【解決手段】流量センサ100は、リードフレーム9と、空洞部33およびダイヤフラム32を有する第一半導体チップ31と、リードフレーム9の他面側に設けられた薄膜12と、流量検出部50と、流量検出用流路8および樹脂換気口22を有し、リードフレーム9、第一半導体チップ31および薄膜12それぞれの少なくとも一部を覆う樹脂6とを備える。リードフレーム9は、空洞部33に連通する複数の分割開口部14aを有する連通開口部14と、少なくとも分割開口部14aのいずれかと樹脂換気口22を連通する換気用通路21と、樹脂換気口22に連通するリード換気口20を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
以下の実施形態では、同一の機能を有するが、形状・大きさ・位置・配置などが異なる部材または構成に同一の符号を用いていることがある。これは、対比説明における理解を容易にするためのものであり、同一の符号であっても、形状・大きさ・位置・配置などが同一であると解釈されるものではない。
【0009】
−第1の実施形態−
図1〜
図11を参照して、本発明の流量センサの第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による流量センサの回路構成の一実施の形態を示す回路ブロック図である。
図1において、第1の実施形態における流量センサ100は、CPU(Central Processing Unit)1を有し、さらに、このCPU1に入力信号を入力するための入力回路2、および、CPU1からの出力信号を出力するための出力回路3を有している。流量センサ100にはデータを記憶するメモリ4が設けられており、CPU1は、メモリ4にアクセスして、メモリ4に記憶されているデータを参照できるようになっている。
【0010】
CPU1は、出力回路3を介して、トランジスタTrのベース電極と接続されている。トランジスタTrのコレクタ電極は電源PSに接続され、トランジスタTrのエミッタ電極は発熱抵抗体HRを介してグランド(GND)に接続されている。トランジスタTrは、CPU1によって制御されるようになっている。トランジスタTrのベース電極は、出力回路3を介してCPU1に接続されているので、CPU1からの出力信号がトランジスタTrのベース電極に入力される。
【0011】
CPU1からの出力信号(制御信号)によって、トランジスタTrを流れる電流が制御される。CPU1からの出力信号によってトランジスタTrを流れる電流が大きくなると、電源PSから発熱抵抗体HRに供給される電流が大きくなり、発熱抵抗体HRの加熱量が大きくなる。CPU1からの出力信号によってトランジスタTrを流れる電流が少なくなると、発熱抵抗体HRへ供給される電流が少なくなり、発熱抵抗体HRの加熱量は減少する。
【0012】
このように第1の実施形態における流量センサ100では、CPU1によって発熱抵抗体HRを流れる電流量が制御され、これによって、発熱抵抗体HRからの発熱量がCPU1によって制御されるように構成されている。
【0013】
第1の実施形態における流量センサ100では、CPU1によって発熱抵抗体HRを流れる電流を制御するため、ヒータ制御ブリッジHCBが設けられている。ヒータ制御ブリッジHCBは、発熱抵抗体HRから放射される発熱量を検知し、この検知結果を入力回路2へ出力する。CPU1は、ヒータ制御ブリッジHCBからの検知結果を入力することができ、これに基づいて、トランジスタTrを流れる電流を制御する。
【0014】
具体的には、ヒータ制御ブリッジHCBは、参照電圧Vref1とグランド(GND)との間にブリッジを構成する抵抗体R1〜抵抗体R4を有している。このように構成されているヒータ制御ブリッジHCBでは、発熱抵抗体HRで加熱された気体が吸気温度よりもある一定温度(ΔT、例えば、100℃)だけ高い場合に、ノードAの電位とノードBの電位の電位差が0Vとなるように、抵抗体R1〜抵抗体R4の抵抗値が設定されている。つまり、ヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R1〜抵抗体R4は、抵抗体R1と抵抗体R3を直列接続した構成要素と、抵抗体R2と抵抗体R4を直列接続した構成要素とが、参照電圧Vref1とグランド(GND)との間に並列接続されるようにしてブリッジが構成されている。そして、抵抗体R1と抵抗体R3の接続点がノードAとなっており、抵抗体R2と抵抗体R4の接続点がノードBとなっている。
【0015】
このとき、発熱抵抗体HRで加熱された気体は、ヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R1に接触するようになっている。したがって、発熱抵抗体HRからの発熱量によって、ヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R1の抵抗値が主に変化することになる。このように抵抗体R1の抵抗値が変化すると、ノードAとノードBとの間の電位差が変化する。このノードAとノードBとの電位差は、入力回路2を介してCPU1に入力されるので、CPU1は、ノードAとノードBとの電位差に基づいて、トランジスタTrを流れる電流を制御する。
【0016】
具体的には、CPU1は、ノードAとノードBとの電位差が0VとなるようにトランジスタTrを流れる電流を制御して、発熱抵抗体HRからの発熱量を制御するようになっている。すなわち、第1の実施形態における流量センサ100では、CPU1がヒータ制御ブリッジHCBの出力に基づいて、発熱抵抗体HRで加熱された気体が吸気温度よりもある一定温度(ΔT、例えば、100℃)だけ高い一定値に保持するようにフィードバック制御するように構成されている。
