【課題】最大待機時間を従来と同等又はそれ以下の値に維持しつつ、センサコントローラが送信する信号を受信することによってセンサコントローラを検出するよう構成されたスタイラスがセンサコントローラを検出するまでに消費する電力の量を低減する。
【解決手段】本発明による方法は、スタイラスを検出可能に構成されたセンサを制御するように構成されたセンサコントローラにより実行される方法であって、センサからのアップリンク信号の受信動作のスタイラスによる実行の周期よりも長い連続送信期間TCPにわたり、センサを介して複数の第1の制御信号c1を連続的に送信するステップS11と、連続送信期間TCPの後、所定の受信期間にわたり、スタイラスからの位置信号DS_Posの受信動作を行うステップS14と、所定の受信期間内における位置信号DS_Posの検出結果に応じて、スタイラスが検出されたか否かを判定するステップS15と、を含む。
前記センサコントローラは、前記連続送信期間の後に前記ダウンリンク信号の受信動作を行い、該受信動作により前記ダウンリンク信号を受信した場合に、前記センサを介して、前記スタイラスに対するコマンドを示す第2の制御信号を送信する、
請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態によるシステム1の構成を示す図である。システム1は、スタイラス100と、電子機器3に備えられたセンサコントローラ31とにより構成される。
【0020】
スタイラス100は、
図1に示すように、芯20、電極21、筆圧検出センサ23、回路基板24、及び電源25を有して構成される。電源25としては、例えば円筒型のAAAA電池が用いられる。
【0021】
芯20は、その長手方向がスタイラス100のペン軸方向と一致するように配置される棒状の部材である。芯20の先端部20aの表面には導電性材料が塗布され、電極21を構成している。芯20の後端部は、筆圧検出センサ23に当接される。筆圧検出センサ23は、芯20の先端部20aに加えられる圧力(筆圧)を検出するために用いられる。
【0022】
スタイラス100は、特許文献1に記載のアクティブスタイラスと同様に、電界の変化を信号の変化に対応付けて結合容量を介して、電子機器3に向けてダウンリンク信号DSを送信する機能を有する。電極21は、この送信を実現するためのアンテナの役割を果たす。詳細は後述するが、このダウンリンク信号DSには、位置信号DS_pos及びデータ信号DS_resが含まれる。スタイラス100の電極21は、センサコントローラ31から結合容量を介して送信される制御信号USを受信するためのアンテナとしての役割も果たす。
【0023】
電子機器3は、タッチ面を構成するセンサ30と、センサコントローラ31と、これらを含む電子機器3の各部の機能を制御するホストプロセッサ32とを有して構成される。
【0024】
センサコントローラ31は、センサ30を通じ、スタイラス100に向けて制御信号USを送信する機能を有する。詳細は後述するが、制御信号USには、第1の制御信号US_c1及び第2の制御信号US_c2が含まれる。
【0025】
本発明は、以上のような構成を有するシステム1において、スタイラス100がセンサコントローラ31を検出する方法に関する。詳細は
図4を用いて後述するが、スタイラス100は、消費電力を削減するため、センサコントローラを検出するまでの検出前期間BDは、短縮された受信期間SRPを除き、受信部71の受信動作を停止している。
【0026】
図2は、電子機器3の構成を示す図である。電子機器3は、センサ30、センサコントローラ31、及び電子機器3全体の動作を制御するホストプロセッサ32を含み構成される。センサ30は、複数の線状電極30Xと複数の線状電極30Yとがマトリクス状に配置された構成を有しており、これら線状電極30X,30Yによってスタイラス100と容量結合する。また、センサコントローラ31は、送信部60、選択部40、受信部50、ロジック部70、及び、MCU80を有して構成される。
【0027】
送信部60は、指定された送信期間、供給されたデータ(後述シンボルの値)に基づいて
図1に示した制御信号US(第1の制御信号US_c1及び第2の制御信号US_c2)を送信するための回路である。具体的には、第1の制御信号供給部61、スイッチ62、変調部(直接拡散部)63、拡散符号保持部64、及び送信ガード部65を含み構成される。
【0028】
第1の制御信号供給部61は、値のパターンの要素である繰り返し要素c1を保持しており、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t1の指示に従って、
図4の連続送信期間TCP(例えば、3msec)の間、繰り返し要素c1を連続してM(Mは2以上の整数)回にわたり繰り返し出力する機能を有する。また、連続送信期間TCPの終了直後に、所定の区切り要素STPを出力する機能も有している。
【0029】
繰り返し要素c1は、スタイラス100がセンサコントローラ31の存在を検出するために用いられるシンボルの値のパターンであり、事前に(スタイラス100がセンサコントローラ31を検出する前に)スタイラス100に既知にされているN個(Nは1以上の整数)のシンボルの値を含んで構成される。シンボルは、送信処理においては変調に用いる情報の単位であり、受信処理においては1シンボルを復調して得られる情報の単位である。本実施の形態では、1つの拡散符号の極性あるいは位相によって表わされる情報の単位として説明する。
【0030】
