【解決手段】水の存在下で脱皮処理した大豆を磨砕する磨砕工程、前記磨砕工程で得られた磨砕物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって均質化する第1の均質化工程、前記第1の均質化工程で得られた第1の均質化物を前記第1の均質化工程における温度よりも高温に加熱する加熱処理工程、及び前記加熱処理工程で得られた加熱処理物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって、70℃を超える温度で均質化する第2の均質化工程を含む、大豆加工食品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、原料として大豆を乾式粉砕して得られた大豆粉が使用されているところ、大豆粉は酸化されやすく不快な臭いを発生するため、粉砕後すぐに用いなければならない。また、特許文献2では超高圧下で全粒大豆粉末を微粒化しているが、高価な湿式ジェットミル等の微粒化装置を導入する必要があり、設備の面でコストが高くつくという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不快臭がなく、かつ食感がなめらかな大豆飲料等の大豆加工食品を低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水の存在下で脱皮処理した大豆を磨砕する磨砕工程、磨砕工程で得られた磨砕物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって均質化する第1の均質化工程、第1の均質化工程で得られた第1の均質化物を前記第1の均質化工程における温度よりも高い温度で加熱する加熱処理工程、及び加熱処理工程で得られた加熱処理物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって、70℃を超える温度で均質化する第2の均質化工程を含む、大豆加工食品の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、水の存在下で脱皮処理した大豆を磨砕する磨砕工程、磨砕工程で得られた磨砕物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって均質化する第1の均質化工程、第1の均質化工程で得られた第1の均質化物を前記第1の均質化工程における温度よりも高い温度で加熱する加熱処理工程、及び加熱処理工程で得られた加熱処理物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって、前記第1の均質化工程における温度よりも高く、前記加熱処理工程における温度よりも低い温度で均質化する第2の均質化工程を含む、大豆加工食品の製造方法を提供する。
【0009】
本発明者は、磨砕された脱皮大豆を均質化し、加熱処理した後、再度均質化することにより、不快臭がなく、かつ食感がなめらかな大豆飲料等の大豆加工食品が得られることを見出した。本発明の製造方法によれば、高価な微粒化装置を用いることなく、比較的安価なホモジナイザー等の装置を用いることで、低コストで大豆加工食品を製造することができる。
【0010】
上記製造方法において、磨砕物の粒度のメジアン径は250μm以下であることが好ましい。これにより、大豆加工食品の食感がよりなめらかなものとなる。
【0011】
本発明はまた、粒度のメジアン径が60μm以下であり、粘度が300mPa・s以上である大豆飲料を提供し、さらに、上記大豆飲料を原料として含む大豆加工食品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不快臭がなく、かつ食感がなめらかな大豆飲料等の大豆加工食品を低コストで製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本明細書において「大豆飲料」とは、大豆を原料として用い、オカラ成分を含有する飲料を意味し、豆乳類の日本農林規格(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)に規定する豆乳、調製豆乳及び豆乳飲料とは区別される。「大豆飲料」は大豆由来の成分をそのまま含んでいることから、「大豆まるごと飲料」と称されることもある。
【0015】
本明細書において「大豆加工食品」とは、大豆飲料、及び後述する大豆飲料発酵物等の大豆飲料を加工して得られる飲食品を意味する。
【0016】
本実施形態に係る大豆加工食品の製造方法は、例えば、脱皮処理した大豆に水を加えて磨砕する磨砕工程、磨砕工程で得られた磨砕物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって均質化する第1の均質化工程、第1の均質化工程で得られた第1の均質化物を前記第1の均質化工程における温度よりも高温に加熱する加熱処理工程、及び加熱処理工程で得られた加熱処理物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって均質化する第2の均質化工程を含む。
【0017】