【0017】
第1の実施形態における流量センサ100は、気体の流量を検知するための温度センサブリッジTSBを有している。この温度センサブリッジTSBは、参照電圧Vref2とグランド(GND)との間にブリッジを構成する4つの測温抵抗体から構成されている。この4つの測温抵抗体は、2つの上流測温抵抗体UR1、UR2と、2つの下流測温抵抗体BR1、BR2から構成されている。
【0018】
図1の矢印の方向は、気体が流れる方向を示しており、この気体が流れる方向の上流側に上流測温抵抗体UR1、UR2が設けられ、下流側に下流測温抵抗体BR1、BR2が設けられている。これらの上流測温抵抗体UR1、UR2および下流測温抵抗体BR1、BR2は、発熱抵抗体HRまでの距離が同じになるように配置されている。
温度センサブリッジTSBでは、参照電圧Vref2とグランド(GND)の間に上流測温抵抗体UR1と下流測温抵抗体BR1が直列接続されており、この上流測温抵抗体UR1と下流測温抵抗体BR1の接続点がノードCとなっている。
【0019】
グランド(GND)と参照電圧Vref2の間に上流測温抵抗体UR2と下流測温抵抗体BR2が直列接続されており、この上流測温抵抗体UR2と下流測温抵抗体BR2の接続点がノードDとなっている。
【0020】
ノードCの電位とノードDの電位は、入力回路2を介してCPU1に入力されるように構成されている。矢印方向に流れる気体の流量が零である無風状態のとき、ノードCの電位とノードDの電位との差電位が0Vとなるように、上流測温抵抗体UR1、UR2と下流測温抵抗体BR1、BR2の各抵抗値が設定されている。
【0021】
具体的には、上流測温抵抗体UR1、UR2と下流測温抵抗体BR1、BR2は、発熱抵抗体HRからの距離が等しく、かつ、抵抗値も等しくなるように構成されている。このため、温度センサブリッジTSBでは、発熱抵抗体HRの発熱量にかかわらず、無風状態であれば、ノードCとノードDの差電位は0Vとなるように構成されていることがわかる。
【0022】
第1の実施形態における流量センサ100は上記のように構成されており、以下に、その動作について
図1を参照しながら説明する。
まず、CPU1は、出力回路3を介してトランジスタTrのベース電極に出力信号(制御信号)を出力することにより、トランジスタTrに電流を流す。すると、トランジスタTrのコレクタ電極に接続されている電源PSから、トランジスタTrのエミッタ電極に接続されている発熱抵抗体HRに電流が流れる。このため、発熱抵抗体HRは発熱する。そして、発熱抵抗体HRからの発熱で暖められた気体がヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R1を加熱する。
【0023】
このとき、発熱抵抗体HRで暖められた気体が一定温度(例えば、100℃)だけ高くなっている場合、ヒータ制御ブリッジHCBのノードAとノードBの差電位が0Vとなるように、抵抗体R1〜R4の各抵抗値が設定されている。このため、例えば、発熱抵抗体HRで暖められた気体が一定温度(例えば、100℃)だけ高くなっている場合、ヒータ制御ブリッジHCBのノードAとノードBとの間の差電位は0Vとなり、この差電位(0V)が入力回路2を介してCPU1に入力される。そして、ヒータ制御ブリッジHCBからの差電位が0Vであることを認識したCPU1は、出力回路3を介してトランジスタTrのベース電極に、現状の電流量を維持するための出力信号(制御信号)を出力する。
【0024】
一方、発熱抵抗体HRで暖められた気体が一定温度(例えば、100℃)からずれている場合、ヒータ制御ブリッジHCBのノードAとノードBとの間に0Vではない差電位が発生し、この差電位が入力回路2を介してCPU1に入力される。そして、ヒータ制御ブリッジHCBからの差電位が発生していることを認識したCPU1は、出力回路3を介してトランジスタTrのベース電極に、差電位が0Vになるような出力信号(制御信号)を出力する。
【0025】
例えば、発熱抵抗体HRで暖められた気体が一定温度(例えば、100℃)よりも高くなる方向の差電位が発生している場合、CPU1は、トランジスタTrを流れる電流が減少するような制御信号(出力信号)を、トランジスタTrのベース電極へ出力する。これに対し、発熱抵抗体HRで暖められた気体が一定温度(例えば、100℃)よりも低くなる方向の差電位が発生している場合、CPU1は、トランジスタTrを流れる電流が増加するような制御信号(出力信号)を、トランジスタTrのベース電極へ出力する。
【0026】
以上のようにして、CPU1は、ヒータ制御ブリッジHCBのノードAとノードBとの間の差電位が0V(平衡状態)になるように、ヒータ制御ブリッジHCBからの出力信号に基づいて、フィードバック制御する。このことから、第1の実施形態における流量センサ100では、発熱抵抗体HRで暖められた気体が一定温度となるように制御されることがわかる。
【0027】
次に、第1の実施形態における流量センサ100での気体の流量を測定する動作について説明する。まず、無風状態の場合について説明する。矢印方向に流れる気体の流量が零である無風状態のとき、温度センサブリッジTSBのノードCの電位とノードDの電位との差電位が0Vとなるように、上流測温抵抗体UR1、UR2と下流測温抵抗体BR1、BR2の各抵抗値が設定されている。
【0028】
具体的には、上流測温抵抗体UR1、UR2と下流測温抵抗体BR1、BR2は、発熱抵抗体HRからの距離が等しく、かつ、抵抗値も等しくなるように構成されている。このため、温度センサブリッジTSBでは、発熱抵抗体HRの発熱量にかかわらず、無風状態であれば、ノードCとノードDの差電位は0Vとなり、この差電位(0V)が入力回路2を介してCPU1に入力される。そして、温度センサブリッジTSBからの差電位が0Vであることを認識したCPU1は、矢印方向に流れる気体の流量が零であると認識し、出力回路3を介して気体流量Qが零であることを示す出力信号を流量センサ100の出力値として出力する。