1シンボルの長さは、この情報の単位分の信号の時間(送信時間、又は、受信時間)に相当する。N個のシンボルの長さは、N個の情報単位が含まれる信号の時間である。1シンボルは1ビットの値を表すとしてもよいし多値を表すとしてもよい。多値を表わす場合には、所定ビット数の値(2のべき乗個数分の値、便宜上「D」と表記される)を示すこととしてもよいし、所定ビット数の値「D」に加えて所定ビット数の値のいずれにも対応しない(MCUが利用するバイナリ列化に供しない)1つ以上の値を示すこととしてもよい。なお、この「1つ以上の値」は本発明に2つであり、便宜的にそれぞれ「P」「M」と表記される。この「P」「M」は繰り返し要素c1及び区切り要素にのみ用いられる。
【0031】
繰り返し要素c1を構成するN個のシンボルは、いずれも同じ第1の値を示すこととしてもよいし、互いに異なる値を示す複数のシンボルを含むこととしてもよい。例えば、1つのシンボルにより1ビットの値を示す場合に、いずれも同じ第1の値「11」(又は「00」)を示すN(N=2)個のシンボルによって繰り返し要素c1を構成してもよいし、互いに異なる「1」を示すシンボルと「0」を示すシンボルとを含む「10」(又は「01を含むN(N=2)個のシンボルにより繰り返し要素c1を構成してもよい。
【0032】
さらに、1つのシンボルにより示される値が多値でありに上記「P」「M」が含まれる場合であれば、例えば「PM」(又は「MP」)のように、これら特定の値に対応しない値を用いて繰り返し要素c1を構成してもよい。このようにすることで、任意の連続2シンボルの値をデコードしたときに、「MP」であっても「PM」であっても「デコードされた2つのシンボルの値が異なる」ことを持って、現在受信している信号が第1の制御信号であることを判定できる。
【0033】
なお、N=1(例えば、繰り返し要素c1は「1」)としてもよく、この場合には、スタイラス100が繰り返し要素c1を検出するために必要とする最小の時間(検出前期間BDに受信部71を起動させておくことが必要となる時間。具体的には、繰り返し要素c1に含まれるシンボルの数の2個分の長さ)を最小にし、
図4に示す短縮された受信期間SRPより短いものとすることが可能になる。また、N=2とすることで、受信期間は、繰り返し要素c1に含まれるc1に含まれるシンボルの数の2個分の長さは4シンボルの長さに増加することになるが、任意連続する2個のシンボルの値を復号することによって現在受信している制御信号が第1の制御信号であることが判定できる。
【0034】
また、区切り要素STPは、連続送信期間TCPの終了をスタイラス100に通知するためのシンボルパターンであり、繰り返し要素c1の繰り返し中に現れないシンボルパターンによって構成される。一例を挙げると、上述したように、1つのシンボルにより1ビットの値を示すこととし、いずれも同じ第1の値「11」(又は「00」)を示すN個(N=2)のシンボルによって繰り返し要素c1を構成する場合には、第1の値「1」とは異なる値例えば第2の値「0」を示すシンボルを含めて区切り要素STPを構成する(「01」「10」「00」のいずれか)とすることが好ましい。また、上述したように、1つのシンボルにより多値示すこととし、繰り返し要素c1内で「P」と「M」とが交互に繰り返されることとなるようにN個のシンボルを構成する場合には、同じ値(例えば「P」)を示すシンボルのみによって、例えば「PP」あるいは「MM」のように区切り要素STPを構成することが好ましい。なお、区切り要素STPを構成するシンボルの数は、繰り返し要素c1を構成するシンボルの数に等しいとしてもよい。
【0035】
スイッチ62は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t2に基づいて第1の制御信号供給部61及びMCU80のいずれか一方を選択し、選択した一方の出力を変調部(直接拡散部)63に供給する機能を有する。スイッチ62が第1の制御信号供給部61を選択した場合、変調部(直接拡散部)63には上記繰り返し要素c1又は区切り要素STPが供給される。一方、スイッチ62がMCU80を選択した場合、変調部(直接拡散部)63には制御情報c2が供給される。
【0036】
制御情報c2は、スタイラス100への指示内容を示すコマンドを含むシンボルパターンであり、MCU80によって生成される。制御情報c2は、背景技術で説明した制御情報(コマンド)を含むビーコン信号BSに対応するものであり、スタイラス100との間でその値が事前に共有されていない複数のシンボルを含む情報である点で、繰り返し要素c1とは異なっている。スタイラス100における制御情報c2のデコードを簡単なものにする観点から、この事前に共有されていない複数のシンボルのそれぞれが示す値は、上記「P」「M」で表記される特定の値(又はビット列)とするのではなく、それぞれが「D」で表記される所定ビット数の値に対応づけられることが好ましい。制御情報c2は、この所定ビット数の値によりスタイラス100に対しての動作を指示するコマンドを構成する。コマンドには、例えば、スタイラス100が送信すべき情報の内容、スタイラス100が信号を送信すべきタイミング、あるいは、スタイラスが信号を送信する周波数等が含まれる。
【0037】
拡散符号保持部64は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t3に基づき、拡散符号PN(所定の符号列)を生成する機能を有する。拡散符号保持部64によって生成された拡散符号PNは、変調部(直接拡散部)63に供給される。
【0038】