磨砕工程は、水の存在下で脱皮処理した大豆を磨砕する工程である。磨砕工程において使用する水は、加温水であることが好ましい。磨砕工程は、例えば、脱皮処理した大豆に水(好ましくは加温水)を加えたものを、市販のミキサー(例えば、商品名:ワーリングブレンダー7012S型(WARING社製))、ホモミキサー(例えば、商品名:ヒスコトロン(マイクロテックニチオン社製))等を用いて撹拌、混合することで実施することができる。磨砕工程では、脱皮処理した大豆として、あらかじめ水に浸漬したものを用いることもできる。浸漬時の水温、浸漬時間等の条件は、気温、大豆の含水率等に応じて適宜調節することができる。なお、大豆の品種としては特に制限なく、あらゆる品種の大豆を用いることができる。
【0018】
磨砕工程で得られる磨砕物(懸濁液)の粒度のメジアン径は特に限定されないが、大豆加工食品の食感がよりなめらかなものとなる観点から、250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、120μm以下であることが特に好ましい。磨砕物の粒度のメジアン径は、湿式粒度分布計(好ましくは、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、SALD−2200(株式会社島津製作所製)))によって測定することができる。このメジアン径は、磨砕物の粒度分布における積算粒子量(差分%)が50%となるときの粒子径を意味し、50%径と同義である。
【0019】
第1の均質化工程は、磨砕工程で得られた磨砕物(懸濁液)を10MPa以上95MPa以下の圧力によって均質化する工程である。第1の均質化工程は10MPa以上95MPa以下の圧力の範囲内であれば特に制限なく実施することができるが、10MPa以上50MPa以下であることが好ましく、10MPa以上30MPa以下であることがより好ましい。第1の均質化工程における温度は特に制限されないが、大豆加工食品の食感がよりなめらかなものとなる観点から、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましく、65℃以上であることが特に好ましい。また、第1の均質化工程における温度の上限は、加熱処理工程の温度よりも低温であれば特に制限されず、例えば、110℃以下、100℃以下、90℃以下、又は80℃以下とすることができる。第1の均質化は、例えば、市販のホモジナイザー等(例えば、商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて実施することができる。
【0020】
加熱処理工程は、第1の均質化工程で得られた第1の均質化物を第1の均質化工程における温度よりも高い温度で加熱する工程である。加熱処理工程における温度は、第1の均質化工程における温度よりも高い温度であれば特に制限されないが、大豆加工食品の食感がよりなめらかなものとなる観点から、105℃以上150℃以下であることが好ましく、120℃以上150℃以下であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定されるが、タンパク質の変性を極力抑制する観点から、下限値としては、3秒以上であることが好ましく、5秒以上であることがより好ましく、10秒以上であることが更に好ましく、30秒以上であることが更により好ましく、1分以上であることが特に好ましく、上限値としては、60分以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましく、10分以下であることが更に好ましく、3分以下であることが更により好ましく、2分以下であることが特に好ましい。また、加熱処理工程における加熱温度と加熱時間との組合せとしては、例えば、140℃で30秒以上1分以下でもよい。なお、加熱処理工程における加熱温度と加熱時間との組合せは、特に上述に限定されない。また、加熱処理工程は、第1の均質化物を殺菌処理する殺菌処理工程とすることもできる。この場合、殺菌処理方法としては、スチームインジェクション処理、スチームインフュージョン処理、レトルト殺菌等を適用することができる。
【0021】
第2の均質化工程は、加熱処理工程で得られた加熱処理物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって、70℃を超える温度で均質化する工程である。また、第2の均質化工程は、加熱処理工程で得られた加熱処理物を10MPa以上95MPa以下の圧力によって、第1の均質化工程における温度よりも高く、加熱処理工程における温度よりも低い温度で均質化する工程である。本実施形態に係る大豆加工食品の製造方法においては、第2の均質化工程を含むことにより、得られる第2の均質化物におけるメジアン径がより小さくなり、大豆加工食品の食感をなめらかなものとすることができる。第2の均質化工程は10MPa以上95MPa以下の圧力範囲であれば特に制限なく実施することができるが、10MPa以上50MPa以下であることが好ましく、10MPa以上30MPa以下であることがより好ましい。第2の均質化工程における温度は70℃を超える温度であれば特に制限なく実施することができるが、大豆加工食品の食感がよりなめらかなものとなる観点から、75℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。