【解決手段】ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1個有する単量体(I)を含む重合性成分aの重合体である高分子成分Aを含み、前記単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm
であり、下記条件1を満たす、二次電池正極スラリー用分散剤組成物。条件1:二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分からなる成形膜の引張弾性率が、500MPa以上である。
前記単量体(I)が、カルボキシル基含有単量体(i)及び/又はカルボキシル基と反応する基を有する単量体(ii)を含む、請求項1に記載の二次電池正極スラリー用分散剤組成物。
前記単量体(I)が、前記単量体(i)を含み、前記重合性成分aに占める前記単量体(i)の重量割合が20〜90重量%である、請求項2に記載の二次電池正極スラリー用分散剤組成物。
前記単量体(I)が、前記単量体(ii)を含み、前記重合性成分aに占める前記単量体(ii)の重量割合が3〜40重量%である、請求項2又は3に記載の二次電池正極スラリー用分散剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の二次電池正極スラリー用分散剤組成物は、高分子成分Aを含む。まず、二次電池正極スラリー用分散剤組成物を構成する成分について詳しく説明する。
【0021】
〔高分子成分A〕
高分子成分A(以下、成分Aということがある)は、重合性成分aを重合して得られる重合体である。重合性成分aは、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1個有する単量体を含み、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を2個以上有する架橋剤を含むことがある成分である。単量体、架橋剤は共に付加反応が可能な成分であり、架橋剤は重合体に橋架け構造を導入することができる成分である。
【0022】
重合性成分aは、溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm
3)
1/2であり、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1個有する単量体(I)(以下、単量体(I)ということがある)を必須に含むものである。このような重合性成分aを重合して得られる高分子成分Aは、構成する重合体の分子構造から、正極活物質の分散性、剛性、弾性を持つことができる。
【0023】
単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)は、10〜17(cal/cm
3)
1/2である。単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)が上記範囲外であると、高分子成分Aの正極活物質の分散性、剛性、弾性が低下する。単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)の上限は好ましくは16(cal/cm
3)
1/2、より好ましくは15(cal/cm
3)
1/2、さらに好ましくは14(cal/cm
3)
1/2である。一方、単量体(I)の溶解度パラメーター(SP)の下限は好ましくは10.5(cal/cm
3)
1/2、より好ましくは11(cal/cm
3)
1/2、さらにこのましくは11.5(cal/cm
3)
1/2である。
なお、本願でいう溶解度パラメーター(SP)は、分子引力定数法により算出される値である。
【0024】
重合体成分aに占める単量体(I)の重量割合は、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、60〜100重量%であると好ましい。単量体(I)の重量割合が60重量%未満であると、高分子成分Aの正極活物質の分散性、剛性、弾性が低下することがある。単量体(I)の重量割合は、(1)70〜100重量%、(2)80〜100重量%、(3)85〜100重量%、(4)90〜100重量%、(5)95〜100重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0025】
単量体(I)は、酸素原子及び/又は窒素原子を有し、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を1個有する単量体(以下、単に単量体(I−1)ということがある)を含むと、本願効果を奏する観点から好ましい。
単量体(I−1)が酸素原子を有する場合、単量体(I−1)の分子量に占める単量体(I−1)の有する全ての酸素原子の原子量の合計の割合は、特に限定はないが、好ましくは0.1〜0.6である。単量体(I−1)の有する全ての酸素原子の原子量の合計の割合が0.1未満であると、高分子成分Aの剛性、正極活物質の分散性が低下することがある。一方、単量体(I−1)の有する全ての酸素原子の原子量の合計の割合が0.6超であると、高分子成分Aの剛性、弾性が低下することがある。単量体(I−1)の分子量に占める単量体(I−1)の有する全ての酸素原子の原子量の合計の割合の上限は、より好ましくは0.5、さらに好ましくは0.45、特に好ましくは0.4、最も好ましくは0.35はである。一方、単量体(I)の分子量に占める単量体(I−1)の有する全ての酸素原子の原子量の合計の割合の下限は、より好ましくは0.15、さらに好ましくは0.2、特に好ましくは0.25、最も好ましくは0.3である。
【0026】
単量体(I−1)が窒素原子を有する場合、単量体(I−1)の分子量に占める単量体(I−1)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合は、特に限定はないが、好ましくは0.05〜0.5である。単量体(I−1)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合が0.05未満であると、高分子成分Aの弾性、正極活物質の分散性が低下することがある。一方、単量体(I−1)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合が0.5超であると、高分子成分Aの剛性、弾性が低下することがある。単量体(I−1)の分子量に占める単量体(I−1)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合の上限は、より好ましくは0.45、さらに好ましくは0.4、特に好ましくは0.35、最も好ましくは0.3である。一方、単量体(I−1)の分子量に占める単量体(I−1)の有する全ての窒素原子の原子量の合計の割合の下限は、より好ましくは0.1、さらに好ましくは0.15、特に好ましくは0.2、最も好ましくは0.25である。
【0027】
単量体(I)は、カルボキシル基含有単量体(i)(以下、単量体(i)ということがある)及び/又はカルボキシル基と反応する基を有する単量体(ii)(以下、単量体(ii)ということがある)を含むと、高分子成分Aの正極活物質の分散性、弾性を向上させることができるため、好ましい。
【0028】
単量体(i)としては、遊離カルボキシル基を1分子当たり1個以上有するものであれば特に限定はないが、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等を挙げることができる。これらの単量体(i)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
上記単量体(i)の中でも、正極活物質の分散性の観点から、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸がより好ましい。カルボキシル基含有単量体は、一部又は全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。
【0029】
単量体(I)が単量体(i)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(i)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは20〜90重量%である。単量体(i)の重量割合が20重量%未満であると、正極活物質の分散性が低下することがある。一方、単量体(i)の重量割合が90重量%超であると、弾性が低下することがある。単量体(i)の重量割合の上限は、より好ましくは85重量%、さらに好ましくは75重量%、特に好ましくは65重量%、最も好ましくは60重量%である。一方、単量体(i)の重量割合の下限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは40重量%、特に好ましくは50重量%、最も好ましくは55重量%である。
【0030】
単量体(ii)としては、特に限定はないが、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アゾ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基等を有する単量体を挙げることができる。
単量体(ii)としては、たとえば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アセトンアクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−アセトアミドアクリル酸、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;アクロレイン等のアルデヒド系単量体;ビニルスルホン酸、N−t−ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルホスホン酸等のリン酸系単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート;ビニルグリシジルエーテル;プロペニルグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;p−ヒドロキシスチレン等を挙げることができる。なお、本願において(メタ)アクリルの表記は、アクリル又はメタクリルを意味する。また、本願において(メタ)アクリレートの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。これらの単量体(ii)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記単量体(ii)の中でも、本願効果を奏する観点から、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