変調部(直接拡散部)63は、スイッチ62から供給される信号(繰り返し要素c1、区切り要素STP、制御情報c2)の各シンボルの値により、拡散符号保持部64から供給される拡散符号PNの出力パターンを変更することで上述した第1の制御信号US_c1及び第2の制御信号US_c2を生成して出力する機能部である。具体的には、連続送信期間TCP内に繰り返し供給される一連の繰り返し要素c1を構成する1以上のシンボルのそれぞれの値に基づいて、拡散符号PNの極性(正転あるいは反転、1シンボルが多値を表わす場合には巡回シフト量)を変化させることにより第1の制御信号US_c1を生成し、その後に供給される区切り要素STP及び制御情報c2のそれぞれを構成する複数のシンボルの値によって拡散符号PNの極性等を変化させることによって第2の制御信号US_c2を生成するよう構成される。1つの拡散符号PNを構成するチップの数は任意であるがチップのレートに応じて送信される第1の制御信号及び第2の制御信号の周波数スペクトルを拡散し、制御信号のノイズ耐性を向上することができる。
【0039】
なお、変調部(直接拡散部)63においては、第1の制御信号US_c1及び第2の制御信号US_c2を構成する各チップに対し、さらにマンチェスター符号化を施すこととしてもよい。
【0040】
送信ガード部65は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t4に基づき、第1の制御信号US_c1及び第2の制御信号US_c2の送信期間と後述する受信期間RDSとの間に、送信動作と受信動作を切り替えるために送信と受信の両方を行わない期間であるガード期間を挿入する。
【0041】
選択部40は、ロジック部70の制御に基づいて、センサ30から信号を送信する送信期間と、センサ30により信号を受信する受信期間とを切り替えるスイッチである。具体的に説明すると、選択部40は、スイッチ44x,44yと、導体選択回路41x,41yとを含んで構成される。スイッチ44xは、ロジック部70から供給される制御信号sTRxに基づき、送信期間には、送信部60の出力端を導体選択回路41xの入力端に接続し、受信期間には、導体選択回路41xの出力端を受信部50の入力端に接続するよう動作する。スイッチ44yは、ロジック部70から供給される制御信号sTRyに基づき、送信期間には、送信部60の出力端を導体選択回路41yの入力端に接続し、受信期間には、導体選択回路41yの出力端を受信部50の入力端に接続するよう動作する。導体選択回路41xは、ロジック部70から供給される制御信号selXに基づき、複数の線状電極30Xのうちの1つを選択し、選択したものをスイッチ44xに接続するよう動作する。導体選択回路41yは、ロジック部70から供給される制御信号selYに基づき、複数の線状電極30Yのうちの1つを選択し、選択したものをスイッチ44yに接続するよう動作する。
【0042】
受信部50は、ロジック部70の制御信号ctrl_rに基づいて、スタイラス100が送信する位置信号DS_pos及びデータ信号DS_resを検出あるいは受信するための回路である。具体的には、増幅回路51、検波回路52、及び、アナログデジタル(AD)変換器53を含み構成される。
【0043】
増幅回路51は、選択部40から供給される位置信号DS_pos及びデータ信号DS_resを増幅して出力する。検波回路52は、増幅回路51の出力信号のレベルに対応した電圧を生成する回路である。AD変換器53は、検波回路49から出力される電圧を所定時間間隔でサンプリングすることによって、デジタル信号を生成する回路である。AD変換器53が出力するデジタルデータはMCU80に供給される。
【0044】
MCU80は、内部にROMおよびRAMを有し、本発明の方法を実行するためのプログラムに基づき動作するマイクロプロセッサである。ロジック部70は、MCU80の制御に基づき、上述した各制御信号を出力する。MCU80はまた、AD変換器53から供給されるデジタルデータに基づいてスタイラス100の位置を示す座標データx,y等を導出し、ホストプロセッサ32に対して出力する役割を担う。
【0045】
このようにして、MCU80は、ロジック部70と送信部60とを用いて、事前にスタイラスに値が共有されたN(Nは1以上の整数)個のシンボルがM回繰り返された信号を含む第1の制御信号US_c1が送信されるように制御する。
【0046】
また、スタイラスに対するコマンドを示す信号として、事前にスタイラスに値が共有されていないシンボルを含む第2の制御信号US_c2が送信されるように制御する。
【0047】
センサコントローラ31及びスタイラス100はそれぞれ、複数のコマンドのそれぞれと、該コマンドごとに異なる値(又はビット列)との対応関係を予め記憶している。センサコントローラ31のMCU80は、送信対象のコマンドを決定した後、決定したコマンドに対応するビット列をこの対応関係から取得し、制御情報c2として出力するよう構成される。
【0048】
図3は、スタイラス100の機能ブロックを示すブロック図である。同図に示すように、スタイラス100は、切替部SW、受信部71、送信部75、並びに制御部90を含み構成される。
【0049】
切替部SWは、制御部90からの制御信号SWCに基づき、受信Rと送信Tとを切り替えるスイッチである。受信Rの場合には電極21を受信部71に接続し、送信Tの場合には電極21を送信部75に接続する。初期状態、すなわちスタイラス100が第1の制御信号US_c1を検出するまでの検出前期間BDの間、切替部SWは受信側Rに設定される。
【0050】
受信部71は、制御部90により指示される受信期間、切替部SWから供給される信号(電極21に到来した信号)の受信と受信した信号に含まれたシンボルの値のデコードを行う回路であり、波形再生部71a及び相関演算器71bを含み構成される。受信部71は、消費電力を削減するため、センサコントローラ31を検出するまでの検出前期間BDでは、短縮された受信期間SRPを除いてその動作を停止している。
【0051】
図4も参照しながら説明すると、受信部71は、所定の周期WPa(例えば2.5msec)ごとに、
