【解決手段】本発明の電子部材1は、対向する第1の表面11および第2の表面12を有する基板10と、基板10に設けられた1以上の素子構造100とを備えた電子部材である。素子構造100は、第1の表面上に積層された第1の導電性層111と第1の誘電体層131と第2の導電性層121と、第2の表面12上に積層された第3の導電性層112と第2の誘電体層132と第4の導電性層122とを備え、電子部材1は、第1の導電性層111と第3の導電性層112とをそれぞれの近い端部同士を接続することにより導通させる第1の手段101と、第2の導電性層121と第4の導電性層122とをそれぞれの互いに近い端部同士を接続することにより導通させる第2の手段102とを備える。
前記第1の手段は、前記基板を貫通するスルーホールを介して前記第1の導電性層の一方の端部と前記第3の導電性層の一方の端部とを接続する第1のスルーホール導電性層を含み、
前記第2の手段は、前記基板を貫通するスルーホールを介して前記第2の導電性層の他方の端部と前記第4の導電性層の他方の端部とを接続する第2のスルーホール導電性層を含む、請求項1または請求項2に記載の電子部材。
前記素子構造は、前記第1の導電性層から前記第4の導電性層により形成されるインダクタンスと、前記第1の誘電体層を前記第1の導電性層と前記第2の導電性層との間に配置された構造および前記第2の誘電体層を前記第3の導電性層と前記第4の導電性層との間に配置された構造により形成されるキャパシタンスとからなる回路を形成する、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子部材。
前記素子構造は、ノイズが入射したとき、前記第2の導電性層から前記第1の導電性層、前記第3の導電性層、および前記第4の導電性層を経て前記第2の導電性層に戻る電流経路に高周波電流が流れることにより、前記電流経路により囲まれた領域を通る前記ノイズによる磁界が弱まるように構成されている、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電子部材。
前記誘電体層の構成材料は誘電率が約3以上である、および/または、前記誘電体層の厚みが約1μm〜100μmである、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の電子部材。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「約」とはその後に記載された数値に対する±10%の範囲をいう。
【0014】
本発明は、ノイズの吸収および遮蔽を効果的に行うことが可能なメタマテリアルとしての電子部材を製造することが困難であるという課題を解決したものである。
【0015】
特に、本発明は、誘電体層を挟んで2つのスプリット体(例えば、
図3(b)に示すような切り欠きを有する略コの字型の部材)を対向させることでキャパシタンスを大きくした素子構造を含む電子部材を対象としており、複数配列される素子構造の小型化によりコストと設置場所の占有面積を抑えながら効果的にノイズの吸収または遮蔽性能を達成することができる。また、製造が簡単であることから高い実用性を期待できるものである。
【0016】
本発明は、製造を簡単とするために、基板の表面(第1の表面)側と裏面(第2の表面)側とにそれぞれ誘電体層を導電性層の間に配置された積層構造を設け、基板の表面側の積層構造の2つの導電性層の1つ(第1の導電性層)の一方の端部と、基板の裏面側の積層構造における2つの導電性層の1つ(第3の導電性層)の基板の表面側の1つの導電性層(第1の導電性層)の一方の端部に近方である一方の端部とを電気的に接続し、基板の表面側の積層構造の2つの導電性層のもう1つ(第2の導電性層)の他方の端部と、基板の裏面側の積層構造における2つの導電性層のもう1つ(第4の導電性層)の基板の表面側のもう1つの導電性層(第2の導電性層)の他方の端部に近方である他方の端部とを電気的に接続するようにしている。
【0017】
ここで、基板の表面側の積層構造の2つの導電性層の1つ(第1の導電性層)の他方の端部と、基板の裏面側の積層構造における2つの導電性層の1つ(第3の導電性層)の基板の表面側の1つの導電性層(第1の導電性層)の他方の端部に近方である他方の端部とを電気的に接続しないようにし、かつ、基板の表面側の積層構造の2つの導電性層のもう1つ(第2の導電性層)の一方の端部と、基板の裏面側の積層構造における2つの導電性層のもう1つ(第4の導電性層)の基板の表面側のもう1つの導電性層(第2の導電性層)の一方の端部に近方である一方の端部とを電気的に接続しないようにしている。
【0018】
それにより、基板表面に対して垂直に起立または斜めに傾斜したスプリット体を形成し、これにより上記課題を解決したものである。
【0019】
ここで、導電性層の端部とは、基板表面に対して垂直に起立した、または斜めに傾斜したスプリット体を構成する積層構造の長手方向(素子構造の長手方向)の先端の他、導電性層の中心側に先端からずれた部分も含まれる。先端からずれる位置は積層構造の長手方向(素子構造の長手方向)の中心部よりも先端部側である。
【0020】
従って、本発明は、誘電体層を導電性層の間に配置された基板表面側の積層構造と、誘電体層を導電性層の間に配置された基板裏面側の積層構造とをそれぞれの導電性層の端部で電気的に接続することで、基板表面に対して垂直に起立させて、あるいは斜めに傾斜した2つのスプリット体を含む素子構造を有するものであればよい。
【0021】
すなわち、本発明は、対向する第1の表面および第2の表面を有する基板と、基板に設けられた1以上の素子構造とを備えた電子部材であって、素子構造は、第1の表面上に積層された第1の導電性層と第1の誘電体層と第2の導電性層と、第2の表面上に積層された第3の導電性層と第2の誘電体層と第4の導電性層とを備え、電子部材は、第1の導電性層の一方の端部とそれに近方の第3の導電性層の端部を接続することにより導通させる第1の手段と、第2の導電性層の他方の端部とそれに近方の第4の導電性層の他方の端部を接続することにより導通させる第2の手段とを備え、第1の導電性層の他方の端部とそれに近方の第3の導電性層の他方の端部とは導通されず、また第2の導電性層の一方の端部とそれに近方の第4の導電性層の一方の端部とは導通されない構成を備えるものであり、本発明のその他の構成は限定されるものではない。
【0022】
ここで、第1の導電性層と、第3の導電性層と、第1の導電性層の一方の端部と第3の導電性層の一方の端部とを導通させる第1の手段とにより1つのスプリット体を形成する。また、第2の導電性層と、第4の導電性層と、第2の導電性層の他方の端部と第4の導電性層の他方の端部とを導通させる第2の手段とにより1つのスプリット体を形成する。
図1〜