単量体(I)が単量体(ii)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(ii)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは3〜40重量%である。単量体(ii)の重量割合が3重量%未満であると、剛性が低下することがある。一方、単量体(ii)の重量割合が40重量%超であると、弾性が低下することがある。単量体(ii)の重量割合の上限は、より好ましくは35重量%、さらに好ましくは30重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは17重量%である。一方、単量体(ii)の重量割合の下限は、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%、特に好ましくは12重量%、最も好ましくは15重量%である。
【0032】
単量体(I)が、単量体(i)及び単量体(ii)を含むと、本願効果を奏する観点から、好ましい。
単量体(I)が、単量体(i)及び単量体(ii)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(i)の重量割合と重合性成分aに占める単量体(ii)の重量割合の比(単量体(i)/単量体(ii))は、特に限定はないが、好ましくは1〜20である。単量体(i)と単量体(ii)の重量割合の比が1以上であると、正極活物質の分散性が向上する傾向がある。一方、単量体(i)と単量体(ii)の重量割合の比が20以下であると、高分子成分Aの弾性が向上する傾向がある。単量体(i)と単量体(ii)の重量割合の比の上限は、より好ましくは15、さらに好ましくは10、特に好ましくは8、最も好ましくは5である。一方、単量体(i)と単量体(ii)の重量割合の比の下限は、より好ましくは2、さらに好ましくは2.5、特に好ましくは3、最も好ましくは3.5である。
【0033】
単量体(I)が、さらにニトリル系単量体(iii)(以下、単に単量体(iii)ということがある)を含むと、高分子成分Aの剛性、弾性を向上させることができるため、好ましい。
単量体(iii)としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等を挙げることができる。これらの単量体(iii)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
上記単量体(iii)の中でも、本願効果を奏する観点から、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
【0034】
単量体(I)が単量体(iii)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(iii)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5〜45重量%である。単量体(iii)の重量割合が5重量%未満であると、弾性が低下することがある。一方、単量体(iii)の重量割合が45重量%超であると、剛性が低下することがある。単量体(iii)の重量割合の上限は、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは35重量%、特に好ましくは30重量%、最も好ましくは27重量%である。一方、単量体(iii)の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは23重量%である。
【0035】
単量体(I)は単量体(i)、単量体(ii)、及び単量体(iii)以外の単量体(iv)を含んでもよい。単量体(iv)としては、たとえば、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;4−アクリロイルモルホリン等のモルホリン系単量体等を挙げることができる。これら単量体(iv)は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
単量体(I)が単量体(iv)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(iv)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは20重量%以下である。重合性成分aに占める単量体(iv)が20重量%以下であると、耐屈曲性が向上する傾向がある。単量体(iv)の重量割合の上限は、好ましくは10重量%、さらに好ましくは5重量%、特に好ましくは3重量%、最も好ましくは2重量%である。一方、単量体(iv)の下限は、好ましくは0重量%である。
【0037】
重合性成分aは、単量体(I)以外の単量体(II)を含んでも良い。単量体(II)は、前記単量体(I)と共重合可能な単量体であれば、限定はないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アセチルアクリル酸メチル、2−アセチル−3−エトキシアクリル酸エチル、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、p−ニトロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。これら単量体(II)は、1種または2種以上併用してもよい。
上記単量体(II)の中でも、スチレン、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0038】
重合性成分aが単量体(II)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(II)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは40重量%以下である。単量体(II)の重量割合の上限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは10重量%、最も好ましくは5重量%である。単量体(II)の重量割合の下限は、好ましくは0重量%である。
【0039】
重合性成分aは、上述のとおり、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
架橋剤はなくてもよいが、その含有量については特に限定はなく、重合性成分a100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であると好ましい。架橋剤の含有量の上限は、より好ましくは10重量部、さらに好ましくは5重量部、特に好ましくは2重量部、最も好ましくは1重量部である。一方、架橋剤の含有量の下限は、好ましくは0重量部である。
【0041】
高分子成分Aの製造方法としては、特に限定はなく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の一般的な方法で製造することができる。また、高分子成分Aの製造時に使用する開始剤としては特に限定はなく、重合体の重合の際に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0042】
高分子成分Aのガラス転移点(Tg)は、特に限定はないが、剛性、弾性の観点から、好ましくは50℃以上であると好ましい。高分子成分Aのガラス転移点が50℃未満であると、剛性、弾性が低下することがある。高分子成分Aのガラス転移点の下限は、より好ましくは70℃、さらに好ましくは100℃、特に好ましくは120℃、最も好ましくは140℃である。一方、高分子成分Aのガラス転移点の上限は、好ましくは300℃、より好ましくは250℃、さらに好ましくは200℃である。なお、高分子成分Aのガラス転移点(Tg)の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0043】
高分子成分Aは、水溶性、又は非水溶性のいずれであってもよいが、正極活物質の分散性の観点から、水溶性であると好ましい。高分子成分Aが水溶性の場合、特に限定はないが、高分子成分Aの溶解度が水100mLに対して3g以上であると好ましい。高分子成分Aの溶解度が3g未満であると、剛性、弾性が低下することがある。高分子成分Aの溶解度の下限は、より好ましくは5g、さらに好ましくは50g、特に好ましくは100g、最も好ましくは200gである。一方、高分子成分Aの溶解度の上限はなくとも構わないが、好ましくは10000g、より好ましくは5000g、さらに好ましくは1000g、特に好ましくは500g、最も好ましくは300gである。
【0044】
〔高分子成分B〕
本発明の二次電池正極スラリー用分散剤組成物は、本願効果を阻害しない範囲で、高分子成分Bを含んでも良い。高分子成分Bは、高分子成分Aで用いられる上記単量体(II)を含む、重合性成分bの重合体であってもよく、ポリイソブチレン等のイソブチレン系高分子;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)等のジエン系高分子;フッ化ビニリデン系高分子(PVDF)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体等のフッ素系高分子;アクリル系高分子;ジメチルポリシロキサン等のポリシロキサン系高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル等のビニル系高分子;スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のスチレン系高分子;ウレタン系高分子;フェノール系高分子;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン等のオレフィン系高分子;ケトン系高分子;アミド系高分子;ポリフェニレンオキサイド系高分子;エポキシ系高分子;天然ゴム;セルロース系高分子;ポリペプチド;蛋白質等でもよい。