【0029】
続いて、
図1の矢印方向に気体が流れている場合を考える。この場合、
図1に示すように、気体の流れる方向の上流側に配置されている上流測温抵抗体UR1、UR2は、矢印方向に流れる気体によって冷却される。このため、上流測温抵抗体UR1、UR2の温度は低下する。これに対し、気体の流れる方向の下流側に配置されている下流測温抵抗体BR1、BR2は、発熱抵抗体HRで暖められた気体が下流測温抵抗体BR1、BR2に流れてくるので温度が上昇する。この結果、温度センサブリッジTSBのバランスが崩れ、温度センサブリッジTSBのノードCとノードDとの間に零ではない差電位が発生する。
【0030】
この差電位が入力回路2を介してCPU1に入力される。そして、温度センサブリッジTSBからの差電位が零ではないことを認識したCPU1は、矢印方向に流れる気体の流量が零ではないことを認識する。その後、CPU1はメモリ4にアクセスする。メモリ4には、差電位と気体流量を対応づけた対比表(テーブル)が記憶されているので、メモリ4にアクセスしたCPU1は、メモリ4に記憶されている対比表から気体流量Qを算出する。このようにして、CPU1で算出された気体流量Qは出力回路3を介して、第1の実施形態における流量センサ100から出力される。以上のようにして、第1の実施形態における流量センサによれば、気体の流量を求めることができる。
【0031】
次に、第1の実施形態における流量センサのレイアウト構成について説明する。例えば、
図1に示す第1の実施形態における流量センサは、2つの半導体チップに形成される。具体的には、発熱抵抗体HR、ヒータ制御ブリッジHCBおよび温度センサブリッジTSBが第一半導体チップ31(
図4参照)に形成され、CPU1、入力回路2、出力回路3およびメモリ4などが第二半導体チップ41(
図4参照)に形成される。以下では、発熱抵抗体HR、ヒータ制御ブリッジHCBおよび温度センサブリッジTSBが形成されている第一半導体チップ31のレイアウト構成について説明する。
【0032】
図2は、第1の実施形態における流量センサの一部を構成した第一半導体チップ31のレイアウト構成を示す平面図である。
図2に示すように、第一半導体チップ31が矩形形状をしており、この第一半導体チップ31の左側から右側に向って(矢印方向)、気体が流れる。矩形形状をした第一半導体チップ31の主面側に矩形形状のダイヤフラム32(
図4参照)が形成されている。ダイヤフラム32とは、第一半導体チップ31の厚さを薄くした薄板領域のことを示している。つまり、ダイヤフラム32が形成されている領域の厚さは、第一半導体チップ31の他の領域の厚さよりも薄くなっている。
【0033】
ダイヤフラム32が形成されている裏面領域に相対する第一半導体チップ31の表面領域には、流量検出部50が形成されている(
図2参照)。流量検出部50の中央部には、発熱抵抗体HRが形成されており、この発熱抵抗体HRの周囲にヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R1が形成されている。そして、流量検出部50の外側にヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R2〜R4が形成されている。このように形成された抵抗体R1〜R4によってヒータ制御ブリッジHCBが構成される。
ヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R1は、発熱抵抗体HRの近傍に形成されているので、発熱抵抗体HRからの発熱で暖められた気体の温度を抵抗体R1に精度良く反映させることができる。
【0034】
一方、ヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R2〜R4は、発熱抵抗体HRから離れて配置されているので、発熱抵抗体HRからの発熱の影響を受けにくくすることができる。
【0035】
したがって、抵抗体R1は発熱抵抗体HRで暖められた気体の温度に敏感に反応するように構成することができるとともに、抵抗体R2〜R4は発熱抵抗体HRの影響を受けにくく抵抗値を一定値に維持しやすく構成することができる。このため、ヒータ制御ブリッジHCBの検出精度を高めることができる。
【0036】
さらに、流量検出部50に形成されている発熱抵抗体HRを挟むように、上流測温抵抗体UR1、UR2と下流測温抵抗体BR1、BR2が配置されている。具体的に、気体が流れる矢印方向の上流側に上流測温抵抗体UR1、UR2が形成され、気体が流れる矢印方向の下流側に下流測温抵抗体BR1、BR2が形成されている。
【0037】
このように構成することにより、気体が矢印方向に流れる場合、上流測温抵抗体UR1、UR2の温度を低下させることができるとともに、下流測温抵抗体BR1、BR2の温度を上昇させることができる。このように流量検出部50に配置されている上流測温抵抗体UR1、UR2および下流測温抵抗体BR1、BR2により温度センサブリッジTSBが形成される。
【0038】
上述した発熱抵抗体HR、上流測温抵抗体UR1、UR2および下流測温抵抗体BR1、BR2は、例えば、白金(プラチナ)などの金属膜やポリシリコン(多結晶シリコン)などの半導体薄膜をスパッタリング法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの方法で形成した後、イオンエッチングなどの方法でパターニングすることにより形成することができる。