図4に示す実施形態において、第1の導電性層と第3の導電性層ならびに第1の導通手段(単に第1の手段ともいう。)とにより形成されるスプリット体と、第2の導電性層と第4の導電性層と第2の導通手段(単に第2の手段ともいう。)とにより形成されるスプリット体とは、両者の切り欠き部分が対向する配置であるが、本発明はこれに限定されない。両者の切り欠き部分が所定の角度となる位置であってもよい。
【0023】
例えば、素子構造は、基板上で1つであってもよいし複数であってもよい。複数の素子構造を備える場合、基板上で分散されて配置されていてもよいし、行列状に配列されてもよい。
【0024】
さらに、第1の手段および第2の手段は、1以上の素子構造に含まれていてもよい。
【0025】
あるいは、1以上の素子構造は、少なくとも隣接する2つの素子構造を含み、2つの素子構造のうちの一方の素子構造に含まれる第1の導電性層の一方の端部と、それに近方であってその他方の素子構造に含まれる第3の導電性層の一方の端部とが、第1の手段により接続されることにより導通し、導通した第1の導電性層と第3の導電性層とを含む平面が誘電体基板の第1の表面または第2の表面に対して直角でない角度で傾斜し、一方の素子構造に含まれる第2の導電性層の他方の端部と、それに近方にあって他方の素子構造に含まれる第4の導電性層の他方の端部とが、第2の手段により接続されることにより導通し、導通した第2の導電性層と第4の導電性層とを含む平面が誘電体基板の第1の表面または第2の表面に対して直角でない角度で傾斜していてもよい。
【0026】
第1の手段および第2の手段はいずれも、基板表面側の導電性層と基板裏面側の導電性層とをそれぞれの端部同士を接続することで導通可能とするものであれば任意の手段であり得る。例えば、1つの実施形態において、第1の手段は、基板を貫通するスルーホールを介して第1の導電性層の一方の端部と第3の導電性層の一方の端部とを接続する第1のスルーホール導電性層を含み、第2の手段は、基板を貫通するスルーホールを介して第2の導電性層の他方の端部と第4の導電性層の他方の端部とを接続する第2のスルーホール導電性層を含む。これにより、誘電体層を導電性層の間に配置された基板表面側の積層構造と、誘電体層を導電性層の間に配置された基板裏面側の積層構造とをスルーホールを介して接続することができる。
【0027】
なお、第1の手段および第2の手段は、上述したようにスルーホールを用いて基板表面側の積層構造と基板裏面側の積層構造とを接続するものに限定されない。
【0028】
たとえば、第1の手段は、第1の導電性層の一方の端部に形成された第1の電極パッドと、第1の導電性層の一方の端部に近方である第3の導電性層の一方の端部に形成された第3の電極パッドとを含み、第2の手段は、第2の導電性層の他方の端部に形成された第2の電極パッドと、第2の導電性層の他方の端部に対して近方である第4の導電性層の他方の端部に形成された第4の電極パッドとを含むものでもよい。この場合、第1の手段は、第1の電極パッドと第3の電極パッドとの容量結合により、第1の導電性層の一方の端部と第3の導電性層の一方の端部との間で高周波電流を導通させることができる。第2の手段は、第2の電極パッドと第4の電極パッドとの容量結合により第2の導電性層の他方の端部と第4の導電性層の他方の端部との間で高周波電流を導通させることができる。
【0029】
素子構造は、主として第1の導電性層から第4の導電性層により形成されるインダクタンスと、主として第1の誘電体層を第1の導電性層と第2の導電性層との間に配置された構造および第2の誘電体層を第3の導電性層と第4の導電性層との間に配置された構造により形成されるキャパシタンスとからなる等価回路を形成するものでもよい。
【0030】
電子部材は、所定の周波数帯域のノイズを遮蔽あるいは吸収する機能を有していてもよい。この場合、行列状の配列における素子構造の行方向(素子構造の幅方向)は、基板表面に対して垂直な方向から複数の素子構造に入射するノイズの磁界の方向であり、マトリクス状の配列における素子構造の列方向(素子構造の長手方向)は、ノイズの電界の方向であることが望ましい。これにより複数の素子構造ではノイズが入射したとき、ノイズの磁界により周回電流が発生することで、磁界の減衰を効果的に行うことが可能となる。
【0031】
また、素子構造は、ノイズが入射したとき、第2の導電性層から第1の導電性層、第3の導電性層、および第4の導電性層を経て第2の導電性層に戻る電流経路に高周波電流が流れることにより、電流経路により囲まれた領域を通るノイズによる磁界が弱まるように構成されていてもよい。
【0032】
さらに、誘電体層の構成材料は、誘電性を有する材料であれば任意の材料であり得る。誘電体の誘電率を制御することで吸収または遮蔽するノイズの周波数帯域を調整および制御することが可能である。好ましくは、高誘電率(例えば、誘電体層としての誘電率が約3以上)の材料であり得る。高誘電率の材料とすることで、吸収または遮蔽するノイズの周波数帯域を低くシフトすることが可能となる。誘電体の材料としては、例えば、二酸化チタンあるいはチタン酸バリウムであるが、これらの材料に限定されるものではない。一例を挙げると、二酸化チタン自体あるいはチタン酸バリウム自体の誘電率の数値は、数百程度であり、二酸化チタンあるいはチタン酸バリウムをバインダーと混合して誘電体層の構成材料を作製する際の混合比率や、混合される二酸化チタンあるいはチタン酸バリウムの粒子径の大きさなどにより、誘電体層の誘電率を調整することが可能である。
【0033】
誘電体層の厚みは、任意の厚みであり得る。誘電体の厚みを制御することで吸収または遮蔽するノイズの周波数帯域を調整および制御することが可能である。例えば、厚みは約1μm〜約100μmであり得る。厚みは薄くなるほど、吸収または遮蔽するノイズの周波数帯域を低くシフトすることが可能となる。
【0034】
導電性層の構成材料は、導電性を有する材料であれば任意の材料であり得る。例えば、銅あるいは銀であるが、これらの材料に限定されるものではない。
【0035】
基板は、例えば、誘電体であるかぎり、基板の種類は限定されるものではない。誘電体基板は、例えば、樹脂で構成されており、その場合、樹脂の構成材料は、ポリエチレンテレフタラートあるいはポリプロピレンであるが、本発明はこれに限定されない。ガラスエポキシ(例えば、FR4)であってもよいし、あるいは、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ベークライトなどであってもよい。誘電体基板は、FPCでもよい。ここで、誘電体基板は、誘電体が有する誘電率の虚部の数値が小さいものが望ましく、誘電体基板では、誘電率の虚部の数値が小さいほど、スプリット体が電磁ノイズを減衰させる際に誘電体基板が与える影響を小さくできる。
【0036】
さらに、本発明の電子部材は、ノイズのフィルタを構成するものでもよい。その場合、電子部材は、ノイズの特定帯域の周波数成分を減衰させる機能を発揮する。ただし、本発明の電子部材はフィルタに限定されるものではなく、その他の素子に用いられてもよい。
【0037】