また、重合性成分bは、上記単量体(i)、単量体(ii)、単量体(iii)、及び単量体(iv)より選ばれる少なくとも1つをさらに含んでもよく、重合性成分bは、上記架橋剤を含んでもよい。
【0045】
重合性成分bに含まれる単量体(II)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは50〜79重量%である。重合性成分bに占める単量体(II)の重量割合の上限は、より好ましくは75重量%である。一方、重合性成分bに占める単量体(II)の重量割合の下限は、より好ましくは60重量%である。
【0046】
重合性成分bが、単量体(i)をさらに含む場合、重合性成分bに占める単量体(i)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは21〜35重量%である。重合性成分bに占める単量体(i)の重量割合の上限は、より好ましくは30重量%である。一方、重合性成分bに占める単量体(i)の重量割合の下限は、より好ましくは23重量%である。
【0047】
重合性成分bが、単量体(ii)をさらに含む場合、重合性成分bに占める単量体(ii)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0〜5重量%であり、より好ましくは0〜3重量%である。
【0048】
重合性成分bが、単量体(iii)をさらに含む場合、重合性成分bに占める単量体(iii)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0〜10重量%であり、より好ましくは0〜5重量%である。
【0049】
重合性成分bが、単量体(iv)をさらに含む場合、重合性成分bに占める単量体(iv)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0〜5重量%であり、より好ましくは0〜3重量%である。
【0050】
重合性成分bが、上記架橋剤をさらに含む場合、重合性成分b100重量部に対する架橋剤の含有量は、特に限定は無いが、好ましくは0〜1重量部であり、より好ましくは0〜0.5重量部である。
【0051】
高分子成分Bの性状は、特に限定はなく、水溶性、又は粒状物状等の非水溶性のいずれであってもよい。
高分子成分Bが粒状物である場合、高分子成分Bの平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.001〜100μmである。高分子成分Bの平均粒子径の上限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは1μm、特に好ましくは0.8μmである。一方、高分子成分Bの平均粒子径の下限は、より好ましくは0.01μm、さらに好ましくは0.05μm、特に好ましくは0.1μmである。なお、高分子成分Bの平均粒子径の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0052】
高分子成分Bは、水に分散した粒状物のエマルションの状態であってもよい。粒状物のエマルションの状態の場合の、高分子成分Bの水分散液であるエマルションの不揮発成分濃度は、特に限定はないが、好ましくは1〜80重量%である。高分子成分Bの水分散液であるエマルションの不揮発成分濃度の上限は、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは60重量%、特に好ましくは50重量%、最も好ましくは40重量%である。一方、高分子成分Bの水分散液であるエマルションの不揮発成分濃度の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは30重量%である。なお、「高分子成分Bの水分散液であるエマルションの不揮発成分」は、高分子成分Bの水分散液であるエマルションを110℃で加熱し、重量が恒量となった時の、残留物である。
【0053】
二次電池正極スラリー用分散剤組成物が高分子成分Bを含む場合、高分子成分Bの含有量は、高分子成分A100重量部に対して、特に限定はないが、好ましくは0〜90重量部、より好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜20重量部、特に好ましくは0〜10重量部、最も好ましくは0〜5重量部である。
【0054】
〔その他成分〕
本発明の二次電池正極スラリー用分散剤組成物は、本願効果を阻害しない範囲で、上記成分以外のその他成分を含んでもよい。その他成分としては、特に限定はないが、たとえば、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、特に限定はなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
二次電池正極スラリー用分散剤組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、高分子成分A100重量部に対して、特に限定はないが、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。
消泡剤としては、たとえば、ポリシロキサン系消泡剤、鉱物油系消泡剤、シリカ微粉末系消泡剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
pH調整剤としては、たとえば、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、グルコン酸等の有機酸;塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸等の無機酸;アルカリ(土類)金属の水酸化物;アンモニア;炭酸塩;ヒドロキシエタンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリ(メチルホスホン酸)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等の有機リン酸系化合物;エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸等のアミノカルボン酸系化合物;アミン化合物等が挙げられ、必要に応じて、1種または2種以上を併用してもよい。
【0055】
粘度調整剤としては、たとえば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、コーンスターチ、ポリアクリルアミド等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0056】
〔二次電池正極スラリー用分散剤組成物、その製造方法〕
本発明の二次電池正極スラリー用分散剤組成物は、上記の高分子成分Aを必須に含み、下記条件1を満たすものである。これらの条件を満たすことで、高分子成分Aの正極活物質の分散性、剛性、弾性を保持することができ、かつ、各性能のバランスにより、二次電池正極用スラリーの塗膜の均一性に優れる二次電池正極スラリー用分散剤組成物となる。
条件1:二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分からなる成形膜の引張弾性率が、500MPa以上である。
【0057】
条件1において、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分からなる成形膜の引張弾性率が、500MPa未満であると、正極活物質に対する結着性が低下し、二次電池正極用スラリーの塗布性に劣る。二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分からなる成形膜の引張弾性率の下限は、好ましくは750MPa、より好ましくは1000MPa、さらに好ましくは1500MPa、特に好ましくは2000MPa、最も好ましくは2500MPaである。一方、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分からなる成形膜の引張弾性率の上限は、好ましくは10000MPa、より好ましくは8000MPa、さらに好ましくは5000MPa、特に好ましくは4000MPa、最も好ましくは3000MPaである。なお、引張弾性率の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
また、本発明における「二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分」とは、二次電池正極スラリー用分散剤組成物を110℃で加熱し、重量が恒量となったときの、残留物である。
【0058】
二次電池正極スラリー用分散剤組成物における二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分濃度は、特に限定はないが、好ましくは0.1〜50重量%である。不揮発成分濃度が上記範囲外であると、必要とされる数量が増えハンドリング性が低下することがある。不揮発成分濃度の上限は、より好ましくは25重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは15重量%、最も好ましくは12.5重量%である。一方、不揮発成分濃度の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは2.5重量%、特に好ましくは5重量%、最も好ましくは8重量%である。
【0059】