【0039】
このように構成されている発熱抵抗体HR、ヒータ制御ブリッジHCBを構成する抵抗体R1〜R4、および温度センサブリッジTSBを構成する上流測温抵抗体UR1、UR2と下流測温抵抗体BR1、BR2は、それぞれ、配線WL1により接続されて、第一半導体チップ31の下辺に沿って配置されている電極パッドPD1に引き出されている。
【0040】
図3は、本発明の第1の実施形態における流量センサの外観斜視図であり、
図4は、
図3に図示された流量センサの、封止樹脂を取り除いた状態における構成部材の分解斜視図である。
流量センサ100は、
図4に図示される、第一半導体チップ31と、第二半導体チップ41と、リードフレーム9と、複数のリード7と、第一接着剤10と、第二接着剤11と、薄膜12とを、
図3に図示されるように樹脂6により封止した構造を備えている。樹脂封止前の
図4に図示される第一半導体チップ31と、第二半導体チップ41と、リードフレーム9と、複数のリード7と、第一接着剤10と、第二接着剤11と、薄膜12とは、流量センサ構成体100Aとして構成されている。第一半導体チップ31は、チップの裏面を一部除去し、肉厚を薄くして形成したダイヤフラム32を有する。ダイヤフラム32の上面側には、上述したように、発熱抵抗体HR、ヒータ制御ブリッジHCBおよび温度センサブリッジTSBから構成される流量検出部50が形成されている。
第二半導体チップ41は、上述したように、CPU1、入力回路2、出力回路3およびメモリ4を有する。
【0041】
樹脂6は、
図3に図示されるように、各リード7の一部およびダイヤフラム32上に形成された流量検出部50を露出して、第一半導体チップ31、第二半導体チップ41、リードフレーム9、第一接着剤10、第二接着剤11、薄膜12および各リード7の残りの部分を封止している。樹脂6は、リードフレーム9の長手方向に直交する方向に延在された流量検出用流路8を有する。流量検出用流路8は、樹脂6の上部側に設けられた溝である。流量検出部50は、流量検出用流路8の流路の長さ方向のほぼ中央部に、流路の底面から露出している。流量検出用流路8には、矢印で示すように、空気が流入する。流入した空気の流量が流量検出部50により検出される。樹脂6は、トランスファーモールドなどのモールド成形またはポッティングにより形成される。樹脂の形状精度や信頼性を考慮するとトランスファーモールドによる方法が好ましい。
【0042】
第一接着剤10は、第一半導体チップ31をリードフレーム9に接着する。第一接着剤10には、ダイヤフラム32に対応する開口部13が設けられている。開口部13は、リードフレーム9に設けられた連通開口部14に対応する位置に設けられている。
第二接着剤11は、第二半導体チップ41をリードフレーム9に接着する。
第一接着剤10および第二接着剤11は、はんだ、銀ペースト、金属箔、接着シート等により形成されている。低価格とし、作業性をよくするには接着シートが好ましい。特に、樹脂系材料のダイアタッチフィルムやポリイミドテープなどが好適である。
【0043】
薄膜12は、リードフレーム9の、第一半導体チップ31や第二半導体チップ41側と反対側の裏面側に配置されている。薄膜12は、金属箔または樹脂シートにより形成されている。薄膜12は、樹脂封止の際に、リードフレーム9の連通開口部14内に樹脂が流入するのを防止する機能を有する。このため、樹脂シートにより薄膜を形成する場合は、金属箔を使用するときに比べてその厚さを厚くする等の対応が必要である。樹脂シートとしては、例えば、片面に接着層が形成されたポリイミドシートを用いることができる。
【0044】
図5は、
図3に図示された流量センサの封止樹脂を取り除いた状態を、上方から見た平面図である。
図6は、
図5に図示されたリードフレームを上方から見た斜視図であり、
図7は、
図6に図示されたリードフレームを下方から見た斜視図である。
図5に図示されるように、第一半導体チップ31と第二半導体チップ41は、ボンディングワイヤ15により接続されている。第二半導体チップ41の各電極は、ボンディングワイヤ15によりリード7に接続されている。リード7は、リードフレーム側に基端を有するインナーリード部16と、インナーリード部16の基端とは反対側の先端に基端が接続されているアウターリード部18を有し、ボンディングワイヤ15は、インナーリード部16の基端にボンディングされている。リード7のアウターリード部18の基端と反対側の先端は、
図3に図示されるように、樹脂6から露出している。
【0045】
各リード7は、図示はしないが、タイバーにより連結されたリードフレーム部材として一体に形成されており、樹脂封止後、タイバーを切断することにより、個々に分離されて形成される。
図5に図示されるリードフレーム9に一体に形成されている吊りリード17は、リードフレーム部材のタイバーの一部であり、樹脂6により封止されている部分である。
【0046】
リードフレーム9は、例えば、Cu合金やFeNi合金などにより形成されている。
リードフレーム9には、
図6に図示されるように連通開口部14およびリード換気口20と、
図7に図示されるように換気用通路21とが形成されている。連通開口部14は、リードフレーム9の長手方向の一端側に設けられており、第一半導体チップ31に設けられたダイヤフラム32に対向する位置に設定されている。連通開口部14は、2×2のマトリクス状に配列された4つの分割開口部14aにより構成されている。分割開口部14aは、矩形形状を有し、仕切り部19により仕切られている。仕切り部19の幅、換言すれば、分割開口部14a間の長さは、分割開口部14aのいずれの一辺の長さよりも小さい。つまり、連通開口部14は、リードフレーム9の長手方向に直交する方向の長さが、分割開口部14aよりも小さい仕切り部19により仕切られている。このため、仕切り部19がない一つの連通開口部とする場合に比べて、仕切り部19を設けたことによりリードフレーム9の剛性が向上し、強度の小さい薄膜12の強度を補強することができる。
