【実施例1】
【0018】
実施例1は、高周波デバイスとしてフィルタの例である。
図1は、実施例1に係る高周波デバイスの回路図である。
図1に示すように、実施例1に係る高周波デバイス100は、共振回路60と弾性波共振器Rを備えている。共振回路60は、キャパシタC1、C2およびインダクタLを備えている。キャパシタC1およびC2は端子T1とT2との間に互いに直列接続されている。インダクタLは、端子T1とキャパシタC1との間のノードN1と、端子T2とキャパシタC2との間のノードN2と、の間にキャパシタC1およびC2と並列接続されている。弾性波共振器Rの一端はキャパシタC1とC2との間のノードN3に接続され、他端はグランド端子Tgに接続されている。
【0019】
高周波デバイス100は、ローパスフィルタまたはハイパスフィルタとして機能する。高周波デバイス100は端子T1に入力する高周波信号のうち通過帯域の信号を端子T2に通過させ、他の帯域の信号を抑圧する。例えば、キャパシタC1およびC2のキャパシタンスを5.5pF、インダクタLのインダクタンスを1.5nH、弾性波共振器Rの共振周波数および反共振周波数をそれぞれ2.26GHzおよび2.33GHzとする。これにより、高周波デバイス100は共振周波数より低い周波数帯域を通過帯域とするローパスフィルタとして機能する。
【0020】
例えば、キャパシタC1およびC2のキャパシタンスを7.1pF、インダクタLのインダクタンスを2nH、弾性波共振器Rの共振周波数および反共振周波数をそれぞれ2.26GHzおよび2.33GHzとする。これにより、高周波デバイス100は共振周波数より高い周波数帯域を通過帯域とするハイパスフィルタとして機能する。弾性波共振器の共振周波数を通過帯域と共振回路60が形成する減衰極との間に設けることにより、通過帯域から阻止帯域への変移が急峻なフィルタを実現できる。
【0021】
図2は、実施例1に係るフィルタの断面図、
図3は、実施例1における回路基板の解体斜視図である。
図2および
図3に示すように、誘電体層20aから20fの積層方向をZ方向、誘電体層20aから20fの平面方向をX方向およびY方向とする。回路基板20では、Z方向に複数の誘電体層20aから20fが積層されている。誘電体層20aの下面が回路基板20の下面21a(すなわち複数の誘電体層20aから20fのZ方向で最も端の誘電体層の表面)であり、誘電体層20fの上面が回路基板20の上面21bである。領域66aは回路基板20におけるZ方向の中心64より下面21a側の領域であり、領域66bは中心64より上面21b側の領域である。
【0022】
誘電体層20aから20eの上にそれぞれ配線パターン22aから22eが設けられている。誘電体層20aから20eを貫通するビア配線24aから24eが設けられている。回路基板20の上面21bには方向識別マーク21が設けられている。回路基板20の下面21aには端子23、25aおよび25bが設けられている。端子23は、端子T1、T2およびグランド端子Tgを含む。端子23にバンプ26が設けられている。弾性波デバイス10の端子33aおよび33bはバンプ28を介し端子25aおよび25bに接合されている。これにより弾性波デバイス10は端子25aおよび25bに実装されている。
【0023】
配線パターン22bと22cとは誘電体層20cを挟み対向する。これにより、配線パターン22b、22cおよび誘電体層20cによりキャパシタC1およびC2が形成される。配線パターン22dおよび22eはインダクタLを形成する。キャパシタC1およびC2は回路基板20の領域66aに設けられ、インダクタLは回路基板20の領域66bに設けられている。
【0024】
キャパシタC1およびC2と端子T1およびT2とは配線パターン22cおよびビア配線24aから24cを介し電気的に接続される。インダクタLと端子T1およびT2とはビア配線24aから24eを介し電気的に接続されている。配線パターン22cと端子T1に接続されたビア配線24aから24cとが接続するノードがノードN1であり、配線パターン22cと端子T2に接続されたビア配線24aから24cとが接続するノードがノードN2である。
【0025】
キャパシタC1およびC2はビア配線24aおよび24bを介し端子25bに電気的に接続されている。配線パターン22bと端子25bに接続されたビア配線24aおよび24bとが接続するノードがノードN3である。端子25aはビア配線24aおよび配線パターン22aを介しグランド端子Tgに電気的に接続されている。経路P1は端子T1と端子25bとを接続する経路であり高周波信号を伝送する。経路P2は端子25aとグランド端子Tgとを直流的に接続する経路であり、グランド電位が供給される。
