【実施例1】
【0019】
図1(a)は実施例1に係るラダー型フィルタの回路図、
図1(b)は、ラダー型フィルタの通過特性を示す模式図である。
図1(a)に示すように、ラダー型フィルタは、直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3を備えている。直列共振器S1からS4は、入力端子Tin(第1端子)と出力端子Tout(第2端子)との間に直列に接続されている。並列共振器P1からP3は入力端子Tinと出力端子Toutとの間に並列に接続されている。並列共振器P1からP3の一端はグランド端子Tgに接続されている。直列共振器および並列共振器の個数は適宜設定できる。
【0020】
図1(b)に示すように、ラダー型フィルタは、通過帯域48および阻止帯域49を有するバンドパスフィルタとして機能する。直列共振器S1からS4の共振周波数frsは通過帯域48の中央部に位置し、反共振周波数fasは通過帯域48より高周波数側の阻止帯域49に位置する。並列共振器P1からP3の反共振周波数fapは通過帯域48の中央部に位置し、共振周波数frpは通過帯域48より低周波数側の阻止帯域49に位置する。通過帯域48の高周波端は直列共振器S1からS4の反共振周波数fasにより定まり、通過帯域48の低周波端は並列共振器P1からP3の共振周波数frpにより定まる。
【0021】
通過帯域48の温度変化を小さくするためには、直列共振器S1からS4の反共振周波数fasの周波数温度係数を小さくしかつ並列共振器P1からP3の共振周波数frpの周波数温度係数を小さくすることが求められる。また、通過帯域の幅を変えないためには、直列共振器S1からS4の反共振周波数fasの周波数温度係数と、並列共振器P1からP3の共振周波数frpの周波数温度係数と、を略等しくすることが求められる。
【0022】
図2(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、
図2(b)は、
図2(a)のA−A断面図である。電極指の配列方向をX方向、電極指の延伸方向をY方向、支持基板および圧電基板の積層方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、圧電基板の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。圧電基板が回転YカットX伝搬基板の場合、X方向は結晶方位のX軸方向となる。
【0023】
図2(a)および
図2(b)に示すように、支持基板10上に絶縁層11が接合されている。絶縁層11上に圧電基板12が接合されている。絶縁層11は支持基板10上に直接接合されていてもよいし、接合層等を介し間接的に接合されていてもよい。圧電基板12は絶縁層11上に直接接合されていてもよいし、接合層等を介し間接的に接合されていてもよい。圧電基板12上に弾性波共振器20が設けられている。弾性波共振器20はIDT(Inter Digital Transducer)22および反射器24を有する。反射器24はIDT22のX方向の両側に設けられている。IDT22および反射器24は、圧電基板12上の金属膜14により形成される。
【0024】
IDT22は、対向する一対の櫛型電極18を備える。櫛型電極18は、複数の電極指15と、複数の電極指15が接続されたバスバー16と、を備える。一対の櫛型電極18の電極指15が交差する領域が交差領域25である。交差領域25の長さが開口長である。一対の櫛型電極18は、交差領域25の少なくとも一部において電極指15がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。交差領域25において複数の電極指15が励振する弾性波は、主にX方向に伝搬する。一対の櫛型電極18のうち一方の櫛型電極の電極指15のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。弾性波の波長λはほぼ電極指15の2本分のピッチとなる。反射器24は、IDT22の電極指15が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより弾性波はIDT22の交差領域25内に閉じ込められる。
【0025】
圧電基板12は、単結晶タンタル酸リチウム(LiTaO
3)基板、単結晶ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)基板または単結晶水晶基板であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。絶縁層11は、例えば酸化シリコン(SiO
2)を主成分とするアモルファスおよび/または多結晶層である。絶縁層11は、酸化シリコンを主成分とし、弗素等の不純物を含んでいてもよい。絶縁層11の弾性定数の温度係数の符号は圧電基板12の弾性定数の温度係数の符号の反対である。これにより、弾性波共振器の周波数温度係数を小さくできる。
【0026】
支持基板10は、圧電基板12のX方向の線膨張係数より小さな線膨張係数を有する。これにより、弾性波共振器の周波数温度係数を小さくできる。支持基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、シリコン基板または炭化シリコン基板である。サファイア基板はr面、c面またはa面を上面とする単結晶酸化アルミニウム(Al
2O
3)基板である。アルミナ基板は多結晶酸化アルミニウム(Al
2O
3)基板である。シリコン基板は単結晶または多結晶シリコン(Si)基板である。炭化シリコン基板は単結晶または多結晶炭化シリコン(SiC)基板である。