ただし、以下の実施形態では、複数の素子構造が誘電体基板上でマトリクス状に配列されているものとし、実施形態1の電子部材としては、誘電体層を導電性層の間に配置された基板表面側の積層構造と、誘電体層を導電性層の間に配置された基板裏面側の積層構造とをスルーホールを介して電気的に接続した素子構造を有するものを挙げ、実施形態2の電子部材としては、基板表面側の積層構造と基板裏面側の積層構造とを電極パッドにより接続した素子構造を有するものを挙げて説明する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0039】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による電子部材1を説明するための斜視図であり、
図2は、
図1の電子部材1であるメタマテリアルを構成する素子構造の配列を示す平面図であり、
図1のX部分を示している。
【0040】
図1に示す電子部材1は、対向する第1の表面11および第2の表面12を有する誘電体基板1(基板)10と、誘電体基板10に設けられた複数の素子構造100とを備えている。ここでは、誘電体基板10は、樹脂シートで構成され、樹脂シートの構成材料は、ポリエチレンテレフタラートあるいはポリプロピレンである。ただし、樹脂シートの構成材料は限定されない。また、誘電体基板10には、樹脂シートに代えて、例えば、ガラスエポキシ基板を用いてもよい。
【0041】
また、複数の素子構造100は行列状(以下、マトリクス状ともいう。)に配列されており、誘電体基板10の第1の表面11に対して垂直に入射するノイズ、すなわち、進行方向kが第1の表面11に対して垂直であるノイズの電界の方向Eが素子構造100の長手方向に一致し、電磁ノイズの電界の方向Hが素子構造100の幅方向(長手方向に垂直な方向)に一致している。
【0042】
例えば、マトリクス状の配列の行方向(素子構造100の幅方向)における素子構造100の配列ピッチP1aは、約1.5mmであり、マトリクス状の配列の列方向(素子構造100の長手方向)の配列ピッチP1bは、約5mmである。ただし、素子構造100の配列ピッチ(幅方向)P1aは、約1mm〜10mmの範囲であり、素子構造100の配列ピッチ(長手方向)P1bは、約3mm〜30mmの範囲であり得る。
【0043】
また、素子構造100の導電性層の幅Wcは、任意であり得る。1つの実施形態において、幅Wcは、約0.2mm〜1mmである。
【0044】
素子構造100の導電性層の長さLcは、任意であり得る。1つの実施形態において、長さLcは、約1.0mm〜12mmである。
【0045】
素子構造100の長さLは、任意であり得る。1つの実施形態において、長さLは、約1.0mm〜15mmである。
【0046】
誘電体層の誘電率は、1つの実施形態において約3以上、例えば、約8程度である。
【0047】
ここでは、誘電体基板10の厚さは、任意であり得る。1つの実施形態において、約0.1mm〜4mmである。
【0048】
第1、第2の誘電体層131、132の厚さは、導電性層111と導電性層121とで挟まれた部分で、任意の厚さであり得る。1つの実施形態において、約1μm〜100μmである。
【0049】
図3は、
図2における素子構造(メタマテリアルのR1部分の構造)を具体的に説明するための図であり、
図3(a)は、
図2のR1部分の平面図、
図3(b)は、
図3(a)のY1−Y1線断面図である。
図3Aは、
図2のR2部分における導電性層の構造を示す斜視図である。
【0050】
素子構造100では、第1の表面11上には第1の導電性層111、第1の誘電体層131、および第2の導電性層121が順次積層されており、第2の表面12上には、第3の導電性層112、第2の誘電体層132、第4の導電性層122が積層されている。
【0051】
ここで、第1の誘電体層131は、
図3(a)に示すように、その上下に位置する第1の導電性層111および第2の導電性層121の横からはみ出るように、その幅を第1の導電性層111および第2の導電性層121の幅より広くしている。これにより、第1の誘電体層131の上下に位置する第1の導電性層111と第2の導電性層121とが確実に絶縁されるようにしている。また、第2の誘電体層132も、第1の誘電体層131と同様、その上下に位置する第3の導電性層121および第4の導電性層122の横からみ出るように、その幅を第3の導電性層121および第4の導電性層122の幅より広くしている。これにより、第3の導電性層121と第4の導電性層122とが確実に絶縁されるようにしている。
【0052】
第1、第2の誘電体層131、132の構成材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)、二酸化チタン(TiO
2)あるいはチタン酸バリウム(BaTiO
3)であり得る。但し、第1、第2の誘電体層131、132の構成材料は、これらの材料に限定されるものではない。
【0053】
また、第1の導電性層111および第3の導電性層112の構成材料は、例えば、銅であり、第2の導電性層121および第4の導電性層122の構成材料は銀であり得る。ただし、第1の導電性層111および第3の導電性層112の構成材料が銀であり、第2の導電性層121および第4の導電性層122の構成材料が銅であってもよく、これらの導電性層の構成材料は、これらの材料に限定されず、導電性層には任意の導電性材料を用いることができる。
【0054】
誘電体基板10の各素子構造100が配置されている領域(
図2のR1部分)には、第1のスルーホール10aおよび第2のスルーホール10bが形成されている。
【0055】
第1の導電性層111と第3の導電性層112とは、
図3(b)および
図3Aに示すように、第1のスルーホール10a内に形成された第1のスルーホール導電性層113により接続されており、これらの導電性層111〜113は、素子構造100に含まれるキャパシタ(容量素子)の第1の電極(1つのスプリット体)110となっている。ここで、第1のスルーホール10aと第1のスルーホール導電性層113とは、第1の導電性層111の一方の端部と導電性層111の一方の端部に対して近方である第3の導電性層112の一方の端部とを接続する第1の導通手段101を形成している。
【0056】
この場合、第1の導通手段101は、第1の導電性層111と第3の導電性層112との接続を、両導電性層の端部で行っている。ただし、両導電性層の端部同士の接続は、両導電性層の端部に限らず、導電性層の長手方向(素子構造100の長手方向)において、導電性層111、112の中心からずれた部分であってもよい。ずれる位置は、先端部と中心部との間であり得る。しかし、第1の導電性層111の他方の端部と、第1の導電性層111の他方の端部に対して近方である第3の導電性層112の他方の端部とは、
図3(b)、
図3Aに示すように、電気的に接続されていない状態である。それにより、切り欠きを有するスプリット体が形成される。
【0057】