【0026】
誘電体層20aから20fは、例えばセラミック材料等の無機絶縁体または樹脂等の有機絶縁体からなる。誘電体層20aから20fは、例えば主成分としてシリコン(Si)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)の酸化物(例えばディオブサイドCaMgSi
2O
6)を含む。配線パターン22aから22e、端子23、25a、25bおよび方向識別マーク21は、例えば銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、金−パラジウム合金または銀−白金合金を含む金属層である。端子23、25a、25bおよび方向識別マーク21には、上記金属層上にニッケル等のメッキ層が設けられていてもよい。バンプ26および28は、例えば半田バンプ、金バンプまたは銅バンプ等の金属バンプである。端子23とバンプ26は、回路基板20を外部と接続するための端子として機能する。
【0027】
以下に、各寸法を例示する。回路基板20の厚さD1は0.4mm、回路基板20の下面とバンプ26の下面との距離D2は0.3mm、回路基板20の下面と弾性波デバイス10の上面との距離D3は0.02mm、弾性波デバイス10の高さD4は0.1mm、回路基板20の下面とインダクタLとの距離D5は0.35mm、回路基板20の幅W1は2.5mmである。D2はD3+D4より大きいため、弾性波デバイス10はバンプ26により保護される。誘電体層20aから20fは例えば6層から12層である。
【0028】
図4(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図であり、
図4(b)は、実施例1における別の弾性波共振器の断面図である。
図4(a)の例では、弾性波共振器12は弾性表面波共振器である。基板11の上面にIDT(Interdigital Transducer)50と反射器52が設けられている。IDT50は、互いに対向する1対の櫛型電極50aを有する。櫛型電極50aは、複数の電極指50bと複数の電極指50bを接続するバスバー50cとを有する。反射器52は、IDT50の両側に設けられている。IDT50が基板11に弾性表面波を励振する。基板11は、例えば、タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板または水晶基板等の圧電基板である。基板11は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、水晶基板またはシリコン基板等の支持基板上に圧電基板が接合された複合基板でもよい。支持基板と圧電基板との間の酸化シリコン膜または窒化アルミニウム膜等の絶縁膜が設けられていてもよい。IDT50および反射器52は例えばアルミニウム膜または銅膜により形成される。基板11上にIDT50および反射器52を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。
【0029】
図4(b)の例では、弾性波共振器12は圧電薄膜共振器である。基板11上に圧電膜56が設けられている。圧電膜56を挟むように下部電極54および上部電極58が設けられている。下部電極54と基板11との間に空隙55が形成されている。圧電膜56の少なくとも一部を挟み下部電極54と上部電極58とが対向する領域が共振領域57である。共振領域57内の下部電極54および上部電極58は圧電膜56内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。基板11は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板またはシリコン基板である。下部電極54および上部電極58は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜56は例えば窒化アルミニウム膜である。空隙55の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。
【0030】
図5は、実施例1における弾性波デバイスの断面図である。
図5に示すように、弾性波デバイス10では、配線基板30上に基板11が搭載されている。配線基板30は積層された複数の絶縁層30aおよび30bを含む。絶縁層30aおよび30bは、例えば樹脂層またはセラミックス層である。配線基板30の上面に配線層32bおよび環状金属層36が設けられている。絶縁層30a上に配線層32aが設けられている。絶縁層30aおよび30bを貫通するビア配線34aおよび34bが設けられている。配線基板30の下面に端子33aおよび33bが設けられている。配線層32a、32b、ビア配線34a、34bおよび端子33aおよび33bは、例えば銅層、金層、アルミニウム層またはニッケル層等の金属層である。