また、第2の均質化工程における温度の上限は、加熱処理工程の温度よりも低い温度であれば特に制限されず、例えば、120℃未満、110℃以下、100℃以下、又は90℃以下とすることができる。別の態様として、第2の均質化工程における温度の下限は、第1の均質化工程における温度よりも高い温度であれば特に制限されないが、大豆加工食品の食感がよりなめらかなものとなる観点から、例えば、65℃を超える温度、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上とすることができ、第2の均質化工程における温度の上限は、加熱処理工程における温度よりも低い温度であれば特に制限されないが、例えば、120℃未満、110℃以下、100℃以下、又は90℃以下とすることができる。第2の均質化は、例えば、市販のホモジナイザー等(例えば、商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて実施することができる。
【0022】
本実施形態に係る大豆加工食品の製造方法は、上記各工程に加えて酵素処理工程を含んでいてもよい。酵素処理工程は、上記磨砕工程で用いる脱皮大豆、又は上記各工程で得られた磨砕物、第1の均質化物、加熱処理物若しくは第2の均質化物(以下、単に「脱皮大豆又はその処理物」ともいう)を細胞壁分解酵素で処理する工程である。酵素を失活させる観点から、酵素処理工程は加熱処理工程の前、すなわち、脱皮大豆、磨砕物又は第1の均質化物に対して行うのが好ましい。
【0023】
酵素処理工程で用いる細胞壁分解酵素は、脱皮大豆又はその処理物の中に含まれる大豆(特にオカラ成分)由来の細胞壁を構成するセルロース、ヘミセルロース、ペクチン等を分解する酵素である。当該脱皮大豆又はその処理物に対して、更に細胞壁分解酵素を用いて処理を行うことにより、細胞壁を構成するセルロース、ヘミセルロース、ペクチン等の成分が分解され、得られる大豆加工食品の食感がなめらかなものとなる。細胞壁分解酵素の具体例としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等が挙げられる。細胞壁分解酵素は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。細胞壁分解酵素の中でも、得られる大豆加工食品の食感をよりなめらかなものとする観点から、セルラーゼが好ましい。
【0024】
細胞壁分解酵素の添加量は、使用する酵素の種類等に応じて適宜調節することができる。細胞壁分解酵素の添加量は、例えば、脱皮大豆、磨砕物、又は第1の均質化物100gに対して0.05g以上0.5g以下、又は0.1g以上0.3g以下としてもよい。また、細胞壁分解酵素の酵素活性は、例えば、80CUN以上800CUN以下であってよく、160CUN以上480CUN以下であることが好ましい。ここで1CUNとは、カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(0.625%、pH4.5)4mLに細胞壁分解酵素液1mLを加え、40℃で30分間作用させたときに、1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力を生成する活性を意味する。
【0025】
細胞壁分解酵素による脱皮大豆又はその処理物の処理温度及び処理時間は、使用する酵素の種類及び添加量等に応じて適宜調節することができるが、例えば、40℃以上60℃以下で30分以上120分以下とすることができる。
【0026】
本実施形態に係る大豆加工食品の製造方法は、上記各工程に加えて添加工程を含んでいてもよい。
【0027】
添加工程は、上記第1の均質化工程、加熱処理工程又は第2の均質化工程を経て得られた第1の均質化物、加熱処理物又は第2の均質化物に、食品分野において使用することのできる各種添加剤を加える工程である。添加工程は加熱処理工程の前に行うことが好ましい。添加工程で用いる添加剤としては、例えば、甘味料、香料、酸味料、酸化防止剤、乳化剤、ミネラル、糖類、油脂、果汁、野菜汁等が挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る製造方法によれば、例えば、粒度のメジアン径が60μm以下であり、粘度が300mPa・s以上である第2の均質化物(すなわち大豆飲料)が得られる。本実施形態に係る製造方法で得られる大豆飲料の粒度のメジアン径は50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。大豆飲料の粒度のメジアン径を上記範囲とすることで、食感がより一層なめらかなものとなる。大豆飲料の粒度のメジアン径は、湿式粒度分布計(好ましくは、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、SALD−2200(株式会社島津製作所製)))によって測定することができる。また、食感がより一層なめらかなものとなる観点から、本実施形態に係る製造方法で得られる大豆飲料の粘度は、2℃から8℃で、400mPa・s以上であることが好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましい。また、飲料としての飲み易さの観点から、本実施形態に係る製造方法で得られる大豆飲料の粘度は、2℃から8℃で、2000mPa・s以下であることが好ましい。大豆飲料の粘度は、粘度計(例えば、TVB-10M(東機産業株式会社製))によって測定することができる。