図10で説明した受信期間RPに比して短縮された、短縮された受信期間SRPの間だけ第1の制御信号US_c1(繰り返し要素c1)の受信動作を行い、センサコントローラ31が送信した繰り返し要素c1を検出する。この検出は、制御部90により指定された短縮された受信期間SRP内に受信された信号の中に1つの繰り返し要素c1が含まれるか否かを判定することによって行う。
【0052】
ここで短縮された受信期間は、周期WPaの時間のうち、1つの繰り返し要素c1の時間長(N個のシンボルの長さ)より長く、かつ、第1の制御信号US_c1の時間長(NにMを乗じた個数のシンボルの長さ)より短い期間である。センサコントローラ31が送信するタイミングに依存せずに繰り返し要素を1つ検出するために必要な時間として前述した通り、繰り返し要素c1に含まれたシンボルの数(N個)の2個分のシンボルの長さより長い時間としてもよい。
【0053】
スタイラス100は、これによってセンサコントローラ31の検出を試みる。センサコントローラ31を検出した後には、受信部71は、受信動作を継続して第2の制御信号US_c2を受信する処理を行う。具体的には、まず第2の制御信号US_c2の先頭に位置する区切り要素STPを受信し、続いて制御情報c2を受信する。
【0054】
受信部71の各部の動作について、具体的に説明する。波形再生部71aは、電極21に誘導された電荷(電圧)のレベルを、拡散符号PNのチップレートの数倍(例えば4倍)のクロックCLKで2値化し、正負の極性値のバイナリ列(PN符号のチップ列に対応)に整形して出力する機能を有する。
【0055】
相関演算器71bは、波形再生部71aが出力した正負の極性値のバイナリ列をレジスタ列に格納し、前述クロックCLKで順次シフトしながら、事前にセンサコントローラ31から値が共有され既知とされているシンボルの値のに対応した拡散符号PNとの相関演算を行うことで、受信された信号に含まれたシンボルの値をデコードして出力する。
【0056】
具体的に説明すると、上述したように繰り返し要素c1が1つのシンボルのみにより構成されている場合(例えば繰り返し要素c1の中身としてシンボル「1」が事前に定められているとき)、相関演算器71bは、この1つのシンボルが1回検出できたことをもってセンサコントローラ31が存在することを検出する。また、繰り返し要素c1が複数のシンボルにより構成されている場合(例えば、繰り返し要素c1の中身として、N=2であって、シンボルの値のパターン「MP」又は「PM」が事前に定められているとき)、相関演算器71bは、この複数のシンボルが1回検出できたことをもってセンサコントローラ31が存在することを検出する。センサコントローラ31を検出した相関演算器71bは、制御部90に対して第2の制御信号US_c2に含まれるコマンドに応じた処理など前記センサコントローラに対して信号を送信するための処理を実行する各種の処理を実行可能にするための起動信号ENを発行する。
【0057】
また、相関演算器71bは、繰り返し要素c1が検出された場合、受信信号のデコード処理を継続し(
図4の時刻t1〜時刻t2の間)、受信された信号の中に区切り要素STPが含まれるか否かを判定する。その結果、時刻t2で区切り要素STPが検出されると、検出時刻t2を制御部90に対して出力する。
【0058】
さらに、相関演算器71bは、制御部90からのスケジューリングに従って第2の制御信号US_c2を受信して制御情報c2(「0」か「1」か未知のビット値を複数含む)のデコードを行い、制御部90に出力する。
【0059】
制御部90は、マイクロプロセッサ(MCU)により構成され、受信部71から起動信号ENが供給されたこと(すなわち、受信部71が1つの繰り返し要素c1を検出したこと)を契機として起動し、センサコントローラに対して信号を送信するための各種の処理を行う。具体的には、受信部71から供給される検出時刻t2に基づいて各種信号等(制御情報c2、位置信号DS_pos、及びデータ信号DS_res)の送受信スケジュールを生成し、生成した送受信スケジュールに基づく制御信号SWCを生成して切替部SWに供給する処理と、受信部71から供給される制御情報c2に基づいてデータ信号DS_resの送信方法を制御する処理とを行う。
【0060】
また、制御信号US_c2に含まれる複数のコマンドのそれぞれと、該コマンドごとに異なるシンボルの値との対応関係を予め記憶しており、受信部71から供給されたシンボルの値(複数ビットの値)に基づいた動作を行う。
【0061】
データ信号DS_resの送信方法の制御について、詳しく説明する。制御部90は、制御情報c2により送信すべき情報の内容(ペンID、筆圧値、サイドスイッチの押下状態等)が指定されている場合、その指定に従い、電子機器3に対して送信する情報の内容を制御する。具体的には、送信する情報を含む送信データResを生成し、送信部75に供給する。また、制御情報c2によりデータ信号DS_resの送信タイミング(例えば、データ信号DS_resの送信に用いるタイムスロット)が指定されている場合、その送信タイミングでデータ信号DS_resが送られることとなるよう、送信部75に送信データResを供給するタイミングを制御する。さらに、制御情報c2によりデータ信号DS_resの送信に用いる周波数が指定されている場合、その周波数のキャリア信号を生成するよう、後述する変調部73を制御する。
【0062】
なお、受信部71が繰り返し要素c1を検出していない場合、すなわち前回の起動信号ENの供給を受けて上記処理を完了した後、未だ次の起動信号ENの供給を受けていない場合、制御部90は上記各処理の実行を休止する状態にする(すなわち、制御部90の処理を低消費電力で動作させる)こととしてもよい。これにより、制御部90の消費電力をも低減することができる。