【0031】
基板11の下面に弾性波共振器12および配線14が設けられている。弾性波共振器12は、
図4(a)または
図4(b)に図示された弾性波共振器12である。配線14は、例えば銅層、金層およびアルミニウム層等の金属層である。配線14と配線層32bとはバンプ16により接合されている。バンプ16は、例えば金バンプ、銅バンプまたは半田バンプ等の金属バンプである。弾性波共振器12が配線基板30に空隙18を介し対向するように、基板11は、配線基板30上にバンプ16を用いフリップチップ実装されている。端子33aおよび33bは、ビア配線34a、配線層32a、ビア配線34b、配線層32b、バンプ16および配線14を介し弾性波共振器12の両端にそれぞれ電気的に接続される。
【0032】
基板11を囲むように封止部35が設けられている。封止部35の下面は環状金属層36に接合されている。封止部35は、例えば半田等の金属または樹脂等の絶縁体である。基板11および封止部35の上面にリッド38が設けられている。リッド38は、金属板または絶縁板である。
図2では、端子33aおよび33bがバンプ28を介し回路基板20の端子25aおよび25bに接合される。弾性波デバイス10は弾性波共振器12が封止されていないベアチップでもよい。
【0033】
図6(a)から
図7(b)は、実施例1に係るフィルタの製造方法を示す断面図である。
図6(a)から
図7(a)は、
図2と上下を逆に図示している。すなわち回路基板20の下面21aが上に上面21bが下に図示されている。
図6(a)に示すように、回路基板20を形成する。
図6(b)に示すように、端子23aおよび23bにバンプ28を用い端子33aおよび33bをそれぞれ接合する。これにより、弾性波デバイス10を回路基板20に実装する。バンプ28は例えば半田バンプである。
【0034】
図7(a)に示すように、端子23にバンプ26を形成する。バンプ26はコア26aとコア26aを囲む外層26bを含む。外層26bは例えば半田層であり、例えば錫銀半田層である。コア26aは、外層26bの融点より高い融点を有する金属または絶縁体からなり、例えば銅である。例えば外層26bが錫銀の場合、コア26aの融点は220℃以上である。コア26aの高さD5はD3+D4より大きい。
図6(b)の工程と
図7(a)の工程との順番は逆でもよいし、
図6(b)の工程と
図7(a)の工程とを同時に行ってもよい。以上により、実施例1に係るフィルタが完成する。
【0035】
図7(b)に示すように、実装基板40の上面に端子42が設けられている。端子42にバンプ26が接合する。これにより、高周波デバイス100が実装基板40に実装される。コア26aにより、弾性波デバイス10の下面が実装基板40に接触することを抑制できる。
【0036】
図8は、実施例1における回路基板の平面図である。
図8は、端子23、25、配線パターン22a、22dおよび22eを主に図示している。
図8に示すように、回路基板20の下面には端子23および25が設けられている。端子23は端子T1、T2およびグランド端子Tgを含み、端子25は端子25aおよび25bを含む。配線パターン22dの一端はビア24を介し端子T1に電気的に接続され、他端はビア配線24eを介し配線パターン22eの一端に電気的に接続されている。配線パターン22eの他端はビア24を介し端子T2に電気的に接続されている。配線パターン22dおよび22eは各々C字状またはU字状であり、配線パターン22dと22eとで囲まれた領域およびこの領域を囲む配線パターン22dおよび22eは巻回領域68である。巻回領域68は平面視において端子25a、グランド端子Tgおよび配線パターン22aと重ならない。配線パターン22aの両端部はビア24を介しそれぞれ端子25aおよびグランド端子Tgに電気的に接続されている。
【0037】
[比較例1]
図9は、比較例1における回路基板の平面図である。
図9に示すように、巻回領域68は、平面視において端子25aと重なる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0038】
巻回領域68がグランド金属と重なると、渦電流損が発生し、インダクタLのQ値が低下する。これにより、フィルタの損失が大きくなる。端子25aは回路基板20が実装される実装基板40の上面よりインダクタLに近い。このため、インダクタLのQ値の低下が大きくなる。
【0039】