二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分濃度20重量%水分散液の25℃における粘度は、特に限定はないが、好ましくは1000〜20000mPa・sである。不揮発成分濃度20重量%水分散液の25℃における粘度が上記範囲外であると、二次電池正極用スラリーの分散性が低下することがある。不揮発成分濃度20重量%水分散液の25℃における粘度の上限は、より好ましくは10000mPa・s、さらに好ましくは6000mPa・s、特に好ましくは5000mPa・s、最も好ましくは4000mPa・sである。なお、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分濃度20重量%水分散液の粘度の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0060】
二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分濃度20重量%水分散液のpHは、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、好ましくは6.0〜8.5である。不揮発成分濃度20重量%水分散液のpHの上限は、より好ましくは8.0である。一方、不揮発成分濃度20重量%水分散液のpHの下限は、より好ましくは6.5である。なお、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分濃度20重量%水分散液のpHの測定は、実施例で測定される方法によるものである。
【0061】
二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分の20℃、100mNの荷重で10秒間押し込み時のヌープ硬度HK(0.01)(以下、単にヌープ硬度ということがある)は、正極活物質を含んだ際の追従性の観点から、特に限定はないが、好ましくは100以上である。ヌープ硬度が100未満であると、高分子成分Aの剛性が低く、正極活物質を含んだ際に追従性が低下することがある。ヌープ硬度は、より好ましくは110以上、さらに好ましくは120以上、特に好ましくは130以上である。また、ヌープ硬度の上限は、好ましくは500である。なお、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分のヌープ硬度の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0062】
二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分のJIS K5600−5−1に準じたマンドレル試験における耐屈曲性は、本願効果を奏する観点から、好ましくは2〜10mmである。二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分の耐屈曲性が上記範囲であると、二次電池の出力特性が向上する傾向がある。二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分の耐屈曲性は、より好ましくは2〜8mm、さらに好ましくは2〜6mm、特に好ましくは2〜5mm、最も好ましくは2〜4mmである。
二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分のJIS K5600−5−1に準じたマンドレル試験における耐屈曲性の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0063】
本発明の二次電池正極スラリー用分散剤組成物において、その製造方法は、特に限定はなく、上記の高分子成分Aと、適宜、高分子成分B、その他成分を混合する方法等を挙げることができる。
混合については、特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。攪拌翼としては、特に限定はないが、マックスブレンド翼、トルネード翼、フルゾーン翼等を挙げることができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える混合機を用いてもよい。混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等を挙げることができる。混合機を挙げることができる。また、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)、フィルミクス(プライミクス株式会社)、ジェットペースタ(日本スピンドル製造株式会社)、KRCニーダ(株式会社栗本鐵工所製)、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー、株式会社写真化学)等を用いてもよい。他には、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミルなどの粉砕機を用いてもよい。
また、超音波乳化機、連続式二軸混練機、高圧乳化機やマイクロリアクター等を用いてもよい。
【0064】
本発明の二次電池正極用スラリー組成物は、上記二次電池正極スラリー用分散剤組成物と、正極活物質を必須に含む組成物である。二次電池正極用スラリー組成物を、集電体に塗布、乾燥したものは、二次電池用正極として使用できる。まず、二次電池正極用スラリー組成物に含まれる各成分を詳細に説明する。
【0065】
〔正極活物質〕
正極活物質は、正極用の電極活物質である。正極活物質としては、特に限定はないが、たとえば、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO
4)、ピロリン酸鉄(Li
2FeP
2O
7)、コバルト酸リチウム複合酸化物(LiCoO
2)、スピネル型マンガン酸リチウムコバルト酸リチウム複合酸化物(LiMn
2O
4)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMnO
2)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LiNiO
2)、ニオブ酸リチウム複合酸化物(LiNbO
2)、鉄酸リチウム複合酸化物(LiFeO
2)、マグネシウム酸リチウム複合酸化物(LiMgO
2)、カルシウム酸リチウム複合酸化物(LiCaO
2)、銅酸リチウム複合酸化物(LiCuO
2)、亜鉛酸リチウム複合酸化物(LiZnO
2)、モリブテン酸リチウム複合酸化物(LiMoO
2)、タンタル酸リチウム複合酸化物(LiTaO
2)、タングステン酸リチウム複合酸化物(LiWO
2)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物(LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2、LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2)、酸化マンガンニッケル(LiNi
0.5Mn
1.5O
4)、酸化マンガン(MnO
2)、リチウム過剰系ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物、水酸化ニッケル(Ni(OH)
2)、バナジウム系酸化物、硫黄系酸化物、シリケート系酸化物、活性炭、カーボンウィスカ、カーボンナノチューブ及びグラファイト等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
【0066】
正極活物質が下記一般式(2)で示される化合物を含むと、塗膜密度及びコストの両面から好ましい。
LiNi
aCo
bMn
cM
2dO
2 (2)
(一般式(2)中、a、b、c及びdは、それぞれ、0.3≦a≦1、0≦b<0.4、0≦c<0.4、0≦d<0.3、a+b+c+d=1を満たし、M
2はLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K及びAlから選ばれる少なくとも1つの元素を示す。)
【0067】
一般式(2)中、aは、0.3≦a≦1が好ましく、0.4≦a≦1がより好ましく、0.5≦a≦0.99がさらに好ましい。0.3未満では塗膜密度が低下することがあり、1を越えると該正極活物質を含む電池の安全性が低下することがある。
一般式(2)中、bは、0≦b<0.4が好ましく、0≦b≦0.35がより好ましく、0≦b≦0.3がさらに好ましい。0.4以上であるとコストが上がり過ぎることがある。
【0068】
一般式(2)中、cは、0≦c<0.4が好ましく、0≦c≦0.35がより好ましく、0.1≦c≦0.31がさらに好ましい。0.4以上であると該正極活物質を含む電池の抵抗が上がりすぎることがある。
一般式(2)中、dは、0≦d<0.3が好ましく、0≦d≦0.25がより好ましく、0≦d≦0.2がさらに好ましい。0.3以上であると該正極活物質を含む電池の安全性が低下することがある。
【0069】
一般式(2)中、M
2は、Li、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K及びAlから選ばれる少なくとも1つの元素を示し、中でも電池性能の観点から、Li、S、Si、Fe及びAlが好ましく、Li及びAlがより好ましい。
【0070】
二次電池正極用スラリー組成物における高分子成分Aの含有量は、特に限定はないが、正極活物質100重量部に対して、好ましくは0.5〜40重量部である。高分子成分Aの含有量が、0.5重量部未満であると、正極活物質に対して結着性が不足することがある。一方、高分子成分Aの含有量が、40重量部超であると、二次電池の体積エネルギー密度が不足することがある。高分子成分Aの含有量の上限は、より好ましくは20重量部、さらに好ましくは10重量部、特に好ましくは5重量部、最も好ましくは4重量部である。一方、高分子成分Aの含有量の下限は、より好ましくは1重量部、さらに好ましくは1.5重量部、特に好ましくは2重量部、最も好ましくは2.5重量部である。
【0071】
〔導電助剤〕