【0063】
送信部75は、位置信号DS_pos及びデータ信号DS_resを送信する回路であり、変調部73及び昇圧回路74により構成される。
【0064】
変調部73は、所定周波数又は制御部90からの制御に従った周波数のキャリア信号(矩形波信号)を生成し、そのまま、或いは、制御部90の制御に基づいて変調したうえで出力する回路である。位置信号DS_posの送信時には、変調部73は、キャリア信号を変調せずにそのまま出力する。一方、データ信号DS_resの送信時には、制御部90から供給される送信データResによりキャリア信号を変調(OOK、PSK等)し、その結果として得られる変調信号を出力する。
【0065】
昇圧回路74は、変調部73の出力信号を一定の振幅まで昇圧することにより、位置信号DS_pos及びデータ信号DS_resを生成する回路である。昇圧回路74によって生成された位置信号DS_pos及びデータ信号DS_resは、切替部SWを経て電極21から空間に送出される。
【0066】
図4は、スタイラス100及びセンサコントローラ31の動作を時系列で説明するためのタイミング図である。また、
図5(a)は、センサコントローラ31の動作を示すフロー図であり、
図5(b)は、スタイラス100の動作を示すフロー図である。
図4において、上段Tsで示す時間軸は、スタイラス100の送信Txと受信Rxを示している。また、下段Ttで示す時間軸は、センサコントローラ31の送信Txと受信Rxを示している。以下、これらの図を参照しながら、スタイラス100及びセンサコントローラ31の動作について詳しく説明する。
【0067】
<1.検出前期間BD内の動作>
(1−1:時刻t0まで)
図4において時刻t0までの期間は、スタイラス100がセンサコントローラ31の検出範囲の外にある期間である。スタイラス100は、消費電力を削減するために、連続送信期間TCPよりも短い周期WPaで間欠的に、複数回にわたって受信部71を動作させる(
図5(b)のステップS20,S21)。具体的には、各周期WPa内において、1つの繰り返し要素c1を検出するために短縮された受信期間SRPの間に限り受信部71を動作させることとし、その他の時間は受信部71を停止させる。受信期間SRPの時間長は、繰り返し要素c1を1回受信するために必要十分な値(例えば、繰り返し要素c1に含まれるシンボルの個数であるN個の2つ分の長さ2Nより大きく、繰り返し要素c1がM回繰り返しされた信号に含まれたシンボルの長さより短い時間)に設定される。
【0068】
センサコントローラ31は、周期WPで、第1の制御信号US_c1及び第2の制御信号US_c2の送信を繰り返すよう構成される(
図5(a)のステップS10〜S13)。上述したように、第1の制御信号US_c1は、繰り返し要素c1の繰り返しからなる信号であり、第2の制御信号US_c2は、区切り要素STPと制御情報c2とからなる信号である。
【0069】
具体的に説明すると、センサコントローラ31は、周期WPの開始とともに、周期WPaより長い時間である連続送信期間TCPにわたり、繰り返し要素c1を拡散符号PNにより拡散してなる信号の送信を繰り返す。この繰り返しは、少なくとも2回以上にわたって実行される。繰り返し回数Mは、連続送信期間TCPを、繰り返し要素c1に含まれたN個のシンボルの長さで除した数になる。例えば、連続送信期間TCPが1ミリ秒で、繰り返し要素に含まれるシンボルの数Nが2で、1つのシンボル長が20μ秒である場合、繰り返し回数であるMは25回程度となる。
【0070】
ここで、繰り返し要素c1の繰り返し回数(M個)の好ましい値について説明する。センサコントローラ31が繰り返し要素c1を連続送信している間にスタイラス100が1回の受信を行えるようにするためには、スタイラス100は、時間長TCPの間に最低1回の割合で繰り返し要素の受信動作を行う必要がある。したがって、WPa≦TCP(式1)である。また、連続送信中における繰り返し要素c1の繰り返し回数を上述したMとし、1つの繰り返し要素c1の送信に要する時間をtとすると、TCP=Mtである。したがって、式1よりM≧WPa/t(式2)となる。
【0071】
1回の受信に要する時間がSRPであることから、スタイラス100の受信動作実行時間の全時間に占める割合は、SRP/WPaとなる。したがって、スタイラス100の消費電力を
図10に示した背景技術に比べて小さくするためには、このSRP/WPaがRP/WPより小さくなくてはならない。つまり、SRP/WPa<RP/WP(式3)である。
【0072】
式2及び式3より、M>(SRP/t)/(RP/WP)となる。したがって、スタイラス100の消費電力を
図10に示した背景技術に比べて小さくするためには、繰り返し回数Mを(SRP/t)/(RP/WP)より大きい値にすることが好ましいと言える。なお、センサコントローラ31が周期WPで第1の制御信号US_c1の送信を行っていることから、スタイラス100がセンサコントローラ31に接近してから互いの検出が完了するまでに要する応答時間(最大待機時間)は、
図10の例と同じ値となっている。したがって、本実施の形態によれば、繰り返し回数Mを(SRP/t)/(RP/WP)より大きい値とすることで、上記最大待機時間を従来と同等又はそれ以下の値に維持しつつ、センサコントローラ31が送信する信号を受信することによってセンサコントローラ31を検出するよう構成されたスタイラス100がセンサコントローラ31を検出するまでに消費する電力の量の低減が実現されることになる。
【0073】