【0029】
本実施形態に係る製造方法で得られた第2の均質化物(大豆飲料)は、大豆由来の栄養成分が豊富に含まれており、不快臭が感じられず、かつ食感がなめらかであることから、そのまま飲食品として使用することもでき、また、飲食品の素材として使用することもできる。
【0030】
大豆加工食品が大豆飲料発酵物である場合、本実施形態に係る大豆加工食品の製造方法は、上記各工程に加えて第2の均質化物を乳酸菌で発酵させる発酵工程を含んでいてもよい。
【0031】
本明細書において「大豆飲料発酵物」とは、大豆飲料を乳酸菌で発酵させて得られる発酵物を意味する。
【0032】
発酵工程で用いる乳酸菌としては、例えば、ラクトバチラス・ブルガリカス、ラクトバチラス・デルブリュッキー等のラクトバチラス属;ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属;ラクトコッカス・ラクティス等のラクトコッカス属;ビフィドバクテリウム・アニマリス等のビフィドバクテリウム属の乳酸菌を用いることができる。乳酸菌は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0033】
乳酸菌の添加量は、使用する乳酸菌の種類等に応じて適宜調節することができる。乳酸菌の添加量は、例えば、大豆飲料1gに対して1×10
4個以上1×10
7個以下、又は1×10
5個以上1×10
6個以下としてもよい。
【0034】
乳酸菌による発酵温度及び発酵時間は、使用する乳酸菌の種類及び添加量等に応じて適宜調節することができるが、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィルスを使用する場合、43℃で4時間以上7時間以下とすることができる。
【0035】
本実施形態に係る製造方法で得られた大豆飲料発酵物は、大豆由来の栄養成分が豊富に含まれており、不快臭が感じられず、かつ食感がなめらかであることから、そのままヨーグルト、チーズ等の飲食品として使用することもでき、また、飲食品の素材として使用することもできる。
【0036】
本実施形態に係る製造方法で得られた大豆加工食品は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、例えば、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)の缶容器、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔試験例1.大豆飲料及び大豆飲料発酵物の調製及び評価(1)〕
【0039】
(実施例1の大豆飲料の調製)
脱皮処理した大豆(約2kg)を加温水に30分間浸漬した。浸漬した脱皮大豆に加温水(約7kg)を加え、ミキサー(商品名:コミトロール(アーシャルジャパン株式会社製))で磨砕し磨砕物を得た。なお、磨砕物の粒度のメジアン径は、69.3μmであった。得られた磨砕物を、ホモジナイザー(商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて、20MPaの圧力で、70℃で均質化した。得られた均質化物を135℃で2分間加熱処理した。得られた加熱処理物をホモジナイザー(商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて、20MPaの圧力で、80℃で均質化して、実施例1の大豆飲料を調製した。
【0040】
(実施例2の大豆飲料の調製)
脱皮処理した大豆(約500g)を加温水に30分間浸漬した。浸漬した脱皮大豆に加温水(約1.75kg)を加え、ミキサー(商品名:BLENDER7012BU(WARING社製);ダイヤル3)で5分間攪拌・混合して磨砕物を得た。なお、磨砕物の粒度のメジアン径は、101.6μmであった。得られた磨砕物を、ホモジナイザー(商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて、20MPaの圧力で、70℃で均質化した。得られた均質化物を135℃で2分間加熱処理した。得られた加熱処理物をホモジナイザー(商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて、20MPaの圧力で、76℃で均質化して、実施例2の大豆飲料を調製した。
【0041】
(比較例1の大豆飲料の調製)
実施例1と同様の方法で得られた磨砕物を135℃で2分間加熱処理して、比較例1の大豆飲料を調製した。
【0042】
(比較例2の大豆飲料の調製)
実施例1と同様の条件で得られた磨砕物を、135℃で2分間加熱処理した。得られた加熱処理物をホモジナイザー(商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて、20MPaの圧力で、80℃以上で均質化して、比較例2の大豆飲料を調製した。
【0043】
(比較例3の大豆飲料の調製)
実施例1と同様の条件で得られた磨砕物をホモジナイザー(商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて、20MPaの圧力で、70℃で均質化した。得られた均質化物を135℃で2分間加熱処理し、比較例3の大豆飲料を調製した。