本発明の二次電池正極用スラリー組成物は、二次電池のサイクル特性、出力特性の点から、導電助剤を含むと好ましい。導電助剤としては、特に限定はないが、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;グラフェン;カーボンナノ繊維、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ;銀、銅、錫、亜鉛、酸化亜鉛、ニッケル、マンガン等の金属微粒子;酸化インジウムスズなどの複合金属微粒子等が挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。
【0072】
二次電池正極用スラリー組成物における導電助剤の含有量は、特に限定はないが、正極活物質100重量部に対して、好ましくは1〜15重量部である。導電助剤の含有量が、1重量部未満であると、二次電池の出力特性が低いことがある。一方、導電助剤の含有量が、15重量部超であると、二次電池の体積エネルギー密度が低くなることがある。導電助剤の含有量の上限は、より好ましくは10重量部である。一方、導電助剤の含有量の下限は、好ましくは3重量部である。
【0073】
〔水〕
本発明の二次電池正極用スラリー組成物は、分散性の観点から、水を含有すると好ましい。水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。
水の含有量は、特に限定はないが、正極活物質を100重量部に対して、好ましくは50〜300重量部である。水の含有量が300重量部超であると、二次電池正極用スラリー組成物の粘度が不足することがある。一方、水の含有量が50重量部未満であると、二次電池正極用スラリー組成物の塗工性が低下することがある。水の含有量の上限は、より好ましくは200重量部である。一方、水の含有量の下限は、より好ましくは70重量部である。
【0074】
また、二次電池正極用スラリー組成物は、アルコール等の水と混和可能な有機溶媒を含んでもよい。アルコールとしては、特に限定はないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセンリン等が挙げられ、汎用性の観点から、イソプロパノールが好ましい。
本発明の二次電池正極用スラリー組成物は、上記で説明した成分以外に、ハイドロトロープ剤、保護コロイド剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、酸化防止剤、消臭剤、架橋剤、触媒、乳化安定剤、キレート剤等をさらに含有していてもよい。
【0075】
〔二次電池正極用スラリー組成物、その製造方法〕
本発明の二次電池正極用スラリー組成物は、上述した二次電池正極スラリー用分散剤組成物を含むため、正極活物質の分散安定性に優れ、二次電池用正極を作製する際に、集電体への塗工性に優れる。
【0076】
二次電池正極用スラリー組成物における二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度は、特に限定はないが、好ましくは30〜70重量%である。不揮発成分濃度が上記範囲外であると、ハンドリング性が低下することがある。不揮発成分濃度の上限は、より好ましくは60重量%である。一方、不揮発成分濃度の下限は、より好ましくは40重量%である。
なお、本発明における「二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分」とは、二次電池正極用スラリー組成物を110℃で加熱し、重量が恒量となった時の、残留物である。
【0077】
二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度40重量%水分散液のpHは、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、好ましくは2.0〜13.0である。二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度40重量%水分散液のpHが2.0未満であると、集電体に腐食が発生することがある。一方、二次電池正極用スラリー組成物のpHが13.0超であると、ハンドリング性が低下することがある。二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度40重量%水分散液のpHの上限は、より好ましくは12.0、さらに好ましくは11.0、特に好ましくは10.0、最も好ましくは9.0である。一方、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度40重量%水分散液のpHの下限は、より好ましくは3.0、さらに好ましくは4.0、特に好ましくは5.0、最も好ましくは6.0である。二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度40重量%水分散液のpHの測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0078】
二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分の密度は、特に限定はないが、好ましくは0.1〜3.0g/cm
3である。二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分の密度が3.0g/cm
3超であると、二次電池の出力特性が低くなることがある。一方、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分の密度が0.1g/cm
3未満であると、二次電池の体積エネルギー密度が低くなることがある。二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分の密度の上限は、より好ましくは2.5g/cm
3、さらに好ましくは2.0g/cm
3である。一方、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分の密度の下限は、より好ましくは0.3g/cm
3、さらに好ましくは0.5g/cm
3である。
【0079】
測定温度25℃における、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度5重量%水分散液のゼータ電位は、特に限定はないが、好ましくは−10〜−100mV、より好ましくは−10〜−90mV、さらに好ましくは−20〜−80mV、特に好ましくは−20〜−70mVである。二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度5重量%水分散液のゼータ電位が−100mV未満であると、ハンドリング性が低下することがある。一方、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度5重量%水分散液のゼータ電位が−10mV超であると、分散性が十分ではないことがある。二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度5重量%水分散液のゼータ電位の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0080】
本発明の二次電池正極用スラリー組成物において、その製造方法としては、特に限定はないが、上記二次電池スラリー用分散剤組成物、正極活物質、導電助剤、水等の各成分を混合する方法が挙げられる。
混合については、特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。攪拌翼としては、特に限定はないが、マックスブレンド翼、トルネード翼、フルゾーン翼等を挙げることができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える混合機を用いてもよい。混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える混合機を挙げることができる。また、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)、フィルミクス(プライミクス株式会社)、ジェットペースタ(日本スピンドル製造株式会社)、KRCニーダ(株式会社栗本鐵工所製)等を用いてもよい。他には、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミルなどの粉砕機を用いてもよい。また、超音波乳化機、連続式二軸混練機、高圧乳化機やマイクロリアクター等を用いてもよい。
【0081】
また、本発明の二次電池正極用スラリー組成物において、その製造方法は、二次電池正極スラリー用分散剤組成物を構成する各成分を別々に、水や水と混和可能な有機溶媒に分散させる工程を含んでも構わない。なお、別々に水や水と混和可能な有機溶媒に分散させる際の各成分の量は、前述した二次電池正極用スラリー組成物の各成分の含有量に従う。
【0082】
本発明の二次電池用正極は、集電体上に被膜を有し、被膜が上記二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分を含むものである。まず、二次電池用正極を構成する各成分について詳しく説明する。
【0083】
〔集電体〕
集電体としては、電子伝導性を有し正極材料に通電し得る材料であればよく、特に限定はないが、たとえば、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al、Ni等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(たとえば、ステンレス鋼)を使用し得る。電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性がよい観点から、正極用集電体としてはC、Al、Ni、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からAl等が好ましい。正極用集電体の形状には、特に限定はなく、たとえば、箔状基材、三次元基材などを用いることができる。
【0084】
〔二次電池用正極、その製造方法〕