【0047】
リード換気口20は、リードフレーム9の長手方向の他端側近傍に設けられている。4つの分割開口部14aのうち、リード換気口20側の2つの分割開口部14aは、それぞれ、換気用通路21によりリード換気口20に連通している。換気用通路21は、リードフレーム9の、第一半導体チップ31や第二半導体チップ41側と反対側である裏面側を除去して形成された有底の溝である。換気用通路21の幅は、分割開口部14aの、換気用通路21に連結された辺の幅よりも小さく形成されている。換言すれば、換気用通路21のリードフレーム9の長手方向に直交する方向の長さは、分割開口部14aのリードフレーム9の長手方向に直交する方向の長さよりも小さい。これにより、2本の細長い換気用通路21の間にリードフレーム9の部材が残り、幅が広い一つの換気用通路21を設ける場合に比べて、薄膜12がリードフレーム9に接着される面積が増えることになり、薄膜12の強度が確保される。
【0048】
図7には、薄膜12が二点鎖線により図示されている。薄膜12は、リードフレーム9に形成された4つの分割開口部14a、2つの換気用通路21およびリード換気口20を覆っている。具体的には、薄膜12は、リードフレーム9の一端と連通開口部14との間に位置する一端141から、リードフレーム9の他端とリード換気口20の間に位置する他端142までに亘るほぼ長方形状に形成されている。薄膜12の厚さは、20〜100μm、好ましくは40〜50μm程度である。
【0049】
図8は、
図3に図示された流量センサの上面図であり、
図9は、
図8に図示された流量センサのIX−IX線断面図である。IX−IX線は、リードフレーム9に形成された換気用通路21内を通っている。
樹脂6の上部側には、リードフレーム9のリード換気口20を露出する樹脂換気口22が設けられている。
図9に図示されるように、第一半導体チップ31のダイヤフラム32と、リードフレーム9との間には、角錐台形状の空洞部33が設けられている。ダイヤフラム32は、角錐台形状の空洞部33の上面を覆って形成された、平面視で矩形形状の薄膜である。リードフレーム9の連通開口部14は、空洞部33に対向して配置されている。すなわち、連通開口部14を構成する4つの分割開口部14aと仕切り部19との全体領域は、空洞部33の底面、すなわち、リードフレーム9に接触する面の面積より小さい。リードフレーム9の下面側には、薄膜12が固着されている。
【0050】
樹脂6には、薄膜12のダイヤフラム32に対向する領域を露出する裏面側第一開口部46と、薄膜12の樹脂換気口22に対向する領域を露出する裏面側第二開口部47とが形成されている。裏面側第一開口部46と裏面側第二開口部47は、樹脂6により封止する際、金型に設けられたリードフレーム9を固定する隆起部に対応して形成された開口である。
【0051】
ダイヤフラム32の下方の空洞部33は、第一接着剤10の開口部13と、リードフレーム9に形成された連通開口部14、換気用通路21およびリード換気口20と、樹脂6に形成された樹脂換気口22を介して流量センサ100の外部と連通している。このため、空洞部33内を流量センサ100の外気圧と等しくすることができる。従って、温度変化が生じても空洞部33内と外気圧とに圧力差が生じるのを防止することができる。これにより、圧力差に起因して生じるダイヤフラム32の変形が抑制され、測定精度の向上を図ることができる。
【0052】
上述したように、連通開口部14は、複数の分割開口部14aと、分割開口部14a間に設けられた仕切り部19を有する。仕切り部19により4分割の開口を設けることで、リードフレーム9の剛性が向上し、これにより、薄膜12の強度が補強され、流量センサ100の長寿命化を図ることができる。
【0053】
図10は、
図3に図示された流量センサの、トランスファーモールド法により樹脂封止する状態を示す断面図であり、
図11は、
図10に図示された流量センサの領域XIの拡大図である。
図10に図示されるように、
図4に図示される樹脂6が封止される前の流量センサ構成体100Aは、上型24と下型25のキャビティ内に収容される。上型24には、第一半導体チップ31の、ダイヤフラム32の周囲に当接する突出部51が設けられている。突出部51の外形は、
図3に図示される流量検出用流路8の形状に形成されている。但し、突出部51の内部は除去されて、内部空間51aが形成されている。また、下型25には、上型24の突出部51に対向して薄膜12を支持する隆起部52が設けられている。
図10に図示されるように、流量センサ構成体100Aが上型24と下型25のキャビティ内にセットされた状態で、ゲート23より樹脂材を注入することにより、
図3に図示される流量センサ100を得ることができる。
【0054】
図11に拡大して図示されるように、上型24の突出部51には、内部空間51aが形成されている。このため、上型24の突出部51が、直接、ダイヤフラム32に接触することはない。これにより、流量センサ構成体100Aが上型24と下型25とにより型締めされた場合に、ダイヤフラム32に圧力がかかり、ダイヤフラム32が損傷するのを防止することができる。
【0055】