【0027】
金属膜14は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)またはモリブデン(Mo)を主成分とする膜であり、例えばアルミニウム膜、銅膜またはモリブデン膜である。電極指15と圧電基板12との間にTi(チタン)膜またはCr(クロム)膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指15より薄い。電極指15を覆うように絶縁膜が設けられていてもよい。絶縁膜は保護膜または温度補償層として機能する。
【0028】
支持基板10の厚さは例えば50μmから500μmである。絶縁層11の厚さT1は、例えば0.1μmから10μmであり、例えば弾性波の波長λ以下である。圧電基板12の厚さT2は例えば0.5μmから20μmであり、例えば弾性波の波長λ以下である。弾性波の波長λは例えば1μmから6μmである。2本の電極指15を1対としたときの対数は例えば20対から300対である。IDT22のデュティ比は、電極指15の太さ/電極指15のピッチであり、例えば30%から80%である。IDT22の開口長は例えば10λから50λである。
【0029】
支持基板10として圧電基板12より線膨張係数の小さい材料を用いると、温度変化により電極指15のピッチの変化が小さくなり周波数温度係数の変化が小さくなる。さらに、圧電基板12と絶縁層11の弾性定数の温度係数の正負の符号を反対とする。これにより、周波数温度係数がさらに小さくなる。
【0030】
[実験およびシミュレーション]
圧電基板12および絶縁層11の厚さT1およびT2を変え、共振周波数frおよび反共振周波数の周波数温度係数(TCF:Temperature Coefficient of Frequency)を測定およびシミュレーションした。
図3(a)および
図3(b)は、それぞれ実験およびシミュレーションに用いた弾性波共振器の断面図である。
【0031】
図3(a)に示すように、実験では、絶縁層11と圧電基板12との間に接合層13が設けられている。弾性波共振器20の作製方法について説明する。支持基板10上に絶縁層11をCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い成膜する。絶縁層11上に接合層13を成膜する。接合層13と圧電基板12とを表面活性化法を用い接合する。絶縁層11として酸化シリコン膜を用いると圧電基板との接合強度が弱いため、接合層13を設けている。CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い圧電基板12の上面を所望の厚さとする。圧電基板12上にIDT22および反射器24を金属膜14を用い形成する。
【0032】
弾性波共振器20の作製条件は以下である。
支持基板10:サファイア基板
絶縁層11:厚さがT1の酸化シリコン層
接合層13:厚さが10nmの酸化アルミニウム層
圧電基板12:厚さがT2の42°YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
金属膜14:厚さが500nmのアルミニウム膜
電極指15のピッチ×2:5μm(弾性波の波長λ)
電極指15の対数(本数×2):100対
デュティ比:50%
開口長:100μm(20λ)
【0033】
図3(b)に示すように、シミュレーションでは、支持基板10は減衰材46上に設けられている。支持基板10上に絶縁層11が設けられ、絶縁層11上に圧電基板12が設けられている。圧電基板12上に電極指15が設けられている。圧電基板12上には電極指15を覆うように空気層44が設けられている。電極指15のピッチはλ/2である。X方向の幅をλとし、X方向の境界条件を周期境界条件とした。Y方向の幅をλ/32とし、Y方向の境界条件を周期境界条件とした。その他のシミュレーション条件は実験と同じである。
【0034】
図4(a)および
図4(b)は、共振周波数および反共振周波数のTCFの実験およびシミュレーション結果を示す図である。横軸は圧電基板12の厚さT2/λであり縦軸はTCFである。圧電基板12の厚さT2を0.2λ、0.4λおよび0.6λとし、絶縁層11の厚さT1を0.2λ、0.4λおよび0.6λとした。ドットは測定点およびシミュレーション点であり、曲線は近似曲線である。T1=0.2λ、0.4λおよび0.6λの測定点からT1=0.1λの推定線を実線で図示している。
【0035】
図4(a)および
図4(b)を比較すると、反共振周波数faのTCFは共振周波数frのTCFよりマイナス側に位置する。圧電基板12の厚さT2が小さくなると、TCFはプラスの方向に変化する。T2が0.6λと0.4λの間のTCFの差より、T2が0.4λと0.2λとの間のTCFの差が大きい。絶縁層11の厚さT1が大きくなるとTCFはプラスの方向に変化する。
【0036】
タンタル酸リチウムと酸化シリコンとでは弾性定数の温度係数の正負の符号が反対である。電極指15が励振した弾性表面波のエネルギーは主に圧電基板12と絶縁層11内に存在する。圧電基板12を薄くすると、絶縁層11内に含まれる弾性表面波のエネルギーが大きくなりTCFがプラスの方向に変化する。絶縁層11を厚くすると、絶縁層11内に含まれる弾性表面波のエネルギーが大きくなりTCFがプラスの方向に変化する。このように、圧電基板12の厚さT1と絶縁層11の厚さT2を適宜設定することで、ラダー型フィルタの通過帯域の高周波端のTCFと低周波端のTCFを独立に設定できる。
【0037】