【0044】
実施例1及び2、並びに比較例1〜3で得られた大豆飲料について、粒度のメジアン径及び粘度を測定した。粒度のメジアン径は湿式粒度分布計(SALD−2200(株式会社島津製作所製))によって測定した。また、粘度は、2℃から8℃において、粘度計(TVB-10M(東機産業株式会社製))によって測定した。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例1及び2、並びに比較例1〜3の大豆飲料発酵物の調製及び評価)
上記調製した実施例1及び2、並びに比較例1〜3の大豆飲料を、乳酸菌(ストレプトコッカス・サーモフィラス、ラクトバチルス・デルブリュッキー、ラクトバチルス・アシドフィラス及びビフィドバクテリウム・アニマリス)を用いて43℃で4時間以上6時間以下発酵させて、実施例1及び2、並びに比較例1〜3の大豆飲料発酵物(固形分10%のヨーグルト)をそれぞれ調製した。
【0046】
上記調製した実施例1及び2、並びに比較例1〜3の大豆飲料発酵物について、ヨーグルトの食感に関して訓練された3名のパネルにより官能評価を行った。官能評価は、食感について下記評価基準に従って評点を付け、3名のパネルが付けた評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値が2未満の大豆飲料発酵物は、なめらかな食感を有すると評価することができる。結果を表1に示す。
(評価基準)
1:ザラツキがない
2:ザラツキを僅かに感じる
3:ザラツキを感じる
4:ザラツキを強く感じる
5:ザラツキを非常に強く感じる
【0047】
【表1】
【0048】
加熱処理工程の前後ともに均質化工程を行わなかった比較例1、加熱処理工程後においてのみ均質化工程を行った比較例2、及び加熱処理工程前においてのみ均質化工程を行った比較例3の大豆飲料発酵物ではいずれもザラツキが感じられた。一方、加熱処理工程の前後ともに均質化工程を行った実施例1及び2の大豆飲料発酵物では、ザラツキがほとんどなく、なめらかな食感であった。よって、加熱処理工程の前後に均質化工程を行うことにより、得られる大豆加工食品の食感がなめらかなものとなることが確認された。
【0049】
〔試験例2.大豆飲料及び大豆飲料発酵物の調製及び評価(2)〕
【0050】
(比較例4の大豆飲料の調製)
上記比較例3において得られた均質化物を比較例3と同様の条件で再度均質化を行い、得られた均質化物を比較例3と同様の条件で加熱処理して、比較例4の大豆飲料を調製した。
比較例4で得られた大豆飲料について、試験例1と同様の方法で粒度のメジアン径及び粘度を測定した。
【0051】
(比較例4の大豆飲料発酵物の調製及び評価)
比較例4の大豆飲料を、試験例1と同様の方法で発酵させて、比較例4の大豆飲料発酵物(固形分10%のヨーグルト)を調製した。上記調製した比較例4の大豆飲料発酵物について、試験例1と同様の方法で官能評価を行った。結果を実施例1及び比較例3とあわせて表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
加熱処理工程前にのみ1回均質化工程を行った比較例3の大豆飲料発酵物ではザラツキが感じられた。また、加熱処理工程前にのみ2回均質化工程を行った比較例4の大豆飲料発酵物については、ザラツキがより低減したものの、食感のなめらかさに欠けるものであった。よって、加熱処理工程の前後に均質化工程を行うことにより、得られる大豆加工食品の食感がなめらかなものとなることが確認された。
【0054】
〔試験例3.大豆飲料及び大豆飲料発酵物の調製及び評価(3)〕
【0055】
(比較例5及び6の大豆飲料の調製)
実施例1と同様の方法で得られた磨砕物を、ホモジナイザー(商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて、20MPaの圧力で、70℃で均質化した。得られた均質化物を135℃で2分間加熱処理した。得られた加熱処理物をホモジナイザー(商品名:HV−OA1−1.5S(株式会社イズミフードマシナリ製))を用いて、20MPaの圧力で、70℃で均質化して、比較例5の大豆飲料を調製した。
また加熱処理物を60℃で均質化したこと以外は比較例5と同様の方法で、比較例6の大豆飲料を調製した。
比較例5及び6で得られた大豆飲料について、試験例1と同様の方法で粒度のメジアン径及び粘度を測定した。
【0056】
(比較例5及び6の大豆飲料発酵物の調製及び評価)
比較例5及び6の大豆飲料を、試験例1と同様の方法で発酵させて、比較例5及び6の大豆飲料発酵物(固形分8%のヨーグルト)をそれぞれ調製した。上記調製した比較例5及び6の大豆飲料発酵物について、試験例1と同様の方法で官能評価を行った。結果を実施例1とあわせて表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
第2の均質化工程を第1の均質化工程における温度(70℃)よりも高い80℃で実施した実施例1の大豆飲料発酵物ではザラツキがほとんどなく、なめらかな食感であったのに対し、第2の均質化工程を第1の均質化工程における温度(70℃)又はそれ以下で実施した比較例5及び6の大豆飲料発酵物ではザラツキが感じられた。