また、第1のスルーホール導電性層113の構成材料は、第1の導電性層111および第3の導電性層112の構成材料と同じ材料、すなわち、銅あるいは銀であり得る。ただし、第1のスルーホール導電性層113の構成材料は、第1の導電性層111および第3の導電性層112の構成材料と異なる材料でもよい。例えば、第1の導電性層111および第3の導電性層112の構成材料が銅である場合に、第1のスルーホール導電性層113の構成材料が銀であってもよいし、第1の導電性層111および第3の導電性層112の構成材料が銀である場合に、第1のスルーホール導電性層113の構成材料が銅であってもよい。また、全ての導電性層の構成材料は銅であってもよいし、または銀であってもよい。このように全ての導電性層の構成材料は同じであってもよいし、異なっていてもよく、さらには、導電性層の構成材料は、上述した銅あるいは銀に限定されず、任意の導電性材料であり得る。
【0058】
また、第2の導電性層121と第4の導電性層122とは、
図3(b)および
図3Aに示すように、第2のスルーホール10b内に形成された第2のスルーホール導電性層123により接続されており、これらの導電性層121〜123は、素子構造100に含まれるキャパシタの第2の電極(もう1つのスプリット体)120となっている。ここで、第2のスルーホール10bと第2のスルーホール導電性層123とは、第2の導電性層121の他方の端部と、第2の導電性層121の他方の端部に対して近方である第4の導電性層122の他方の端部とを接続する第2の導通手段102を形成している。しかし、第2の導電性層121の一方の端部と、第2の導電性層121の一方の端部に対して近方である第4の導電性層122の一方の端部とは
図3(b)および
図3Aに示すように、電気的に接続されていない状態である。それにより、切り欠きを有するスプリット体が形成される。
【0059】
この実施形態1の電子部材1では、第2の導通手段102は、基本的に第1の導電手段101と同じ構成である。ただし、本発明はこれに限定されない。異なる構成であってもよい。
【0060】
なお、
図3(
図3A)に示す素子構造100では、スルーホール10a、10b内に形成されたスルーホール導電性層113、123により、誘電体基板10の表面側の導電性層111、121と裏面側の導電性層112、122とを接続しているが、誘電体基板10の表面側の導電性層と裏面側の導電性層との接続には、スルーホールの周辺および内面に形成したランド部を利用してもよい。
【0061】
図3Bは、
図3に示す素子構造の変形例としてランド部を含むものを説明するための図であり、
図3B(a)は、
図2のR1部分に相当するR1a部分を示す平面図であり、
図3B(b)は、
図3B(a)のY1a−Y1a線断面図である。
【0062】
例えば、
図3Bに示す素子構造100aでは、誘電体基板10に形成した第1のスルーホール10aを介して誘電体基板10の表面11から裏面12に跨るようにランド部15aが形成され、同様に第2のスルーホール10bの周辺領域および内面にランド部15bが形成されている。
【0063】
このような素子構造100aでは、キャパシタの第1の電極(スプリット体)110は、導電性層111〜113およびランド部15aにより形成され、キャパシタの第2の電極(スプリット体)120は、導電性層121〜123およびランド部15bにより形成される。従って、第1の導電性層111の一方の端部と第3の導電性層112の一方の端部との接続にランド部15aが寄与し、第2の導電性層121の他方の端部と第4の導電性層122の他方の端部との接続にランド部15bが寄与することで、誘電体基板10の表面側の導電性層と裏面側の導電性層との接続をより確実に行うことが可能となる。
【0064】
なお、この実施形態1の電子部材1は、ノイズフィルタに用いることができる。例えば、電子部材1は、ノイズの特定帯域の周波数成分を減衰させるフィルタとして機能することが可能である。また、電子部材1は、ノイズの特定帯域の周波数成分を通過させ、特定帯域の周波数成分以外の成分を減衰させるフィルタとして機能することも可能である。
【0065】
次に実施形態1の電子部材1の動作を説明する。
【0066】
図4は、
図3に示す素子構造の動作を説明するための断面図である。
【0067】
図1に示すように、進行方向kが電子部材1の誘電体基板10の表面に対して垂直であるノイズが電子部材1に入射すると、素子構造100では、
図4に示すように、ノイズの磁界Hが、キャパシタの2つの電極(スプリット体)110、120で囲まれた領域を通過することとなる。これにより、電流経路Cp(第1の導電性層111から第1のスルーホール導電性層113、第3の導電性層112、第2の誘電体層132、第4の導電性層122、第2のスルーホール導電性層123、第2の導電性層121、第1の誘電体層131を経て第1の導電性層111に戻る経路)で高周波電流が流れることで、電流経路Cpにより囲まれた領域を通るノイズによる磁界が弱まる。
【0068】
このようなノイズの減衰は、誘電体基板10に設けられているすべての素子構造100で生ずることとなり、その結果、電子部材1を超えて伝搬するノイズは、電子部材1により大きく減衰されることとなる。
【0069】
次に、実施形態1の素子構造100を含む電子部材(メタマテリアル)1を試作してノイズの透過特性を測定した結果を説明する。
【0070】
測定には、試作の電子部材1として、素子構造100をベークライト基板に配列したものを用い、誘電体層の材料には二酸化ケイ素(SiO
2)を用いた場合と、チタン酸バリウム(BaTiO
3)を用いた場合の2つの場合について透過特性を測定した。
【0071】
図4Aおよび
図4Bはいずれも、
図3に示す素子構造100を用いてノイズの透過特性を測定した結果を示す。ただし、
図4Aは、誘電体層の材料として二酸化ケイ素(SiO
2)を用いた場合、
図4Bは、誘電体層の材料としてチタン酸バリウム(BaTiO
3)を用いた場合を示す。
【0072】
誘電体層の材料には二酸化ケイ素(SiO
2)を用いた電子部材1では、
図4Aに示すように、電磁ノイズの磁界がキャパシタの2つの電極(スプリット体)110、120を貫くように電子部材1を配置した場合のみ、共振周波数約5.5GHzの前後で透過特性が変化し、メタマテリアル(電子部材1)がローパスフィルタとして機能していることが確認された。誘電体の材料の特性および/または厚みを調整することにより、共振周波数の帯域を調整可能であり、またローパスフィルタに限らず、バンドパスフィルタとすることも可能である。
【0073】
また、素子構造100は同じで誘電体層の構成材料を高誘電率のチタン酸バリウム(BaTiO
3)に変更して透過係数を測定した場合、
図4Bに示すように、約1.5GHzで共振することが確認された。
【0074】
次に、本実施形態1の電子部材1を製造する方法を説明する。
【0075】
まず、無電解めっきまでの工程を説明する。
【0076】
図5は、
図1に示す電子部材1の製造方法を説明するための図であり、