さて、繰り返し要素c1を連続送信期間TCPにわたって繰り返し送信したセンサコントローラ31は、続けて第2の制御信号US_c2の送信を行う。具体的には、まず区切り要素STPを拡散符号PNにより拡散してなる信号を送信し、続いて制御情報c2を拡散符号PNにより拡散してなる信号を送信する。制御情報c2は、上述したように、コマンドを含むシンボルパターンである。
図4に示した「D」は、(上述した「P」や「M」ではなく)数値を示すシンボルを表している。
【0074】
第2の制御信号US_c2の送信を完了したセンサコントローラ31は、スタイラス100からの信号を受信するための受信期間RDSを設ける(
図5(a)のステップS14)。スタイラス100は、上記のようにして送信された第1の制御信号US_c1を受信した場合、この受信期間RDS内に位置信号DS_posを送信するよう構成される。センサコントローラ31は、受信期間RDSの間、こうして送信される位置信号DS_posの受信を待機する。
【0075】
(1−2.時刻t0〜t1)
時刻t0でスタイラス100がセンサ30の検出範囲に移動する(スタイラスダウン)と、スタイラス100は、その後に到来する連続送信期間TCP内に位置する受信期間SRPの直後の時刻t1のタイミングで、センサコントローラ31が送信した繰り返し要素c1を検出することになる(
図5(b)のステップS22のYES)。
【0076】
<2.スタイラス100がセンサコントローラ31を検出した後の動作>
(時刻t1〜t3)
スタイラス100は、繰り返し要素c1を検出すると、上述した起動信号ENを生成するとともに、その後も、受信期間SRPを越えて受信動作(受信信号のデコード処理)を継続する(
図5(b)のステップS23)。そして、スタイラス100がこの受信動作を行っている間にセンサコントローラ31が区切り要素STPを送信すると、その後の時刻t2で、スタイラス100により区切り要素STPが検出される(
図5(b)のステップS24のYES)。スタイラス100は、こうして区切り要素STPを検出した時刻t2を参照し、制御情報c2、位置信号DS_pos、及びデータ信号DS_resの送受信のスケジューリングを行う。具体的には、
図4に示すように、まず時刻t2に基づくタイミングで制御情報c2の受信を待機し(
図5(b)のステップS25)、制御情報c2が受信されたら(
図5(b)のステップS26のYES)、受信した制御情報c2に応じてデータ信号DS_res(送信データRes)を生成しつつ位置信号DS_posを送信し(
図5(b)のステップS27)、最後に、生成したデータ信号DS_resを送信する(
図5(b)のステップS28)。
【0077】
センサコントローラ31は、上述したように、第2の制御信号US_c2の送信後に受信期間RDSを設け、位置信号DS_posの受信を待機している(
図5(a)のステップS14)。位置信号DS_posを受信したセンサコントローラ31は(
図5(a)のステップS15のYES)、
図2に示した複数の線状電極30X,30Yのそれぞれにおける位置信号DS_posの受信状況に基づいてスタイラス100の位置(座標データx,y)を算出し、
図1に示したホストプロセッサ32に対して出力するとともに、再度受信期間RDSを設け、今度はデータ信号DS_resの受信を待機する(
図5(a)のステップS16)。データ信号DS_resを受信したセンサコントローラ31は、受信したデータ信号DS_resから上述した送信データResを抽出し、ホストプロセッサ32に対して出力する。
【0078】
こうしてスタイラス100から位置信号DS_pos及びデータ信号DS_resを受信した後も、センサコントローラ31は、それまでと同様にして第1の制御信号US_c1及び第2の制御信号US_c2を繰り返す。これによりスタイラス100も上述した動作を繰り返すこととなり、センサコントローラ31は、その都度、スタイラス100から位置信号DS_pos及びデータ信号DS_resを受信し、それによってスタイラス100の位置算出と、スタイラス100が送信した送信データResの取得とを行う。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態によるシステム1によれば、センサコントローラ31側が繰り返し要素c1を2回以上繰り返して送信しているので、従来のRP/WPの値(
図10参照)によっては、スタイラス100の受信動作実行時間の全時間に占める割合を従来より小さくすることが可能になる。したがって、スタイラス100がセンサコントローラ31に接近してから互いの検出が完了するまでに要する時間の最大値(最大待機時間)を従来と同等又はそれ以下の値に維持しつつ、センサコントローラ31が送信する信号を受信することによってセンサコントローラ31を検出するよう構成されたスタイラス100がセンサコントローラ31を検出するまでに消費する電力の量の低減が実現される。
【0080】
なお、本実施の形態では、区切り要素STPを第2の制御信号US_c2の先頭に配置するものとして位置付けたが、第1の制御信号US_c1の末尾に配置するものとして位置付けても構わない。いずれにしても、本実施の形態によるシステム1の動作は同様のものとなる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0082】
例えば、上記実施の形態では、センサコントローラ31は第1の制御信号US_c1の送信の都度、制御情報c2部分も含めて第2の制御信号US_c2の送信を行っていた。しかしながら、検出前期間BDにおいては、第2の制御信号US_c2の送信は区切り要素STPまでに止め、スタイラス100が検出された後にのみ制御情報c2を送るように構成することも可能であるし、検出前期間BDにおいては第1の制御信号US_c1(繰り返し要素c1)のみを送信し、スタイラス100が検出された後にのみ第2の制御信号US_c2(区切り要素STP及び制御情報c2)を送るように構成することも可能である。以下、前者の変形例(第1の変形例)及び後者の変形例(第2の変形例)のそれぞれについて、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0083】