下型25に形成される隆起部52の上面52aは、上型24の突出部51の、第一半導体チップ31に当接する部分である先端部51bに囲まれる領域より大きい面積の平坦面となっている。連通開口部14、すなわち、4つの分割開口部14aと仕切り部19は、隆起部52の上面52aの領域内に配置されている。分割開口部14aの一部が隆起部52の上面52aの外側に配置されていると、樹脂封止時に、分割開口部14aの下方に設けられた薄膜12が破損し、樹脂材が分割開口部14a内に流入してしまう。薄膜12の破損を防ごうとすると型締めが不十分となり、上型24の突出部51の内部空間51a内に封止材が流入する恐れがある。
従って、すべての分割開口部14aを、隆起部52の上面52aの領域内に配置する必要がある。なお、隆起部52は、通常、平面視で円形形状に形成される。
【0056】
第1の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)流量センサ100は、リードフレーム9と、リードフレーム9側に設けられた空洞部33およびリードフレーム9とは反対側で空洞部33を覆うダイヤフラム32を有する半導体チップ31と、リードフレーム9の他面側に設けられた薄膜12と、ダイヤフラム32上に形成された流量検出部50と、流量検出部50の少なくとも一部を露出する流量検出用流路8および空洞部33に連通する樹脂換気口22を有し、リードフレーム9、第一半導体チップ31および薄膜12それぞれの少なくとも一部を覆う樹脂6とを備え、リードフレーム9は、空洞部33に連通する複数の分割開口部14aを有する連通開口部14と、少なくとも分割開口部14aのいずれかと樹脂換気口22を連通する換気用通路21と、樹脂換気口22に連通するリード換気口20を有し、薄膜12により、前記連通開口部、前記換気用通路および前記リード換気口が覆われている。このため、樹脂封止後、リードフレームや半導体チップと封止樹脂との線膨張係数の差に起因して、ダイヤフラム32に応力が発生して変形することによる検出精度の低下を抑制することができる。
【0057】
(2)連通開口部14は、リードフレーム9の長手方向に直交する方向の長さが、分割開口部14aよりも小さい仕切り部19により仕切られている。このため、仕切り部19によりリードフレーム9の剛性が向上し、強度の小さい薄膜12の強度を補強することができる。
【0058】
(3)換気用通路21のリードフレーム9の長手方向に直交する方向の長さは、分割開口部14aのリードフレーム9の長手方向に直交する方向の長さよりも小さい。このため、リードフレーム9の剛性が向上し、強度の小さい薄膜12の強度を補強することができる。
【0059】
(4)薄膜12は、片面に接着層が形成されたポリイミド樹脂を含む。このため、低価格となり、作業性もよい。
【0060】
(5)連通開口部14の面積は、空洞部33がリードフレーム9に接触する面の面積より小さい。このため、樹脂封止の際、薄膜12が型締めの圧力により損傷し、連通開口部14内に封止材が流入するのを抑制することができる。
【0061】
−第2の実施形態−
図12は、本発明の流量センサのリードフレームに形成する連通開口部の形状を正方形とした第2の実施形態を示し、連通開口部の大きさを変えたモデルA〜Dを示す図である。
リードフレーム9の連通開口部14の形状を正方形とし、その大きさのみを変え、他の構造はすべて第1の実施形態に示す構造の流量センサ100を作製した。
連通開口部14の大きさは、
図12に示すように、それぞれ、モデルAが0.4mm×0.4mm、モデルBが0.7mm×0.7mm、モデルCが1.0mm×1.0mm、モデルDが1.4mm×1.4mmである。
【0062】
上記モデルA〜Dに対し、効果評価を行い、応力解析によりダイヤフラム32の変形量を分析した。解析条件は、流量センサ100が、樹脂封止時の温度から室温に冷却される状態を模擬して、温度175℃から25℃に変化させたときの、ダイヤフラム32の変形量を算出することにより行った。従って、ダイヤフラム32の応力フリー温度は175℃である。
【0063】
図13は、
図12に図示されたモデルA〜Dの、リードフレーム連通開口部面積とダイヤフラム変形量比の関係を示す図である。
図13の横軸は、連通開口部14の面積(mm
2)であり、縦軸は、モデルAのダイヤフラム32の変形量を1としたときの各モデルA〜Dのダイヤフラム32の変形量比である。
【0064】
図13より、リードフレーム9の連通開口部14の面積が大きくなるに比例してダイヤフラム32の変形量が直線的に低下することが判る。つまり、リードフレーム9の連通開口部14の形状が正方形の場合は、連通開口部14の面積を大きくすることにより、ダイヤフラム32の変形量を抑制することができる。また、
図13に示す特性図を用いて、流量センサ100の仕様に合った連通開口部14の大きさ(面積または一辺の長さ)を算出することができる。
従って、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0065】
なお、リードフレーム9に正方形の連通開口部14を形成する場合、通常、4つの各コーナー部には、面取りが形成される。ダイヤフラム32の変形量は、このような面取りを有する正方形の実際の面積を算出して、これをリードフレーム連通開口部面積として、
図13の特性図から求めることができる。
【0066】
−第3の実施形態−
図14は、本発明の流量センサのリードフレームに形成する連通開口部を円形とした第3の実施形態を示し、連通開口部の大きさを変えたモデルE〜Gを示す図である。
リードフレーム9の連通開口部14の形状を円形とし、その大きさのみを変え、他の構造はすべて第1の実施形態に示す構造の流量センサ100を作製した。
連通開口部14の大きさは、
図14に示すように、それぞれ、モデルEが直径1.0mm、モデルFが直径1.3mm、モデルGが直径1.5mmである。