図5(a)〜
図5(d)は、基板材料に対する穴あけから無電解めっきまでの工程を段階別に示している。
【0077】
図5(a)に示す銅張り積層板(表面に銅箔が形成されているプリント基板材料)を誘電体基板10として準備し、素子構造100の第1のスルーホール10aおよび第2のスルーホール10bを形成するための穴開け処理を行う(
図5(b))。穴開け処理にはドリルを使用してもよいし、あるいはレーザを使用してもよく、さらには、その他の加工手段を用いてもよい。また、誘電体基板10には、表面に銅箔が形成されていない基板材料を用いてもよい。
【0078】
なお、穴開け処理では、穴開けした際にスミアSmが第1のスルーホール10aおよび第2のスルーホール10bの内面に形成される場合があり、スミアSmは、穴開け処理で穴開けした際に生ずる熱で、基板材料の樹脂が溶融して固着したものである。
【0079】
次に、
図5(c)に示すように、誘電体基板10の銅箔11a、12aをエッチングで除去する。なお、このエッチング処理は、ウエットエッチング処理でもよいし、ドライエッチング処理でもよい。誘電体基板10に、表面に銅箔が形成されていない基板材料を用いた場合は、このエッチング処理は不要である。また、表面に銅箔が形成されている基板材料を誘電体基板10として用いた場合でも、このエッチング処理は省略してもよい。
【0080】
次に、過マンガン酸カリウム溶液を用いてスミアSmを酸化分解除去する(
図5(d))。ただし、スミアSmを酸化分解除去する薬液は、過マンガン酸カリウム溶液に限定されない。
【0081】
その後、誘電体基板10の露出面に無電解Cuめっきを行って無電解めっき層13を形成することにより、誘電体基板10の表面(第1の表面)と裏面(第2の表面)とを電気的に接続する(
図5(e))。
【0082】
続いて、無電解めっきを施した誘電体基板10に対して選択的な電解めっきを行う工程を説明する。
【0083】
図6は、
図1に示す電子部材1の製造方法を説明するための図であり、
図6(a)〜
図6(d)は、めっきマスクの形成から電解めっき後のめっきマスクの除去までの工程を段階別に示している。
【0084】
無電解めっきを施した誘電体基板10の全面にレジスト膜Rsを形成し、レジスト膜Rsを選択的に露光する(
図6(a))。ここでは、レジスト膜Rsとしては、現像した時に、露光された部分Rs1は除去されず、露光されていない部分Rs0が除去されるものを用いている。ただし、レジスト膜Rsとしては、露光された部分Rs1が現像により除去され、露光されていない部分Rs0が現像により除去されずに現像後に残るものでもよい。
【0085】
図6(b)に示すように、レジスト膜Rsを現像した後、残ったレジスト膜Rs(露光された部分Rs1)をめっきマスクMaとして銅の電解めっきを行うことにより、銅めっき層14を形成する(
図6(c))。その後、レジスト膜Rsを除去し(
図6(d))、誘電体層の印刷および金属ペーストの印刷を行う。
【0086】
なお、誘電体基板10の表面側の導電性層と裏面側の導電性層との接続に、スルーホールの周辺および内面に形成したランド部を利用する場合は、導電性層を形成する前にランド部の形成を行う。
【0087】
図6Aは、
図1に示す電子部材1を製造する際にランド部を形成する場合の工程を説明するための図であり、
図6A(a)〜
図6A(d)は、ランド部の形成工程およびその後の導電性層の形成工程を段階別に示している。
【0088】
図5(e)に示すように、誘電体基板10の露出面に無電解めっき層13を形成した後、無電解めっきを施した誘電体基板10の全面に選択めっきのためのレジスト膜LRsを形成し、レジスト膜LRsをマスクとして電解めっきを行ってスルーホール10a、10bの内面および誘電体基板10の表面および裏面のスルーホール周辺部分に跨るようにランド部15a、15bを形成する(
図6A(b))。なお、レジスト膜LRsは、露光部分LRs1が現像したときに残り、非露光部分LRs0が現像したときに除去されるものであるが、露光部分LRs1が現像したときに除去され、非露光部分LRs0が現像したときに残るものでもよい。
【0089】
その後は、
図6A(c)、(d)に示すように、めっきマスクMaとしてレジスト膜Rsを用いて銅の電解めっきを行うことにより、銅めっき層(導電性層)14を形成する。その後、
図6(d)に示すようにレジスト膜Rsを除去し、誘電体層の印刷および金属ペーストの印刷を行う。
【0090】
図7は、
図1に示す電子部材1の製造方法を説明するための図であり、
図7(a)〜
図7(c)は、めっきマスク除去後の後処理から誘電体層の印刷および金属ペーストの印刷までの工程を段階別に示している。
【0091】
図6(d)に示すように、銅めっき層(導電性層)14の形成後、めっきマスクMaとしてのレジスト膜Rsを除去した後、
図7(a)に示すように、無電解めっき層13の露出部分をエッチングで溶解除去する。なお、誘電体基板10として、銅張り積層板(表面に銅箔が形成されているプリント基板材料)を用いた場合であって、誘電体基板10の銅箔11a、12aをエッチングで溶解除去する処理(
図5(c))を行わなかったときには、無電解めっき層13の露出部分をエッチングする際に、誘電体基板10の銅箔11a、12aの露出部分も除去する。
【0092】
その後、誘電体層131および132をスクリーン印刷により選択的に形成し(
図7(b)、さらに、Agペースト15の印刷により、第1の誘電体層131および第2の誘電体層132上にそれぞれ第2の導電性層121および第4の導電性層122を、第2のスルーホール導電性層123につながるように形成する(
図7(c))。この際、第2の導電性層121の開放端の位置(P2a)が第1の誘電体層131の段差位置(P1a)を超えて広がらないようにし、かつ第4の導電性層122の開放端の位置(P2b)が第2の誘電体層132の段差位置(P1b)を超えて広がらないようにすることで、不要な周回電流の経路が形成されるのを防止して、一対のスプリット体110および120によるノイズの減衰効果を保持することができる。
【0093】
これにより実施形態1の電子部材1が完成する。
【0094】
次に、実施形態1のメタマテリアルとしての電子部材1の持つ効果を説明する。
【0095】
この電子部材1では、第1の導電性層111、第3の導電性層112、および第1のスルーホール導電性層113により1つの切り欠きを有するスプリット体110を形成し、第2の導電性層121、第4の導電性層122、および第2のスルーホール導電性層123によりもう1つの切り欠きを有するスプリット体120を形成している。これら2つのスプリット体110および120を、誘電体層130を介して対向するように配置しているので、素子構造100として、キャパシタンスが大きく、小型化された構造を実現している。
【0096】