本発明の二次電池用正極は、集電体上に被膜を有し、被膜が上記二次電池正極スラリー用分散剤組成物を含む二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分を含むものであり、結着性に優れる。
【0085】
二次電池用正極における集電体上の被膜は、集電体のどちらか片面にあってもよく、両面にあってもよい。また、集電体上の被膜は、プライマー層を含んでいてもよく、プライマー層はカーボンブラック等の導電助剤を含んでいてもよい。被膜がプライマー層を含む場合、プライマー層が集電体と接触し、プライマー層の上に二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分が接触する構成となる被膜であると、好ましい。
【0086】
二次電池用正極における集電体上の被膜の厚みは、特に限定はないが、好ましくは1〜500μmである。集電体上の被膜の厚みが、1μm未満の場合電池性能が悪くなり好ましくないことがある。一方、集電体上の被膜の厚みが500μm超の場合、ハンドリング性が低下することがある。集電体上の被膜の厚みの上限は、より好ましくは200μm、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは75μm、最も好ましくは50μmである。一方、集電体上の被膜の厚みの下限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは20μmである。
【0087】
本発明の二次電池用正極において、その製造方法は、特に限定はないが、上記集電体上に、上記二次電池正極用スラリー組成物を途工し、乾燥させる方法が挙げられる。
集電体上に、二次電池正極用スラリーを途工する方法としては、均一にウェットコーティングできる方法であればよく、特に限定はないが、たとえば、キャピラリーコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法などが挙げられる。
【0088】
二次電池用正極を乾燥させる方法については、特に限定はないが、たとえば、温風乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線照射乾燥、電子線照射乾燥等の方法が挙げられる。
二次電池用正極の乾燥温度は、特に限定はないが、好ましくは10〜300℃である。乾燥温度が300℃超の場合、正極の機能が低下することがある。二次電池用正極の乾燥温度の上限は、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは170℃、最も好ましくは160℃である。一方、二次電池用正極の乾燥温度の下限は、より好ましくは30℃、さらに好ましくは50℃、特に好ましくは80℃、最も好ましくは90℃である。
【0089】
本発明の二次電池は、上記二次電池用正極と、二次電池用負極とを含む二次電池である。まず、二次電池を構成する各成分について詳しく説明する。
【0090】
〔二次電池用負極〕
二次電池用負極は、二次電池負極用の集電体(以下、負極用集電体いうことがある)上に被膜を有し、被膜が二次電池負極用スラリー組成物の不揮発成分により成形されてなるものである。二次電池負極用スラリー組成物は、負極活物質、二次電池負極用の導電助剤(以下、負極用導電助剤ということがある)、PVDF、SBR、アクリル樹脂等の高分子材料を、水や有機溶媒と混合し、スラリー状にしたものである。
【0091】
負極活物質としては、特に限定はないが、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料;シリコン系;Si;SiC、Si
3N
4、Si
2N
2O、SiO
x(0.5≦x≦1.5)等のSi化合物;SnO、SnO
2、CuO、Li
4Ti
5O
12等の金属酸化物系;Si−Al、Al−Zn、Si−Mg、Al−Ge、Si−Ge、Si−Ag、Zn−Sn、Ge−Ag、Ge−Sn、Ge−Sb、Ag−Sn、Ag−Ge、Sn−Sb等の合金;リン酸スズガラス系等が挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。
【0092】
負極活物質は、上記負極活物質の中でも、二次電池の体積エネルギー密度の観点から、Si及び/又はSi化合物を含むと好ましい。また、二次電池のサイクル特性の観点から、Si化合物がSiO
x(0.5≦x≦1.5)(以下、SiO
xということがある)を含むと好ましい。
なお、SiO
xは、非晶質のSiO
2マトリックス中に、Siが分散したものである。この非晶質のSiO
2と、その中に分散しているSiを合わせて、前記の酸素原子比xが決定され、0.5≦x≦1.5を満たせばよい。たとえば、非晶質のSiO
2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO
2とSiのモル比が1:1の物質の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOで表記される。
【0093】
負極活物質がSiを含む場合、負極活物質に占めるSiの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは3〜100重量%、より好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜100重量%、特に好ましくは20〜100重量%、最も好ましくは30〜100重量%である。
負極活物質がSi化合物を含む場合、負極活物質に占めるSi化合物の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは25〜100重量%、さらに好ましくは50〜100重量%、特に好ましくは60〜100重量%、最も好ましくは70〜100重量%である。
【0094】
Si、及びSi化合物が粒状物である場合、Si、又はSi化合物の粒状物の平均粒子径は、特に限定されないが、サイクル特性の観点から、好ましくは0.5μm〜100μm、より好ましくは0.5μm〜50μm、さらに好ましくは0.5μm〜20μmである。
【0095】
負極活物質が、Si及び/又はSi化合物を含む場合、Si、及びSi化合物が炭素による被覆物であってもよい。
Si、及びSi化合物を被覆している炭素としては、特に限定はないが、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;グラフェン;カーボンナノ繊維、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等の黒鉛が挙げられ、1種又は2種以上併用してもよい。
負極用導電助剤は、特に限定はないが、二次電池正極用スラリー組成物の成分として用いることができる上記導電助剤が挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。
【0096】
負極用集電体としては、特に限定はないが、たとえば、Cu、Ni、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(たとえば、ステンレス鋼)等が挙げられる。上記負極用集電体の中でも、電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性がよい観点から、負極用集電体としてはCu、C、Al、ステンレス鋼が好ましく、さらに材料コストの観点からCuが好ましい。集電体の形状には、特に限定はなく、たとえば、箔状基材、三次元基材などを用いることができる。
【0097】
二次電池用負極の製造方法は、特に限定はないが、負極用集電体上に、二次電池負極用スラリー組成物を途工し、乾燥させる方法が挙げられる。
二次電池負極用スラリー組成物を負極用集電体に塗工する方法としては、均一にウェットコーティングできる方法であればよく、特に限定はないが、たとえば、キャピラリーコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法などを採用することができる。
【0098】
二次電池用負極を乾燥させる方法については、特に限定はなく、上記で記した二次電池用正極の乾燥方法と同じ方法が挙げられる。
二次電池用負極の乾燥温度は、特に限定はないが、好ましくは10〜300℃である。乾燥温度が300℃超の場合、負極の機能が低下することがある。二次電池用負極の乾燥温度の上限は、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは170℃、最も好ましくは160℃である。一方、二次電池用負極の乾燥温度の下限は、より好ましくは30℃、さらに好ましくは50℃、特に好ましくは80℃である。
【0099】
負極用集電体表面に二次電池負極用スラリー組成物を塗布、乾燥して形成する負極被膜は、負極用集電体のどちらか片面に形成させてよく、両面に形成させてもよい。
負極用集電体表面に二次電池負極用スラリー組成物を塗布、乾燥して形成された片面分の負極被膜の膜厚としては、特に限定はないが、たとえば、通常1〜500μm、好ましくは10〜400μm、さらに好ましくは20〜300μm、特に好ましくは20〜200μm、最も好ましくは20〜150μmである。
【0100】
〔セパレーター〕
本発明の二次電池は、必要に応じてセパレーターを含んでもよい。セパレーターは、二次電池において、正極と負極の間の短絡を防ぐために用いられるものである。
セパレーターとしては、特に限定はないが、たとえば、微多孔膜フィルム状のセパレーターや、不織布状のセパレーター等が挙げられる。また、セパレーターの片面もしくは両面が、絶縁性を有する無機酸化物フィラーを含む無機酸化物、ポリフッ化ビニリデン樹脂やポリアラミド樹脂等でコーティングされたものでもよい。
【0101】
セパレーターの組成を構成する樹脂としては、特に限定はないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
【0102】
〔電解液〕
本発明の二次電池は、必要に応じて電解液を含んでもよい。電解液は電解質と溶媒とを混合し、溶媒に電解質を溶解させたものである。