【0067】
上記モデルE〜Gに対し、効果評価を行い、応力解析によりダイヤフラム32の変形量を分析した。解析条件は、第2の実施形態と同様、流量センサ100が、樹脂封止時の温度から室温に冷却される状態を模擬して、温度175℃から25℃に変化させたときの、ダイヤフラム32の変形量を算出することにより行った。従って、ダイヤフラム32の応力フリー温度は175℃である。
【0068】
図15は、
図14に図示されたモデルE〜Gの、リードフレーム連通開口部面積とダイヤフラム変形量比の関係を示す図である。
図15の横軸および縦軸の定義は、
図13の場合と同様である。但し、縦軸は、第2の実施形態に示すモデルAのダイヤフラム変形量を1とした場合のモデルE〜Gのダイヤフラム変形量比である。
図15は、第2の実施形態の結果を示す
図13の特性図と合わせて示されている。
【0069】
図15より、リードフレーム9の連通開口部14の面積が大きくなるに比例してダイヤフラム32の変形量が低下することが判る。これは、第2の実施形態に示す連通開口部14の形状が正方形の場合と同様の結果である。しかし、同じ面積でのダイヤフラム32の変形量比は、第2の実施形態に示す連通開口部14の形状が正方形の場合の方が、第3の実施形態に示す連通開口部14の形状が円形の場合より小さい。すなわち、連通開口部14の形状が正方形の方が、円形の場合よりも、ダイヤフラム32の変形の抑制効果が大きい。
【0070】
これは、ダイヤフラム32の形状が、平面視で矩形形状であることによる。つまり、連通開口部14の形状が平面視で円形の場合、平面視で矩形形状のダイヤフラム32の変形の抑制に関与しない領域が存在するためである。
図15に示す特性図を用いて、流量センサ100の仕様に合った連通開口部14の大きさを算出することができる。
従って、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0071】
−第4の実施形態−
図16は、本発明の流量センサのリードフレームに形成する連通開口部を長方形とした第4の実施形態を示し、連通開口部の向きを変えたモデルH〜Iを示す図である。
モデルHおよびモデルIは、ともに、連通開口部14が2.0mm×0.5mmの大きさの矩形形状であるが、モデルHは、連通開口部14のリードフレーム9の長手方向の長さが長く、モデルIは、連通開口部14のリードフレーム9の長手方向に直交する方向の長さが長い矩形形状を有するものである。
【0072】
上記モデルH〜Iに対し、効果評価を行い、応力解析によりダイヤフラム32の変形量を分析した。解析条件は、第2の実施形態と同様、流量センサ100が、樹脂封止時の温度から室温に冷却される状態を模擬して、温度175℃から25℃に変化させたときの、ダイヤフラム32の変形量を算出することにより行った。従って、ダイヤフラム32の応力フリー温度は175℃である。
【0073】
図17は、
図15に図示されたモデルH〜Iの、リードフレーム連通開口部面積とダイヤフラム変形量比の関係を示す図である。
図17の横軸および縦軸の定義は、
図13の場合と同様である。但し、縦軸は、第2の実施形態に示すモデルAのダイヤフラム変形量を1とした場合のモデルH〜Iのダイヤフラム変形量比である。
図17は、第2の実施形態の結果を示す
図13の特性図と合わせて示されている。
【0074】
図17より、モデルHとモデルIとのダイヤフラム変形量比は、ほぼ同じであることが判る。また、モデルHとモデルIとのダイヤフラム変形量比は、ともに、第2の実施形態のリードフレーム9の連通開口部14の形状が正方形の場合より、小さいことが判る。
このことから、連通開口部14の形状は、長方形とする方が、ダイヤフラム32の変形を抑制する効果が大きいため好ましいと言える。但し、その差は微差であることから、実際に即しては、リードフレーム9および薄膜12の強度など、他の要素も考慮して決定する必要がある。
なお、
図17に示す特性図を用いて、流量センサ100の仕様に合った連通開口部14の大きさを算出することができる。
従って、第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0075】
−第5の実施形態−
図18は、本発明の流量センサのリードフレームに形成する連通開口部を複数の分割開口部で構成した第5の実施形態を示し、分割開口部の向きや数を変えたモデルJ〜Lを示す図である。
モデルJおよびモデルKは、連通開口部形成領域1.4mm×1.4mm内に、仕切り部19により仕切られた2つの長方形の分割開口部14aから構成される連通開口部14を形成したものである。但し、モデルJは、分割開口部14aの長辺が、リードフレーム9の長手方向に沿って配置され、モデルKは、分割開口部14aの長辺が、リードフレーム9の長手方向と直交する方向に沿って配置されている。
また、モデルLは、連通開口部形成領域1.4mm×1.4mm内に、仕切り部19により仕切られた2×2のマトリクス状に配列された4つの正方形の分割開口部14aから構成される連通開口部14を形成したものである。
モデルJ〜Lにおける仕切り部19の幅(分割開口部14a間の長さ)は、0.15mmである。
【0076】
上記モデルJ〜Lに対し、効果評価を行い、応力解析によりダイヤフラム32の変形量を分析した。解析条件は、第2の実施形態と同様、流量センサ100が、樹脂封止時の温度から室温に冷却される状態を模擬して、温度175℃から25℃に変化させたときの、ダイヤフラム32の変形量を算出することにより行った。従って、ダイヤフラム32の応力フリー温度は175℃である。
【0077】
図19は、
図18に図示されたモデルJ〜Lの、リードフレーム連通開口部面積とダイヤフラム変形量比の関係を示す図である。