また、この実施形態1の電子部材1では、2つのスプリット体110および120を構成する導電性層111〜113、121〜123、さらに誘電体層131および132は、誘電体基板10の厚さ方向(誘電体基板10の表面に対して垂直な方向)に配置されているので、電子部品1がメタマテリアルを構成する複数の素子構造100を広い範囲にわたって配列させた構造を有するものであっても、めっきや印刷といった通常の成膜プロセスを用いてメタマテリアルとしての電子部材1を簡単に製造することができる。しかも、スプリット体110および120は、誘電体基板10に対して垂直な方向から飛来するノイズの磁界成分がスプリット体を貫く配置となっているので、誘電体基板10に対して垂直方向から入射するノイズの磁界が効果的に抑制されることとなる。
【0097】
さらに、素子構造100は、主に誘電体層に由来するキャパシタンスと、主に導電性層に由来するインダクタンスとからなる等価回路を形成しているので、素子構造100は特定の周波数で共振することとなり、共振周波数の前後において入射した電磁波の透過、反射、吸収といった電磁波に対する応答を制御することが可能である。
【0098】
また、素子構造に含まれるキャパシタ(容量素子)は、誘電体層とこれを挟む導電性層により形成されているので、誘電体層の厚さや比誘電率、また、誘電体層を挟む2つの導電性層が対向する面積を変えることで、共振周波数を制御することができる。
【0099】
特に、誘電体層の比誘電率を上げる、あるいは誘電体層を薄くするという2つのアプローチでキャパシタンスを上げることが可能であり、同じ共振周波数なら素子構造100を小型化することが可能である。素子構造100の小型化は、電子機器内部でノイズが問題になりやすい約0.3GHz〜2.5GHzでも素子構造100のサイズは数mm、もしくはそれ以下のオーダーとなる。その結果、電子部材1が素子構造100を複数配列した構造を有するものであっても、電子部材1を、これが適用される電子機器と干渉しないようなサイズの部材として実現することができる。
【0100】
なお、実施形態1の電子部材1を構成する複数の素子構造100の各々には、誘電体層を導電性層の間に配置された積層構造が、誘電体基板の表面側と裏面側とにそれぞれ対向するように設けられ、表面側の積層構造における外側の導電性層と、裏面側の積層構造における外側の導電性層とが、それぞれの導電性層の互いに近くに位置する一方の端部同士がつながるように接続され、かつ、表面側の積層構造における内側の導電性層と、裏面側の積層構造における内側の導電性層とが、それぞれの導電性層の互いに近くに位置する他方の端部同士がつながるように接続されており、それにより、誘電体基板の表面(あるいは裏面)に対して垂直に起立した一対のスプリット体(キャパシタの一対の電極)が形成されている。
【0101】
しかしながら、素子構造に含まれる一対のスプリット体は、誘電体基板の表面(あるいは裏面)に対して垂直に起立したものに限定されず、例えば、素子構造に含まれる一対のスプリット体は、誘電体基板の表面(あるいは裏面)に対して任意の角度で傾斜していてもよい。
【0102】
図7Aは、
図3に示すスプリット体110、120の変形例であるスプリット体1210、1220を説明するための図であり、
図7A(a)は、
図2のR2部分に相当するR2a部分を示す平面図であり、
図7A(b)および
図7A(c)はそれぞれ、
図7A(a)のZ1a−Z1a線断面図およびZ2a−Z2a線断面図である。
図7Bは、
図7Aに示すスプリット体1210、1220を立体的に示す斜視図である。
【0103】
この変形例の電子部材1aは、実施形態1の電子部材1における素子構造100に代わる素子構造1200を備えている。
【0104】
素子構造1200は、実施形態1の素子構造100と同様に、
図7A、
図7Bに示すように、誘電体基板10の第1の表面11上に積層された第1の導電性層1211と第1の誘電体層131と第2の導電性層1221と、誘電体基板10の第2の表面12上に積層された第3の導電性層1212と第2の誘電体層132と第4の導電性層1222とを備えている。なお、
図7Bでは、誘電体基板10、第1の誘電体層131および第2の誘電体層132は省略している。
【0105】
そして、この電子部材1aでは、隣接する素子構造1200では、そのうちの一方の素子構造1200に含まれる第1の導電性層1211の一方の端部と、それに近方であって、その他方の素子構造1200に含まれる第3の導電性層1212の一方の端部とが、第1の手段(スルーホール導電性層)1213により接続されることにより導通している。また、一方の素子構造に含まれる第2の導電性層1221の他方の端部と、それに近方にあって他方の素子構造に含まれる第4の導電性層1222の他方の端部とが、第2の手段(スルーホール導電性層)1223により接続されることにより導通している。
【0106】
図7Cは、
図7Bに示すスプリット体1210、1220を説明するための図であり、
図7C(a)は、スプリット体1210、1220の構造を示す斜視図であり、
図7C(b)は、スプリット体1210、1220の機能を説明するための図である。なお、
図7C(a)では誘電体基板10は省略している。
【0107】
スプリット体1210は、隣接する素子構造1200のうちの一方に含まれる第1の導電性層1211と、隣接する素子構造1200のうちの他方に含まれる第3の導電性層1212と、隣接する素子構造の間に形成されたスルーホール10aを貫通するスルーホール導電性層1213とで構成されている。
【0108】
ここで、第1の導電性層1211は、誘電体基板10の表面11に形成されており、素子構造1200の長手方向に沿って延びる導電性層本体1211aと、導電性層本体1211aの一端から側方に、つまり、スルーホール10aに近づくように突出する突出部1211bとを有する。第3の導電性層1212は、誘電体基板10の裏面12に形成されており、素子構造1200の長手方向に沿って延びる導電性層本体1212aと、導電性層本体1212aの一端から側方に、つまり、スルーホール10aに近づくように突出する突出部1212bとを有する。
【0109】
第1の導電性層1211の突出部1211bと第3の導電性層1212の突出部1211bとは誘電体基板10を挟んで対向しており、スルーホール10aを貫通するスルーホール導電性層1213により接続されている。これによりスプリット体1210が形成されている。
【0110】
また、スプリット体1220は、隣接する素子構造1200のうちの一方に含まれる第2の導電性層1221と、隣接する素子構造1200のうちの他方に含まれる第4の導電性層1222と、隣接する素子構造の間に形成されたスルーホール10bを貫通するスルーホール導電性層1223とで構成されている。
【0111】
ここで、第2の導電性層1221は、誘電体基板10の表面11に形成されており、素子構造1200の長手方向に沿って延びる導電性層本体1221aと、導電性層本体1221aの他端から側方に、つまり、スルーホール10bに近づくように突出する突出部1221bとを有する。第4の導電性層1222は、誘電体基板10の裏面12に形成されており、素子構造1200の長手方向に沿って延びる導電性層本体1222aと、導電性層本体1222aの他端から側方に、つまり、スルーホール10bに近づくように突出する突出部1222bとを有する。