図6は、本実施の形態の第1の変形例によるスタイラス100及びセンサコントローラ31の動作を時系列で説明するためのタイミング図である。また、
図7(a)は、本変形例によるセンサコントローラ31の動作を示すフロー図であり、
図7(b)は、本変形例によるスタイラス100の動作を示すフロー図である。
【0084】
図6に示すように、この例によるセンサコントローラ31は、検出前期間BDでは区切り要素STPの送信後に制御情報c2の送信を行わず、一方で、区切り要素STPの送信後に設ける受信期間RDS内に位置信号DS_posが検出された場合には、その受信期間RDSの経過後に制御情報c2を送信し、その後に再度受信期間RDSを設け、スタイラス100からのデータ信号DS_resの受信を待機する。
【0085】
センサコントローラ31の処理フロー上では、
図7(a)に示すように、ステップS13がステップS15の後に実行されることになる。また、スタイラス100の処理フロー上では、
図7(b)に示すように、ステップS24の直後に位置信号DS_posを送信するステップS27aが設けられ、データ信号DS_resの生成時(
図7(b)のステップS27b)には、位置信号DS_posの送信は行われないことになる。
【0086】
このように、本変形例によっても、センサコントローラ31は、第2の制御信号US_c2の送信と、データ信号DS_resの受信とを行うことができる。したがって、本変形例によっても、スタイラス100がセンサコントローラ31に接近してから互いの検出が完了するまでに要する時間の最大値(最大待機時間)を従来と同等又はそれ以下の値に維持しつつ、センサコントローラ31を検出するまでのスタイラス100の消費電力を低減することが可能になる。
【0087】
図8は、本実施の形態の第2の変形例によるスタイラス100及びセンサコントローラ31の動作を時系列で説明するためのタイミング図である。また、
図9(a)は、本変形例によるセンサコントローラ31の動作を示すフロー図であり、
図9(b)は、本変形例によるスタイラス100の動作を示すフロー図である。
【0088】
図8に示すように、この例によるセンサコントローラ31は、検出前期間BDでは第1の制御信号US_c1(繰り返し要素c1)のみを送信し、一方で、第1の制御信号US_c1の送信後に設ける受信期間RDS内に位置信号DS_posが検出された場合に、第2の制御信号US_c2(区切り要素STP及び制御情報c2)を送信する。そして、その後に再度受信期間RDSを設け、スタイラス100からのデータ信号DS_resの受信を待機する。
【0089】
ここで、
図8に示すように、本変形例によるスタイラス100は、繰り返し要素c1を1回検出したら直ちに位置信号DS_posの送信を行うよう構成される。スタイラス100をこのように構成する場合、センサコントローラ31が位置信号DS_posを受信するために必要な時間長をT1とすると、スタイラス100は、
図8に示すように時間長TCP+T1−SRPにわたって位置信号DS_posを送信し続ける必要がある。これは、スタイラス100がセンサコントローラ31により繰り返し送信される複数の繰り返し要素c1のうちの最初に送信されたものを受信した場合においても、位置信号DS_posを受信するためにセンサコントローラ31が設ける受信期間RDSの終端まで、スタイラス100が位置信号DS_posを送信し続けられるようにするためである。また、センサコントローラ31は、位置信号DS_posを受信するための受信期間RDSの終了後、時間長TCP−SRPにわたって待機した後、区切り要素STPの送信を開始する必要がある。これは、スタイラス100がセンサコントローラ31により繰り返し送信される複数の繰り返し要素c1のうちの最後に送信されたものを受信した場合においても、スタイラス100が位置信号DS_posを送信している間(すなわち、スタイラス100がセンサコントローラ31からの信号を受信できない間)に、センサコントローラ31が区切り要素STPを送信してしまうことのないようにするためである。
【0090】
センサコントローラ31の処理フロー上では、
図9(a)に示すように、ステップS15の後に時間長TCP−SRPにわたって待機するステップS17が設けられるとともに、ステップS12,S13がステップS17の後に実行されることになる。また、スタイラス100の処理フロー上では、
図9(b)に示すように、位置信号DS_posの送信がステップS22の直後に行われ(
図9(b)のステップS27c)、しかも、時間長TCP+T1−SRPにわたって位置信号DS_posの送信が継続されることになる。
【0091】
このように、本変形例によっても、センサコントローラ31は、第2の制御信号US_c2の送信と、データ信号DS_resの受信とを行うことができる。したがって、本変形例によっても、スタイラス100がセンサコントローラ31に接近してから互いの検出が完了するまでに要する時間の最大値(最大待機時間)を従来と同等又はそれ以下の値に維持しつつ、センサコントローラ31を検出するまでのスタイラス100の消費電力を低減することが可能になる。
【0092】