図19の横軸および縦軸の定義は、
図13の場合と同様である。但し、縦軸は、第2の実施形態に示すモデルAのダイヤフラム変形量を1とした場合のモデルJ〜Lのダイヤフラム変形量比である。
図19は、第2の実施形態の結果を示す
図13の特性図と合わせて示されている。
【0078】
図19より、モデルJ〜Lのいずれも、連通開口部14の面積が0.4mm×0.4mmであり、面積がモデルJ〜Lのいずれよりも小さいモデルAよりも、ダイヤフラム変形量比が小さいことが判る。すなわち、第5実施形態においても、連通開口部14の面積が大きい方がダイヤフラム32の変形を抑制することが示されている。
【0079】
また、
図19より、連通開口部14を構成する分割開口部14aの形状が長方形であるモデルJ、Kの方が、連通開口部14を構成する分割開口部14aの形状が正方形であるモデルLよりもダイヤフラム32の変形量比が小さいことが判る。つまり、連通開口部14を複数の分割開口部14aにより構成した場合であっても、分割開口部14aの形状が長方形の方が、分割開口部14aの形状が正方形の場合よりも、ダイヤフラム32の変形を抑制する効果が大きい。このことは、連通開口部14が分割されていない場合の第4の実施形態の結果と同様である。
図19に示す特性図を用いて、流量センサ100の仕様に合った連通開口部14を構成する分割開口部14aの大きさや配列を求めることができる。
従って、第5の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0080】
−第6の実施形態−
図20は、本発明の流量センサのリードフレームに形成する連通開口部を複数の分割開口部で構成した第6の実施形態を示し、分割開口部の形状および配列が異なるモデルM〜Nを示す図である。
モデルMは、連通開口部形成領域1.4mm×1.4mm内に、仕切り部19により
円を1/4に分割した分割開口部14aを4つ形成したものである。
また、モデルNは、連通開口部形成領域0.5mm×2.0mm内に、2つの仕切り部19により分割された3つの分割開口部14aを、リードフレーム9の長手方向に沿って配列したものである。
モデルM、Nにおける仕切り部19の幅(分割開口部14a間の長さ)は、0.15mmである。
【0081】
上記モデルM、Nに対し、効果評価を行い、応力解析によりダイヤフラム32の変形量を分析した。解析条件は、第2の実施形態と同様、流量センサ100が、樹脂封止時の温度から室温に冷却される状態を模擬して、温度175℃から25℃に変化させたときの、ダイヤフラム32の変形量を算出することにより行った。従って、ダイヤフラム32の応力フリー温度は175℃である。
【0082】
図21は、
図20に図示されたモデルM、Nの、リードフレーム連通開口部面積とダイヤフラム変形量比の関係を示す図である。
図21の横軸および縦軸の定義は、
図13の場合と同様である。但し、縦軸は、第2の実施形態に示すモデルAのダイヤフラム変形量を1とした場合のモデルM、Nのダイヤフラム変形量比である。
図21は、第2の実施形態の結果を示す
図13の特性図と合わせて示されている。
【0083】
図21より、モデルM、Nのどちらも、連通開口部14の面積が0.4mm×0.4mmであり、面積がモデルM、Nのいずれよりも小さいモデルAよりも、ダイヤフラム変形量比が小さいことが判る。すなわち、第6実施形態においても、連通開口部14の面積が大きい方がダイヤフラム32の変形を抑制することが示されている。
【0084】
また、モデルMでは、第1の実施形態に示す連通開口部14の形状が正方形における同面積の場合よりも、ダイヤフラム変形量比が大きい。これは、連通開口部14の形状が円の場合は、連通開口部の14の形状が矩形の場合よりも、ダイヤフラム変形量比が大きいという第4の実施形態の結果と一致する。
【0085】
また、モデルNでは、第1の実施形態に示す連通開口部14の形状が正方形における同面積の場合よりも、ダイヤフラム変形量比が小さい。これは、分割開口部14aを縦列して配列することにより、1つの長方形状の連通開口部の14が構成されているためであり、この結果は、第4の実施形態の連通開口部14の形状は、長方形の場合の方が、正方形の場合よりもダイヤフラム32の変形を抑制する効果が大きいという結果と一致する。
また、分割開口部14aを仕切る仕切り部19を設けると、仕切り部19を設けずに一つの開口部とする場合に比べて、リードフレーム9の剛性を大きくすることができ、これにより、薄膜12の強度を補強することができる。従って、連通開口部14を仕切り部19により仕切られた複数の分割開口部14aにより構成することは、ダイヤフラムの変形を抑制することの他、薄膜12の強度を増強する点でも好ましい。
図21に示す特性図を用いて、流量センサ100の仕様に合った連通開口部14を構成する分割開口部14aの大きさ、形状または配列を求めることができる。
従って、第6の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0086】
なお、上記各実施形態では、流量センサ100は、第一半導体チップ31および第二半導体チップ41を備える構造として例示した。しかし、第一半導体チップ31に流量検出部の制御回路を設けるようにして、1つの半導体チップを備える流量センサ100とすることができる。
【0087】
上記では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。上記各実施形態を組み合わせたり、適宜上、変形したりしてもよく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。