例えば、シミュレーション結果を例に、直列共振器では、T1=0.6λおよびT2=0.4λとすると、直列共振器の反共振周波数fasのTCFは約−5ppm/Kである。並列共振器では、T1=0.2λおよびT2=0.4λとすると、並列共振器の共振周波数frpのTCFは約−5ppm/Kである。このように、直列共振器と並列共振器とで圧電基板12の厚さT2を略等しくし、直列共振器の絶縁層11の厚さT1を並列共振器の絶縁層11の厚さT1より大きくすると、直列共振器の反共振周波数fasのTCFと並列共振器の共振周波数frpのTCFを略等しくかつ0に近づけることができる。
【0038】
別の例では、直列共振器では、T1=0.4λおよびT2=0.2λとすると、直列共振器の反共振周波数fasのTCFは約−10ppm/Kである。並列共振器では、T1=0.4λおよびT2=0.6λとすると、並列共振器の共振周波数frpのTCFは約−10ppm/Kである。直列共振器と並列共振器とで絶縁層11の厚さT1を略等しくし、直列共振器の圧電基板12の厚さT2を並列共振器の圧電基板12の厚さT2より小さくすると、直列共振器の反共振周波数fasのTCFと並列共振器の共振周波数frpのTCFを略等しくかつ0に近づけることができる。
【0039】
図5は、実施例1に係るフィルタの平面図である。
図5に示すように、圧電基板12上に弾性波共振器20および配線26が設けられている。弾性波共振器20は直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3を含む。配線26はパッドPin、PoutおよびPgを含む。パッドPin、PoutおよびPgはそれぞれ入力端子Tin、出力端子Toutおよびグランド端子Tgに電気的に接続されている。直列共振器S1からS4は、配線26を介しパッドPinとPoutとの間に直列に接続され、並列共振器P1からP3は、配線26を介しパッドPinとPoutとの間に並列に接続されている。並列共振器P1からP3は領域50に設けられ、直列共振器S1からS4は、領域52に設けられている。
【0040】
図6は、実施例1に係るフィルタの断面図である。
図6に示すように、領域50および52における圧電基板12の平均厚さはそれぞれT2pおよびT2sである。領域50と52との間の支持基板10の上面に段差が設けられている。領域50における絶縁層11の平均厚さT1pは領域52における絶縁層11の平均厚さT1sより小さい。圧電基板12の平均厚さT2pとT2sは略等しい。領域50と52と間の圧電基板12の上面には段差はなく略平面である。
【0041】
実施例1によれば、直列共振器S1からS4が設けられた領域52(第1領域)における絶縁層11の平均厚さT1sと並列共振器P1からP3が設けられた領域50(第2領域)における絶縁層11の平均厚さT1pが異なる。これにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数を独立に設定できる。
【0042】
領域52における絶縁層の平均厚さT1sは、領域50における絶縁層11の平均厚さT1pより大きい。これにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数を近づけることができる。T1sはT1pの1.1倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。T1sはT1pの3倍以下が好ましい。
【0043】
領域52における圧電基板12の平均厚さT2sと領域50における圧電基板12の平均厚さT2pは製造誤差を許容する程度に略等しい。これにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数を近づけることができる。
【0044】
[実施例1の変形例1]
図7(a)は、実施例1の変形例1に係るフィルタの断面図である。
図7(a)に示すように、支持基板10絶縁層11との界面に凸部54および凹部56が設けられている。領域50および52おける凹部56における絶縁層11の厚さT4pおよびT4sは略等しい。領域50および52における凸部54の高さT5pおよびT5sは互いに異なる。T5pはT5sより大きい。これにより、領域50における絶縁層11の平均厚さT1pは領域52における絶縁層11の平均厚さT1sより小さくなる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0045】
実施例1の変形例1のように、凸部54の高さを異ならせることで絶縁層11の平均厚さT1pとT1sとを異ならせてもよい。なお、絶縁層11の平均厚さT1pおよびT1sは、絶縁層11の平面視における単位面積当たりの体積により算出できる。
【0046】
[実施例1の変形例2]
図7(b)は、実施例1の変形例2に係るフィルタの断面図である。
図7(b)に示すように、支持基板10の上面および圧電基板12の上面の領域50と52との間には段差はなく略平面である。領域50と52との間における絶縁層11の上面に段差が設けられている。T2pはT2sより大きく、T1pはT1sより小さい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0047】
実施例1の変形例2のように、領域52における圧電基板12の平均厚さT2sと領域50における圧電基板12の平均厚さT2pとは互いに異なる。こにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数を独立に設定できる。
【0048】