また、センサコントローラ31は、スタイラス100を検出した後(スタイラス100から位置信号DS_posを受信した後)に送信する第1の制御信号US_c1を構成する繰り返し要素c1の個数を、スタイラス100の検出前に送信する第1の制御信号US_c1を構成する繰り返し要素c1の個数に比べて少なくすることとしてもよい。こうすれば、繰り返し要素c1の削減数に応じた量だけセンサコントローラ31の消費電力を低減することが可能になる。なお、この場合において、センサコントローラ31は、スタイラス100からの信号が所定期間又は所定回数受信されない場合に、第1の制御信号US_c1を構成する繰り返し要素c1の個数を元に戻す(増加する)ことが好ましい。こうすることで、次にスタイラス100がセンサ30に近づいたときにいつまでも第1の制御信号US_c1が受信されなくなる、という事態の発生を避けることが可能になる。
【0093】
なお、センサコントローラ31は、スタイラス100を検出した後(スタイラス100から位置信号DS_posを受信した後)に、第1の制御信号US_c1の送信を停止することとしてもよい。すなわち、以降は第2の制御信号US_c1のみを送信することとしてもよい。この場合のセンサコントローラ31は、スタイラス100からの信号が所定期間又は所定回数受信されない場合に、スタイラス100が再度検出可能となるよう第1の制御信号US_c1の送信を再開する必要がある。
【0094】
また、センサコントローラ31は、第1の制御信号US_c1を送信して所定時間長のギャップ期間が経過した後、第2の制御信号US_c2を送信することとしてもよい。こうすれば、スタイラス100は、余裕をもって第2の制御信号US_c2を受信することが可能になる。
【0095】
また、第2の制御信号US_c2には、制御情報c2を構成する任意の値(又はビット列)に加え、該値(又はビット列)に基づいて導出された第1の誤り検出値(又はビット列)を含むこととしてもよい。第1の誤り検出値(又はビット列)の導出には、例えば巡回冗長検査を用いることが好適である。第1の誤り検出値(又はビット列)の導出は制御情報c2のみに基づいて行われ、第1の制御信号US_c1を構成する繰り返し要素c1や区切り要素STPは、第1の誤り検出値(又はビット列)の導出には関わらない。
【0096】
第1の誤り検出値(又はビット列)を含むように第2の制御信号US_c2を構成する場合、スタイラス100は、受信した第2の制御信号US_c2に基づいて第2の誤り検出値(又はビット列)を導出する処理を行う。具体的には、第2の制御信号US_c2から抽出した制御情報c2(らしき情報)に対し、センサコントローラ31が第1の誤り検出値(又はビット列)の導出に用いた演算と同じ演算を施すことによって、第2の誤り検出値(又はビット列)を導出する。そして、受信した第2の制御信号US_c2に含まれる第1の誤り検出値(又はビット列)(らしき情報)と、導出した第2の誤り検出値(又はビット列)とを比較し、一致すれば、正しく制御情報c2を受信できたと判定して次の処理に移り、一致しなければ、抽出した制御情報c2を破棄し、次の第2の制御信号US_c2の受信を待機する。これにより、スタイラス100は、正しい制御情報c2のみをセンサコントローラ31から受け取ることが可能になる。
【0097】
また、センサコントローラ31は、可変長である第2の制御信号US_c2の長さに応じ、第1の制御信号US_c1と第2の制御信号US_c2の合計ビット長が一定となるよう、その直前に送信する第1の制御信号US_c1を生成することとしてもよい。具体的には、繰り返し要素c1の繰り返し回数を増減させることにより、第1の制御信号US_c1の長さを調節することとしてもよい。こうすることで、センサコントローラ31が送信する信号のビット長を常に一定値に保つことが可能になる。
【0098】
このように、本発明に係るシステム1、スタイラス100、センサコントローラ31、及びこれらによって実行される方法によれば、センサコントローラ31側が2回以上繰り返して繰り返し要素を送信し、繰り返された繰り返し要素のうちの1つを検出することでスタイラス100がセンサコントローラ31を検出することにするため、スタイラス100が受信動作を実行しなければならない時間を短縮することができ、スタイラス100の受信動作実行時間の全時間に占める割合を小さくすることが可能になる。したがって、スタイラス100がセンサコントローラ31を検出するまでの応答時間を維持しつつも、センサコントローラ31が送信する信号を受信することによってセンサコントローラ31を検出するよう構成されたスタイラス100がセンサコントローラ31を検出するまでに消費する電力の量の低減が実現される。
【0099】
尚、スタイラス100において、受信信号に繰り返し要素c1が含まれるか否かの判定は受信部71で実行するのではなく、制御部90で行うとしてもよい。また、繰り返し要素c1が含まれるか否かの判定は、復号されたシンボルの値とスタイラス100に事前に共有されたシンボルの値とを比較するのではなく、受信した信号と予め記憶された波形形状の信号レベルの比較として実行しても良い。
【0100】
尚、センサコントローラ31において、区切り要素STPのシンボルの値のパターンは送信部60内で供給されるとして説明したが、MCU80が供給するとしても良い。また、MCU80とロジック部70とは一体のプロセッサ内で実行されるとしてもよい。
【0101】
尚、N個のシンボルはN個の符号あるいは検出ビットパターンと読み替え、N個のシンボルの長さはこのN個の符号の値あるいは検出ビットパターンに含まれるビット列を送信するため信号の時間と読み替えても良い。
【0102】
尚、容量結合を介した信号の送信を行うシステムとして説明したが、距離に対する信号レベルの減衰の大きく数十ミリまでの距離でしか互いを検出することのできない方式を利用したスタイラスとセンサコントローラに、本発明は応用することができる。