電解質としては、特に制限はないが、たとえば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3SOOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)
2NLiなどが挙げられる。
【0103】
電解液に使用する溶媒としては、電解質を溶解できるものであれば特に限定はないが、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のカーボネート類;γ―ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類;が用いられ、またこれら溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、広い電位流域で化学的安定であるのでカーボネート類が好ましい。
【0104】
〔二次電池〕
本発明の二次電池は、上記二次電池用正極と、二次電池用負極とを含むものであり、必要に応じて、さらにセパレーターと、電解液を含む。
二次電池の形状は、特に限定はないが、たとえば、コイン型、円筒型、角型、シート型等が挙げられる。
二次電池の外装材料は、特に限定はないが、たとえば、金属ケース、モールド樹脂、アルミラミネートフィルム等が挙げられる。
二次電池の種類としては、特に限定はなく、リチウムイオン電池、リチウムイオン全固体電池、リチウムイオンポリマー電池等のリチウムイオン二次電池;ナトリウムイオン電池、ナトリウムイオン全固体電池、ナトリウムイオンポリマー電池等のナトリウムイオン二次電池;カリウムイオン電池、カリウムイオン全固体電池、カリウムイオンポリマー電池等のカリウムイオン二次電池;ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のアルカリ二次電池;ナトリウム硫黄電池;レドックスフロー電池;空気電池等が挙げられる。
本発明の二次電池は、様々な電気機器(電気を使用する乗り物を含む)の電源として利用することができる。
電気機器としては、たとえば、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、パソコンキーボード、パソコン用ディスプレイ、デスクトップ型パソコン、CRTモニター、パソコンラック、プリンター、一体型パソコン、マウス、ハードディスク等のパソコン通信周辺機器;エアコン、洗濯機、テレビ、冷蔵庫、冷凍庫、冷房機器、アイロン、衣類乾燥機、ウインドウファン、トランシーバー、送風機、換気扇、音楽レコーダー、音楽プレーヤー、オーブン、レンジ、洗浄機能付便座、温風ヒーター、カーコンポ、カーナビ、懐中電灯、加湿器、携帯カラオケ機、換気扇、乾燥機、乾電池、空気清浄器、携帯電話、非常用電灯、ゲーム機、血圧計、コーヒーミル、コーヒーメーカー、こたつ、コピー機、ディスクチェンジャー、ラジオ、シェーバー、ジューサー、シュレッダー、浄水器、照明器具、除湿器、食器乾燥機、炊飯器、ステレオ、ストーブ、スピーカー、ズボンプレッサー、掃除機、体脂肪計、体重計、ヘルスメーター、ムービープレーヤー、電気カーペット、電気釜、炊飯器、電気かみそり、電気スタンド、電気ポット、電子ゲーム機、携帯ゲーム機、電子辞書、電子手帳、電子レンジ、電磁調理器、電卓、電動カート、電動車椅子、電動工具、電動歯ブラシ、あんか、散髪器具、電話機、時計、インターホン、エアサーキュレーター、電撃殺虫器、複写機、ホットプレート、トースター、ドライヤー、電動ドリル、給湯器、パネルヒーター、粉砕機、はんだごて、ビデオカメラ、ビデオデッキ、ファクシミリ、ファンヒーター、フードプロセッサー、布団乾燥機、ヘッドホン、電気ポット、ホットカーペット、マイク、マッサージ機、豆電球、ミキサー、ミシン、もちつき機、床暖房パネル、ランタン、リモコン、冷温庫、冷水器、冷凍ストッカー、冷風器、ワープロ、泡だて器、電子楽器、オートバイ、おもちゃ類、芝刈り機、うき等の家電機器;自転車、自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道、船、飛行機、ドローン等の移動輸送機器;住宅用蓄電池、風力発電用蓄電池、水力発電用蓄電池、非常用蓄電池等の定置用蓄電機器;ボイラ、原動機、農作業機器、建設機器等の産業用機器等が挙げられる。
【実施例】
【0105】
以下に、本発明の実施例を、その比較例とともに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
〔ガラス転移点の測定〕
高分子成分Aのガラス転移点を、動的粘弾性測定装置(ティ−・エイ・インスツルメント社製、品番Q800)を用いて測定した。高分子成分Aについては、高分子成分Aの水分散液を110℃で重量が恒量となるまで加熱し、得られた残留物を高分子成分Aとした。
【0107】
〔重量平均分子量〕
上記方法にて得られた高分子成分Aの濃度が0.2重量%濃度となるように、テトラヒドロフランと混合し、溶解させた後、GPC装置(東ソー社製、HLC−8220)を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法にて、高分子成分Aの重量平均分子量を算出した。
【0108】
〔粘度の測定〕
二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分濃度20重量%の水分散液、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度40重量%の水分散液、高分子成分Aの水分散液、及び高分子成分Bの水分散液を各々作製し、作製した各水分散液の25℃における粘度を、B型粘度計(東京計器社製、BL型)を用いて測定した。
【0109】
〔pHの測定〕
二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分濃度20重量%の水分散液及び二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分濃度40重量%の水分散液の25℃におけるpHを、pHメータ(堀場製作所社製、F−51)を用いて測定した。
【0110】
〔平均粒子径、ゼータ電位の測定〕
粒径・ゼータ電位測定システム(大塚電子社製、ELSZ−1000)を用いて測定した。
【0111】
〔引張弾性率の測定〕
二次電池正極スラリー用分散剤組成物をポリプロピレン製平板の表面上に塗布し、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、残留物である二次電池正極スラリー用組成物の不揮発成分を得た。得られた不揮発成分を縦70mm、横10mm、膜厚150μmのサイズに成形し、二次電池正極スラリー用組成物の不揮発成分からなる成形膜を作製した。
作製した成形膜の引張弾性率を、引張圧縮試験機(ミネベア社製、TG−2kN)を使用し、100mm/分の引張速度で測定した。
【0112】
〔ヌープ硬度HK(0.01)の測定〕
二次電池正極スラリー用分散剤組成物をオーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、厚さ1mmの二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分の薄膜を得た。得られた薄膜を、マイクロビッカース硬度計(島津製作所製HMV−1)に設置し、20℃、100mNの荷重で10秒間押し込み時のヌープ硬度HK(0.01)を、JIS Z2251に準拠した手順で、6箇所測定し、その平均値を算出した。
〔耐屈曲性の測定〕
二次電池正極スラリー用分散剤組成物を20gと、コバルト酸リチウム(一次粒子径8.3μm)を100gと、アセチレンブラックを5gと、イオン交換水120gを均一に混合して、混合物を得た。得られた混合物を膜厚18μmの銅箔に塗布し、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分を含む、厚み40μmとなる被膜を有する構造物を作製した。作製した構造物をJIS K5600−5−1に準拠した手順でマンドレル試験を行い、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分のJIS K5600−5−1に準じたマンドレル試験における耐屈曲性の測定を行った。
【0113】
〔消泡剤〕
実施例及び比較例で用いた消泡剤を以下に示す。
ポリシロキサン系消泡剤:ジメチルポリシロキサン、粘度100mPa・s
シリカ微粉末系消泡剤:トリメチルエトキシシランにより疎水化処理されたシリカ微粉末
鉱物油系消泡剤:パラフィン系鉱物油
【0114】
〔正極活物質、導電助剤〕
実施例及び比較例で用いた正極活物質、及び導電助剤を以下に示す。
コバルト酸リチウム;一次粒子径8.3μm、BET比表面積0.4m
2/g
LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2;一次粒子径11.5μm、BET比表面積0.3m
2/g
LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2;一次粒子径10.5μm、BET比表面積0.3m
2/g
LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2;一次粒子径11.3μm、BET比表面積0.3m
2/g
LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2;一次粒子径10.5μm、BET比表面積0.3m
2/g
リン酸鉄リチウム:一次粒子径11.2μm、BET比表面積0.3m
2/g
アセチレンブラック:平均粒子径70.1nm
【0115】
〔高分子成分A〕
実施例及び比較例で用いた高分子成分Aについて、それらの具体的な製造方法及び物性を以下の表1、2の製造例A−1〜A−15に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
〔製造例A−1〕
まず、重合性成分aとして、65gのアクリル酸、5gのグリシジルメタクリレート、30gのアクリルアミドを準備した。上記で準備した重合性成分aと、250gのイオン交換水をホモジナイザーで混合撹拌し均一溶解させ、1000mlのセパラブルフラスコ中で、窒素気流下、80℃で3時間反応し、反応後にアンモニア25gを加えpHを6.8に調整して、高分子成分A−1の水分散液を得た。