【0112】
第2の導電性層1221の突出部1221bと第4の導電性層1222の突出部1222bとは誘電体基板10を挟んで対向しており、スルーホール10bを貫通するスルーホール導電性層1223により接続されている。これによりスプリット体1220が形成されている。
【0113】
このように変形例のスプリット体1210では、誘電体基板10の裏面側の導電性層1212の本体1212aは、誘電体基板10の表面側の導電性層1211の本体1211aの直下の位置からずれた位置に配置されているので(
図7C(a)参照)、変形例のスプリット体1210の周面は、機能的には
図7C(b)に太い点線で示すように、誘電体基板10の表面(裏面)に対して所定の角度で傾斜したものとなる。本明細書において、このようにスプリット体1210の周面が誘電体基板10の表面(裏面)に対して傾斜しているものを、誘電体基板の表面(裏面)に対して斜めに傾斜したスプリット体という。ここで、スプリット体1210の周面は、平行に配置されている裏面側の導電性層1212の本体1212aおよび表面側の導電性層1211の本体1211aの延在方向により規定される平面であり、電流が流れる経路が形成する平面に相当する。
【0114】
同様に、変形例のスプリット体1220では、誘電体基板10の裏面側の導電性層1222の本体1222aは、誘電体基板10の表面側の導電性層1221の本体1221aの直下の位置からずれた位置に配置されているので(
図7C(a)参照)、変形例のスプリット体1220の周面は、機能的には
図7C(b)に太い点線で示すように、誘電体基板10の表面(裏面)に対して傾斜したものとなる。ここで、スプリット体1210の周面は、平行に配置されている裏面側の導電性層1222の本体1222aおよび表面側の導電性層1221の本体1221aの延在方向により規定される平面であり、電流が流れる経路が形成する平面に相当する。
【0115】
このため、これらの変形例のスプリット体1210および1220では、誘電体基板10の表面に対して傾斜した方向であってスプリット体の周面に平行な方向kから入射してくるノイズの磁界Hの方向がスプリット体1210および1220の周面に垂直な方向となるため、このようなノイズを効率よく減衰させることができる。
【0116】
なお、
図7Cに示す、実施形態1のスプリット体110、120の変形例であるスプリット体1210、1220では、誘電体基板の表面側の導電性層と裏面側の導電性層とを、隣接する素子構造の間で接続するのに、積層構造を形成する導電性層として、帯状の導電性層本体と、帯状の導電性層本体の端部から側方に突出する突出部とを有する導電性層を用い、スルーホール導電性層として、誘電体基板10の表面に対して垂直方向に延びる導電性層を用いたが、スルーホールを誘電体基板10に対して斜めに形成することにより、積層構造を形成する導電性層として、帯状の導電性層本体と突出部とを有する導電性層を用いなくても、誘電体基板の表面側の導電性層と裏面側の導電性層とを、隣接する素子構造の間で接続することが可能となる。
【0117】
例えば、誘電体基板10に対して斜めに傾斜したスルーホール内にこれを貫通するスルーホール導電性層を形成することにより、実施形態1の電子部材1における隣接する素子構造100の間に跨るように、誘電体基板の表面側の導電性層と裏面側の導電性層とを接続することが可能となる。
【0118】
また、
図7Aおよび
図7Bで示した複数の素子構造を備えた電子部材1aでは、隣接する素子構造に跨って形成される、誘電体基板10の表面に対するスプリット体の周面の傾斜角度は、誘電体基板10のどの場所に形成されているスプリット体でも同じ角度であるが、誘電体基板10に形成される複数のスプリット体の周面の、誘電体基板10の表面(あるいは裏面)に対する傾斜角は、異なっていてもよい。
【0119】
誘電体基板10の表面に対するスプリット体の周面の傾斜角度は、表面側の導電性層の位置と裏面側の導電性層の位置を適宜変更することで任意の傾斜角度に変更し得る。
【0120】
複数のスプリット体の周面の誘電体基板10の表面(あるいは裏面)に対する傾斜角をそれぞれ異ならせたものを備えることにより、メタマテリアルとしての電子部材は、誘電体基板10の表面に対して様々な方向から入射するノイズに対して、ノイズ低減効果を発揮することが可能となる。
【0121】
なお、上述したとおり、実施形態1では、誘電体層を導電性層の間に配置された基板表面側の積層構造と、誘電体層を導電性層の間に配置された基板裏面側の積層構造とをスルーホールを介して電気的に接続したものを挙げたが、基板表面側の積層構造と基板裏面側の積層構造とを電気的に接続する方法は、スルーホールを用いるものに限定されない。以下の実施形態2では、基板表面側の積層構造と基板裏面側の積層構造とを容量結合により接続したものを説明する。
【0122】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2による電子部材2を説明するための斜視図であり、
図9は、
図8の電子部材2であるメタマテリアルを構成する素子構造の配列を示す平面図であり、
図8のX2部分を示している。
【0123】
図8に示す実施形態2の電子部材2は、スルーホールが形成された実施形態1の電子部材1における誘電体基板10に代えて、スルーホールが形成されていない誘電体基板20を用い、さらに、誘電体層を導電性層の間に配置された基板表面側の積層構造と、誘電体層を導電性層の間に配置された基板裏面側の積層構造とをスルーホールを介して接続した実施形態1の素子構造100に代えて、誘電体層を導電性層の間に配置された基板表面側の積層構造と、誘電体層を導電性層の間に配置された基板裏面側の積層構造とを容量結合により接続した素子構造200を用いたものである。
【0124】
この実施形態2では、マトリクス状の配列の行方向における素子構造200の配列ピッチP2a、その列方向における素子構造200の配列ピッチP2b、素子構造200の導電性層の幅W2、素子構造200の導電性層の長さL2bは、実施形態1の電子部材1におけるものと同じである。このように素子構造を構成する部分の形状・寸法などは実施形態1と同じなので、詳しい説明は省略している。
【0125】
ただし、この実施形態2の電子部材2では、素子構造200の長さL2aは、実施形態1の素子構造100の長さLより、2つの電極パッド211aおよび221aの直径分だけ長くなっている。
【0126】
電極パッドの直径は、例えば、任意であり得る。1つの実施形態において、直径は約1mm〜3mmである。電極パッドの形状は任意であり得る。図に示す実施形態において、円形であるが本発明はこれに限定されない。
【0127】
素子構造のその余の形状・寸法、特性などは、実施形態1の素子構造と同様である。