実施例1によれば、弾性波デバイス10は回路基板20の下面21aに搭載され、弾性波共振器12(弾性波素子)が端子33a(グランドパッド)と33b(信号パッド)との間に接続されている。端子33aは端子25a(第1グランド端子)に接合され、端子33bは端子25b(第1信号端子)に接合されている。インダクタLは、複数の配線パターン22aから22eの少なくとも1つの配線パターン22dおよび22eにより形成され、平面視において配線パターン22dおよび22eが囲む巻回領域68は端子25aと重ならない。これにより、インダクタLのQ値が向上し、フィルタの損失を抑制できる。
【0040】
回路基板20の下面21aに設けられた端子T1(第2信号端子)は端子25bと回路基板20内の経路P1(第1経路)を介し接続されている。端子Tg(第2グランド端子)は端子25aと回路基板20内の経路P2(第2経路)を介し直流的に接続されている。このように、弾性波デバイス10が端子T1およびグランド端子Tgと回路基板20の同じ下面21aに設けられているため、弾性波デバイス10に上部から物体が接触することを抑制できる。弾性波デバイス10は、回路基板20の上面21bに搭載されていてもよい。
【0041】
平面視において巻回領域68はグランド端子Tgおよび経路P2に重ならない。これにより、インダクタLのQ値をより向上できる。
【0042】
キャパシタC1(第1キャパシタ)は、複数の配線パターン22aから22eの少なくとも1つの配線パターン22bおよび22cにより形成され、端子T1と接続されている。このとき、インダクタLは、回路基板20の積層方向の中心より下面21aと反対側に設けられ、キャパシタC1は、回路基板20の積層方向の中心より下面21a側に設けられている。これにより、インダクタLはグランド端子25aおよび実装基板40より離れるため、インダクタLのQ値の低下を抑制できる。
【0043】
インダクタLとキャパシタC1は、端子T1と端子T2(第3信号端子)との間に並列接続されている。これにより、インダクタLとキャパシタC1とは並列共振回路を形成する。端子25bはインダクタLおよびキャパシタC1のいずれか一方の一端に接続されている。弾性波共振器12の一端は端子33bに接続され、他端は端子33aに接続されている。
【0044】
主に並列共振回路が形成する減衰極の極小とフィルタの通過帯域との間に主に弾性波共振器12が形成する減衰極の極小を設けることで、フィルタの通過帯域と阻止帯域との間の減衰量の急峻性を高めることができる。このようなフィルタでは、回路基板20に弾性波共振器12を有する弾性波デバイス10を搭載する。このとき弾性波デバイス10はグランド電位が供給される端子33aを有することになる。よって端子33aに接合される端子25aを巻回領域68と重ねないことで、フィルタの損失を向上できる。
【0045】
キャパシタC2(第2キャパシタ)は、配線パターン22bおよび22cにより形成され、端子T1とT2キャパシタC1と直列接続され、インダクタLは、端子T1と端子T2との間においてキャパシタC1とC2と並列接続されている。端子25bはキャパシタC1とC2とのノードN3に接続されている。
【0046】
このようなフィルタでは、インダクタLとキャパシタC1およびC2との並列共振回路が形成する減衰極の極小とフィルタの通過帯域との間に主に弾性波共振器12が形成する減衰極の極小を設けることで、フィルタの通過帯域と阻止帯域との間の減衰量の急峻性を高めることができる。また、端子25aを巻回領域68と重ねないことで、フィルタの損失を向上できる。
【0047】
巻回領域68が高周波信号が加わる信号経路の金属パターンに重なってもインダクタLのQ値の低下が大きくない。そこで、平面視において巻回領域68を端子25bに重ねる。これにより、Q値を低下させることなく、インダクタLを配置する領域を確保できる。
【0048】
Z方向における回路基板20の下面21aからバンプ26の下面まで高さD2は下面21aから弾性波デバイス10の下面(第1面と反対の面)までの高さD3+D4より大きい。これにより、
図7(b)のように、高周波デバイス100を実装基板40に実装するときに、弾性波デバイス10が実装基板40と接触し、弾性波デバイス10が破損されることを抑制できる。
【0049】
さらに、
図7(b)のように、バンプ26は、半田からなる外層26bと、半田の融点より高い融点を有し外層26bに囲まれたコア26aと、を備える。Z方向におけるコア26aの高さD5は回路基板20の下面21aから弾性波デバイス10の下面までの高さD3+D4より大きい。これにより、回路基板20を実装基板40に実装するときに、外層26bの半田が溶融しても、弾性波デバイス10が実装基板40に接触することをより抑制できる。