得られた高分子成分A−1の水分散液の粘度は15000mPa・s、高分子成分A−1の水分散液の不揮発成分濃度は25.6重量%、高分子成分A−1は水溶性であって、重量平均分子量が69万、ガラス転移点122℃であった。
【0118】
〔製造例A−2〜製造例A−15〕
製造例A−2〜A−15では、製造例A−1において、表1、2に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、製造例A−1と同様に高分子成分Aをそれぞれ得て、物性等も製造例A−1と同様に評価した。その結果を表1、2に示す。
【0119】
〔高分子成分B〕
まず、重合性成分bとして23gのアクリル酸及び77gのn−ブチルアクリレート、乳化剤として1.0gのラウリルベンゼンスルホン酸ソーダ塩、及び2gのPOE(30)ラウリルエーテルを準備した。なお、POEとはポリオキシエチレン基を意味し、POEに続くカッコ内の数字はオキシエチレン基の繰り返し単位数を意味する。
上記で準備した重合性単量体b及び乳化剤と、150gのイオン交換水とをホモジナイザーで混合攪拌し、500mlのセパラブルフラスコ中で窒素気流下、80℃で3時間反応してアクリル系高分子粒子B−1の水分散液であるエマルションを得た。
得られた高分子粒子B−1の水分散液であるエマルションの粘度は72mPa・s、ゼータ電位−34mV、エマルションの不揮発成分濃度は40.4重量%であり、また、高分子成分B−1は非水溶性であり、平均粒子径224nm、ガラス転移点−3℃であった。
【0120】
〔製造例1〕
高分子成分Aである高分子成分A−1を100g含むA−1の水分散液375gと、POE(12)ラウリルエーテル0.5gと、POE(3)ラウリルエーテル0.5g、ポリシロキサン系消泡剤0.01g、イオン交換水125gを均一に混合して、二次電池正極スラリー用分散剤組成物を得た。イオン交換水の量は、A−1の水分散液に含まれるイオン交換水と合わせて400gであった。
得られた二次電池正極スラリー用分散剤組成物は、不揮発成分濃度20.0重量%、pH6.9、粘度5200mPa・s、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分のヌープ硬度HKは202、耐屈曲性は6mm、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分からなる成形膜の引張弾性率は820MPaであった。
【0121】
〔製造例2〜11、製造比較例1〜8〕
製造例2〜11、及び製造比較例1〜8は、表3、4に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、製造例1と同様に二次電池正極スラリー用分散剤組成物をそれぞれ得て、物性等も製造例1と同様に評価した。その結果を表3、4に示す。
【0122】
〔製造比較例9〕
ピロメリット酸無水物を100gと、1,4−フェニレンジアミンを50gと、N−メチルピロリドン350gを均一に混合して、二次電池正極スラリー用分散剤組成物を得た。ピロメリット酸無水物、1,4−フェニレンジアミンの溶解度パラメーター(SP)は各々20.9(cal/cm
3)
1/2、19.6(cal/cm
3)
1/2であった。ピロメリット酸無水物、1,4−フェニレンジアミンの分子量に占める全ての酸素原子の原子量の合計の割合は各々0.44、0であり、ピロメリット酸無水物、1,4−フェニレンジアミンの分子量に占める全ての窒素原子の原子量の合計の割合は各々0、0.26であった。
得られた二次電池正極スラリー用分散剤組成物は、不揮発成分濃度30.0重量%、粘度17000mPa・s、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分のヌープ硬度HKは310、耐屈曲性は25mm、二次電池正極スラリー用分散剤組成物の不揮発成分からなる成形膜の引張弾性率は2900MPaであった。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
〔分散安定性の評価〕
作製した二次電池正極用スラリー組成物を100mlの遠沈管にとって室温で24時間静置した後の沈降物の重量を測定し、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分100重量%に対する沈降物の重量比(重量%)を算出した。分散性安定性の評価は、算出した沈降物の重量比の値より、以下の評価基準により行った。
◎:沈降物の重量比が10重量%未満で、分散安定性に優れる。
○:沈降物の重量比が10重量%以上20重量%未満で、分散安定性にやや優れる。
△:沈降物の重量比が20重量%以上30重量%未満で、分散安定性にやや劣る。
×:沈降物の重量比が30重量%以上で、分散安定性に劣る。
【0126】
〔塗膜の均一性の評価〕
二次電池正極用スラリー組成物を集電体表面に10mg/cm
2塗布して、80℃で2時間加熱して乾燥した。集電体表面を表面コートした被覆面積を100%として、塗膜にひび割れが発生していない面積を目視で計測し、評価を実施した。
◎:ひび割れなし。
○:被覆面積中、1%〜5%でひび割れが見られる
△:被覆面積中、5%〜20%でひび割れが見られる。
×:被覆面積中、20%以上でひび割れが見られる。
【0127】
〔結着性の評価〕
二次電池正極用スラリー組成物を集電体表面に塗布し、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分を含む被膜で被覆された集電体である二次電池用正極を得た。得られた二次電池用正極上の被膜表面に4cm×3cmの大きさのスコッチテープを貼り付け、100g/cm
2の荷重を1時間負荷する。その後、10cm/分(換算巾1mm)の速度で180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。測定して得られた剥離強度の値のうち、比較例1の剥離強度を100として、各実施例、及び比較例の剥離強度指数を算出した。また、算出した剥離強度指数から、以下の評価基準により、結着性評価を行った。
◎:剥離強度指数が150以上で、結着性に優れる。
○:剥離強度指数が100超150未満で、結着性にやや優れる。
△:剥離強度指数が70以上100以下で、結着性にやや劣る。
×:剥離強度指数が70未満で、結着性に劣る。
【0128】
〔実施例1〕
正極活物質としてコバルト酸リチウムを100gと、導電助剤としてアセチレンブラックを5gと、分散剤である二次電池正極スラリー用分散剤組成物1を20gと、イオン交換水120gを均一に混合して、二次電池正極用スラリー組成物を得た。得られた二次電池正極用スラリー組成物は、不揮発成分濃度45.2重量%、粘度3300mPa・s、平均粒子径15.8μm、pH8.9、ゼータ電位−30mVであった。
この二次電池正極用スラリー組成物を用いて、二次電池正極用スラリー組成物の分散安定性を評価したところ、沈降物の重量比が10重量%以上20重量%未満であり、分散安定性にやや優れていた。
上記で得られた二次電池正極用スラリー組成物を、集電体である膜厚18μmのアルミ箔表面に塗布し、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分を含む被膜で被覆された集電体である二次電池用正極を得た。
得られた二次電池用正極の被膜の被覆面積は95%以上であり、被覆面積中に1〜5%のひび割れが見られた。被膜の剥離強度指数は140で、結着性にやや優れていた。集電体表面の被膜の膜厚は56μmであった。
【0129】
〔実施例2〜11、比較例1〜8〕
実施例2〜11及び比較例1〜8では、表5、6に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に二次電池正極用スラリー組成物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表5、6に示す。
【0130】
〔比較例9〕
正極活物質としてコバルト酸リチウムを100gと、導電助剤としてアセチレンブラックを5gと、分散剤として製造比較例9で得られた二次電池正極スラリー用分散剤組成物を13.4gと、N−メチルピロリドン120gを均一に混合して、二次電池正極用スラリー組成物を得た。得られた二次電池正極用スラリー組成物は、不揮発成分濃度45.5重量%、粘度4000mPa・s、平均粒子径18.1μm、pH7.0、ゼータ電位−12mVであった。
この二次電池正極用スラリー組成物を用いて、二次電池正極用スラリー組成物の分散安定性を評価したところ、沈降物の重量比が20重量%以上30重量%未満で、分散安定性にやや劣っていた。
上記で得られた二次電池正極用スラリー組成物を、集電体である膜厚18μmのアルミ箔表面に塗布し、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、その後、350℃で2時間さらに加熱して、二次電池正極用スラリー組成物の不揮発成分を含む被膜で被覆された集電体を得た。
得られた集電体表面の被膜の被覆面積は80%未満であり、被覆面積中20%以上でひび割れが見られた。被膜の剥離強度指数は70で、結着性にやや劣っていた。集電体表面の被膜の膜厚は55μmであった。
【0131】
【表5】
【0132】
【表6】
【0133】
使用した原料の詳細を、表7に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
表5から分かるように、実施例1〜11の二次電池正極スラリー用分散剤組成物は、溶解度パラメーター(SP)が10〜17(cal/cm
3)
1/2である単量体(I)を含む重合性成分aの重合体である高分子成分Aを含み、上記条件1を満たすため、正極活物質の結着性に優れることを確認した。また、これらの二次電池正極スラリー用分散剤組成物を含む、二次電池正極用スラリー組成物は分散安定性、塗布性に優れることを確認した。
一方、表6から分かるように、二次電池正極スラリー用分散剤組成物が、上記条件1を満たさない場合(比較例1〜8)、高分子成分Aを含まない場合(比較例9)、本願課題を解決できていない。