【0128】
図10は、
図9における素子構造(メタマテリアルのR2部分)200を具体的に説明するための図であり、
図10(a)は、
図9のR3部分の平面図、
図10(b)は、
図10(a)のY2−Y2線断面図である。
【0129】
実施形態2の素子構造200では、実施形態1の素子構造100と同様に、誘電体基板20の第1の表面21上には第1の導電性層211、第1の誘電体層231、および第2の導電性層221が順次積層されており、誘電体基板20の第2の表面22上には、第3の導電性層212、第2の誘電体層232、第4の導電性層222が積層されている。ここで、誘電体層の構成材料および導電性層の構成材料は実施形態1におけるものと同一である。
【0130】
この実施形態2の素子構造200では、第1の導電性層211、第2の導電性層221、第3の導電性層212、および第4の導電性層222はそれぞれ、その端部に形成された電極パッド211a、221a、212a、222aを有している。
【0131】
そして、第1の導電性層211の一方の端部に形成された電極パッド211aが、電極パッド211aに対して近方である第3の導電性層212の一方の端部に形成された電極パッド212aと誘電体基板20を挟んで対向するように配置されている。ここで、電極パッド211aと電極パッド212aとは容量結合しており、第1の導電性層211と第3の導電性層212とを高周波電流に対する容量結合により電気的に接続する第1の容量結合手段201を形成している。
【0132】
また、第2の導電性層221の他方の端部に形成された電極パッド221aが、電極パッド221aに対して近方である第4の導電性層222の他方の端部に形成された電極パッド222aと誘電体基板20を挟んで対向するように配置されている。ここで、電極パッド221aと電極パッド222aとは容量結合しており、第2の導電性層221と第4の導電性層222とを高周波電流に対する容量結合により電気的に接続する第2の容量結合手段202を形成している。
【0133】
実施形態2の電子部材2におけるその他の構成は、実施形態1の電子部材1におけるものと同一である。
【0134】
従って、実施形態2の電子部材2では、第1の導電性層211と第3の導電性層212とは、電極パッド211aと電極パッド212aとの容量結合により接続されて、素子構造200を構成するキャパシタの第1の電極(1つのスプリット体)210となっている。
【0135】
また、第2の導電性層221と第4の導電性層222とは、電極パッド221aと電極パッド222aとの容量結合により接続されて、素子構造200を構成するキャパシタの第2の電極(もう1つのスプリット体)220となっている。
【0136】
さらに、第1の誘電体層231と第2の誘電体層232とは、素子構造200を構成するキャパシタの誘電体層(2つのスプリット体の間に介在する誘電体層)230となっている。
【0137】
従って、素子構造200は、主に第1の導電性層211、第3の導電性層212、第2の導電性層221、第4の導電性層222により形成されるインダクタンスと、主に第1の誘電体層231を第1の導電性層211と第2の導電性層221との間に配置された構造および第2の誘電体層232を第3の導電性層212と第4の導電性層222との間に配置された構造により形成されるキャパシタンスとからなる等価回路を形成している。
【0138】
次に実施形態2の電子部材2の動作を説明する。
【0139】
図11は、
図10に示す素子構造200の動作を説明するための断面図である。
【0140】
図8に示すように、進行方向kが電子部材2の誘電体基板20の表面に対して垂直である電磁ノイズが電子部材2に入射すると、素子構造200では、
図11に示すように、電磁ノイズの磁界Hが、キャパシタの2つの電極(スプリット体)210、220で囲まれた領域を通過することとなる。これにより、電流経路Cp(第1の導電性層211から、第1の容量結合手段201、第3の導電性層212、第2の誘電体層232、第4の導電性層222、第2の容量結合手段202、第2の導電性層221、第1の誘電体層231を経て第1の導電性層211に戻る経路)Cpで高周波電流が流れることで、電流経路Cpにより囲まれた領域を通るノイズによる磁界が弱まる。
【0141】
このような電磁ノイズの減衰は、誘電体基板20に設けられているすべての素子構造200で生ずることとなり、その結果、実施形態2の電子部材2においても、実施形態1と同様、電子部材2を超えて伝搬するノイズは、電子部材2により大きく減衰されることとなる。
【0142】
なお、本実施形態2の電子部材2の製造方法は、実施形態1の製造方法における誘電体基板10にスルーホールを形成する工程を含まない代わりに、各導電性層を形成する処理では、導電性層の形成と同時に電極パッドが形成される点で、実施形態1の電子部材1の製造方法と異なる。
【0143】
また、この実施形態2の電子部材2においても、実施形態1の電子部材1の変形例と同様に、誘電体基板の表面側の導電性層と裏面側の導電性層とを、隣接する素子構造の間で電極パッドにより電気的に結合することにより、誘電体基板に対して斜めに起立したスプリット体を形成することが可能である。
【0144】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
前記第1の手段は、前記基板を貫通するスルーホールを介して前記第1の導電性層の一方の端部と前記第3の導電性層の一方の端部とを接続する第1のスルーホール導電性層を含み、
前記第2の手段は、前記基板を貫通するスルーホールを介して前記第2の導電性層の他方の端部と前記第4の導電性層の他方の端部とを接続する第2のスルーホール導電性層を含む、請求項1または請求項2に記載の電子部材。
前記素子構造は、前記第1の導電性層から前記第4の導電性層により形成されるインダクタンスと、前記第1の誘電体層を前記第1の導電性層と前記第2の導電性層との間に配置された構造および前記第2の誘電体層を前記第3の導電性層と前記第4の導電性層との間に配置された構造により形成されるキャパシタンスとからなる回路を形成する、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子部材。
前記素子構造は、ノイズが入射したとき、前記第2の導電性層から前記第1の導電性層、前記第3の導電性層、および前記第4の導電性層を経て前記第2の導電性層に戻る電流経路に高周波電流が流れることにより、前記電流経路により囲まれた領域を通る前記ノイズによる磁界が弱まるように構成されている、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電子部材。
前記誘電体層の構成材料は誘電率が約3以上である、および/または、前記誘電体層の厚みが約1μm〜100μmである、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の電子部材。