また、領域52における絶縁層11の平均厚さT1sは、領域50における絶縁層11の平均厚さT1pより大きく、かつ領域52における圧電基板12の平均厚さT2sは、領域50における圧電基板12の平均厚さT2pより小さい。これにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数をより近づけることができる。T2pはT2sの1.1倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。T2pはT2sの3倍以下が好ましい。
【0049】
[実施例1の変形例3]
図8(a)は、実施例1の変形例3に係るフィルタの断面図である。
図8(a)に示すように、圧電基板12の上面の領域50と52との間には段差はなく略平面である。領域50と52との間における支持基板10の上面および絶縁層11の上面に段差が設けられている。T2pはT2sより大きく、T1pはT1sと略等しい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0050】
実施例1の変形例3のように、領域52における絶縁層11の平均厚さT1sは、領域50における絶縁層11の平均厚さT1pと製造誤差程度に略等しく、かつ領域52における圧電基板12の平均厚さT2sは、領域50における圧電基板12の平均厚さT2pより小さい。これにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数をより近づけることができる。
【0051】
[実施例1の変形例4]
図8(b)は、実施例1の変形例4に係るフィルタの断面図である。
図8(b)に示すように、領域50の支持基板10と圧電基板12との間に絶縁層11pが設けられ、領域52の支持基板10と圧電基板12との間に絶縁層11sが設けられている。T2pはT2sと略等しく、T1pはT1sと略等しい。絶縁層11pの弾性定数の温度係数と絶縁層11sの弾性定数の温度係数とは異なる。例えば絶縁層11sの弗素濃度は絶縁層11pの弗素濃度より高い。例えば、絶縁層11pには意図的に弗素を添加しておらず、絶縁層11sに5原子%程度の弗素を添加する。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0052】
酸化シリコン内の弗素濃度が高くなると弾性定数の温度係数の変化量が大きくなる。よって、領域52の絶縁層11sの弗素濃度を領域50の絶縁層11pの弗素濃度より高くする。これにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数をより近づけることができる。
【0053】
実施例1の変形例4によれば、領域52における絶縁層11sの弾性定数の温度係数と領域50における絶縁層11pの弾性定数の温度係数とは互いに異なる。これにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数を独立に設定できる。
【0054】
領域52における絶縁層11sの弾性定数の温度係数は領域50における絶縁層11pの弾性定数の温度係数と同じ符号でありかつ絶対値が大きい。これにより、通過帯域の高周波端と低周波端の周波数温度係数をより近づけることができる。
【0055】
実施例1およびその変形例1から3において、領域50と52とで絶縁層11の弾性定数の温度係数を異ならせてもよい。領域52における絶縁層11の弾性定数の温度係数は領域50における絶縁層11の弾性定数の温度係数と同じ符号でありかつ絶対値が大きいことが好ましい。
【0056】
実施例1およびその変形例において、弾性表面波のエネルギーは圧電基板12の表面と表面から2λ程度の深さとの間に主に存在する。そこで、領域50および52における圧電基板の平均厚さT2pおよびT2sを、電極指15の平均ピッチの2倍以下とし、領域50および52における絶縁層11の平均厚さT1pおよびT1sを、電極指15の平均ピッチの2倍以下とする。これにより、弾性表面波のエネルギーが圧電基板12および絶縁層11の両方に分布する。よって、圧電基板12および絶縁層11の厚さを設定することでTCFを設定できる。T2p、T2s、T1pおよびT1sは、電極指15の平均ピッチの1.5倍以下が好ましく、1.2倍以下がより好ましい。T2p、T2s、T1pおよびT1sは、電極指15の平均ピッチの0.2倍以上が好ましい。
【0057】
IDT22がSH(Shear Horizontal)を励振するとき、バルク波が生成されやすい。圧電基板12が36°以上かつ48°以下回転Yカットタンタル酸リチウム基板のとき、SH波が励振される。このとき、圧電基板12の厚さが弾性波の波長λ以下のとき、すなわち電極指15のピッチの平均値に2倍以下のとき、損失が抑制される。また、支持基板10の上面から圧電基板12の上面までの距離が電極指15のピッチの平均値に4倍以下のとき、損失が抑制される。
【0058】
弾性波が支持基板10に漏れないように、支持基板10の音響インピーダンスは圧電基板12の音響インピーダンスより高い(すなわち支持基板10の音速は圧電基板12の音速より速い)ことが好ましい。また、絶縁層11内に弾性波が伝搬するため絶縁層11の音響インピーダンスは圧電基板12および支持基板10の音響インピーダンスより低い(すなわち絶縁層11の音速は圧電基板12および支持基板10の音速より遅い)ことは好ましい。
図3(a)の接合層13としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムまたは窒化シリコンを用いることができる。接合層13の厚さは1nm以上かつ10nm以下である。