【0119】
また、上記実施の形態では、制御方法は、周波数変調方式を用いて物体を検知するレーダ装置10に適用される例について説明したが、これに限定されない。例えば、制御方法は、固定周波数により物体を検知するレーダ装置に適用されてもよい。
【0120】
また、上記実施の形態では、
図3に示すステップS80において、累積期間が第2の閾値より大きいか否かを判定したが、これに限定されない。例えば、ステップS80では、ステップS70が実行された回数(所定の期間待機した回数)と、第2の閾値とを比較し、当該回数が第2の閾値より大きい場合に、ステップS90に進んでもよい。ここでの第2の閾値は、回数を判定するための閾値である。
【0121】
また、上記実施の形態では、
図3に示すステップS80でNoと判定された場合、ステップS10〜S50のそれぞれが再度実行される例について説明したが、これに限定されない。例えば、
図3に示すステップS80でNoと判定された場合、ステップS10は実行されず、ステップS20〜S50までの処理が実行されてもよい。この場合、第1の受信信号は、ステップS50でNoと判定される前に受信した第1の受信信号又は第2の受信信号の一方が用いられてもよい。当該信号は、例えば、第1のリスニング部211又は第2のリスニング部212の記憶レジスタに格納されている。なお、
図3に示すステップS80でNoと判定された場合、ステップS10及びS20のうち少なくともステップS20は実行される。
【0122】
また、上記実施の形態における
図3に示すステップS10及びS20では、低周波数から高周波数へと変化させる(例えば、レーダ装置10の周波数変調方式がFMCW変調である場合、低周波数から高周波数へ連続して変化させる)ことで電波受信が行われてもよいし、高周波数から低周波数へと変化させる(例えば、レーダ装置10の周波数変調方式がFMCW変調である場合、高周波数から低周波数へ連続して変化させる)ことで電波受信が行われてもよい。
【0123】
また、上記実施の形態では、複数のCHをリスニングし一部の信号帯域(例えばCH2)で干渉を検知すると、再リスニングするとしたが、この動作に限定されない。空きのCH(例えばCH1とCH3)を検知したら、その空きCHの周波数の範囲で電波の送信を開始してもよい。
【0124】
また、無線通信装置として、IEEE802.11adとしたが、これに限定されない。同じ周波数帯域を使用する無線通信機器であれば全て対象である。この場合、CH条件や周波数が異なるだけで、効果は同じである。
【0125】
また、上記各実施の形態におけるレーダ装置10が備える構成要素の一部又は全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。
【0126】
システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、a)DSP又はマイクロプロセッサ、b)ROM(Read Only Memory)、c)RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、プログラムが記憶されている。DSP又はマイクロプロセッサが、プログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0127】
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0128】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0129】
また、上記各実施の形態におけるレーダ装置10が備える構成要素は、通信ネットワークを介して接続された複数の装置に分散して備えられてもよい。
【0130】
また、本発明の一態様は、このようなレーダ装置10だけではなく、レーダ装置10に含まれる特徴的な構成要素をステップとするレーダ装置10の制御方法であってもよい。また、本発明の一態様は、レーダ装置10の制御方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
【0131】
なお、上記各実施の形態において、レーダ装置10の各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。